《速報解説》 金融庁が「記述情報の開示の好事例集2021」を公表 ~CGコードの改訂等で開示充実の取組みも進む「サステナビリティ情報」に関する開示の好事例をまとめる~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2021年12月21日、金融庁は、「記述情報の開示の好事例集2021」(サステナビリティ情報に関する開示)を公表した。 これは、「サステナビリティ情報」に関する開示の好事例を取りまとめたものである。「サステナビリティ情報」に関する開示は、近年、社会的な関心が高まっている項目の1つであり、コーポレートガバナンス・コードの改訂等で開示の充実に向けた取組みが進められているところである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 気候変動関連の開示例 1 投資家・アナリストが期待する主な開示のポイント 次の事項をあげている。 2 好事例のポイント 次のことが記載されている。 Ⅲ 経営・人的資本・多様性等の開示例 1 投資家・アナリストが期待する主な開示のポイント 次の事項をあげている。 2 好事例のポイント 次のことが記載されている。 (了) ↓直近1ヶ月の会計情報の速報解説をまとめた連載が開始しました↓
《速報解説》 監査役協会、コロナ禍が企業に与えた影響や 監査役等の監査活動の変化についてアンケート調査を踏まえて分析 ~コロナ禍における監査の視点の在り方や監査手法及び監査の課題を明らかに~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2021年12月20日、日本監査役協会 ケース・スタディ委員会は、「企業におけるコロナ禍の影響および監査役等の監査活動の変化について」を公表した。 これは、コロナ禍における監査の視点の在り方や監査手法及び監査の課題を明らかにするとともに、監査活動に対する今後の方向性を示すものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 日本監査役協会の会員のうち、2,222社を対象としたアンケートを実施し、1,429社(回答率64.3%)から回答を得ている。 「コロナ禍における各社の実態及び監査役等の監査活動の変化についてのアンケート調査」自由記述回答集(抜粋版)も公表されている。 1 社内体制等の変化 ほとんどの会社がリモートワークを導入しており、それに伴う勤務体制の調整や規程の整備は、アンケート調査時点ですでにそれぞれ約半数の会社が実施している。 リモートワークを推進するために稟議決裁制度を見直した企業は全体の2割であり、そのほとんどの会社が「電子稟議、電子契約、電子認証等の導入」をしたと回答している。 社内体制等の変化におけるリスクとして、「リモートワークができない社員への対応」、「心身面の負担の増加」、「社員間のコミュニケーション不足」との回答が多数にのぼり、リモートワークにおける従業員間での業務負荷や不公平感、コミュニケーション不足や不安感などに起因する心身への影響が懸念されている。 リモート会議の導入により時間調整の容易化や開催頻度の増加、逆に不要な会議の削減など利便性や効率性は向上した一方、「通信障害や通信機器不具合の発生」や「データの情報漏洩」、セキュリティの脆弱性などのリスクが指摘されている。 コロナ禍によって新たに発生又は顕在化したリスクとして、業績悪化や社員の意欲低下などによる決算操作・横領のリスク、取引先のリモートワークによる検収の遅れによる資金回収の遅れ、社員の安全確保、社員の健康管理、クラスター発生時等万一の場合の事業継続リスクなど様々なリスクが指摘されている。 2 コロナ禍における監査活動の変化 監査役等の監査活動に支障が出ていないか、どの程度監査活動を実施できたのか、課題などの確認に加え、新たな監査手法や、各社における監査の工夫等についても調査している。 コロナ禍という新たなリスク要因への対処で「リスクマネジメント、労務管理、BCP(感染防止策を含む)、情報セキュリティ」への監査の時間が増加し、監査役等は会社のコロナ禍への対応が適切かどうかに気を配っていることがうかがえる。 一方、「内部統制システムの整備・運用」への対応が増加した企業は2割以下にとどまっている。 オンライン会議やリモートでのヒアリングはほとんどの会社で実施されていた。 電子データの送受信やクラウド等を活用したデータの入手は、各社での電子化やIT環境整備の進捗状況によるため、導入の程度は様々であった。 現場確認の手段としては写真、動画、映像の利用が挙げられたが、リアルタイム映像で現場視察をしたとの回答は少数であった。 国内・海外往査等の代替手段として他者の監査に依拠したとの回答のうち、依拠した他者として、国内は内部監査部門が約82%、海外は会計監査人が約63%となり、渡航制限がかかる中で想定された結果であった。 3 会計監査人の監査の変化 会計監査人の監査方法の変化としては、来社頻度が減少しリモート監査が増加したとの回答が大多数であった。 また、監査時間(工数)が増加した会社の方が多かったが、監査時間に変化はないとの会社も一定数あった。 課題として、会計監査人のリモートワークに対応するために紙の資料を電子データ化する経理部門等の作業量が増加したり、会計監査人が提出資料の依頼に際して対面で確認することが難しいためメールでの依頼が不的確になったりするケースもあり、資料がスムーズに提供できず証拠や資料等の確認に時間がかかり、会計監査人の監査業務にも遅れが生じたなどがあげられている。 4 監査役会の監査報告の審議方法など 監査役会は「リモートでの開催回数が増加」「監査役等のリモートでの出席が増加」がそれぞれ7割程度を占め、感染防止対策としてリモートワークの実施やディスタンスの確保が行われている。 常勤監査役等のリモートワークの実施割合は、「週1未満」が43.6%であり、半数近くの常勤監査役等はほとんどリモートワークを行っていないと考えられる。 監査役会の監査報告を作成するための監査役会については、半数を超える会社において実際に一堂に会して開催されていた。 全員又は一部のリモート参加により監査役会監査報告を作成した会社での記名押印方法については、監査報告を後日回付して押印している会社がコロナ禍以降では約7割であり、コロナ禍前は会議の場での記名押印が5割以上であったことから、変化が生じている。 5 監査役等の監査への提言 次の提言が記載されている。 そのほか、社内環境等の変化に伴う留意事項(職員の心身の健康への配慮など)についても記載されている。 (了) ↓直近1ヶ月の会計情報の速報解説をまとめた連載が開始しました↓
《速報解説》 KAMの強制適用初年度における検討プロセスに対する 監査役等の関与について、監査役協会が調査結果を公表 ~調査から傾向を把握し好事例抽出の試みも~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2021年12月20日、日本監査役協会 会計委員会は、「監査上の主要な検討事項(KAM)の強制適用初年度における検討プロセスに対する監査役等の関与について」を公表した。 これは、KAM強制適用初年度となる2021年3月期決算の監査の対応を踏まえ、各社における検討プロセス、監査役等の関与状況、KAM導入による効果を調査し、その傾向を把握するとともに、今後の実務の参考となる好事例の抽出を試みたものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 日本監査役協会の3月決算の上場会社の会員2,045社に対してアンケート調査を実施し、1,051件(51.4%)の回答を得ている。 研究にあたっては、「監査役等のKAMの検討プロセスへの関与」について重点的に検討すべきとの観点から、あえてKAMの選定項目や表現といった記載内容よりも、検討プロセス自体にフォーカスし、監査役等の対応状況や検討の視点、コミュニケーションの状況の変化に重きを置いているとのことである。 1 KAM候補となる項目の変遷 KAM候補となる項目が監査人から提示されたのは、期初(監査契約締結~監査計画策定)段階とするものが半数強である(個別:54.0%、連結:56.4%)。 KAM候補の個数の変化のタイミングとして多かったものは、3月末時点(個別:32.9%、連結:32.2%)、第3四半期報告時点(個別:29.5%、連結:30.8%)である。 また、個数変化は増加例(個別:73、連結:87)よりも減少例(個別:475、連結:528)の方が多く、全体の平均個数を見ても、期初の候補から絞り込みが行われている傾向があるとのことである。 2 ドラフトの提示・アップデート時期 監査計画策定段階までにドラフト提示ありと回答したのは全体の30.4%であり、全体の約7割の会社で年内(12月)までにドラフトの提示があったとのことである。 ドラフトのアップデート回数とタイミングについては、1回が最多(30.0%)、0~3回の合計で85.6%であり、大半の会社が4月以降にドラフトのアップデートを実施している。 3 監査時間の変化 KAMの検討プロセスは、項目選定等に関するコミュニケーションや監査報告作成段階での具体的な記載に関する議論といった新たな要素があり、監査時間に影響を及ぼすことが考えられるが、アンケートの全体数値としては「変化なし」との回答が全体の57.8%と優勢であった。 ただし、アンケートの回答上、増加/減少の基準が回答者によって異なっていたことが数値に影響したものと思われ、見積段階において監査人側より具体的な工数変化が示された例がある一方で、KAMへの対応そのものに要する監査時間は全体からすると小さい割合であると想定されることから、KAM以外の要因も含む全体の変動の中で消化されたことから影響なしとの回答もあるとのことである。 4 監査人とのコミュニケーションの変化 項目や内容に関連した説明・議論内容の深化等に関して、変化があったとの回答が全体の約6割である。 各社の回答コメントを考察すると、概して、監査人からの説明がより丁寧になったことなども含めて、議論の深度が増し、監査人と監査役等との認識共有が進んだことがベースにあり、それが重要であると思われるとのことである。 また、「重点監査項目がKAMになっただけで変化なし」「KAMの有無にかかわらず従前から議論してきた」との前提の下に変化なしと回答している例が多く、必ずしもネガティブな結果ではないものと思われるとのことである。 5 KAM候補の選定に関する議論 期初からドラフトが提示されている場合、監査人との記載表現に関して見解の相違や要調整事項のポイントとしては、例えば以下のような点が挙げられる。 6 執行側とのコミュニケーション 期初の監査計画策定段階における監査役等側と執行側との間でのKAM に関するコミュニケーションの状況としては、「行った」との回答が46.6%である。 7 期中の変化(追加・削除・その他) 全体数値としては、「見直しが行われた事項はない」との回答は、全体の50.1%に当たる518社である。 したがって、ほぼ半数の会社においては、何らかの見直し(追加、削除、その他)が行われた項目があることになる。 8 期末(監査報告書作成段階) 監査役等として留意した視点として、①選定された項目について、KAMとして妥当か、②記載内容について、株主・投資家にとって理解しやすいものとなっているか(誤解を招かない表現となっているか)、③選定項目及び記載内容について、開示内容との整合性が保たれているかなどがあげられる。 9 定時株主総会 定時株主総会に向けた準備として、KAMに関連した想定問答を検討したかどうかについては、「検討した」との回答が全体の69.4%であった。 最も多く検討された想定問答は「KAMに選定された項目について」であり、想定問答を検討した会社の73.5%が準備している。 ただし、当該質問を受けた場合に、具体的内容について回答を準備していた例はほとんどなく、KAMの記載が金商法上の監査人の監査報告書においてのみ行われ、かつ、定時株主総会開催時点で有価証券報告書が提出されていないという状況を前提に、総会後に開示される有価証券報告書を確認されたい旨の回答を用意した会社が多数であった(ただし、招集通知に記載された見積りに関する注記の範囲での説明について準備していたとの回答もあった)。 監査役等に対してなされることを想定した質問としては、「監査役等としてのKAMへの対応状況」について準備をしたとの回答が73.6%で最多であった。 株主総会において、KAMに関する質問があったとの回答は4件あり、そのうち質問内容についてのコメントがあるものは次のとおりである。 10 監査役等の監査報告書 全体の10.3%に当たる108社において監査役等の監査報告書における言及が行われており、おおむね日本監査役協会の文例に沿って記載内容を検討したようである。 11 有価証券報告書における「監査役会の活動状況」 全体の18.6%に当たる195社において、KAMに対する監査役等としての対応について言及している。 12 会社法上のKAMの対応 会社法上のKAMの対応について、KAMの記載を検討した(ものの実際に記載には至らなかった)会社は、全体の17.8%であった。 今後の記載の可能性については、「現時点で可能と考える」が22.5%、「今後実務が成熟すれば可能と考える」が48.7%である。 (了) ↓直近1ヶ月の会計情報の速報解説をまとめた連載が開始しました↓
《速報解説》 会計士協会、研究報告として「監査データ標準化に関する留意事項とデータアナリティクスへの適用」について公開草案を公表 ~監査人や企業等の利害関係者への標準化による影響についても記載~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2021年12月17日、日本公認会計士協会は、IT委員会研究報告「監査データ標準化に関する留意事項とデータアナリティクスへの適用」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、監査データの標準化の動向を解説するとともに、監査データの標準化が実現した将来において可能になることが見込まれる監査手法の概要・留意事項に関する情報提供を目的とするものである。 意見募集期間は2022年1月18日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 公開草案は、目次を含めて105ページに及ぶものなので、以下では主な内容について解説する。公開草案の概要も公表されている。 1 監査データ標準化に関するグローバルな状況 ITを活用した監査に関して、監査データの標準化が進んでおらず、データの前処理が煩雑になる、データ項目が不足するといった論点が識別されている。 監査データの標準化については、2013年に米国公認会計士協会(AICPA)からAudit Data Standardsが、また、2019年に国際標準化機構(ISO)からISO 21378 Audit Data Collection が公表されている。 2 監査データの標準化の利害関係者への影響 監査データの標準化により、次の利害関係者への影響があると考えられる。 3 ISO 21378の概観とデータの入手 ISO 21378の目的は、監査人がデータの提出を依頼し、監査業務を遂行する際に直面する共通の問題を解決することであり、監査データの内容及びフォーマットの世界的標準化によって、監査データの透明性の向上、監査データ収集プロセスの標準化、企業側と監査人側での作業重複の防止、収集までの時間の節約が促進される。 この規格は、次のモジュールで構成されており、公開草案は、その内容を詳細に説明している。 4 データの入手・アクセス 監査人が利用できる形式でデータにアクセスできるか、監査人がセキュリティとインテグリティを確保したデータを入手できるか(監査人が被監査会社のデータにアクセスして分析することにより、データが壊れたり、変更されたりしないかの懸念など)について検討している。 5 データの前処理 監査人は、被監査会社から入手したデータをツールに取り込んで監査データアナリティクス(ADA:Audit Data Analytics)を実施する場合、通常、被監査会社のデータの前処理(データクレンジング)が必要となる。 監査人は、被監査会社から入手する総勘定元帳データ、売掛債権データなどについて、ISO 21378「標準データプロファイリングレポート」を参照し、データの妥当性を確認するとともに、データの理解及び利用に当たり不可欠な質問を行うことが望ましいと記載されている。 6 データの目的適合性と信頼性 監査人は、データが監査手続の目的を適切に満たし、十分に信頼できるかどうかを検討するとし、関連する監査基準委員会報告書の規定を参照しつつ、説明している。 7 データ管理 データ保管期限、RPA(Robotics Process Automation)の利用、監査法人以外へのアウトソーシングなどについて記載している。 8 ビジュアライゼーション ADAにおいては、データを様々な種類のグラフ(例えば、チャート、散布図、トレンド・ライン)、テーブル又はダッシュボードなどの形式にして、又はそれらを組み合せることによって、視覚化して検討することがある。 ADAにおけるこれらの視覚化技術については「ビジュアライゼーション」と呼ばれることが多い。 ADAにおいては一般的に、分析対象となるデータ量の増加や分析内容の複雑化に応じて、分析結果を数値から読み取り理解することが難しくなる。 このため、分析結果のビジュアライゼーションにより、分析結果の理解可能性が高まることから、ADAの利用推進に伴いビジュアライゼーションの利用も促進される傾向にあるとのことである。 9 今後の方向性 現在公表されているISO 21378は、今後の監査データ収集においてのグローバル・スタンダードとなるもので、日本国内の影響としては、政府調達との関係から事実上の標準になると考えられるとのことである。 今後の課題として、収益認識会計基準への対応がERPに実装された場合のデータ活用、電子インボイス情報のERPでのデータ活用などがあげられている。 (了) ↓直近1ヶ月の会計情報の速報解説をまとめた連載が開始しました↓
《速報解説》 住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置の延長及び非課税限度額等の見直し ~令和4年度税制改正大綱~ 税理士 徳田 敏彦 令和3年12月10日に公表された「令和4年度税制改正大綱」(与党大綱)における「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置」(措法70の2)の改正点は以下のとおりである。 1 適用期限の延長 適用期限が「令和3年12月31日」から「令和5年12月31日」へ2年延長される。 2 非課税限度額の減少 住宅用家屋の取得等に係る契約の締結時期(※)にかかわらず、以下の非課税限度額とされる。 (※) 現行制度では、「住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日」及び「住宅用家屋の種類」等によって非課税限度額が異なる。詳しくは下記拙稿を参照されたい。 「《速報解説》 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置、非課税限度額の拡充や床面積要件の緩和等へ~令和3年度税制改正大綱~」 3 既存住宅用家屋の要件について 適用対象となる既存住宅用家屋の要件について、築年数要件(取得の日以前20年(耐火建築物は25年)以内に建築されたものとする要件)を廃止し、新耐震基準に適合している住宅用の家屋(登記簿上の建築日付が昭和57年1月1日以降の家屋については新耐震基準に適合している住宅用家屋とみなす)であることを加える。 4 受贈者の年齢制限について 受贈者の年齢要件を18歳以上(現行:20歳以上)に引き下げる。 5 特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例等の延長・見直し 上記(2を除く)の改正は、「特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例」(措法70の3)及び「東日本大震災の被災者が直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」(震災特例法38の2)についても同様とする。 なお、後者(震災特例法38の2)の非課税限度額は、現行制度と同額とする。 6 適用時期 上記の改正は、令和4年1月1日(4の改正は令和4年4月1日)以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用される。 (了)
《速報解説》 少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度等の見直し ~令和4年度税制改正大綱~ 税理士 中尾 隼大 令和3年12月10日に公表された「令和4年度税制改正大綱(以下、「税制改正大綱」という)では、少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度等の見直しについて明記されている。 (1) 見直しの目的と背景 税制改正大綱が、少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度等の見直しについて明記したのは、ドローンや建設用足場リースによる課税の繰延べが横行していることを受け、それらの「節税スキーム」に蓋をすることを目的したものである。 なお、当該スキームは、安価な価額のドローン等を大量に購入し、少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度等により全額損金算入しつつ、当該ドローン等を貸付けに供することで投下資金を数年かけて回収し、実質的に課税の繰延べを図るというものである。 当該スキームの台頭は、先般、生命保険による節税を対象とした通達改正が行われたこと等を受け、節税ニーズが高まっていたという背景があるといえよう。 (2) 少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度等の見直しの範囲 税制改正大綱では、以下に掲げる減価償却資産の損金算入特例について、貸付けの用に供した資産をその対象資産から除外する旨が明記された。 (※) 税制改正大綱において、その適用期限を2年延長する旨も明記されている。 なお、資産の貸付けを主要な事業として行う場合には、引き続き上記3つの制度の対象とすることができ、所得税についても同様の措置が講じられる。 この見直しが導入されると、対象となった貸付けの用に供したドローン等は、通常と同じく耐用年数に応じた減価償却費として損金算入されることとなる。 また、「主要な事業」の判定方法は、現時点で不明である。 (了)
《速報解説》 住宅用家屋の所有権保存登記に係る特例等、 登録免許税に係る主な改正事項 ~令和4年度税制改正大綱~ 税理士・行政書士・AFP 山端 美德 令和3年12月10日、「令和4年度税制改正大綱(与党大綱)」が公表された。 登録免許税については以下のとおり、住宅用家屋の保存登記等に係る軽減措置の延長が行われるが、一部要件の見直しも行われるため留意されたい。 1 住宅用家屋の所有権の保存登記に係る特例措置の延長 住宅用家屋の所有権の保存登記に係る特例措置の適用期限が、令和6年3月31日まで2年間延長される。 2 住宅用家屋の所有権の移転登記に係る特例措置の延長 住宅用家屋の所有権の移転登記に係る特例措置の適用対象となる住宅用家屋の要件について、築年数要件が廃止され、新耐震基準に適合している住宅用家屋(登記簿上の建築日付が昭和57年1月1日以降の家屋については、新耐震基準に適合している住宅用家屋とみなす)であることを加えた上で、その適用期限が令和6年3月31日まで2年間延長される。 3 住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記に係る特例措置の延長 住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記に係る特例措置の適用期限が、令和6年3月31日まで2年間延長される。 4 特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等に係る特例措置の延長 特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等に係る特例措置の適用期限が、令和6年3月31日まで2年間延長される。 5 認定低炭素住宅の所有権の保存登記等に係る特例措置の延長 認定低炭素住宅の所有権の保存登記等に係る特例措置の適用期限が、令和6年3月31日まで2年間延長される。 6 特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権の移転登記に係る特例措置の延長 特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権の移転登記に係る特例措置の適用期限が、令和6年3月31日まで2年間延長される。 (※) 上記1から6までの軽減措置の適用を受けるための対象住宅は、個人の住宅の用に供される床面積が50㎡以上の家屋であること等の一定の要件を有している。 (了)
《速報解説》 証拠書類のない簿外経費の必要経費不算入・損金不算入措置 ~令和4年度税制改正大綱~ 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 1 はじめに 与党による「令和4年度税制改正大綱」(以下「大綱」と略称する)が、12月10日に公表された。本稿では令和4年度税制改正で新たに設けられる予定の「証拠書類のない簿外経費の必要経費不算入・損金不算入措置」について、その概要をまとめたい。 2 改正の背景 証拠書類を提示せずに簿外経費を主張する納税者や証拠書類を仮装して簿外経費を主張する納税者への対応策として、大綱冒頭の「令和4年度税制改正の基本的考え方」「(3) 記帳義務の不履行及び特に悪質な納税者への対応」では、次のように述べられている(大綱P13)。 3 所得税の取扱い(大綱P29・30) (1) 措置の概要 隠蔽仮装行為に基づく確定申告書を提出した者又は無申告であった者については、その売上原価の額及びその年の販売費、一般管理費は、帳簿書類等で取引が確認できる場合及び課税庁による反面調査で取引が確認できる場合を除き、必要経費の額に算入しないこととされる。 (2) 適用対象 ①その年において不動産所得、事業所得若しくは山林所得を生ずべき業務を行う者又は②その年において雑所得を生ずべき業務を行う者でその年の前々年分の当該雑所得を生ずべき業務に係る収入金額が300万円を超えるもの。 (3) 適用条件 ①隠蔽仮装行為に基づき確定申告書(その申告に係る所得税についての調査があったことにより当該所得税について決定があるべきことを予知して提出された期限後申告書を除く)を提出しており、又は②確定申告書を提出していなかった場合。 (4) 必要経費の額への不算入 これらの確定申告書に係る年分のこれらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るために直接に要した費用の額(売上原価の額)及びその年の販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額は、(5)の場合を除き、その者の各年分のこれらの所得の金額の計算上、必要経費の額に算入しない。 ただし、その者がその年分の確定申告書を提出していた場合には、売上原価の額及び費用の額のうち、その提出したその年分の確定申告書等に記載した課税標準等の計算の基礎とされていた金額は、本措置の対象から除外する。 (5) 適用から除外される場合 次に掲げる場合に該当する売上原価の額又は費用の額は、本措置の適用から除外され、必要経費に算入する。 (6) 適用時期 この改正は、令和5年分以後の所得税について適用する。 4 法人税の取扱い(大綱P57・58) 隠蔽仮装行為に基づく確定申告書を提出した法人又は無申告であった法人についても、3(所得税の取扱い)と同様に、その売上原価及び販売費・一般管理費は、帳簿書類等で取引が確認できる場合及び課税庁による反面調査で取引が確認できる場合を除き、損金の額に算入しないという措置が設けられることとなる。 この改正は、令和5年1月1日以後に開始する事業年度から適用される。 なお、措置の規定内容については所得税と同様であるので割愛するが、個人について設けられている「雑所得に係る前々年の収入金額が300万円を超えている」ことという、収入(売上高)に関する除外規定は、法人税については設けられていない。 (了)
《速報解説》 会社法等の改正及びCGコードの改訂等を踏まえ、 監査役協会が「監査役監査基準」等を改定 ~公開草案に対する意見を受けて一部見直しも~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2021年12月16日、日本監査役協会は、次のものを公表した。 これにより、2021年10月4日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に寄せられた意見とそれに対する対応についても公表されている。意見を受けて公開草案から見直されたものもある。 これは、会社法の改正及び改正会社法に係る法務省令の改正、コーポレートガバナンス・コードの改訂等を踏まえたものである。各機関設計間の記載振り・体裁の統一なども行われている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 改正会社法への対応 次のものである。 Ⅲ 改訂版コーポレートガバナンス・コードへの対応 次のものである。 Ⅳ 監査人の監査基準の改訂への対応 次のものである。 (了) ↓直近1ヶ月の会計情報の速報解説をまとめた連載が開始しました↓
2021年12月16日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.449を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。