《速報解説》 会計士協会、国内外企業の特徴的な事例をまとめた 「統合報告の事例研究」を公表 ~各社取組み状況に関するヒアリング結果も~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2019年7月12日、日本公認会計士協会は、「統合報告の事例研究」(経営研究調査会研究報告第68号)を公表した。 これは、統合報告に関する日本及び海外企業の特徴的な事例をまとめたものである。統合報告書の発行企業数は、2015年の138社から、2018年には414社まで増加しているとのことである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 研究報告は、目次を含めて93ページに及ぶものである。 研究報告の取りまとめの目的は、統合報告書に関する特徴的な事例を紹介することであり、統合報告に関するベストプラクティス選定やベンチマーク調査を目的とするものではない(4ページ)。 1 各社の開示の特徴 研究報告では、国内及び海外の会社として14社の事例が紹介されている。 例えば、次のように各社の開示の特徴が述べられている(ここでは紹介事例のうち5社を記載する)。 2 ヒアリング結果 研究報告では、国内調査対象企業へのヒアリングも実施しており、その概要が記載されている。 例えば、統合報告書作成の主管部署は、9社中7社がIRを担当する部署が中心となっており、また、他の2社はIRに加えて経営企画・経営戦略を担当する部署が参画するプロジェクトチームを組成して、統合報告書を作成していたなど、ヒアリング結果が記載されている。 そのほか、課題として挙げられた事項、必要な環境整備として指摘された事項も記載されているので、今後の統合報告の作成に際して参考になると思われる。 (了)
《速報解説》 会計士協会から研究報告 「近年の不正調査に関する課題と提言」が公表される ~「問題がある不正調査」の課題明確化のため想定事例を示して解説~ 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 日本公認会計士協会(経営研究調査会)は、2019年7月2日、研究報告第65号「近年の不正調査に関する課題と提言」を公表した。 前掲文では、本研究報告の作成目的について、2013年に公表した「不正調査ガイドライン」が、不正調査人に十分尊重されていない事例もあることから、アンケート調査結果や公表物等を参考にしつつ、「問題がある不正調査」に関する課題がわかるように事例を創作し、提言として解説したものであると説明されている。 【目次】 本稿では、公表された研究報告第65号「近年の不正調査に関する課題と提言(以下「報告書」と略称する)」のうち、まず「総論」についてその概要をまとめたうえで、「本論」部分である、問題のある不正調査として列挙された事例に関する課題と提言及び、日本公認会計士協会(経営研究調査会)の報告について検討したい。 Ⅰ 総論 1 「不正調査ガイドライン」とは 総論では、まず「不正調査ガイドライン」の意義について、不正が発生又は発覚した企業等から、公認会計士に不正調査業務の依頼があった場合、当該業務を受嘱するかの判断、当該業務の体制と計画・管理、情報の収集と分析、仮説の構築と検証、不正の発生要因と是正措置案の提言、調査報告、企業等が行うステークホルダー対応への支援及び不正調査業務の終了といった一連の業務に関する概念や留意事項等について体系的に取りまとめたものであり、不正調査を実施する者(不正調査人)が不正調査業務を実施する際に、十分に尊重し参考にすることが期待されているものであり、また、公認会計士以外の専門家や企業等自ら、更にはステークホルダー等が実施する不正調査業務においても有用なものとして利用することが期待されていると説明している。 2 不正調査における公認会計士の役割 総論では、公認会計士が、不正調査業務を実施するに当たって、倫理面で特に注意が必要な点として、以下の5項目を挙げている。 3 「不正調査ガイドライン」における不正及び不正調査の概念 不正調査ガイドラインに記載されている「不正」概念は、「法律、規則及び基準(会計基準を含む。以下同じ)並びに社会倫理からの逸脱行為」であり、違法行為を含む不正や不祥事も該当する。 また、不正調査ガイドラインは、不正調査を、「企業等自ら又は不正調査の依頼者からの依頼に基づき、不正調査を実施する者が法律、規則及び基準並びに社会倫理からの逸脱行為に関して、その内容、関与者の特定、手口、影響額、発生要因等を調査し、ステークホルダーへの対応を検討し、是正措置案の検討をするとともに、必要に応じてその後の是正措置の実施状況を監督する一部又は一連の手続」と定義している。 Ⅱ 近年の不正調査に関する課題と提言 報告書では、問題とした事例を、「倫理面及び調査体制・計画管理」「調査手続及び調査結果の検討」及び「要因分析及び是正措置等」に分類して、それぞれの事例における課題と提言をまとめている。 以下、報告書の区分にしたがって、内容を検討したい。 1 倫理面及び調査体制・計画管理 本項で、報告書は、「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」や公認会計士協会の「倫理規則」を引用しながら、以下の事例における課題と提言をまとめている。 提言の1つとして、不正調査の依頼企業は、不正調査の委嘱に当たって、不正調査人から、不正調査人の資質や独立性・中立性等を確認するための宣誓書を入手し、これを調査報告書に添付することが挙げられている。 また、事例1-8では、グループ会社の不正調査に当たっては、1つの子会社の粉飾決算の原因(動機、機会、正当化)を分析したうえで、他のグループ会社においても同様の粉飾決算が発生していないかを分析し、必要に応じて調査対象の範囲を拡大すべきであることが提言されている。 2 調査手続及び調査結果の検討 本項では、共通事例として、社内と調査委員と不正調査人を補助者として構成された内部調査委員会が、不正調査を実施したものの不正を特定できなかったが、その後も詳細な通報が相次いだため、別の不正調査人に委嘱して調査を行ったところ、経営陣やグループ会社が関与する大規模な不正が発見されたという想定事例のもと、次のような事例を「問題がある不正調査」として列挙している。 本項でも、グループ会社で類似の不正がないかどうかを検証する調査に触れられており、事例2-4では、その手段の1つとして、「アンケート調査」が挙げられている。 報告書では、アンケート調査の有効性を認めつつも、「双方向のコミュニケーションではなく一方的な申告であるため、回答結果の判断は回答者の誠実性に依存する点に留意する必要がある」ことと、アンケート内容のフォローアップが重要であることを説明したうえで、グループ会社の内部統制の状況、不正の手口の態様や発生可能性を検討して、場合によっては、インタビュー、書類の査閲・分析等の調査も追加すべきであるとまとめている。 3 要因分析及び是正措置等 本項では、不正調査ガイドラインにおける「不正調査人は、不正が発生又は発覚した要因に基づき是正措置案を検討する必要があり、それを前提として適切な要因分析が求められる。」との記載について、次のような「問題がある不正調査」の事例を挙げている。 最近では、開示された調査報告書で、取締役・監査役以外の従業員の氏名が特定されているものは見られなくなったが、過去には、匿名化が洩れていた報告書も一部、存在していた。 そこで、事例3-4においては、不正実行者の匿名性について、「不正調査の目的が、個人の法的責任の追及」ではなく、「不正の事実関係を把握し発生要因を分析した上で是正措置案を提言することにある」ことから、「公表される不正調査報告書においては、一般に他の開示書類などで公知の経営者らを除き、個人が不測の損害を被ることを避けるため、特定の従業員等の氏名を匿名化するなどの配慮をすることが必要である」として、報告書を結んでいる。 (了)
2019年7月11日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.326を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第78回】 「日本標準産業分類から読み解く租税法解釈(その3)」 中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦 Ⅴ 代表的な租税訴訟事例 1 来料加工事例と日本標準産業分類 日本標準産業分類について言及された代表的な租税訴訟事例として、外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)の適用を巡る事例である大阪地裁平成23年12月1日判決(税資261号順号11824)を確認しよう。 大阪地裁は、租税特別措置法66条の6第4項(事件当時)が種類に応じて異なる適用除外要件(同制度の適用除外要件)を定めている特定外国子会社等の「主たる事業」は、社会通念上の意義を基礎として、適用除外要件の趣旨・目的を踏まえて解釈するのが相当であるとする。 その前提に立って、一般の社会通念を反映した日本標準産業分類によれば、製造業と卸売業とは、販売する製品を自ら製造しているかどうかで区別されており、適用除外要件の立法趣旨を踏まえても、自ら製品を製造する場合には地場経済との密着性を重視する所在地国基準(旧措法66の6④二)が適用されるのが相当であるから、非関連者基準(同一)が適用される卸売業と所在地国基準が適用される製造業とは、区別すべきであるとの判断基準が示された。 他方、こちらも外国子会社合算税制に関してであるが、同税制の解釈通達である租税特別措置法関連通達66の6-17《事業の判定》が、「外国関係会社の営む事業が措置法第66条の6第2項第3号ハ(1)・・・に掲げる事業のいずれに該当するかどうかは、原則として日本標準産業分類(総務省)の分類を基準として判定する。」と通達しているとおり、国税庁は、日本標準産業分類を基準として、同制度の対象事業性を判定しようとする趣旨に出ていると思われる。 この点、例えば、現行租税特別措置法66条の6第2項3号ハ(一)にいう「卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業、航空運送業又は物品賃貸業(航空機の貸付けを主たる事業とするものに限る。)」の判断において、日本標準産業分類が如何なる意味を持ち得るのであろうか。 同条項の解釈が争われた事例ではないが、類似事例として参考となると思われる事件として、東京地裁平成21年5月28日判決(税資259号順号11217)の判示を以下検討してみたい。 そして、本店所在地国の事業所において行われている事業をもって、特定外国子会社等の主たる事業が何であるかを特定すべきであるとの見解に対して、同地裁は、「〈1〉同項においては、『その行う主たる事業』と規定されているにすぎず、本店所在地国の事業所において行われている事業のみならず当該特定外国子会社等の事業活動全般を全体的に観察して主としてどのような事業を行っているかを判断すべきものと解される」とした上で、次のように述べる。 少し長くなるが、日本標準産業分類へ言及した部分であることから確認しておこう。 同判決は、日本標準産業分類の性格を述べた上で、次のように説示する。 判決は、括弧書き内ではあるものの、通達の記載振りに関心を寄せている。 前述のとおり、現行の租税特別措置法関連通達66の6-17も、「原則として日本標準産業分類(総務省)の分類を基準として判定する。」と通達しているとおり、「原則として」であり、「基準として判定する」としているに過ぎないと理解すれば、上記判決と同様、必ずしも日本標準産業分類に従う必要はないということになろうか。 そもそも、日本標準産業分類は、統計上のルールであることは既にこの連載において述べたとおりであり、上記判決ではその点に重きをおいた判断が展開されているのである。 2 歯科技工士事件 (1) 消費税法基本通達の取扱い 消費税法上、業種分類が争点になることは少なくない。 消費税法は、仕入税額控除の計算において簡易課税の選択を認めているところ、同制度は、対象となる事業を第一種事業ないし第六種事業に分類している。その判断においてしばしば日本標準産業分類が利用されることがある。 これらの業種分類は以下のとおりであるが、課税実務上、いずれに該当するかの判定は、原則として、その事業者が行う課税資産の譲渡等ごとに行うこととされている(消基達13-2-1)。 これら消費税法施行令57条5項の内容は、この連載の第1回目で触れたところであるが、これによれば、例えば、卸売業は第一種事業、小売業は第二種事業などと整理されているものの、ここに示された「卸売業」や「小売業」といった各種事業の定義そのものは同法には示されていない。 そのことから、事業者の行う事業活動が、製造業に該当するのか、あるいはサービス業に該当するのかといった問題が惹起されることがしばしばある。 そこで、国税庁は、消費税法基本通達13-2-4(以下、この節において「本件通達」ともいう。)において、次のように、日本標準産業分類による旨を通達している。 上記通達は、製造業等(第四種事業)、サービス業等(第五種事業)、不動産業(第六種事業)の範囲は、「おおむね日本標準産業分類(総務省)の大分類に掲げる分類を基礎として判定する。」と通達しているのである。 (2) 原審名古屋地裁の判断 さて、実際の事例を確認してみよう。 歯科技工士の行う歯科技工が消費税法上、どの事業分類に該当するかが争われた事例として、名古屋地裁平成17年6月29日判決(訟月53巻9号2665頁)がある。この事例において、被告課税庁側は、おおむね次の3点のような主張を展開して、歯科技工業は「製造業」ではなく、仕入税額控除率の低い「サービス業」に該当すると主張した。 名古屋地裁は、この被告の主張を、つまるところ、「歯科技工は歯科医師の補助者として歯科医療行為の一環として行われるものであること等に照らし、日本標準産業分類において歯科技工所がサービス業(第10回改訂以前)、医療業(第11回改訂後)に分類されていることが合理的であることを前提としている。」と分析した上で、以下、日本標準産業分類における歯科技工業の分類の合理性を検討している。 名古屋地裁は、「日本標準産業分類の性質等」として、次のように述べている。 そして、「日本標準産業分類における歯科技工業の分類の合理性」について次のように述べる。 そして、結論として、以下のとおり判示し、被告の主張を排斥した。 (3) 控訴審名古屋高裁の判断 これに対し、控訴審名古屋高裁平成18年2月9日判決(訟月53巻9号2645頁)は、原審判断を覆した。 まず、名古屋高裁は、「製造業」及び「サービス業」の用語の意味自体を国語辞典を並べて引用した上で(広辞苑、大辞泉、大辞林、日本語大辞典を引用)、「その意味内容ないし用語例として必ずしも一義的に解釈することが可能なほど明確な概念とまではいえないというべきである。」とする(このように国語辞典が租税法解釈に及ぼす影響については、第73回〜75回「国語辞典から読み解く租税法」を参照)。 次に、消費税法が簡易課税制度を採用している趣旨や沿革、日本標準産業分類の性格について述べた後、歯科技工所の分類につき次のように論じている。 そして、課税仕入れ及び構成比の観点から、歯科技工業がサービス業に分類されることに不合理性はないとしている。 その上で、簡易課税制度の趣旨といった観点も踏まえた上で、次のように結論づけている。 このように、日本標準産業分類は、「本来、統計上の分類の必要から定められたものではある」ものの、かかる分類を参考とした判断が展開されているのである。 結びに代えて 租税法が用いている概念には、業種業態を表すものが少なくない。 また、個別税法に定義が示されていないケースが大宗であるから、上記に引用したように、「事業」をどのように解釈すべきなのか、「製造業」とはどのような事業を指しているのかといった問題が尽きない。 こうした問題は、例えば、所得税法上の所得区分の判断や、法人税法上の収益事業該当性の議論、消費税法上の簡易課税制度の適用場面など、枚挙に暇がない。 これに対して、国税庁は通達などにおいて、日本標準産業分類を参考にする旨を示達していることが多いが、単純に通達が日本標準産業分類を参考にすべきとしているから、それによるとするのではなく、法律の趣旨目的に合致した解釈の参考として、日本標準産業分類があるということを忘れてはならないであろう。 日本標準産業分類それ自体に法源性を認めることはできないものの、それが統計法のための装置であり、社会一般にオーソライズされたものであることからすれば、租税法の解釈適用の局面においても十分に参考になり得ると考えるべきであろう。 もっとも、個別の租税法の解釈が明らかであって、日本標準産業分類を活用する必要がないのであれば、同分類によるべきではないのは当然である。 最後に、法人税法上の収益事業該当性が論じられる場面においても、日本標準産業分類が論じられることがあるので参考に示したい。 宗教法人である審査請求人が、経営するE霊園の墓地使用権者から収受した管理料収入が収益事業に係る収入に該当するとして本件事業年度の法人税等の確定申告をした後、当該管理料収入が収益事業に係る収入に該当しないとして当該事業年度の法人税等の更正の請求をしたところ、原処分庁が更正をすべき理由がない旨の各通知処分を行ったことから、審査請求人がそれらの取消しを求めた事案として、国税不服審判所平成26年12月8日裁決(裁決事例集97号)がある。 ここでの争点は、当該管理料収入が収益事業に係る収入に該当するか否かであるが、審判所は次のように示している。 そして、次のように日本標準産業分類に触れている。 ここでも、日本標準産業分類が参考とされてはいるものの、あくまでも「併せ考慮」されているに過ぎないことを見落としてはなるまい。 日本標準産業分類を租税法の解釈適用において持ち込むことができるか否かについて必要な理解は、それが解釈上の参考であるということ、ほかに参考となる基準が見当たらない場合のセカンドベストの資料であるということを忘れてはならないということである。 (了)
谷口教授と学ぶ 税法の基礎理論 【第15回】 「租税法律主義と実質主義との相克」 -税法の目的論的解釈の過形成⑥- 大阪大学大学院高等司法研究科教授 谷口 勢津夫 Ⅰ はじめに 第6回から、「租税法律主義と実質主義との相克」という主題の下、税法の解釈適用の「過形成」を検討してきたが、その検討を「一旦」締め括るに当たって、今回と次回はこれまでとは異なる観点から税法の目的論的解釈の「過形成」を検討することにしたい。すなわち、今回は、立法の形式が助長する「過形成」を、次回は、納税者に有利な「過形成」をそれぞれ検討することにする。 今回取り上げるのは、法人税法上の公正処理基準の定めである。法人税法22条4項は、下記のとおり、益金の内容を構成する収益の額及び損金の内容を構成する費用・損失の額の計算について、原則として、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」(公正処理基準)に従う旨を定め、その計算に関する規律を企業会計に委任している。この委任には、「一般に公正妥当と認められる」という不確定概念による抽象的な「限定」が付されているとはいえ、その概念に関する解釈権限も(税務の簡素化のために)企業会計に委譲されている(武田昌輔「課税所得金額の計算構造」金子宏ほか編『実践租税法大系(下)法人税編』(税務研究会・1981年)96頁、146頁参照)が故に、この委任は一般的・包括的委任とみるべきものである。 法人税法22条4項の規定は、このように、法律が一定の事項に関する規律を命令(政省令等の行政立法)に委任する場合と同じく、委任立法の形式を採用している。しかもこの規定は収益の額及び費用・損失の額の計算に関する規律を一般的・包括的に企業会計に委任しているが故に、この規定については、一般的・包括的な命令委任の場合と同様、課税要件法定主義(課税要件をはじめとして納税者の実体的・手続的権利義務に関わる事項はすべて法律で定めなければならないとする租税法律主義の要請)違反が問題にされることがある(【414】=拙著『税法基本講義〔第6版〕』(弘文堂・2018年)の欄外番号。以下同じ)。 この問題についても後で若干検討することにするが、以下では主として、委任立法の形式が税法の目的論的解釈の「過形成」を助長する場合があることを、いわゆるビックカメラ事件等における裁判所の判断に即して確認し、そのような「過形成」の問題性を明らかにすることにしたい。 なお、以下の叙述は、拙稿「公正処理基準の法的意義-税法における恣意の排除と民主的正統性の確保-」近畿大学法学65巻3・4号(2018年。八ツ尾順一教授ほか退任記念号)213頁をベースにして前記の課題に即して整理し直したものである。 Ⅱ 公正処理基準に関する法人税法独自(固有)観点説 法人税法22条4項は、同法の昭和42年度改正によって新設された規定であるが、その後、企業会計に関する会計観やこれに基づく会計基準・慣行が変化してきた。近時は、国際会計基準の影響もあり、その変化が特に顕著にみられる。そのような状況の下、新たに登場してきた会計基準等について公正処理基準該当性が問題にされるようになってきた。 ビックカメラ事件では、日本公認会計士協会・会計制度委員会報告第15号「特定目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」(平成12年7月31日公表。いわゆる不動産流動化実務指針)の公正処理基準該当性について、東京地判平成25年2月25日訟月60巻5号1103頁は下記のとおり判示し(下線筆者)、控訴審・東京高判平成25年7月19日訟月60巻5号1089頁も、「同法の独自の観点」を「同法固有の観点」という表現に改めてはいるものの、同様の考え方を判示した。 ここで示された考え方は、旧武富士事件・東京地判平成25年10月30日訟月60巻12号2668頁に関する下記の評釈(佐藤英明・判例評論672号(2015年)8頁、9頁。下線筆者)も指摘するように、他の裁判例でも採用されている。 前記の考え方ないしこの評釈のいう「態度」を「法人税法独自(固有)観点説」と呼ぶことにすると、この説は、法解釈方法論上は、一種の目的論的解釈を説く考え方として性格づけることができよう。このことを以下で敷衍することにする。 法人税法独自(固有)観点説は、ビックカメラ事件東京地判の先の引用判示にみられるように、法人税法1条を参照して同法の目的を「適正な課税及び納税義務の履行の確保」として捉えた上で、「[この目的を有する同法の]公平な所得計算という要請とは別の観点に立って定められた」会計基準を、公正処理基準から除外する意味・機能を有するものと考えられる。つまり、企業会計の観点から定められた会計処理基準のうち、「適正な課税及び納税義務の履行の確保」を目的とする法人税法独自(固有)の観点に適合しないものを、公正処理基準から除外する意味・機能を有すると考えられるのである。 そうすると、法人税法独自(固有)観点説は、法解釈方法論上は、法人税法の目的を考慮して行う公正処理基準の限定解釈(目的論的限定解釈)を説く考え方として、性格づけることができよう。 もっとも、「適正な課税及び納税義務の履行の確保」という目的は、「法人税の公平な課税の実現」と言い換えてもよいであろうし、課税の公平が税収確保の「対概念」であること(【18】)からすれば、「法人税の課税の公平の実現及び税収の確保」と言い換えてもよかろうから、このような目的は、法人税という租税の目的あるいは法人税法の立法動機という意味における一般的抽象的な「目的」であって、法人税法上の個々の制度や規定の立法目的を直接示すものではない。 このような一般的抽象的な「目的」を考慮して行う目的論的解釈は、税収確保及び公平負担実現のための目的論的「解釈」(【45】)と呼ぶべきものである。これは、狭義の法解釈(可能な語義の枠内での法解釈)ではなく、一種の法創造(法の継続形成)であり、可能な語義の枠という法解釈の限界を超えてもなお依然として広い意味で「解釈的」方法を用いているとはいえ、租税法律主義の下では許容されるべきものではない。したがって、税収確保及び公平負担実現のための目的論的「解釈」は、税法の目的論的解釈の「過形成」というべきものである。 このように、法人税法独自(固有)観点説は、税法の目的論的解釈の「過形成」に帰結する考え方である。そのような帰結それ自体は、上述のとおり、租税法律主義の下では許されるべきものではないが、ただ、法人税法22条4項における企業会計への委任立法の形式がそのような帰結を助長している面があることも否めない。この点については、項を改めて検討することにしよう。 Ⅲ 企業会計の変化と公正処理基準 1 公正処理基準の静態的解釈と動態的解釈 公正処理基準の意義については、伝統的には、企業会計の観点から捉える傾向が強かったように思われる(下掲①武田昌輔「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」税務大学校論叢3号(1970年)110頁、172頁、②渡邊進「公正妥当な会計基準」税経通信26巻5号(1971年)2頁、4頁、③中村利雄『法人税の課税所得計算〈改訂版〉-その基本原理と税務調整』(ぎょうせい・1990年)84頁)。 しかし、前記Ⅱの冒頭で述べたように、近時、企業会計に関する会計観やこれに基づく会計基準・慣行が大きく変化するようになってきたが、このような変化が、公正処理基準の意義を法人税法独自(固有)の観点から捉えようとする前記の考え方(法人税法独自(固有)観点説)の登場を後押ししてきたように思われる。 企業会計に関する会計観やこれに基づく会計基準・慣行の変化に対して、公正処理基準の解釈論上、どのように対応すべきかという問題については、その変化が公正処理基準を介して法人税の課税にいわば「自動的に」反映することを否定する立場(公正処理基準の静態的解釈)と肯定する立場(公正処理基準の動態的解釈)があり得る(【417】)。 公正処理基準の静態的解釈によれば、公正処理基準は、法人税法の昭和42年度改正当時の会計観や会計基準・慣行に基づいて解釈すべきことになるので、それらの変化に対しては立法者が法改正で対応すべきことになる。 ただ、そのような立法的対応は、必ずしも迅速かつ(法人税法独自(固有)の観点からみて)適切に行われるとは限らない。公正処理基準の動態的解釈はこの点を問題にし、企業会計の変化を公正処理基準の解釈によって公正処理基準の中にいわば「自動的に」受容することを通じて、企業会計の変化に迅速かつ適切に対応しようとするものといえよう。 公正処理基準の動態的解釈は、このように、企業会計の変化に対する迅速かつ適切な対応の観点からすると、望ましい解釈方法であるようにも思われるが、しかし、前記Ⅰで述べたように、公正処理基準が企業会計への委任立法の形式によるものであるが故に、公正処理基準の動態的解釈については、課税要件法定主義との関係をどのように考えるべきかという特殊な問題が生じることになる。この問題については、項を改め検討することにしよう。 なお、静態的解釈と動態的解釈という議論の整理・立て方は、OECDモデル租税条約の1995年改正前における「この条約において定義されていない用語」(同条約3条2項)の解釈をめぐる「静態的解釈(static interpretation)」と「動態的解釈(dynamic/ambulatory interpretation)」との対立(拙著『租税条約論』(清文社・1999年)22頁参照)を念頭に置いたものである。 2 公正処理基準に関する動態的解釈と課税要件法定主義(自由主義的側面)との関係 法人税法22条4項は、益金の内容を構成する収益の額及び損金の内容を構成する費用・損失の額の計算に関する規律を、原則として企業会計に委ねていることから、一般的・包括的な命令委任の場合と同様、課税要件法定主義に反するのではないかという問題が議論されることがある(結論的には課税要件法定主義違反を否定するものではあるが、中里実「企業課税における課税所得算定の法的構造(5・完)」法学協会雑誌100巻9号(1983年)38頁、金子宏『(社)日本租税研究協会創立60周年記念 所得税・法人税の理論と課題』(日本租税研究協会・2010年)126頁等参照)。 法人税法22条4項の課税要件法定主義違反の問題は、確かに、「非常に難しい問題」(金子・前掲書127頁)ではあるが、しかし、一般的・包括的な命令委任との問題の類似性のみに着目して論ずべき問題ではないと考えられる。むしろ、租税法律主義の目的の見地からは、以下で述べるように、それらの問題についてはそれぞれ異なる評価がなされるべきであると考えられる。 そもそも、租税法律主義は、課税権者たる行政による恣意的課税から被課税者たる国民の財産及び自由を保障することを目的とする自由主義的憲法原則であり、その目的を達成する手段として、国民の代表者で構成される議会という行政以外の国家機関が制定した法律に基づく課税を要請するものである(第1回Ⅱ参照)。 租税法律主義(課税要件法定主義)によれば、租税法律が規律事項を命令(行政立法)に委任する場合には、その委任は個別的・具体的委任でなければならず、一般的・包括的委任であってはならない。というのも、命令への一般的・包括的委任は、実質的には、行政が自ら定立したルールに従って課税すること(いわゆる「お手盛り」による課税)を容認することになり、行政による恣意的課税を禁止するという租税法律主義の目的を阻害することになるからである。 これに対して、法人税法22条4項が収益及び費用・損失の計算に関する規律を原則として企業会計に委ねることは、公正処理基準が行政の外部にある企業会計で定立される基準であり行政にとって「第三者性」を有するものである以上、行政の「お手盛り」による恣意的課税を禁止するという租税法律主義の目的を阻害することにはならない。 むしろ、法人税法22条4項が収益及び費用・損失の計算に関する規律を原則として企業会計に委ね準拠させること(企業会計準拠主義。【413】)は、法人の適正な自主的経理を、したがって法人の会計処理の場面における私的自治を、尊重しようとするものであり、私法関係準拠主義(自由主義の発現としての私的自治・契約自由の原則に従って形成される私法上の法律関係に基づいて経済的成果を把握し課税するという税法の根本規律。【60】)のコロラリーとして、したがって租税法律主義と「同根」の、自由主義原理に基づく法原則として、積極的に評価されるべきである。 以上により、法人税法22条4項における企業会計への一般的・包括的委任は、命令(行政立法)への一般的・包括的委任とは異なり、企業会計において形成される公正処理基準の「第三者性」の故に、自由主義的憲法原則としての租税法律主義の目的を阻害するものではなく、課税要件法定主義に、少なくともその自由主義的側面においては、反するものではないと考えるところである。 3 公正処理基準に関する動態的解釈と課税要件法定主義(民主主義的側面)との関係 もっとも、以上のように法人税法22条4項の課税要件法定主義違反の問題に対して公正処理基準の「第三者性」からアプローチする筆者の立場に対しては、次のような疑問が提起されている(佐藤英明「判批」TKC税研情報24巻1号(2015年)19頁、28頁)。 これらの疑問は、租税法律主義の民主主義的側面(【10】)からみて公正処理基準の民主的正統性を問題にするものであり、一般論ないし法理論の上では十分に成り立ち得るものであると考えられる。 しかし、法人税法22条4項が新設された昭和42年当時の税制とりわけ税務行政の状況は、次のような状況であった(武田・前掲論文145頁。下線筆者)ことを忘れてはならない。 このように、当時の税務の実際は、通達行政を中心とする「計算規定のジャングル」(須貝脩一「税法の基礎理論 法人税法22条4項のはなし」納税月報21巻1号(1968年)60頁、67頁)ともいわれる状況にあったが、そのような状況の下では、納税者は、予測可能性・法的安定性を著しく欠く状態に置かれていただけでなく、経済活動の自由を大きく制約された状態に置かれていたともいえるのである。 以上のような当時の状況に鑑みると、立法者は、「複雑化のもたらす利点と欠陥とを十分彼此秤量し、欠陥が大きいと認められる場合にはより簡便な他の仕組みを工夫する等、精密性や独特の規制を緩和するもやむをえないという勇断」(税制調査会「税制簡素化についての第一次答申」(昭和41年12月)第2の2)をする覚悟をもって、税制簡素化に取り組んだ結果、法人税法22条4項を新設したものと考えられる。 法人税法22条4項は、これを企業会計への委任の根拠規定として(最低限ではあるが)公正処理基準の民主的正統性を確保しつつ、他方で、公正処理基準の内容形成を企業会計に委ね、その意味では公正処理基準の民主的正統性を犠牲にすることを立法者が「勇断」した結果定められた規定であると考えるならば、前記の疑問は、公正処理基準の「第三者性」をもって法人税法22条4項の課税要件法定主義違反を否定すること(前記2参照)を妨げるものではないと考えられる。 このことを一般化していえば、「近代憲法の発展と進化を支配する原則と言ってよい」「自由と民主の不可分性・・・・・・・・・・」(芦部信喜『憲法学Ⅰ 憲法総論』(有斐閣・1992年)51頁。傍点原文)は、その限界においては、立法者に「自由」の優先を迫ることを内包しているといってよかろう。 以上のように考えてくると、法人税法独自(固有)観点説は、法人税法22条4項において犠牲にされた公正処理基準の民主的正統性を、解釈を通じて回復しようとする試みであるとみることもできるかもしれない。しかしながら、公正処理基準の民主的正統性は、そもそも、立法者が企業会計の変化に対応して収益及び費用・損失の計算に関する事項を個別具体的かつ詳細に規定することによって、回復していくべきものであって、その回復は裁判所の任務ではない(行政の任務でないことは無論いうまでもない)。 裁判所が法人税法独自(固有)観点説の立場を採用することによって、一方で、企業会計の変化に対して「静態的に」対応しつつ、他方で、上記のような立法者の任務を肩代わりしようとすれば、同説が前記Ⅱのとおり法解釈方法論上は公正処理基準について税収確保及び公平負担実現のための目的論的「解釈」を行おうとするものである以上、裁判所は法解釈の限界を超え、租税法律主義違反の領域に足を踏み入れることになろう。すなわち、このことは税法の目的論的解釈の「過形成」に帰結するであろう。 Ⅳ おわりに 法人税法22条4項における企業会計への委任立法の形式は、以上で述べてきたように、とりわけ近時における企業会計の変化に応じて法人税法独自(固有)観点説が登場してくる素地となっており、少なくとも結果的には、同説にみられる税法の目的論的解釈の「過形成」を助長してきたといってもよいであろう。 しかし、法人税法22条4項の課税要件法定主義違反の問題について、一方で、課税要件法定主義の自由主義的側面において公正処理基準の「第三者性」によりこの問題をクリアしつつ、他方で、課税要件法定主義の民主主義的側面においては、公正処理基準の民主的正統性の犠牲を昭和42年当時よりも拡大させないために、立法者が法改正により企業会計の変化に迅速かつ適切に対応していくべきであろう。ここでも、そのような「質の高い立法力」こそが租税法律主義の「背骨」であるといえよう(租税回避否認立法に関する指摘ではあるが、宮崎裕子「一般的租税回避否認規定-実務家の視点から〈国際的租税回避への法的対応における選択肢を納税者の目線から考える〉」ジュリスト1496号(2016年)37頁、43頁、拙稿「租税回避の法的意義・評価とその否認」税法学577号(2017年)245頁、268頁参照)。 このような観点からは、平成30年度税制改正(平成30年3月28日成立)による法人税法22条の2の規定の新設は(その内容についてはなお検討すべき点はあるとしても)高く評価すべきものである。この規定は、企業会計基準委員会・企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(平成30年3月26日公表承認・同月30日公表)に関する公開草案の公表(平成29年7月20日)を受けて準備され、同会計基準の公表とほぼ同時に成立したものである。 (了)
定期保険及び第三分野保険に係る 改正法人税基本通達の取扱いとその影響 【第2回】 「改正通達の内容及び施行日前後の取扱い」 税理士 三輪 厚二 1 改正通達における定期保険等の区分と取扱通達 定期保険及び第三分野保険の保険料(保険金又は給付金の受取人が法人の場合)は、これまで、期間の経過に応じて損金の額に算入することを原則としつつ、保険期間の前半に支払う保険料の中に多額の前払保険料が含まれているもの(長期平準定期保険や逓増定期保険など)については、保険の種類ごとに個別通達で損金算入に制限をかける取扱いがされてきたが、前回紹介したように、商品設計の多様化や長寿命化等によって保険の種類ごとに制限をかけることが困難になってきたことから、新通達が発遣されることとなった。 新通達では、定期保険の保険料の取扱いと第三分野保険の保険料の取扱いが1つにまとめられ(定期保険等という)、これまであった個別通達を廃止したうえで、「定期保険等の保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれている場合の取扱い」が新設された。また同時に、保険期間が終身で保険料の払込期間が有期の定期保険等の取扱い及び解約返戻金のない短期払の定期保険等の取扱いについても明確化された。 ここで「相当多額の前払部分の保険料が含まれている保険」とは、最高解約返戻率が50%超の保険をいい、この場合には、保険料について一定期間一定割合を資産計上しなければならないとしている。ただし、保険期間が3年未満の定期保険等及び最高解約返戻率が70%以下で、かつ、1人当たりの年換算保険料相当額(保険料総額÷保険期間)が30万円(被保険者1人につき複数の契約に加入している場合はそれらの合計額)以下の定期保険等の保険料については、この取扱いから除かれ、原則通りの取扱いとなる。 なお、この通達の取扱いは、令和元年7月8日以後の定期保険等の保険料について適用され、同日前の契約に係る定期保険等の保険料については、改正前の取扱い並びに廃止された個別通達の取扱いによることとされている。ただし、定期保険等のうち、解約返戻金がなく(ごく少額の払戻金がある契約を含む)、保険料払込期間が保険期間より短いものについては、令和元年10月8日以後の契約分から適用されることとなっている。 これらをまとめると、以下のようになる。 (※) 令和元年7月8日以後の契約は、定期保険等の保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれている場合の取扱いによることとなる。ただし、定期保険等のうち解約返戻金がなく(ごく少額の払戻金がある契約を含む)、保険料払込期間が保険期間より短いものについては、令和元年10月8日以後の契約分からの適用になる。 2 定期保険等の保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれている場合の取扱い 最高解約返戻率が50%を超える保険に係る保険料は、最高解約返戻率の率によって、3つ(① 50%超70%以下、② 70%超85%以下、③ 85%超)に区分され、それぞれ以下のように取り扱うこととされている。 なお、この場合の「最高解約返戻率」とは、その保険の保険期間を通じて解約返戻率が最も高い割合となる期間におけるその割合をいい、「解約返戻率」とは、保険契約時において契約者に示された解約返戻金相当額について、それを受けることとなるまでの間に支払うこととなる保険料の額の合計額で除した割合をいう。 ① 最高解約返戻率が50%超70%以下の場合 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ② 最高解約返戻率が70%超85%以下の場合 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ③ 最高解約返戻率が85%超の場合 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 3 保険期間が終身で払込期間が有期の第三分野保険の取扱い 法人が保険期間が終身で払込期間が有期である第三分野保険に加入した場合は、保険期間の開始の日から被保険者の年齢が116歳に達する日までを保険期間とすることとされた。このことから、期間の経過に伴って損金の額に算入することができる最高解約返戻率が50%以下の第三分野保険の保険料については、保険料払込期間中は、(払込保険料×払込保険期間/(116歳-契約年齢))で計算した金額を損金の額に算入し、残額は資産に計上することとなる。 この取扱いは、令和元年10月8日以後の契約分となる。 4 解約返戻金のない短期払の定期保険等の取扱い 法人が、保険期間を通じて解約返戻金がない定期保険等(ごく少額の払戻金のある契約を含み、保険料の払込期間が保険期間より短いものに限る)で、被保険者1人当たりの払込保険料が30万円(被保険者1人につき複数の定期保険等に加入している場合は、それぞれの合計額)以下のものに加入した場合、その保険料は、その支払った事業年度の損金の額に算入することが認められることとなった。 この取扱いは、令和元年10月8日以後の契約分となる。 5 特約の取扱い 法人が、自己を契約者、役員又は従業員(これらの親族を含む)を被保険者とする特約を付した養老保険、定期保険、第三分野保険又は定期付養老保険等に加入し、特約に係る保険料を支払った場合は、その保険料は、その特約の内容(養老保険なのか又は定期保険、相当多額の前払部分の保険料が含まれている定期保険等なのか)に応じて処理をすることとなる。 (了)
事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第7回】 「配偶者が筆頭株主の場合」 太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) パートナー 税理士 梶本 岳 相談内容 私Tは、電気機器の設計・製造を営むS社を経営しています。S社は私の義父が創業した会社で、婿である私が経営を引き継いで20年になります。私も来年60歳になりますので、後継者である長男Aへの事業承継を意識し始めたところなのですが、経営の承継だけでなく、妻Uの所有するS社株式についてもAに承継する方法を考えるようにとメインバンクからアドバイスを受けました。 S社の株式は、創業者の一人娘であるUが相続し、相続から20年が経過した現在も大半の株式を保有しています。Uは経営には関与しておらず、S社の取締役にも就いていません。 当社は業績が非常に好調なこともあって、Uの所有するS社株式の株価が非常に高額になっています。株価が高い会社にとって事業承継税制は非常に有効な対策であると顧問税理士から説明を受けたのですが、同時に、筆頭株主であるUが代表取締役でなければ事業承継税制は使えないとの説明も受けました。実際、UはS社の経営に関与しておらず、取締役にも就任していません。 Uが株式の大半を保有している現状のままでは、事業承継税制を使ってAに株式を贈与することはできないのでしょうか。 また、どのような対応をとれば、事業承継税制を使ってAに株式を贈与することが可能となるでしょうか。 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ [1] 経営に関与していない配偶者が筆頭株主の場合 (1) 特例贈与者の要件 事業承継税制(贈与税の納税猶予)の特例措置の適用を受けるには、非上場株式を贈与する者が特例贈与者(措法70の7の5①)に該当することが必要です。平成30年度税制改正により創設された特例措置においては、先代経営者以外の者(代表権を有していたことがない者)からの贈与においても納税猶予を適用することが可能になりましたが、先代経営者以外の者が特例贈与者となるためには、最初に先代経営者が事業承継税制の特例措置の適用を受けていることが必要とされています(措令40の8の5①二)。 S社の場合、先代経営者であるT氏は筆頭株主の要件を満たしていないため、特例贈与者になることができません。したがって、現状のままでは、代表権を有していたことのない配偶者のU氏も特例贈与者になることができません。 U氏が特例贈与者になるためには、①U氏自身が経営に関与して代表権を有するか、②先代経営者であるT氏が筆頭株主になるように株式の集約を図ることが必要になります。 ① 先代経営者(代表権を有していた者)の要件(すべてを満たすことが必要) ② 代表権を有していない者の要件(いずれかに該当することが必要) (2) 代表取締役への就任 U氏がS社の代表取締役に就任し、代表権を有することになった場合には、上記(1)①の要件を満たすため、事業承継税制の特例を適用することが可能になります。 代表取締役に就任するにあたっては、登記だけの形式的なものでなく、勤務実態を備えていること、つまり、取締役会への出席に留まらず、代表取締役としての業務執行が実際に行われていることが重要になります。登記上の代表取締役に就任しているだけで代表取締役としての業務執行が行われていない場合には、納税猶予が認められない可能性がありますので注意が必要です。 これまで経営に関与してこなかったU氏が事業会社の代表取締役に就任し、業務執行を行うことは、従業員や取引先といったステークホルダーに対する説明という点でも非常にハードルが高いと思われますので、ビジネス面での慎重な検討が必要です。 [2] 配偶者の代表取締役就任が困難な場合 (1) 持株会社の設立 U氏が事業会社であるS社の代表取締役に就任することが現実的に難しい場合には、S社の株式を保有することを目的とする持株会社H社を設立し、U氏がH社の代表取締役に就任する方法が考えられます。 事業会社であるS社は今まで通りT氏が経営することでステークホルダーに対する責任を果たし、U氏はH社の代表取締役として業務執行を行うようにすれば、先代経営者として事業承継税制の特例贈与者の要件を満たすことが可能です。 持株会社が資産保有型会社(※1)又は資産運用型会社(※2)に該当した場合には、一定の事業実態がある場合を除いて事業承継税制の適用を受けることができませんので注意が必要です(措法70の7の5②一ロ)。しかし、特別子会社となるS社が資産保有型会社又は資産運用型会社に該当しなければ、H社が保有するS社株式は「特定資産」に該当しないことになるため、H社は資産保有型会社・資産運用型会社に該当することなく事業承継税制の適用を受けることが可能です。 (※1) 資産保有型会社:総資産に占める特定資産の割合が70%以上の会社 (※2) 資産運用型会社:総収入金額に占める特定資産の運用収入の割合が75%以上の会社 株式移転は、会社分割に比べて事業運営に及ぼす影響が少なく、比較的容易に持株会社制を実現できるという特徴がありますが、株式移転の日に新たに法人が設立されることになるため、後継者が贈与の日まで引き続き3年以上にわたり対象会社の役員等でなければならない(措法70の7の5②六ヘ)という特例受贈者の要件を満たすには、設立から3年間は事業承継税制を適用できない点に注意が必要です。 (2) 先代経営者への株式集約 配偶者U氏の代表取締役就任が現実的でない場合には、代表権を有しているT氏が筆頭株主となるように株式を集約し、T氏が先代経営者として特例贈与者の要件を満たす方法が考えられます。 U氏からからT氏への株式集約には、贈与税(T氏)や所得税(U氏)などの移転コストが必要になりますが、T氏が先代経営者として特例贈与者の要件を満たすことができた場合には、U氏も先代経営者以外の者として事業承継税制を適用することが可能になります。 T氏に株式を集約することで、T氏及びU氏が保有するすべての株式に事業承継税制を適用することが可能になりますので、①T氏が筆頭株主になるために要する税コスト、②事業承継税制を適用しなかった場合の相続税負担を比較検討したうえで、実行することが必要です。 [3] 結論 まずは、U氏に代表権を付すことの是非について検討が必要でしょう。形式的に代表権を付与するだけでなく、代表取締役として業務執行を行うことが可能であるのか、ビジネス面での慎重な判断が必要になるものと考えます。 なお、具体的な対策については、税理士等の専門家と相談の上、実行されることをお勧めします。 (了)
平成31年度税制改正における 『連結納税制度』改正事項の解説 【第3回】 「研究開発税制の見直し(その3:中小企業技術基盤強化税制の見直し)」 公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸 (3) 中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度についても、総額型と同様に、増加インセンティブを強化する観点から控除率カーブを見直し、税額控除率及び控除上限の上乗せ措置の適用期限を2年延長する(高水準型は予定どおり廃止される)。 中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度について、改正前後の取扱いは以下のとおりとなる。 【中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度】 ▷根拠条文 改正前:旧措法68の9③④⑤ 改正後:措法68の9④⑤⑥ ▷対象法人 改正前:連結親法人が中小連結親法人(中小連結法人で適用除外事業者に該当しないもの)に該当する場合の連結法人のすべて 改正後:同上 ▷税額控除限度額 ▷控除限度となる法人税額基準額 ▷繰越控除 改正前:限度超過額の繰越制度はない。 改正後:同上。 ▷税額控除額の個別帰属額の計算方法 改正前:下記A参照。 改正後:下記B参照。 ▷地方法人税における税額控除 ▷住民税における税額控除 連結納税における中小企業者の試験研究費に係る税額控除額の個別帰属額の計算方法は、次のとおりとなる。 A 改正前(旧措法68の9⑬二・五、旧措令39の39㉒三・四) [中小企業者の試験研究費に係る税額控除額の個別帰属額の計算方法] [ⅰの額の計算方法] (一) 下記(二)以外の場合 (注1) この場合の特別試験研究費は、分子と異なり、中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度の適用対象としたものを含む。 (二) 平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に開始する連結親法人事業年度において、増減試験研究費割合が5%を超える場合 (注2) この場合の特別試験研究費は、分子と異なり、中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度の適用対象としたものを含む。 [ⅱの割合] (注3) 個別増減試験研究費割合とは、当該連結法人の個別増減試験研究費/当該連結法人の比較試験研究費となる。個別増減試験研究費とは、当該連結法人の試験研究費から比較試験研究費を減算した金額をいう。 B 改正後(措法68の9⑬二・五、措令39の39㉗四・五・六・七) [中小企業者の試験研究費に係る税額控除額の個別帰属額の計算方法] [ⅰの額の計算方法] (一) 下記(二)~(四)以外の場合 (注1) この場合の特別試験研究費は、分子と異なり、中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度の適用対象としたものを含む。 (二) 平成29年(2017年)4月1日から令和3年(2021年)3月31日までの間に開始する連結親法人事業年度において、増減試験研究費割合が8%を超える場合(下記(四)の場合を除く) (注2) この場合の特別試験研究費は、分子と異なり、中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度の適用対象としたものを含む。 [ⅱの割合] (注3) 個別増減試験研究費割合とは、当該連結法人の個別増減試験研究費/当該連結法人の比較試験研究費となる。個別増減試験研究費とは、当該連結法人の試験研究費から比較試験研究費を減算した金額をいう。 (三) 平成31年(2019年)4月1日から令和3年(2021年)3月31日までの間に開始する連結親法人事業年度において、試験研究費割合が10%を超え、かつ、増減試験研究費割合が8%以下となる場合 (注4) この場合の特別試験研究費は、分子と異なり、中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度の適用対象としたものを含む。 [ⅱの割合] (注5) 個別試験研究費割合とは、当該連結法人の試験研究費/当該連結法人の平均売上金額となる。 (四) 平成31年(2019年)4月1日から令和3年(2021年)3月31日までの間に開始する連結親法人事業年度において、試験研究費割合が10%を超え、かつ、増減試験研究費割合が8%超となる場合 (注6) この場合の特別試験研究費は、分子と異なり、中小企業者の試験研究費に係る税額控除制度の適用対象としたものを含む。 [ⅱの割合] (4) ベンチャー企業に該当する中小連結親法人は、「総額型」と「中小企業者の総額型」の選択適用(有利・不利判定)を行う必要がある。 従来から、単体納税の中小企業者、連結納税の中小連結親法人は、試験研究費の総額に係る税額控除制度(以下、「総額型」という)と中小企業技術基盤強化税制(以下、「中小企業者の総額型」という)の選択適用が可能となっている。 これは、租税特別措置法第42条の4第4項(平成31年度税制改正前は第42条の4第3項)において、「・・・(第一項の規定の適用を受ける事業年度・・・を除く)」と、第68条の9第4項(平成31年度税制改正前は第68条の9第3項)において、「・・・(第一項の規定の適用を受ける連結事業年度・・・を除く)」と定められていることからわかることだが、平成31年度税制改正前は、「中小企業者の総額型」の方が「総額型」より、必ず、税額控除額が大きくなる計算方法であったため、実際に選択適用することはあり得なかった(税額控除限度額は「中小企業者の総額型」の方が大きくなり、法人税額基準額は同額か、「中小企業者の総額型」の方が大きくなる計算の仕組みであった)。 これが、平成31年度税制改正において、ベンチャー企業の控除限度割合の引上げ(25%⇒40%)の特例規定が創設されたことで、ベンチャー企業に該当する中小連結親法人は、「総額型」と「中小企業者の総額型」のいずれを適用するかによって有利・不利が生じることになっている。 この点、【第2回】の(2)で解説したとおり、単体納税の場合、たとえ、ベンチャー企業に該当する場合であっても、中小法人に該当する場合は、ベンチャー企業の控除限度割合の引上げ(25%⇒40%)の特例規定が適用されない。 そして、単体納税の場合、中小企業者に該当する場合は、中小法人に該当することになるため、単体納税の場合は、改正前と同様に中小企業者は必ず「中小企業者の総額型」を適用することが有利となる。 一方、連結納税では、【第2回】の(2)で解説したとおり、連結親法人が中小法人に該当する場合でも、特定連結欠損金を有している場合は、ベンチャー企業の控除限度割合の引上げ(25%⇒40%)の特例規定が適用できるケースが生じる。 そのため、連結納税では、ベンチャー企業に該当する中小連結親法人は、「総額型」と「中小企業者の総額型」のいずれを適用するかによって、税額控除限度額(「中小企業者の総額型」が有利)と法人税額基準額(「総額型」が有利)が異なることになり、結果、税額控除額が異なることになり、有利・不利が生じることになる。 なお、中小連結親法人であっても、「総額型」を適用した場合、大企業と同様に、その税額控除額を住民税の課税標準から控除できないため、その点も有利・不利判定に織り込む必要がある。 改正前はこのような有利・不利判定は不要であったため、連結納税において中小連結親法人かつベンチャー企業に該当する場合は、不利益を受けないように十分な注意をする必要がある。 (了)
収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第7回】 千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也 〈更なる検討〉 ~「取引」への着目①~ 法人税法22条2項の規定内容を理解するに当たって、「取引」という語に着目する2つのアプローチを確認しておきたい。 上述(前回参照)のとおり、法人税法22条2項は、収益の計上時期について具体的な基準を定めていないが、あえて、条文から収益の計上時期の決定に関するルールを抽出する作業を試みるとどうなるか。租税法の世界では租税法律主義の原則が存在し(憲法30、84)、租税法規の解釈に当たっては、厳格な文理解釈が要請される。このことを踏まえると、かかる作業を行うことにも理由がある。もちろん、文言のみに捉われた解釈は時に受け入れられない場合があることに注意を要する。 法人税法22条2項は、取引に係る収益の額と規定しているから、取引の発生前に収益が認識されることはないという読み方もありうると思われる。もっとも、取引発生後、具体的にどの時点で収益を認識すべきであるかという点については、やはり判然としない。 法人税法22条2項の文末は「資産の販売・・・その他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする」となっている。この「当該事業年度の」収益の額という部分、読み替えるとすれば「当該事業年に帰属する」収益の額という部分は、直後の「収益の額」のみにかかっており、直前の「取引」(「その他の取引で資本等取引以外のもの」)にはかかっていない。 このことからすれば、収益の計上時期は、第1次的には「取引」の発生・完了時点に捉われないという見方がありそうである。他方で、「収益の額」は「取引」に係るものであると規定されているから、「取引」を手掛かりとして、収益の計上すべき時期も決定されるという解釈もできそうである。 しかしながら、結局は、どのようなルールに従って収益の計上時期が決められるのかという点について、かような同項の文理解釈のみで断定することは難しいと考える。 〈更なる検討〉 ~「取引」への着目②~ 担税力を増加させる利得であれば理論上は所得であるが、法人税法は、所有資産の価値の増加益(評価益)など未だ実現をしていない利得(未実現の利得)については、原則として、課税の対象としていない。例えば、法人税法25条1項は、法人がその有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を増額した場合であっても、その増額した部分の金額は益金の額に算入しないことを定めている。 この点に関して、法人税法22条2項の「取引」は売買等の法的取引を意味し、同項は「取引に係る収益」と定めることにより、実現した利益のみが所得であり、未実現の利得を課税の対象から除外することを表明したものであるとする有力な見解がある(金子宏『租税法〔第23版〕』337頁(弘文堂2019)、同「租税法解釈論序説」金子宏ほか編『租税法と市場』23頁(有斐閣2014)参照)。 この見解は、法人税法22条2項の趣旨について、実現した利益は原則としてすべて益金に含まれるとするものと解しており、その意味で、法人税法においても所得概念は包括的に構成されているとする。そして、取引によって生じた収益は、営業取引・営業外取引、合法・不法、有効・無効、金銭の形態・その他の経済的利益の形態等の区別なく、益金を構成すると理解する。 法人税法22条2項の「取引」について、要旨次のとおり、会計的取引のうち外部取引を意味すると解する見解も示されている(谷口勢津夫『税法基本講義〔第6版〕』377~379頁(弘文堂2018))。 この見解も、益金は外部から流入する経済的価値を意味することから、法人税法も、所得税法と同じく、実現した所得のみを課税の対象とするという考え方(実現主義)を採用していると理解する。 ただし、法人税法において「取引」という用語は私法上の取引に限定されない簿記・会計上の取引(を含む)と解すべき手掛かりが多数存在し(法法4の4①、22③三、22④・⑤、126①。法規8の3の4、53)、外部取引、あるいは私法上の取引に限定されないと解する見解も珍しいものではない。 例えば、立案担当者は「簿記上の取引」をいうと明言していたし(国税庁『昭和40年 改正税法のすべて』102頁)、学説にも、法人税法22条2項にいう「取引」には、市場を通じた外部取引だけでなく、関連者間での取引や、償却計算の修正など企業内部での計算上の取引を含む、という見解がある(岡村忠生『法人税法講義〔第3版〕』41頁(成文堂2007)参照)。また、公法上の債権等も収益を構成することは否定できないこと、申告納税制度の下で記帳に基づいて所得計算を行うこと及び法人税法22条2項には同条4項が適用されることを考えると、法人税法22条2項の「取引」の意義について、記帳の対象となる一切の事象と捉える見解が妥当であるという見解も示されている(岡村忠生編『新しい法人税法』276~277頁〔岡村忠生=髙橋祐介=田中晶国執筆〕(有斐閣2007))。 法人税法22条2項の「取引」の意義の参考として、旺文社事件:東京高裁平成16年1月28日判決(訟月50巻8号2512頁)は、法人税法22条2項の「『取引』は、その文言及び規定における位置づけから、関係者間の意思の合致に基づいて生じた法的及び経済的な結果を把握する概念として用いられている」という解釈を示した。上告審である最高裁平成18年1月24日第三小法廷判決(集民219号285頁)は、次のとおり判示している。 (了)
さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第49回】 「髙野歯科医師事件」 ~最判平成2年6月5日(民集44巻4号612頁)~ 弁護士 菊田 雅裕 (了)