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《速報解説》 令和3年度税制改正(法人税関係)に関連大きい「産業競争力強化法等の改正法案」が閣議決定される~DX・カーボンニュートラル投資促進税制や中小企業経営資源集約化税制の認定制度を整備~

《速報解説》 令和3年度税制改正(法人税関係)に関連大きい「産業競争力強化法等の改正法案」が閣議決定される ~DX・カーボンニュートラル投資促進税制や中小企業経営資源集約化税制の認定制度を整備~   Profession Journal編集部   令和3年度税制改正関連法は国税に係る改正法が本年1月26日に、地方税に係る改正法が1月29日にそれぞれ通常国会へ提出されたところだが、今回の改正で創設される税制のうちデジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制やカーボンニュートラルに向けた投資促進税制、これら取組み企業への繰越欠損金の控除上限の特例措置は、それぞれ産業競争力強化法で定めた計画認定が必要とされている。 このたび、これら新たな認定制度に対応した「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案」が2月5日に閣議決定され、今国会へ提出されることになった。 この改正法案には①産業競争力強化法だけでなく、②中小企業等経営強化法、③地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律、④中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律、⑤下請中小企業振興法、⑥独立行政法人中小企業基盤整備機構法などの改正案も織り込まれており、今年度改正における「中小企業の経営資源の集約化に資する税制(中小企業事業再編投資損失準備金制度、中小企業経営強化税制における新類型)」の適用に必要な認定制度は、中小企業等経営強化法の改正案に定められている。 さらに税制とは異なるが、中小企業等経営強化法の改正案には、中小企業から中堅企業への成長途上にある企業群へ金融支援等を行う施策として、資本金によらない新たな支援対象類型(特定事業者)についての規定が織り込まれている。 (※) 経済産業省ホームページより (了)

#No. 404(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2021/02/05

《速報解説》 国税庁、確定申告期限の延長に伴い「コロナFAQ」に12の設問を追加

《速報解説》 国税庁、確定申告期限の延長に伴い「コロナFAQ」に12の設問を追加   Profession Journal編集部   既報のとおり令和2年分の確定申告期限が令和3年4月15日まで延長されたことに伴い、国税庁は「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」を更新、申告以外の期限延長の対象となる主な手続きなど、「1 申告・納付等の期限の一律延長関係」に関する9問含む12の設例の追加(2つの設問について更新)を行っている。 なおコロナFAQはHTMLページによるものとPDFファイルのページによるものがあるが、本稿公開時点ではPDFファイルページのみ情報が更新されているため、確認に当たっては注意されたい。 今回新たに追加・更新された設問及びリンク先は以下の通り。 1 申告・納付等の期限の一律延長関係 問1.令和2年分確定申告の期限延長 問2.申告以外の各種申請や届出の期限延長 問3.いわゆる「死亡による準確定申告」の期限延長の可否 問4.申告所得税等に関して延長の対象とならない手続 問5.申告所得税(及び復興特別所得税)の延納期限 問6.既に申告を済ませている場合の納付期限 問7.納付期限までに納税できない場合 問8.一律の期限延長に伴う口座振替日 問9.申告所得税等以外の税目について 2 申告・納付等の期限の個別延長関係 問1.令和元年分の確定申告をこれから行う場合 ※更新 問1-2.期限までに申告等ができなかった場合の個別延長 問1-3.申告所得税等以外の税目の個別延長 ※更新 3 納付等の手続関係 問2.ダイレクト納付への影響 問3.既に納付期限が3月15日と印字された納付書の使用 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 404(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2021/02/05

《速報解説》 会計士協会、近年増加している非パブリック型のブロックチェーンを活用した受託業務に係る内部統制の保証報告書に関する実務指針案を公表

《速報解説》 会計士協会、近年増加している 非パブリック型のブロックチェーンを活用した受託業務に係る 内部統制の保証報告書に関する実務指針案を公表   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2021年2月3日、日本公認会計士協会は、保証業務実務指針「非パブリック型のブロックチェーンを活用した受託業務に係る内部統制の保証報告書に関する実務指針」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、保証業務実務指針3402「受託業務に係る内部統制の保証報告書に関する実務指針」に基づいて、非パブリック型のブロックチェーンを活用したサービスを対象として実施する際の指針を提供するものである。 意見募集期間は2021年3月5日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 ブロックチェーンネットワークに参加するコンピュータ(又は参加者)をノードといい、コンセンサスアルゴリズムに参加するノードに特に制限がない場合を「パブリック型ブロックチェーン」という(3項)。 一方、非パブリック型ブロックチェーンとは、参加するノードが制限されている場合のうち、1つの企業や組織に限定されていれば「プライベート型ブロックチェーン」といい、複数の組織体に限定されていれば「コンソーシアム型ブロックチェーン」ということが多い(3項)。 1 適用範囲 実務指針は、非パブリック型ブロックチェーンのうち、主としてコンソーシアム型ブロックチェーンを活用したサービスを対象とした適用指針を定めている。ただし、プライベート型ブロックチェーンを活用したサービスについても、実務指針に準拠することができる(A1項)。 2 保証業務の範囲 ブロックチェーンの場合には、関連する当事者が多岐にわたると想定される。 このため、「付録4 当事者関係の類型」に基づき参加者と保証業務にて担保する契約当事者・保証範囲について明確に整理し、保証業務契約を締結することが重要である(A3項)。 3 受託会社確認書 コンソーシアム型ブロックチェーンにおいて複数の参加者を受託会社として識別した場合、受託会社確認書は複数の受託会社から連名、又はそれぞれの受託会社から入手することが考えられる(A6項。「付録1 受託会社確認書の記載例」)。 4 証拠の入手 次のことが記載されている。 5 経営者確認書 コンソーシアム型ブロックチェーンにおいて、複数の参加者を受託会社として識別する場合、経営者確認書は複数の受託会社から連名、又はそれぞれの受託会社から入手することになる(A22項。「付録3 経営者確認書の記載例」)。 6 保証報告書 コンソーシアム型ブロックチェーンにおいて、複数の参加者を受託会社として識別する場合、保証報告書の宛先は複数の受託会社連名、又はそれぞれの受託会社とすることが考えられる(A23項)。 コンソーシアム型ブロックチェーンにおいて、保証報告書の範囲に含まれない参加者が存在する場合は、保証業務の範囲を明確にするため、保証報告書の範囲の記載において明示することが適切である(A23項。「付録2 受託会社監査人の保証報告書の文例」)。 (了)

#No. 405(掲載号)
#阿部 光成
2021/02/05

プロフェッションジャーナル No.405が公開されました!~今週のお薦め記事~

2021年2月4日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.405を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2021/02/04

monthly TAX views -No.97-「カーボンプライシング導入に向けた「炭素税」の論点とは」

monthly TAX views -No.97- 「カーボンプライシング導入に向けた「炭素税」の論点とは」   東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹   菅総理が「2050年温暖化ガス排出量実質ゼロ」を表明して以降、わが国でも急速に脱炭素社会の実現に向けた動きが広まっている。 SDGsの流れもあり、気候変動をもたらす原因であるCO2の排出を抑えることは、いわば世界共通の責務ともいえよう。環境後進国の汚名返上に向けてのチャンスでもある。 *  *  * 総理は昨年12月、梶山弘志経済産業相と小泉進次郎環境相に、二酸化炭素(CO2)の排出量に経済的な負担を上乗せすることにより排出量を抑制する「カーボンプライシング(CP)」の導入に向けた検討を指示、両省は本年度中にCP活用の方向性を取りまとめることになった。 この背景には、「2050年排出量ゼロ」という大変チャレンジングな目標達成が、個別企業の努力やイノベーションに頼るだけでは難しいという判断があったのであろう。 カーボンプライシングには、CO2排出量に応じて課税する「炭素税」と、CO2排出枠を取引する「排出量取引」がある。価格を固定する炭素税は「価格アプローチ」、排出枠を固定する排出量取引は「数量アプローチ」と位置づけられているが、ここでは炭素税の論点を取り上げてみたい。 *  *  * 第1に、わが国には、ガソリン・軽油などの自動車燃料や原油、石炭などの化石燃料に対して、揮発油税、軽油引取税、航空機燃料税、石油ガス税、石油石炭税など多くの個別間接税が課せられている。さらに2012年からは石油石炭税の税率の上乗せとして「地球温暖化対策税」も導入された。それでもその水準をCO2あたりで比較すると、わが国の水準は先進国中、最も低くなっており、CO2一単位当たりの税率の引上げについて、燃料別のCO2排出量と整合性をとる形で議論する必要がある。 第2に国際競争力の問題である。グローバル経済の下では、炭素税による価格上昇は輸出品の競争力を弱めるだけでなく、環境税が導入されておらず価格に税負担のない国からの輸入品と比べて競争力が低下してしまう。またわが国企業が、コスト高を嫌って環境税のない国に工場を移転すれば、世界規模で見れば排出量は変わらず、わが国の雇用が減少するだけということにもなりかねない。炭素税導入にはすでに鉄鋼業界が強く反発するなど、今後の議論は容易ではない。 これを防ぐための方法として、国境調整を行うことが考えられ、EUの炭素税はそれを取り込んで検討をしている。また米国バイデン大統領もこの税制の検討を行うとしている。具体的には、輸入段階で海外製品に対して国内生産品に相当する炭素税を賦課し、輸出段階で輸出企業の炭素税負担を還付するというもので、環境対策の不十分な中国などからの輸入抑制につながる。ただしWTO違反の恐れもあり、十分な検討が必要である。 *  *  * 最後に、ポリシーミックスの必要性である。炭素税収を投資に振り向ければ、地球温暖化に資するだけでなく、経済活性化につなげることができる。欧米ではグリーンイノベーションとして、コロナ後の経済対策として期待されている。今後のわが国の成長を牽引していく起爆剤ともなりうる。 昨年12月25日に閣議決定されたグリーン成長戦略には、「市場メカニズムを用いる経済的手法(カーボンプライシング等)は、産業の競争力強化やイノベーション、投資促進につながるよう、成長戦略に資するものについて、既存制度の強化や対象の拡充、更には新たな制度を含め、躊躇なく取り組む」とされている。 わが国の重厚長大産業の抵抗が予想されるが、産業構造の大転換を図るという観点から、大きな議論をしていくことが必要だ。 (了)

#No. 405(掲載号)
#森信 茂樹
2021/02/04

〔令和3年3月期〕決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第1回】「「オープンイノベーション促進税制の創設」「賃上げ・投資促進税制(大企業向け)の見直し」」

〔令和3年3月期〕 決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第1回】 「「オープンイノベーション促進税制の創設」 「賃上げ・投資促進税制(大企業向け)の見直し」」   公認会計士・税理士 新名 貴則   令和2年度税制改正における改正事項を中心として、令和3年3月期の決算・申告においては、いくつか留意すべき点がある。本連載では、その中でも主なものを解説する。 【第1回】は、「オープンイノベーション促進税制の創設」及び「賃上げ・投資促進税制(大企業向け)の見直し」について、令和3年3月期決算申告において留意すべき点を解説する。   1 オープンイノベーション促進税制の創設 企業が競争力を強化するために、ベンチャー企業に積極的に投資することを後押しする制度として、令和2年度税制改正において「オープンイノベーション促進税制」が創設されている。 ① 制度概要 青色申告書を提出する法人が、一定のベンチャー企業に対して出資を行う場合に、その投資額の25%相当額の所得控除を認める制度である。ただし、株式取得の日から5年以内に当該株式を売却等した場合は、その部分を益金に参入することになるので注意が必要である。 ② 適用要件 適用のための要件は次の通りである。 (※) 当該法人が主体となるコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)による出資も対象。 ③ 出資対象となるベンチャー企業の要件 出資対象としてのベンチャー企業には、主に次のような要件を満たすことが求められる。 ④ 特定株式の要件 対象法人が取得する特定株式には、主に次のような要件を満たすことが求められる。 ⑤ 税制優遇措置 特定株式の取得価額の25%以下の金額を特別勘定として経理した場合、特別勘定として経理した金額の合計額を損金に算入できる。ただし、その事業年度の所得の金額を上限とする。 また、1件当たりの取得価額の上限額は100億円であり、一事業年度の損金算入限度額は125億円とされている。 ⑥ 特別勘定の取崩し 特定株式の取得から5年を経過するまでに、特別勘定の取崩し事由に該当することとなった場合は、その事由に応じた金額を取り崩して益金に算入する。具体的には、次のような場合である。 ⑦ 適用時期 この改正は、令和2年4月1日から令和4年3月31日までに特定株式を取得した場合に適用される。したがって、令和3年3月期決算申告においては適用が開始されている。   2 賃上げ・投資促進税制(大企業向け)の見直し 平成30年度税制改正において、所得拡大促進税制の対象を中小企業者等とそれ以外(大企業)に区分し、大企業に対しては設備投資の要件を追加して「賃上げ・投資促進税制」(中小企業者等も選択適用可能)として改組していた。令和2年度税制改正において、この「賃上げ・投資促進税制」における設備投資要件が厳格化されている。なお、中小企業者等向けの所得拡大促進税制については、変更はない。 この改正は令和2年4月1日以後に開始する事業年度から適用されるので、令和3年3月期決算申告には適用されることになる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (了)

#No. 405(掲載号)
#新名 貴則
2021/02/04

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例26】「中古自動車販売業の代表者に対する役員報酬の過大性」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例26】 「中古自動車販売業の代表者に対する役員報酬の過大性」   国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦   【Q】 私は、東海地方を拠点に主として中古自動車等の輸出入業務を行う自動車販売業を営む株式会社Aにおいて、総務管理部長を拝命しております。わが社は元レースドライバーで代表取締役のBが創業した会社で、Bは自動車に関する豊富な知識と人脈を最大限に生かしてわが社の事業規模を拡大してきました。海外社製の中古自動車はトラブルも多く、売りっ放しでは顧客の信頼をつかむことが難しい商品ですが、Bは販売後のクレーム処理やアフターサービスにもきめ細かく対応するため、顧客からの信頼も極めて厚いと業界内では評判です。 ところがBは数年前から、わが国の高い所得税の負担に業を煮やして、東南アジアに移住し、現地で顧客に対する受注獲得業務を担当しております。Bは国外脱出後も、わが国に居住していた時期と同様に、A社の売上の大部分を稼ぎ出しているところです。すなわち、Bの指示の下、A社の日本国内の従業員は、中古自動車のオークションに関する落札業務を担当するほか、Bが開拓した顧客との契約書等のやり取り、中古自動車の輸出入に係る手続き、経理・税務申告業務等に従事しています。 A社にとってBがこれまで果たしてきた職責は極めて重く、その成果は目覚ましいものであったため、Bに対する役員給与は、日本国内に居住していた時も海外に移住してからも、それにふさわしい水準であったものと考えられます。ところが、A社が最近受けた税務調査で、税務署の調査官から、Bに対する役員給与は、会社の業績が横ばいであるにもかかわらず大幅に伸びているばかりでなく、同業他社の役員給与の水準と比較しても大きく上回っているため、不相当に高額であるといわざるを得ないと指摘されました。 A社の業績に対するBの寄与度は絶大であり、その独特の役割や貢献を反映した役員報酬につき、同業他社の通常の役員の水準と比較して高低を論じること自体がナンセンスであると考えておりますが、法人税法上どのように考えるのが妥当なのでしょうか、教えてください。 〇 A社の売上・営業利益とBに対する役員給与の推移(Bの東南アジア移住後) 【A】 法人が役員に対して支給した給与の額がその役員の職務に対する対価として不相当に高額であるかどうかは、その職務の内容、職務に従事する程度、経験年数、当該法人の業種、規模、所在地、収益の状況、使用人に対する給与の支給状況、当該法人と同種の事業を営む法人でその事業規模、収益の状況が類似するものの役員に対する給与の支給状況等を総合的に勘案して判断することとなりますが、売上高や営業利益の水準が減少する中で役員給与が増加しているような場合、それを正当化するには相当の理由が必要であるものと考えられます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 役員給与の損金性 平成18年度の税制改正後の法人税法の規定では、内国法人が支給する役員給与については、原則として損金に算入されない(損金不算入)こととなるが、以下の3つの形態に該当する場合には、損金に算入される(法法34①)。   (2) 過大役員給与の損金不算入 しかし、上記ア~ウに該当する役員給与であっても、「不相当に高額な部分の金額」は、いわゆる「隠れた利益処分」に該当するため(※1)、損金の額に算入されない(法法34②)。すなわち、役員給与の支給額(役員退職給与を除く)について以下の「形式基準」と「実質基準」とで判定し、そのうちいずれか大きい金額が損金不算入となるのである(法令70一)。 (※1) 金子宏『租税法(第二十三版)』(弘文堂・2019年)398頁参照。 ① 形式基準 定款の規定又は株主総会、社員総会若しくはこれらに準ずるものの決議により定めた役員給与の限度額等を超える部分の金額(法令70一ロ)。 使用人兼務役員の使用人部分給与を含めないで限度額を定めている場合は、その使用人分に対する適正額を除外して判定する。 支給限度額を個々の役員ごとに定めている場合には、形式基準の適用にあたり、個々の役員ごとに行うこととなる。 ② 実質基準 その役員の職務内容、その法人の収益及び使用人の給与の支給状況、その法人と同種の事業を営む事業規模が類似する法人の役員に対する給与の支給状況といった状況等に照らし、その役員の職務対価として相当であると認められる金額を超える部分の金額(法令70一イ)。 実質基準の判定の際には、みなし役員に対する給与も含めて判定することとなる。   (3) 実質基準の適用事例 過大役員給与の損金不算入に関しては、(2)の2つのうち②の「実質基準」が問題となるケースがほとんどである(東京地裁平成22年9月10日判決・訟月58巻6号2425頁(TAINSコード:Z260-11507)、岐阜地裁昭和56年7月1日判決・訟月27巻12号2327頁(TAINSコード:Z120-4823)等)。そこで、「実質基準」の適用が争われた最近の裁判例として、東京地裁令和2年1月30日判決(TAINSコード:Z888-2295)があるので以下でみていきたい。 ① 事案の概要 自動車の輸出入事業等を目的とする内国法人である原告A社は、平成23年7月期から平成27年7月期までの各事業年度の法人税並びに平成25年7月期及び平成26年7月期の各課税事業年度の復興特別法人税について、原告の代表取締役の1人であるBに支給した当該年度に係る給与(退職給与以外のもの)の全額を損金の額に算入して申告した。 これに対し、春日部税務署長(処分行政庁)は、本件役員給与の額には法人税法第34条第2項に規定する不相当に高額な部分があり、同部分の額を損金の額に算入することはできないなどとして、原告に対し、本件各事業年度に係る法人税等の各更正処分及びこれに伴う過少申告加算税の各賦課決定処分を行った。 本件は、原告A社が、本件役員給与の額に不相当に高額な部分はないなどと主張して、被告を相手に、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分の一部取消しを求める事案である。 なお、課税庁が提示した比較対象法人の役員給与(平均値)の支給状況と原告A社のBに対する役員給与の支給状況は以下の表のとおりである。 〇 比較対象法人の役員給与(平均値)と原告A社のBに対する役員給与の支給状況 ② 本件の争点 本件の争点は、本件役員給与のうち「不相当に高額な部分」(法人税法第34条第2項)の有無及びその金額である。本件役員給与については、形式基準の金額を超える部分が存在しないため、実質基準の金額(同業類似法人の役員給与の支給状祝等に照らして相当と認められる金額)を超える部分の有無及びその金額が問題となる。 ③ 裁判所の判断 ④ 当裁判例からいえること (ア) 類似法人の最高額との比較 当裁判例の判示で注目されるのは、実質基準により類似法人の役員給与と比較する際に、被告・課税庁側が主張していた「本件各抽出法人の役員給与の平均額」を使用することが排斥され、「原告の売上げを得るために本件代表者が果たした職責及び達成した業績等の本件における事情」を考慮した結果、「本件各抽出法人の役員給与の最高額を超える部分」を使用すべきとされた点である。 一口に「役員給与」といっても、経営基盤や環境が安定した企業の従業員から昇格した役員に対する報酬と、企業の創業者でその類まれな経営手腕や能力、人脈等を最大限に活用し企業の業績に多大なる貢献を行ってきた役員に対する報酬とを単純に比較することは、全くもってナンセンスで意味をなさないということは、社会常識に属することであろう。当裁判例の原告の代表者のような、「原告のオーナー経営者として、原告の主たる業務(マレーシアへの輸出業務)全般を差配するとともに、クライアントに対する営業を行って受注の大半を自ら獲得するなどして原告の収益に多大な貢献をしたと評価することができる」場合には、「類似法人の役員給与の平均額」のような、平均的な役員給与の水準を適用して「不相当に高額な部分の金額」を算定することはできないといえる。 (イ) 実質基準と法人の収益 一方で、裁判所は、営業利益の水準に比して「不自然に高額な本件役員給与によって、原告が本件各事業年度において納付した法人税の額は、本来よりも大きく圧縮されることとなっているのであるから、原告が本件役員給与の全額を損金の額に算入したことにより、課税の公平性は著しく害されている」として、「類似法人の役員給与の最高額」を超える部分の金額は「不相当に高額な部分の金額」として損金不算入としている。当該判示に対しては、役員給与の水準はその役員の果たしている職務の内容を基準に算定すべきであり、法人税額の多寡を考慮するのは不適切であるという指摘もある(※2)。 (※2) 森照雄「過大な役員給与の損金不算入」『税理』2021年2月号216頁参照。 実質基準の規定は平成18年度の税制改正前後で変わったものではなく、施行令第70条第1号イでは「法人の収益」が勘案すべき基準の1つに挙げられているが、これを根拠に、法人の収益の状況に比して役員給与の水準が高いと、課税所得が大幅に低下し、結果として法人税額が減少することをもって「課税の公平性は著しく害されている」という解釈が導き出されるのだと考えられる。もっとも、わが国においては、法人税よりも所得税(累進課税)の方が税負担が重いのであるから、役員給与の水準が高いことはトータルの税負担を不当に減少させることにはつながらないともいえる。ただし、本件の場合は、役員の居住地が海外であるため、20%の源泉税のみで完結する点は考慮すべきであろう。いずれにせよ、実質基準にかかる「法人の収益」の考え方は、未だ実質基準の解釈として確立しているとはいえないことから、上級審の判断が待たれるところである。 ここではとりあえず、本裁判例における裁判所の判断に基づき、法人の収益の状況に比して役員給与の水準が著しく高い場合には、実質基準が適用され、「類似法人の役員給与の最高額」を超える部分の金額は「不相当に高額な部分の金額」として損金不算入となると解しておきたい。   (4) 本件への当てはめ 法人が役員に対して支給した給与の額がその役員の職務に対する対価として不相当に高額であるかどうかは、その職務の内容、職務に従事する程度、経験年数、当該法人の業種、規模、所在地、収益の状況、使用人に対する給与の支給状況、当該法人と同種の事業を営む法人でその事業規模、収益の状況が類似するものの役員に対する給与の支給状況等(いわゆる「実質基準」)を総合的に勘案して判断することとなるが、売上高や営業利益の水準が減少する中で役員給与が増加しているような場合には、そのような増加を正当化するのに十分な理由がない場合には「不相当に高額な部分の金額」があるとして損金不算入となる金額が生じるものと考えられる。 (了)

#No. 405(掲載号)
#安部 和彦
2021/02/04

令和2年度税制改正における国外財産調書制度の見直し 【第2回】

令和2年度税制改正における 国外財産調書制度の見直し 【第2回】   税理士 谷口 勝司   Ⅱ 令和2年度税制改正の内容 令和2年度税制改正においては、国外取引や国外財産についての適正・公平な課税を実現するため、納税者側から一層の情報開示を促すための仕組み等が重要である等の観点から、国外財産調書について以下の改正が行われた。 なお、本連載の最後(第5回)に、改正前後における加算税割合の一覧表を掲げておくので、改正内容と併せて参照いただきたい。   1 相続国外財産に係る相続直後の国外財産調書等の記載の柔軟化 相続開始年の12月31日においてその価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する相続人は、相続開始年の年分の国外財産調書については、その相続又は遺贈により取得した国外財産(以下「相続国外財産」という)を除外して、国外財産調書を提出することができることとされた(調書法5②)。 この場合において、相続開始年の年分の国外財産調書の提出義務については、国外財産の価額の合計額から相続開始年に取得した相続国外財産の価額の合計額を除外して判定することとされた(調書法5②後段)。 国外財産調書の提出義務はその年の12月31日において判断することから、改正前の制度では、相続人の国外財産調書の提出及び記載については、相続国外財産を含めてその判断を行うことになり、その年の12月31日において遺産分割が行われていない場合については法定相続分で按分した価額により判断し、遺産分割により相続人それぞれの持分が定まっている場合にはそれぞれの持分に応じた価額により判断することとされていた。 改正後、相続開始年における相続人は、上記のとおり、相続国外財産を除外して国外財産調書の提出及び記載の判断を行うことができる、という柔軟化措置が講じられることとなった。 この柔軟化措置によって、相続開始年における相続人は相続国外財産を考慮する必要が無くなったといえる。ただし、この柔軟化措置は、相続開始年のみの措置であって、相続開始年の翌年以後は、改正前と同様に、国外財産調書の提出及び記載の判断を行うことになる。 今回の改正によって、相続国外財産を有する相続人は、国外財産調書の提出及び記載の判断について、改正前は相続開始年に行っていたが、改正後は相続開始年の翌年に行うことができ、1年後倒しになったといえよう。 なお、この柔軟化措置は、「・・・できる。」と規定されていることからも明らかなように任意適用であって、改正前と同様の判断を行った上、相続開始年において相続国外財産を除外しないで国外財産調書の提出及び記載をすることができると考えられる。 簡単な事例で、相続開始年の国外財産調書の記載及び提出について説明しよう。 ◎相続開始年の国外財産調書の提出及び記載 ※相続開始年の12月31日現在。 上記事例の場合、改正後において、相続開始年の国外財産調書の提出及び記載は以下のとおりとなる。 相続人乙は、相続国外財産を除外しても5,000万円を超える国外財産(乙の固有国外財産)を有しているから国外財産調書の提出義務があるが、国外財産を8,000万円と記載して(相続国外財産6,000万円を除外して)提出することができる(国外財産を1億4,000万円と記載して提出することもできる)。 相続人丙は、相続国外財産を除外すると固有国外財産が5,000万円を超えないため、国外財産調書を提出しないことができる(国外財産を7,000万円と記載して提出することもできる)。 相続人丁は、国外財産が5,000万円を超えないため、国外財産調書の提出義務はない。 (注) 相続開始年の翌年以後は、相続国外財産を含めた国外財産が5,000万円超である場合は、全ての国外財産について国外財産調書の提出及び記載を要することに注意する必要がある。   (了)

#No. 405(掲載号)
#谷口 勝司
2021/02/04

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第15回】「居住の用に供されなくなった家屋が災害により滅失した場合」-災害跡地の譲渡-

居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第15回】 「居住の用に供されなくなった家屋が災害により滅失した場合」 -災害跡地の譲渡-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、6年前の12月に居住用家屋とその敷地を東京に取得しました。一昨年の4月に大阪へ転勤となり、その家屋は空き家となっていましたが、昨年の9月の大型台風でその家屋は滅失してしまいました。 本年の5月にその敷地を売却しましたが、多額の譲渡損失が発生しました。なお、災害で滅失したその家屋の取得から滅失までの所有期間は、5年超の要件を満たしていません。 他の適用要件が具備されている場合に、Xは当該譲渡について、「居住用財産買換の譲渡損失特例(措法41の5)」を受けることができるでしょうか。 A 「居住用財産買換の譲渡損失特例」を受けることができます。 ●○●○解説○●○● その居住の用に供している家屋でその居住の用に供されなくなったものが「災害」により滅失した場合において、その居住の用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に、その家屋の敷地の用に供されていた土地等を譲渡したときは、その譲渡は、譲渡資産の譲渡に該当するものとして取り扱うことができるとされています。 この場合において、その家屋の所有期間の判定にあたっては、その譲渡のときまでその家屋を引き続き所有していたものとして取り扱われます(措法41の5⑦一ロ、措通41の5-7(居住の用に供されなくなった家屋が災害により滅失した場合))。 なお、「災害」については、震災、風水害、火災その他政令で定める災害をいうものと規定されています(所法2①二十七、所令9、措通31の3-13(「災害」の意義))。 したがって、本事例の場合の土地の譲渡は、災害で滅失した家屋が居住の用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡され、そして、その滅失した家屋の取得の日からその土地の譲渡の時までの期間、つまり、その家屋が現存すると仮定した場合の所有期間が5年超であることから、Xは「居住用財産買換の譲渡損失特例」の適用を受けることができます。 おって、この取扱い規定は、「特定居住用財産の譲渡損失特例(措法41の5の2)」についても準用されます(同条⑦一ロ、措通41の5の2-7(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例に関する取扱い等の準用))。 (了)

#No. 405(掲載号)
#大久保 昭佳
2021/02/04

〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第3回】「国外関連取引に「重要な無形資産」が存在するか否かの判断」

〈判例・裁決例からみた〉 国際税務Q&A 【第3回】 「国外関連取引に「重要な無形資産」が存在するか否かの判断」   公認会計士・税理士 霞 晴久   〔Q〕 残余利益分割法は、内国法人及びその国外関連者の双方に重要な無形資産がある場合に用いられる方法であるが、国外関連者が有する重要な無形資産をどのように把握するのか。 〔A〕 国外関連取引の内容や法人及び国外関連者の活動・機能、市場の状況等を十分に検討し、国外関連取引に無形資産が関連しているか、また、所得の源泉になっているかを総合的に勘案する。 ●●●〔解説〕●●● 1 移転価格税制上の無形資産の考え方について 国税不服審判所令和元年7月2日裁決(※1)は、「(残余利益分割法とは)平成7年の『多国籍企業と税務当局のための移転価格の算定に関するガイドライン』(OECD移転価格ガイドライン)の公表に伴う平成12年9月8日付課法2-13ほかによる措置法通達の改正により、当時の措置法施行令で規定する利益分割法に含まれることが明らかにされた方法であり、法人又は国外関連者が重要な無形資産を有する場合に適用される方法である(下線筆者)」と述べている。 (※1) 名裁(法)令元-1(TAINSコード:F0-2-890) そこで問題となるのが、移転価格税制上の無形資産とは何かについてである。規定上は、「(有形資産及び金融資産以外の資産で)これらの資産の譲渡若しくは貸付け又はこれらに類似する取引が独立の事業者の間で通常の取引の条件に従って行われるとした場合にその対価の額が支払われるべきもの」と定義されている(租税特別措置法66条の4第7項2号及び租税特別措置法施行令39条の12第13項)。 また「移転価格税制の適用に当たっての参考事例集」(以下「事例集」)の【事例11】の《解説》では、「法人又は国外関連者の所得の源泉となる無形資産は、主に無形資産のうち重要な価値があると認められるものであるため、無形資産として『重要な価値』を有するかどうかの判断が必要となる。その判断に当たっては、国外関連取引の内容や法人及び国外関連者の活動・機能、市場の状況等を十分に検討する必要がある」と述べている。 さらに、「調査に当たっては、重要な価値を有し所得の源泉となるものを幅広く検討対象とし、国外関連取引にこれらの無形資産が関連しているか、また、所得の源泉になっているかを総合的に勘案する必要がある(事務運営指針3-12前段部分)」として、①技術革新を要因として形成される特許権、営業秘密等、②従業員等が経営、営業、生産、研究開発、販売促進等の企業活動における経験等を通じて形成したノウハウ等、及び③生産工程、交渉手順及び開発、販売、資金調達等に係る取引網等を掲げている。 事例集は、続けて、「法人又は国外関連者の有する無形資産が所得の源泉となっているかどうかの検討に当たっては、例えば、国外関連取引の事業と同種の事業を営み、市場、事業規模等が類似する法人のうち、独自の機能を果たさない法人(基本的活動のみを行う法人)を把握できる場合には、法人又は国外関連者の国外関連取引に係る利益率等の水準と基本的活動のみを行う法人の利益率等の水準との比較を行うとともに、法人又は国外関連者の無形資産の形成に係る活動、機能等(例えば、本事例における研究開発や広告宣伝に係る活動・機能など)を十分に分析する必要がある(事務運営指針3-12後段部分)」としている。 事例集では、具体例として、①研究開発及びマーケティング活動により形成された無形資産【事例11】、②販売網及び品質管理ノウハウに関する無形資産【事例12】、③従業員の事業活動を通じて企業に蓄積されたノウハウ等の無形資産【事例13】、④無形資産の形成・維持・発展への貢献【事例14】、⑤無形資産の形成費用のみ負担している場合の取扱い【事例15】、及び⑥出向者が使用する法人の無形資産【事例16】についてそれぞれ解説している。   2 残余利益分割法に係る裁判例 残余利益分割法を適用するに際し、実務上問題となるのが果たして国外関連者が無形資産を有するか否かの検証であろう。この点に関し、残余利益分割法の適用が争点となった上村工業事件(※2)を取り上げる。 (※2) 第一審は東京地裁平成29年11月24日判決(平成25年(行ウ)第263号・税資第267号-141(順号13090))(TAINSコード:Z267-13090)。控訴審は東京高裁令和元年7月9日判決(平成29年(行コ)第382号・判例集未掲載)(TAINSコード:Z888-2290)。 《上村工業事件》 (1) 事件の概要 本件は、めっき薬品の製造販売等を業とするX(原告・控訴人)が、国外関連者であるB社(Xが発行済株式総数の50%超を有する台湾子会社)及びC社(Xが発行済株式総数の100%を有するマレーシア子会社)との間でめっき薬品の製造・販売に係る技術やノウハウ等の無形資産の使用許諾及び役務提供の取引(本件国外関連取引)を行い、当該取引について当該国外関連者から支払を受けた対価の額を益金の額に算入して法人税の確定申告をしたところ、所轄税務署長Yから、上記支払を受けた対価の額は独立企業間価格に満たないとして、更正処分及び賦課決定処分を受けたところ、Xはかかる処分等を不服として、申告額等を超える部分の取消しを求めた事案である。 なお、B社は製造しためっき製品について直接あるいはD社(Xが発行済株式総数の100%を有するシンガポール子会社)を通じて非関連者に販売し、C社は同製品をD社を通じて非関連者に販売していた。 (2) 裁判所の判断 本件において、Xは、Xの関係会社ではない韓国所在のE社とのめっき製品に係る製造ノウハウ等の無形資産の使用許諾及び役務提供取引を比較対象取引(Eライセンス取引。いわゆる内部コンパラ)であると主張したが、第一審である東京地裁は、本件国外関連取引とEライセンス取引を比較すると、その取引の対象たる無形資産等の対価の額に影響を及ぼす差異が存在し、その影響を具体的に把握することは極めて困難であって、生じる対価の額の差を調整できるとはいえないから、両取引が『同様の状況』の下でされたものということはできないとしてEライセンス取引は本件国外関連取引の比較対象取引になるということはできないとした。 そして、X及びその国外関連者が有する重要な無形資産が利益獲得に寄与していることからすれば、その独立企業間価格の算定には、基本的利益を配分した上で残余利益を重要な無形資産の価値に応じて配分する残余利益分割法と同等の方法を用いるのが合理的であるということができると判示した。本件控訴審である東京高裁判決も、かかる第一審の結論判旨を支持した。 (3) 国外関連者が有する重要な無形資産の認定について 本件第一審は、「X及びその国外関連者においてXのライセンス製品の製造、販売等により所得(利益)を得ているのは、①Xが、研究開発、海外支援体制の確立等の企業活動により、顧客のニーズに沿っためっき薬品を開発した上、国外関連者に対して当該めっき薬品の製造、販売等に関する技術情報やノウハウを提供するほか、国外関連者やその顧客に対する技術支援も行うことによって、Xのライセンス製品に対する信用を形成、保持及び発展させていること、並びに、②B社及びD社においても、Xからノウハウの提供や技術支援を受けながら、顧客に対する営業及び技術サポートを行うことで、台湾やASEAN諸国においてXのライセンス製品を市場に浸透させて付加価値を創出し、その販売先となる顧客を開拓、維持していること(例えば、B社は、ユーザーに対する徹底的な技術サポートによって商品に付加価値をつけ、D社も、日系企業に対する営業・技術サポートを行うことにより、当該日系企業を販売先として確保するなどしている)によるものということができる」とし、さらに「このうち①はXの、②はB社及びD社のそれぞれ重要な無形資産(※3)であって、これらの無形資産が総合的に活用されることにより、本件国外関連取引は事業成果を上げ、所得(利益)を生み出しているものといえる」と事実認定することで、「Xとその国外関連者双方に重要な無形資産が存在する」と結論付けた。 (※3) なお、C社はその製造した製品等をすべてD社を通じて販売しているため、B社やD社の有する②のような無形資産は有していないと判断している。 (了)

#No. 405(掲載号)
#霞 晴久
2021/02/04
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