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《速報解説》 外貨建有価証券等の取扱いを整理した「公益法人会計基準に関する実務指針」の改正が確定~2018年4月1日以後開始する事業年度に係る監査から適用~

《速報解説》 外貨建有価証券等の取扱いを整理した 「公益法人会計基準に関する実務指針」の改正が確定 ~2018年4月1日以後開始する事業年度に係る監査から適用~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2019年3月19日(ホームページ掲載日は2019年3月28日)、日本公認会計士協会は、「公益法人会計基準に関する実務指針」(非営利法人委員会実務指針第38号)の改正を公表した。これにより、2019年1月18日から意見募集していた公開草案が確定することになる。 これは、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号、2018年2月16日)及び内閣府公益認定等委員会から公表された「公益法人の会計に関する諸課題の検討結果について」(2018年6月15日)などに基づいて、公益社団・財団法人における会計上の取扱いについて所要の見直しを行うものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 一般正味財産を財源として保有する有価証券の評価損益の取扱い 一般正味財産を財源として保有する有価証券について評価損益を計上する場合の正味財産増減計算書の表示区分及び科目について、時価法を適用する場合の評価損は「経常増減の部」の評価損益等として、また、時価や実質価額の著しい下落に伴う減損処理による評価損は「経常外増減の部」の投資有価証券減損損失として処理する(Q39)。 2 外貨建有価証券 一般正味財産を財源として保有する外貨建有価証券の決算時の会計処理について、次のように整理している(Q41)。 3 税効果会計を適用する場合の財務諸表の表示方法 繰延税金資産については、その他固定資産の区分に表示し、繰延税金負債については、固定負債の区分に表示する。なお、繰延税金資産と繰延税金負債がある場合には、相殺して表示する(Q56)。   Ⅲ 適用時期等 2018年4月1日以後開始する事業年度から適用する。 (了)

#No. 312(掲載号)
#阿部 光成
2019/03/28

《速報解説》 社会福祉法人の会計監査義務付けに係る会計基準等改正に応じ「社会福祉法人会計基準に関する実務上のQ&A」が改正される

《速報解説》 社会福祉法人の会計監査義務付けに係る会計基準等改正に応じ 「社会福祉法人会計基準に関する実務上のQ&A」が改正される   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2019年3月27日、日本公認会計士協会は、「社会福祉法人会計基準に関する実務上のQ&A」(非営利法人委員会研究資料第5号)の改正を公表した。 これは、「社会福祉法人会計基準」(平成23年7月27日)が厚生労働省から公表されたことを受けQ&Aとして公表したが、その後、一定規模の社会福祉法人に対して公認会計士又は監査法人による会計監査が義務付けられるなどの法改正を受けて、社会福祉法人が準拠すべき会計基準等も改正されたことから、改正後の社会福祉法人会計基準にも対応しつつ、新たなQ&Aを追加するなどを行ったものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 「Q&A」では、次の事項について記載している。 以下では主な改正内容について解説する。 1 金融商品の時価会計 投資有価証券に計上された満期保有目的の債券について償却原価法を適用する場合の会計処理及び注記について、設例をもって説明している(Q5)。 2 リース会計及び退職給付会計 リース会計及び退職給付会計とも、数値による会計処理に関して説明を増やす一方、会計基準への移行前のファイナンス・リース取引及び退職給付会計の導入に伴う会計基準変更時差異の取扱いについて削除している。 3 固定資産の減損会計 計算書類に対する注記(Q21)などの説明や、数値による設例(Q22)を改正している。 4 税効果会計 税効果会計に関する数値による設例(Q26)を改正する一方、税効果会計の適用初年度における過年度の一時差異等の取扱いについて削除している。 5 関連当事者間取引 関連当事者の範囲において、支配法人、被支配法人などを記載し、また、開示範囲について記載している(Q29、30)。 6 その他 賞与引当金や退職給付引当金以外にも引当金を計上しなければならない場合について記載しており、役員に対し在任期間中の職務執行の対価として退職慰労金を支給することが定められている場合が例示されている(Q34)。 (了)

#No. 312(掲載号)
#阿部 光成
2019/03/28

プロフェッションジャーナル No.312が公開されました!~今週のお薦め記事~

2019年3月28日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.312を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2019/03/28

山本守之の法人税“一刀両断” 【第57回】「二重課税排除の手法」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第57回】 「二重課税排除の手法」   税理士 山本 守之   1 負担調整の是非とその方法 法人税は、結局のところ個人株主に帰属すべき法人税の課税であるとの認識から、個人株主が受け取る配当に対する所得税との間に生ずる課税の重複について、何らかの調整が必要であるとする考え方と、法人を独自の税負担者と考えて調整は不要であるとする考え方があります。 また、調整を行うとすれば、留保分と配当分の両方を含めて調整するという考え方と、配当分のみを調整するだけでよいという考え方があります。 さらに、その調整の仕組みとしてどのような方法が考えられるかという考え方があります。 これらについて検討すべき事項をまとめてみると、次のようになります。 (注1) 上記のうち2つ又はそれ以上の組み合わせがある。 (注2) 配当税額控除方式は所得控除方式も考えられる。   2 調整を必要としない考え方 配当に係る所得税と法人税との調整を必要としないとする考え方は「絶対説」と「便益説」とに区分されます。 (1) 絶対説 法人税は、法人を独自の税負担者と考えて、その所得に課税するのですから、所得税との調整は不要であるというものです。 この考え方は、法人という独自の企業実体の経済活動の成果として法人自体の所得が構成されるものであり、法人自体に支払能力があるから、国家社会に対する費用を負担すべきであるという主張につながるものです。 しかし、この説に対してわが国税制調査会では「法人税を『絶対説』によって根拠づける立場については、経済的にいえば租税は詰まるところ個人の負担に帰するものであるにもかかわらず、そもそも法人を独自の税負担者とみるということがいかなる意味をもつのか明らかでない、という基本的問題が指摘されよう。」(昭和61年3月20日「法人課税に対する専門小委員会報告」)として批判しています。 (2) 便益説 法人税は法人がその活動を行うに当たって政府から受ける各種の便益に対してその費用を分担するために課された税であるというものです。 したがって、法人は株主だけを主体とするものではなく、債権者、使用人、顧客等を含めた企業に対して利害関係を有するものを全て抱含する実体であると考え、この実体たる法人に対する政府のサービスに対して税を支払うべきであるという主張に通じます。 これに対して、わが国税制調査会は、「法人税を『便益説』から根拠づける立場についても種々の難点があり、特に、企業活動に便益をもたらす公的サービス提供のための費用負担であるとした場合には、法人所得を課税ベースとすることが適当かどうかという問題がある。」(昭和61年3月20日「法人課税に関する専門小委員会報告」)と指摘しているのです。 わが国の会社法は、会社は株主を主体とするものというアメリカ商法の考え方により資本概念の構築をしていますが、便益説をどのように考えたらよいのでしょうか。   3 調整を必要とする考え方 わが国法人税制は、シャウプ勧告以来調整を必要とする立場をとっており、調整の方法論としてはともかく、「調整論」に立脚した考え方は、今後とも変わることはないと考えられます。 その場合の根拠となるのは、次の論点です。 この点は税制調査会の抜本的見直しについての答申(昭和61年10月)においても同じであり、次のように述べています。   4 全部調整の方法 この方法は、法人税と所得税との調整を配当分だけではなく、留保所得を含めて全部調整するという考え方で、「共同(組合)経営方式」と「キャピタル・ゲイン方式」に区分することができます。 (1) 共同(組合)経営方式 共同(組合)経営方式とは、法人の所得を株主等の持株割合に応じていったん個人株主に帰属させて個人段階で所得税を課税するという方式です。 例えば法人の所得が1,000万円あり、株主Aの持株割合が10%であるとすれば、配当の有無にかかわらず、Aに100万円の所得があるものとして所得税を課税するというものです。 この方式については、わが国税制調査会では、次の理由によって実現が困難であるとしています。 (2) キャピタル・ゲイン方式 キャピタル・ゲイン方式とは、留保分は株価に反映し、その結果株主にキャピタル・ゲインが生ずると考えられるから、これを株主の所得とみなし、配当と合わせて個人段階で所得課税を行うという方法です。 この方法についても、株主にとっては未現実となっている株式のキャピタル・ゲインを所得とみなすことの可否や、法人の留保所得がそのまま株価に反映する保証のないことから現実の税制として採用することは難しく、税制調査会でも次のように述べています。 なお、シャウプ勧告に盛られた個人の有価証券譲渡益課税及び留保所得に対する付加税の課税は、実現された所得に対する課税に遅延利子の性格を持つものであり、上記のキャピタル・ゲイン方式とは区別されるものと考えられます。   5 部分調整の方法 部分調整の方法は、二重課税の排除を法人段階で行う方法と株主等である個人段階で行う方法があります。法人段階で行う方法は、さらに配当軽課方式と支払配当損金算入方式があります。個人段階の調整方式は、配当税額控除方式又は配当所得控除方式と法人税加算調整方式(いわゆるインピュテーション方式)に区分されます。 (1) 配当軽課方式 この方式は、支払配当に充てた所得に対する税率を留保分よりも低いものにして、配当支払法人においても二重課税の一部を排除するという方法であり、わが国でも昭和30年の税制改正に際して、「株式による資金調達を容易にし、企業の自己資本充実を図るという政策目的に資するため、法人段階においても負担調整を行う」という趣旨で創設され、個人所得における配当税額控除とともに、一時期はわが国の税制の調整方法となっていたのです。 この方法は、法人税額の計算上で行われる調整であるため、執行上は極めて簡便であるという利点がありますが、同時に次のような欠点もあります。 このため、抜本的見直しについての答申においては、 としたため、配当軽課方式は、段階的に縮小し平成2年3月31日をもって廃止されました。 (2) 支払配当損金算入方式 法人所得に対しては法人税が課され、株主等が受け取る配当については他の所得と総合して所得税が課されますが、法人所得を計算する際に支払配当を損金の額に算入します。つまり、法人税の課税標準は、留保所得金額のみとし、配当に充てた部分には法人税を課さないという方法です。 この方式がはじめて問題とされたのは、昭和35年12月の「当面実施すべき税制改正に関する答申」においてであり、ここでは、支払配当のうち払込資本の8%を支払利子に見合う分として支払法人段階で損金算入を行い、それ以外の分は企業独自の負担として二重課税を行わないというものでした。 次いで、昭和39年12月のいわゆる長期答申においては、法人段階源泉課税方式と支払配当損金算入方式を採り上げ、前者を採る方式が妥当であるとされました。 この方式を採った場合の効果と問題点は、次のように分析されています。 抜本的見直しについての答申において配当軽課を廃止する方向を打ち出したことからもうかがえるように、わが国においてこの方式を採用する余地はないのではないかと考えます。 また、法人税の課税標準を留保所得金額のみに限定することは、株式の所有と経営が分離されている大法人が有利になるほか、タックス・エロージョンの問題とされる恐れすらあり、個人的にはこの方法に賛成するわけにはいきません。 (3) 配当税額控除方式 法人の所得に対して法人税を課税するが、株主段階では受取配当金を他の所得と総合して算出された所得税額から一定部分の税額控除をするという方法であり、わが国ではシャウプ勧告以来定着している制度といえます。 (注) 配当控除の率は次の算式のxによって算出されましたが、逐次改正され、現在ではこの率に合致していません。 この制度に対しては、税制調査会は、次のように利点と欠点を分析しています。 このような分析の結果、抜本的見直しについての答申においては、配当軽課を廃止しますが、配当控除方式は存続し、二重課税の調整を個人段階にゆだねることとし、次のように答申しています。 (注) 「諸外国における動向に注視」というのは、将来的にインピュテーション方式に移行する余地も残しているものと思われます。 結局、昭和63年12月に実施した税制改革では、二重課税排除の方法としては、配当税額控除方式のみによることとし、配当軽課方式は廃止されました。 また、「今後の税制のあり方についての答申」(平成5年11月 税制調査会)では、法人税の負担調整についての基本的仕組みについて、 と述べています。 (4) 法人税加算調整方式(インピュテーション方式) 法人段階では法人所得に対して法人税を課し、株主段階では受取配当を法人税引前の金額にグロス・アップし、算出された所得税額からグロス・アップした部分を税額控除するという方法です。 例えば、A法人に10,000千円の所得があり、仮に法人税率を30%とすれば、税引前の所得は7,000千円となります。この中から株主甲が700千円の配当金を受け取ったとすれば、甲の配当所得を次のようにグロス・アップします。 この配当所得を基礎として甲の所得税を算出し、算出された所得税から300千円の税額控除をするというのです。 インピュテーション方式はヨーロッパ諸国を中心として採用されていますが、それぞれの国の実情に応じて部分的に調整が行われています。EC統合の共同税制で調整割合をある程度統一しようという動きもありましたが、失敗しました。 この方式への移行を検討した税制調査会で分析した長所と短所は次のとおりです。 このような検討の結果、法人税加算調整方式に移行することは当面考えず、配当税額控除方式を維持することとしています。 主要国における負担調整の仕組みは、次のようになっています。 【主要国の配当に係る負担調整に関する仕組み】 (2015年4月現在) (注)1.日本では、上場株式等の配当については源泉徴収されており、確定申告不要と総合課税とを選択することができる。また、上場株式等の譲渡損失との損益通算のために申告分離課税も選択することができる。 2.アメリカにおいては、個人株主段階で一定の配当所得に対しキャピタルゲイン課税と同様の軽減税率が適用されている。なお、アメリカは1936年に個人株主段階における法人税と所得税の調整措置を廃止している。 3.インピュテーション方式とは、受取配当のほか、受取配当に対応する法人税額の全部又は一部に相当する金額を個人株主の所得に加算し、この所得を基礎として算出された所得税額から、この加算した金額を控除する方式のことをいう。受取配当に対応する法人税額の全部を株主に帰属させる完全インピュテーションの場合、法人所得のうち配当に充てた部分に関する限り、二重課税は完全に排除される。なお、イギリスの部分的インピュテーション方式では、受取配当にその1/9を加えた額を課税所得に算入し、算出税額から受取配当額の1/9を控除する。 4.ドイツでは、2008年まで総合課税のもと、配当所得一部控除方式(受取配当の50%を株主の課税所得に算入)が採られていたが、2009年から、利子・配当・キャピタルゲインに対する一律25%の申告不要(分離課税)が導入されたことに伴い、個人株主段階における法人税と所得税の調整は廃止された。 5.フランスでは、2007年まで総合課税のもと、配当所得一部控除方式(受取配当の60%を株主の課税所得に算入)が採られていたが、2008年から、総合課税と分離課税の選択制が導入され、分離課税を選択した場合には個人株主段階における法人税と所得税の調整は行われないこととなった。なお、2013年予算法案において、利子・配当・譲渡益について分離課税との選択制が廃止され、2013年分所得から累進税率が一律適用されることとなった。 (出所) 財務省資料 (5) その他 アメリカでは、投資促進と株価対策の側面から配当を非課税又は低税率とする方法が検討されています。 この場合、株主の受取配当を非課税とすることによって法人、個人を通ずる二重課税を排除する一手法と評価する向きがあるようです。しかし、受取配当非課税又は低税率適用は二重課税排除の理論から出発したものではなく、単なる政策税制と位置付けられるものに過ぎません。 また、「二元的所得税」を導入した場合の二重課税排除のあり方も検討されなければなりません。 二元的所得税は、所得を資本所得と勤労所得に分類し、資本所得は低率の比例税率を適用し、勤労所得は富の再分配機能を重視して累進的な税率で課税するというものです。 この場合の資本所得と勤労所得の内容は次のようになっています。 資本所得は労働よりも流動的であり、これに高率の税を課すると安易に海外に逃避してしまい、税の空洞化が生ずるという理由で低率の比例税率を適用するのです。 また、最近では金融工学を駆使して税制のすき間を縫うような節税型金融商品が次々に開発されていますが、二元的所得税で金融商品を一本化して課税すれば、金融資産間の不公平も解消するというわけです。 さらに、金融所得間の損益通算を認めれば、株式の譲渡損失を利子や配当と通算できるから、株式のようなリスクのある投資が促進できるという効果が生じます。 負担調整と法人税の性格については、各国とも真剣に研究を進めています。 しかし、わが国の大学では税務会計の教授が今でも法人実在説と法人擬制説という単純な議論でしか取り組んでいません。悲しい限りです。 法人の性格論から議論に反省の結果を示したのが、昭和55年11月の「財政体質を改善するために税制上とるべき方策についての答申」であり、次のように述べています。 また、平成12年7月の中期答申においては、法人税・所得税の負担調整に関する基本的仕組みについて次のように述べています。 (了)

#No. 312(掲載号)
#山本 守之
2019/03/28

これからの国際税務 【第12回】「平成31年度改正で導入されたデジタル経済等への課税情報照会制度」

これからの国際税務 【第12回】 「平成31年度改正で導入されたデジタル経済等への課税情報照会制度」   早稲田大學大学院会計研究科 教授 青山 慶二   1 国税当局による情報照会の仕組の拡充 仲介者を介さずに財貨や役務の供給者が直接ユーザーとの間で引渡しや決済を完了するデジタル取引については、そこから発生する所得に対する納税義務の履行を現行の申告納税制度の下でもれなく確保することは、執行サイドにとっての難問である。 なぜなら、①供給者や取引のプラットフォームの提供者は、外国の居住者や外国法人であることが多く、かつ、同供給者等は我が国に恒久的施設を持たない場合もありうること、②ユーザーの多くは最終消費者であり、支払いに際して源泉徴収義務を課すことができないこと、といった事情があるからである。 近年、OECD・G20のイニシアティブによるBEPSプロジェクトにおいて、ソーシャルメディア・プラットフォームや検索エンジンの運営、更にはオンライン市場などのビジネスモデルの拡大に鑑み、そこでの広告宣伝やデータの利用・分析などを通じた価値創造に着目した所得把握を適正に行うべきことが合意され、現在2020年に向けたグローバルな統一課税ルールの作成に向けた協議が進行している。 実体法の改革は、2020年のルール改定に関する国際調和を待つとして、我が国は、そのような新しいデジタル取引に関する納税者情報へのアクセス権限の面で法的根拠が不明瞭な状況にあった。すなわち、国税通則法では質問検査権の行使対象が一定の範囲に限定されていたものの、仮に質問検査権の行使要件を欠く場合であっても、相手方の同意があれば任意の罰則を伴わない調査が認められるとする課税実務が長年にわたり根付いていたためでもあると考えられる。 31年度改正が取り上げたのは、質問検査権と任意の調査による従来の仕組みの中では、納税義務者の課税要件の確認に困難をきたすデジタル取引等の一定の課税情報を念頭に、事業者・官公署などに対し、調査に関し参考となる書類等の閲覧・提供等の協力を求めることができる旨の規定を明示するとともに、更に、高額・悪質な無申告者を特定するため特に必要な場合に限り、罰則等の担保措置を伴った情報照会ができるとする規定を追加するものである。   2 税務当局による新たな情報照会の仕組み 今回の改正は、上記のとおり任意の照会についての規定整備という第1段階と、それで確認できない高額・悪質な無申告者を特定するための担保措置を伴う報告請求の第2段階に分かれる。ただし、第2段階は、米国で認められているジョンドゥサモンズ(不特定照会)制度などに比べると、照会事項の限定や不服申立ての仕組みなど納税者の権利に配意した控えめなものになっている。概要は以下のとおりである。 (1) 第1段階の協力要請[改正](通則法改正案74条の12) 従来は、「事業を行う者の組織する団体及び官公署」に参考事項を諮問ないし帳簿書類の閲覧等の協力を求めることができるとされていたものを、「事業者又は官公署」による帳簿書類の閲覧等の協力を求めることができると規定ぶりが拡充された。これは、金融商品取引法などの規定ぶりと平仄を合わせたものと言われている。 (2) 第2段階の報告の求め[新設](通則法改正案74条の7の2) 本条により報告を求める主体は国税局長とされ、かつ求める相手は、「特定取引の相手方となり、または特定取引の場を提供する事業者」(例えば、デジタルサービスのBtoC取引を行う事業者や、供与者・購買者にデジタルプラットフォームの利用をさせる事業者)であるとされている。ただし、照会できる場合は、次の3つのケースに該当し、かつ他の方法による情報収集が困難である場合に限定している。 また、国税局長による照会は、範囲を定められた特定取引者についての報告を60日以内の準備期間を与えて行うこととされ、かつ、照会できる情報の内容も、氏名並びに住所・番号(個人/法人)に限定されている。 加えて、本件報告の求めをする際には、国税局長はあらかじめ国税庁長官の承認を受けねばならず、事業者には不服申立も可能とされている。 (3) 今後の施行と課題 第2段階措置の適用対象可能性のあるものとしては、当面は、例えば一定の仮想通貨交換業者などが想定されるが、今後シェアリングエコノミーなどデジタル経済が拡大すれば、対象となる特定取引も広がると予測される。その際には、適正課税を担保する観点で今次改正の機能が期待されると同時に、関連データが事業者と顧客間のみならずマイナーポータルを利用して当局と共有されることによって、簡便な電子申告につながる可能性もあり、納税者と当局の双方にとってWin-Winの結果も期待されよう。 ただし、このような新たな情報照会の導入に際しては、納税者から見て当局によるいわゆる「証拠漁り」の濫用も懸念されるところであり、今回の適用除外に関する詳細なメカニズムや、施行日(2020年1月1日以後)までの1年間の猶予は、それらの懸念に十分応えたものと評価される。 (了)

#No. 312(掲載号)
#青山 慶二
2019/03/28

〈事例で学ぶ〉法人税申告書の書き方 【第36回】「特別償却の付表(10) 革新的情報産業活用設備の特別償却の償却限度額の計算に関する付表」

〈事例で学ぶ〉 法人税申告書の書き方 【第36回】 「特別償却の付表(10) 革新的情報産業活用設備の 特別償却の償却限度額の計算に関する付表」   公認会計士・税理士 菊地 康夫   Ⅰ はじめに 本連載では、法人税申告書のうち、税制改正により変更もしくは新たに追加となった様式、実務書籍への掲載頻度が低い様式等を中心に、簡素な事例をもとに記載例と書き方のポイントを解説していく。 今回は、法人の積極的なIoT、ビッグデータ等の利活用の分析等を支援し、国際的競争力の強化を促す観点から、平成30年度の税制改正により導入された特別償却制度である「特別償却の付表(10) 革新的情報産業活用設備の特別償却の償却限度額の計算に関する付表」の記載の仕方を採り上げる。   Ⅱ 概要 この付表は、青色申告法人で生産性向上特別措置法第29条に規定する主務大臣の確認を受けた場合におけるその革新的データ産業活用を行う事業者(以下「認定革新的データ産業活用事業者」という)であるものが、租税特別措置法(以下「措置法」という)第42条の12の6第1項《革新的情報産業活用設備を取得した場合の特別償却》の規定の適用を受ける場合(この規定の適用を受けることに代えて措置法第52条の3に規定する特別償却準備金として積み立てる場合を含む)に、革新的情報産業活用設備の特別償却限度額の計算に関し参考となるべき事項を記載し、該当の別表16に添付して提出するものである。 すなわちこれは、青色申告を提出する認定革新的データ産業活用事業者が、指定期間内(平成30年6月6日から平成33年3月31日までの間)に、特定ソフトウエアの新設又は増設をする場合において、その新設又は増設に係る革新的情報産業活用設備の取得等をして、その事業の用に供したときは、その事業の用に供した日を含む事業年度において、その革新的情報産業活用設備の取得価額の30%相当額の特別償却ができる制度である。 この特別償却の対象となる資産(革新的情報産業活用設備)は、特定ソフトウエアの新設又は増設をする場合における①特定ソフトウエア、②機械及び装置、③器具及び備品とされ、一の認定革新的データ産業活用計画に記載されたその新設又は増設に係る特定ソフトウエア並びにこれとともに取得又は製作をする機械及び装置並びに器具及び備品の取得価額の合計額が5,000万円以上のものをいう。 なお、本制度と他の特別償却等との重複適用は認められない。 ▼ 注意!▼ この革新的情報産業活用設備の特別償却に代えて、法人税額の特別控除の規定の適用を受ける場合は、「別表6(25) 革新的情報産業活用設備を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」を作成することになるが、この別表は次回解説する。   Ⅲ 「特別償却の付表(10)」の書き方と留意点 (1) 設例 (2) 今回の別表が適用される事業年度 平成30年6月6日以後終了する事業年度。 (3) 別表の記載例 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (4) 付表の各記載欄の説明 〔適用要件等〕欄 (了)

#No. 312(掲載号)
#菊地 康夫
2019/03/28

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例72(法人税)】 「経営力向上計画の申請を失念したため、「中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の法人税の特別控除」及び「固定資産税の軽減特例」の適用を受けることができなくなってしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例72(法人税)】   税理士 齋藤 和助     《基礎知識》 (1) 中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の法人税の特別控除(措法42の12の4) 青色申告法人である中小企業者等が、指定期間内に、生産等設備を構成する機械及び装置等で、中小企業等経営強化法の経営力向上設備等(同法の経営力向上計画に記載されたものに限る)に該当するもののうち一定の規模のもの(特定経営力向上設備等)で、その製作若しくは建設後事業の用に供されたことのないものを取得等して、国内の対象事業の用に供した場合において、特別償却の適用を受けないときは、以下の算式により計算した金額を法人税額から控除することができる。なお、税額控除限度額のうち、法人税額から控除しきれなかった金額は、繰越税額控除限度額として1年間に限り繰り越すことができる。 (注1) 中小企業者等のうち、資本金又は出資金の額が3,000万円を超える法人(農業協同組合等及び中小企業等協同組合等を除く)以外の法人においては10%。 (注2) その事業年度の法人税額の20%相当額(中小企業者等が機戒等を取得した場合の税額控除制度(措法42の6)及び特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の税額控除制度(措法42の12の3)の適用を受ける場合には、その20%相当額からこれらの金額の合計額を控除した残額)が限度となる。 (2) 中小企業等経営強化法に基づく固定資産税の軽減特例(地方税法附則15㊸) 中小事業者等が適用期間内に中小企業等経営強化法に規定する認定経営力向上計画に基づき特定経営力向上設備等を取得した場合には、特定経営力向上設備等に対して課する固定資産税の課税標準は、新たに固定資産税が課されることとなった年度から3年度分の固定資産税に限り、その課税標準となるべき価格の2分の1の額とする。 (3) 適用要件 上記(1)(2)の適用を受けるためには、確定申告書等にその対象資産が特定経営力向上設備等に該当するものであることを証する書類として、中小企業等経営強化法第13条1項の認定等に係る経営力向上計画の写し及びその経営力向上計画に係る認定書の写しを添付する必要がある。 (4) 設備取得後に経営力向上計画を申請する場合 経営力向上設備等については、経営力向上計画の認定後に取得するのが原則であるが、設備を取得した後に経営力向上計画を申請する場合には、設備取得日から60日以内に経営力向上計画が受理される必要がある。この場合において税制の適用を受けるためには、制度の適用を年度単位で見ることから、遅くとも当該設備を取得し事業の用に供した事業年度内に認定を受ける必要がある。当該事業年度を超えて認定を受けた場合には税制の適用を受けることはできない。       (了)

#No. 312(掲載号)
#齋藤 和助
2019/03/28

措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第8回】「「公益目的事業の運営が営利企業的に行われている事実がないこと」とは」

措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の 譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第8回】 「「公益目的事業の運営が営利企業的に行われている事実がないこと」とは」   公認会計士・税理士・社会保険労務士 中村 友理香   - 質 問 - 措置法40条の適用要件における「教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与する」ためには、公益目的事業の運営が営利企業的に行われている事実がないことが必要とされますが、この「公益目的事業の運営が営利企業的に行われている事実がないこと」とは、具体的にどういうことですか。   - 回 答 - 事業の営利性の判断については、当該贈与又は遺贈に係る公益目的事業について、その公益の対価がその事業の遂行に直接必要な経費と比べて過大でないことその他当該公益目的事業の運営が営利企業的に行われている事実がないことが必要とされます。 ○●○◆ 解 説 ◆○●○ 「教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与する」という要件を満たすと判断されるには4つの要件を満たす必要があり(【第5回】参照)、そのうちの1つに、「寄附を受けた公益法人等の公益目的事業の運営が営利企業的に行われている事実がないこと」というものがあります。 これは、贈与又は遺贈に係る公益目的事業について、その公益の対価がその事業の遂行に直接必要な経費と比べて過大でないことその他当該公益目的事業の運営が営利企業的に行われている事実がないことを意味します(措置法40条通達12(3))。 公益目的事業の活動に必要とされる経費を賄うために対価を受けることは問題ありませんが、必要となる経費以上に対価収入を得て剰余が生じている場合には、公益活動とはいえなくなるため、このような要件が置かれています。 ただし、具体的にどのような場合が過大な対価とみなされるのか明確ではないため、実務上は次の1から4に掲げる法人の事業の運営が、それぞれ次に掲げる法令の要件又は通達に準じて行われている場合には、法人の事業の運営が営利企業的に行われている事実がないものとして取り扱われます(措置法40条通達12(3)(注))。 1 専修学校又は各種学校の設置運営を目的とする学校法人等 ⇒昭和35年5月26日付文管振第207号「準学校法人の認可基準の解釈および運用について」文部省管理局長通達の別紙(準学校法人の認可基準の解釈および運用方針)のⅡの4の(1) 2 幼稚園の設置運営を目的とする学校法人 ⇒昭和36年5月23日付文管振第193号「幼稚園を設置する学校法人に対する幼稚園のための財産の贈与または遺贈の非課税取扱いについて」文部省管理局長通達の記の2の(2) 3  医療法第1条の2第2項に規定する医療提供施設を設置運営する事業を営む法人で出資持分の定めのないものが行う事業が下記(イ)及び(ロ)の要件を満たす法人 (イ) 医療法施行規則第30条の35の3第1項第1号ホ及び第2号に定める要件 (ロ) その開設する医療提供施設のうち1以上のものが、その所在地の都道府県が定める医療法第30条の4第1項に規定する医療計画において同条第2項第2号に規定する医療連携体制に係る医療提供施設として記載及び公示されていること。 ⇒医療法施行規則第30条の35の3第1項第2号に定める要件(この場合において、同号ロの判定に当たっては、介護保険法の規定に基づく保険給付に係る収入金額を社会保険診療に係る収入に含めて差し支えないものとして取り扱う。) 4  医療法第1条の2第2項に規定する医療提供施設を設置運営する事業を営む法人で出資持分の定めのないものが行う事業が下記(ハ)の要件を満たす法人 (ハ) 措令第39条の25第1項第1号に規定する厚生労働大臣が財務大臣と協議して定める基準 ⇒措令第39条の25第1項第1号に規定する厚生労働大臣が財務大臣と協議して定める基準第1号に規定するイからハまでの要件   (了)

#No. 312(掲載号)
#中村 友理香
2019/03/28

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第27回】「国外財産の時価をめぐる合理性」

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第27回】 「国外財産の時価をめぐる合理性」   税理士 菅野 真美   - 質 問 - このたび発生した相続において、被相続人は海外に財産を有していました。この海外財産については、その地で相続税の申告をしているのですが、日本の相続税の申告書でも、外国での申告書に記載した財産の評価額を利用して問題ないでしょうか。   ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷国外の相続財産はどう評価するか 相続税の課税標準は財産の価額であることから、財産の評価額がいくらか、どのように算定するかが肝である。国内にある財産の場合、原則的には財産評価基本通達に算式等が示されているので、それらに基づいて評価することになる。しかし、被相続人が国外に財産を遺した場合は、財産評価基本通達によって評価することが難しい財産が多くある。 そこで何をもって評価するかというと、相続税法22条でいう「財産の取得の時における時価」ということになるが、何をもって相続時の時価となるかが実務家を悩ます大きな問題となる。 平成10年12月8日裁決(平成2年2月8日相続開始相続税に係る更正処分等/棄却)では、外国の相続税の申告書に記載された財産の価額が相続税法でいう時価に該当すると判断された。以下ではこの事例を検討して、時価の合理性を考えていく。   ▷事例の概要 平成2年(1990年)2月8日に、香港に住所を有している甲が日本や香港に財産を遺して死亡した。当時、香港においては、相続税(遺産税)が課される制度となっていた(2005年に相続税(遺産税)は廃止されたので、本稿公開日現在、香港において相続税は課されない)。 甲には相続人が3人(X、J、K)おり、3人とも甲の子供であるが、X、Kは嫡出子で、Jは非嫡出子であった。当時の民法上、非嫡出子の法定相続分は嫡出子の相続分の2分の1であったことから、各相続人の法定相続分はXが5分の2、Jが5分の1、Kが5分の2であった(なお、この非嫡出子と嫡出子の法定相続分の差異については、平成25年に最高裁が違憲判決をしたことから、民法が改正され、現在では対等の相続分となっている)。 この甲の相続については、争いが起こり、申告期限までに分割はなされず未分割で申告したが、平成4年7月に修正申告を提出した。その後、平成5年1月22日に更正処分と過少申告加算税の賦課決定処分が行われ、Xが処分を不服として異議申立て、平成5年7月30日に再更正処分が行われ、平成5年12月10日に審査請求された。 審査請求でXが請求したのは下記4点である。 このように、納税者Xの主張は到底認められないような理屈で構築されていることから、審判所においてその請求は認められず、更正処分は適法であると判断された。 当時の香港における相続税(遺産税)の課税標準となる時価はこのように相続時の合理的な価額に基づいており、相続税法22条の趣旨から考えても、申告書等に記載された評価額を相続税評価額として日本の相続税の計算をすることには合理性がある。 おそらく他の国の相続税の申告書に記載された価額についても反証することが困難な場合が多いので、時価として是認されることが多いと考える。   (了)

#No. 312(掲載号)
#菅野 真美
2019/03/28

2019年3月期決算における会計処理の留意事項 【第4回】

2019年3月期決算における会計処理の留意事項 【第4回】 (最終回)   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   Ⅹ 企業結合会計基準等の改正 2019年1月16日にASBJより、改正企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」等が公表された。 主な改正点等は、以下のとおりである。   1 条件付取得対価の定義の変更 条件付取得対価の定義が変更されている(企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準(以下、「結合基準」という)」(注2))。企業結合において、条件付取得対価がある場合に、企業結合日後に返還される場合もあるため、これについて定義に含めている。   2 対価が返還される条件付取得対価の会計処理 企業結合日後に返還される条件付取得対価について、会計処理が定められている。   3 「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」の記載内容の改正 ① 記載内容の整合 結合当事企業の株主に係る会計処理に関する企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針(以下、「結合指針」という)」の第279項から第289項について、企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」と記載内容の整合性を図るための改正が行われている。 ② 分割型会社分割のみなし事業年度に関連する規定の削除 平成22年度税制改正において分割型会社分割のみなし事業年度が廃止されていることから、分割型会社分割が非適格組織再編となり、分割期日が分離元企業の期首である場合の分離元企業における税効果会計の取扱いを定めた結合指針第109項及び第403項を削除している。 上記改正は、会計処理の改正ではなく、記載内容の整合性を図ったのみであるため、本解説では、詳細な解説は行わない。   4 適用時期 2019年4月1日以後開始する事業年度の期首以後実施される組織再編から適用する。 なお、上記改正の適用前に行われた企業結合及び事業分離等の会計処理の従前の取扱いについては、改正後も継続する。そのため、改正結合基準及び改正結合指針の適用日における会計処理の見直し及び遡及的な処理は必要ない。   XI 金融庁の平成29年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項 2018年3月23日に金融庁より「平成29年度有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項」が公表された。これは、平成29年度の有価証券報告書レビューに関して、2018年3月23日時点までの実施状況を踏まえ、複数の会社に共通して記載内容が不十分であると認められた事項に関し、記載に当たっての留意すべき点を取りまとめたものである。 レビュー結果の内容は、上場会社のみならず、非上場会社の2019年3月期決算においても参考となる箇所がある。   1 繰延税金資産の回収可能性   2 企業結合及び事業分離等 XII 今後の改正予定 ASBJより、2018年8月30日に「金融商品に関する会計基準の改正についての意見の募集」が公表された。また、2019年1月18日に「企業会計基準公開草案第63号「時価の算定に関する会計基準(案)」等が公表された。   1 金融商品に関する会計基準の改正についての意見の募集 日本では、1999年に「金融商品に係る会計基準」が設定されて以降、抜本的な改正は行われていない。一方、IFRSでは、近年、大幅な改訂を行い、IFRS第9号「金融商品」が公表されている。 このような状況で、日本でも「金融商品に係る会計基準」の改正が必要ないかどうかを判断するために、意見募集が行われた。 意見募集の主要な論点は、以下のとおりである。 今後、上記のような改正が行われる可能性もあるため、留意が必要である。   2 時価の算定に関する会計基準(案) 日本では、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」等において、時価(公正な評価額)の算定が求められているが、算定方法に関する詳細なガイダンスは公表されていなかった。一方、IFRSではIFRS第13号「公正価値測定」が公表されている。 そこで、2019年1月18日に、ASBJより企業会計基準公開草案第63号「時価の算定に関する会計基準(案)(以下、「時価基準案」という)」が公表された。また、以下の公開草案も公表された。 また、日本公認会計士協会からも以下について改正の公開草案が公表されている。 上記、改正の内容は、以下のとおりである。 (1) 時価基準案の範囲 時価基準案は、以下の項目の時価に適用する(時価基準案3、25~27)。 (2) 時価の定義 「時価」とは、算定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格をいう(時価基準案5)。 なお、現行の金融商品基準においては、その他有価証券の期末の貸借対照表価額に期末前1ヶ月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることができる定めがあるが、この平均価額は、上記の時価の定義を満たさないことから削除する(金融商品指針案91)。 (注) その他有価証券の減損を行うか否かの「判断」において、期末前1ヶ月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることができる取扱いは踏襲されている。なお、この場合であっても、減損損失の「算定」には期末日の時価を用いる(金融商品指針案284)。 (3) 時価の算定単位 資産又は負債の時価を算定する単位は、それぞれの対象となる資産又は負債に適用される会計処理又は開示による(時価基準案6)。 しかし、以下の①から⑤要件のすべてを満たす場合には、特定の市場リスク(市場価格の変動に係るリスク)又は特定の取引相手先の信用リスク(取引相手先の契約不履行に係るリスク)に関して金融資産及び金融負債を相殺した後の正味の資産又は負債を基礎として、当該金融資産及び金融負債のグループを単位とした時価を算定することができる。なお、この取扱いは特定のグループについて毎期継続して適用し、重要な会計方針において、その旨を注記する(時価基準案7)。 (4) 時価の算定方法 時価の算定にあたっては、状況に応じて、十分なデータが利用できる評価技法(例えば、マーケット・アプローチやインカム・アプローチ)を用いる。評価技法を用いるにあたっては、関連性のある観察可能なインプットを最大限利用し、観察できないインプットの利用を最小限にする(時価基準案8)。 (5) 市場価格のない株式等 時価基準案においては、時価のレベルに関する概念を取り入れ、たとえ観察可能なインプットを入手できない場合であっても、入手できる最良の情報に基づく観察できないインプットに基づき時価を算定する。このような考え方の下では、原則として時価を把握することが極めて困難な有価証券は想定されないことから、時価を把握することが極めて困難な有価証券の記載を削除している(金融商品基準案19)。 しかし、市場価格のない株式等に関しては、たとえ何らかの方式により価額の算定が可能としても、それを時価とはしないとする従来の考え方を踏襲し、引き続き取得原価をもって貸借対照表価額とする(金融商品基準案81-2)。 (6) 注記 金融商品の注記に関して、従来の注記に加えて、金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項として以下を注記する(重要性が乏しいものは注記を省略することができる)。なお、連結財務諸表において注記している場合には、個別財務諸表において記載することを要しない(金融商品基準案40-2、金融商品開示指針案5-2)。 (7) 適用時期等 ① 適用時期 2020年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、2021年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができる。 また、2020年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することも妨げない(時価基準案16、17)。 ② 経過措置 (連載了)

#No. 312(掲載号)
#西田 友洋
2019/03/28
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