収益認識会計基準を学ぶ 【第19回】 「買戻契約と委託販売契約」 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 今回は、「買戻契約」と「委託販売契約」について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 買戻契約 1 定義 買戻契約とは、企業が商品又は製品を販売するとともに、同一の契約又は別の契約のいずれかにより、当該商品又は製品を買い戻すことを約束するあるいは買い戻すオプションを有する契約である(収益認識適用指針153項)。 買い戻す商品又は製品には、次のものがある(収益認識適用指針153項)。 また、買戻契約には、通常、次の3つの形態がある(収益認識適用指針153項)。 2 支配の概念 企業は約束した財又はサービス(資産)を顧客に移転することにより履行義務を充足した時に又は充足するにつれて、収益を認識する(収益認識会計基準35項)。 そして、約束した財又はサービス(資産)が移転するのは、顧客が当該資産に対する支配を獲得した時又は獲得するにつれてであり(収益認識会計基準35項)、支配の概念がポイントになっていると解される。 資産に対する支配とは、当該資産の使用を指図し、当該資産からの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力(他の企業が資産の使用を指図して資産から便益を享受することを妨げる能力を含む)をいうと規定されている(収益認識会計基準37項)。 企業が商品又は製品を買い戻す義務(先渡取引)あるいは企業が商品又は製品を買い戻す権利(コール・オプション)を有している場合には、たとえ顧客が当該商品又は製品を物理的に占有しているとしても、顧客が当該商品又は製品の使用を指図する能力や当該商品又は製品からの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力が制限されているため、顧客は当該商品又は製品に対する「支配」を獲得していない(収益認識適用指針69項、154項)。 Ⅲ 先渡取引とコール・オプション 1 会計処理(買戻価格が当初の販売価格より低い場合) 商品又は製品の買戻価格が当初の販売価格より低い場合には、当該契約を「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号)に従ってリース取引として処理する(収益認識適用指針69項)。 これは、実質的に当該商品又は製品を一定の期間にわたり使用する権利の対価が企業に支払われることになるためである(収益認識適用指針155項)。 2 会計処理(買戻価格が当初の販売価格以上の場合) 商品又は製品の買戻価格が当初の販売価格以上の場合には、当該契約を金融取引として処理する(収益認識適用指針69項)。 これは、企業は実質的に金利を支払うことになるためである(収益認識適用指針155項)。 買戻契約を金融取引として処理する場合には、商品又は製品を引き続き認識するとともに、顧客から受け取った対価について金融負債を認識する。顧客から受け取る対価の額と顧客に支払う対価の額との差額については、金利(あるいは加工コスト又は保管コスト等)として認識する(収益認識適用指針70項)。 3 オプションの未行使 オプションが未行使のまま消滅する場合には、コール・オプションに関連して認識した負債の消滅を認識し、収益を認識する(収益認識適用指針71項)。 Ⅳ プット・オプション 1 重要な経済的インセンティブの判断 企業が顧客の要求により商品又は製品を当初の販売価格より低い金額で買い戻す義務(プット・オプション)を有している場合には、契約における取引開始日に、顧客が当該プット・オプションを行使する重要な経済的インセンティブを有しているかどうかを判定する(収益認識適用指針72項)。 重要な経済的インセンティブを有しているかどうかを判定するにあたっては、買戻価格と買戻日時点での商品又は製品の予想される時価との関係やプット・オプションが消滅するまでの期間等を考慮する(収益認識適用指針72項)。 例えば、買戻価格が商品又は製品の時価を大幅に上回ると見込まれる場合には、顧客がプット・オプションを行使する重要な経済的インセンティブを有していることを示す可能性がある(収益認識適用指針72項)。 2 会計処理(重要な経済的インセンティブを有している場合) 顧客が当該プット・オプションを行使する重要な経済的インセンティブを有している場合には、当該契約をリース会計基準に従ってリース取引として処理する(収益認識適用指針72項)。 企業が顧客の要求により商品又は製品を当初の販売価格より低い金額で買い戻す義務を有しており、顧客がプット・オプションを行使する重要な経済的インセンティブを有している場合には、顧客は、プット・オプションを有していることにより、当該商品又は製品の使用を指図する能力や当該商品又は製品からの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力が実質的に制限されるため、当該商品又は製品に対する支配を獲得していない(収益認識適用指針157項)。 この場合、顧客が当該プット・オプションを行使すると、実質的に当該商品又は製品を一定の期間にわたり使用する権利の対価が企業に支払われることになるので、上記のとおり、リース取引として処理することになる(収益認識適用指針157項)。 3 会計処理(重要な経済的インセンティブを有していない場合) 重要な経済的インセンティブを有していない場合には、当該契約を返品権付きの販売(収益認識適用指針84項から89項)として処理する(収益認識適用指針72項)。 企業が顧客の要求により商品又は製品を買い戻す義務(プット・オプション)を有している場合には、顧客は、当該商品又は製品を返還する義務も、また返還に備える義務も有しておらず、当該商品又は製品の使用を指図する能力や当該商品又は製品からの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力を有しており、当該商品又は製品に対する支配を獲得している(収益認識適用指針156項)。 このため、企業は当該商品又は製品の買戻しに備える義務を、返品権付きの販売として処理することになる(収益認識適用指針156項)。 4 会計処理(買戻価格が当初の販売価格以上であり、かつ、当該商品又は製品の予想される時価よりも高い場合) 商品又は製品の買戻価格が当初の販売価格以上であり、かつ、当該商品又は製品の予想される時価よりも高い場合には、収益認識適用指針157項と同様の理由により、顧客は当該商品又は製品に対する支配を獲得していないことから、当該契約を金融取引として、収益認識適用指針70項と同様に処理する(収益認識適用指針73項、158項)。 この場合、企業は実質的に金利を支払うことになる(収益認識適用指針158項)。 5 会計処理(買戻価格が当初の販売価格以上で、当該商品又は製品の予想される時価以下であり、かつ、顧客がプット・オプションを行使する重要な経済的インセンティブを有していない場合) 商品又は製品の買戻価格が当初の販売価格以上で、当該商品又は製品の予想される時価以下であり、かつ、顧客がプット・オプションを行使する重要な経済的インセンティブを有していない場合には、当該契約を返品権付きの販売(収益認識適用指針84項から89項)として処理する(収益認識適用指針73項)。 6 オプションの未行使 オプションが未行使のまま消滅する場合には、プット・オプションに関連して認識した負債の消滅を認識し、収益を認識する(収益認識適用指針74項)。 Ⅴ 委託販売契約 1 委託販売契約であることを示す指標 商品又は製品を最終顧客に販売するために、販売業者等の他の当事者に引き渡す場合がある(収益認識適用指針75項)。 契約が委託販売契約であることを示す指標には、例えば、次の①から③がある(収益認識適用指針76項)。 2 会計処理 商品又は製品を最終顧客に販売するために、販売業者等の他の当事者に引き渡す場合には、当該他の当事者がその時点で当該商品又は製品の支配を獲得したかどうかを判定する(収益認識適用指針75項)。 当該他の当事者が当該商品又は製品に対する支配を獲得していない場合には、委託販売契約として他の当事者が商品又は製品を保有している可能性があり、その場合、他の当事者への商品又は製品の引渡時に収益を認識しない(収益認識適用指針75項)。 (了)
社長のためのメンタルヘルス 【第8回】 「睡眠の大切さについて」 特定社会保険労務士 第一種衛生管理者 産業カウンセラー 寺本 匡俊 1 今回の趣旨 10年ほど前、医学者の講習において、講師の先生が「睡眠学は欧米では何十年も前から重要視されているが、日本ではようやく幾つかの大学に講座ができたばかりの段階にある」と語ってみえたのを覚えている。 我々も日常的に寝不足で一過性の辛さを覚えるが、もしも睡眠不足が蓄積すると心身ともに重大な影響を及ぼしかねないことを表す「睡眠負債」(スタンフォード大学の研究)という概念が一般にも浸透してきた。メンタルヘルスを考える上でも、不可欠の要素であるところ、今回は睡眠の重要性、過度の睡眠不足の恐ろしさ、予防の工夫などを対象とする。 2 睡眠の重要性(既出資料との関連) (1) 量的要素と質的要素 睡眠の大切さについては、量的な要素(主に睡眠時間)と、質的な要素(ぐっすり眠れるか)の両面から考える必要がある。以下、平均的・一般的な数値を出すところもあるが、個人差が大きいのは言うまでもない点は、最初にお断りしておく。多数にあてはまる目安とお考えいただきたい。 周知のとおり、過労死等(脳・心臓疾患)や精神疾患の労災認定基準(「精神障害の労災認定」参照)などには、長時間労働という言葉が頻出する。法律用語以外にも、一例として「過労死ライン」がある。法令に即して言えば、「発症前1ヶ月間におおむね100時間」あるいは「発症前2~6ヶ月間にわたっておおむね80時間」を超える法定時間外労働がある場合というような意味で使う。 ただし、これは長い時間働くことが、常に直接、脳神経や心臓・血管に強い悪影響を及ぼすということではない。誰にとっても1日は24時間しかないため、あまりに長時間働いた場合、日々の生活に必要な行動(食事や風呂やトイレ等々)に要する時間を差し引くと、睡眠時間が削られてしまう。先ほど個人差も大きいと述べたのは、実際、通勤・帰宅に要する時間・手段などは個々人により異なるためであり、これらは労災認定のとき必ずチェックされる項目の1つになる。 諸説の中には、「1日最低5時間」は眠る必要があるというものがある。私たちは眠っている間、ただ単に身体の疲れを癒しているだけではない。起きて活動している間には容易にできないこと、例えば消化吸収、新陳代謝(細胞の作り直し等)、脳内の「整理」などを行っている。 脳内の整理とは、例えば記憶の機能が良い例で、些細なことは忘れ、大事なことはきちんと保管することなどが挙げられる。運動や音楽などで、その日にどれほど練習しても当日すぐに上達するわけでもないのに、翌日に上手くなっているといった経験がある人も多いだろう。 (2) 睡眠障害と食欲不振 過去の連載で何度か引用した資料を2つ、今回も参照する。1つは、ストレスチェック制度で活用されている「職業性ストレス簡易調査票」で、これまでは政府推奨の「57項目版」を引用してきたが、別途「簡略版23項目」も、厚生労働省から公表されている。 これは従業員50名未満の職場で、ストレスチェック実施の法的義務がなく、人員・予算も足りない事業所でも使えるように、追加で準備されたものだ。57項目のうち、特に欠かせない23項目を選抜したものだが、その中に「29. よく眠れない」という質問が含まれている。これは制度の検討会において、医学界から強い要望があり、「27. 食欲がない」と共に23項目に残した旨、報告書で読んだ記憶がある。 一見、これは「心の病」の症状とは感じられないかもしれない。だが多くの人には、仕事で大きな失敗をしたり、大切な人を亡くしたりなどの精神的なショックがあったとき、「寝付けない」、「食べ物が喉を通らない」というご経験があるはずだ。いずれも故人であるが、精神科医の神谷美恵子氏や島悟氏が強調していたように、心と体はつながっている。肌が荒れたり、口内炎ができたり、腰痛や肩こりがひどいなど、ストレスの過剰は往々にして「身体に出る」。自覚しやすい注意信号なのだ。 睡眠と食欲の件は、もう1つ、【第3回】で引用した資料であるWHO(世界保健機関)の「ICD-10」(精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン)でも確認できる。まず、同資料の「F32 うつ病エピソード」には不調・病状の軽重に関わらず、典型的な3つの症状として、「抑うつ気分」、「興味と喜びの喪失」、「活動性の減退による易疲労感の増大」が挙げられている。 だが、それだけではない。続いて、「他の一般的な症状」として7例が挙げられており、うち2つが「睡眠障害」と「食欲不振」である。これが短期で改善されれば良い。逆に2週間ほども続く場合や、非常に症状が重い場合は、医療機関への受診が不可欠である。命に関わる場合もある。 3 睡眠不足の予防策 (1) 睡眠不足に陥る働き方の削減 上掲の「睡眠障害」という医学用語には、複数の症例があり、特によく聞くものとしては、①寝つきが悪い(不眠症)、②夜中に何度も目が覚める(眠りが浅い=睡眠の「質」に関わる)、③早すぎる時間帯に起きてしまい、二度寝ができない(早朝覚醒など)がある。それぞれ、原因もさまざまであり、かつ業務と私生活の双方が関わるため、個々人による原因の究明と対策から始める必要がある。公私ともに、なるべく生活習慣を定期的、安定的なものにすることが重要である。 業務では、時に平時とは異なる時間帯に働き、その結果、就寝時刻が大きくずれることがある。企業カウンセリングでよく出る訴えは、シフト制や深夜労働による、時間的に不規則な生活からくる疲労と睡眠不足の蓄積である。24時間稼働が珍しくない現代においては、経営者といえども、無縁ではないだろう。ほかにも、海外出張の多い人(時差ボケ、移動疲れ)や、納期が厳しい職務あるいは繁閑の差が大きく、業務が集中する時期に過剰労働となる人などが、同様の悩みを持つ。 職務上、避けられないものもある以上、経営者としては自分自身のためのみならず、従業員の労務管理や、家族の健康管理などの場面においても、これら睡眠の質・量の阻害要因となりかねない働き方は、極力その頻度や継続期間を減らす工夫をお願いしたい。また、休日・休憩の確保はきわめて有効な健康管理の要素であり、過労死の労災認定においても、しっかり休みが取れていたか否かは、認否を左右する重要事項である。 (2) メラトニンによる心身リズムの調整作用 「メラトニン」という物質をご存知だろうか。これは、人間のみならず動物が体内で合成するホルモンで、厚生労働省の特設サイト「e-ヘルスネット」にも、「メラトニン」の説明が載っている。メラトニンの項目の最後の段落に、「睡眠障害に有効」と書かれているように、メラトニンには催眠効果があり(睡眠薬ではない)、約24時間サイクル(概日)の心身のリズムを調整する。光により形成されるが、明るいうちは分泌量が抑えられる特徴があり、つまり、暗くなると眠くなる。 この調整作用を十分に引き出すには、日光を浴びるのが効率的、効果的で、拙宅では朝一番で植木鉢やメダカの世話、洗濯物の取り込みを習慣化させて、朝日を浴びている。暑い季節の熱中症や、過度に日焼けすると皮膚がん等のリスクもあるので、個々に調整をお願いしたい。 なお日光浴は、免疫力の維持向上に重要な働きをするビタミンDを、体内で形成する利点もある。コロナ禍のご時世には有益だろう。大正時代のポスターに、感冒(スペイン風邪のはず)には、「マスクと日光浴」と書かれているものを見たことがある。ちなみに、「e-ヘルスネット」には睡眠に関する記事(「健やかな睡眠と教養」)があるので併せてご案内申し上げる。「慢性不眠によるうつ病」という表現がある。 (3) 昼寝の効用 最後に昼寝の効用について触れる。昼は気温が上がって眠くなったり、午前の活動の疲れが出たりする。研究者からも、昼寝を勧める意見は多い。慣れれば、会社の昼休みに会議室で眠ることもできる。ただし、30分以上寝てしまうと熟睡に入ってしまうので、起きた後も体がだるかったり、夜に寝つきが悪くなったりするため、タイマー等で工夫してもらいたい。回復して午後も活動的になれば、夜の睡眠の質・量の向上にも貢献する。 睡眠不足は、心理的にも身体的にも落ち込み、だるくてやる気が起こらず、間違いも多くなる。これらは繰り返し挙げてきた、うつ状態の病状とそっくり同じである。初期症状のようなものだ。人間は、人生の3分の1から4分の1は睡眠に充てている。このことからしても、睡眠が心身にとって如何に重要なのか、改めてご認識いただければと思う。 (了)
実質的支配者リスト制度の創設と企業への影響 【第1回】 「制度の概要と創設の背景」 貝塚司法書士事務所 司法書士 植木 克明 司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎 1 はじめに 2022年1月31日より、法務局(商業登記所)における株式会社の実質的支配者(Beneficial Owner)リスト制度(以下、「BOリスト制度」という)が創設されることとなった。日本の企業の大部分を占める株式会社を対象とする制度であり、その影響の範囲は大きいといえる。 本稿では、BOリスト制度について、制度創設の背景や手続の流れなどについて解説を行う。 2 制度創設の背景 犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)は、犯罪による収益の移転(マネーロンダリング)を防止するため、金融機関などの特定事業者に顧客等の本人特定事項等の確認や疑わしい取引の届出を求めている。 マネーロンダリング防止のための国際的な組織としてFATF(ファトフ、金融活動作業部会)がある。FATFでは、各国のマネーロンダリング対策について相互審査を行っており、従前から日本は取組みの強化を求められてきた。令和3年8月30日に公表された第4次対日相互審査報告書においても、法人の実質的支配者の把握については、金融機関が法人について当該顧客の所有権及び管理構造を把握することを求めているとともに、国としても権限ある当局が適時に法人の所有及び支配について、十分に正確でタイムリーな情報の入手を可能とし、その情報にアクセスできるよう求めるなど改善を求められている状況にある。こうした国際的な流れを受けて、法人を悪用したマネーロンダリング防止対策の一環として、法人の実質的支配者を明らかにするためにBOリスト制度も創設されることとなった。 3 法人の悪用とマネーロンダリング 読者のなかには“法人がどのように悪用されるのか”という点について疑問を持つ方もいると思われる。法人は、個人(自然人)と同じく、銀行口座を開設することが可能であり、反社会的勢力が実質的に支配する法人名義の口座開設やその利用を許せば、そこへ犯罪による収益が流れ込むうえ、その後、不透明な資金の流れが把握しにくくなり、マネーロンダリングを許すことにも繋がる結果となるのである。 4 BOリスト制度の概要 BOリスト制度は、株式会社(特例有限会社を含む)を対象とし、その利用を希望する株式会社は、自社のBOリストを作成し、本店の所在地を管轄する法務局の登記官に株主名簿などの所定の添付書面とともに申出を行う。登記官は内容を確認して、BOリストを法務局に保管するとともに、登記官の認証文付きのBOリストの写しの交付を行う。 なお、あくまでBOリスト制度の対象は株式会社であり、合同・合名・合資会社の各会社類型や一般社団法人、一般財団法人などの法人は制度開始当初は対象とはなっていない。また、BOリスト制度の利用は無料となっている。 《BOリストの写しの見本》 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 5 BOリストが利用されるケース BOリスト制度の利用は任意の制度であり、利用するかどうかは各株式会社に委ねられている。想定されるBOリスト制度が利用されるケースとしては以下が考えられる。 (1) 銀行からの要請 マネーロンダリング防止の最前線に立っているのが、金融実務を担っている銀行等の金融機関である。犯罪収益移転防止法に基づく金融機関における実質的支配者の確認の実務としては、各金融機関が個別にマネーロンダリングのリスクが高いハイリスク取引はもちろん、通常の特定取引であっても一定の書類によって確認しているようである。また、株式会社等の設立手続では、定款を作成する必要があるが、法令によりその認証手続を行う公証人は発起人等実質的支配者から申告を受けて、その者が暴力団員又は国際テロリスト等でなければ定款を認証する仕組みがあり、設立後、法人が口座を開設する際にその証明書を利用しているようである。 一方で、法人設立後の継続的な実質的支配者の把握については、上記のとおり個別に行われていると考えられ、より実効性のある方法として法人の登録機関である法務局によりその正確性を確保しつつ、法人が任意に利用することを前提とした制度が検討された。BOリスト制度が創設されれば、確認事務がより効率的に行えるようになるものと思われる。企業としても取引先の銀行等から依頼を受ければ、多くの場合応じることになるであろう。 なお、一般社団法人全国銀行協会も、2021年6月28日に公示されたBOリスト制度に関する意見募集(パブリックコメント)に対して、総論として賛成する意見を提出している(※)。 (※) 一般社団法人全国銀行協会『「商業登記所における実質的支配者情報一覧の保管等に関する規程」に対する意見について』 (2) 取引先企業からの要請 取引先に上場企業や海外企業などが存在する場合には、各株式会社は当該取引先からBOリストの提出を求められることも考えられる。近年、各国の規制により取引先にテロ組織や制裁対象となっている国の関係者が関与していないかのチェックが厳しくなっている。こうした流れを背景に、特にコンプライアンスの順守を強く求められる上場企業や海外企業からBOリストの提出を求められることも考えられる。 6 「実質的支配者」とは BOリスト制度の対象となる「実質的支配者」とは、次のいずれかに該当する者である。 (注) ①②いずれの場合も、該当する自然人が当該会社の事業経営を実質的に支配する意思又は能力がないことが明らかな場合を除くとされている。例えば、病気で意思能力がない場合や、信託銀行が信託勘定を通じて25%超の議決権を保有している場合が考えられる。 * * * 実際にBOリストの作成を行う場合には、この実質的支配者の考え方について様々な疑問が生じるものと思われる。その点については次回以降、解説を行うものとする。 (了)
税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第24回】 「収益還元法といっても2通りの手法がある」 ~直接還元法とDCF法~ 不動産鑑定士 黒沢 泰 1 はじめに 前回は収益還元法をテーマに、計算例も交えながらその適用過程を解説しましたが、そこで前提とした純収益(総収益-総費用)は、収益期間についてみれば初年度のものでした。すなわち、収益価格の試算上、最初の1年間の純収益が同額で将来にわたり永続するという前提の基に、これを還元利回りで還元して(=割り戻して)元本である土地建物の価格を求めたことになります。このような手法を鑑定評価では「直接還元法」と呼んでいます。そして、直接還元法では年々の純収益の変動は価格に反映されない点に特徴があります。 これに対し、年々の純収益の変動を価格に反映することのできる手法として「DCF法」と呼ばれる手法があります。この手法は、対象不動産を一定期間賃貸した後に、対象不動産が貸主の元に返還されることを前提に収益価格を試算するものです。すなわち、賃貸借期間が有期である点に特徴があります。 どちらの手法で試算しても理論的には価格は一致すべきものですが、適用過程にそれぞれ判断要素が織り込まれることから、むしろそれぞれの結果が全く一致することはないと考えた方が現実的かと思われます。 今回は、このような収益還元法の2つの手法の基本的な仕組みと特徴について解説していきます。 2 直接還元法について 直接還元法は、上記のとおり、一期間の純収益を還元利回りで還元して対象不動産の収益価格を求める手法ですが、純収益が永続することを前提とした計算式となっているため、「永久還元の手法」とも呼ばれています。 この手法が適用される典型的な例は更地の鑑定評価ですが、建物及びその敷地の場合でも、建物等の償却資産の耐用年数が尽きた時点で償却累計額を建設費に投入し、永続的に純収益を生むことができると想定して鑑定評価を行うことが可能となります。 計算式は以下のとおりですが、一期間の純収益(a)を還元利回り(r)で割り戻すことにより、対象不動産の収益価格(P)を求めることになります。その意味で、純収益は将来にわたり一定であるといえます。 3 DCF法について DCF法(Discounted Cash Flow Analysis)は、直接還元法と異なり、年々の純収益が変動する場合でもその流れを的確に土地建物の価格に反映できる点に特徴があります。 また、この手法を適用する際には、将来継続的に発生する純収益(キャッシュ・フロー)の流れに関し一定期間を捉えて把握することになります。 その際、期間中に発生する年々の純収益を、割引率を用いて現在価値に置き換えるとともに、投資期間終了後の不動産価格(※)を現在価値に置き換え、これらをすべて合計することによって不動産の収益価格を求めるという考え方が適用されます。 (※) 投資期間終了後に貸主の元に戻ってくるという意味でこれを「復帰価格」と呼んでいます。 その計算式を示せば以下のとおりです。 〈DCF法による収益価格の計算式〉 これを要約すれば、 ということになります。 4 手法に登場する「還元利回り」、「割引率」、「最終還元利回り」の相互関係 直接還元法には「還元利回り」という概念が、DCF法には「割引率」及び「最終還元利回り」という概念が登場します。 還元利回り及び割引率は、ともに不動産の収益性を表すものですが、それぞれ以下のように区別して扱われています。 (1) 還元利回り 還元利回りは投資収益や投資の回収を図るための判断の指標として用いられ、将来予測の不確実性(リスク)を反映するとともに、収益と元本に対する変動予測を含んでいます。 (2) 割引率 これに対し、割引率は投資収益という視点からの判断指標に用いられ、将来予測の不確実性(リスク)は反映するものの、収益と元本に対する変動予測を含んでいない点に相違があります。 (3) 還元利回りと割引率の関係 国土交通省ホームページの「不動産鑑定評価基準運用上の留意事項」(Ⅴ.1.(4).①.オ.(エ))では、還元利回りと割引率との関係を次の式で表わしています。 この式は、割引率を基に純収益の変動率を反映させて還元利回りを求める方法を意味しています。すなわち、割引率には将来の変動予測を含んでいないため、これを基に還元利回りを求める方式を採用する場合には、割引率に純収益の変動率を加減する必要があるからです。 例えば、割引率を5%とし、純収益が年1%の変動率で上昇している場合には、 となり、純収益の変動率が年△1%であれば、 となります(純収益の上昇時には還元利回りは低く、純収益の下降時には還元利回りは高くなるという、いわば逆相関の関係にあります)。 (4) 還元利回りと最終還元利回りの関係 最終還元利回りとは、文字どおり最終の収益期間に対応する利回りです。すなわち、貸主と借主間で賃貸借関係が終了し、所有者の元に不動産が返還される時点での一期間の予想純収益をその時点での還元利回りで割り戻すことにより復帰価格を求める目的で用いられます(さらに、その結果を現在価値に割引くという計算が必要となります)。 最終還元利回りを査定するに当たっては、それが将来時点を対象として適用されるものなので、通常の還元利回りに比べて一層の不確実性(リスク)や長期間における変動予測も反映させる必要があります。そのため、通常の還元利回りよりも高めに設定されることが一般的です。 5 DCF法の試算例 下記の【別表】に、簡素化した数値を用いたDCF法による計算例(事業用定期借地権の設定による土地賃貸を想定)を掲げておきます。イメージの把握に役立てられれば幸いです。 【別表】 DCF法の適用例(事業用定期借地権の設定による土地賃貸) ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (了)
《速報解説》 交際費等の損金不算入制度の特例、令和6年3月31日まで2年延長 ~令和4年度税制改正大綱~ Profession Journal編集部 令和3年12月10日に公表された「令和4年度税制改正大綱」(与党大綱)では、交際費等の損金不算入制度について、現行内容のまま適用期限を2年延長することが明記された。 1 現行制度の概要 交際費等(※)の額は、原則としてその全額が損金不算入とされているが、損金不算入額の計算に当たっては、資本金の額又は出資金の額に応じて次の特例措置が設けられており、この特例は平成26年4月1日から令和4年3月31日までの間に開始する各事業年度において支出する交際費等の額について適用される(措法61の4)。 (※) 交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいう。 〔A〕 期末の資本金の額又は出資金の額が1億円以下である等の法人 損金不算入額は、下記①②のいずれかの金額となる。 〔B〕 〔A〕以外の法人 (イ) 期末の資本金の額又は出資金の額が100億円を超える法人 損金不算入額は、支出する交際費等の額の全額とされる(令和2年4月1日以後開始事業年度から適用)。 (ハ) (イ)以外の法人 損金不算入額は〔A〕の①の金額となる。 * * * なお、資本金の額又は出資金の額が5億円以上の法人の100%子法人等は、期末の資本金の額又は出資金の額が1億円以下であっても、〔A〕ではなく、〔B〕に従って損金不算入額を計算する。 2 改正内容 上記1の適用期限について、地方活性化の中心的役割を担う中小企業の経済活動を支援する観点等から、令和6年3月31日まで2年延長される(大綱P55・64)。 (了)
《速報解説》 不動産譲渡契約書等の税額軽減特例の延長、 印紙税に係る改正事項 ~令和4年度税制改正大綱~ 税理士・行政書士・AFP 山端 美德 令和3年12月10日、「令和4年度税制改正大綱(与党大綱)」が公表された。 印紙税については、不動産譲渡契約書及び工事請負契約書に係る印紙税の税率の特例措置が延長される。 【概要】 建設工事請負契約書や不動産譲渡契約書に係る印紙税については、高額な負担となっていることから、消費者の負担を軽減し、更なる建設投資の促進、不動産取引の活性化を図ることを目的とし、租税特別措置法第91条による「不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例」の適用期間が、令和6年3月31日までの2年間延長されることとなった。 【軽減税率】 ① 第1号の1文書に該当する「不動産の譲渡に関する契約書」のうち、令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に作成されるものについては、契約書の作成年月日及び記載された契約金額に応じて、下記の印紙税額の軽減が延長される。 ② 第2号文書(請負に関する契約書)のうち、建設業法第2条第1項に規定する建設工事(※)の請負に係る契約に基づき作成されるもので、令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に作成されるものについては、契約書の作成年月日及び記載された契約金額に応じて、下記の印紙税額の軽減が延長される。 (了) ↓お勧め連載記事↓
《速報解説》 「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令」が公布される ~新型コロナの影響を踏まえ、ウェブ開示によるみなし提供制度の対象を拡充~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2021(令和3)年12月13日、「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令」(法務省令第45号)が公布された。これにより、2021(令和3)年10月12日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に寄せられた意見の概要とそれに対する法務省の考え方も公表されている。 これは、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、 事業報告に表示すべき事項の一部並びに貸借対照表及び損益計算書に表示すべき事項をいわゆるウェブ開示によるみなし提供制度の対象とするためのものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ ウェブ開示によるみなし提供制度に関する改正 ウェブ開示によるみなし提供制度に関して次の改正を行う(会社法施行規則133条の2、会社計算規則133条の2)。 どのように株主の利益に配慮するかについては、各社が置かれた個別具体的な事情を踏まえた各社の判断によることとなるとのことである。 例えば、次に掲げるような方法をとることが考えられるとしている。 Ⅲ 施行時期等 1 施行期日 公布の日(2021年12月13日)から施行する。 2 失効 (了) ↓直近1ヶ月の会計情報の速報解説をまとめた連載が開始しました↓
《速報解説》 金融機関からの要請を受け、 会計士協会が「銀行等取引残高確認書」についての注意喚起を公表 ~十分な回答期間の確保や確認依頼の宛先に関し留意を促す~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2021年12月10日、日本公認会計士協会は、「銀行等取引残高確認書について(お知らせ)」を公表した。 これは、確認手続の実施に際して、特に、決算期においては、残高確認書が銀行等に集中する状況にあることから、金融機関からの要請を受けて公表するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 確認手続に当たっては、確認回答者から協力を得ていることを再認識する必要があるとして、監査業務に従事する公認会計士に対して注意喚起している。 確認回答者の状況も十分に考慮し、監査手続を実施することを今一度検討していただきたい旨を記載している。 1 十分な回答期間の確保 次の事項について記載している。 2 確認依頼の宛先 被監査会社が本邦銀行出資の海外現地法人宛に保証を差し入れている場合、本邦銀行に対し、当該海外現地法人の残高確認を依頼するケースが散見されるとのことである。 海外現地法人は、本邦銀行とは別法人であり、確認依頼の宛先としては適切ではないと考えられるとし、確認依頼の宛先は当該現地法人等が適切であることに留意することが記載されている。 適切な宛先に関する一覧表が掲載されているので、確認手続の実施に際して、参考になると考えられる。 (了) ↓直近1ヶ月の会計情報の速報解説をまとめた連載が開始しました↓
《速報解説》 会計士協会、監基報580「経営者確認書」の改正を受け、 「四半期レビューに関する実務指針」の改正を公表 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2021年12月7日付けで(ホームページ掲載日は2021年12月10日)、日本公認会計士協会は、監査・保証実務委員会報告第83号「四半期レビューに関する実務指針」の改正を公表した。 これは、監査基準委員会報告書580「経営者確認書」の改正を受けたものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 経営者確認書の記載例(付録2)において、次の文例が示されている。 その他追加項目の確認事項(四半期レビュー全般に共通する事項)の記載に当たっては、監基報580を参照することが有用であると記載している。 Ⅲ 適用時期等 2021年12月31日以後終了する四半期連結会計期間又は四半期会計期間に係る四半期連結財務諸表又は四半期財務諸表の四半期レビューから適用する。 なお、《付録2》の会計上の見積りの監査に関連する事項は、2023年3月に終了する連結会計年度又は事業年度に係る四半期連結財務諸表又は四半期財務諸表の四半期レビューから適用する。ただし、それ以前の連結会計年度又は事業年度に係る四半期連結財務諸表又は四半期財務諸表の四半期レビューから適用することを妨げない。 (了) ↓直近1ヶ月の会計情報の速報解説をまとめた連載が開始しました↓
《速報解説》 インボイス制度における適格請求書発行事業者の登録に関する見直し ~令和4年度税制改正大綱~ 税理士 石川 幸恵 令和3年12月10日に「令和4年度税制改正大綱」(与党大綱)が公表された。以下では、適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)に係る見直しのうち、適格請求書発行事業者の登録に関する見直し(大綱P71~72)について概説する。 1 改正の背景 (1) 免税事業者に関する現行の経過措置(平成28年改正法附則44④) ① 免税事業者向けの経過措置の内容 免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を申請した場合、令和5年10月1日の属する課税期間においては、経過措置により、課税期間の中途でも登録を受けた日から適格請求書発行事業者となることができる(平成28年改正法附則44④)。 一方、その後の課税期間においては、課税期間の中途からの登録を受けることはできない。 ② 免税事業者の実態 各地で行われているインボイス制度の説明会等では、「課税事業者になった場合、売上や事務負担、資金繰り等について、どうなるかわからず不安だ」という声も上がっており、登録の検討について様子見する免税事業者も多いと考えられる。 このような状況で、免税事業者が登録の必要性に迫られた際、翌課税期間(原則として、翌事業年度(個人事業者の場合は翌年))からしか登録ができない、あるいは課税期間を短縮して登録するしかないというのは酷ともいえよう。 (3) 国外事業者に係る問題点 国内に事務所等を有し、住所等を有しない国外事業者は、適正な納税を確保する観点から納税管理人を定めることとされている(国税通則法117)。 他方で、消費税法における適格請求書発行事業者の登録では、国内に事務所等を有する国外事業者については、納税管理人を定めていない場合であっても登録を拒否できない。このため、適格請求書を発行したうえで消費税の申告・納税を行わないまま姿をくらます、いわゆるミッシングトレーダーが生ずることが想定される。 ミッシングトレーダーの介在する取引は、密輸品を使った不正還付が問題であると考えられ、平成30年の税制調査会においても、インボイス制度との関係が議論されている(※)。なお、この年の改正では、「密輸品と知りながら行った課税仕入れに係る仕入税額控除の制限」(消法30⑫)、「金又は白金の地金の課税仕入れを行った場合の本人確認書類の保存」(消法30⑪)が設けられた。 (※) 「平成30年税制調査会(第18回総会)議事録(平成30年10月17日)」P8 2 改正案の内容 (1) 免税事業者に関する経過措置の見直し 免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受ける場合には、その登録日から適格請求書発行事業者となることができることとする。 ただし、令和5年10月1日の属する課税期間の翌課税期間以後に上記の適用を受けた適格請求書発行事業者は、その登録日の属する課税期間の翌課税期間からその登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間については、事業者免税点制度を適用しない。 下図で例示したように、令和6年10月1日に登録を受けた場合は、 となる(事業者免税点制度は、令和8期まで適用されない)。 なお、適格請求書発行事業者である限り、事業者免税点制度は適用されない(国税庁「インボイス制度に関するQ&A」問18)ため、適格請求書発行事業者が免税事業者になるための手続きについては、下記拙稿も参照されたい。 (2) ミッシングトレーダーへの対応 ① 登録の拒否可能 特定国外事業者(事務所及び事業所等を国内に有しない国外事業者をいう)以外の者であって納税管理人を定めなければならないこととされている国外事業者が納税管理人を定めていない場合には、税務署長は登録を拒否できることとする。 ② 登録の取消し可能 登録を受けている上記の国外事業者が納税管理人を定めていない場合には、税務署長はその登録を取り消すことができることとする。 (3) 申請書に虚偽の記載をした場合 適格請求書発行事業者の登録申請書に虚偽の記載をして登録を受けた場合には、税務署長はその登録を取り消すことができることとする。 * * * 上記の改正案について、大綱では特に適用時期が明記されていない。登録の準備期間中における見直しであるためと考えられるが、申請書の様式などは、本改正に合わせて、今後、変更されることも考えられる。 (了)