《速報解説》 会社法施行規則等及び会社計算規則の改正等に対応した 『経団連ひな型』の改訂版が公表される 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2021年3月9日、日本経済団体連合会 経済法規委員会企画部会は、「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」(改訂版)を公表した。 これは、2019年12月の会社法改正に伴い、会社法施行規則等が改正されたこと、「時価の算定に関する会計基準」「収益認識に関する会計基準」「会計上の見積りの開示に関する会計基準」の策定に伴い、会社計算規則が改正されたことなどに対応するものである。 今回の改訂に際して、計算書類関係(連結計算書類及び注記表を含む)では多数の「記載上の注意」が記載されている。このため、経団連ひな型の「記載例」を利用する場合には、「記載上の注意」をよく読み、自社の状況を反映するように適宜工夫して記載する必要があると考えられる。 また、【本ひな型の適用時期】にも注意する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 事業報告関係の主なポイント 1 重要な親会社及び子会社の状況 事業報告作成会社とその親会社との間に事業報告作成会社の重要な財務及び事業の方針に関する契約等が存在する場合には、その内容の概要を記載する。 2 事業年度中に会社役員(会社役員であった者を含む)に対して職務執行の対価として交付された株式に関する事項 事業年度中に事業報告作成会社の会社役員(会社役員であった者を含む)に対して「職務執行の対価として当該会社が交付した」当該会社の株式がある場合、次の会社役員(会社役員であった者を含む)の区分ごとに株式の種類、種類ごとの数及び交付を受けた者の人数をそれぞれ記載する。 3 会社役員に関する事項 会社役員に関する記載事項について、次の事項などを記載する。 4 補償契約に基づく補償に関する事項 事業報告作成会社が取締役、監査役又は執行役との間で補償契約(会社法430条の2第1項の契約)を締結している場合には、①契約の相手方の氏名と共に、②当該契約の内容の概要を記載する。 5 役員等賠償責任保険契約に関する事項 事業報告作成会社が保険者との間で役員等賠償責任保険契約を締結している場合、所要の事項を記載する。 6 取締役、会計参与、監査役又は執行役ごとの報酬等の総額(業績連動報酬等、非金銭報酬等、それら以外の報酬等の総額) 会社役員に支払った報酬その他の職務執行の対価である財産上の利益(以下「報酬等」という)の額を、①業績連動報酬等、②非金銭報酬等、③それら以外の報酬等の種類別に、かつ、取締役、会計参与及び監査役(監査等委員会設置会社の場合は監査等委員である取締役以外の取締役及び監査等委員である取締役並びに会計参与、指名委員会等設置会社の場合は取締役及び執行役並びに会計参与)ごとに区分して、それぞれの総額と員数を記載する。 7 業績連動報酬等に関する事項 報酬等に業績連動報酬等が含まれている場合には、当該業績連動報酬等について次の事項を記載する。 8 非金銭報酬等に関する事項 報酬等に非金銭報酬等が含まれている場合には、当該非金銭報酬等の内容を記載する。 9 報酬等に関する定款の定め又は株主総会決議に関する事項 会社役員の報酬等についての定款の定め又は株主総会の決議による定めがある場合、それぞれにつき、以下の事項を記載する。 10 各会社役員の報酬等の額又はその算定方法に係る決定方針に関する事項 株式会社において、各会社役員の報酬等の額又はその算定方法に係る決定方針(会社法361条7項の方針又は会社法409条1項の方針)を定めているときは、以下の事項を記載する。 11 各会社役員の報酬等の額の決定の委任に関する事項 株式会社が当該事業年度の末日において取締役会設置会社(指名委員会等設置会社を除く)である場合において、取締役会から委任を受けた取締役その他の第三者が当該事業年度に係る取締役(監査等委員である取締役を除く)の個人別の報酬等の内容の全部又は一部を決定したときは、その旨及び以下の事項を記載する。 12 各社外役員の主な活動状況 社外役員のうち社外取締役については、当該社外役員が果たすことが期待される役割に関して行った職務の概要も記載する。 Ⅲ 計算書類関係の主なポイント 以下では、基本的に、連結計算書類に関して解説する。 1 連結貸借対照表 次の改訂が行われている。 2 連結損益計算書 「記載上の注意」に、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」を適用する会社については、顧客との契約から生じる収益は、適切な科目をもって連結損益計算書に表示する。なお、顧客との契約から生じる収益については、原則として、それ以外の収益と区分して連結損益計算書に表示するか、区分して表示しない場合には、顧客との契約から生じる収益の額を注記する(会社計算規則3条、116条)と記載している。 3 連結株主資本等変動計算書 「株式引受権」を新設している。 4 注記表の一覧表 作成すべき注記表の一覧について、改正会社計算規則を反映するとともに、留意点を詳細に記載している。 5 収益及び費用の計上基準 「収益認識に関する会計基準」を反映して、次の「記載例」が示されている。 これに、例えば、支払条件、変動対価、独立販売価格の比率に基づいて取引価格の履行義務に対する配分が重要な会計方針に含まれるものと判断される場合の記載例(「記載上の注意」(4))も並べると次のようになる。 6 収益認識に関する注記 「収益認識に関する会計基準」を反映して、次の「記載例」が示されている。 これに、例えば、「当連結会計年度及び翌連結会計年度以降の収益の金額を理解するための情報」の記載例(「記載上の注意」(4))も並べると次のようになる。 7 会計上の見積りに関する注記 「会計上の見積りの開示に関する会計基準」を反映して、次の「記載例」が示されている。 これに、例えば、「会計上の見積りの内容に関する理解に資する情報」の記載例(「記載上の注意」(3))も並べると次のようになる。 8 金融商品に関する注記 「時価の算定に関する会計基準」等を反映して、「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項を記載しない記載例」と「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項も記載する記載例」の2つが記載されている。 「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項も記載する記載例」は次のとおりである。 (了)
《速報解説》 国税庁HPにてOECD「新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大に関する移転価格執行ガイダンス」の仮訳が公表される ~感染の世界的拡大で顕在化した移転価格に関する問題のうち4つの優先課題について実務的視点を提供~ 弁護士 下尾 裕 OECDは、2020年12月18日に、「新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大に関する移転価格執行ガイダンス」(原題:Guidance on the transfer pricing implications of the COVID-19 pandemic。以下「本ガイダンス」という)を公表していたところ、このたび、国税庁において、本ガイダンスの仮訳が公表された。 本稿においては、当該仮訳の内容を前提に、本ガイダンスの要点について取り上げる。 [1] 本ガイダンスの位置付け 本ガイダンスは、既に公表されているOECD移転価格ガイドライン2017年版(以下「OECD移転価格ガイドライン」という)を前提に、新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大(以下「コロナ拡大」という)により生じ又は顕在化した移転価格上の問題に対し、独立企業間原則及びOECD移転価格ガイドラインをどのように適用するかという観点から、特に という4つの優先課題について、実務的視点を提供するものである。 [2] 本ガイダンスにおける各優先課題に対する実務的視点 1 比較可能性分析 この優先課題は、コロナ拡大が、独立企業間取引での価格設定に大きな影響を及ぼす可能性があり、また、比較可能性分析を行う際に用いる過去のデータに対する信頼性を低下させる可能性があるとの問題意識を出発点とするものである。 ここでは、 などに言及されている。 2 損失及び新型コロナウイルス感染症特有の費用の配分 この優先課題は、コロナ拡大により、多くの多国籍グループにおいて発生した例外的かつ非経常的な営業費用等の損失を関連企業でどのように配分するかという問題である。 ここでは、 といった点について言及されている。 3 政府支援プログラム この優先課題は、政府支援プログラム、すなわち、政府又は公的機関が資格ある納税者に対し、交付金、補助金、返済免除要件付融資といった直接的又は間接的な経済的利益を提供するプログラムが、その利用可能性、内容、期間及び利益率如何により、移転価格に影響を及ぼすのではないかという議論である。 特に、多くの新型コロナウイルス感染症関連の支援プログラムが一時的支援として設計されていることとの関係で、その利用条件を踏まえ、影響力の程度を考慮すべきことが冒頭で指摘されている。 具体的には、 といった点について、詳細に検討されている。 4 事前確認(APA) この優先課題は、コロナ拡大が将来に向けた一定期間を対象とする既存のAPAの合意時には予想していなかった経済状態の重大な変化をもたらしていることを背景とするものであり、既存のAPAに対する影響及び交渉中のAPAに対する影響についてそれぞれ検討している。 特に、既存のAPAに対する影響の内容については、コロナ拡大の下でも既存のAPAがなお拘束力を有することを前提に、 といった点について検討されている。 (了)
《速報解説》 株式報酬の見直しに係る改正法人税法等政省令が公布される ~改正会社法の施行に伴い関連規定を整備~ 太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太 令和元年の会社法改正に伴い、令和2年度税制改正において株式報酬に関する税制上の取扱いについて見直しが行われている。 このたび令和3年2月25日付け官報第439号において、この株式報酬の見直しに関する改正政省令(「法人税法施行令等の一部を改正する政令(政令第39号)」及び「法人税法施行規則及び租税特別措置法施行規則の一部を改正する省令(財務省令第4号)」)が公布された。 本稿ではこの改正政省令の概要について解説を行う。 1 会社法の改正 まず、今回の改正政省令に関係する改正会社法(令和元年法律第70号)の改正事項をまとめると、以下の通りである。 (1) 金銭でない報酬等に係る株主総会の決議による定め 取締役の報酬等を決定する手続等の透明性を向上させるため、取締役の報酬等として自社の株式又は新株予約権を付与しようとする場合には、定款又は株主総会の決議により、株式又は新株予約権の数の上限等を定めなければならないこととされた(会社法361①三・四)。 (2) 出資の履行を要しない報酬等としての株式の付与 業績に連動した報酬等を円滑に取締役に付与できるように、上場会社は、取締役の報酬等として株式の発行又は自己株式の処分をするときは、募集株式と引換えにする金銭の払込み又は現物出資財産の給付を要しないこととされた(会社法202の2)。 (3) 増加する資本金の額等 取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式を発行した場合に増加する資本金の額等についての規定が整備された(会社計算規則42の2、42の3、54の2)。 事前交付型の規定(取締役等が株式会社に対し割当日後にその職務の執行として募集株式を対価とする役務を提供する場合)、事後交付型の規定(取締役等が株式会社に対し割当日前にその職務の執行として募集株式を対価とする役務を提供する場合)、株式引受権に関する規定が定められている。 (4) 株式引受権 株式引受権とは、取締役等がその職務の執行として株式会社に対して提供した役務の対価としてその株式会社の株式の交付を受けることができる権利(新株予約権を除く)をいう(会社計算規則2③三十四)。 2 株式報酬の見直しに関する政令 改正政令(法人税法施行令等の一部を改正する政令(政令第39号))における改正事項は以下の通りである。 (1) 法人税法施行令第8条第1項第1号イ《株式の発行又は自己の株式の譲渡の場合の増加資本金等の額》 株式の発行又は自己の株式の譲渡により増加する資本金等の額の規定(法人税法施行令第8条第1項第1号)から除外するものとして、取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式を発行した場合(※1)が追加される。 (※1) 事後交付型の場合及び株式と引換えに給付された債権(役務の提供の対価として生じた債権に限る)がある場合を除く。 (2) 法人税法施行令第8条第1項第1号の2《事前交付型の場合の増加資本金等の額》 取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式を発行した場合(※2)には、役務の提供に係る費用の額のうち既に終了した事業年度において受けた役務の提供に係る部分の金額に相当する金額(※3)だけ資本金等の額が増加することとなる。 (※2) 事後交付型の場合及び株式と引換えに給付された債権(役務の提供の対価として生じた債権に限る)がある場合を除く。 (※3) 株式が法人税法第54条第1項《譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例》に規定する特定譲渡制限付株式である場合には、同項の規定の適用がないものとした場合の金額をいう。 (3) 法人税法施行令第8条第1項第15号《分割型分割により分割法人において減少する資本金等の額》 分割型分割により分割法人において減少する資本金等の額の計算で使用する「分割法人の前事業年度終了時の負債」に「株式引受権」を含めて計算することとなる。 (4) 法人税法施行令第23条第1項第2号《所有株式に対応する資本金等の額又は連結個別資本金等の額の計算方法等》 非適格分割型分割が行われた場合のみなし配当の計算基礎である「所有株式に対応する資本金等の額又は連結個別資本金等の額」の計算で使用する「分割法人の前事業年度終了時の負債」に「株式引受権」を含めて計算することとなる。 (5) 法人税法施行令第69条第10項第3号《利益の状況を示す指標》 業績連動給与における「利益の状況を示す指標」の計算で使用する「貸借対照表に計上されている総負債」に「株式引受権」を含めて計算することとなる。 (6) 法人税法施行令第70条第1項第1号《過大な役員給与の額》 取締役の報酬等として自社の株式又は新株予約権を付与しようとする場合には、定款又は株主総会の決議により、株式又は新株予約権の数の上限等を定めなければならないこととなったため、定款又は株主総会等の決議による限度額を超える過大給与の判定規定にも反映することとなる。 (7) 法人税法施行令第71条の3《確定した数の株式を交付する旨の定めに基づいて支給する給与に係る費用の額等》 事前確定届出給与として確定した数の株式又は新株予約権を交付する場合の損金算入額は、「正常な取引条件で行われた場合」には、交付決議時価額に相当する金額となる(赤字部分が追加)。 取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式を発行した場合(※4)の増加する資本金等の額となる「役務の提供に係る費用の額」は、交付決議時価額に相当する金額となる。 (※4) 事後交付型の場合及び株式と引換えに給付された債権(役務の提供の対価として生じた債権に限る)がある場合を除く。 (8) 法人税法施行令第111条の2第4項《譲渡制限付株式の範囲等》 特定譲渡制限付株式の交付が正常な取引条件で行われた場合における役務の提供に係る費用の額は、取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式を発行したとき(消滅債権(※5)がないとき)は、特定譲渡制限付株式の交付された時の価額となる。 (※5) 消滅債権とは、特定譲渡制限付株式と引換えに給付された債権その他その役務の提供をする者にその特定譲渡制限付株式が交付されたことに伴って消滅した債権で役務の提供の対価として個人に生ずる債権をいう。 (9) 法人税法施行令第113条《引継対象外未処理欠損金額の計算に係る特例》 法人税法施行令第123条《合併等により移転をする資産及び負債》 法人税法施行令第123条の9《特定資産に係る譲渡等損失額の計算の特例》 上記各規定において、「負債」に「株式引受権」を含めて計算することとなる。 (10) 法人税法施行令第123条の10第15項《非適格合併等により移転を受ける資産等に係る調整勘定の損金算入等》 非適格合併等があった場合に、被合併法人等の株主等が特定報酬株式(※6)を有していたときは、資産調整勘定又は負債調整勘定の計算で使用する非適格合併等対価額には、次の①から②を控除した金額相当額を含めないこととなる。 (※6) 特定報酬株式は、役務の提供の対価として被合併法人等により交付された被合併法人等の株式等(事後交付型を除く)のうち、取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式が発行されたとき(消滅債権がないとき)におけるその株式をいう。 (※7) 特定報酬株式が法人税法第54条第1項《譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例》に規定する特定譲渡制限付株式である場合には、同項の規定の適用がないものとした場合の金額をいう。 (11) 租税特別措置法施行令第39条の10の3《特別事業再編を行う法人の株式を対価とする株式等の譲渡に係る所得の計算の特例》 「負債」に「株式引受権」を含めて計算することとなる(※8)。 (※8) 租税特別措置法施行令第39条の110、所得税法施行令第61条、改正後法人税法施行令第119条の3についても同様。 3 株式報酬の見直しに関する省令 改正省令(法人税法施行規則及び租税特別措置法施行規則の一部を改正する省令(財務省令第4号))における改正事項は以下の通りである。 (1) 法人税法施行規則第25条の9《譲渡制限付株式を対価とする費用》 分割型分割(承継譲渡制限付株式が交付されるものに限る)に伴い、分割型分割に係る分割法人の特定譲渡制限付株式につき給与等課税額が生ずることが確定した場合には、特定譲渡制限付株式に係る役務の提供に係る費用の額は、特定譲渡制限付株式に係る消滅債権の額に相当する金額に次の①に掲げる割合を乗じて計算した金額とその相当する金額からその計算した金額を控除した金額に次の②に掲げる割合を乗じて計算した金額との合計額その他の合理的な方法により計算した金額とし、承継譲渡制限付株式に係る費用の額は、消滅債権の額に相当する金額からその合理的な方法により計算した金額を控除した金額とされている(赤字部分が変更)。 上記2(7)の改正政令に伴い、取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式を発行したとき(消滅債権がないとき)の消滅債権の額は、特定譲渡制限付株式の交付された時の価額として計算することとなる。 (2) 法人税法施行規則第27条の16第2項《非適格合併等により移転を受ける資産等に係る調整勘定の損金算入等》 法人税法施行令第123条の10第15項《非適格合併等により移転を受ける資産等に係る調整勘定の損金算入等》の非適格合併等が分割型分割に該当する場合には、役務の提供に係る費用の額のうち分割法人の分割型分割の日前に終了した各事業年度において受けた役務の提供に係る部分の金額は、特定報酬株式の交付された時の価額に次の①に掲げる割合を乗じて計算した金額と特定報酬株式の交付された時の価額からその計算した金額を控除した金額に次の②に掲げる割合を乗じて計算した金額との合計額その他合理的な方法により計算した金額となる。 (※9) 特定報酬株式が法人税法第54条第1項《譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例》に規定する特定譲渡制限付株式である場合には、法人税法施行令第111条の2第1項第1号《譲渡制限付株式の範囲等》に規定する譲渡制限期間終了の日をいう。 4 施行期日 改正政省令については、「会社法の一部を改正する法律」の施行日(令和3年3月1日)から施行される(経過措置あり)。 (了)
2021年3月4日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.409を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
monthly TAX views -No.98- 「東日本大震災から学ぶコロナ後の財政運営」 東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹 東北を震源地とした大震災から、節目となる10年を迎える。「震災からの復興なくして日本の再生なし」という基本方針の下で、30兆円を超える事業が行われた結果、未だ県外での避難生活が続いている福島などの原子力災害被災地域を除き、地震・津波被災地域では「復興は総仕上げの段階に入った」といわれている。この間の関係者の努力を多としたい。 * * * さて、2月25日放送のNHK「クローズアップ現代+」では、復興予算がどう使われたか、特集を組んでいた。 筆者が大変興味を持ったのは、元復興構想会議議長(現兵庫県立大学理事長)の五百旗頭真さんへのインタビューだった。 復興財源は、25年間にわたる2.1%の所得税付加税(復興特別所得税)と10年間にわたる年1,000円の個人住民税の上乗せなどでまかなわれたのだが、これについて同氏は、「増税が決まるときに、私は、反乱は起こらないだろうけど非難ごうごう起こるのではと一生懸命注意していたが、全く批判はなかった。国民の温かい、この災害列島で、次々あちこちで災害は起こる。それを見放すんじゃなくて、順繰りにみんなで被災地を支えていくという。そのおかげで財源も得て『創造的復興』・・という形ができたと思う。」と述べていた。 復興に必要な「歳出」と「歳入」を「東日本大震災復興特別会計」として別管理し、「歳出」に見合う「復興債(国債)」を発行し、その償還財源を所得税・住民税・法人税の付加税として確保した。こうすることで、その負担を後世世代に持ち越さなかったのである。 * * * このような「歳出」と「歳入」の別管理スキームは、現在、多額の出費が続いている新型コロナウイルス対策に伴うわが国財政の今後のあり方に、大いに参考になる。すなわち、「コロナ対策特別会計」を作り、コロナ対策に必要な費用を特掲し、その財源を「コロナ対策債」で賄うとともに、その償還については中長期の付加税などの追加課税で賄うというスキームを作り、財政規律を示すことである。 米国長期金利の上昇が、先進国最悪の財政事情のわが国に波及しつつある。日銀の超金融緩和政策によってある程度は食い止めることが可能だろうが、このままの財政運営を続けていけば、金利急騰(国債価格急落)という、いつ破裂するかもしれない爆弾(リスク)を抱えることになる。 下の図表は、一般会計の歳出と歳入の推移であるが、ざっと見ただけでも、コロナ対策関連経費の異常性と別管理の必要性を物語っているといえよう。 そのためには、付加税をどうするのかという「増税」議論が必要となる。政治的には避けたいところだろうが、先進国最悪の財政支出を抱えるわが国としては、最低限の財政規律を守っていくことによって、米国金利上昇の影響を最小限にとどめていく必要がある。 (了)
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例27】 「支払利息の損金性と同族会社の行為計算否認」 国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦 【Q】 私は、都内の外資系製薬メーカーである合同会社Aで財務及び経理を担当するマネージャーです。日本の医薬品市場は、今後予想される人口減少により先行きは不透明なところがありますが、幸いなことにA社は治療効果が良好な新薬をいくつか抱えているため、業績は好調であるといえます。 ところでA社は、30年ほど前から日本に拠点を置いて事業展開を行っており、その間にいくつかの子会社を設立して企業グループを形成しております。A社の親会社B社はフランス法人ですが、全世界的なグループ事業最適化の一環で、数年前にA社が中心となって日本事業の再構築を行っております。当該事業再構築の主眼は、日本国内に研究開発の拠点を新設することで、その資金を賄うため、A社は親会社B社から借入れを行っております。これは親会社の高い信用力に基づきB社が欧州において低利で資金調達し、その資金をA社に付け替えるというもので、財務上の合理性は十分あると自負しております。 ところがA社が今般受けた税務調査で調査官が、日本国内事業の再編に伴う親会社B社からの借入れは、その支払利息の損金算入によりA社の法人税の負担を不当に減少させるものであることから、同族会社等の行為又は計算の否認規定(法法132)により損金算入は認められない旨指摘してきました。 私は当該税務調査の担当者として、調査官からの指摘に対し、A社が親会社B社から行った借入れは、いわゆる「デット・プッシュ・ダウン」という財務上の手法であり、グループ企業における組織再編成・事業再構築の一環として行われた、正当な事業目的を有する経済合理性がある取引であることから、同族会社等の行為又は計算の否認規定の適用要件を満たさないはずであると反論しております。親会社であるB社も、国税側が不当な課税処分を行う場合には、訴訟で決着をつけるべきとしておりますが、このような対処方針で進めてしまって大丈夫でしょうか、アドバイスをお願いします。 なお、今回の税務調査で問題となった事業年度は平成20年12月期から平成24年12月期の5事業年度で、個別的租税回避否認規定である過大支払利子税制(措法66の5の2)の導入前です。 〇 「デット・プッシュ・ダウン」の手法 【A】 本件の場合、海外の親会社からの借入れを伴う事業再編・組織再編成を行う場合、その借入れに対する支払利息によりわが国の課税ベースが浸食されるとして、課税庁が包括的な租税回避否認規定の一種である同族会社等の行為又は計算の否認規定(法法132)により損金算入は認められないと指摘したわけですが、個別的租税回避否認規定があるのであればともかくとして、当該事業再編に伴う借入れに税務上のみではなく財務上の経済合理性があるのであれば、同族会社等の行為又は計算の否認規定により否認することは困難であると考えられます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 支払利子の損金性と課税ベースの浸食 法人間において金銭の貸借(金銭消費貸借契約)がある場合、その契約においては、貸手は借手から一定の利率の利子を徴収することとなるが、当該利子(支払利子)は借手における法人税の課税所得の計算上、損金算入されることとなる。しかし、当該金銭のやり取りが国内であればともかくとして、貸手が海外の居住者である場合、支払利子は国内で損金算入され借手の課税所得を減らす一方で、貸手の受取利息はわが国では課税されないこととなる。特に借手が高課税国(多額の利益・所得を計上)、貸手が低課税国に存するときには、その借手・貸手を含む企業グループ全体で課税所得が圧縮されるため、非常に有効なタックスプランニングとなるが、各国の課税庁サイドからみれば、そのような手法を無条件で許容すると、課税ベースが浸食され深刻な歳入欠陥となりかねないところである。 そのため、わが国においては、個別的租税回避の否認規定として、移転価格税制(措法66の4)や過少資本税制(措法66の5)、タックスヘイブン対策税制(措法66の6)が整備され、このような租税回避行為を規制・課税しようとしていた。しかし、本件のようないわゆる「デット・プッシュ・ダウン」という財務上の手法に対して、これらの規定が有効な手段となり得たのか疑問があった。そこで、平成24年度の税制改正で以下の図で示されるような過大支払利子税制(措法66の5の2)が導入されたところである。 〇 過大支払利子税制の概要(令和元年度税制改正前) ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (出典) 財務省編『平成24年度 税制改正の解説』559頁。 なお、OECDの「BEPSプロジェクト」行動計画4:利子控除制限ルール(国税庁「BEPSプロジェクト」参考)の勧告を受けて、令和元年度税制改正で過大支払利子税制も以下の通り強化されている。 〇 令和元年度改正の概要(過大支払利子税制) ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (出典) 財務省編『令和元年度 税制改正の解説』566頁。 (2) 同族会社等の行為又は計算の否認規定 今回の税務調査で問題となった事業年度は、平成20年12月期から平成24年12月期の5事業年度で、個別的租税回避否認規定である過大支払利子税制(措法66の5の2)の導入前ということもあり、わが国の法人税法上、A社とその親会社との間で行われた「デット・プッシュ・ダウン」という財務上の手法を税務上規制する個別の規定は存在しなかったということになる。そのため、課税庁・調査官は苦肉の策として、包括的な租税回避否認規定の一種である同族会社等の行為又は計算の否認規定(法法132)により損金算入は認められないと指摘したわけであるが、このような課税手法に違法性はないのであろうか。 よく知られるように、わが国においては、租税回避行為に対処するための一般的否認規定(GAAR)は存在しない。かつては、わが国においても国税通則法制定時に、当時のドイツの租税調査法に倣って一般的租税回避否認規定の採用が検討されたが、課税権力の濫用の危険を理由とした反対論が強かったため、見送られたとされる(※)。そのため、租税回避行為に対しては、基本的に個別の租税回避行為否認規定により対処することとなるが、少数の株主や社員によって支配されていることから、作為的な租税回避行為を行うことが比較的容易な同族会社が関与するスキームに対しては、これまでも同族会社等の行為又は計算の否認規定により課税するケースが見られたところである。 (※) 金子宏『租税法(第二十三版)』(弘文堂・2019年)137頁参照。 同族会社等の行為又は計算の否認規定にいう、「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められる」同族会社の行為・計算とは何を指すのかについては、判例上、「専ら経済的、実質的見地において当該行為又は計算が純粋経済人の行為として不合理、不自然なものと認められるか否かを基準として判定」するものと解する傾向にある(経済的合理性基準、最高裁昭和53年11月30日判決・訟月25巻4号1145号、東京地裁平成26年5月9日判決・判タ1415号186頁・TAINSコード:Z264-12469(日本IBM事件))。 (3) 個別的租税回避行為の否認規定がない場合の同族会社等の行為又は計算の否認規定が問題となった事案 それでは本件のように、個別的租税回避行為の否認規定がない場合(又は導入前)において、同族会社等の行為又は計算の否認規定の適用の可否が問題となった事案(東京地裁令和元年6月27日判決・TAINSコード:Z888-2250(ユニバーサルミュージック事件)、納税者勝訴)を以下で確認しておきたい。 ① 事案の概要 音楽事業を目的とする日本法人である原告は、本件各事業年度(平成20年12月期から平成24年12月期まで)に係る法人税の確定申告において、同族会社である外国法人からの借入れに係る支払利息の額を損金の額に算入して申告したところ、麻布税務署長(処分行政庁)は、同支払利息の損金算入は原告の法人税の負担を不当に減少させるものであるとして、法人税法第132条第1項に基づき、その原因となる行為を否認して原告の所得金額を加算し、本件各事業年度に係る法人税の各更正処分等を行った。 本件は、原告が、上記借入れは原告を含むグループ法人の組織再編の一環として行われた正当な事業目的を有する経済的合理性がある取引であり、本件各更正処分等は法人税法第132条第1項の要件を欠く違法な処分であると主張して、被告を相手に、本件各更正処分等の取消しを求める事案である。 ② 本件の争点 法人税法第132条第1項にいう「その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の該当性。 ③ 裁判所の判断 なお、本件控訴審(東京高裁令和2年6月24日判決・TAINSコード:Z888-2315、控訴棄却・控訴人上告受理申立て)も納税者が勝訴している。ただし、控訴審で裁判所は、経済的合理性基準につき、納税者側の「法人税法132条1項の不当性要件につき、経済合理性基準を踏まえて、法人税の負担が減少するという利益を除けば当該行為又は計算によって得られる経済的利益がおよそないといえるか、あるいは、当該行為又は計算を行う必要性を全く欠いているといえるかという観点から判断すべき旨」の主張に対し、「当該行為又は計算を行う必要性のほとんどが租税回避目的であって、税負担の減少以外の経済的利益がごく僅かである場合でも、経済的合理性があるとされかねない。このようなことは、不当性要件の的確な判別を困難にするものとして、法人税法132条の趣旨及び目的に反し、相当でもない。(下線部筆者)」としている点は注目に値する。 ④ 本裁判例から学ぶこと 本件で問題となったデット・プッシュ・ダウンという手法は、裁判所も指摘する通り、「財務上の観点からは、規模が大きく多額の利益を計上している事業会社に対してより多くの負債を負担させることが合理的であり、税務上の観点からは、税率の高い国で多額の利益を計上し多額の税金を負担している会社に対してより多くの負債を負担させることが合理的である」といえ、中でも税務上のメリットは、それを規制する規定がない限り、特に大きいといえる。 このような税務上のメリットを享受するためのタックスプランニングは、近年わが国においても租税訴訟事件で存在感が増している多国籍企業(本件のユニバーサルミュージックや日本IBMなどが想起される)にとっては広く知られたもので、OECDのBEPSプロジェクトでもその規制が議論されており(前述の行動計画4:利子控除制限ルール(国税庁「BEPSプロジェクト」参考))、わが国でも個別的租税回避の否認規定として過大支払利子税制が導入されている。しかし、本件の対象となる事業年度は過大支払利子税制が導入される前の事業年度であり、そのような場合において、課税庁側としては苦肉の策として、いわば伝家の宝刀としての包括的租税回避否認規定である同族会社等の行為又は計算の否認規定の適用に踏み切ったというわけである。 本件においては、納税者側が示した、組織再編を伴う一連の行為に関する8つの事業目的(本件取引の目的)が裁判所によって丁寧に検討され、「本件8つの目的を本件組織再編取引等により達成したことは、ヴィヴェンディ・グループ全体にとってだけでなく原告にとっても経済的利益をもたらすものであったといえる一方、本件借入れは原告に不当な不利益をもたらすものとはいえないから、これらが原告にとって経済的合理性を欠くものであったと認めることはできない」と結論付けられ、同族会社等の行為又は計算の否認規定の適用が経済合理性基準に照らして斥けられている。タックスプランニングの結果、税務上の利益が大きいとしても、それ以外に十分な事業上の目的があれば、同族会社等の行為又は計算の否認規定の適用は認められないとしたものであり、今後の実務の参考となるであろう。 (4) 本件への当てはめ 本件の場合、海外の親会社からの借入れを伴う事業再編・組織再編成を行う場合、その借入れに対する支払利息によりわが国の課税ベースが浸食されるとして、課税庁が包括的な租税回避否認規定の一種である同族会社等の行為又は計算の否認規定(法法132)により損金算入は認められないと指摘したところであるが、個別的租税回避否認規定があるのであればともかくとして、当該事業再編に伴う借入れに税務上のみではなく財務上の経済合理性があるのであれば、同族会社等の行為又は計算の否認規定により否認することは困難であると考えられる。本件のような事案は、基本的に個別的租税回避否認規定により課税の可否を判断すべきといえよう。 (了)
居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第19回】 「家屋の所有者に譲渡損失がなく、土地の所有者に譲渡損失がある場合」 -居住用家屋の所有者とその敷地の所有者が異なる場合- 税理士 大久保 昭佳 Q X(夫)は、Y(妻)と共に9年程前から住んでいたY所有の家屋とX所有の土地を売却しました。 Y所有の家屋には譲渡損失は発生しませんでしたが、X所有の土地には譲渡損失が発生しました。 家屋と土地の所有が異なる場合でも、その他の適用要件が具備されている場合は、「居住用財産買換の譲渡損失特例(措法41の5)」を受けることができるでしょうか。 A 譲渡物件に係る家屋の所有者Yに譲渡損失がないことから、Yが「居住用財産買換の譲渡損失特例」の適用がなくとも、譲渡物件に係る土地の所有者のXは、同特例の適用を受けることができます。 ●○●○解説○●○● 「居住用財産買換の譲渡損失特例」に係る譲渡家屋の所有者以外の者が、その譲渡家屋の敷地の用に供されている土地等で、その譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超えているものの全部又は一部を所有している場合において、租税特別措置法通達41の5-11(居住用家屋の所有者とその敷地の所有者が異なる場合の取扱い)に掲げる要件の全てを満たすときは、これらの者がともに同特例を受ける旨の申告をしたときに限り、その申告を認めるとされています。 そして、上記通達に係る次の注書1により、その家屋の譲渡損失がない場合は、その家屋の所有者が同特例を適用しないときでも、その土地所有者には適用があるとされています。 ※下線については筆者加筆。 したがって、本事例の場合、Y所有の家屋には譲渡損失の金額がないことから、Xは「居住用財産買換の譲渡損失特例」の適用を受けることができます。 (了)
〈判例・裁決例からみた〉 国際税務Q&A 【第4回】 「残余利益分割法による基本利益及び分割利益の算定方法」 公認会計士・税理士 霞 晴久 〔Q〕 残余利益分割法では、基本利益及び分割利益をどのように算定するのか。 〔A〕 具体的な算定方法については解説を参照していただきたい。 ●●●〔解説〕●●● 1 残余利益分割法による利益分割のイメージ 残余利益分割法の計算過程を図示すると以下のとおりとなる。 2 裁判例での検証 前回に引き続き、上村工業事件東京地裁判決(TAINSコード:Z267-13090)を用いて、残余利益分割法を適用した場合の独立企業間価格と国外移転所得額の算定過程を検証する。事件の概要は前回記事を参照されたい。なお、筆者が入手できたデータの制約から、以下では本件B取引に係る独立企業間価格と国外移転所得の算定過程に限定して解説することとする。 (1) 基本的利益及び残余利益の算定 (ア) Xの事業活動のほとんどがXの重要な無形資産を使用して行われていることから、Xの基本的利益はないものと仮定する。 (イ) B社については、台湾の企業から比較対象企業を選定した上、比較対象企業の総費用に対する営業利益の割合の中位値を利益指標((3)の表の⑦)とし、本件B取引に係る総費用(ただし、重要な無形資産の影響を除くため、両取引の支払ロイヤルティの額及び本件B取引に係る研究開発費の額((3)の表の⑤)を控除した金額)に上記利益指標を乗じて基本的利益を算出する((3)の表の⑧)。 (ウ) D社については、ASEAN諸国の企業から比較対象企業を選定した上、比較対象企業の売上高に対する営業利益の割合の中位値を利益指標((3)の表の⑩)とし、これをD社の売上高に乗じて基本的利益を算出する((3)の表の⑪)。 (エ) これらの基本的利益の額を分割対象利益の額から控除することにより、残余利益を算出する((3)の表の⑫)。 (2) 残余利益の配分及び国外移転所得額の算定 (ア) (上記(1)で求めた)残余利益をX及び国外関連者それぞれが有する重要な無形資産の価値に応じて配分するという観点から、残余利益の配分の比率を、Xについては、研究開発費のうち本件B取引に関連して支出したと認められる部分((3)の表の⑬、B社については、研究開発費のうち本件B取引に関連して支出したと認められる部分((3)の表の⑭)、D社については、営業技術関連費用のうち本件B取引に関連して支出したと認められる部分((3)の表の⑱)をそれぞれ基礎として(※1)算出する(なお、D社では、営業技術関連費について、全社の人員数に対する技術部の人員の比を利用して簡便的に算出している)。 (イ) Xへの配分の比率を本件B取引に係る残余利益の額に乗じることにより、各取引について原告に帰属する残余利益の額を算定する((3)の表の⑳)。 (ウ) 上記(イ)と原告の営業利益との差額をもって、本件B取引に係る国外移転所得額を算出する((3)の表の㉒)。 (※1) 措置法通達66の4(5)-4《残余利益分割法》後段は、「残余利益等を法人及び国外関連者で配分するに当たっては、その配分に用いる要因として、例えば、法人及び国外関連者が無形資産(重要な価値のあるものに限る。以下66の4(5)-4において同じ)を用いることにより独自の機能を果たしている場合には、当該無形資産による寄与の程度を推測するに足りるものとして、これらの者が有する無形資産の価額、当該無形資産の開発のために支出した費用の額等を用いることができることに留意する」と規定し、無形資産の価額ないしその開発費用を残余利益の分割要因とする旨定めている。実際問題として、重要な無形資産の価額を適正に評価するのは困難なところから、実務上、残余利益の分割に当たり、無形資産の開発費用をその分割要因とすることが多いと考えられ、本件においてもそのように算定されている。 (3) 本件B取引についての具体例 判決に添付された別表等によれば、本件B取引に係る分割対象利益は、全体で857,079千円 (※2)と計算されている。その上で、国外移転所得は以下のように算定されている。なお、以下で用いる金額の対象年度は平成13年(2000年)3月期とし、金額は全て千円単位とする。 (※2) 内訳は、Xの分割対象利益が15,834千円、B社が811,826千円、D社が29,419千円であった。 (※) B取引に係る分割対象利益にはXがB社から収受した受取ロイヤリティ15,834千円が含まれる。 (了)
〔Q&Aで解消〕 診療所における税務の疑問 【第5回】 「認定医療法人制度を活用した相続税・贈与税の納税猶予の留意点」 税理士法人赤津総合会計 税理士・医業経営コンサルタント 赤津 剛史 【Q】 医療法人の出資持分に対する相続税についても納税猶予が適用できると聞きましたが、どのような制度なのでしょうか。 【A】 認定医療法人制度があります。認定医療法人とは持分の定めのある・・医療法人から持分の定めのない・・医療法人に一定の要件のもと非課税で移行できる制度です。 ● ● ● 解 説 ● ● ● 平成19年3月31日以前に設立された医療法人(=持分の定めのある医療法人)の出資持分は、贈与又は相続時に、財産評価基本通達に従い時価によって評価されます。 持分の定めのある医療法人が持分の定めのない医療法人に移行することで、出資持分に対する贈与税及び相続税の課税リスクから解放されます。しかし、この移行時には医療法人に対して贈与税が課税されることが課題となっていました。これを解決するべく整備されたのが認定医療法人制度です。 認定医療法人制度には、以下のような特徴があります。 (了)