検索結果

詳細検索絞り込み

ジャンル

公開日

  • #
  • #

筆者

並び順

検索範囲

検索結果の表示

検索結果 10908 件 / 2631 ~ 2640 件目を表示

給与計算の質問箱 【第33回】「2022年10月からの給与計算の注意点」

給与計算の質問箱 【第33回】 「2022年10月からの給与計算の注意点」   税理士・特定社会保険労務士 上前 剛   Q 毎年10月頃に最低賃金の引上げが行われるそうですが、2022年10月以降の給与計算に関して何か注意点があればご教示ください。 A 注意点は以下のとおりである。 * * 解 説 * * 1 最低賃金の引上げ 2022年10月1日から東京都の最低賃金は現行の1,041円から1,072円に引き上げられる。その他の道府県の最低賃金の引上げについては、下記のサイトを参考とされたい。 最低賃金の引上げに伴い、従業員の給与額をこれまでの最低賃金額としていた企業については、賃金の改定の対応等が必要となる。   2 雇用保険料率の引上げ 2022年10月から労働者負担・事業主負担の雇用保険料率が変更になる。労働者負担の雇用保険料率は、一般の事業の場合、現行の3/1,000から5/1,000に引き上げられる。なお、賃金締切日が10月1日以降に到来する給与から変更後の雇用保険料率が適用される。 〈具体例〉 (※) 厚生労働省ホームページ「令和4年度雇用保険料率のご案内」より抜粋。   3 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大 2022年10月からパート・アルバイト等の短時間労働者の健康保険・厚生年金保険の適用が拡大される。 事業所の規模の要件について、被保険者(短時間労働者を除く)の総数が現行の「常時500人超の事業所」から「常時100人超の事業所」に変更になる。 また、短時間労働者の要件について、現行の「雇用期間が1年以上見込まれる」から「雇用期間が2ヶ月を超えて見込まれる」に変更になる。 〈要件早見表〉 (※) 日本年金機構ホームページ「令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」より抜粋。 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大に伴い、2022年10月から新たに被保険者となる従業員がいる場合は「被保険者資格取得届」等の提出など企業として対応が必要となる。 (了)

#No. 486(掲載号)
#上前 剛
2022/09/15

税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第33回】「面積の正確な把握が鑑定評価額を左右する」~なぜ登記簿面積と実測面積の相違が起こるのか~

税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第33回】 「面積の正確な把握が鑑定評価額を左右する」 ~なぜ登記簿面積と実測面積の相違が起こるのか~   不動産鑑定士 黒沢 泰   1 はじめに 土地や建物の評価額は、対象となる物件の経済的な価値という側面と、個々の物件の面積(土地の場合は地積とも呼ばれます。なお、以下、主に土地を対象に述べていきます)を基礎に成り立っています。しかし、ともすれば主な関心は価値的な側面に注がれ、面積はすでに固定して動かないものと受け止められているのではないでしょうか。 しかし、経済的な価値としての単価がいくら適切なものであったとしても、対象となる面積が実態を反映せず信憑性に欠ける場合には、結果として求められた評価額は不適切なものと化してしまいます。その意味で、今回は、普段あまり意識せず評価額の算定基礎として使用している土地面積について、登記簿面積の生い立ちや実測面積との関連を含めてその意義を振り返ってみます。   2 登記簿地積の多くが実測地積と相違する理由 鑑定評価だけでなく、相続税の財産評価や固定資産税の評価にも共通することですが、土地の評価に当たり登記簿地積が評価数量として採用されているケースは日常茶飯事です。しかし、現在法務局(登記所)に備え付けられている登記簿の地積は実測面積と相違することがむしろ多いのが実情です(登記簿地積<実測地積という傾向にあります)。 そして、その基となっている面積は、明治時代に実施された地租改正時に、地租の徴収を受ける国民自らが測量を行って申告し、これを役所が検査の上、土地台帳(土地台帳法という法律に基づくもので、既に廃止されています)に登録したものとされています(そのため、実際の面積よりも過少申告されたケースが多いといわれています)。 このように、土地台帳はもともと地租徴収のための資料という性格をもつことから税務署で保管され、上記の経緯を辿って作成された図面が土地台帳附属地図として一体的に管理されてきました。その後、1950年(昭和25年)の税制改革時に、土地家屋に関する台帳事務が税務署から法務局(登記所)に移管され、しばらくは土地台帳(附属地図も含みます)と土地登記簿(不動産登記法に基づきます)とが併存する形となっていました。 しかし、1960年(昭和35年)に不動産登記法の大幅改正が行われ、その時点で土地台帳や附属地図は法的な拠り所を失うこととなりました。これに代わり、法務局には附属地図とは別の精度の高い地図(隣接者との境界確定を行い精密に測量した上で作成した図面で、現地復元能力が高く、いわゆる「法14条地図」と呼ばれるものです)を備え付けるものとされました。しかしながら、このような精度の高い地図を備え付けるまでには相当の年月を要することから、これが整備されるまでの間は、土地台帳附属地図(これが日頃接する機会の多い公図に該当します)も「地図に準ずる図面」として取り扱うこととされ、現在に至っています。 このような経緯を踏まえれば、登記簿地積の多くが実測地積と相違する理由を推察することができるとともに、公図上の寸法が実測の結果と比べて幾分不正確なものとならざるを得ない背景を垣間見ることができます。加えて、当時の測量方法(縄)や測量技術が粗雑なものであったという問題も指摘されていますが、その反面、市街地内にある宅地の場合、地番ごとの位置関係や境界の形状(直線か曲線か等)については現状と符合していることが多いともいわれています。   3 地図の整備事業とその進捗状況~国土調査法による地籍調査 (1) 地籍調査の性格 地籍調査とは、主に市町村が主体となって、一筆ごとの土地の所有者、地番、地目を調査し、境界の位置と面積を測量する調査であり、昭和26年に制定された国土調査法に基づいて行われています。これは、土地に対する戸籍調査ともいうべき調査であり、地籍を明確化し、土地取引の円滑化と土地資産の保全を図る(土地境界トラブルを防止する)等をはじめ、様々な目的のために行われています。そのため、地籍図の精度は高く(作成に当たり高度の測量技術が必要となります)、仮に境界標識が毀損や紛失した場合でも現地復元能力を有する性格のものです。 上記のとおり、現在法務局に備え付けられている図面は、境界の正確な位置などが現実とは異なっている場合が多くあり、また、登記簿に記載された土地の面積も、正確ではない場合があるのが実態です。そのため、地籍調査が行われることにより、その成果は法務局にも送られ、登記簿の記載が修正されて地図が更新されることになります(※1)。 (※1) 国土交通省地籍調査Webサイト「地籍調査とは」参照。 (2) 地籍調査の進捗状況 地籍調査は昭和26年から行われ、開始から70年が経過しているものの、令和3年度末時点における全国的な進捗率は52%に留まっています(地帯別にみると、都市部(DID:人口集中地区)及び山村部(林地)で地籍調査の進捗が遅れており、特にこれらの地帯においてより早急な調査の実施が必要とされています)。 また、全国の地籍調査の実施状況についてみれば、地域間の進捗の差が大きくなっており、北海道、東北、九州の各地方では調査が比較的進んでいますが、関東、中部、北陸、近畿の各地方では大幅に遅れている府県があります(※2)。 (※2) 国土交通省地籍調査Webサイト「全国の地籍調査の実施状況」参照。   4 土地評価における地積の捉え方 (1) 財産評価基本通達では 「財産評価基本通達8」では、「地積は、課税時期における実際の面積による」と規定しています。この場合の「実際の地積による」ことの意義についてですが、国税庁ホームページ「質疑応答事例」には下記の旨掲載されており、必ずしもすべてのケースで実測が要求されるわけではないとされています。 (2) 固定資産評価基準では 固定資産税の評価において採用する地積は、原則として土地登記簿に登記されている地積(登記地積)とされています。 このような地積認定の考え方は、次のとおり固定資産評価基準に明記されています(下線は筆者によります)。 なお、下線を付した「次に掲げる場合」とは、以下に該当する場合です。 このような取扱いがなされている根底には、課税の公平性という視点が存在するものと思われます。 (3) 不動産鑑定評価基準では 不動産鑑定評価基準には、土地価格を形成する個別的要因として「地積」という項目が列挙されていますが、登記簿地積を採用するか実測地積を採用するか等についての具体的な規定は置かれていません。 鑑定実務としては、測量士等による信頼性の高い実測図が作成されており、そこにおける地積が登記簿地積と相違する場合は実測地積を評価数量として採用しているのが通常です(実測図が作成されていない場合は登記簿地積を前提とした評価を行っています)。   5 まとめ 地積の問題を探っていった場合、本文に述べたとおり相当奥深いものがあります。しかし、評価を実施するという目的のみで、測量費用を投じてまで事前に実測を行うというケースはむしろ少ないのが実情です。 そのため、実測が行われていない土地に関しては、評価の上では登記簿面積を採用し、売買の際に実測を行って面積を確定した上で、 として取引価額を決定する方法も実務ではしばしば採用されています。 公示価格や路線価の発表時には単価のいかんに関心が向きがちですが、面積も評価額を構成する重要な要素であることに留意が必要です。 (了)

#No. 486(掲載号)
#黒沢 泰
2022/09/15

〈エピソードでわかる〉M&A最前線 【第5回】「なぜ今、病院のM&Aが注目されるのか」-医療業M&Aにおける譲渡側・譲受側それぞれのメリット①-

〈エピソードでわかる〉 M&A最前線 【第5回】 「なぜ今、病院のM&Aが注目されるのか」 -医療業M&Aにおける譲渡側・譲受側それぞれのメリット①-   株式会社日本M&Aセンター 医療介護支援部 永泉 耀   【第5回】は、近年注目されている医療業界のM&Aについて、ご紹介します。 今日の医療業をとりまく経営環境を整理しながら、「なぜ今、病院のM&Aが注目されるのか」というテーマに基づき、譲渡側のメリット、譲受側のメリットとそれぞれの視点に焦点を置き、実例を挙げていきながら解説します。   1 後継者問題の解決✕独立開業の実現-譲渡法人P診療所✕譲受者Q医師の場合 譲渡法人の理事長である自分は高齢でいつまで事業を続けられるかわからず、かといって適当な後継者もいない。診療所理事長の多くが抱えている問題です。本事例では、「独立したい」という想いを持った買い手側の医師とのマッチングが大きなポイントになりました。 【譲渡側・譲受側のデータ】 ※情報管理の観点から、実際の事例とは一部内容を変更しております(以下、他の事例も同様)。 (1) 譲渡側の視点~子供が医師であっても後を継ぐとは限らない~ P診療所は首都圏にある一人医療法人です。理事長の子供は医師ですが、研究者として研究に専念しており、診療所を継ぐ意思はありません。理事長は70歳代後半で、直近で病気入院したことをきっかけに健康に不安を覚えるようになりました。廃業することになれば患者さんに迷惑がかかりますし、かといって自身の健康にも気遣わなければなりません。約40年間続けてきた診療所の継続と自身の健康問題で、逡巡する日々が続いていました。 P診療所の理事長は悩んだ末に、顧問会計事務所に相談することにしました。その会計事務所は日本M&Aセンターの提携先の1つであったため、その会計事務所を通じて相談に来られました。 (2) 譲受側の視点~首都圏で独立開業を成し遂げたい~ 譲受者となったQ医師は、大学の医局から民間病院へ出向勤務していましたが、以前から開業志向を強く持っており、P診療所と診療科目が同一であったことで、譲受けを検討してもらうことになりました。Q医師には小さな子供がおり、今後の教育のためにも、現在務める病院のある地方から首都圏へ生活拠点を移したいという希望もありました。 (3) それぞれのメリット ① 譲渡側のメリット ご子息が後継者とならないため、承継できなければ廃業することになり、患者さんに迷惑がかかります。Q医師への事業譲渡によって、診療所の継続と自身の健康問題で逡巡する日々から解放され、しっかりと次の世代へバトンを渡すことができました。 ② 譲受側のメリット Q医師にとっては以前から強く持っていた開業意志が叶えられ、今後の子供の教育のために首都圏へ生活拠点を移したいという当初の希望も叶えられました。   2 「経営」の業務負担軽減✕病床規制や地域への新規参入障壁の回避-譲渡法人G会✕譲受法人H株式会社の場合 本事例は出資者が一般企業という、病院のM&Aとしては希少なケースです。経営者として、医師・看護師の確保に代表される病院の労務管理や先行投資などに苦労する病院の経営を行うよりも、医師として患者を診ることに集中したいと希望される理事長医師にとっては、非常に参考になるM&A案件です。 【譲渡側・譲受側のデータ】 (1) 譲渡側の視点~医師と経営者の二足のわらじは困難~ 創業者でもあるG会の理事長は30年間近く地域医療に尽くしてきたところ、組織も大きくなり個人経営の域を超えていると実感していました。多くの経営者がそうであるように当理事長も60歳代も半ばになり、後継者を真剣に考えていました。 しかし、子供が医師として当病院に勤務しているものの、従業員も300人を超え、医師・看護師を筆頭に多くの資格者を抱える規模となっています。経営は順調ですが、計画的な投資をしながらこの医療法人を運営していくのは、親の目からみても子供には承継するのは難しいと判断しました。子供も将来の病院経営を考えた場合、自分は医師として勤務医、もしくは診療所で医療に貢献したいと望んでおり、経営者になることは望んでいなかったのです。 金融機関からの借入金も未だ20億円以上あり、子供が無理ならと同病院に勤務する幹部医師への承継を打診しましたが、幹部医師と経営者である理事長の責任の大きさや質は当然異なります。そのため、個人保証までしての医療経営はとても無理と断られてしまいました。子供への承継、同病院の幹部医師への承継を諦めたG会の理事長は、昔からの付き合いで信頼できる経営コンサルタントヘ相談することにしました。第三者へ譲渡するなら、M&Aの専門会社へ依頼すべきとの勧めで、その経営コンサルタントの方と一緒に日本M&Aセンターへ相談に来られました。 (2) 譲受側の視点~参入障壁が高い医療業界に事業展開したい~ H社は以前より周辺業種である医療介護事業に興味があるとの意向を持っており、日本M&Aセンターを通じてそれに合致する譲渡企業の探索を行っていました。医療・介護の周辺業種の企業として少子超高齢化のなか、病院・介護施設経営への強い想いがあったからです。 (3) それぞれのメリット ① 譲渡側のメリット G会の理事長は、今まで経営と医療の全責任を一身に担っていたためにプライベートな時間はほとんどありませんでした。M&A成約後、友人との会食や家族との旅行に時間が使えることを特に喜んでいました。その後、ご子息は当初の希望通り診療所を開設し、御一家はそれぞれの形で医療に携わっています。 ② 譲受側のメリット H社は出資者として間接的に経営に参画し、自社の事業とのコラボレーションを図りながら、医師と企業の役割分担にて企業として計画的な投資を実施し、法人の成長とともに地域医療・介護に貢献しています。   3 地域医療のための病院存続✕規模拡大により、病病・病診連携を強化-譲渡法人A病院✕譲受法人B会の場合 A病院は、40年以上にわたり地域における医療の拠点となっています。そのA病院を経営し、高齢となった理事長には医師の子供がなく、経営は順調ですが後継者は不在の状態となっていました。本事例は、病院をどうすればよいのか、地域の医療拠点を存続させるためにはどうすればよいのか、という多くの病院が抱えている代表的な問題を取り上げます。 【譲渡側・譲受側のデータ】 (1) 譲渡側の視点~地域の医療拠点を守りたい~ A病院は40年以上続く歴史ある病院で、地域に欠かせない医療機関として貢献してきました。金融機関からの借り入れもなく、下降気味ではあるものの利益も確保しており順調な経営を続けていました。しかしご子息は医師ではなく、他のビジネスに従事しています。 70歳代である理事長は数年前から後継者問題に悩んでいました。A病院の理事長には、常に何事にも親身に相談に乗ってもらっている顧間税理士がいました。その顧間税理士の先生が日本M&Aセンター開催のM&Aセミナーに参加し、理事長に「M&Aを考えてみてはどうか」とアドバイスをされたところ、詳しい話を聞いてみようということなりました。 (2) 譲受側の視点~意欲的な事業拡大で地域医療をさらに盛り上げたい~ 譲受側の医療法人B会は、A病院と隣接した地域で病院・老健施設・診療所を運営しています。B会も地域医療に根ざした経営をしており、理事長は40歳代半ばで、これからまだまだ拡大していく意欲を持っています。B会理事長は、日本M&Aセンターが医療業界のM&Aを支援していることを知り、M&Aで事業を拡大していきたい想いから直接相談をすることにしました。 (3) それぞれのメリット ① 譲渡側のメリット A病院理事長は後継者問題の解決ができ、従業員の雇用継続を確保し、残余財産の現金化による創業者利潤も獲得しました。そして何よりも大きいのは、「A病院」という地域における重要な医療拠点を守ることができたことです。医療サービス提供を継続させることができ、地域住民への責任を果たせた理事長は、「胸のつかえが取れた」とほっとしています。 A病院の理事長は、今は引継期間を終えて完全に引退しています。M&A終了後、「おかげで長年楽しみにしていた夫人と2人揃っての海外旅行に、気兼ねなく行くことができます」とおっしゃっていた満面の笑顔がとても印象的でした。 ② 譲受側のメリット ー方でB会理事長は、規模拡大により自前での病病・病診連携により、地域での存在感強化等、多くのメリットを得られました。40歳代とまだ若い理事長のもと、A病院も活気のある病院グループで新たなスタートを切ることになりました。 (了)

#No. 486(掲載号)
#株式会社日本M&Aセンター
2022/09/15

《速報解説》 日本政府が「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定~企業に求められる人権尊重の取組を実態に即して具体的に解説~

《速報解説》 日本政府が「責任あるサプライチェーン等における 人権尊重のためのガイドライン」を策定 ~企業に求められる人権尊重の取組を実態に即して具体的に解説~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 令和4(2022)年9月13日、日本政府は「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定したとし、ビジネスと人権に関する行動計画の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議から、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」が公表された。 これにより、令和4(2022)年8月8日から意見募集されていたガイドライン原案が確定することになる。ガイドライン原案に寄せられた御意見に対する考え方も公表されている。 これは、欧米を中心に人権尊重を理由とする法規制の導入が進み、企業として取組の強化も求められていることもあり、わが国において、サプライチェーンにおける人権尊重の取組に関する業種横断的なガイドラインを作成するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 主な内容は次のとおりである。 1 人権尊重の意義 ガイドラインにおいて、企業が尊重すべき「人権」とは、国際的に認められた人権をいう。 企業は、例えば、強制労働や児童労働に服さない自由、結社の自由、団体交渉権、雇用及び職業における差別からの自由、居住移転の自由、人種、障害の有無、宗教、社会的出身、性別・ジェンダーによる差別からの自由等への影響について検討する必要がある。 すべての企業には人権を尊重する責任があるとし、当該責任は、企業が他者への人権侵害を回避し、企業が関与した人権への負の影響に対処すべきことを意味している。 日本で事業活動を行うすべての企業(個人事業主を含む)は、国際スタンダードに基づく本ガイドラインに則り、国内外における自社・グループ会社、サプライヤー等(サプライチェーン上の企業及びその他のビジネス上の関係先をいい、直接の取引先に限られない)の人権尊重の取組に最大限努めるべきであるとしている。 「サプライチェーン」とは、自社の製品・サービスの原材料や資源、設備やソフトウェアの調達・確保等に関係する「上流」と自社の製品・サービスの販売・消費・廃棄等に関係する「下流」を意味している。 「その他のビジネス上の関係先」は、サプライチェーン上の企業以外の企業であって、自社の事業・製品・サービスと関連する他企業を指している(例:企業の投融資先や合弁企業の共同出資者、設備の保守点検や警備サービスを提供する事業者等)。 2 人権方針 人権方針は、企業が、その人権尊重責任を果たすという企業によるコミットメント(約束)を企業の内外のステークホルダーに向けて明確に示すものである。 事業の種類や規模等は各企業によって様々であり、負の影響が生じ得る人権の種類や、想定される負の影響の深刻度等も各企業によって異なることから、人権方針の策定に当たっては、まずは、自社が影響を与える可能性のある人権を把握する必要があるとのことである。 ガイドライン原案に寄せられた意見には、人権方針について表明する媒体の例示として有価証券報告書を推奨してはどうかという意見があったが、有価証券報告書は、金融商品取引法に定められる法定開示書類であることから、本ガイドラインにおいて、有価証券報告書において説明・情報開示を行うことを推奨することは適切ではないと考えているとの考え方が示されている(No.536)。 3 人権デュー・ディリジェンス(人権DD) 人権DDは、企業が、自社・グループ会社及びサプライヤー等における人権への負の影響を特定し、防止・軽減し、取組の実効性を評価し、どのように対処したかについて説明・情報開示していくために実施する一連の行為を指している。 ガイドラインは、人権に対する「負の影響」として次の3類型を示している。 次の事項について詳細に記載している。 4 人権尊重の取組にあたっての考え方 人権尊重の取組にあたっての考え方として、次のポイントを示している。 5 救済 救済とは、人権への負の影響を軽減・回復すること及びそのためのプロセスを指している。 企業による救済が求められるのは、自社が人権への負の影響を引き起こし又は助長している場合であるが、企業の事業・製品・サービスが人権への負の影響と直接関連するのみであっても、企業は、負の影響を引き起こし又は助長している他企業に対して、影響力を行使するように努めることが求められる。 適切な救済の種類又は組み合わせは、負の影響の性質や影響が及んだ範囲により異なり、人権への負の影響を受けたステークホルダーの視点から適切な救済が提供されるべきである。 具体例として、謝罪、原状回復、金銭的又は非金銭的な補償のほか、再発防止プロセスの構築・表明、サプライヤー等に対する再発防止の要請等が挙げられている。 救済の仕組みには、大きく分けて、企業を含む国家以外の主体によるものと国家によるものとがある。 苦情処理メカニズムと国家による救済の仕組みについて記載されている。 (了)

#阿部 光成
2022/09/14

《速報解説》 証券取引等監視委員会、令和3事務年度版の「開示検査事例集」を公表~不正会計の実態等を解説したコラムの一層の充実など図る~

 《速報解説》 証券取引等監視委員会、令和3事務年度版の「開示検査事例集」を公表 ~不正会計の実態等を解説したコラムの一層の充実など図る~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   証券取引等監視委員会事務局は、このほど、「開示検査事例集(令和3事務年度)」(以下「事例集」と略称する)を公表した。 令和3事務年度版の「開示検査事例集」では、新たに、令和3年7月から本年6月までの間に開示検査を終了し、開示規制違反について課徴金納付命令勧告を行った事例についても、概要が紹介されている。また、平成30年9月公表の事例集から掲載が始まった「監視委コラム」についても、充実が図られており、不正会計の実態等について解説されているのが特徴である。 本稿では、公表された事例集のうち、最近の開示検査の動向を知るうえで参考になると思われる、ⅠからⅢまでを中心にその内容をご紹介したい。とりわけ、「Ⅲ 最新の課徴金納付命令勧告事例」については、「最近1年間に課徴金納付命令勧告を行った最新の事例をまとめて掲載し、開示規制違反の内容、その背景・原因やその是正策の概要」がまとめられている(「証券取引等監視委員会からのメッセージ」より引用)ため、本稿の解説もこの事例を中心としたい。   Ⅰ 最近の開示検査の取組み 事例集「Ⅰ 最近の開示検査の取組み」の冒頭で、証券取引等監視委員会(以下「監視委」と略称する)は、以下のように述べており、この記述は、平成30年9月公表の事例集からほぼ同様の文章となっている。 そのうえで、監視委の取組みついて、以下の3項目を挙げている。 なお、この3項目の取組みについても、平成30年9月公表の事例集以来その内容を踏襲している。   Ⅱ 最近の開示検査の実績とその内容 令和3事務年度(令和3年7月~令和4年6月)に、監視委が行った開示検査は20件で、前年実績(23件)を下回っている。そのうち、検査終了件数は11件(前事務年度実績は16件)であり、課徴金納付命令勧告が8件(前事務年度実績は9件)となっている。 監視委によれば、令和3事務年度の開示検査の特徴は次の4点である。 監視委は、これらの課徴金納付命令勧告を行った事案において認められた開示規制違反に至った背景・原因の例を、次のように列挙している。   Ⅲ 最新の課徴金納付命令勧告事例 事例集に記載された「最新の課徴金納付命令勧告事例」8件については、下表のとおりである。なお、事例集では、会社名は公表されていないため、本表では、監視委の報道資料をもとに会社名を記している。 【課徴金納付命令勧告事例】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (注) 赤字は、本誌連載「会計不正調査報告書を読む」で取り上げた事例。 最後に平成30年9月公表の事例集から記載されている「監視委コラム」について、タイトルを引用して本稿を締め括りたい。令和3事務年度版では、昨年公表の事例集にはなかった1つのコラムが新たに追加され、タイトルも3件変更されている(うち1件は内容も大幅に変更)。 (赤字表記はタイトルが変更されたもの、は新たに追加されたもの) (了) ↓お勧め連載記事↓

#米澤 勝
2022/09/13

令和元年度(平成31年度)税制改正に関する《資料リンク集》(更新)

令和元年度(平成31年度)税制改正に関する 《資料リンク集》 このページでは「令和元年度(平成31年度)税制改正」に関し各府省庁・主な団体等から公表された情報ページへのリンク先をまとめています。 新たな情報の公表により、随時更新します。   - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2022/09/09

プロフェッションジャーナル No.485が公開されました!~今週のお薦め記事~

2022年9月8日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.485を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2022/09/08

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第111回】「節税商品取引を巡る法律問題(その5)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第111回】 「節税商品取引を巡る法律問題(その5)」   中央大学法科大学院教授・法学博士 酒井 克彦   Ⅳ 説明義務者の適格性―説明者の専門的知識の欠如 金融機関や保険会社の販売担当者などの非税理士が、「課税上の取扱いに係る説明義務」を履行するに相応しい者であるか、すなわち節税商品取引に係る説明義務者としての適格性を有しているかについては、①税務の専門的知識の欠如という問題と、②非税理士が課税上の取扱いに係る説明を行うことによる税理士法抵触という問題が立ちはだかる。 1 問題点の所在 節税商品取引において説明義務を履行するのは、節税商品の販売者である金融機関や保険会社の一般職員であることが多いが、これらの者は、一般的に税務に精通しているとは限らないことから、節税商品の販売に当たって税務上の専門的知識の習得が必要となる。 節税商品は、専門的な税務上の仕組みを利用して商品開発されていることが多い。そのことから、節税商品取引に係る課税上の取扱いは一般的金融商品取引のそれよりも複雑であることが多い。そのため、基礎的な税務知識さえも有していない金融機関や保険会社の一般職員が、節税商品の販売のために専門的な税務上の知識を習得し、これを更に一般の投資者に対して噛み砕いて説明することは、相当な困難性を伴っているといえよう(※1)。 (※1) 酒井克彦「節税商品勧誘者の保持すべき専門的知識と注意義務(上)・(下)―節税商品過誤訴訟を素材として―」税理47巻8号199頁(2004)、同47巻9号194頁(2004)参照。 ここでは、販売者の専門的知識が欠如していることに基因する注意義務違反が節税商品過誤訴訟でどのように問われているのかといった分析を通じて、販売者に求められる注意義務について若干の検討を加えることとする。なお、販売者の専門的知識の欠如が原因で損害を被ったとする投資者により提起された節税商品過誤訴訟である米国財務省証券事件東京地裁平成7年10月16日判決(判タ912号209頁:①事件)及び等価交換によるマンション建設勧誘事件東京高裁平成10年4月22日判決(判時1646号71頁:②事件)を素材に検討することとしたい。 2 販売者の専門的知識の欠如が問題とされた事例 (1) 米国財務省証券事件(①事件) イ 事案の概要 資産家である米国非居住者A(89歳日本人女性)の養子となっていた米国居住者X(原告。会社経営を行う日本人でAの孫)は、祖母かつ養母であるAの死亡による多額の相続税を心配していた。そこで、Xは、米国に本店を置く外資系銀行であるY1社(被告)従業員に対し、Aが高齢であり健康状態も悪く死亡の可能性が高いと説明した上で、相続対策について相談したところ、同人から、Aが投資目的で米国財務省証券を取得した上で、その存命中に米国居住者であるXに当該証券を生前贈与すれば、日米両国のいずれにおいても課税されないため、何らの税負担も負わないまま財産を相続できるとの節税対策の説明を受けた。 また、Aが長期の米国財務省証券を購入して即時にXに贈与すると、日本の税務当局からかかる証券の購入・譲渡を現金贈与に対する贈与税の租税回避行為と認定されるおそれがあるため、Y1社従業員は、Xに対して、Aが購入する前記証券は満期が183日未満の短期の米国財務省証券とし、何回かにわたって購入した方がよいと説明した。 Xは、かかる節税対策を実行することとし、Aを代理し、東京に本店を置く信託銀行であるY2社(被告)との間で、米国財務省証券の取得及びその後の贈与、証券の運用を実施する投資顧問契約を締結した。その後、Aは、かかる契約に基づいてY1社らグループの訴外証券会社から満期183日未満の米国財務省証券を購入した。 その後、前記証券をXに贈与する前にAは死亡した。ところが、連邦遺産税の免税対象となるのは、183日を超えて満期となる証券のみであり、Aが購入した証券に対して連邦遺産税が課されることとなった。更に、Xの実母は存命であり、XはAの孫であったため、証券の相続については直接移転が生じたと米国当局に認定され、世代省略譲渡税(generation skipping transfer tax.以下「GST税」という。)が課税されることが明らかになり、Xはこれらの各税合計4億円強の納税を余儀なくされた。 そこで、Xは、Y1社に対し、Y1社としては、Xに節税対策の勧誘を行い一定の社会的接触関係を形成したことに基づく信義則又は銀行の高度な注意義務が課されると主張して訴訟を提起した。すなわち、Xは、容易に調査できたGST税の存在や満期が183日を超える財務省証券を購入すれば連邦遺産税が課税されないことを説明する義務をY1社は負っていたにも拘らずこれを履行しなかったとして、Y1社に対し、説明義務違反及び銀行法違反による不法行為に基づく損害賠償を請求した。 また、Y2社に対しては、主位的に、同社と締結した本件投資顧問契約は、節税のアドバイスを目的とするタックスアドバイザー契約あるいはそれを含んだ契約であるとして、説明義務違反による債務不履行解除及び債務不履行に基づく損害賠償を請求した。また、予備的に投資顧問業法上の投資顧問契約であったとして、説明義務違反及び投資顧問業法違反による不法行為に基づく損害賠償を請求した。 東京地裁は、「Y1社及びその従業員らが、Xの右申入れを受けて承諾したのは、生前贈与を前提とする本件節税対策の説明の限度にとどまるものと認められる。」と認定し、「したがって、X主張の信義則等を考慮しても、同Y1社の説明義務が生前贈与を前提とする事項についてのみ生じると解さざるを得ず、贈与前に相続が発生した場合の相続税対策まで依頼を受けたものとは認められない以上、贈与前に相続が発生した場合をも想定して米国連邦遺産税やGST税に関する説明までなす注意義務を負っていたものと認めることはできない」と判示した。 更に、Y2社の債務不履行ないし不法行為責任については、「本件節税対策の説明を受けた後に、本件投資顧問契約を締結していることをも考慮すると、同契約は、X主張のようなタックスアドバイザー契約又はこれを含むものとは認められないうえ、投資顧問業法上の投資顧問契約とも認められない」として、Y2社の債務不履行ないし不法行為責任の主張は失当であると判示した。 ロ 節税商品販売者に要請される説明義務 本件節税商品は節税のための包括的商品であり、いくつかの取引が結合されてはじめて商品性を有するものである。つまり商品構造としては、米国非居住者が投資目的で米国財務省証券を取得した上、米国居住者に贈与した場合、日米両国いずれにおいても贈与税が課税されないという両国の税制度の相違を巧みに利用して、将来の相続開始時の相続財産を圧縮することができるというものである。したがって、当該商品の仕組みに関する説明においては、次のように日本の贈与税及び相続税並びに米国における贈与税の取扱いについても触れる必要があると考えられる。 節税商品として勧誘する際に、これらのことは商品説明若しくは投資判断に重要な影響を及ぼすリスクとして説明すべきであったと考えられる。 ハ 米国税法に精通しない者による同法を活用した節税商品の説明 上記のように、本件節税商品は、日米両国の税制の相違を利用したものであるため、販売者が商品説明を行うに当たって、米国の税法に関する知識を必要としていたことはいうまでもない。 本件について、中里実教授は、「日本の相続税・贈与税逃れを商品の販売の際に強調しながら、しかも、かなり高齢の者が当該商品を購入することを知りながら、販売担当者は、米国連邦遺産税等に関する十分な知識を有していなかった点が裁判所により認定されているという点を考慮すると、状況によっては、本件判決と逆の結論も十分に出される可能性のあった事案である」と評される (※2)。 (※2) 中里実『タックス・シェルター』283頁(有斐閣2002)。 もっとも、販売者が十分な専門的知識を有していないことのみによって、勧誘の違法性が根拠付けられるものではなく、十分な専門的知識を有しない者の行う説明が投資者の意思形成にどのような影響を与えるかが問題とされると考えるのが正当であろう。 十分な専門的知識を有しない販売者による説明では、誤った情報が提供されることや提供されるべき情報が提供されないことがあり、このことが投資者の自己決定権の侵害へと繋がり得る。損害賠償責任が肯定されるためには、自己決定権の侵害があり、その自己決定権侵害に起因して財産的損害が生じたという因果関係が認められる必要がある。 この点、販売者によって払われた注意の水準が問題となるのであって、販売者に十分な専門的知識があったか否かは勧誘の違法性判断においては問題となり得ないとの反論も考えられるが、本件の場合、販売者が短期証券に係る遺産税やGST税についての専門的知識を有していないがためにこれらについての説明がなされず、結果的に投資者に不測の税負担が課されることとなったと評価し得るのではなかろうか。 十分な専門的知識を有する者による適正な説明が行われていたならばなされなかったであろう投資行動に起因して本来納付する必要のないGST税の負担が生じたことに鑑みると、本件判決と逆の結論も十分に出される可能性のあった事案であるとの中里教授の見解に左袒したい。 (2) 等価交換によるマンション建設勧誘事件(②事件) イ 事案の概要 土木建築工事の設計施工請負業を営むY(被告)は川崎市内に土地を所有するX1(原告)とX2(原告)に対して、節税策として等価交換によるマンションの建設を勧誘した。そこでXらは、昭和62年3月、Yとの間で、Xらの所有する土地に、いわゆる等価交換方式により、譲渡所得に係る所得税等が課されない形でマンションを建築する旨の業務委託契約を締結した。当該契約にも関わらず、Yは課税関係に配慮しないでマンションを建築したため、Xらは租税特別措置法37条の5(当時)の課税の特例の適用を受けられなくなり、多額の所得税及び地方税の納税を余儀なくされた。そこで、XらはYに対し、債務不履行に基づく損害賠償として、納税額相当額と遅延損害金の支払を求め、訴訟を提起した。 第一審は、XとYらとの間で、いわゆる等価交換方式により譲渡所得に係る所得税等が課税されない形でのマンションを建築する旨の業務委託契約が成立したとは認められないとして、請求を棄却した。 Xらは控訴し、予備的請求として、Yの担当者Aは、Xらに対し、Xらの所有土地上にマンションを建築し、これを他に譲渡した場合にも、租税特別措置法に定める特例の適用があり、譲渡した土地の価格以上の資産を取得しない限り等価交換に当たるから課税はされない旨の誤った説明をし、その旨誤信したXらにマンションの建築を締結させたものであるから、契約締結上の過失があるなどと追加的な主張をした。 東京高裁は、譲渡所得に係る所得税等が課税されない形でマンションを建築する旨の業務委託契約については、原審を支持したが、予備的主張については、「元々Xらにいわゆる等価交換方式によるマンション建設の話を持ちかけたのはYであり、Yの営業担当者は、等価交換方式によれば、マンションの建設に伴う課税は全くされないか、又は、特段の用意が必要な多額の税負担が生じることはないと判断し、Xらに対してその旨説明していたのであるから、Yの営業担当者は、マンション等の大手建設業者の従業員として、等価交換方式によるマンションの建設方式について正しい知識を持ち、十分な理解をした上、Xらに対し誤解を招くことがないよう正しく説明すべきであったことはもちろん、ディベロッパーが見つかった後も、Xらに多額の税負担が生じることのないように、Xら及びディベロッパーとの間で、綿密な打合せ・調整を図り、工夫をするなどすべき注意義務があったものというべきである。」と判示した。 その上で、同高裁は、Yの担当者の注意義務違反を認め、「Yには、この点において契約締結上の過失及び契約履行段階における過失があったものといわなければならない。そして、Xらは、Yの担当者の前記説明を信頼してYとの間に本件マンションの建設工事請負契約を締結し・・・たのであるから、YはXらに対し、不法行為に基づき、これらの過失によってXらに生じた損害を賠償すべき義務がある。」と判示し、不法行為に基づく損害賠償責任を肯認した。 ロ 専門的知識を保持しない説明義務者による説明 本件高裁判決は、販売者の注意義務違反を認めたものである。同高裁は、「Yの営業担当者は、マンション等の大手建設業者の従業員として、等価交換方式によるマンションの建設方式について正しい知識を持ち、十分な理解をした上、Xらに対し誤解を招くことがないよう正しく説明すべきであった〔下線筆者〕」として説明のための正しい知識を有すること及びその理解を十分にすべきであったことを判示している。 更に、それにもかかわらず、「Yの担当者は、・・・等価交換方式に関する租税特別措置法の規定を『土地等を譲渡した者が、譲渡した土地等の価格以下の資産を取得すれば税金はかからないが、それを超える資産を取得した場合には、その差額について税金がかかる。』と誤った理解をしていたのであり、その誤解を前提にした上、Xらに対しその旨誤った説明を」していたとしている。 この東京高裁判決の「正しい知識を持ち、十分な理解をした上」という説明義務者の態度の問題についての判示を、どのように評価すべきであろうか。「多額の税負担が生じることのないように・・・綿密な打合せ・調整を図り、工夫をするなどすべき注意義務があった」と判示されていることからみても、契約者死亡の場合にどうなるかという点についてそれ以上の調査を行わなかったという上記①事件における販売者の問題と同様、説明義務者としての知識レベルの問題に止まらず、説明義務者としての注意義務全般の問題として捉える必要がありそうである。 また、説明義務との関係では、適切な説明が履行されたかどうかのみを判断すべきであろうが、そもそも専門的知識の習得のない者による説明が、投資者の判断に適正な情報を提供することは考えづらい。そのことから、説明義務の履行が適正になされたかどうかの判断においても、販売者の専門的知識の保持が問題にされる余地があると考えられる。 3 節税商品販売者の専門的知識の欠如 ②事件東京高裁判決の「正しい知識を持ち、十分な理解をした上」という説明義務者の態度の問題についての判示を、どのように評価すべきであろうか。契約者死亡の場合にどうなるかという点についてそれ以上の調査を行わなかったという①事件における節税商品勧誘者の問題と同様、説明義務者としての知識レベルの問題に止まらず、説明義務者としての注意義務全般の問題として捉える必要がありそうである。 更に、このような問題は、その他の節税商品過誤訴訟においてもみられるところである。 上村達男教授は、「金融機関は、何よりも販売しようとする金融商品のマーケットを知り尽くすことが求められる。開発されたばかりの新商品・リスクの高い商品・価格形成への信頼度・顧客の習熟度・・・すべてを知り尽くしてそのマーケットに最もふさわしい説明・勧誘をまずは行う。投資家の責任はその次にやってくる。」と主張される (※3)。 (※3) 上村達男「どこまでが利用者の自己責任か」金融ジャーナル39巻3号30頁(1998)。 4 節税商品取引における税理士の役割 このように考えると、独立した公正な立場から節税商品について厳格に法律を適用し、課税上の取扱いを判断しこれを専門的知識に基づいて個別具体的に説明することができるのは、現行制度上、税理士以外にはないと考えられる。 また、税理士が節税商品の課税上の取扱いに係る説明を行うに当たっては、税務当局の見解を確認すべき調査義務(調査照会義務)があるといわれることがある。このような場合、国税庁の実施する文書回答手続の利用が考えられるが、納税者本人のほか、これを行い得る代理人は税理士に限定されている。これは、文書回答手続が個別性の強い取引等に係る照会を対象としており、事前照会者の詳細な見解が要求されているところ、代理人がこれらの資料を作成する場合には税理士法に定める税務相談に当たる可能性が高く、税理士以外の者がこれを行うとした場合に税理士法に抵触するおそれがあることから、申請を行い得る代理人を税理士に限定しているのである。 そうであるとすると、節税商品の課税上の取扱いについて、税務当局の見解を確認することができるのは、納税者本人か納税者から委嘱を受けた税理士しかいないことになるのである。ただし、あくまでも照会を行い得るのは、納税者の代理人としての税理士に限定されることになろう。 (続く)

#No. 485(掲載号)
#酒井 克彦
2022/09/08

〔疑問点を紐解く〕インボイス制度Q&A 【第18回】「商品を返品した場合の適格返還請求書の取扱い」

〔疑問点を紐解く〕 インボイス制度Q&A 【第18回】 「商品を返品した場合の適格返還請求書の取扱い」   税理士 石川 幸恵   【Q】 商品の返品については、買い手が返品伝票を記入して商品と一緒に返送します。この返品伝票を適格返還請求書として扱うことはできますか。 〔ポイント〕 (1) 適格請求書発行事業者には、課税事業者に売上げに係る対価の返還等を行う場合、適格返還請求書を交付する義務が課されています。 (2) 買い手が作成する返品伝票に適格返還請求書として必要な事項が記載されていれば、売り手が改めて適格返還請求書を交付する必要はないと考えられます。 *  *  * 【A】 (1) 適格返還請求書の交付義務 適格請求書発行事業者には、課税事業者に売上げに係る対価の返還等を行う場合、適格返還請求書を交付する義務が課されています(新消法57の4③、インボイスQ&A問28) 適格返還請求書も、適格請求書と同様に保存義務があります(新消令70の13①)。   (2) 適格返還請求書の記載事項 適格返還請求書の記載事項は次のとおりです(インボイスQ&A問58)   (3) 買い手が作成する返品伝票 国税庁のインボイスQ&Aでは買い手が作成する返品伝票について触れられていませんが、販売奨励金の支払いに関し、 としています(インボイスQ&A問61。カッコ書きの買い手、売り手は筆者による補足)。 返品伝票も買い手が作成する奨励金請求書と同様と考えられますので、下図のように適格返還請求書の記載事項を満たす返品伝票を買い手が作成して、商品とともに送付することで、この返品伝票を適格返還請求書として扱うことが可能と考えられます。 (※) 売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日は、月単位の記載も認められています(インボイスQ&A問59)(記載事項②の注)。   (了)

#No. 485(掲載号)
#石川 幸恵
2022/09/08

令和4年度税制改正における『グループ通算制度』改正事項の解説 【第6回】

令和4年度税制改正における 『グループ通算制度』改正事項の解説 【第6回】   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   (6) 資産調整勘定等対応金額を0とする事由 資産調整勘定等対応金額(100%分)は、通算完全支配関係発生日からその通算終了事由が生じた時の直前までの間に離脱法人を被合併法人等とする非適格合併等が行われた場合には0となる。 また、対象株式の取得時の資産調整勘定対応金額等(取得割合分)は、その取得の時から通算完全支配関係発生日の前日までの間に離脱法人を被合併法人等とする非適格合併等が行われた場合は、0となる。 ここで、「非適格合併等」とは、資産調整勘定等が計上される法人税法第62条の8第1項(法人税法施行令第123条の10第1項)に規定する「非適格合併及び非適格分割等」をいう。非適格分割等とは、非適格分割、非適格現物出資、事業譲渡のうち、分割法人、現物出資法人、譲渡法人のその非適格分割等の直前において行う事業及びその事業に係る主要な資産又は負債のおおむね全部が分割承継法人、被現物出資法人、譲受法人に移転をするものをいう。「被合併法人等」とは、資産調整勘定等が計上される法人税法第62条の8第1項(法人税法施行令第123条の10第2項)に規定する被合併法人、分割法人、現物出資法人、譲渡法人をいう。 〈図表13〉 通算完全支配関係発生日以後に離脱法人を被合併法人等とする非適格合併等が行われた場合の取扱い ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 〈図表14〉 取得時から通算完全支配関係発生日の前日までに離脱法人を被合併法人等とする非適格合併等が行われた場合の取扱い ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 これは、その通算終了事由が生じた時の直前までに離脱法人を被合併法人等とする非適格合併等が行われた場合、その離脱法人ではその通算終了事由が生じた時の直前までに既に資産調整勘定等が計上されており(0の場合を含む)、離脱直前の簿価純資産価額にはその資産調整勘定等が含まれていることから、二重加算にならないように、その非適格合併等の直前までに生じている資産調整勘定等対応金額又は資産調整勘定対応金額等を0とする趣旨の取扱いであると考えられる。 しかし、例えば、グループ内で、通算子法人が事業譲渡を行った場合、その譲渡される事業について資産調整勘定が計上されない場合には、その事業譲渡がどんなに小規模なものであっても、その譲渡法人である通算子法人(将来の離脱法人)の株式に係る投資簿価修正にあたって、その事業譲渡の直前までに発生している資産調整勘定等対応金額又は資産調整勘定対応金額等が加算されないこととなってしまう。 これは、連結納税制度からグループ通算制度に移行した通算子法人(移行通算子法人)が連結納税制度の適用期間中に自社を被合併法人等とする非適格合併等が行われていた場合も同様の取扱いとなる。 そのため、通算子法人における非適格合併、非適格分割、非適格現物出資、事業譲渡を行う場合(又は行っている場合)、規模の大小やその時に計上された資産調整勘定の大小に関係なく、将来の離脱時にプレミアム相当額が損金に算入されないという問題が生じることとなる。 この点で納税者の立場からは大変厳しい取扱いとなっており、組織再編成を頻繁に行う通算グループでは実質的に加算措置が機能しないケースや知らないうちにプレミアム相当額が消滅しているケースが実務上生じると思われる。 つまり、結果的に、この取扱いがグループ内の組織再編成の支障になると思われる。   (了)

#No. 485(掲載号)
#足立 好幸
2022/09/08
#