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〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領《収益・費用の計上-収益認識》編 【第2回】「割戻しを見込む販売(変動対価)」

〔事例で使える〕 中小企業会計指針・会計要領 《収益・費用の計上-収益認識》編 【第2回】 「割戻しを見込む販売(変動対価)」   公認会計士・税理士 前原 啓二   はじめに 平成30年3月に「収益認識に関する会計基準」(以下「収益認識会計基準」とします)が公表され、上場企業や会社法上の大会社等公認会計士又は監査法人の監査を受ける会社を対象に、令和3年4月1日以降開始する事業年度から強制適用されています。これを受けて、平成30年度税制改正において法人税法等の改正も行われました。 しかし、中小企業は、収益認識について、従来どおりの会計処理を継続できることとなりました。今回の『収益認識』編では、中小企業に適用義務化されなかった収益認識会計基準や平成30年度税制改正後の法人税等の取扱いによる会計処理をご紹介します。それらの中から今回は、「割戻しを見込む販売」を取り上げます。 【設例2】 当社(生活用品製造業。3月31日決算)は、新製品Nの販売について、卸売問屋U社と2年間の販売数量に基づく割戻しを単価に反映するように、当社からU社への販売単価設定の契約を締結し、取引を始めました。 この契約上販売単価(税抜)は、当社からU社への販売数量が、0個から20,000個までは@500円/個。20,001個から40,000個までは@450円/個。40,001個以上は@400円/個とされました。 当社は、U社への販売数量を2年間で40,000個と予測していました。 2年間の販売実績は、当社からU社へ、X4年4月4日に20,000個、X5年4月3日に20,000個販売しました。 消費税率10%   1 収益認識会計基準を適用した場合の当社の仕訳 当社の仕訳は、収益認識会計基準によった場合、次のとおりです。 〈X4年4月4日:販売時〉 〈X5年4月3日:再販売時〉 以上(2)及び(3)により、会計処理は、上記1の仕訳のとおりです。   2 収益認識会計基準により会計処理した場合の法人税法上の取扱い 収益認識会計基準の公表を受けて、平成30年度税制改正において法人税法等の改正も行われ、商品販売に係る契約の対価について、変動する可能性がある金額(変動対価)がある場合の収益計上についても、次の①から③の要件のすべてを満たせば、法人税法上も上記1の会計処理のとおりとされました(法基通2-1-1の11)。   3 収益認識会計基準により会計処理した場合の消費税法上の取扱い 収益認識会計基準の公表を受けて、法人税法等の改正は行われたものの、消費税法の改正はありませんでした。したがって、収益認識会計基準の会計処理ではなく、それ以前の従来どおりの会計処理に合わせた仮受消費税の処理となります。 この設問の場合、上記1の仕訳のとおり、X4年4月4日の販売時には、契約上の販売単価は@500円/個なので、販売金額は10,000,000円(=20,000個×@500円/個、税抜)の消費税率10%を乗じた1,000,000円を仮受消費税処理し、X5年4月3日の販売時には、契約上の販売単価は@450円/個なので、販売金額は9,000,000円(=20,000個×@450円/個、税抜)の消費税率10%を乗じた900,000円を仮受消費税処理します。   (了)

#No. 488(掲載号)
#前原 啓二
2022/09/29

〔今こそ確認したい〕サステナビリティ及び気候関連開示の現状 【第3回】「IFRS S2号「気候関連開示」[案]の概要」

〔今こそ確認したい〕 サステナビリティ及び気候関連開示の現状 【第3回】 (最終回) 「IFRS S2号「気候関連開示」[案]の概要」   史彩監査法人 パートナー 公認会計士 西田 友洋   2022年3月31日に国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、IFRS S1号「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」(以下、「S1号」という)等、及びIFRS S2号「気候関連開示」等の公開草案を公表している。現状、両方を合わせて「IFRSサステナビリティ開示基準(ISSBが公表した基準)」という。 (注) 今後、上記以外の基準も公表され、「IFRSサステナビリティ開示基準」の数は増えることも想定される。 これらの公開草案が最終確定された場合、企業価値を評価する際の投資者の情報ニーズを満たすように設計されたサステナビリティ開示の包括的なグローバル・ベースラインとなる(公開草案-スナップショット「はじめに」)。 今回は、気候関連の開示について定めたIFRS S2号「気候関連開示」等の公開草案の概要について解説する。 IFRS S2号「気候関連開示」(以下、「S2号」という)等の公開草案は、以下のように構成されている。   1 S2号の目的 S2号の目的は、企業が重大な(significant)気候関連のリスク及び機会に対する情報を開示することにより、財務報告の利用者が以下を可能とすることにある(S2号1)。   2 S2号の範囲 S2号の範囲は、以下のとおりである(S2号3)。   3 開示内容 本連載の【第2回】で解説したとおり、開示の柱は、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標及び目標」である。 (1) ガバナンス(S2号4~6) (2) 戦略(S2号7~15) (3) リスク管理(S2号16~18) (4) 指標及び目標(S2号19~24)   4 企業の対応 S1号及びS2号が適用されることにより、有価証券報告書等の開示がどのように変わっていくかは、まだ明らかになっていない。一方、気候関連を含む非財務情報の開示は、今後、拡大することは避けられないと考えられる。 そのため、企業が今、行うべき対応は、情報収集を行い、現状、開示が進んでいる会社ではどの程度の開示を行っているかを把握し、自社でそのレベルの開示を行うためには、どうすればよいかをシミュレーションすることが大事であると考えられる。 情報収集するにあたっては、本連載の【第1回】に情報ソースを記載しているため、参照されたい。 (連載了)

#No. 488(掲載号)
#西田 友洋
2022/09/29

〔具体事例から読み取る〕“強い”会社の仕組みづくりQ&A 【第8回】「違反行為等の自己申告を促す「リニエンシー制度」導入によるメリット」

〔具体事例から読み取る〕 “強い"会社の仕組みづくりQ&A 【第8回】 「違反行為等の自己申告を促す「リニエンシー制度」導入によるメリット」   米国公認会計士・公認内部監査人 打田 昌行   ◆◇ 解 説 ◇◆ 1 違法行為や反倫理的行為に関する自己申告の実際 筆者は、長年にわたり内部統制報告制度の導入現場で仕事をしてきたが、そのなかでリニエンシー制度にまつわる経験をしている。それは、国内外に多くの拠点を持つ上場会社で、架空売上による不正が複数件にわたり発覚した時のことである。経営層はこれに対して、他の拠点でも同様の不正が蔓延っているのではないかと大きな危機感を抱いた。そこで彼らは、とても賢明な対策を考え出した。 それは、ほかにも架空売上に加担した者は、一定期間内に必ず名乗り出ること、もし名乗り出れば、処分は軽減するか、理由によっては不問に付すという呼びかけを実施することであった。当時はリニエンシー制度という名称は存在していなかったが、これがまさに、リニエンシー制度そのものである。その後、会社では、呼びかけに応じて複数の者が自ら不正を名乗り出て、不正調査に一定の効果をあげたといわれている。過日、この会社がリニエンシー制度を正式に導入することを決めたことは言うまでもない。   2 リニエンシー制度がもたらすメリットを考える 会計上の不正に限らず、パワハラ、セクハラ、違法な時間外労働などの違法行為や反倫理的な行為に対して、企業が日頃から眼を光らせ、これらを早期に摘発しようとすれば、対応する陣容、コスト、それに費やす時間等はおのずから膨大とならざるを得ない。 こうした取り締まりと摘発に要する膨大なコストに対し、得られる効果は必ずしも見合うものではない。しかし、いったんは違法行為や反倫理的な行為に手を染めても、その張本人が処分の軽減を条件として自発的に名乗り出る機会を認めるならば、会社は調査や摘発に要するコストに頭を悩ます必要はなくなる。本人による自己申告を求めるリニエンシー制度は、企業にとって効率的で、コストを省くうえで高い効果を持つ制度である。そして、このリニエンシー制度は、談合やカルテルを取り締まる公的機関でも実際に導入されている。   3 公正取引委員会による課徴金減免制度 公正取引委員会は、独占禁止法に基づいて日頃から談合やカルテルに対して厳しい監視の眼を光らせている。談合やカルテルは、まさに密室で画策される悪事に他ならず、明るみにすることは難しい。 そこで企業が自ら関与した入札談合やカルテルについて、違反の内容を公正取引委員会に自主的に報告した場合には、課されるべき課徴金が減免される仕組みを導入している、これが課徴金減免制度である。さらに自主的に報告した順位と事件の真相解明に貢献した程度に応じ、減免の割合が異なる調査協力減算制度を採用し、実際に減免率を明確にして公表をしている。 これらの制度は独占禁止法に定められ、談合やカルテルに手を染めた企業に自己申告を求めている。この制度の根底にはリニエンシー制度の考え方が存在する。こうした、リニエンシー制度導入の実情の裏を返せば、密室で行われる談合やカルテルの摘発がいかに困難であるかを暗示している。   4 公正取引委員会による実際の摘発事例 近年の摘発事例としては、リニア中央新幹線の建設工事をめぐるゼネコン大手4社の談合事件があった。公正取引委員会は、優越的な地位を濫用し談合を行ったとして、独占禁止法違反を認定、大成建設、鹿島、大林組、清水建設の4社に対して違反行為の是正、再発防止などを求める命令を出した。 これら4社は、リニア中央新幹線の品川、名古屋駅の新設工事において談合を図った。しかしこのなかで、大林組と清水建設の2社は、課徴金減免制度に基づき、談合行為について自己申告を行っており、本来支払うべき課徴金の額から30%の減免を受けた。リニエンシー制度が密室における談合の切り崩しに効果を上げた好事例といえよう。   5 企業内のリニエンシー制度における懲戒処分等の開示 独占禁止法における調査協力減算制度では、罰金が軽減される状況を数量化して明確に示すことができるが、社内の懲戒等の処分について、あらかじめこうした明示をすることは困難である。なぜなら違反の態様や違反者の立場や状況に応じ、企業は事案ごとに、個別かつ具体的に検討を行い、処分を決定せざるを得ないからである。 しかし、リニエンシー制度を用いた場合に、どの程度処分の軽減についてメリットがあるのか、懲戒事例を公表して、社内周知を図らなければ、具体的な成果は上がらないという議論がある。懲戒処分の軽減事例の開示にあたっては、実際に処分を受けた者が持つ個人情報保護の権利(プライバシー)の保護や処分の公平性を知らせるために、どこまで個別の処分情報を開示するのか、開示情報の一般性をどのように確保するのか、まずこうした課題を十分にクリアにしたうえで、開示することが求められる。   6 悪事に手を染めた者との取引を認めるか 懲戒処分等を軽減することを材料に、法や倫理に触れた違反者との取引を行うこと自体、企業倫理上問題であるという少々潔癖な反論もある。 しかしながら、コンプライアンスを貫き企業の運営を推進するには、法令違反に関与した者といえども、自主的な通報や調査に積極的に協力する機会を与えることで、問題の早期発見と解決を図ることができる。処罰等の処分の減免は、得られる成果を補って余りある、合理的かつ妥当な対応ではないだろうか。 刑事訴訟法の改正に基づく、いわゆる日本版の司法取引制度が2018年より導入されている。社内で犯罪に加担した者が、検察官と取引に応じ、起訴等の処分の軽減と引き換えに内部情報を提供した結果、日産自動車のゴーン元会長の逮捕に大きな成果を上げた。 違反者といえども、その情報提供がなければ、より大きな悪を裁くことができないと考えると、リニエンシー制度は極めて賢明かつ戦略的な仕組みであると考えられる。 (了)

#No. 488(掲載号)
#打田 昌行
2022/09/29

〔相続実務への影響がよくわかる〕改正民法・不動産登記法Q&A 【第10回】「形骸化した登記の抹消手続き簡略化の概要」

〔相続実務への影響がよくわかる〕 改正民法・不動産登記法Q&A 【第10回】 「形骸化した登記の抹消手続き簡略化の概要」   司法書士 丸山 洋一郎 弁護士 松井 知行    【Q】 形骸化した登記(存続期間が満了している地上権等や買戻しの期間が経過している買戻しの特約)の抹消手続きが簡略化されたと聞きました。今回のこの改正について教えてください。 【A】 所有者不明土地の利用を円滑にする観点から、存続期間が満了している地上権等の登記を抹消するにあたり登記義務者の所在の調査を簡略にした。また、買戻しの期間が経過している買戻し特約の登記を一定の条件で登記権利者が単独で抹消できることとした。 -《解説》- 郊外の不動産を開発して、物流施設や太陽光パネルを設置する大規模な発電施設を建設することがある。このような郊外の不動産には、存続期間が満了している地上権の登記や買戻しの期間が経過している買戻しの特約の登記が設定されたままになっていることがまま見られる。この形骸化した登記が原因で不動産の売却が進まず、物流施設や太陽光発電施設の建設が進まないという問題があった。 そのため、形骸化した登記の抹消を促進することで、不動産の所有権や利用権の取得を容易にし、土地の利用を円滑にすることが期待されていた。 この問題を解消するために、以下のように不動産登記法の改正がなされた。   1 存続期間が満了している地上権等の抹消の調査手続き もともとは、登記の存続期間が満了した地上権、永小作権、質権、賃借権若しくは採石権を抹消する場合において、登記義務者やその相続人の住所地等での現地調査を踏まえた調査報告書の提出が求められていた。そして、このような調査のため現地まで行き情報を収集することの手間とコストが問題になっていた。 この手間とコストを解消するために、登記義務者やその相続人の住所地に宛てて、配達証明付きの郵便物を送りその郵便が不到達であることを証明する調査で足りることになると考えられている(不動産登記法70条2項)。   2 買戻しの特約に関する登記の抹消手続きの簡略化 県や住宅供給公社等から土地を購入する際には、買戻し特約の登記を付けることがある。この買戻の期間は最長で10年だが、10年を経過した買戻しの特約を抹消する場合でも、買戻し権利者と土地の所有者が共同して登記を申請する必要があった。このため、土地の所有者は買戻し権利者に連絡を取り、買戻しの特約に関する登記の抹消手続きへの協力を要請しなければならなかった。 ところが、買戻し期間の法律の上限は10年であり、伸長をすることはできない(民法580条1項・2項)。とすると、10年を経過し、明らかに買戻し特約の効力が消滅しているならば、所有者が単独で抹消できるとしても買戻し権利者を害しない。 そこで、買戻しの特約に関する登記がされている場合において、契約の日から10年を経過したときは、登記権利者は、単独で当該登記の抹消を申請することができることになった(不動産登記法69条の2)。   3 施行日 形骸化した登記の抹消手続きの簡略化は令和5年4月1日に施行される。 (了)

#No. 488(掲載号)
#丸山 洋一郎、松井 知行
2022/09/29

プラス思考の経済効果 【第7回】「請求書電子化による経済効果」

プラス思考の経済効果 【第7回】 「請求書電子化による経済効果」   関西大学名誉教授・大阪府立大学名誉教授 宮本 勝浩   1 はじめに 今回は、日本の経済社会に貢献する経済効果についてお話ししましょう。日本社会のIT化の現状は世界の水準から見れば非常に遅れているのです。 次の表はスイスのIMD(国際経営開発研究所)が2021年9月29日に発表した「世界デジタル競争力ランキング」です。 〈世界デジタル競争力ランキング〉 このランキングは国ごとのデジタル化の取り組みについて52項目ごとに順位付けをして最後に総合評価したものです。日本は数学、高等教育の教師と生徒の比率、ロボット研究、高度技術特許への助成金などの分野で高い評価を受けているものの、国際経験、デジタルスキル、教育に対する公的支出、企業の機敏さ、ビッグデータ解析の利用などの分野でかなり低い評価を受けています。 日本はアメリカやヨーロッパの国々に後れを取っているだけではなく、アジアにおいても、香港、シンガポール、台湾、UAE、韓国、中国、マレーシアにも抜かれてなんと28位なのです。つまり世界の各国や地域はデジタル競争で世界の最先端を目指しているのに、日本は昭和の時代のままの状態でとどまっているのと同じです。ですから、将来に向けて、日本は官民が協力してデジタル化を推進しなければいけません。   2 デジタル化とは デジタル化とは、「ITの進化によりヒト、モノ、コトの情報が繋がることによって、競争力のあるサービスやビジネスモデルを創りだし、プロセスの高度化を実現すること」であると定義されています。 今回は、ビジネスの習慣である「請求書」の発送を紙媒体ではなく電子化することによって、日本全体でどれだけの経済効果があるかということを推計してみましょう。 請求書には一般的に責任者のサイン、印鑑、収入印紙などは不要です。それであれば簡単にパソコンで情報の発送ができるはずです。 請求書が電子化されることによるメリットは大きく分けて2つあります。1つは請求書発送の費用(郵送費など)の削減です。もう1つは、請求書の作成、発送の業務がなくなり、省力化による人件費の削減ができることです。   3 企業規模による分類 企業の規模別分類を「中小企業基本法」に基づいて行います。そして、資本金、従業員数、業種に基づいて、大企業、中規模企業、小規模企業の3種類に分けます。 中小企業庁発表の「中小企業白書2019年版」によると、大企業、中規模企業、小規模企業の数は次のとおりです。   4 企業規模別の請求書の発送数 本節では、企業規模別の請求書の発送枚数を推計します。同じ企業規模であっても、製造業、商業、サービス業などの業種によっても請求発送枚数はかなり異なっています。詳細なデータが非常に少ないので、本報告書では株式会社ROBOT PAYMENT(以下「R社」)のデータに基づいて推計しました。結果は以下のとおりです。   5 請求書電子化による請求書発送費用の削減額 紙の請求書を1通発送にする時に必要な費用は、普通郵便、書留郵便、速達郵便、レターパックライト、宅配メール便など種々の方法があり、それぞれ料金は異なりますが、R社が2015年4月に発表した調査結果では、紙の請求書の発送費用は、1通当たり平均126円かかると発表されています。本報告書でもこの金額を使用します。その結果、規模別企業の請求書発送の費用は次のとおりです。 (1) 大企業 大企業は1社平均毎月1,984枚の請求書を発送しているので、1企業当たりの費用は年間約299万9,808円となります。 (2) 中規模企業 中規模企業は1社平均毎月660枚の請求書を発送しているので、1企業当たりの費用は年間約99万7,920円となります。 (3) 小規模企業 小規模企業は1社平均毎月73枚の請求書を発送しているので、1企業当たりの費用は年間約11万376円となります。   6 請求書電子化により削減される人件費 請求書が電子化されることにより、会計・経理担当の従業員の労働時間が短縮されます。その削減される費用がいくらになるかを推計します。 本来は、請求書が電子化されることにより、従業員が発送業務から解放されて他の業務に従事することができるようになり、企業の生産性が向上すると想定されますが、各企業の生産性を推計するにはデータが乏しく、また計測は困難であると考えられますので、本論では、請求書が電子化され、会計・経理担当の従業員の労働時間が短縮されることにより削減される人件費がいくらになるかを推計します。 (1) 紙の請求書発送による会計・経理担当従業員の作業、手間 紙の請求書発送に関する会計・経理担当従業員の作業、手間のうち電子化により省略されるのは、請求書作成と発送の作業、手間です。R社が2015年4月に発表した調査結果では、「エクセルなどを使用して手作業で行う請求書作成の作業、手間」と「請求書発送の作業、手間」は、合計で1通当たり約4分かかると分析しています。このデータを用いて計算すると次のようになります。 (2) 企業規模別の請求書電子化により削減される人件費 厚生労働省の「平成30年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)」を参考にすると、大企業における請求書発送の従業員の労働時間の平均賃金(時給換算)の時給は2,307円、中規模企業では1,849円、小規模企業では1,570円となります。 その結果、大企業では毎年1社平均約366万1,668円、中規模企業では約97万6,272円、小規模企業では約9万1,692円の人件費が削減されます。   7 請求書電子化による企業規模別経済的総利益 請求書を電子化した場合の企業の経済的利益は、紙の請求書の送付に必要な郵送費用が削減される費用と、紙の請求書の作成・発送の従業員の省力化により削減される人件費の合計額であると考えられますので、企業規模別経済的利益は以下のとおりになります。 〈請求書電子化の経済効果〉 (※) すでに請求書を電子化している企業は除いています。   8 まとめ 請求書を電子化するだけで、大企業は年間1社平均約666万円、中規模企業は約198万円、小規模企業は約20万円、日本全体では約1兆1,424億2,182万円の利益が発生することがわかりました。 本稿の基になる報告書「請求書電子化による経済効果」(2020年9月30日)を関西大学からプレスリリースしたのち、当時の行政改革担当の河野太郎大臣の事務官から「その報告書を勉強会の資料として使用したい」との連絡があり、河野大臣の勉強会にお送りしました。 請求書の電子化はすぐに実行できて、すべての企業が利益を得る企業改革です。日本は早急にデジタル化推進のために請求書を電子化すべきでしょう。 (了)

#No. 488(掲載号)
#宮本 勝浩
2022/09/29

《速報解説》 経済産業省、『「スピンオフ」の活用に関する手引』を改訂~スピンオフ活用の更なる推進に向け、関係法令解釈明確化等のためのQ&Aの追加等行う~

《速報解説》 経済産業省、『「スピンオフ」の活用に関する手引』を改訂 ~スピンオフ活用の更なる推進に向け、関係法令解釈明確化等のためのQ&Aの追加等行う~   太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太   1 はじめに 経済産業省は令和4年9月16日付けで『「スピンオフ」の活用に関する手引』を改訂し、Q&Aの追加等を行った。 経済産業省は、日本企業が収益力や中長期的な企業価値の向上に向け、大胆な事業再編を行うことを可能とするための環境整備の取組みの一環として、『「スピンオフ」の活用に関する手引』を公表している。 今回は、より使い勝手を向上させ、事業再編の手法としてスピンオフを活用しやすくすることを目的として、この手引の改訂が行われた。 そこで本稿では、手引の改訂内容について解説していくこととする。   2 改訂の主な内容 改訂の主な内容は、以下のとおりである。   3 関係法令の解釈の明確化等のために追加されたQ&Aのポイント (1) 税務に関するQ&A (2) 税務以外に関するQ&A   4 さいごに 経済産業省は、令和5年度税制改正にあたって、「事業切出しの手法の一つであるスピンオフについて、段階的に事業を切り出そうとする企業などが活用できるよう、スピンオフを行う企業に持分を一部残す場合についても、スピンオフの実施を円滑化するための所要の措置を講ずる」旨の改正要望を提出しているため、今後の税制改正の動向についても注視する必要がある。 (了)

#川瀬 裕太
2022/09/27

プロフェッションジャーナル No.487が公開されました!~今週のお薦め記事~

2022年9月22日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.487を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2022/09/22

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第1回】

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第1回】   千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也   連載に当たって 令和4年6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針2022)において、日本政府は「Web3.0」を日本の成長戦略に組み込んだ(「Web3」、「web3」など表記方法や用語の使い分けが複数存在するが、本連載では「Web3.0」と表記する)。 そこでは、「第2章 新しい資本主義に向けた改革」の「2.社会課題の解決に向けた取組」の「(3)多極化・地域活性化の推進」の箇所において、要旨次のとおり述べている。 Web3.0について、経済産業省作成の「経済秩序の激動期における経済産業政策の方向性」(令和4年5月19日)の30頁では、次のとおり、デジタル技術の発展に合わせて、Web社会を3つの段階に分けて捉える考え方を紹介している。 また、上記の骨太の方針2022に先立ち、自由民主党政務調査会デジタル社会推進本部作成の「デジタル・ニッポン2022~デジタルによる新しい資本主義への挑戦~」(令和4年4月26日)の33頁は、国家戦略の策定・推進体制の構築という文脈で、「Web3.0やNFTを新しい資本主義の成長の柱に位置付け、Web3.0 担当大臣を置き、経済政策の推進、諸外国との連携の司令塔とすべき。省庁横断の相談窓口を置くべき」と提言している。 同資料31頁は、次世代インターネットとして注目されるWeb3.0は、ブロックチェーン技術で個人情報が暗号化され、複数ユーザーで共有しあうため、セキュリティに強く、特定のプラットフォーマーに依存しない技術として、主に次のような特徴を持つとしている。 このような状況の中で、本連載は、主として、Web3.0の時代をけん引する可能性がある重要なツールである暗号資産(仮想通貨)及びNFTに着目し、その税務上の取扱いや問題点を解説・検討する。 暗号資産及びNFTに係る取引は既に日本でも行われているが、その税務上の取扱いが明らかでないものが多数存在する。 これらの税務上の取扱いや問題点を明らかにするためには、税法の知識のみならず、私法や規制法の理解、時には技術的な側面までも理解する必要があると考える。 そこまでしてもなお、その税務上の取扱いを明らかにすることができないものも少なくないであろう。 しかしながら、申告納税制度を採用している以上、納税者は、租税の専門家の助けを借りつつも、自らの責任においてその税務処理を適正に行わなければならない。 本連載では、このような状況に置かれている納税者や税理士が、暗号資産やNFTの取引に係る税務処理を検討し、課税関係を判断する際に有益な情報を提供することを主たる目的とする。 NFTの譲渡代金やNFT取引に係る手数料は、通常、暗号資産で支払われる。よって、NFTの課税関係を検討する際には、暗号資産の課税上の取扱いに関する知識が必要になる。そこで、本連載では、暗号資産、NFTの順に、その税務上の取扱いや問題点を解説・検討する。 なお、暗号資産の種類は膨大な量に膨れ上がっているが、本連載では、説明の便宜上、暗号資産の種類や単位の例示として、主に、BTC(ビットコイン)やETH(イーサ)を用いる。 (了)

#No. 487(掲載号)
#泉 絢也
2022/09/22

〈令和4年度税制改正の解説〉完全子法人株式等の配当に係る源泉徴収の見直し 【第1回】

〈令和4年度税制改正の解説〉 完全子法人株式等の配当に係る源泉徴収の見直し 【第1回】   太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太   1 はじめに 令和4年度税制改正により、「完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例措置」が創設されることとなった。本連載では、この新たに創設された完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例措置について2回にわたり解説する。 【第1回】では、まず改正の背景と特例措置の内容について確認する。   2 改正の背景 会計検査院は令和2年11月に、完全子法人株式等に係る配当等の全額及び負債利子を控除した関連法人株式等に係る配当等の全額については、益金不算入となるにもかかわらず、これらの配当等について源泉徴収を行った場合、納税者側では配当等に係る源泉徴収により一時的な資金負担と事務負担が生じ、税務署側でも還付金及び還付加算金の支払事務が生じるという点で、源泉徴収の制度趣旨に必ずしも沿ったものとなっていないと指摘し、本来の趣旨に沿ったより適切なものとするための検討を行うよう求めていた。 これを受け、令和4年度税制改正において、完全子法人株式等及び関連法人株式等の配当に係る源泉徴収の見直しがされることとなった。 なお、改正の背景の詳細にあたっては、以下の拙稿を参照されたい。   3 完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例措置 (1) 改正内容 一定の内国法人が支払を受ける配当等で、原則として全額に法人税が課されない一定の株式等に係る配当等については、所得税を課さないこととし、源泉徴収義務の対象から除外されることとなる。 一定の内国法人とは、内国法人のうち、一般社団法人及び一般財団法人(公益社団法人及び公益財団法人を除く)、人格のない社団等並びに法人税法以外の法律によって公益法人等とみなされている一定の法人以外の法人をいう。 (2) 特例措置の適用対象となる配当等 所得税を課さないこととし、源泉徴収義務の対象から除外される一定の株式等に係る配当等とは、次に掲げるものをいう(所法177、所令301②)。 (※1) 「自己の名義をもって有するもの」とは 財務省ホームページで公表されている「令和4年度税制改正の解説」88頁によると、「自己の名義をもって有するもの」とは、組合や信託経由で所有するもの以外のものとされている。 (※2) 「基準日等」とは 「基準日等」とは、法人税法施行令第22条第1項(関連法人株式等の範囲)に規定する基準日等をいう(所令301②)。 (3) 受取配当等の益金不算入制度における株式等の区分 受取配当等の益金不算入制度における完全子法人株式等と関連法人株式等は、次のとおりである(法法23④⑤、法令22、22の2)。 ① 完全子法人株式等 完全子法人株式等とは、配当等の額の計算期間を通じて内国法人との間に完全支配関係があった場合の当該他の内国法人の株式等をいう。 ② 関連法人株式等 関連法人株式等とは、内国法人(その内国法人との間に完全支配関係がある他の法人を含む)が他の内国法人の発行済株式等の3分の1を超える株式等を、配当等の額の計算期間の初日からその計算期間の末日(計算期間が6ヶ月を超える場合には、基準日までの6ヶ月間)まで引き続き有している場合における当該他の内国法人の株式等をいう。 (4) 受取配当等の益金不算入制度と特例措置との比較 受取配当等の益金不算入制度と特例措置を比較すると、以下の点で相違があるため注意が必要である。 ① 完全子法人株式等 受取配当等の益金不算入制度と特例措置とでは、完全子法人株式等の定義は同じであるが、受取配当等の益金不算入制度とは異なり、特例措置では自己の名義をもって有するものに限定されている。 ② 保有割合3分の1超の株式等 受取配当等の益金不算入制度と特例措置とでは、対象となる株式等の範囲が異なっており、特例措置では、そもそも関連法人株式等と定義されておらず、自己の名義をもって有するものに限定されている。 保有割合の判定も、受取配当等の益金不算入制度では継続保有が求められているが、特例措置では、配当等の額に係る基準日等の一時点で行うこととされ、継続保有を求めていない。 また、受取配当等の益金不算入制度では、令和2年度税制改正により、令和4年4月1日以後開始事業年度から、完全支配関係がある他の法人の保有株式数等を含めて保有割合を判定することとなったが、特例措置では、間接保有は含めず単独の保有割合で判定する。 これらの違いは、源泉徴収義務者である配当を支払う法人側で判断を行うことが実務上難しいことを考慮したためと考えられる。 《受取配当等の益金不算入制度と特例措置との比較》   (【第2回】に続く)

#No. 487(掲載号)
#川瀬 裕太
2022/09/22

〔令和4年度税制改正における〕賃上げ促進税制の抜本的見直しについて 【第2回】

〔令和4年度税制改正における〕 賃上げ促進税制の抜本的見直しについて 【第2回】   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   ←(前回) | (次回)→   (2) マルチステークホルダー方針公表要件 マルチステークホルダー方針公表要件は、令和4年度の税制改正で新たに追加された要件であり、一定規模以上の法人については、多様なステークホルダー(利害関係者)に配慮した経営への取組を行うことが社会的責任として求められるとの認識のもと、そうした取組を行っている法人に限り賃上げ促進税制の適用を行うこととされた。 具体的には、一定の「マルチステークホルダー方針」を自社のホームページに公表するとともに、公表した旨を経済産業大臣に届け出ることが必要である。さらに、公表届出後に経済産業大臣から発行される「受理通知書」の写しを確定申告書に添付することが必要である(措法42の12の5①、措令27の12の5①②)。 このための具体的な手続については、「事業上の関係者との関係の構築の方針の公表及び届出に係る手続を定める告示」(令和4年3月31日 経済産業省告示第88号)が公表されていることから、以下その内容について紹介する。 ① 対象法人 事業年度末における資本金の額(又は出資金の額)が10億円以上であり、かつ、常時使用従業員数が1,000人以上である法人において、本要件を満たす必要がある。 ② マルチステークホルダー方針の内容 マルチステークホルダー方針に含まれる内容としては、給与等の支給額の引上げの方針、下請事業者(下請中小企業振興法2④)その他の取引先との適切な関係の構築の方針その他の事業上の関係者との関係の構築の方針に関する事項として厚生労働大臣、経済産業大臣及び国土交通大臣が定める事項とされ(措法42の12の5①、措令27の12の5①)、厚生労働大臣、経済産業大臣及び国土交通大臣は、これに係る事項を定めたときは、これを告示することとされている(措令27の12の5㉖)。 具体的には、「事業上の関係者との関係の構築の方針に記載する事項を定める告示」(厚生労働省・経済産業省・国土交通省告示第1号 令和4年3月31日)において、以下のように定められている。 このうち「下請事業者その他の取引先との適切な関係の構築の方針」については、別途、「パートナーシップ構築宣言」の作成と公表も求められている点に留意が必要である。実際には、以下の【様式第一】に従いこれらの方針を記載することとなる。経済産業省が公表する『大企業向け「賃上げ促進税制」御利用ガイドブック』(令和4年7月6日公表版)では、詳細な記載要領も示されている。 【様式第一】 【記載要領】 ③ 公表の方法及び期間 マルチステークホルダー方針は、自社のホームページに掲載する方法により公表することとし、公表期間は以下のいずれか遅い日までとされる。 ④ 公表した旨の届出 マルチステークホルダー方針を公表した旨の届出は、適用事業年度終了の日の翌日から起算して45日を経過する日までに、所定の事項を記載した届出書(【様式第二】)を経済産業大臣に提出することにより行う。もちろんこの届出は、適用事業年度中であっても、公表後であれば提出することが可能である。 【様式第二】 ⑤ 届出の受理 届出が受理されると、経済産業省より受理通知(【様式第三】)が発行される。 本税制の適用を受けるためには、確定申告書にこの受理通知の写しを添付する必要がある(措令27の12の5②)。 【様式第三】 ⑥ 届出事項の変更 ⑤の通知書を受理した後において、マルチステークホルダー方針の公表に係る事項について変更が生じた場合には、すみやかに変更届出書(【様式第四】)を経済産業大臣に届け出なければならない。 変更届出書の届出後、あらためて受理通知(【様式第三】)が発行される。 【様式第四】 ⑦ 届出手続の詳細 届出手続は、原則として、申請ウェブサイト「gBiz FORM」内の「小規模手続のオンライン申請・届出」でのみ受け付けているため、事前に「gBizIDプライム」のアカウントの作成を行い、その後、「gBiz FORM」内の「小規模手続のオンライン申請・届出」から届出を行うこととなる。 届出に不備がない場合にはそのまま受理され、受理通知書(【様式第三】)が郵送にて発出されるが、届出の受理から受理通知書の発出までの手続に約15日を要するとのことである。あまり期日ギリギリになって届出を行った場合、受理通知書の受取りが申告期限に間に合わなくなる可能性もあるため、申告書の提出スケジュール管理上も十分に留意が必要である。 (【第3回】に続く)

#No. 487(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2022/09/22
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