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居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第29回】「生計を別にする兄弟姉妹へ譲渡した場合(特殊関係者の範囲)」-特殊関係者に対する譲渡-

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第29回】 「生計を別にする兄弟姉妹へ譲渡した場合(特殊関係者の範囲)」 -特殊関係者に対する譲渡-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、20年前に取得した居住用家屋とその敷地を、本年3月に、Xの弟であるY(XとYは生計も住居も別で、譲渡後に当該家屋に同居する予定もありません)に売却しましたが、地価の下落による多額の譲渡損失が発生しました。 その売却金額だけでは新居の売買価額に至らず、住宅ローンを組んで購入し、本年5月から居住しています。 譲渡先が親族の場合でも、「居住用財産買換の譲渡損失特例(措法41の5)」を受けることができるでしょうか。 A Xは「居住用財産買換の譲渡損失特例」を受けることができます。 ●○●○解説○●○● 「居住用財産買換の譲渡損失特例」は、譲渡した資産の譲受者が、次に掲げる者に該当する場合には、本特例の適用は受けられません(措法41の5⑦一、措令26の7③、法令4②)。 本事例の場合の譲受者Y(弟)は、譲渡者X(兄)の直系血族ではなく、生計も住居も別であり、また、居住用家屋の譲受け後に同居する親族でもないことから、特殊関係者(上記に掲げる者)に該当しません(措令26の7③、法令4②)。 したがって、Xは「居住用財産買換の譲渡損失特例」を受けることができます。 なお、「特定居住用財産の譲渡損失特例(措法41の5の2)」についても、譲渡した資産の譲受者に係る同様の除外規定が定められています(措法41の5の2⑦一、措令26の7の2③、法令4②)。 (了)

#No. 419(掲載号)
#大久保 昭佳
2021/05/13

収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第53回】

収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第53回】   千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也   オ 法人税法22条の2第4項の「別段の定め」から22条4項を除いた趣旨 法人税法22条の2第4項は、資産の販売等に係る収益の額として第1項又は第2項の規定により、その事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入する金額は、「別段の定め(前条第4項を除く。)があるものを除き」、その販売又は譲渡をした資産の引渡しの時における価額、あるいはその提供をした役務につき通常得べき対価の額に相当する金額とすると規定している。 かように、法人税法22条の2第4項の「別段の定め」から22条4項が除かれた趣旨については、第1項の場合と同様であると説明されている(財務省『平成30年度 税制改正の解説』275頁)。 第1項の解説箇所では、資産の販売等に係る収益の額について法人税法22条4項と22条の2の両方が適用されると、割賦基準・延払基準のようにこれらの規定が互いに抵触する場合に優先関係が不明確となるおそれがあることから、優先関係を明確にするために、収益認識の時期については法人税法22条4項が適用されないこととした、という説明がなされていた(本連載第18回参照)。 カ 法人税法22条の2第4項の「別段の定め」の具体例 法人税法22条の2第4項の「別段の定め」の具体的例示として、以下の法人税法の規定が挙げられている。 (※) 財務省『平成30年度 税制改正の解説』275頁 法人税法61条の2を22条の2第4項の「別段の定め」と整理することについては検討の余地がある。 法人税法22条2項は次のとおり定めている。 すると、第一次的には、「別段の定めに該当しない」取引に係る「収益の額」が益金の額に算入され、「別段の定めに該当する」ものは「収益の額」のルートを通らずに益金の額に算入することにならないか。言い換えれば、ある規定が法人税法22条2項の「別段の定めに該当する」場合、形式上、同項の「収益の額」には進まないのではないか。 このような理解を一律に当てはめるのであれば、そして、有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入について定める法人税法61条の2は22条2項の「別段の定め」であると解するならば、法人税法61条の2の適用がある場合には、同条が22条2項の「別段の定め」であるとして同項の「収益の額」には進まず、ひいては22条の2の適用ないし併用もないのではないか。 法人税法61条の2は64条と異なり、「収益の額」という語を使用してもいない。このように考えると、法人税法61条の2は22条2項の「収益の額」とは異なるルートで益金の額に向かう規定であるという見方も成り立ちうる。 そうすると、法人税法61条の2が収益の計上額に関する規律である22条の2第4項の「別段の定め」であるという立案担当者の解説は検討の余地があるか、少なくともわかりづらい面がある。   (了)

#No. 419(掲載号)
#泉 絢也
2021/05/13

収益認識会計基準を学ぶ 【第4回】「契約の結合」

収益認識会計基準を学ぶ 【第4回】 「契約の結合」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 収益認識会計基準は、「顧客」との「契約」から生じる収益に関する会計処理及び開示に適用するとされており、契約は書面、口頭、取引慣行等により成立する(収益認識会計基準3項、20項)。通常、企業は得意先(顧客)と「契約書」を締結していることが多いと思われる。 収益認識会計基準では、契約に関して、「契約の結合」の規定を設けており、「契約」の検討をする際には、当該規定にも注意が必要である。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 顧客との個々の契約 収益認識会計基準の定め(収益認識適用指針92項から104項に定める重要性等に関する代替的な取扱いを含む)は、顧客との個々の契約を対象として適用する(収益認識会計基準18項)。 ただし、収益認識会計基準の定めを複数の特性の類似した契約又は履行義務から構成されるグループ全体を対象として適用する、いわゆるポートフォリオ・アプローチも規定されている(収益認識会計基準18項ただし書き)。   Ⅲ 契約の結合 前述のとおり、収益認識会計基準は、基本的には、顧客との個々の契約を対象として適用するが、一定の要件を満たす場合には、複数の契約を結合し、単一の契約とみなして処理することを規定している。これを「契約の結合」という(収益認識会計基準27項)。 1 契約の結合の要件 同一の顧客(当該顧客の関連当事者を含む)と同時又はほぼ同時に締結した複数の契約について、次の①から③のいずれかに該当する場合には、当該複数の契約を結合し、単一の契約とみなして処理する(収益認識会計基準27項)。 2 同一の顧客に関する関連当事者 収益認識会計基準27項は、「同一の顧客」に関して、「当該顧客の関連当事者を含む」と規定している。 契約の結合の定めにおける関連当事者(収益認識会計基準27項)とは、「関連当事者の開示に関する会計基準」(企業会計基準第11号)に定める関連当事者である(収益認識会計基準151項)。 「関連当事者の開示に関する会計基準」5項(3)では、「関連当事者」とは、ある当事者が他の当事者を支配しているか、又は、他の当事者の財務上及び業務上の意思決定に対して重要な影響力を有している場合の当事者等をいうとし、次に掲げる者を関連当事者と規定している。このため、「契約の結合」の要件を満たすかどうかの検討に際しては、顧客の関連当事者についても検討することになるので、注意が必要である。 顧客の関連当事者に関して、収益認識会計基準の公開草案に寄せられたコメント(「第1部:本公開草案の提案内容に関するコメント」No.33)では、顧客の関連当事者としては、子会社、関連会社などが想定され、例えば、関連会社との契約について契約の結合をした場合に、結合後の契約に基づいて取引価格の配分を行うことになるが、当該配分額は関連会社が認識している契約上の取引価格と異なることが想定されるので、売上債権を取引先別に適切に計上し管理できるのか疑問があるとのコメントが寄せられている。 企業会計基準委員会は、当該コメントに対して、コメントに挙げられたケース以外にも、さまざまなケースにおいて、取引価格と契約価格が異なる可能性があるが、債権管理は企業によりプロセス等が異なる可能性があり、収益認識会計基準等においては管理実務に言及しないこととしたと、その対応を記載している。 3 収益認識会計基準32項から34項の検討 収益認識会計基準32項は、契約における取引開始日に、顧客との契約において約束した財又はサービスを評価し、次の(1)又は(2)のいずれかを顧客に移転する約束のそれぞれについて履行義務として識別すると規定している。 下記の収益認識会計基準の規定については、収益認識適用指針においてさらに規定があるので、実際の適用に際しては注意が必要である。 4 契約の結合の趣旨 複数の契約は、区分して処理するか単一の契約として処理するかにより収益認識の時期及び金額が異なる可能性があるため、収益認識会計基準27項の要件を満たす場合には、複数の契約を結合して単一の契約として処理することとしている(収益認識会計基準121項)。 通常、顧客との契約は、企業が顧客に移転することを約束した財又はサービスを明示している(収益認識会計基準127項)。 わが国では、「契約書」は、企業と顧客が諸条件を合意したものであり、その履行に法的責任を伴うものであることから、「契約書」に客観的な合理性を認め、企業による過度の負担を回避するために、契約に基づく収益認識の単位及び取引価格の配分(すなわち、複数の契約を結合せず、個々の契約において定められている顧客に移転する財又はサービスの内容を履行義務とみなし、個々の契約において合理的に定められている当該財又はサービスの金額に従って収益を認識すること)を認めるべきであるとの意見があった(収益認識適用指針174項)。 一方、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」では、契約の結合、履行義務の識別及び独立販売価格に基づく取引価格の配分について定められており、「契約書」の記載とは異なる収益認識の単位の識別及び取引価格の配分が求められる可能性があるので、契約に基づく収益認識の単位及び取引価格の配分を無条件に認めると、IFRS第15号における契約の結合、履行義務の識別及び独立販売価格に基づく取引価格の配分による結果と乖離することへの懸念もあった(収益認識適用指針174項)。 これらを踏まえ、収益認識会計基準27項の要件を満たす場合には、「契約の結合」を行うことを原則としつつ、重要性等に関する代替的な取扱いとして、収益認識適用指針101項を規定している(収益認識適用指針174項)。   (了)

#No. 419(掲載号)
#阿部 光成
2021/05/13

コロナ禍に伴う企業の解雇・雇止めにおける留意点 【第2回】「雇止めを行う場合の留意点」

コロナ禍に伴う企業の解雇・雇止めにおける留意点 【第2回】 (最終回) 「雇止めを行う場合の留意点」   特定社会保険労務士 岩楯 めぐみ   前回は、「解雇」に係る留意点を確認した。 第2回は、「雇止め」についてその留意点を確認する。   1 雇止め 有期労働契約は、契約当事者である労働者・使用者双方の合意によって労働契約が更新され、労働者・使用者のどちらか一方が更新を拒否した場合には、期間満了により労働契約は終了する。このうち、使用者の更新拒否により期間満了により労働契約を終了させることを「雇止め」という。 雇止めについては、労働契約が反復更新された後になされるなどにより紛争化することも多くみられたため、平成25年4月の改正労働契約法に、最高裁判決で確立している雇止めに関する原則的な考え方(いわゆる「雇止め法理」)が明記された。   2 雇止め法理(労働契約法19条) 労働契約法19条では、労働者から更新の申込みがある有期労働契約について、次の①又は②のいずれかに該当する場合で、使用者が雇止めをすることが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、雇止めが認められず、従前と同一の労働条件で有期労働契約が更新されたものとみなすとしている。 なお、①及び②への該当性については、当該雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間管理の状況、雇用継続の期待をもたせる使用者の言動の有無などを総合的に考慮して、個々の事案ごとに判断される。 したがって、①又は②に該当する有期労働契約を雇止めする場合には、解雇の場合と同様に、客観的合理性と社会通念上の相当性が求められる。   3 コロナ禍における雇止め コロナ禍における業績不振のため人員削減をせざるを得ない場合に、労働契約法19条の上記①又は②に該当する有期労働契約を雇止めすることは、整理解雇に準じた雇止めとして整理される。よって、雇止めにあたっては、解雇の場合と同様に、【第1回】で確認した整理解雇の4要件(要素)である「人員削減の必要性」、「解雇回避努力」、「人選の合理性」、「解雇手続の妥当性」を踏まえた対応の検討が必要になる。 なお、雇止めにおける経営上の必要性については、正社員の場合と同様に「企業の維持存続が危殆に瀕するほどに差し迫った程度」までは不要だとする例(丸子警報器事件(注))がある。また、人選においては、一般的には、会社との密着度・貢献度などから正社員よりも有期労働契約などの非正社員が優先されることが多いが、その合理性については個別の状況に応じて判断されるため、正社員以外である有期労働契約を雇止めする場合も慎重に検討しなければならない。 (注) 丸⼦警報器事件(⻑野地裁上⽥⽀部平成9年10⽉29⽇判決・労判727号32⾴):判決理由の中で、「雇止めを必要とする経営上の都合については、それをしなければ企業の維持存続が危殆に瀕するほどに差し迫った程度のものでなければならないとすると、雇用調整を容易にすべく臨時社員制度を採用した意義が損なわれることになり、ひいてはそのような雇用形態を設ける自由をも否定することになってしまうから、そこまで厳格に解するべきではない」と⾔及され、高裁(東京⾼裁平成11年3⽉31⽇判決・労判758号7⾴)もこれを支持した。   4 雇止めの予告など 有期労働契約の締結、雇止め等に際して発生するトラブルを防止し、その迅速な解決が図られるようにするため、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(平成15年厚生労働省告示第357号、最終改正平成24年厚生労働省告示第551号)では雇止めに関して次の(1)及び(2)の対応を求めている。これは「告示」であって「法律」ではないため法的な強制力はないが、トラブル防止の観点からは対応すべきものとなる。 (1) 雇止めの予告 使用者は、次のいずれかに該当する有期労働契約(予め契約を更新しない旨が明示されている場合を除く)を更新しない場合には、少なくとも契約期間が満了する日の30日前までに予告しなければならない。 (2) 雇止めの理由の明示 使用者は、雇止めの予告後又は雇止め後に、労働者が雇止めの理由について証明書を請求したときは、遅滞なく交付しなければならない。 〈雇止めの理由(例)〉 (連載了)

#No. 419(掲載号)
#岩楯 めぐみ
2021/05/13

ハラスメント発覚から紛争解決までの企業対応 【第14回】「マタハラの「被害者」と周囲の労働者との調整を図るうえでの留意点」

ハラスメント発覚から紛争解決までの 企 業 対 応 【第14回】 「マタハラの「被害者」と周囲の労働者との調整を図るうえでの留意点」   弁護士 柳田 忍   【Question】 当社のA部署の社員Bは、育児休業から復帰後、短時間勤務制度を利用していますが、当社の経営状態が芳しくないため、A部署の増員はなされておらず、社員Bの育児休業取得・短時間勤務制度利用によりA部署の他の社員の業務負担が増しています。 しかし、社員Bは、他の社員への気遣いを見せることなく、当然のように他の社員に仕事を押しつけて帰宅するため、他の社員から不満が出ています。そこで、社員Bの上司Cが、社員Bに対して、「短時間勤務制度を利用するのは結構なことだけど、君の代わりに君の仕事をしなければならない他の社員にも配慮してほしい」と指導したところ、社員Bから「マタハラだ」との指摘を受けました。 上司Cの発言はマタハラに当たるのでしょうか。 【Answer】 マタハラには該当しない可能性が高いものと思われます。 ● ● ● 解 説 ● ● ● 1 はじめに 産前産後休業、育児休業や短時間勤務制度等は、法令上、妊娠・出産・育児等を行う労働者に認められた制度であり、要件を満たす労働者は当然にこれを利用することができる。しかし、その一方で、労働者がこれらの制度を利用することによって、当該労働者の業務の穴埋めをさせられることになった労働者から上記のような不満が寄せられることは多く、両者の関係をどのように調整すればよいか、頭を抱えている担当者も少なくないのではないかと思われる。 そこで、本稿においては、妊娠・出産・育児等を行う労働者と周囲の労働者との調整を図るとの観点から、マタニティハラスメント(マタハラ)の定義や指針等について概観する。   2 マタニティハラスメント(マタハラ)とは マタハラとは、一般に、①妊娠・出産・育児休業取得等(以下「妊娠等」という)を理由とする解雇・雇止め・降格・減給等の不利益取扱いや、②職場の上司・同僚からなされる妊娠等を理由とした職場環境を害する言動を指す。 本件で問題となりうるのは②のタイプのマタハラであるが、②のタイプのマタハラには「制度等の利用への嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」とがあり、具体的な内容については以下のとおりである(厚生労働省「第164回労働政策審議会雇用均等分科会」の資料6「妊娠等を理由とする不利益取扱いについて」参照)。   3 指針について 妊娠・出産・育児等を行う労働者と周囲の労働者との調整を図るとの観点において、指針における以下の記載が参考となる。 (※) 「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針」(平成21年厚生労働省告示第509号)第2.14.(三)ニ抜粋。「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(平成28年厚生労働省告示第312号)4.(4)も同内容。なお、下線は筆者による。 上記によると、使用者が、妊娠・出産・育児等を行う労働者に対して周囲の労働者との調和の意識を持つよう促すことは許されることであり、また、妊娠・出産・育児等を行う労働者と周囲の労働者との調整を図るよう配慮することは使用者の義務であるとも言える。   4 本件について 以上をもとに、上司Cの発言について検討すると、まず、上司Cの発言は解雇その他の不利益取扱いを示唆するものではない。また、社員Bの短時間勤務制度の利用を前提とした発言であり、制度等の利用の請求や制度等の利用を諦めざるを得ない状況をもたらすものとまでは言えないと思われる。更に、上司Cの発言は、社員Bの配慮を希望するものに過ぎず、就業する上で看過できない程度の支障が生じる状況をもたらすものにも該当しないであろう。 よって、上司Cの発言はマタハラには該当しないものと思われる。 ただし、本件でA部署において社員Bの周囲の社員に業務負担が生じているのは、会社がA部署の人員の補充を行わないためであるから、会社としては、社員Bに配慮を求める前に、適切な人員配置を行う等して周囲の社員の業務負担の軽減を図るべきである。 (了)

#No. 419(掲載号)
#柳田 忍
2021/05/13

〔一問一答〕税理士業務に必要な契約の知識 【第17回】「税理士法上の懲戒処分とその具体例」

〔一問一答〕 税理士業務に必要な契約の知識 【第17回】 「税理士法上の懲戒処分とその具体例」   虎ノ門第一法律事務所 弁護士 高橋 弘行   〔質 問〕 税理士にとって、懲戒処分を受けることは最も注意しなければならないことです。税理士法上、税理士に対する懲戒処分は、どのような種類のものがあり、どのような場合に行われることとされているのでしょうか。 また、具体的な事例も教えてください。 〔回 答〕 税理士に対する懲戒処分の種類として、税理士法(以下、「法」といいます)第44条は、(1)税理士業務の禁止、(2)2年以内の税理士業務の停止、及び(3)戒告の3種類を規定しています。 このような懲戒処分は、税理士に対し不利益をもたらす処分ですので、懲戒処分の構成要件である懲戒処分事由は、法第45条及び法第46条において明確に規定されています(法第45条:不真正の税務書類の作成及び脱税相談等をした場合の懲戒、法第46条:一般の懲戒)。 これらの懲戒処分の基準・考え方・類型については、「税理士・税理士法人に対する懲戒処分等の考え方」として財務省告示(平成20年3月31日財務省告示第104号)により定められています。 ◆◆◆◆ 解 説 ◆◆◆◆ 1 懲戒処分の種類 税理士法は、税理士が、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図るべく活動することを期待し、これをその使命として規定(法第1条)するとともに、税理士又は税理士法人でない者は、原則として税理士業務を行ってはならないこととし(法第52条)、税理士業務を独占業務として法的保護を与えている。 このような法的保護が与えられている反面、税理士業務の執行は、一般納税者に対してのみならず、税務行政に対しても重大な影響を与えるものであることから、こうした点を踏まえ、監督上の行政処分として、税理士に対する懲戒処分制度が設けられている。 法第44条は、税理士に対する懲戒処分の種類として、(1)税理士業務の禁止、(2)2年以内の税理士業務の停止、及び(3)戒告の3種類を規定している。 (1) 税理士業務の禁止 税理士業務の禁止は、税理士業務を行ってはならない旨を命ずる処分、すなわち、不作為義務を命ずる処分であり、税理士に対する懲戒処分のうち最も重い処分である。 税理士業務の禁止処分を受けた者は、法第4条第7号の規定により処分を受けた日から3年を経過する日まで税理士となる資格を有しないこととなり、法第26条第1項第4号の規定により税理士登録を抹消されることとなる。 (2) 2年以内の税理士業務の停止 2年以内の税理士業務の停止は、税理士業務を行うことを一定期間やめることを命ずる処分である。 2年以内の税理士業務の停止処分を受けた者は、その停止期間中は税理士業務を行うことができないが、税理士登録は抹消されない。 (3) 戒告 戒告は、本人の将来を戒める旨の申渡しをする処分であり、懲戒処分としては最も軽いものである。 戒告処分を受けた者は、税理士業務あるいは税理士の資格について特に制約を受けないので、引き続き税理士業務を行うことができる。   2 法第45条(不真正の税務書類の作成及び脱税相談等をした場合の懲戒)による懲戒 (1) 定義 財務大臣は、税理士が、故意に、真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をしたとき、又は法第36条(脱税相談等の禁止)の規定に違反する行為をしたときは、2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止の処分をすることができることとされている(法第45条第1項)。 この場合の「故意」とは、事実に反し又は反するおそれがあると認識して行うことをいうものとされている。 また、法第36条は、「税理士は、不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ、又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき、指示をし、相談に応じ、その他これらに類似する行為をしてはならない」と規定し、税理士による脱税相談等を禁止している。 (2) 具体例 ① 脱税相談をした場合 ② 故意に不真正の税務書類の作成をした場合 【A】 税理士自らが仮装行為をし、不真正の申告書を作成した場合 【B】 関与先から真正の事実を知らされていたにもかかわらず、不真正の申告書を作成した場合 【C】 関与先からの依頼を受け、不真正の申告書を作成した場合 【D】 関与先からの依頼はないものの、自ら不真正の申告書を作成した場合   3 法第46条(一般の懲戒)による懲戒 税理士が、上記法第45条に該当する場合を除き、法第33条の2第1項若しくは第2項(計算書類、審査事項等を記載した書面の添付)の規定により添付する書面に虚偽の記載をしたとき、又は税理士法若しくは国税若しくは地方税に関する法令の規定に違反したときは、戒告、2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止の処分の対象とされている。 また、法第46条の懲戒事由については、告示において以下のとおり対象となる行為が例示されている。 (了)

#No. 419(掲載号)
#高橋 弘行
2021/05/13

《速報解説》 中小企業庁、経営者の高齢化や新型コロナの影響に対応し「中小M&A推進計画」を取りまとめる~今後5年間に実施すべき官民の取組を示す~

《速報解説》 中小企業庁、経営者の高齢化や新型コロナの影響に対応し 「中小M&A推進計画」を取りまとめる ~今後5年間に実施すべき官民の取組を示す~   公認会計士・税理士 荻窪 輝明   中小企業庁は、2021年4月28日に「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会」における検討を踏まえ、中小M&Aを推進するため今後5年間に実施すべき官民の取組を「中小M&A推進計画」として取りまとめた。 本計画は、経営者の高齢化や新型コロナウイルス感染症の影響に対応し、中小企業の貴重な経営資源の散逸を回避するとともに、事業再構築を含めて生産性の向上等を実現するため、中小企業の貴重な経営資源を将来につないでいくことを目的に策定されたものである。   1 中小M&Aの意義 本計画は「経営資源の散逸の回避」、「生産性向上等の実現」、「リスクやコストを抑えた創業」の3つの観点から、中小M&Aを推進する意義を説明している。   2 中小M&A対応の方向性 中小M&Aの実施件数は右肩上がりで増加しており、潜在的に対象となり得る事業者数は約60万者との試算もなされている。よって、中小M&Aは拡大途上にあると考えられ、希望する中小企業が円滑にM&Aを実施できる環境を速やかに整備することが必要である。 しかしながら、M&A支援機関が提供している支援について、案件規模によって内容や地域等に差があることから、中小M&Aを一緒くたに取り扱うのではなく、案件規模に応じて課題を把握し対応するとともに、中小M&Aの推進に向け制度的な課題にも対応していくために、本計画では以下の区分によって対応の方向性が示されている。 ① 小規模・超小規模M&Aの円滑化 (※) 経済産業省「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ概要」より ② 大規模・中規模M&Aの円滑化 (※) 経済産業省「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ概要」より ③ 中小M&Aに関する基盤の構築 (※) 経済産業省「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ概要」より (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 418(掲載号)
#荻窪 輝明
2021/05/11

《速報解説》 会計士協会が「非財務情報の充実と情報の結合性に関する実務を踏まえた考察」を研究資料として公表~情報開示における結合性の必要性と結合性強化のための枠組みの考えを示す~

 《速報解説》 会計士協会が「非財務情報の充実と情報の結合性に 関する実務を踏まえた考察」を研究資料として公表 ~情報開示における結合性の必要性と結合性強化のための枠組みの考えを示す~   公認会計士 阿部 光成     Ⅰ はじめに 2021年4月15日付けで(ホームページ掲載日は2021年4月30日)、日本公認会計士協会は、「非財務情報の充実と情報の結合性に関する実務を踏まえた考察」(会計制度委員会研究資料第6号)を公表した。 近年、非財務情報を含む企業報告の質を高める動きが加速し、非財務情報と財務情報又は非財務情報相互間における開示内容が有機的に結合し、経営者の認識に基づいた一貫した企業報告に対する投資家の期待の高まりがみられる。 そこで、開示される情報間の「結合性」に焦点を当て、結合性が求められる要因と求められる結合性の側面を考察し、研究資料として公表するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 研究資料は、目次を含めて70ページに及ぶものであるので、以下では主な内容について解説する。 1 情報開示における結合性の必要性 次の考えが示されている。 2 結合性強化のための枠組み 結合性を高めるべき視点として、次のことが記載されている。 味の素、カルビー、ユニリーバ及びBASFの4社について、上記①から④の視点から分析を行っている。 結合性に関する実務上のヒントも記載されている。 (了)

#No. 418(掲載号)
#阿部 光成
2021/05/07

《速報解説》 会計士協会から「合意された手続業務に関する実務指針」の改正(公開草案)が公表される~実施結果報告書における独立性に関する記載、見出しの追加、配布及び利用制限等について言及~

《速報解説》 会計士協会から「合意された手続業務に関する 実務指針」の改正(公開草案)が公表される ~実施結果報告書における独立性に関する記載、見出しの追加、配布及び利用制限等について言及~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年4月30日、日本公認会計士協会は、「専門業務実務指針4400「合意された手続業務に関する実務指針」の改正」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、国際監査・保証基準審議会(IAASB)「国際関連サービス基準(ISRS)4400「Agreed-Upon Procedures Engagements」」(2020年4月3日)の公表に伴うものである。 意見募集期間は2021年6月30日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 合意された手続業務では、業務依頼者が実施される手続を業務の目的に照らして適切であると認めた場合に、業務実施者が、業務実施者と業務依頼者が合意した手続を実施する(6項)。 合意された手続業務は、監査業務、レビュー業務又は監査及びレビュー業務以外の保証業務ではない(8項)。 合意された手続業務では、いかなる場合でも、業務実施者が意見又は保証の結論を表明することを目的として、証拠を入手することはない(8項)。 主な改正点は次のとおりである。 1 合意された手続業務における職業的専門家としての判断の明瞭化 業務実施者は、業務の状況を考慮して、合意された手続業務の契約の新規の締結及び更新、並びに実施及び報告において職業的専門家としての判断を行使しなければならない(19項)。 2 独立性に関する事項 独立性が要求されていない合意された手続業務についても、実施結果報告書において独立性に関する記載を行う(独立性の保持が要求されていない旨の記載。33項(12))。 3 「合意された手続実施結果報告書の目的」に関する見出しの追加 合意された手続業務(契約)の目的の明瞭化のため、改正版専門実4400では、実施結果報告書に「合意された手続実施結果報告書の目的」に関する見出しが追加されている。 4 実施結果報告書の配布及び利用制限 改正版専門実4400では、関係者のみに実施結果報告書を配布及び利用する旨の要求事項はない。 配布及び利用制限については、業務実施者の判断に基づいて決定する。   Ⅲ 適用時期等 2022年1月1日以降に契約を締結する合意された手続業務に適用する。 (了)

#No. 418(掲載号)
#阿部 光成
2021/05/07
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