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〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第10回】「特定事業の判定(特定事業用宅地等の判定)」

〔事例で解決〕小規模宅地等特例Q&A 【第10回】 「特定事業の判定(特定事業用宅地等の判定)」   税理士 柴田 健次   [Q] 被相続人である甲は、飲食業を20年間営んでおり、A宅地(甲と乙で2分の1ずつ所有)の上に存する建物(甲と乙で2分の1ずつ所有)について、1階部分を飲食店、2階及び3階部分を居住部分として利用していましたが、相続開始の1年前に利用顧客の増加に伴い2階部分を飲食店として利用することにしました。 また、その3ヶ月後に利用顧客の駐車場用地としてB宅地(70㎡)を甲が単独で購入しています。それからB宅地取得後、事業の用に供するためアスファルト舗装工事に300万円支出しています。 A宅地及びB宅地は、いずれも相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された宅地等に該当することになりますが、この場合には、A宅地及びB宅地のいずれも小規模宅地等に係る特定事業用宅地等の特例の対象にはならないのでしょうか。 【A宅地の利用状況】 建物所有者:甲と乙で2分の1 【A宅地に係る事業用財産】 相続開始時点の相続税評価額 土地:100,000,000円(持分100%) 建物:20,000,000円(持分100%) 器具備品:5,000,000円(甲が所有・飲食店用) 【B宅地に係る事業用財産】 相続開始時点の相続税評価額 土地:40,000,000円(持分100%) 構築物:2,000,000円(甲が所有) [A] A宅地は特定事業に該当しますので、他の要件を満たせば小規模宅地等に係る特定事業用宅地等の特例対象になりますが、B宅地は特定事業に該当しませんので、特定事業用宅地等の特例対象になりません。 ◆ ◆ ◆[解説]◆ ◆ ◆ 1 令和元年度の税制改正により除外される特定事業用宅地等 令和元年度税制改正により、節税を目的とした駆け込み的な適用など本来の趣旨を逸脱した小規模宅地等の特例を防止するため、特定事業用宅地等の範囲から、被相続人等の事業(貸付事業を除く。以下同じ)の用に供されていた宅地等で、相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された宅地等を除くこととされました。ただし、租税特別措置法施行令40条の2第8項で定める規模以上の事業(以下「特定事業」という)を行っていた場合のその宅地等については、相続開始前3年以内に新たに事業の用に供されたものであっても、その範囲から除かれないこととされました(措法69の4③一、措令40の2⑧)。 この取扱いは、平成31年4月1日以後に新たに事業の用に供された宅地等から適用され、同日前に新たに事業の用に供された宅地等については、適用されません(附則79②、措通69の4-20の5)。 本問の場合には、A宅地及びB宅地も相続開始前3年以内に「新たに事業の用に供された宅地等」に該当しますので、特定事業に該当しない場合には、特定事業用宅地等の範囲から除かれることになります。「新たに事業の用に供された宅地等」の判定は第9回で解説しています。   2 特定事業の判定 特定事業とは次に掲げる算式を満たす場合におけるその事業をいいます(措通69の4-20の3)。相続税の申告書では、「特定事業用宅地等についての事業規模の判定明細(第11・11の2表の付表1(別表2))」で特定事業の判定を行うことになります。 【算式】 上記分母の特定宅地等が複数ある場合には、それぞれの特定宅地等ごとに判定を行うことになります。したがって、本問の場合のように特定宅地等が複数ある場合には、甲宅地と乙宅地のそれぞれで上記算式を満たすか否かを確認し、満たさないこととなったその算式の分母に係る特定宅地等については、特定事業用宅地等の範囲から除かれることになります。 (1) 減価償却資産の範囲 「減価償却資産」とは、特定宅地等に係る被相続人等の事業の用に供されていた次に掲げる資産をいい、その資産のうちにその事業の用以外の用に供されていた部分がある場合には、その事業の用に供されていた部分に限ります。 上記②に掲げる資産が、特定宅地等の上で行われる事業に係る業務に加え、他の事業所での業務でも使用している場合など、共通してその業務の用に供されていた場合には、特定宅地等の上で行われる事業に係る業務の用に供されていた部分に限ることなく、その業務以外の業務の用に供されていた部分も含め、その資産の全部が上記②に掲げる資産に該当することとなります。 なお、特定事業の判定は、事業の用に供された日ではなく、相続開始の時における減価償却資産の価額及び特定宅地等の価額を基に判定されるため、上記算式の「事業の用に供されていた減価償却資産」に該当するか否かの判定は、相続開始の直前における現況によって行います。したがって、事業の用に供した時点において、上記の算式を満たしている場合でも相続開始の直前において減価償却資産の一部の除却や廃棄を行い、上記の算式を満たさない場合には、その事業に係る特定宅地等については、特定事業用宅地等の範囲から除かれることになります。 また、相続人等の事業が特定宅地等を含む一の宅地等(敷地)の上で行われていた場合には、特定宅地等を含む一の宅地等の上に存する建物(その附属設備を含む)又は構築物のうちその事業の用に供されていた部分並びに上記②の減価償却資産のうち特定宅地等を含む一の宅地等の上で行われる当該事業に係る業務の用に供されていた部分(当該建物及び当該構築物を除く)は、上記①又は②に掲げる資産にそれぞれ含まれます。 したがって、例えば、3年以上前から事業の用に供されていた宅地の隣地を新たに取得し、従来から所有する宅地と併せて事業の用に供した場合には、従来から所有する宅地の上に存する上記①又は②に掲げる減価償却資産も分子に含まれることになります。 (2) 被相続人等が有していたものの範囲 「被相続人等が有していたもの」は、事業を行っていた被相続人又は事業を行っていた生計一親族(被相続人と生計を一にしていたその被相続人の親族をいう)が、自己の事業の用に供し、所有していた減価償却資産をいいます。したがって、事業主宰者が被相続人の場合には、被相続人が有していたものに限り計上することになり、事業主宰者が生計一親族の場合には、生計一親族が有していたものに限り計上することになります。 本問のA宅地の上に存する建物については、甲が事業主宰者となりますので、甲が有していた事業部分のみが対象になります。 (3) 特定宅地等の範囲 「特定宅地等」は、相続開始の直前において被相続人が所有していた宅地等であり、その宅地等が数人の共有に属していた場合にはその被相続人の有していた持分の割合に応ずる部分が対象になります。本問の場合のA宅地のように甲と乙が共有で有している場合には、被相続人である甲の持分に応じた部分が分母に計上されることになります。   3 A宅地に係る特定事業の判定 ① 事業主宰者が有していた減価償却資産のうち事業の用に供されていた部分の相続開始時の価額(分子) ② 被相続人が有していた宅地等のうち相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された部分の相続開始時の価額(分母) 〇 被相続人が有していた宅地等の面積 〇 上記のうち事業の用に供されていた宅地等の面積及び相続開始時の価額 〇 上記の事業の用に供されていた宅地等のうち相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された部分(特定宅地等)の面積及び相続開始時の価額 ③ 特定事業の判定 ➡したがって、A宅地は特定事業に該当することになります。   4 B宅地に係る特定事業の判定 ① 事業主宰者が有していた減価償却資産のうち事業の用に供されていた部分の相続開始時の価額(分子) ② 被相続人が有していた宅地等のうち相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された部分の相続開始時の価額(分母) ③ 特定事業の判定 ➡したがって、B宅地は特定事業に該当しません。   ★実務上のポイント★ 特定事業の判定は、事業用共用日ではなく、相続開始の直前の現況により判定することになります。したがって、新たに事業の用に供した時に特定事業に該当すると見込まれていたとしても、減価償却資産の減価や除却等の理由で判定算式の分子が減額となり、特定宅地等の価額が上昇したことにより分母が増額となった場合には、特定事業に該当しないこともありますので、注意が必要となります。   (了)

#No. 443(掲載号)
#柴田 健次
2021/11/04

遺贈寄付の課税関係と実務上のポイント 【第4回】「相続税の負担が不当に減少する結果となると認められる場合」

遺贈寄付の課税関係と実務上のポイント 【第4回】 「相続税の負担が不当に減少する結果となると認められる場合」   税理士・中小企業診断士・行政書士 脇坂 誠也   前回、「遺贈により法人に寄付をした場合には、原則として相続税はかからないが、遺贈により、遺贈をした者の親族その他これらの者と特別の関係がある者の相続税の負担が不当に減少する結果となると認められるときについては、法人を個人とみなして、相続税が課税される」(相法66④)ということを掲載した。 今回は、具体的にどのような場合に、「相続税の負担が不当に減少する結果となると認められるのか」ということについて述べていきたい。   1 「不当に減少する結果となると認められるとき」とは 「相続税の負担が不当に減少する結果となると認められるとき」とは、遺贈があった場合に、遺贈のときにおいて、法人の役員等の構成・機能、収入・支出の経理、財産の管理状況、解散のときの残余財産の帰属、その他の定款・寄付行為の定め等からみて、遺贈者又はその同族関係者が提供又は贈与された財産を私的に支配し、その使用、収益を事実上享受し、あるいはその財産が最終的にこれらの者に帰属するような状況にあるときをいう。 遺贈により、「相続税の負担が不当に減少する結果とはならない」ということが明らかであればいいのであるが、その判断は難しい。 そこで、相続税法施行令33条3項では、次に掲げる要件を満たすときは、相続税の負担が不当に減少する結果となると認められないものとしている(※)。 (※) 非営利型以外の一般社団法人・一般財団法人の場合には、相続税法施行令33条4項の要件を1つでも満たさないときは、相続税の負担が不当に減少する結果となると認められるものとされている。本稿では、非営利法人の中でも、非営利型以外の一般社団法人、一般財団法人(=法人税において、全所得課税が適用される法人)は除いて考える。 このうち、①の「運営が適正であること」については、個別通達で、詳細な規定を置いている。 《不当減少にならないための要件(相令33③)》   2 運営が適正であること 「運営が適正であること」とは、財産の寄付を受けた法人について、次に掲げる3つの要件が認められるかどうかにより行うこととして取り扱うこととしている(資産課税情報第14号(平成20年7月25日 国税庁資産課税)「第2 持分の定めのない法人に対する贈与税の取扱い」15(1)~(3)) 第一の要件については、通達では、持分の定めのない法人を次の3つの類型に分け、必要的定款記載事項を詳細に定めている。 ここでは、一般社団法人について定められているものを要約して示すこととする。   3 一般の篤志家からの寄付 「相続税の負担が不当に減少する結果となると認められるときに、法人を個人とみなして、相続税が課税される」とされるのは、租税回避行為を防止するためである。しかし、法人の運営とは関係のない一般の人が、NPO法人や公益法人などに寄付をする場合に、それが租税回避行為を目的とするとは考えにくい。 そこで、以下の2つの要件を満たす場合には、相続税法施行令33条3項のうち、「その法人の運営が適正であること」の要件は問わないこととしている(資産課税情報第14号(平成20年7月25日 国税庁資産課税)「第2 持分の定めのない法人に対する贈与税の取扱い」14)。 《一般の篤志家からの寄付》 「法人の運営が適正」という要件以外は、NPO法人や公益法人等であれば、大部分が満たしていると考えられるので、遺贈で寄付をする場合に、寄付者が、その寄付先の法人と何らの関りもないような場合には、相続税の負担が不当に減少する結果となると認められ、相続税が課税されるということは、考えにくいであろう。   (了)

#No. 443(掲載号)
#脇坂 誠也
2021/11/04

〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第93回】「ソフトウェア保守契約書」

〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第93回】 「ソフトウェア保守契約書」   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   当社はソフトウェア開発会社です。当社がコンピュータソフトウェアの開発を請け負ったソフトウェアの保守を使用者から受託するにあたり、保守契約書を作成する予定ですが、印紙税の取扱いはどうなりますか。 第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に該当し、印紙税額は4,000円となる。   [検討1] ソフトウェアの保守契約は請負契約か委任契約か ソフトウェアの保守管理を専門の業者に委託する際に、不具合(バグ)の修正や補修作業の対応を委託することを定める保守契約は、通常は仕事の完成を約する請負契約が含まれることから、一般的には請負契約に該当する場合が多い。 ただし、保守の内容が、操作のサポートやアドバイス、バージョンアップ情報の提供等のみで、顧客自身でメンテナンスを行い仕事の完成を請け負わない場合は、準委任契約となる。   [検討2] 継続的取引の基本となる契約書の要件は 第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に該当するものの要件は、以下のすべての条件を満たすものとされている。   ▷まとめ 事例の「ソフトウェア保守契約」は第1条において、甲がコンピュータソフトウェアの保守に係る業務を委託し、乙はこれを有償にて受託することとされている。また、第3条の保守業務の範囲において、ソフトウェアのトラブル発生時の原因調査及びプログラム修復、プログラムに対する新たな機能追加、甲の要請による機能の変更及び変更後のテスト、それに係るドキュメントの作成等を行うこととされていることから、第2号文書(請負に関する契約書)に該当する。 また、2以上の取引を継続して行うこととされており、第7号文書の要件にも該当し、契約金額の記載がないことから、第7号文書に該当する。   (了)

#No. 443(掲載号)
#山端 美德
2021/11/04

〔中小企業のM&Aの成否を決める〕対象企業の見方・見られ方 【第20回】「事業承継等事前調査チェックシートを活用しよう(前編)」

〔中小企業のM&Aの成否を決める〕 対象企業の見方・見られ方 【第20回】 「事業承継等事前調査チェックシートを活用しよう(前編)」   公認会計士・税理士 荻窪 輝明   《今回の対象者別ポイント》 買い手企業 ⇒M&Aの売り手に対して有効な財務・法務面の見方のヒントを得る。 売り手企業 ⇒M&Aに備えて財務・法務面のどこに着目したらよいかを知る。 支援機関(第三者) ⇒売り手に対する財務・法務面の見方のポイントを知りM&Aの助言や支援に活かす。 その他の対象者 ⇒売り手に対する視点を通じて対象企業の見方・見られ方のポイントをつかむ。   1 事業承継等事前調査チェックシート 2021年8月2日付で「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)の活用について」が公表され、本制度の手引きやQ&Aなどが示されました(詳しくは、拙稿「〔令和3年度税制改正〕中小企業事業再編投資損失準備金の手続と税務処理」【前編】、【後編】をお読みください)。 このウェブサイトは創設・改正された税制に関する内容を中心に掲載するものですが、中小企業がM&Aを検討する際の参考になる有益な情報源が含まれますので、今回は、中小企業M&Aの買い手や売り手などの各当事者が、当ウェブサイトから活用できる情報についてご紹介します。 Excel版「事業承継等事前調査チェックシート」が今回からのテーマです。このシートは、「経営資源集約化税制」の適用を受けるために対応や提出が必要な資料の1つですが、中小企業M&Aにおいても、たとえば、買い手が売り手の何に重点を置いて財務面や法務面のレベルや状況をチェックすればよいか、売り手はどのような視点で買い手などからのチェックを受けそうか、といったケースバイケースの判断に使えそうな内容が盛り込まれています。 実際のM&Aの場面では、多くの場合、財務・税務面や法務面の調査(デューデリジェンスやDDといいます)は、専門機関(コンサルティング会社、公認会計士など)が行うので、DDの実務を買い手・売り手自らが担うケースは多くはありません。しかし、どこに着目して、どのような見られ方をするかを“知っている”のと知らないのでは、大きな違いがあります。 M&A後は、買い手と売り手自身が双方の会社に責任を負う当事者なのですから、なんでも専門家任せにするのではなく、自社がDDを実施する機関だったら、あるいは、DDの売り手側で対応する専門家だったら、という姿勢が、M&A後の成長を目指すために望まれます。   2 事業承継等事前調査チェックシートの主な構成 【財務DD・税務DD】(「事業承継等事前調査チェックシート(Excel版)」一部抜粋) ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (出典) 中小企業庁「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)の活用について」 チェックシートの財務DD・税務DDの中項目は、貸借対照表、損益計算書、会計方針・議事録等の確認、税務リスクの把握から構成され、さらに小項目ごとに一般的な調査項目例が示されています。 たとえば、中項目「1.貸借対照表」の小項目「①現預金」の場合ですと、売り手が帳簿(試算表、総勘定元帳、補助元帳など)に記録している残高と、期末残高が正しいかどうかを確かめるための資料(現金出納帳、金融機関の預金残高、残高証明書など)とを突き合わせて、記録されている残高が正しいかどうかを確かめる調査がなされます。また、預貯金に引き出し制限があるかないかを質問され、預金通帳の預け先(たとえば、担保としての提供先)から受領した預け証などを引き出し制限の証拠書類として確認されます。 このほか、現金の管理状況(日々残高をチェックしているか、チェックするための文書が残され、記録されているかなど)、資金繰り(資金繰り表を作成して頻繁に更新できているか、最新状況が反映されているか)のように、残高そのものはもちろんのこと、正しい残高を記録するための体制が備わっているか、という管理面についてもDDで問われます。 中小企業の多くは、それなりの管理をしているつもりでも、事業承継等事前調査チェックシートに掲げる各項目を見渡せば、1つ1つの管理が日頃から十分にできていると自信を持って言い難いケースが多いのではないでしょうか。 この点で、事業承継等事前調査チェックシートは、日常的あるいは定期的な自社点検用にも使えるツールになりますし、すべての項目についての体制が万全であれば、管理能力の高い企業として評価されるのは間違いないでしょう。 【法務DD】(「事業承継等事前調査チェックシート(Excel版)」一部抜粋) ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (出典) 中小企業庁「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)の活用について」 チェックシートの法務DDの中項目の数は、財務DD・税務DDに比べて多くなっています。会社組織等、株式、重要な契約等、資産、負債、人事・労務、訴訟・紛争、許認可等、コンプライアンス、環境問題、その他で構成されています。法務DDも財務DD・税務DDと同じように、中項目ごとにさらに小項目が設定されていて、各々の一般的な調査項目例が示されています。 定款、履歴事項全部証明書(法人の登記簿謄本)、規程類、契約関係書類といったいわゆるエビデンスを提示して、その内容に関する質問回答や法的に不備がないかどうかなどの調査を受けます。法務DDに該当する項目は、簿外債務、潜在リスクの顕在化といったM&A後の買い手側のリスクに直結しやすい項目が多いため、経営資源の1つ1つについて、売り手側の日頃のリスク管理が欠かせません。 *  *  * 次回は、事業承継等事前調査チェックシートの内容を踏まえて、財務DD・税務DD面、法務DD面それぞれの立場から、もう少し踏み込んで内容を確認していきます。 (了)

#No. 443(掲載号)
#荻窪 輝明
2021/11/04

〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領《固定資産(その2)-ソフトウェア》編 【第3回】「ソフトウェアの償却方法」

〔事例で使える〕 中小企業会計指針・会計要領 《固定資産(その2)-ソフトウェア》編 【第3回】 (最終回) 「ソフトウェアの償却方法」   公認会計士・税理士 前原 啓二   はじめに 「中小企業会計指針」では、無形固定資産として計上したソフトウェアの償却方法について簡単に説明しています。今回は、市場販売目的のソフトウェアを、税法の定める償却方法ではない方法により償却するケースをご紹介します。 【設例4】 当社(12月31日決算)は、当期(X1年1月1日~X1年12月31日)1月に市場販売目的のソフトウェアを完成(ソフトウェアの制作費30,000,000円を取得原価として無形固定資産に計上)させ、X1年1月から新商品として販売をスタートしました。 このソフトウェアの販売可能な有効期間は3年と見込まれ、販売開始時点(X1年1月)での見込販売数量(この設例ではX2年1月とX3年1月の各時点でも変わらないこととします)は、次のとおりとされました。 ・X1年12月期:1,200個 ・X2年12月期:1,050個 ・X3年12月期:750個 ⇒ 合計3,000個 しかし、3年間の実際販売数量は、次のとおりです。 ・X1年12月期:1,125個 ・X2年12月期:875個 ・X3年12月期:625個 ⇒ 合計2,625個 当社は、このソフトウェア(無形固定資産)の償却方法として、見積販売数量に基づく方法(ただし、毎期の減価償却費は、残存有効期間に基づく均等配分額を下回ってはならない)を適用します。   1 X1年12月期からX3年12月期までの各期の減価償却費に係る仕訳 X1年12月期からX3年12月期までの各期の減価償却費に係る仕訳は、次のとおりです。 〈X1年12月期〉 〈X2年12月期〉 〈X3年12月期〉 「中小企業会計指針」によると、市場販売目的のソフトウェアである製品マスターの制作費は、研究開発費に該当する部分を除き、無形固定資産として計上します。無形固定資産として計上したソフトウェアは、見込販売数量に基づく償却方法その他合理的な方法により償却します。ただし、法人税法の定める償却方法を採用することもできます。なお、販売・使用見込みがなくなった場合には、未償却残高を費用として一時に償却する必要があります(中小企業会計指針37)。 この設例では、市場販売目的のソフトウェアである製品マスター制作費が30,000,000円で、これに研究開発費はないものとしています。これによりソフトウェアとして30,000,000円を無形固定資産に計上しています。 この無形固定資産の減価償却方法について、税法上の取扱いは、定額法により、耐用年数が「複写して販売するための原本」であるソフトウェアとして3年とされています(耐令別表第三)。一方、上場企業等が適用する「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」の取扱いは、ソフトウェアの性質に応じて最も合理的と考えられる減価償却の方法を採用すべきとし、合理的な償却方法としては、見込販売数量に基づく方法のほか、見込販売収益に基づく方法も認められます。 ただし、毎期の減価償却額は、見込販売数量(又は見込販売収益)に基づく償却額と残存有効期間に基づく均等配分額とを比較し、いずれか大きい額を計上します。この場合、当初における販売可能な有効期間の見積りは、原則として3年以内の年数とし、3年を超える年数とするときは、合理的な根拠に基づくことが必要とされています(研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針18)。 この設例では、販売可能な有効期間を3年としているので、耐用年数は3年とし、その償却方法については、見積販売数量に基づく償却額と残存有効期間に基づく均等配分額とを比較し、いずれか大きい額を毎期の減価償却費としています。 この方法により、各期の減価償却費は、次のように算定されます。 〈X1年12月期〉 〈X2年12月期〉 〈X3年12月期〉 ソフトウェアの当期首未償却残高9,375,000(= 30,000,000円 - 11,250,000円 -9,375,000円)を当期の減価償却費とします。 なお、税法上の減価償却費は、次のとおりです。 〈X1年12月期、X2年12月期〉 〈X3年12月期〉   2 決算書の金額 決算書の金額は、次のとおりです。   3 損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得を算出する際の加算・減算調整 損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得を算出する際の加算・減算調整は、次のとおりです。 (1) X1年12月期 〈当期法人税申告書別表四〉 〈当期法人税申告書別表五(一)〉 (2) X2年12月期 〈当期法人税申告書別表四〉 〈当期法人税申告書別表五(一)〉 (3) X3年12月期 〈当期法人税申告書別表四〉 〈当期法人税申告書別表五(一)〉   (《固定資産(その2)-ソフトウェア》編 終了)

#No. 443(掲載号)
#前原 啓二
2021/11/04

収益認識会計基準を学ぶ 【第16回】「本人と代理人の区分②」

収益認識会計基準を学ぶ 【第16回】 「本人と代理人の区分②」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 前回(第15回)と今回にわたって、「本人と代理人の区分」について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 本人と代理人の区分の判定 第15回において、本人と代理人の区分の判定は、顧客に約束した特定の財又はサービスのそれぞれについて行うことを解説した。 第15回に引き続き、本人と代理人の区分の判定に関して、「履行義務」と「支配」について解説する。 1 履行義務に関する判定 本人と代理人の区分の判定においては、「企業が自ら提供する履行義務である」のか、「企業が手配する履行義務である」のかがポイントになる。 収益認識適用指針42項は、顧客との約束の性質が、財又はサービスを「企業が自ら提供する履行義務」であるのか、あるいは財又はサービスが他の当事者によって提供されるように「企業が手配する履行義務」であるのかを判定するために、次の(1)及び(2)の手順に従って判断を行うと規定している。 収益認識会計基準37項では、「資産に対する支配」について次のように規定している。 〈資産に対する支配(定義)〉 顧客との契約に複数の特定の財又はサービスが含まれている場合には、企業は、一部の特定の財又はサービスについて本人に該当し、他の特定の財又はサービスについて代理人に該当する可能性がある(収益認識適用指針41項)。 2 支配に関する判定 収益認識適用指針43項は、本人と代理人の区分の判定に関する「支配」に関して、次のように規定している。 3 本人に該当する支配 顧客への財又はサービスの提供に他の当事者が関与している場合、次の(1)から(3)のいずれかを企業が支配しているときには、企業は本人に該当する(収益認識適用指針44項)。 収益認識適用指針6項は、収益認識会計基準34項(2)に従って、財又はサービスを顧客に移転する約束が、契約に含まれる他の約束と区分して識別できるかどうかを判定するにあたっては、当該約束の性質が、契約において、当該財又はサービスのそれぞれを個々に移転するものか、あるいは、当該財又はサービスをインプットとして使用した結果生じる結合後のアウトプットを移転するものかを判断すると規定している。 財又はサービスを顧客に移転する複数の約束が区分して識別できないことを示す要因には、例えば、次の(1)から(3)がある。 次のことに注意する。 4 3つの指標 収益認識適用指針43項における企業が本人に該当することの評価に際して、企業が財又はサービスを顧客に提供する前に支配しているかどうかを判定するにあたっては、例えば、次の(1)から(3)の指標を考慮する(収益認識適用指針47項)。 5 3つの指標に関する留意点 前述の3つの指標による評価を行う場合には、次のことに注意する(収益認識適用指針136項~138項)。 収益認識会計基準40項は、「一時点で充足される履行義務」に関して、資産に対する支配を顧客に移転した時点を決定するにあたっては、収益認識会計基準37項の定めを考慮するとし、支配の移転を検討する際には、例えば、次の(1)から(5)の指標を考慮すると規定している。   (了)

#No. 443(掲載号)
#阿部 光成
2021/11/04

対面が難しい時代の相続実務 【第7回】「想定される場面(その5)」-遺言書作成における対応-

対面が難しい時代の相続実務 【第7回】 「想定される場面(その5)」 -遺言書作成における対応-   クレド法律事務所 弁護士 栗田 祐太郎   今回は、遺言書作成の相談に関するオンライン対応につき取り上げる。 【想定される場面(その5) 遺言書作成における対応】   1 遺言書作成準備におけるオンラインの利用 士業が遺言書作成の相談を受けた場合、公証役場で作成する公正証書遺言を勧める場合が大半であろう。 この場合、通常の進め方としては、次のような手順をたどることになる。 本連載のテーマである非対面・オンライン対応ということとの兼ね合いでいえば、遺言書作成は法が厳密に要求する形式的要件が存在するため、オンライン対応に馴染みにくいイメージもある。 しかし、遺言書の作成手順を上記のように分解してみると、遺言者が希望すれば、上記①、②のステップはオンラインでも実施できるであろう。この点は、第3回において紹介した「オンラインでの相談対応」の留意点がそのままあてはまるので、そちらもご参照いただきたい。 さて、上記のうち、どうしてもオンライン対応が難しいのが④の公証人により実際に遺言書を作成するステップである。 この点、公証役場が取り扱う事務の中でオンライン化が進んでいるのは、会社設立の場面における「電子定款のテレビ電話による認証制度」のようにごく限られた事項のみである。 今後は他の事項についてもオンライン化が進んでいくものと思われるが、現状では、少なくとも一度は遺言者と公証人とが直接に面談することが必須ということになる。   2 コロナ禍における遺言書作成の注意点 筆者が最近相談を受ける中で目立ってきているのが、「遺言書の作成を準備していたのに、本人の体調が急変し、遺言書作成が間に合わないまま亡くなってしまった」というケースである。 新型コロナウイルスによる感染拡大の影響で、病院や介護老人保健施設、住戸数の多いマンション等においては、外部からの来訪者の面会を禁止ないし制限しているケースや、病院などにおいては、患者の家族でさえも、病室への付添い等が禁じられていることも多い。 そのため、遺言書作成のサポートをしてくれる家族と本人とが密に連絡を取り合える機会が薄れ、どうしても「今はまだそこまで体調が悪いわけではないし緊急性があるわけではないから、遺言書の作成は落ち着いてからにしよう」ということになりがちである。 そうしているうちに、体調が急変して亡くなってしまう、あるいは昏睡状態に陥って外部に意思表示ができなくなってしまうというケースも決して珍しいことではない。 以上のような事例があることに照らせば、コロナ禍の現状では、もし遺言書作成を考えているのであれば、間をおかず直ちに作成に取り掛かったほうがよいといえる。 そのためにオンラインを利用することが簡便で早いということであればどんどん利用すればよいし、多少の手間はかかるが直接の面談によるほうが円滑に進むというのであればオンラインにこだわる必要はない。状況に応じて臨機応変に対応すべきであろう。   3 急を要する場合のオンライン対応の可能性 それでは、遺言者の体調等の関係で公正証書遺言を作成する時間的余裕がないという差し迫った状態にある場合はどうしたらよいか。 この場合、既に遺言者の遺言能力(判断能力)まで失われているということであれば、もはや遺言書を残すことはできない。 他方、今この時点ではかろうじて判断能力があり、多少乱れるが文字も自分で書くことができるという身体状態にあるのであれば、自筆証書遺言の形で遺言書を作成せざるを得ないであろう。 この場合、本人の体調からは長文を自書することは難しいであろうから、民法968条が定める自筆証書遺言の形式的要件を満たした上で、最小限度の分量となるようシンプルな遺言書とするべきである。 その上で、後日に遺言書の効力が争われることに備えて、たとえば相談を受けている士業と遺言者の2人でZoom等を使ってミーティングを開催し、①まずは遺言者から、これから残す遺言書の概要を口頭で語ってもらい、②その後、傍らに事前に作成した遺言書全文の文案を置いてもらい、それを見ながら自筆証書遺言としてはじめから終わりまで全文を自書・押印してもらって完成させ、③その上で、遺言書の「付言事項」に該当する親族へのメッセージ等を口頭で述べてもらうこととし、その一部始終をすべて録画しておくという方法が考えられる。 遺言書作成時に本人の話しぶりや受け答えの様子、画面からうかがえる体調等が録画されることで、遺言書が本人の意思に基づくものであり、遺言能力も備わっていることの有力な証拠とすることができる。 逆にいえば、遺言者の体調が悪く、会話の内容も定まらず、自らの意思をはっきりした言葉で意思表明できないという場合には、遺言者にとってかえってマイナスの証拠となってしまうため、諸刃の剣の面もある。 このように、依頼者とのやり取りの様子をすべて録画できるというオンラインの特性をうまく活かすことで、従来にはなかったような証拠化・記録化の強力な一方法とすることも考えられよう。 (了)

#No. 443(掲載号)
#栗田 祐太郎
2021/11/04

〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第50話】「皇室と非課税」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第50話】 「皇室と非課税」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「ウーン・・・1億5,250万円を貰わないのか・・・」 中尾統括官は、新聞を広げて、熱心に記事を読んでいる。 「・・・この一時金は、元皇族の品位保持のために支給されるものといわれているが・・・所得税法では、非課税になっているはずだ・・・」 と言いながら、手元の税務六法を開く。 「確か、非課税所得として、所得税法9条1項12号に皇室経済法が載っていたように思うが・・・」 中尾統括官が条文を見つめる。 「眞子さまの一時金は、皇室経済法6条1項の皇族費の規定に書かれている・・・」 皇室経済法は、ポケット六法には載っていないので、パソコンを開いて、グーグルで条文を検索する。 「何を熱心に見ているのですか?」 浅田調査官がニヤニヤしながら、中尾統括官の傍らに立っている。 パソコンの画面には、皇室経済法の条文が映っている。 「眞子さまの一時金を調べているのですか?」 浅田調査官は、中尾統括官を見る。 「いや、別に・・・税務上の取扱いについて、どうなっているか調べているだけ・・・」 中尾統括官は、広げられた新聞を畳んで、机の片隅に置く。 「・・・ところで、この皇室経済法って・・・何でしたっけ・・・」 浅田調査官が頭を掻きながら、尋ねる。 「・・・皇室経済法は・・・皇室の財政・財務に関する事項について定めているものだが・・・もともと、憲法8条と88条の規定を受けて、定められた法律だ」 そう言うと、中尾統括官は、ポケット六法を開いて、2つの条文を読む。 「憲法は・・・税法と違って、条文が短いし、文章自体、分かり易いね・・・税法もこれぐらいにしてくれれば、読むのに楽なのだが・・・」 中尾統括官は、そんな愚痴を言いながら、憲法の説明をする。 「憲法8条は・・・皇室に富が集中しないように、また、特定の者と皇室が経済的に結びつかないようにするため、国会の議決に基づかなければならないと規定している・・・また、同法88条は、同様の趣旨であるが、さらに、皇室として品位を保つために必要な費用を、国が負担することを定めている・・・」 浅田調査官は、説明を聞きながら、条文を見ている。 「・・・憲法88条に規定している『皇室財産=国』であるということは・・・天皇には財産がないということなのですか?」 浅田調査官が尋ねる。 「いやいや、全くないということはない・・・」 中尾統括官は、大きく頸を振る。 「君は、平成生まれだから、知らないかもしれないが、昭和天皇が御崩御されたとき、相続税が発生したと、税務署の先輩から聞いている・・・」 「へえ・・・天皇陛下も相続税が課せられるのですね・・・」 浅田調査官は、驚いたように、中尾統括官を見る。 「昭和天皇の相続税の申告は、申告期限である平成元年7月7日までに行われ、相続財産総額は、18億6,900万円、相続税は約3億円らしい・・・ほとんどが金融資産らしい・・・それは、戦後、天皇家に残された現金1,500万円を運用したものといわれている・・・」 「そうなんですか・・・天皇も人間宣言されていますからね・・・」 浅田調査官は、納得した顔になる。 「ところで・・・3種の神器はどうなんですか・・・八咫鏡(やたのかがみ)と草薙劔(くさなぎのつるぎ)と八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)ですが・・・これって、天皇の所有物なのですか?」 浅田調査官は、更に尋ねる。 「・・・あれは、天皇が所有していることになっているが・・・相続税法12条1項1号で非課税となっている」 中尾統括官は、税務六法を開く。 「なるほど、皇室に対して、税法で非課税の手当を十分にしているのですね」 浅田調査官は、頻りに感心する。 (つづく)

#No. 443(掲載号)
#八ッ尾 順一
2021/11/04

《速報解説》 会計士協会、「「監査上の主要な検討事項」の強制適用初年度(2021年3月期)事例分析レポート」を公表~分析結果から以降の記載をより有意義なものとするための留意事項も指摘~

《速報解説》 会計士協会、「「監査上の主要な検討事項」の強制適用初年度 (2021年3月期)事例分析レポート」を公表 ~分析結果から以降の記載をより有意義なものとするための留意事項も指摘~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年10月29日、日本公認会計士協会は、「「監査上の主要な検討事項」の強制適用初年度(2021年3月期)事例分析レポート」を公表した。 これは、2021年3月期決算の上場会社のうち、2021年6月30日までに有価証券報告書を提出した会社2,342社(連結財務諸表作成の会社2,102社及び個別財務諸表のみ作成の会社240社)を対象として、日本における「監査上の主要な検討事項(Key Audit Matters)」(以下「KAM」という)の強制適用初年度の状況を分析したものである。 「「監査上の主要な検討事項」の強制適用初年度(2021年3月期)事例分析レポート」のほか、付録、別紙、サマリーが公表されている。 併せて、KAMの2021年3月期の監査人の対応について関係する日本公認会計士協会の会員向けアンケートの結果も公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ KAMの強制適用初年度の全体像 強制適用初年度となった2021年3月期の事業年度は、新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言の発令(2020年4月)や外出自粛・テレワークの推奨等、国内外の経済社会が大きく変化した時期であったことから、連結財務諸表作成の会社2,102社のうち635社(30%)及び個別財務諸表のみ作成の会社240社のうち59社(25%)が、KAM区分の「内容及び決定理由」において新型コロナウイルス感染症について言及していた。 連結財務諸表の監査報告書に記載されたKAMについて、監査領域別に示すと次のようになる。詳細は分析レポートの「【図表5】業種及び監査領域」をお読みいただきたい。   Ⅲ KAMの個数に関する分析 KAMの個数に関する分析の全体像は次のとおりである。   Ⅳ KAMとした理由 KAMと決定した理由について、次のものが記載されている。   Ⅴ 監査上の対応 「監査人による手続の結果に関連する記述」又は「当該事項に関する主要な見解」が記載されている事例はなかったとのことである。 監査上の対応として、次のものが記載されている。   Ⅵ 特徴的な事例 特徴的な事例として、次のものが記載されている。   Ⅶ 早期適用事例の年次比較 2020年3月期の事業年度までにKAMを記載した監査報告書を公表した事例について、KAM導入2年目の変化を分析している。 2021年3月期の連結財務諸表の監査報告書に追加されたKAMはすべて、2021年3月期の事業年度内に新たに生じた事由(事業譲渡、権利の譲受け、社内制度の改訂、M&Aなど)に関連するものであった。 2020 年3月期(前期)の監査報告書に記載されたKAMのうち、2021年3月期の連結財務諸表の監査報告書に記載されず、削除されたKAMとして、前期中に生じた事由に関連する事例、前期の監査報告書に記載されたKAMに係る事案が当期中に解消した事例などがあったほか、のれんの範囲が異なるために別KAMとなり、前期のKAMが削除されたとみなされる事例もあった。 例えば、富士通(株)では「前連結会計年度において監査上の主要な検討事項としていた「有形固定資産及び無形資産の減損」についてはリスクが低減したため当該検討事項からは除外し、当連結会計年度の連結財務諸表の監査において、以下の事項を監査上の主要な検討事項とした。」と記載されている。   Ⅷ 会社法上の監査報告書におけるKAMの記載 現在、会社法上の監査報告書へのKAMの記載は任意であるが、強制適用初年度において、会社法上の監査報告書にKAMを記載した事例が2社あった。   Ⅸ 有価証券報告書 株主総会前に有価証券報告書を提出した事例(26社)があった。 有価証券報告書の「監査の状況」でKAMに言及した事例が、連結財務諸表作成の会社で360社、個別財務諸表のみ作成の会社で24社あった。 次のような記載である。   Ⅹ KAMの記載をより有意義なものとするための留意事項 分析レポートを作成した分析チームから、強制適用初年度のKAMの「監査上の対応」の記載はおおむね、平易かつ丁寧な記載であったと考えられるなどの肯定的な評価が見られる一方、次のようなKAMの記載をより有意義なものとするための留意事項も指摘されている。 監査論上、「ボイラープレート」は「どの会社でも同じ」であることを意味するが、KAM導入2年目以降の課題として、ボイラープレート化の回避が議論される際には、「毎年同じ」という意味に置き換わってしまっていることがあるとのことである。 しかしながら、KAMは、監査の透明性及び監査報告書の情報価値を高める目的で導入されたものである。いいかえれば、KAMは、どの会社の監査報告書をみても型押しされたかのように同じであるという状況を打開するために導入されたものであり、KAMの制度は、KAM導入2年目以降、「毎年同じ」KAMが記載されることを織り込み済みであると考えられるとのことである。 監査報告書に記載するKAMの選定を毎期検討するにあたって、会社や会社を取り巻く環境が変化すれば、それらの変化にあわせて、選定されるKAMも変化するはずである。いいかえれば、会社や会社を取り巻く環境が変化しない限り、監査報告書に記載されるKAMは変化しない可能性が高いと考えられる。 同じ会社で、環境が変わらなければ、経年で同じような記載となることがあると考えられ、経年で同じKAMを記載していること自体が情報価値をもつこともありえるとのことである。 そして、各監査人が所属する監査事務所で準備された記載例や他社事例をそのまま利用することは慎むべきであり、各社の固有の状況が反映されたものになるよう留意する必要があると記載されている。 (了)

#No. 442(掲載号)
#阿部 光成
2021/11/02

《速報解説》 国税庁がインボイス制度の「申請手続」ページを更新し、e-Taxによる申請マニュアルを追加~税理士による代理送信に係るQ&A等も公表~

《速報解説》 国税庁がインボイス制度の「申請手続」ページを更新し、 e-Taxによる申請マニュアルを追加 ~税理士による代理送信に係るQ&A等も公表~   税理士 石川 幸恵   本日(令和3年11月1日)の午前10時より、適格請求書発行事業者公表サイトでの「登録番号の検索」が可能となった。 これに先立ち、令和3年10月25日に、国税庁ホームページの「特集インボイス制度」における「申請手続」のページが更新され、下記の4つのマニュアルが新たに公表された。 今回の更新では、e-Taxを利用した登録を推進していること、税理士による代理送信についての問い合わせが多くあることがうかがえる。以下、役に立つと思われる機能を紹介する。   1 メールアドレスの登録の活用 e-Taxにおいて、メールアドレスの登録自体は、以前から登載されている機能であるが、「〈インボイス制度〉メールアドレス・宛名登録マニュアル~登録通知データをすぐに確認するために~e-Taxソフト(WEB版)ver.」は、登録通知データの格納をすぐに知りたいというニーズに対応するためのマニュアルと思われる。 インボイス制度が導入される令和5年10月1日から登録を受けるための申請書の提出期限は、原則として、令和5年3月31日なので(インボイスQ&A問7)、登録を焦る必要はないが、制度の開始に先立って取引先より登録番号の問い合わせを受けているなど、登録されたらすぐに知りたい、というケースもあろう。 申請書を提出してから登録の通知を受けるまでの期間は、e-Taxで登録申請書を提出した場合、2週間程度を見込んでいるが、一時期に多量に登録申請書が提出されるなどの事情によっては処理期間に影響がある場合も考えられる(インボイスQ&A問4)。 このような場合に備えて、メールアドレスを登録するのは有効である。メールアドレスは3つまで登録できるので、関与先のメールアドレスと税理士のメールアドレスを登録しておくことにより、登録通知データが格納されたことを、遅滞なく知ることができる。 なお、税理士による代理送信の場合は、通知メールがどのクライアント宛のものかわからなくなるので、宛名の登録も忘れず行いたい。   2 委任関係の登録やメッセージ共有の設定は不要 登録通知データは関与先の「送信結果・お知らせ」内の「通知書等一覧」にのみ格納される(e-Taxソフト(WEB版)を利用した代理送信に関するよくある質問Q5)。 個人納税者については、「メッセージボックス」や「通知書等一覧」を閲覧するためには納税者本人の電子証明書が必要であるが、適格請求書発行事業者の登録通知データは、電子証明書がなくても、確認することができる(e-Taxソフト(EWB版)を利用した代理送信に関するよくある質問Q7)。 このため、個人納税者の「申告のお知らせ」や「受信通知」を税理士が閲覧するための委任関係の登録による転送設定やメッセージ共有の設定は不要である。   3 お問合せの多いご質問(令和3年10月26日掲載)の公表 申請手続のページの更新のほか、令和3年10月26日には、「お問合せの多いご質問(令和3年10月26日掲載)」も公表された。 こちらはインボイスQ&Aからの抜粋がほとんどであるが、問8(インボイス制度に関する登録申請書等の入手方法)のみがインボイスQ&Aにはない内容である。回答は、様式へのリンクのほか、e-Taxによる提出を促すものだ。   (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 442(掲載号)
#石川 幸恵
2021/11/01
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