検索結果

詳細検索絞り込み

ジャンル

公開日

  • #
  • #

筆者

並び順

検索範囲

検索結果の表示

検索結果 11104 件 / 5361 ~ 5370 件目を表示

M&Aに必要なデューデリジェンスの基本と実務-財務・税務編- 【第30回】「コスト構造の分析(その2)」-スタンドアローン・イシュー等-

M&Aに必要な デューデリジェンスの基本と実務 -財務・税務編- 【第30回】 「コスト構造の分析(その2)」 -スタンドアローン・イシュー等-   公認会計士 石田 晃一   ←(前回) | (次回)→   ▷ M&A対象企業のコスト構造分析の障害 前回はM&A対象企業のコスト構造の主な分析手法について述べたが、多くの中小企業ではこうした切り口での分析に必要なデータが抽出できない場合が多い。 例えば、売上高は主要得意先ごとに区分把握できたとしても、対応する仕入原価や外注費などは「仕入先」、「外注先」別には区分できても、「得意先ごと」の紐付けは「やってできないことはないが、これまでにやったことがない」というケースがほとんどであろう。 労務費などの共通固定費の配賦計算などが実施されたことは恐らく稀であろうし、そもそも「直接時間」や「面積比」等といった配賦計算に必要な係数の把握すらおぼつかないのが一般的ではないだろうか。 そんな状況下では、入手可能な情報からコスト構造の分析を行うことで、果たして有益な分析が行い得るのであろうか、という疑念を抱かざるを得ないケースもある。売上を得意先別に把握する一方で、全社合算での固変分解を行い、全社ベースでの損益分岐点を算出したからといって、果たしてそれが買収企業にとって有益な情報提供と言い得るのであろうか。 時間的な制約もある中で、意味あるコスト構造分析はどのようにすれば行い得るのか、筆者らの経験も踏まえて、以下で見ていきたい。   ▷限定的な情報(直接原価のみ)での把握分析 筆者らが過去に財務デューデリジェンスを依頼された案件は、まさに上記のごとく、複数得意先への売上のみが区分把握された状態である一方、それぞれの得意先の属する業種は自動車部品、家電、建材と経済状況が全く異なっていた。当時、国内自動車市場は陰りは見えたものの堅調であったが、家電業界はスマホ登場前でデジカメの出荷台数が減少に転じており、一方で建材業界は住宅着工件数の増加を背景に堅調さを維持していた。 M&A対象企業は金属製品のプレス加工と表面加工(メッキ処理)を行っており、こうした異なる業種に属する各得意先への納入製品はいずれもほぼ同一の生産工程で生産していた。どの製品も生産方法は大同小異であるにも関わらず、納入単価は取引によって様々であった。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 経理部門では売上原価を得意先(製品群)別に区分するための情報は有していなかったため、生産管理部門の保有するデータを確認したところ、製品群ごとに加工外注を行う必要のある工程は決まっていることに加え、使用している原材料の種類も得意先ごとに決まっており、購買部門で材料種類ごとの払出数量を把握していることがわかった。 これらから、主要製品に関して、使用原材料に基づく理論材料費と、一部工程の外注に係る理論外注費を直近実績に基づき算出、両者を合算した理論直接原価を算出し、理論限界利益率を導き出したところ、特定業種の得意先との取引に関する限界利益率が突出して低いことがわかった。また、メッキ工程の消耗材料使用高等を勘案すると、場合によっては逆ザヤになっている取引もある可能性も明らかとなった。 当該分析は理論値であり、時間的な制約等から一部の主要製品群についてのみ行ったため、極めて限定的な分析となったものの、ある程度の精度をもって、課題がどこにありそうかを炙り出すことはできたものと思う。   ▷「アームレングス・ルール」と「スタンドアローン・イシュー」 M&A対象企業のコスト構造を把握・分析した結果、コストドライバーや価値の源泉(収益力)がどこにあるかが把握できたとしても、当該状況はM&Aの実行後もそのまま継続するとは限らない。 例えばM&A対象企業が仕入先等との間で特殊な契約条件で原材料を調達しているような場合、当該契約がM&A実行後も継続して適用されるか否かは未知数と言えよう。条項にチェンジオブコントロール条項(【第2回】参照)等がうたわれている場合や、当該仕入先と自社の仕入先とが競合関係にあるような場合には、それまでの特殊条件での調達は継続できなくなる可能性が高い。 このように、M&A対象企業の採用している取引条件が「アームレングス・ルール(独立者間における一般取引条件)」に該当しない場合には、当該取引条件が継続しない場合に生じるであろう新たなコスト増減要因についても合わせて考察しておく必要がある。 このようにM&Aの実行後、買収対象企業がそれまで享受していた経済的な便益を喪失する事象は、一般に「スタンドアローン・イシュー」と呼ばれる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 例えば、それまで属していた企業グループから分離することでグループ企業に対する売上を喪失するケースや、グループ企業から安価に調達していた原材料の調達ができなくなるケースが代表的であるが、そのほかにも、主要な生産設備を親会社から賃借していたり、グループ本社から有償/無償で享受していた管理コスト負担に変更を余儀なくされるケースや、独立企業となることで新たに必要となる管理部門のコスト負担等の問題も「スタンドアローン・イシュー」として挙げられる。 具体的には、従前所属していた企業グループからの離脱に伴い、それまで利用していたネットワーク環境やソフトウェア環境が継続して利用できなくなるような場合には、買収者側でこれを補充するための新たな手当が必要となり、買収後、コスト構造に変化が生じることが想定されよう。   ▷地方中小企業のオーナー経営者に固有の問題 「アームレングス・ルール」は企業グループ間に特有の議論ではなく、中小企業のオーナー経営者、特に“地方の名士"と呼ばれるような経営者がオーナーであるような企業においては、当該経営者のネームバリューや地域との繋がり等、目に見えない形で「アームレングス・ルール」が歪んでいるようなケースも多い。 例えばよく見かけるのが、当該地域で形成されている「学閥」に起因するような取引関係が挙げられる。当該地域の経済・財界を「〇〇高校」、「△△大学」の卒業者が独占しているような地域では、こうした有形/無形の信頼関係から、例えば「ある時払いの催促なし」といった特殊な取引条件がまかり通っているようなケースもあろう。 さらには当該経営者が地域政界の雄であるような場合には、より一層、目に見えない「何か」が一般取引条件を歪めているようなケースもあるかもしれない。そうした目に見えない「何か」は、帳簿上には表れないことも多く、とにかく現地であらゆる情報を収集する以外にない、といったことがあり得ることも頭に入れておきたい。 (了)

#No. 328(掲載号)
#石田 晃一
2019/07/25

改正相続法に対応した実務と留意点 【第7回】「特別の寄与に関する留意点」

改正相続法に対応した実務と留意点 【第7回】 「特別の寄与に関する留意点」   弁護士 阪本 敬幸   今回は、特別の寄与に関する留意点について解説する。   1 特別寄与制度の概要 特別寄与制度は、被相続人に対し特別の寄与をした相続人以外の親族に、特別寄与料支払請求権を与える制度であり、今回の改正法で新設されたものである。従前から、相続人のためには寄与分制度(改正後民法904条の2、改正前民法と変更無し)が存在したが、相続人以外の者であっても、被相続人の財産維持・増加に寄与することはありえる。このような場合、「相続人ではない」という理由で寄与分を全く評価しないというのであれば、公平を害することになるため、特別寄与制度が設けられた。 まず、改正後民法1050条の条文を確認する。 上記改正後民法1050条1項に定められた特別寄与料請求権の発生要件を整理すると、以下のようになる。 【特別寄与料請求権の発生要件】   2 各発生要件に関する留意点 (1) 無償であること(要件①) 〔例〕 被相続人の長男の妻が、10年間にわたって、寝たきり状態であった被相続人の介護を行ってきた。介護は毎日5時間程度の時間を要した。被相続人は、長男の妻に対し、お礼として毎月3万円を渡していた。 無償性については、相続人の寄与分制度においても、解釈あるいは多くの裁判例で要求されていたところである。寄与分制度は、相続人間の公平を図る趣旨であるから、相応の対価を受領している場合には、原則として公平が害されているとはいえず、無償性が要求される。 特別寄与分制度も、相続人の寄与分制度同様、公平を図る趣旨であるため、無償性が要求されている。もっとも、私見であるが、ここでいう無償は「対価を1円ももらっていない」という意味ではなく、「相応の対価を受領していない」という意味ととらえるべきであろう。相応の対価を受領していない場合には公平は害されることになるし、労務の対価を受領していたとしても、相応の対価とはいえない場合には、労務に無償部分が存在すると言えるからである。 本件においては、毎日5時間程度の介護を10年間行っており、仮にこの労務を業者に依頼した場合に要する費用が、例えば1時間1,000円であるとした場合、1ヶ月あたり15万円(1,000円×5時間×30日)の費用が必要である。長男の妻は職業付添婦ではないことを考慮して何割か減額して考えたとしても、月額3万円では到底相応の対価を受領しているとはいえず、毎月10万円前後の無償の労務を行っていたと考えてよい。 そして、残る②~④の要件も満たす(③については、業者への依頼による支出を抑えることで、被相続人の財産維持に寄与している)と考えられるから、長男の妻は特別寄与料として、月額10万円前後の10年分の寄与分を請求できると考えるべきであろう(※)。 (※) 相続人が、被相続人を10年間無償で療養看護した事案で、職業付添婦に依頼した場合に要する費用から4割減額した額を寄与分として認めた審判例がある(盛岡家審S61.4.11)。 なお、上記は筆者の私見であり、条文上あえて「無償で」と書かれている(相続人の寄与分制度を定める改正後民法904条の2には「無償で」という文言はない)ことからすれば、厳密に「1円ももらっていない」場合のみ、特別寄与料を請求できると考えることも可能ではある。この点については、今後の解釈・裁判例が待たれる。 (2) 被相続人に対し療養看護その他の労務の提供をしたこと(要件②) 〔例〕 被相続人の長男の妻が、10年間にわたって、寝たきりであった被相続人の介護を業者に依頼し、業者に対して毎月10万円の支払を行ってきた。 相続人の寄与分制度を定める改正後民法904条の2では、「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるとき」として、寄与行為の態様として「財産上の給付」「その他の方法」という労務提供以外のものが挙げられている。そして「その他の方法」として、一般的に、財産管理や自己の扶養義務の範囲を超えた扶養などが認められている。 しかし、特別寄与制度においては、条文上、「療養看護その他の労務の提供をしたこと」として、労務の提供のみに限定されており、財産上の給付・財産管理・扶養義務の範囲を超えた扶養などがあったとしても、特別寄与請求権発生の要件を満たさないと考えられる。「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案の補足説明(85頁)」でも、あえて寄与行為の態様を「無償の労務の提供」に限定したことを前提にした説明がなされている。 ただし、条文上「療養看護その他の労務の提供」とされており、労務の態様としては療養看護に限定するものではなく、家業の手伝いなども考えられるところである。 本件では、長男の妻は労務の提供をしていない以上、特別寄与料を請求することはできない。 (3) 被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたこと(要件③) 〔例〕 被相続人の長男の妻が、30年以上にわたり、無償で、被相続人が経営する商店の事務作業を手伝った。 長男の妻は、無償で労務提供を行っており、本来事務員を雇用すれば支払うべき賃金の支払がなくなったことにより被相続人の財産維持・増加があったと考えられるから、上記の要件①~④はすべて満たされる。したがって、長男の妻は特別寄与料を請求できる。 もっとも、相続人から、長男の妻の勤務期間・勤務内容等を争われることは十分考えられる。このような場合、要件①~④の立証責任は長男の妻が負うことになり、証拠が重要となる。したがって特別寄与料請求を考えるときは、証拠の収集にも十分注意すべきである。 本件のような場合には、勤務期間や勤務内容を示す資料(確定申告書、業務日誌、メモ、写真等)、無償性が分かる資料(確定申告書、通帳、給与明細、家計簿等)を紛失しないよう、写しを取るなどして手元に保管しておくべきである。 (4) 被相続人の親族であること(要件④) 〔例〕 被相続人の長男の妻の姪が、30年以上にわたり、無償で、被相続人が経営する商店の事務作業を手伝った。 改正後民法725条(改正無し)は、①6親等内の血族、②配偶者、③3親等内の姻族、を親族として定める。 長男の妻の姪は、4親等の姻族に当たる(改正後民法726条・改正無し)から、親族には当たらず、特別寄与料を請求することはできない。 また、「被相続人の親族」とされている以上、内縁の妻や、養子縁組をしていない事実上の養子(配偶者の連れ子等)なども特別寄与料を請求することはできない。 (5) その他 条文に書いてある通りであるが、特別寄与料請求権は、特別寄与者が相続開始及び相続人を知った時から6ヶ月又は相続開始時から1年経過すると消滅する(改正後民法1050条2項)。「相続開始及び相続人を知った時から6ヶ月」については、ある程度前後することもあり得るが、「相続開始時から1年」は明確であり、被相続人死亡1年経過が近づいてきた場合には、直ちに請求する必要がある。 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない(改正後民法1050条4項)。したがって、長期間の特別寄与があったとしても、相続財産の額によっては、ほとんど寄与料をもらえないこともあり得る。 なお、特別寄与料の負担割合は、法定相続分又は指定相続分に従う(改正後民法1050条5項)。 また、特別寄与料の支払を受けた者には、相続税が課税され、特別寄与料の額が決まってから10ヶ月以内に相続税申告書を提出しなければならない(相続税法4条2項、29条1項)。   3 経過措置 改正後民法施行日より前に開始した相続に関しては、1050条の適用はない(改正法附則2条)。 そして1050条については、他に経過措置が定められてはいないため、2019年(令和元年)7月1日より前に相続があったか、7月1日以後に相続があったかにより、特別寄与料を請求できるか否かが変わることになる。 もっとも、7月1日より前に発生した相続の場合でも、相続人の家族の寄与行為を相続人の寄与分とする考え方(東京高決H元.12.28、東京家審H12.3.8等)や、寄与行為による相続財産の維持・増加という結果を契約上の権利・不当利得返還請求権と構成するといった方法により、特別寄与料相当額の支払を求めることは考えられる。   (了)

#No. 328(掲載号)
#阪本 敬幸
2019/07/25

今から学ぶ[改正民法(債権法)]Q&A 【第8回】「定型約款(その1)」

今から学ぶ [改正民法(債権法)]Q&A 【第8回】 「定型約款(その1)」   堂島法律事務所 弁護士 奥津  周 司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   【Q】 インターネット通販事業を行っている当社は、従来から顧客との契約に約款を利用してきました。購入希望者には、契約に際してウェブサイト上に約款を表示しています。 今回の改正では、約款についても規律が設けられるとのことですが、どのように変わるのでしょうか。 【A】 約款は幅広く社会の中で用いられているが、法律に特段の規律がなかった。今回の改正では、約款についての規律を新しく設けることとしたため、取引に約款を利用している企業は、規律の内容を把握し、見直しを行う必要がある。   1 約款とは 約款とは、同種類の取引を大量に処理するために用意された取引条項である。社会の中で広く活用され、例えば、鉄道の運送約款、保険約款、インターネットサイトの利用規約など様々なものがあり、不特定多数の顧客と取引を行う事業者にとって不可欠なものである。 これまでは約款についての民法上の規律がなかったため、法的に不安定な状態であったが、改正法では、約款のうち、特に定型性が高いものを「定型約款」と定義し、明文の規律を設けることとした。   2 定型約款の定義 改正法では、①ある特定の者(事業者)が不特定多数の者を相手方とする取引で、②内容の全部又は一部が画一的であることが当事者双方にとって合理的なものを「定型取引」と定義し、この「定型取引」において、 ③契約の内容とすることを目的として、その特定の者(約款準備者)により準備された条項の総体を「定型約款」と定義している(改正民法548条の2本文)。 事業者としては、まず自社の使用している約款がこの定義にあてはまるかを検討しなければならない。定義に該当すれば、改正法の規律に従う必要がある。なお、一般的に、鉄道の運送約款やインターネットサイトの利用規約等は定型約款の定義に該当することが多いとされる。一方で、相手方の個性に着目したような労働契約や、契約書のひな型のようなものは定型約款の定義には該当しないとされる。   3 定型約款が契約の内容となるための要件(組入要件) 契約は、その当事者が内容を理解して合意しない限り成立しないのが原則である。しかし、約款を利用した取引では、約款の内容を読んで取引をするケースは少なく、当事者が約款の内容を理解していないことの方が多いと考えられる。そこで改正法では、いかなる場合に、定型約款が契約の内容となるのかについて規律を設けた。定型約款を契約の内容とするための要件を、「組入要件」という。 具体的には、①定型約款を契約の内容とする旨の合意があった場合、又は②取引に際して定型約款を契約の内容とする旨をあらかじめ相手方に表示していた場合には、定型約款が契約の内容になるとされている(改正法548条の2第1項)。 ①のケースとして、当事者間で契約書を締結する場合に、「本契約には当社の『〇〇約款』によるものとする。」というように合意をした場合が典型である。②のケースとしては、インターネット通販取引の場合において、サイト上に定型約款を契約の内容とする旨を表示している場合などがある。「定型約款を契約の内容とする旨」を表示すればよく、定型約款の内容まで表示していることまでは求められない。 もっとも、定型取引を行う前に、相手方から定型約款の内容を示すように請求があった場合には、事業者としては正当な理由なくこれを拒むと定型約款の内容は契約内容とはならないため、開示ができる体制を整えておく必要があるといえる(改正法548条の3)。 事業者としては、自社の定型約款の取扱いが、組入要件を満たしているか確認する必要がある。組入要件を満たさなければ、定型約款を作成していても契約の内容とすることができないため、意味をなさない。   4 不当な条項の取扱い 改正法では、定型約款の組入要件が明確化されたが、契約当事者が定型約款の内容を理解して契約締結することは少ないということには変わりがない。どのような内容の条項であっても、組入要件を満たしさえすれば契約の内容になるとすれば、契約の相手方にとって著しく不利益なものであっても、そのことを理解せずにその契約に拘束されることになる。 そこで改正法では、定型約款の条項の中で、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして信義則(民法1条2項)に反して相手方の利益を一方的に害するものについては、合意したとはみなさないこととした(改正法548条の2第2項)。 事業者としては、自社の使用する定型約款の内容について一方的に相手方に不利益な条項がないか、今一度確認をする必要がある。なお、この規定は、事業者と消費者の契約に限らず、事業者間の取引にも適用される。 (了)

#No. 328(掲載号)
#奥津 周、北詰 健太郎
2019/07/25

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例37】株式会社スシローグローバルホールディングス「株式会社スシローグローバルホールディングス、株式会社神明ホールディングス及び元気寿司株式会社の資本業務提携解消に関するお知らせ」(2019.6.18)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例37】 株式会社スシローグローバルホールディングス 「株式会社スシローグローバルホールディングス、 株式会社神明ホールディングス及び元気寿司株式会社の 資本業務提携解消に関するお知らせ」 (2019.6.18)   事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、株式会社スシローグローバルホールディングス(以下「スシロー」という)が2019年6月18日に開示した「株式会社スシローグローバルホールディングス、株式会社神明ホールディングス及び元気寿司株式会社の資本業務提携解消に関するお知らせ」である。 2017年9月29日に「株式会社スシローグローバルホールディングス、株式会社神明及び元気寿司株式会社の資本業務提携に関するお知らせ」を開示して以来、検討してきた元気寿司株式会社(以下「元気寿司」という)との経営統合を行わないことにしたという内容である。 「1.経営統合に向けた協議の中止及び本資本業務提携解消の理由」には、次のような記載がある。 なお、元気寿司の方も、同時にほぼ同内容の「元気寿司株式会社、株式会社神明ホールディングス及び株式会社スシローグローバルホールディングスの資本業務提携解消に関するお知らせ」を開示している。   2 スシローが拒否? もともとスシローと元気寿司の経営統合は、タイトルの中に登場するもう1人の当事者である株式会社神明ホールディングス(以下「神明」という)が間に入る形で検討されるようになったものなのだが、スシローは神明の関連会社、元気寿司は神明の子会社である。そして、規模は、元気寿司よりもスシローの方がはるかに大きい。 つまり、今回の経緯は、神明が元気寿司をスシローに買わせようとしたが(方式は、株式譲渡、合併、株式交換など様々考えられるが)、スシローが拒否したという構図で捉えることができるだろう(いろいろなやり取りがあったとしても、基本的な構図はそうであるはず)。   3 魅力的な投資対象では? なぜスシローは元気寿司を取得しなかったのだろうか。元気寿司は、同業でかつ業績が良く、魅力的な投資対象のはずである。「ブランド戦略の違い」や「店舗展開方式の違い」が問題になるのだろうか。それぞれのブランドや方式を併存させながらであっても、協力してシナジー効果を生み出せるのではないだろうか。 「独立した企業としてそれぞれの戦略を独自に且つ柔軟に推し進めていくこと」よりも、「それぞれの戦略を協力して柔軟に推し進めていくこと」の方が、「両社の企業価値を高めるために最適である」はずである。なぜそうした結論に至らなかったのだろうか。   4 勘定より感情? スシローの経営陣は、神明の自社への影響力が増すことを恐れたのだろうか。元気寿司を吸収合併したり、株式交換により完全子会社化する場合、その親会社である神明に自社の株式を交付するため、神明の議決権比率が増すことになる。それを避けたかったのかもしれない。 あるいは、「合わない」、「一緒にやるのは面倒そう」といった、純粋に感情的な理由によるものだったのだろうか。人間同士のことなので、そうしたことは確かに重要ではある。しかし、仮にそうであったとしても、自社の企業価値を高める責任を負った上場会社の経営者として、あくまで合理的な判断を優先させるべきだろう。 最初に行われた2017年9月29日の開示の「1.業務提携の理由」には、次のような記載があった。 スシローも、現在のところは業績が良いが、この先どうなるかは分からない。元気寿司と経営統合しないという今回の判断が、果たして吉と出るか、凶と出るか。 (了)

#No. 328(掲載号)
#鈴木 広樹
2019/07/25

《速報解説》 会計士協会、これまでの施策を総括した「監査強化の取組について」報告書を公表~監査の透明性・実効性向上等に関する施策を取りまとめ~

《速報解説》 会計士協会、これまでの施策を総括した「監査強化の取組について」報告書を公表 ~監査の透明性・実効性向上等に関する施策を取りまとめ~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2019年7月16日付(ホームページ掲載日は2019年7月22日)で、日本公認会計士協会は、「日本公認会計士協会の監査強化の取組について」を公表した。 これは、日本公認会計士協会の現執行部の任期を1つの区切りとして、これまでの施策を総括し、今後の展望を整理したものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 報告書では、次の4つについて記載している。 ① 監査の透明性向上 ② 監査の実効性向上 ③ 自主規制機能の向上 ④ 社会との対話の促進 1 監査の透明性向上 次の事項について取り組んだとのことである。 2 監査の実効性向上 次の事項について取り組んだとのことである。 3 自主規制機能の向上 次の事項について取り組んだとのことである。 4 社会との対話の促進 記者会見を定期的に開催するなどを行ったとのことである。 今後も、社会に対し日本公認会計士協会の活動や業界の考え方等を様々な方法で積極的に情報発信し、公認会計士が、会計・監査の専門家として国民経済の健全な発展に寄与していることを社会に対し説明していくことが重要であるとのことである。 (了)

#No. 327(掲載号)
#阿部 光成
2019/07/23

《速報解説》 「監査報告書に係るQ&A」が正式に公表される~監査上の主要な検討事項(KAM)等に関し27問のQ&Aで解説~

《速報解説》 「監査報告書に係るQ&A」が正式に公表される ~監査上の主要な検討事項(KAM)等に関し27問のQ&Aで解説~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2019年7月18日付(ホームページ掲載日は2019年7月22日)で、日本公認会計士協会は、「監査報告書に係るQ&A」(監査基準委員会研究報告第6号)を公表した。これにより、2019年6月14日から意見募集していた公開草案が確定することになる。 これは、「監査基準の改訂に関する意見書」(2018年7月5日、企業会計審議会)において、監査人の監査報告書に「監査上の主要な検討事項」(国際監査基準のKey Audit Matters(KAM)に相当する)を記載するという新しい実務が行われることに対応するためのものであり、監査報告書全般に関するQ&Aも記載されている。 公開草案に対するコメントの概要及び対応も公表されているので、研究報告の理解に資するものと考えられる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 研究報告の主な項目は次のとおりである。 研究報告は、目次を含めて60ページに及ぶものなので、以下では主な内容について解説する。 【監査報告書全般】 【監査上の主要な検討事項関係】 1 背景 監査報告書の記載内容の見直しに関する背景として、次のことが述べられている。 2 監査上の主要な検討事項の個数及び記載量(Q2-7) 監査上の主要な検討事項は、監査役等にコミュニケーションを行った項目の中の相対的な重要性によって決定されることになるため、個数についての目安は設けられていない。 その記載に当たっては、記載量に関する制限はないものの、想定される財務諸表の利用者が理解できるように、詳細さと簡潔さのバランスを保つことが重要となるとのことである。 重要であると判断した事項の決定は、その数も含め、職業的専門家の判断によるものであり、特に重要であると判断した事項は、個々の監査業務における相対的な重要性を考慮して決定され、同業他社等との比較において重要であるかどうか考慮する必要はないとのことである(Q2-2の解説の(2))。 3 監査上の主要な検討事項と内部統制の重要な不備(Q2-4) 監査上の主要な検討事項は、内部統制の重要な不備を報告することを目的とするものではない。 監査上の主要な検討事項は、監査人が当年度の財務諸表の監査において特に重要であると判断した事項であり、監査の過程で監査役等と協議した事項の中から選定されるものであり、内部統制の重要な不備は、監査役等にコミュニケーションを行うことが求められていることから、監査上の主要な検討事項を選定する際の母集団に含まれることになる。 ただし、監査上の主要な検討事項は、内部統制の重要な不備を報告することを目的とするものではないので、内部統制の重要な不備の存在そのものが監査上の主要な検討事項となるわけではない。 監査上の主要な検討事項として選定した理由又は監査上の対応の記述において、内部統制に関する記述が含まれることはある。 4 監査上の主要な検討事項と未修正の虚偽表示(Q2-5) 未修正の虚偽表示は、監査上の主要な検討事項となることも、ならないこともある。 監査上の主要な検討事項は、監査役等とコミュニケーションを行った事項から決定するものであるので、未修正の虚偽表示は監査上の主要な検討事項を検討する母集団に含まれる。 未修正の虚偽表示が監査上の主要な検討事項に該当するかどうかの検討に際しては、監査人は、監査の過程で虚偽表示が識別され、修正されたかどうかの事実に着目するのではなく、虚偽表示の内容や発生状況が当期の監査において特に注意を払った事項に該当するかどうかを検討し、他に識別している事項との相対的重要性に基づき監査上の主要な検討事項の決定を行うことになる。 したがって、監査の過程で識別された未修正の虚偽表示が監査上の主要な検討事項に関連することもあるが、すべての未修正の虚偽表示が、必ず監査上の主要な検討事項になるというものではない。 監査の過程で識別された重要な虚偽表示について、会社(経営者及び必要に応じて監査役等)と監査人との間で協議を行い、期末の財務諸表に適切に修正が反映される場合がある。そのような事項でも、当期の監査において監査人が特に注意を払った事項に該当し、最終的に監査上の主要な検討事項となることもある。 したがって 、修正されたかどうか自体が監査上の主要な検討事項の決定要因というわけでもない。 5 会社に対する財務諸表における注記の拡充の要請(Q2-14) 企業に関する情報を開示する責任は経営者にあるため、監査人による監査上の主要な検討事項の記載は、経営者による開示を代替するものではない。 経営者は、適用される財務報告の枠組みにより求められる財務諸表の表示及び注記事項、又は適正表示を達成するために必要な財務諸表の追加的な注記事項を開示する責任を有している。 経営者が財務諸表に追加情報の注記は必要ないと判断した場合、監査人は財務報告の枠組みに照らして、追加情報の注記がなくとも財務諸表が適正表示を達成しているかどうかを判断しなければならないが、適正表示を達成していると判断したときは、経営者に対して、監査上の主要な検討事項を監査報告書に記載することを理由として注記の拡充を強要することはできない。 6 監査スケジュールや監査役等とのコミュニケーションにおける留意点(Q2-18) 監査上の主要な検討事項は監査報告書の記載事項であるが、監査の最終段階を待って、監査の過程で監査役等とコミュニケーションを行った事項の中から監査上の主要な検討事項の決定に着手することが想定されているわけではない。 監査の早い段階で、監査上の主要な検討事項の候補の提示及び協議、草案の検討等を行うおおよその時期について、経営者及び監査役等と協議しておくことが重要となる。 7 株主総会における対応(Q2-19) 株主総会において、株主から、監査上の主要な検討事項に関する質問が出ることが想定される場合、想定される質問の内容について事前に会社との間で、監査人が回答すべき事項と会社側が回答すべき事項の区分について十分に協議しておくことが適切であるとのことである。 会社法の規定に従って株主総会において監査人の出席の決議があった場合は、監査人は株主総会に出席し、株主からの質問の趣旨を踏まえて議長から指名を受けて監査人は回答することとなる。 8 監査上の主要な検討事項の監査人の法的責任に及ぼす影響(Q2-20) 監査人が、監査契約に基づいて、一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査上の主要な検討事項を選定し監査報告書に記載している限り、監査上の主要な検討事項の記載が、会社又は第三者に対する監査人の法的責任(損害賠償責任)の帰結に大きな変更をもたらすものではないと考えられる。 監査人は監査基準に準拠して正当な注意義務を払って監査を実施していた場合には責任を負わないという点は、監査上の主要な検討事項が適用される以前からも同じであり、この意味で、監査上の主要な検討事項は、監査人の法的責任(損害賠償責任)の帰結に大きな違いをもたらすものではないと考えられる。 監査人の法的責任は、最終的には個々の事案ごとに裁判所が判断することになる(法規委員会研究報告第1号「公認会計士等の法的責任について」(最終改正2016年7月25日)も参照)。 (了)

#No. 327(掲載号)
#阿部 光成
2019/07/23

《速報解説》 国税庁、働き方改革の推進に資する減価償却資産の中小企業経営強化税制の適用に関する質疑応答事例を公表~大綱では「特定経営力向上設備等の範囲の明確化」と記載~

《速報解説》 国税庁、働き方改革の推進に資する減価償却資産の中小企業経営強化税制の適用に関する質疑応答事例を公表 ~大綱では「特定経営力向上設備等の範囲の明確化」と記載~   Profession Journal編集部   今年度の税制改正で適用期限が2021年3月31日まで延長された「中小企業経営強化税制」(措法42の12の4)は、税制改正大綱において「特定経営力向上設備等の範囲の明確化及び適正化を行う」旨が明記されていた。 このうち「適正化」については既報のとおり、発電した電気の一部を販売することを目的とした発電設備の導入について一定の制約を設ける中小企業等経営強化法の改正省令及び関連告示がパブコメを経て3月29日に公布、4月1日から施行されている。 さらに「明確化」については、経済産業省資料において、「働き方改革に資する設備(休憩室に設置される冷暖房設備や作業場に設置されるテレワーク用PC等)も本税制措置の適用対象であることをQ&A集等を通じて明確化。」と記載されていたところ、国税庁は7月11日付で、関連する下記の質疑応答事例を公表した。 (※1) 中小企業庁の「中小企業経営強化税制、固定資産税特例に関するQ&A集」は7月16日付で更新され、固定資産税特例の適用終了や上記売電に係る記載の見直しが行われている。 公表された事例では、中小企業者等が、中小企業等経営強化法上の認定を受けた経営力向上計画に基づいて「働き方改革の推進に資する減価償却資産」を取得し指定事業の用に供した場合に、これらの減価償却資産が租税特別措置法第42条の12の4に定める生産等設備を構成する減価償却資産に該当するか(※2)という照会に対し、これらの減価償却資産は、生産等設備を構成する減価償却資産に該当する旨の回答を行っている。 (※2) 中小企業経営強化税制の適用要件である一定の金額要件及び販売時期要件を満たしていることを前提。 この事例における「働き方改革の推進に資する減価償却資産」の例として、次のようなものが挙げられている。 なお「生産等設備」については、下記の租税特別措置法関係通達42の12の4-2にある通り「生産等活動の用に直接供される減価償却資産で構成されているもの」である必要があり、上記の「減価償却資産の例」でも1・2共に「生産等活動の用に直接供される」という条件が付されている。 このため本事例でも「同一敷地内にある食堂棟、検診施設など工場、店舗、作業場等の建物とは独立した福利厚生施設(建物)の中に設置される建物附属設備や器具及び備品等については、その福利厚生施設(建物)は一般に生産等設備には該当しませんので、その中に設置される器具及び備品等自体が生産等設備に該当する場合を除き、生産等設備を構成する減価償却資産には該当しないと考えられます。」との注意事項がある。 また中小企業経営強化税制の適用に当たっては、生産等設備を構成するものであることの他にも、対象設備ごとの金額要件(例:建物附属設備の場合・・・60万円以上)や一定以上の生産性(A型)又は投資利益率(B型)が求められることから、上記の「働き方改革の推進に資する減価償却資産」の例に該当するものがすべて適用対象となるわけではない点にも留意したい。 なお、中小企業等経営強化法の施行(2016.7.1)から3年が経過したことを受け、経営力向上計画の認定を受けた中小企業者等のうち計画の実施期間が満了する中小企業者等が実施期間の延長や再度新規申請を行う場合の取扱いについて、中小企業庁は下記の通り注意喚起を行っている。 (了)

#No. 327(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2019/07/22

プロフェッションジャーナル No.327が公開されました!~今週のお薦め記事~

2019年7月18日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.327を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2019/07/18

日本の企業税制 【第69回】「政府税調専門家会合で検討進む「連結納税制度の見直し案」」-第4回会合資料(2019.6.26)から-

日本の企業税制 【第69回】 「政府税調専門家会合で検討進む「連結納税制度の見直し案」」 -第4回会合資料(2019.6.26)から-   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴   6月26日、政府税制調査会の連結納税制度に関する専門家会合の第4回会合が開かれた。今回の課題は主に、税額控除や損金計算における連結調整計算の見直しと新制度への移行措置であった。   〇連結調整計算の見直し 今回の連結納税制度の見直しに向けた大きな柱として、個別の連結法人ごとに申告納税義務の主体となるという点がある。このことから、現行の連結納税制度の下で、連結グループ全体を一のものとして計算をする(連結調整計算)いくつかの制度について、単体ベースの計算にすべきかどうかが検討の対象とされた。 財務省が提出した資料によると、それぞれの連結調整計算を維持するのか単体計算に戻すのかという選択のほかに、第三の道として、現行の連結調整計算を100%グループ税制として単体納税にも取り入れるという方向も提示されている。 この「第三の道」をとる場合、今回の見直しは、単体納税の法人においても他人事ではなくなるので注意が必要である。 (1) 受取配当等の益金不算入制度 現行の連結納税制度では、連結グループ内の各連結法人が受け取った配当等を「完全子法人株式等(100%)」「関連法人株式等(3分の1超)」「非支配目的株式等(5%以下)」「それ以外の株式等(5%超3分の1以下)」に区分し、それぞれについて連結納税制度における益金不算入額を計算することとされている。 これらの株式等に係るそれぞれの益金不算入額の計算方法は単体納税と同じであるが、次の3点については、連結グループを1つの納税単位として計算を行うため、連結調整計算を行っている。 今回の財務省が提出した資料では、1つの方向として、①については、単体納税制度で適用される100%グループ税制においても連結調整計算と同様に、連結ベースで計算を行うことが示されている。一方、②については、単体ベースで判定することが提案されている。また、③については、簡素化の観点から概算計算の導入が示され、これについては単体納税においても同様に採用することが提案されている。 (2) 貸倒引当金 連結納税制度においては、個別評価金銭債権、一括評価金銭債権の計算上、連結グループ内法人に対して有する金銭債権は除外されている。 今回の財務省が提出した資料では、1つの方向として、単体納税制度で適用される100%グループ税制においても連結調整計算と同様に、100%グループ内法人に対して有する金銭債権を除外することが提案されている。 (3) 寄附金 連結納税制度における寄附金の取扱いのうち、寄附金の範囲及び基本的な仕組みは単体納税制度と同様である。ただし、100%グループ外の法人に対して支出される寄附金の損金算入限度額は、連結法人ごとではなく、連結グループ全体を1つとして計算される。つまり、連結親法人の資本金等の額と連結事業年度の連結所得金額を基礎として計算することとされている。 今回の財務省が提出した資料では、1つの方向として、単体ベースで計算することが示される一方、純粋持株会社のような場合、寄附金の支出が連結親法人に集中している実態をどう見るかという議論もある。 (4) 研究開発税制 租税特別措置法に定める特別償却制度は、連結法人ごとに個別に適用判定を行い、個別に計算をしていることから、単体納税と変わりがない。一方、税額控除制度については、控除可能額(法人税額基準額)について、連結グループ全体の連結税額(調整前連結税額)や連結所得を考慮して計算する必要がある。 今回の財務省が提出した資料では、1つの方向として、単体ベースで計算することが示される一方、グループ経営の中で、特定の連結法人に研究開発機能を集中させているような実態をどう見るかという議論もある。 (5) 外国税額控除 連結納税制度における外国税額控除の適用に当たっては、次の3点において単体納税制度とは異なる調整計算が必要である。 このうち②については、単体ベースで株式保有割合を判定する方向が示されており、連結調整計算はなくなるものとみられる。   〇新制度への移行措置 今回の資料では、新制度への移行期間として、改正法施行後1年ないし2年を提示している。すでに連結納税制度を適用している連結グループは、この移行期間終了時において、新たな連結納税制度を適用するか、連結納税制度の適用を終了するかの選択を迫られることとなる。 新制度に移行する場合には、そのためのシステム改修等の準備に時間を要することから、果たして1~2年で十分な期間といえるのかどうか吟味する必要がある。また、現行制度では個別帰属税額の実際のやり取りは不要であるが、新制度では、各連結法人が損益通算後のそれぞれの所得をベースに申告納税義務を負うことが検討されていることから、新制度移行にあたり従前精算されてこなかった個別帰属税額の処理をどのようにするかが課題となろう。一方、新制度開始に伴い連結納税制度の適用をやめる場合には、投資簿価修正等の現行の連結納税制度適用終了の規定が適用されることになるのか検討する必要がある。 この移行期間中は、現行の連結納税制度のみが適用され、新制度は移行期間終了後に適用が開始する。したがって、現行制度と新制度とが併存することはない。 また、この移行期間中に、現行制度のもとで連結納税制度の適用を開始することも可能とされている。一方、新制度の開始とタイミングを合わせて連結納税制度の適用を開始する企業については、移行期間中に、新制度に基づく連結納税開始の申請を受け付けることとされている。 【参考】 (※) 「財務省説明資料(連結納税制度)」P21より (了)

#No. 327(掲載号)
#小畑 良晴
2019/07/18

定期保険及び第三分野保険に係る改正法人税基本通達の取扱いとその影響 【第3回】「改正前後の対策効果の検証」

定期保険及び第三分野保険に係る 改正法人税基本通達の取扱いとその影響 【第3回】 (最終回) 「改正前後の対策効果の検証」   税理士 三輪 厚二   今回は、通達改正前後における保険加入対策の効果を見てみることとする。 前回解説の通り、最高解約返戻率が85%を超えると資産計上割合が高くなってしまい対策効果がほとんどなくなってしまうので、以下では、最高解約返戻率が85%のケ-スを前提に検証を行う。 前提条件は、次のとおりとする。 ▷パターンA ※出口対策ありの場合で、当期利益が5,000万円、2期目以降利益が毎期1,200万円見込まれ、5期目に役員退職金を5,100万円支給する。 ① 保険加入なし 保険未加入の場合は、5年間の法人税等の税額が総額で2,838万円、手残り額が1,862万円となる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ② 改正前の対策効果 改正前の通達において保険に加入した場合は、5年間の税額が総額で1,254万円、手残り額が2,546万円となり、節税額が1,584万円(2,838万円-1,254万円)、手残り額が+684万円(2,546万円-1,862万円)となる。これが、最も対策効果のある典型的なケ-スである。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ③ 改正後の対策効果(その1) 通達改正後に同じ保険に加入した場合は、税額が総額で2,204.4万円、手残り額が1,595.6万円となり、節税額が633.6万円(2,838万円-2,204.4万円)、手残り額が▲266.4万円(1,595.6万円-1,862万円)となる。改正前と比べると節税額も小さく、2期目以後の資金が持ち出しとなって、最終の手残り額もマイナスになってしまう。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ④ 改正後の対策効果(その2:保険料を3,000万円にして節税額を同額にした場合) ③と同様、通達改正後に同じ保険に加入した場合で、保険料を1,200万円ではなく3,000万円に増やし節税額を同額になるようにした場合は、税額が総額で1,254万円、手残り額が1,196万円となり、節税額は同額でも手残り額がかなり目減り▲666万円(1,196万円-1,862万円)してしまうことになる。また、2期目以後の資金の持ち出しが大きく、資金繰りを考えるとなかなか対策として活用するのは厳しいと言わざるを得ない。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   ▷パターンB ※出口対策(5年後の役員退職金支給)なしで、当期利益が5,000万円、2期目以降利益が毎期1,200万円見込まれる。 ⑤ 保険加入なし 保険未加入の場合は、税金の総額が3,234万円、手残り額が6,566万円となる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ⑥ 改正前の対策効果 改正前の通達において保険に加入した場合は、5年間の税金が総額で2,937万円、手残り額が5,963万円となり、節税額が297万円(3,234万円-2,937万円)、手残り額が▲603万円(5,963万円-6,566万円)となる。 対策年度の節税額は大きいが、出口での課税があるので、結果として保険料の総額(6,000万円)と解約返戻金(5,100万円)の差額(900万円)に対する税額(297万円)分だけが少なくなった(900万円×33%)ということに過ぎず、言い換えるなら、900万円の掛け捨ての保険に加入したのと同じことになる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ⑦ 改正後の対策効果 通達改正後に同じ保険に加入した場合は、税金が総額で2,937万円、手残り額が5,963万円となり、節税額が297万円(3,234万円-2,937万円)、手残り額が▲603万円(5,963万円-6,566万円)となる。 結果は改正前も改正後も同じだが、内容を見ると、(ⅰ)改正前は対策年度の節税額が大きい、(ⅱ)改正後は資金の持ち出しがある等の差があり、対策的には使いづらいものとなったといえよう。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   ▷総括 上記の検証を踏まえ、通達の改正前と改正後の対策効果をまとめると、次のようになる。 ◆節税効率がかなり悪くなった。 ◆最高解約返戻率になるまでの期間、資金の持ち出しがある。 ◆出口対策のない場合は、節税の観点からすると、保険料の総額と解約返戻金との差額の掛け捨ての保険に加入したのと同じ結果になる。資金効率や保障から考えると単純にこの掛け捨ての保険に加入した方がよい(ニ-ズがあればの話だが)かもしれない。 ◆出口対策がある場合は、改正前に比べると節税効果は小さくなったものの、税金の先送りということからすると若干のメリットはある。ただし、資金の持ち出しがある。 (連載了)

#No. 327(掲載号)
#三輪 厚二
2019/07/18
#