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プロフェッションジャーナル No.486が公開されました!~今週のお薦め記事~

2022年9月15日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.486を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2022/09/15

日本の企業税制 【第107回】「各府省庁の「令和5年度税制改正要望」を概観する」

日本の企業税制 【第107回】 「各府省庁の「令和5年度税制改正要望」を概観する」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴   令和5年度の予算編成に向けた各省庁の概算要求が8月31日、締め切られ、岸田文雄総理が就任して初めてとなる今回の概算要求は、一般会計の総額が110兆円規模となった。 予算要求と併せて、各府省庁から令和5年度税制改正要望も出揃った。 今回の要望項目数は、単純合計で、国税207項目、地方税207項目、重複排除ベースで、国税139項目、地方税137項目であった。なお、廃止・縮減項目数は単純合計ベースで国税1項目、地方税5項目、重複排除ベースで国税1項目、地方税4項目であった。平成26年度改正以降の要望項目数、廃止・縮減項目数の推移は下記のとおりである。 ※ ( )は重複排除ベース 今回、廃止・縮減項目として挙げられた国税の1項目は、国土交通省の「航空機騒音対策事業に係る特定の事業用資産の買換え等の特例措置の縮減」である。また地方税では、経済産業省・内閣府の「熊本地震における被災代替償却資産に係る固定資産税の特例措置の廃止」、厚生労働省の「心身障害者を多数雇用する事業所に対する特例措置の廃止」及び「社会医療法人の認定要件の特例的取扱いの廃止」、農林水産省の「土地改良法の規定による換地計画に基づき創設農用地換地を取得した場合の課税標準の特例措置の廃止」の4項目である。   〇試験研究費の税額控除 今回の要望で多くの省庁が要望しているのが、試験研究費の税額控除制度の拡充・延長である。 6月に内閣官房より公表された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」(以下、「実行計画」)では、研究開発による社会的収益率は、他社への外部効果により、研究開発を行った企業の私的収益率の2.5倍もの社会全体の収益率をもたらす一方、私企業のみに研究開発を任せると過少投資になりやすいということから、民間の現預金を活用した研究開発投資に対するインセンティブを強化することとされた。具体的には、「オープンイノベーションを更に加速し、研究開発投資全体を押し上げられるよう、民間企業の研究開発投資を促進するための税制の在り方について検討を進める」こととされている。 今回の経済産業省の要望では、「企業が研究開発投資を増加させるインセンティブの更なる向上を図るため、投資インセンティブが効果的に働くよう見直しを行うともに、オープンイノベーションの促進を図るための制度の見直し等を行う」こととされ、例えば、①一般型のインセンティブ強化、②オープンイノベーション型におけるスタートアップ企業の定義の見直し及び控除率の引上げ、③サービス開発の要件の見直し、④一般型の控除率の上乗措置の適用期限の延長(2年間延長(令和6年度末まで))、⑤試験研究費の額が平均売上金額の10%超の場合の上乗措置の適用期限の延長(2年間延長(令和6年度末まで)等である。経済産業省の他、内閣府、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、環境省、防衛省、復興庁も要望している。   〇設備投資 設備投資関係では、期限を迎えるDX投資促進税制の拡充・延長を経済産業省と国土交通省が要望している。また中小企業の設備投資を支える税制としては、経営強化税制や中小企業投資促進税制の延長を経済産業省、総務省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省が要望している。 また、防衛省は、新規要望として、防衛産業のサイバーセキュリティ体制の強化に資するものとして一定の要件を満たすことについて防衛大臣が認める設備投資を行った場合の税額控除・特別償却を掲げている。   〇スタートアップ税制 上述の「実行計画」では、スタートアップについて、5年で10倍増を視野に、5ヶ年計画を本年末に策定するとともに、司令塔機能を明確化し、重点的に取り組むとされた。また、GPIF等の長期運用資金のベンチャー投資への循環の流れを構築することや、事業化まで時間を要するスタートアップの成長を図るためのストックオプション等の環境整備も盛り込まれ、また、大企業によるスタートアップへの投資や買収によるオープンイノベーションを促進するため、税制等のあり方をこれまでの効果も勘案し再検証することとされている。 経済産業省の要望では、「スタートアップ・エコシステムの抜本強化のために、エコシステムの課題(人材、事業、資金量、出口戦略)に対応した税制措置を検討する」ことが掲げられるとともに、ストックオプションの権利行使期間の延長その他の利便性向上のための所要の措置や、段階的に事業を切り出そうとする企業などが活用できるよう、スピンオフを行う企業に持分を一部残す場合にもスピンオフの実施を円滑化するための所要の措置、国外転出時課税制度における非上場株式を担保とする場合の納税猶予手続きについて、株券によらない担保提供を可能とするための所要の措置、等が掲げられている。内閣府及び経済産業省の要望では、個人によるスタートアップ投資を促進する税制措置の検討も盛り込まれている。 また、金融庁の要望では、スタートアップや事業承継・再生企業等への円滑な資金供給を促す観点から、事業全体を担保に金融機関から成長資金を調達できる制度(事業成長担保制度(仮称))の創設に伴う所要の措置、法人が発行した暗号資産のうち、当該法人以外の者に割り当てられることなく、当該法人が継続して保有しているものを対象とした期末時価評価課税の見直し、等が盛り込まれている。   〇証券税制 金融税制においても、上述の「実行計画」で、「個人金融資産を全世代的に貯蓄から投資にシフトさせるべく、NISA(少額投資非課税制度)の抜本的な拡充を図る。また、現預金の過半を保有している高齢者に向けて、就業機会確保の努力義務が70歳まで伸びていることに留意し、iDeCo(個人型確定拠出年金)制度の改革やその子供世代が資産形成を行いやすい環境整備等を図る。これらも含めて、新しい資本主義実現会議に検討の場を設け、本年末に総合的な「資産所得倍増プラン」を策定する」とされたことを受け、金融庁の要望では、NISA(少額投資非課税制度)の抜本的な拡充が掲げられている。   〇贈与税 期限を迎える教育資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置の延長は文部科学省及び金融庁が、結婚・子育て資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置の延長は内閣府及び金融庁が要望している。   〇車体課税 経済産業省は、自動車関係諸税について、「2050年カーボンニュートラル目標の実現に積極的に貢献するものとするとともに、自動運転をはじめとする技術革新の必要性や保有から利用への変化、モビリティの多様化を受けた利用者の広がり等の自動車を取り巻く環境変化の動向、地域公共交通へのニーズの高まりや上記の環境変化にも対応するためのインフラの維持管理や機能強化の必要性等を踏まえつつ、国・地方を通じた財源を安定的に確保していくことを前提に、受益と負担の関係も含め、その課税のあり方について、中長期的な視点に立って検討を行う」ことを求めるとともに、自動車重量税のエコカー減税や自動車税のグリーン化特例の見直し・延長を求めている。国土交通省も同趣旨の要望である。 (了)

#No. 486(掲載号)
#小畑 良晴
2022/09/15

谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第6回】「国税通則法5条(~7条の2)」-国税の納付義務の承継-

谷口教授と学ぶ 国税通則法の構造と手続 【第6回】 「国税通則法5条(~7条の2)」 -国税の納付義務の承継-   大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫   国税通則法5条(相続による国税の納付義務の承継)   1 はじめに 国税通則法は国税の納付義務の承継を、相続の場合(5条)、法人の合併の場合(6条)、法人(人格のない社団等を含む。3条参照)が人格のない社団等の財産に属する権利義務を包括承継した場合(7条)、信託の受託者の任務終了に伴い新受託者が就任した場合等(7条の2)の私法上の包括承継(民法896条、会社法2条27号・28号、748条、信託法163条等参照)の場合について規定している(ほかに会社更生法232条1項も参照)。 上記の各規定は、包括承認に関する私法上の原則(以下「私法上の包括承認原則」という)の確認規定であると解されることがあるが(中川一郎=清永敬次編『コンメンタール国税通則法』(税法研究所・加除式[1989年追録第5号加除済])D152頁[北野弘久・吉良実執筆]参照)、それはどのような意味においてであろうか。今回は、この点を明らかにすることにしたい。 なお、前記の各規定は、国税通則法制定前の国税徴収法(昭和34年法律第147号)27条、29条及び41条1項の各規定を引き継いだものと解されているが(武田昌輔監修『DHCコンメンタール国税通則法』(第一法規・加除式)731頁、774頁、803頁参照。税通7条の2は平成18年信託法全文改正に伴う平成19年度税制改正で追加されたものである)、この国税徴収法の各規定も次のとおり私法上の包括承認原則の確認規定として解説されていた(吉国二郎ほか『新補改訂 新国税徴収法精解』(大蔵財務協会・1961年)247頁。下線筆者)。   2 私法上の包括承認原則の税法上の妥当範囲 まず、私法上の包括承認原則の、税法における妥当範囲については、次の2通りの見解がある(①は中川=清永編・前掲書D153頁[北野・吉良執筆]、②のうち②-1は清永敬次『税法〔新装版〕』(ミネルヴァ書房・2013年)202-203頁、②-2は金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂・2021年)889頁。下線筆者)。 上記①と②の見解は、国税通則法5条以下の前記各規定を例示列挙規定又は限定列挙規定のいずれとみるか(私法上の包括承継原則の妥当性を前記規定の範囲外でも認めるか又はその範囲内でのみ認めるか)の点では、立場を異にしているように思われる。すなわち、②が限定列挙規定説の立場に立つことは明らかであるが、①は、私法上の包括承継原則について「税法上の特段の規定を待たずに」「承継を否定する積極的規定がない限り」税法における同原則の妥当性を認めるものと解されるので、例示列挙規定説の立場に立つように思われるのである。 この違いに着目して前記①と②を比較してみると、課税要件法定主義の要請だけでなく、国税通則法は私法上の原則の妥当性を認める場合には少なくとも準用規定(8条、42条、72条3項等)を定めていることをも勘案すれば、前記②の見解が妥当であると考えられる(拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【101】も参照)。国税通則法5条以下の前記各規定が同法制定前の国税徴収法の前記各規定を引き継いだものであり、これに関する前記の解説が基本的には前記②と同様の見解を述べていたという経緯に照らしても、前記②の見解の方が妥当であろう。 これに付言すると、前記②の見解は、①の見解と同じく国税通則法5条以下の前記各規定を私法上の包括承継原則の確認規定と解しつつ、他方で、同原則の妥当範囲を前記各規定に限定するという意味では、創設規定と解するものといえる。 なお、前記①の見解の中で述べられている被合併法人の欠損金の合併法人への承継の可否については、最判昭和43年5月2日民集22巻5号1067頁は次のとおり判示して(下線筆者)これを否定したが、これは、被合併法人の欠損金が私法上の包括承継の対象となり得ないことを前提とする点で、前記①の見解とは前提を異にする判断であると解される。   3 国税の「納税義務」の承継と「納付義務」の承継 次に、国税通則法5条以下の前記各規定は、上記2で述べた意味(限定列挙規定)とは異なる意味においても、創設規定であると解される。それは、租税実体法上の(成立した)納税義務の承継だけでなく、これの確定及び履行に係る租税手続法上の義務ないし地位の承継をも認めるという意味においてである。 前記②-1の見解は、納税義務の承継の効果として、次のとおり、承継人は承継した納税義務者としての地位に基づき「当然」租税手続法上の義務ないし地位を承継すると説いている(清永・前掲書204頁。下線筆者。金子・前掲書890頁も参照)。 この説明によれば、国税通則法5条以下の前記各規定は、租税実体法上の(成立した)納税義務の承継についてだけでなく、これの確定及び履行に係る租税手続法上の義務ないし地位の承継についても、確認規定であるということになりそうであるが、ただ、税制調査会『国税通則法の制定に関する答申(税制調査会第二次答申)』(昭和36年7月)12-13頁は「申告義務の承継等」と題して「相続開始又は法人合併の場合における納税義務の承継について現在国税徴収法等に規定があるが、申告義務の承継について明らかにされていないので、これらを統一的に明らかに規定するものとする。」(下線筆者)と述べたことについて、同『国税通則法の制定に関する答申の説明(答申別冊)』(同)65頁は次のとおり説明している(下線筆者)。 上記の答申及びその説明によれば、「納税義務の承継」と「申告義務の承継」とは別建てで捉えられており、したがって、前者が「当然」後者に連動・帰結するとは考えられていなかったように思われる。そうすると、国税通則法5条以下の前記各規定は、租税実体法上の(成立した)納税義務の承継については確認規定であるとしても、これの確定及び履行に係る租税手続法上の義務ないし地位の承継についてまで確認規定であると解することはできないということになりそうであるが、この点についてはどのように考えればよいのであろうか。 この点について検討するに当たっては、国税通則法5条以下の前記各規定の条文見出しに「国税の納付義務」という文言が用いられていることが重要な意味をもつように思われる。それらの規定の法文では「国税を納める義務」という文言が用いられているが、これは、「(相続人の承継する)国税を納付する責め」(税通5条1項後段、同条3項)とは区別して用いられている。後者は一般に「納付責任」と呼ばれるが、これは、民法の限定承認(922条以下)の趣旨を尊重して定められた「一種の物的有限責任」(志場喜徳郎ほか共編『国税通則法精解〔令和4年改訂・17版〕』(大蔵財務協会・2022年)183頁)であれ、「もともと被相続人の全財産を引当てとし、そのいずれに対しても滞納処分をすることができたのに,相続の開始によってこの引当財産が切り離され、資力のない相続人に相続されたために被相続人の国税の徴収が困難になることを防止しようとするもの」(同175頁)であれ、いずれにせよ租税手続法上の責任である(前掲拙著【103】参照)。 すなわち、国税通則法5条以下の前記各規定が法文で用いている「国税を納める義務」を条文見出しでは「国税の納付義務」と表記したのは、これに申告義務を始めとする租税手続法上の義務ないし地位を含めるためであると解することができるように思われる。国税通則法15条1項は、納税義務の成立という租税実体法上の事項について法文では「国税を納付する義務」という文言を用いながらその略称を「納税義務」とする旨を定めていることをも併せ考慮すると、国税通則法は、「国税を納める義務」ないし「国税を納付する義務」について租税実体法の場面では「納税義務」、租税手続法の場面では「納付義務」として文言の使い分けをしていると解される。 そうすると、国税通則法5条以下の前記各規定は、租税実体法上の(成立した)納税義務の承継については確認規定であるが、同時に、これが「当然」租税手続法上の義務ないし地位の承継に連動・帰結することを創設的に定める規定でもあると解される。つまり、それらの規定は、「国税を納める義務」について「納税義務」ではなく「納付義務」という文言を用いてその承継を定めることによって、㋐被承継人に「課されるべき」国税すなわち納税義務が成立しているがまだ確定されていない国税に係る納税義務の承継について私法上の包括承継原則を確認的に定めるとともに、㋑その国税及び被承継人が「納付し、若しくは徴収されるべき」国税の納税義務・徴収義務に係る租税手続法上の義務ないし地位を「当然」承継することを創設的に定める規定でもあると解されるのである。ここでいう「当然」は、特別な明文の規定なしに一般的に、という意味である。 もっとも、現行法上も、納税義務の承継を前提にして、申告義務を始めとする租税手続法上の義務ないし地位の承継が個別的に定められることがある(所税124条、125条、129条、141条、152条、相税27条2項、28条2項、29条2項、消税45条2項・3項、59条、酒税48条、印税19条等参照)。それらの規定は国税通則法5条以下の前記各規定に優先して適用されるが(税通4条)、そのような個別規定が定められていない例えば法人の合併の場合の法人税については、同法6条の規定により、租税手続法上の義務ないし地位の承継が認められることになる。   4 まとめ 今回は、国税通則法5条以下の前記各規定が私法上の包括承継原則の確認規定であることを承認した上で、そのことは、それらの規定が例示列挙規定であること(国税通則法が同原則の妥当性をそれらの規定の範囲外でも認めること)や租税実体法上の(成立した)納税義務の承継だけでなくこれの確定及び履行に係る租税手続法上の義務ないし地位の承継をも認めることまで意味するものではないということを明らかにした。 それらの規定は、私法上の包括承継原則の、税法における妥当性を確認的に規定するとともに、その妥当範囲をそれらの規定する場合に限定するという意味で創設規定であり、かつ、承継人が同原則に基づき租税実体法上の(成立した)納税義務を承継することを確認的に規定するとともに、承継人が承継した納税義務者としての地位に基づき「当然」租税手続法上の義務ないし地位を承継することを創設的に規定するものでもある、と考えるところである。 (了)

#No. 486(掲載号)
#谷口 勢津夫
2022/09/15

〔令和4年度税制改正における〕賃上げ促進税制の抜本的見直しについて 【第1回】

〔令和4年度税制改正における〕 賃上げ促進税制の抜本的見直しについて 【第1回】   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   1 はじめに 令和4年度の税制改正によって、従来の「人材確保等促進税制」が「賃上げ促進税制」に抜本改正された。また、従来の「中小企業向け所得拡大促進税制」についても、この「賃上げ促進税制」に統合される形で整理されている。 新たに適用される「賃上げ促進税制」は、令和2年度まで適用されていた「賃上げ・投資促進税制」と制度設計は類似しているものの、適用要件や上乗せ控除のための要件の見直しが行われているほか、給与等支給額については「人材確保等促進税制」の取扱いを踏襲したものになっている点などを鑑みれば、似て非なる新たな制度として認識する必要があろう。 そこで本稿では、令和4年度の税制改正で抜本的に見直された「賃上げ促進税制」について、改正前の税制との変更点に着目しつつ、制度の概要について説明する。 なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であり、所属するいかなる団体・企業等の公式見解を表明したものではないのであらかじめ申し添える。   2 令和4年度税制改正の内容 令和3年10月15日、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとした新しい資本主義を実現するため、内閣に「新しい資本主義実現本部」が設置されることとなった(閣議決定)。この新しい資本主義実現本部の下で、新しい資本主義の実現に向けたビジョンを示し、その具体化を進めるため、「新しい資本主義検討会議」を開催して検討することとされた(※1)。 (※1) 「緊急提言」を含めた会議資料等は、内閣官房ホームページにおいてすべて公開されている。 令和3年11月8日、新しい資本主義検討会議より「緊急提言」が示された。この中では、 などと述べられている。 こうした中で、成長と分配の好循環を早期に起動させ、分配政策として持続的かつ積極的に賃上げを進める観点から、本税制について抜本的に強化することとされた(※2)。 (※2) 財務省「令和4年度 税制改正の解説」423頁「2 改正の趣旨」参照。 大企業向けの措置については、従来の「人材確保等促進税制」を改組し、一人一人の積極的な賃上げを促す観点から、継続雇用者に対する給与等支給額の増加(改正前:新規雇用者給与等支給額の増加)が要件とされた(措法42の12の5①)。また、一定規模以上の法人については、株主だけでなく従業員、取引先などの多様なステークホルダーへの還元を促進する観点から、持続的な賃上げなどマルチステークホルダーに配慮した経営への取組を宣言することも適用要件に追加された。なお、教育訓練費の額の増加による上乗せ控除の措置は引き続き講ずることとされた。 また、中小企業者等向けの措置については、適用要件に変更はないものの、一人一人の賃上げに加え、雇用を拡大することによる給与等の支給額の増加に対するインセンティブとしても機能するよう、税額控除割合の上乗せ措置が拡充された(措法42の12の5②)。   3 適用要件 改正後の「賃上げ促進税制」の適用要件は下表のとおりである(措法42の12の5①②)。 (1) 賃上げの要件 大企業向けの制度では、ふたたび「継続雇用者給与等支給額」の増加が適用要件とされることになったが、令和2年度までの「賃上げ・投資促進税制」における「継続雇用者給与等支給額」とは異なり、「雇用安定助成金額」についての調整が必要とされているので留意する必要がある。 「賃上げ・投資促進税制」の時代から、給与等支給額の算定上、その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額については控除することとされていたが、令和3年度の税制改正以降、適用要件を判定するために用いる給与等支給額の算定上、「他の者から支払を受ける金額」のうち「雇用安定助成金額」については控除しないこととされた。これがそのまま「賃上げ促進税制」でも踏襲されているということである。 さらに、一定規模以上の法人については、賃上げの方針や下請け事業者その他の取引先との適切な関係の構築の方針などを含めた「マルチステークホルダー方針」を公表することが要件として追加されている(詳細は次回解説する)。 これに対して中小企業者等向けの制度では、継続雇用者ではなく「雇用者給与等支給額」の増加が適用要件とされているが、これは令和3年度の所得拡大促進税制の取扱いから変更されていない。 (【第2回】に続く)

#No. 486(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2022/09/15

令和4年度税制改正における『グループ通算制度』改正事項の解説 【第7回】

令和4年度税制改正における 『グループ通算制度』改正事項の解説 【第7回】   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   (7) 通算内適格合併又は連結内適格合併をした場合の取扱い 資産調整勘定等対応金額(100%分)は、離脱法人を合併法人とする通算内適格合併に係る被合併法人調整勘定対応金額がある場合には、その被合併法人調整勘定対応金額を加算した金額とする。 ここで、通算内適格合併とは、その通算終了事由が生じた時前に行われた適格合併のうち、その適格合併の直前の時において通算親法人との間に通算完全支配関係がある法人を被合併法人及び合併法人とするもの並びに通算親法人との間に通算完全支配関係がある法人のみを被合併法人とする合併で法人を設立するものをいう。 また、被合併法人調整勘定対応金額とは、通算内適格合併に係る被合併法人の株式について、加算措置の適用を受けた場合におけるその適用に係る資産調整勘定等対応金額に相当する金額をいう。 つまり、離脱法人(合併法人)が他の通算子法人(被合併法人)を適格合併した場合に、当該他の通算子法人(被合併法人)では通算終了事由が生じ、当該他の通算子法人の株式について投資簿価修正が行われるが、その時に当該他の通算子法人の株式について加算措置が適用されている場合、その加算された被合併法人の株式に係る資産調整勘定等対応金額について、合併法人である離脱法人が加算措置を適用する場合に引き継ぐ(その離脱法人の株式に係る資産調整勘定等対応金額に加算する)こととなる。 〈図表15〉 通算内適格合併をした場合の取扱い ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 また、連結納税制度からグループ通算制度に移行した通算子法人(移行通算子法人)が連結納税制度の適用期間中に自社を合併法人とした連結内適格合併(令和4年4月1日以後最初に開始する事業年度開始の日以前に行われた連結法人間の適格合併)を行っていた場合は、その連結内適格合併を通算内適格合併とみなして、被合併法人である連結子法人の被合併法人調整勘定対応金額を計算し、その離脱法人の株式に係る資産調整勘定等対応金額に加算することとなる。 この場合、連結親法人であった通算親法人が、令和4年4月1日以後最初に開始する事業年度終了の日までに、この適用を受ける旨その他一定の事項を記載した書類を納税地の所轄税務署長に提出する必要がある(この届出により被合併法人である連結子法人の株式について、連結終了事由が生じた時に加算措置が適用されたものとみなされることとなる)。 また、この適用を受ける場合には、通常の保存書類のほか、そのみなされる被合併法人調整勘定対応金額の計算の基礎となる事項に関する通常の保存書類に準ずる書類を保存しておくことが必要となる。 〈図表16〉 連結内適格合併をした場合の取扱い ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ここで、被合併法人調整勘定対応金額を引き継ぐこととなる通算内適格合併(連結内適格合併)は、その適格合併の直前の時において通算親法人との間に通算完全支配関係がある法人(連結親法人との間に連結完全支配関係がある法人)間の適格合併となるため、グループ通算制度の開始前又は加入前(連結納税制度の開始前又は加入前)の完全支配関係法人間の適格合併の場合、その適格合併に係る被合併法人調整勘定対応金額が合併法人に引き継がれない。 そのため、例えば、単体納税制度の適用期間中に100%設立子法人(A社)と100%買収子法人(B社)が適格合併をした場合、A社(100%出資)とB社(100%買収)のいずれを合併法人としたかによって、資産調整勘定等対応金額が生じるかどうかが変わってくる。まず、A社を合併法人、B社を被合併法人とした場合、出資は対象外株式となるため、A社では資産調整勘定対応金額等は計算されず、また、単体納税制度の適用期間中の合併であるため、B社の被合併法人調整勘定対応金額はA社に引き継がれない。一方、A社を被合併法人、B社を合併法人とした場合、単体納税制度の適用期間中の合併であるため、A社の被合併法人調整勘定対応金額はB社に引き継がれないが、B社の100%買収による対象株式の取得時の資産調整勘定対応金額等は生じることとなる。 〈図表17〉 単体納税制度の適用期間中に完全支配関係法人間で適格合併をした場合の取扱い(100%出資子法人を合併法人とした場合) ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 〈図表18〉 単体納税制度の適用期間中に完全支配関係法人間で適格合併をした場合の取扱い(100%出資子法人を被合併法人とした場合) ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   (続く)

#No. 486(掲載号)
#足立 好幸
2022/09/15

〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第42回】「会社の解散に伴う役員退職給与の支給」

〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第42回】 「会社の解散に伴う役員退職給与の支給」   税理士 中尾 隼大   ○●○● 解 説 ●○●○ (1) 分掌変更による役員退職給与の支給 法人税法における所得計算において、完全な退職ではない場合に支給した役員退職給与においても、一定の場合には損金算入が認められる。その詳細は【第2回】で詳述した通りであり、役員の分掌変更等を理由に、その役員に対し退職給与を支給した場合には、その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められるのであれば、これを退職給与として取り扱うことができる。その具体例として、法人税基本通達では、取締役から監査役になった場合、一定の要件を充足する限りは退職給与と取り扱うことができる旨が示されている(法基通9-2-32(2))。 ここで、会社が解散する際、これまで取締役であった者が取締役を退任し、新たに清算人に就いたことで役員退職給与を支給した場合において、上記【質問】の通りいずれも法人税法上の「役員」であることに変わりなく(法法2十五)、かつ上記通達にも損金算入の可否は明記されていないため、退職給与の取扱いについて判断に迷うケースもあるかもしれない。   (2) 清算人に係る退職給与の取扱い ここで、所得税の領域を確認すると、所得税基本通達において引き続き勤務する役員又は使用人に対し退職手当等とされるものについて、以下のように例示されている。 したがって、会社が解散し、取締役が清算人となった場合において支払われる退職給与は、所得税法上において退職所得として取り扱われることとなる。 これに対して、法人税法における所得計算に対しては、上記(1)の通り、分掌変更による支給に該当することで損金算入が可能となるが、その判断は、役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的な退職と判断できるか否かの実態判断となると思われる。 ここで、国税庁による質疑応答事例「解散後引き続き役員として清算事務に従事する者に支給する退職給与」では、法人が解散した場合において、引き続き清算人として清算事務に従事する旧役員に対しその解散前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与については、法人税法上退職給与として取り扱われる旨が示されている。 当該質疑応答事例は、回答要旨の理由に所得税基本通達との整合性を挙げている他、会社の解散後においては、当該会社が従来の営業行為を全て停止して債権債務の整理等に入ることから職務内容の激変に該当するため、分掌変更の論点に沿うものであることを鑑みた見解であると考えられる。 なお、仮に解散決議後に清算人が引き続き営業行為を行った場合、会社法上「清算人が清算の目的の範囲外の行為をしたときは、効果は会社に帰属しない」のに対し(※)、法人税法上の通則には実質所得者課税の原則が存在するため(法法11条)、税務上、清算中の会社に売上等が帰属すると判断される可能性も完全に否定はできないと思われる。 (※) 江頭憲治郎『株式会社法 第8版』(有斐閣、2021)1048頁。 したがって、少なくとも、解散決議に伴い取締役を退任した際に役員退職給与を支給した会社が、清算中に営業行為を行った場合には、損金算入の是非について疑いの余地があるだろう。   (3) 清算人について言及された裁判例 実際に取締役から清算人となることについて裁判所が言及した事例として、長崎地裁平成21年3月10日判決(税務訴訟資料259号順号11153、TAINS:Z259-11153)がある。 この事例は、取締役を退任し、監査役に就任した者に対して支給した役員退職給与について、退任時の役員報酬額と監査役報酬が同額であったことから、役員退職給与の損金算入の可否について争われた事例であり、納税者の主張が認められた事例である。その中で、裁判所は、課税庁が「会社が解散して取締役が清算人に就任した場合、清算人も役員であるが、その退職金は退職所得に該当するとして取り扱っており・・・、法人の役員である間は、原則として退職給与(退職所得)とならないとの被告(筆者注:国、すなわち課税庁)の立場に一貫性があるか疑問がある」とし、課税庁の主張を退けている。 これを見ると、上記国税庁質疑応答事例と同様、裁判所も所得税法上と法人税法上の取扱いに差異が生じることを適正ではないと判断していると思われる。 これらを総合すると、支給額が過大とされない限り、本件は原則として損金算入が認められると考えられる。しかし、上記の通り、解散の本旨に沿うことは最低限の前提となるだろう。   (4) 税額計算ロジックへの留意 一般的に中小企業は所有と経営が一致するため、取締役を退任して清算人に就いた役員は、株主でもあるケースが多い。この場合において、役員退職給与と清算結了に伴うみなし配当課税双方の税額計算ロジックにも留意したい。なお、この論点は、【第38回】で触れたM&Aにおける役員退職給与と株式譲渡に係る所得税の税率差への留意点と類似する論点である。 すなわち、役員退職給与とみなし配当課税はいずれも累進課税の対象となるものであるが、役員退職給与を含む退職所得は退職所得控除があり、かつ1/2を乗じた上で課税退職所得を算定するという計算ロジックとなっている。加えて、会社の解散決議から清算結了までには時間を要することもあり、役員退職給与の支給と清算結了の帰属年度がずれることもあるため、役員退職給与の支給と株主に帰属するみなし配当を検討するにあたっては、帰属年度や双方の税額計算ロジックの相違に留意したいところである。   (了)

#No. 486(掲載号)
#中尾 隼大
2022/09/15

基礎から身につく組織再編税制 【第44回】「現物分配の概要」

基礎から身につく組織再編税制 【第44回】 「現物分配の概要」   太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太   今回は、現物分配の概要について解説します。   1 現物分配の概要 現物分配とは、法人がその株主に剰余金の配当や自己株式取得に伴うみなし配当など一定の事由(下記3参照)により、金銭以外の資産の交付をすることをいいます(法法2十二の五の二)。 平成22年度税制改正前は、金銭以外の資産を子法人から親法人へ配当した場合、子法人において譲渡損益を認識していましたが、改正後は、一定の現物分配については、譲渡損益が繰り延べられることとされました。 (注1) 「現物分配法人」とは、現物分配によりその有する資産の移転を行った法人をいいます(法法2十二の五の二)。 (注2) 「被現物分配法人」とは、現物分配により現物分配法人から資産の移転を受けた法人をいいます(法法2十二の五の三)。   2 現物分配の課税関係 現物分配に係る課税関係を非適格・適格ごとに表にまとめると、次のようになります。 なお、今回は現物分配の課税関係のイメージをつかんでいただくことを目的としているため、現時点で下記の表をすべて理解する必要はありません。 現物分配法人、被現物分配法人の課税上の取扱いの詳細については、次回以降で説明していきます。   3 現物分配の事由 現物分配とは、法人がその株主等に対し、次に掲げる事由により、金銭以外の資産の交付をすることをいいます(法法2十二の五の二)。   ◆現物分配の概要のポイント◆ 現物分配は、現物分配法人から被現物分配法人へ資産が原則として時価で譲渡されたものとして取り扱います。 現物分配があった場合には、現物分配法人は移転資産の譲渡損益を原則として認識します。 特例として適格現物分配の場合には、現物分配法人は移転資産を簿価で移転したものとみなし、課税されません。   (了)

#No. 486(掲載号)
#川瀬 裕太
2022/09/15

相続税の実務問答 【第75回】「相続時精算課税適用者が特定贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けていた場合の相続税の課税価格」

相続税の実務問答 【第75回】 「相続時精算課税適用者が特定贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けていた場合の相続税の課税価格」   税理士 梶野 研二   [答] 相続時精算課税適用者が、相続時精算課税に係る特定贈与者の相続開始により財産を取得した場合には、その特定贈与者から贈与を受けた財産の価額を相続税の課税価格に加算しなければなりません。 しかしながら、その贈与を受けた財産が住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例規定を適用することにより贈与税の非課税財産とされたものであるときには、その非課税財産とされた金額は、相続税の課税価格に加算する必要はありません。 ご質問の場合、令和3年中にお父様から贈与を受けた3,200万円のうち、この非課税の特例規定を適用した1,500万円を控除した残額(1,700万円)だけが相続税の課税価格に加算されます。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例 【第74回】「住宅取得等資金の贈与を受けていた場合の相続開始前3年以内の贈与加算」で説明しましたように、平成27年1月1日から令和3年12月31日までの間、又は令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属から贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築若しくは取得又は増改築等(以下「新築等」といいます)の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、一定の金額について贈与税の非課税財産として、贈与税は課されないこととなっています(令和4年法律第4号による改正前の租税特別措置法(以下「改正前租税特別措置法」といいます)70の2、措法70の2)。この特例を「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例」といいます。   2 特定贈与者に相続が開始した場合の相続時精算課税の適用を受けた贈与財産について (1) 相続等により財産を取得した相続時精算課税適用者 被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した相続時精算課税適用者は、その被相続人からの贈与財産で、相続時精算課税制度の適用を受けたものについては、その財産の贈与の時における価額を相続税の課税価格に加算しなければなりません(相法21の15①)。 (2) 相続等により財産を取得しなかった相続時精算課税適用者 被相続人から相続又は遺贈により財産を取得しなかった相続時精算課税適用者は、その被相続人からの贈与財産で、相続時精算課税制度の適用を受けたものについては、その被相続人から相続(その相続時精算課税適用者が特定贈与者である被相続人の相続人以外の者である場合には遺贈)により取得したものとみなされます(相法21の16①)。その場合、相続税の課税価格に算入される財産の価額は、その贈与の時における価額となります(相法21の16③)。 (3) 贈与を受けた財産が住宅取得等資金である場合 住宅取得等資金の贈与を受け、この住宅取得等資金について住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例を適用した場合には、改正前租税特別措置法第70条の2第3項又は租税特別措置法第70条の2第3項の規定により相続税法第21条の15第1項の規定が読み替えられ、「贈与により取得した財産の価額」とは、同法第21条の2第1項から第3項まで、第21条の3及び第21条の4の規定並びに(改正前)租税特別措置法第70条の2の規定により当該取得の日の属する年分の贈与税の課税価格の計算の基礎に算入されるものの価額をいうこととされていますので(改正前措法70の2③、措法70の2③)、住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例を適用することにより非課税とされた金額は、その贈与が特定贈与者からの贈与であっても、相続税の課税価格に加算する必要はないこととなります。 また、相続税法第21条の16第1項の規定により、相続又は遺贈により取得したものとみなされる贈与財産は、相続時精算課税制度の適用を受けたものとされていますが、(改正前)租税特別措置法第70条の2第1項の規定により贈与税の課税価格に算入されない金額は、相続時精算課税制度の適用を受けていませんので、相続又は遺贈により取得したものとはみなされません。 〈参考〉 改正前租税特別措置法第70条の2創設時の説明 (※) 『平成21年版改正税法のすべて』(大蔵財務協会、2009年)561頁。 このように、相続時精算課税適用者が特定贈与者の死亡に伴い同人から相続又は遺贈により財産を取得したかどうかにかかわらず、住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例を適用することにより贈与税の課税対象とされなかった部分については、特定贈与者の死亡に伴う相続税の計算には影響しません。   3 ご質問の場合 あなたは、特定贈与者であるお父様から不動産を相続しましたので、お父様から贈与により取得した財産の贈与の時における価額は相続税の課税価格に加算しなければなりません。あなたは、特定贈与者であるお父様から、相続時精算課税の選択をした令和3年に3,200万円の贈与を受けていますが、このうち1,500万円については、改正前租税特別措置法第70条の2第1項に規定する住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例を適用しており、贈与税の課税価格の計算の基礎に算入されていません。 したがって、相続税の課税価格に加算しなければならない金額は、令和3年中にお父様から贈与を受けた3,200万円のうち、この非課税の特例規定を適用した1,500万円を控除した残額の1,700万円だけということになります。 なお、あなたの令和3年分の贈与税の申告においては、相続時精算課税に係る贈与税の特別控除額1,700万円の控除をしていることから、控除後の贈与税の課税価格はありませんが、相続税の課税価格に加算する金額は、この特別控除額を控除する前の金額となります。 (了)

#No. 486(掲載号)
#梶野 研二
2022/09/15

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第51回】「賃貸併用住宅(一部空室あり)に係る配偶者居住権がある場合の小規模宅地等の特例の適用」

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第51回】 「賃貸併用住宅(一部空室あり)に係る配偶者居住権がある場合の小規模宅地等の特例の適用」   税理士 柴田 健次   [Q] 被相続人である甲は令和4年9月6日に相続が発生し、甲が所有していた下記の土地建物について、配偶者乙が配偶者居住権を取得し、土地建物の所有権を長男丙が取得しました。相続開始の直前において、乙及び丙は2階で甲と同居しており、小規模宅地等に係る特定居住用宅地等の特例対象者です。なお、1階部分については、被相続人が貸付事業を営んでおり、相続後は、その貸付事業を丙が承継していますので、丙は小規模宅地等に係る貸付事業用宅地等の特例対象者となります。 (※) 配偶者居住権の存続年数に応じた複利現価率 相続開始前後における1階の賃貸状況は、下記のとおりとなります。4部屋の各階の床面積は同じとなります。 101号室については借家権控除の対象とし、102号室及び103号室については借家権控除の対象にならないものとして評価します。 小規模宅地等の特例の選択にあたっては、減額金額が最大になるように選択した場合には乙及び丙の特例の適用面積はそれぞれ何㎡になりますか。 [A] 減額金額が最大になる選択特例対象宅地等の面積は、次のとおりとなります。 ◆ ◆ ◆[解説]◆ ◆ ◆ 1 配偶者居住権等が及ぶ範囲 配偶者居住権が設定された場合には、居住建物の全部について無償で使用及び収益をする権利を取得することになります(民法1028)。ただし、居住建物の一部が賃貸用である場合には、賃借人に権利を主張することはできないため、配偶者居住権及び敷地利用権の評価額の計算の基礎となる金額から「賃貸の用に供されている部分」を除くこととされています(相法23の2①一かっこ書・③かっこ書、相令5の7)。 本問の場合には、敷地利用権の価額の計算過程(90,000,000円×(200㎡-60㎡)/200㎡=63,000,000円)において、60㎡(120㎡/4×2部屋)部分は「賃貸の用に供されている部分」として、敷地利用権の評価額の計算基礎となる金額から除外されています。 なお、貸家及び貸家建付地の評価をする場合において、いわゆる「一時的な空室」の部分を財産評価基本通達 26(2)の「賃貸されている各独立部分」に含むこととしたときは、当該各独立部分を配偶者居住権等の評価をする場合の「賃貸の用に供されている部分」 に含める必要があります(相基通 23の2-1)。 上記の通達の取扱いは、民法上は101号室については、相続開始時点において空室となりますので、配偶者居住権の設定対象となりますが、税務上は、財産評価で借家権控除の対象としたことによる整合性を考慮し、借家権控除の対象としたものは、「賃貸の用に供されている部分」と考え、配偶者居住権及び敷地利用権はないものとして評価することを明確にしたものとなります。仮に101号室について借家権控除の対象としない場合には、配偶者居住権及び敷地利用権があるものとして評価を行うことになりますが、実務上は、借家権控除の対象とした方が評価額が低くなることもあり、通常は、継続賃貸している場合で一定の条件を満たす場合には、借家権控除の対象になるものとして評価をします。 借家権控除の適否については、本連載【第43回】で解説していますが、103号室については、空室期間が長いため、通常、借家権控除の対象とすることはできません。 したがって、101号室及び104号室については、「賃貸の用に供されている部分」として、配偶者居住権は及ばないものとして取り扱います。これに対して、102号室及び103号室については、「賃貸の用に供されている部分」以外に該当し、配偶者居住権及び敷地利用権があるものとして評価を行います。 配偶者居住権の及ぶ範囲を図にまとめると下記のとおりとなります。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   2 小規模宅地等の特例の適用範囲について (1) 2階部分の特定居住用宅地等の特例について 本問の場合には、乙も丙も特定居住用宅地等の特例対象者となりますので、乙が取得した2階部分に係る敷地利用権、丙が取得した2階部分に係る敷地所有権が特例の対象になります。 (2) 1階部分の貸付事業用宅地等の特例について 賃料の帰属は、建物所有者に帰属することになりますので、丙が家賃を受領することになります。乙は不動産賃貸事業を承継していませんので、貸付事業用宅地等の特例の対象にはなりません。丙が取得した1階部分のうち貸付事業を継続している部分が特例の対象になります。 アパート等の空室がある場合の貸付事業用宅地等の特例の適否については、本連載【第43回】で解説していますが、貸付事業用宅地等の特例は、空室期間がある程度長い場合であったとしても、その期間の間、募集もしており、かつ、いつでも入居可能な状態であれば、貸付事業を継続していることになると考えられます。 したがって、103号室の敷地所有権については、借家権控除の対象になっていませんが、貸付事業を継続していますので、貸付事業用宅地等の特例の対象になります。 〔借家権控除、貸付事業用宅地等の特例のまとめ〕 (※) 借家権控除の対象となる101号室及び104号室については、配偶者居住権がないものとして評価を行いますので、丙が通常の所有権を取得することになります。   3 利用区分ごとの相続税評価額の算定と面積の計算 本問の場合には、居住用と貸付事業用の利用区分についてそれぞれ敷地利用権と敷地所有権を考える必要があります。計算手順としてステップ❶で居住用と貸付事業用に区分して計算し、ステップ❷で敷地利用権と敷地所有権に区分して計算することになります。 ステップ❶ 土地の相続税評価額について2階部分と1階部分の各部屋で区分して評価します。 1階部分については、必ずしも部屋ごとに相続税評価額を算定する必要はありませんが、配偶者居住権の対象の有無(借家権控除の対象にしないものと対象としたもの)に区分する必要があります。また、自用地評価で貸付事業用宅地等の特例の対象になるもの(103号室)については、優先的に貸付事業用宅地等の特例を適用するために区分して考える必要があります。 ステップ❷ 1階部分と2階部分の敷地利用権と敷地所有権の相続税評価額を算出します。その後、敷地利用権及び敷地所有権のそれぞれの土地の面積を算出することになります。 (1) 敷地利用権の相続税評価額 配偶者居住権の対象となる建物の床面積は、2階部分80㎡と1階部分のうち102号室及び103号室の2部屋部分の床面積60㎡(120㎡/4×2部屋)の140㎡となります。したがって、2階部分、102号室及び103号室の敷地利用権の価額は、下記のとおり計算することができます。 (2) 敷地所有権の相続税評価額 (※) 配偶者居住権の存続年数に応じた複利現価率を0.4としていますので、敷地利用権と敷地所有権の価額比は6:4となります(相法23の2)。 (3) 敷地利用権及び敷地所有権の面積 〔敷地利用権の面積〕 〔敷地所有権の面積〕   4 本問の場合の特例対象宅地等 特例対象宅地等を整理すると下記のとおりとなります。   5 本問の場合の選択特例対象宅地等の面積 減額金額が最大限になるように適用した場合の適用順位は、下記のとおりとなります。 〔特定居住用宅地等の選択特例対象宅地等の面積〕 特定居住用宅地等の限度面積は、330㎡となりますので、乙が取得した土地面積115.2㎡、丙が取得した土地面積76.8㎡を選択することになります。特定居住用宅地等の面積は、合計で192㎡(115.2㎡+76.8㎡)となります。 〔貸付事業用宅地等の選択特例対象宅地等の面積〕 特定居住用宅地等の特例を併用する場合の貸付事業用宅地等の限度面積は下記のとおり計算します。限度面積の計算については、連載【第6回】で解説しています。 103号室の自用地評価の敷地所有権部分28.8㎡を優先適用し、貸家建付地部分は差額54.83636363㎡(83.63636363㎡-28.8㎡)を選択することになります。   ★実務上のポイント★ 賃貸している場合には、財産評価との整合性の観点から配偶者居住権の及ぶ範囲を正確に理解しておく必要があります。借家権控除の適否、貸付事業用宅地等の特例の適否については、部屋ごとに検討をする必要があります。   (了)

#No. 486(掲載号)
#柴田 健次
2022/09/15

マスクと管理会計~コロナ長期化で常識は変わるか?~ 【第8回】「不確実な将来にどう向き合う?」

マスクと管理会計 ~コロナ長期化で常識は変わるか?~ 【第8回】 「不確実な将来にどう向き合う?」   公認会計士 石王丸 香菜子   〔登場人物〕 【プロジェクトの正味現在価値(割引率10%として計算)】 〈市場の反応が良くたくさん売れる場合〉 〈市場の反応が悪くほとんど売れない場合〉 ●  ●  ● 新しく事業を始める方法として、「リーン・スタートアップ」という考え方があります。必要最低限の投資を行い小さくスタートして、最低限の製品やサービス、最低限の機能だけを持った試作品などを短期間で作り、顧客の反応を観察・分析して、製品・サービスの改良や軌道修正を繰り返していく方法です。仮に事業の成功が見込めずに撤退する場合でも、損失やかける時間を小さくとどめることができます。 例えば、現在は多くの人が利用する「Instagram」は、位置情報アプリとしてスタートしたことで知られています。スタート当初はまったく人気が出なかったものの、利用者がアプリの写真共有機能を使っていることに着目して、写真に特化した「Instagram」へと改良され、飛躍的に成長しました。 リーン・スタートアップは10年以上前に提唱された手法ですが、損失が生じるリスクを最小限におさえつつ機動的に事業を始めるスタイルは、現在の不確実な企業環境においても活用できるシーンがあると考えられます。 ●  ●  ● ●  ●  ● 正味現在価値法や内部収益率法といった伝統的な割引キャッシュ・フロー法は、「“現時点”で投資を実行するかしないか」を考える方法で、それ以外の選択肢を考慮していません。しかし、実際の企業経営においては、市場動向などを考慮し、時の経過とともに柔軟に判断を切り替え、不確実性に対応していくことも多いはずです。 例えば、「投資の判断をいったん先延ばしにする」、「最初は一部分のみ投資し、うまくいったら段階的に投資を拡大する」、「事業環境が悪化した場合に撤退しやすい方策を事前に用意しておく」といった柔軟な経営判断をすべきシーンもあると考えられます。 割引キャッシュ・フロー法の欠点を補い、不確実性の高い投資について価値評価や意思決定を行う際に役立つ考え方として、「リアル・オプション」があります(企業経営とメンタルアカウンティング~管理会計で紐解く“ココロの会計”~【第16回】参照)。 金融商品のオプションは、将来の一時点(あるいは一定期間)に、ある資産について、一定のレートや価格で取引する権利です。オプションの買い手(オプションを持っている側)は、将来の一時点(あるいは一定期間)になった段階で、自分にとって有利な場合にはオプションを実行し、不利な場合にはオプションを実行しないことを選択することができます。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 この考え方を、ビジネス上の投資やプロジェクトなどの価値評価に応用したものがリアル・オプションです。リアル・オプションの考え方を利用すると、現時点では不確実なことが将来になって確実になったとき(不確実性が下がったとき)に、自社にとって有利なように意思決定をすることができます。 いったん実行してしまうと撤回することができない投資で、将来の不確実性が高い状況にあり、意思決定のタイミングに柔軟性を持たせることができる場合には、リアル・オプションの考え方が有効です。先述のリーン・スタートアップも、リアル・オプションに類似の考え方といえます。 ●  ●  ● ●  ●  ● リアル・オプションの価値を計算するには様々な手法があり、これらについての詳細は割愛しますが、企業経営においては、精緻なリアル・オプション価値は算定しないとしても、リアル・オプション的な思考で、不確実な環境を逆手にとって柔軟に対処すると良い場合があります。判断をあえて先に延ばし、損失を限定しつつ利益のチャンスを逃さないような柔軟な仕組みを自ら作り出すという発想は、役立つ局面があると考えられます。 ・・・後日・・・ ●  ●  ● 『幸運は用意された心のみに宿る』という言葉があります。不確実で先の読めない時代だからこそ、リスクを抑えつつ、将来に利益獲得のチャンスが訪れた時にはそれを逃さないような仕組みを用意しておきたいですね。 (了)

#No. 486(掲載号)
#石王丸 香菜子
2022/09/15
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