〔会計不正調査報告書を読む〕 【第73回】 株式会社ドミー 「第三者委員会調査報告書(要約版)(平成30年4月20日付)」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【第三者委員会の概要】 【株式会社ドミーの概要】 株式会社ドミー(以下「ドミー」と略称する)は、愛知県三河地方を中心に地域密着型スーパーマーケットを営む。創業は1913(大正2)年、会社設立は1941(昭和16)年。連結売上高33,638百万円、経常利益247百万円、店舗数37、従業員数1,483名(数字はいずれも平成29年5月期)。本店所在地は愛知県岡崎市。名古屋証券取引所上場(2018年3月27日付で上場廃止)。 【調査報告書の概要】 1 調査に至る経緯 ドミーは、平成29年12月28日に、会計監査人である新日本有限責任監査法人(以下「会計監査人」という)から、第77期(平成30年5月期)において、減損の懸念がある店舗となっていた4店舗に計上されたリベート及び協賛金について、仕入先からのリベート・協賛金を恣意的に傾斜配賦しており、この事実の解明には社外の有識者からなる調査委員会による調査が必要であるとの指摘を受けて、平成30年1月12日、第三者委員会を設置した。 2 中間報告書の概要 第三者委員会による調査の結果、減損懸念店舗に対するリベート傾斜配賦には、当初問題となった食品第二事業部のみならず、食品第一事業部でも行われていたこと、それ以外にも、新聞の折込みチラシ費用の配賦にも減損懸念店舗の負担を軽くする裁量の余地があること、従業員に対する社内販売による売上高を減損懸念店舗で計上させていたこと、本社で計上されている人件費の各店舗への配賦方法に関する疑義が会計監査人から指摘されたことなど、減損懸念店舗の損益を好転させるための恣意的な費用配賦が発覚した。 そのため、第三者委員会は、「短期間の調査では、全容解明に至らない」として、次のように結論して、中間報告書を締め括った。 3 減損懸念店舗に対する減損回避のための施策 減損会計基準の適用により、2期連続で損益がマイナスとなるなどして減損の対象となった店舗については減損損失を計上しなければならなかったことが、ドミーの損益に大きな影響を及ぼすこととなった。そこで、ドミーの役職員は、営業努力によっても損益がマイナスとなることが避けられなかった店舗(減損懸念店舗)について、減損を回避するために、リベートを恣意的に傾斜配賦する等の不適切な会計処理を行い、個別の店舗での減損の発生を極力回避するようになった。 このような不適切な会計処理は、遅くとも第69期(平成22年5月期)以降、継続して行われていたが、第71期(平成24年5月期)の決算直前に、会計監査人から、各店舗へのリベートの配賦は、担当者が恣意的に特定の店舗に配賦するのではなく、合理的なルールに基づいて配賦するべきであるとの指摘があり、以降はリベートを恣意的に配賦することが困難となった。 初めて店舗に係る減損損失を計上することとなった第71期(平成24年5月期)以降、経営陣は、減損懸念店舗の中から、減損回避の可能性や減損となったときの影響度等を加味して、特に重点的に対策を採るべき店舗(以下「強化対策店舗」という)を複数選定し、強化対策店舗のそれぞれについて担当する役員を決め、当該担当役員のリーダーシップの下で、減損を回避するための対策を採るという施策を実施することとした。 しかし、通常の営業努力により収益を改善しようとしても限界があり、数値目標を達成するためには、営業努力を超えた方法を取らざるを得ない状況も生じたことから、当該店舗に課せられた数値目標を達成しなければならないというプレッシャーの中で、主として強化対策店舗やこれに準じる不採算店舗の役職員が、減損回避策の一環とし不適切な会計処理を行うに至ったものであると、第三者委員会はその動機を解明している。 4 不適切な会計処理の内容 報告書によれば、強化対策店舗の損益改善のための不適切な会計処理は、以下のとおり、多岐な手法が用いられている。 各個別の店舗の損益に与える影響額については、リベートの傾斜配賦や人件費の本社負担のように、店舗当たり年間500万円から1,000万円を超える損益調整となった処理から、社内販売による売上の付替えのように店舗当たり年間数千円から数十万円といった規模まで、かなり差がある。 複雑で多岐にわたる損益調整の手法からは、ドミー担当者が、あらゆる手を尽くして、強化対策店舗の減損計上を阻止しようとした形跡がうかがえるが、その甲斐あって、この間、ドミーでは店舗の減損による損失は計上されなかった。 (1) リベートの傾斜配賦 ドミーでは、第71期(平成24年5月期)における会計監査人からの指摘以降、リベートが「特定の店舗に紐づくもの」でない限り、本社の仕入高にマイナス計上した後、各店舗の売上高に応じて配賦するルールを導入していたが、導入以降についても、ルールに違反した又はこれを潜脱した、強化対策店舗等へのリベートの恣意的な傾斜配賦を継続していた。 (2) 振替修正 ドミーでは、各店舗間における在庫商品の振替えが行われていたが、商品の振替えルールが確立されておらず、特に振替先の店舗の仕入原価については、商品の仕入・発注を担当するマーチャンダイザー(MD)補佐・エリアチーフ(所属する担当地区の店舗の支援・指導等を行うと同時に本社と店舗との橋渡しの役割が期待される役職をいう)や振替元の店舗の従業員等が、自らの判断又は各商品部長・地区長等と相談の上で、その度ごとに任意の金額を設定して振替えを行っていた。 そのため、個別の店舗での減損を回避する等の目的で、強化対策店舗等から他の店舗に在庫商品を振り替える際、振替先となる店舗の仕入原価を、振替元となる強化対策店舗等の仕入原価よりも高く設定し、振替元である強化対策店舗等に利益が残るようにしていた。 (3) 仮装仕入・振替処理 食品第二事業部では、個別の店舗での減損を回避する等の目的で、高値入商品(原価率が低く、利益率が高い商品)を対象に、実際には各店舗において仕入れたにもかかわらず、あたかも強化対策店舗において仕入れたかのように仮装した上で、伝票上、仕入原価に一定の利益を上乗せした金額で他店に振り替えることで、強化対策店舗に利益を計上していた。 仕入原価を高くして在庫商品を他店に振り替える点で上記(2)と同様であるが、本件については、単なる伝票上の処理により行われたもので、実際の商品の移動を伴っていない点で別の類型であると、第三者委員会は判断している。 (4) 加工センターからの仕入原価の調整 ドミーでは、商品を加工センターから店舗に仕入れる際、各商品部のMDが店舗の仕入原価を設定しており、店舗の仕入原価は、同一の時期に仕入れた同一の商品であれば、合理的な理由がない限り、店舗間で差を設けることなく一律とすべきであるところを、強化対策店舗等の商品の仕入原価を、何ら合理的な理由なく、他の店舗の仕入原価よりも低い金額に設定していたことが、第三者委員会による調査で判明している。 (5) 本社の職員を店舗で稼働させた場合の人件費の会計処理 ドミーにおける本社の職員であるエリアチーフの人件費は、本社の職員ではあるものの、本来、各人の各店舗への勤務実態に応じて一部は各店舗の人件費として計上されるべきであるが、すべて本社に計上されていたため、エリアチーフの勤務実態がある店舗では利益の過大計上となり、本社では利益の過少計上となっていた。 第三者委員会は、こうした人件費の計上のうち、食品第一事業部では、減損回避を意図して行われたものであるとは認められなかったとしながら、食品第二事業部では、強化対策店舗等の従業員を削減するとともに、その穴を埋めるため、強化対策店舗等を母店とするエリアチーフを配置し、当該エリアチーフが勤務時間の大半を当該母店(強化対策店舗等)において勤務することにより、店舗の人件費を削減していたとして、減損回避策としてのエリアチーフ制度の利用を認定している。 (6) 広告宣伝費の付替え ドミーでは、複数の店舗に共通する内容の折込チラシを作成し配布する場合に発生する広告宣伝費について、各店舗の商圏を参考に、配布先である世帯を各店舗に対応させる形でグルーピングし、各店舗分の折込チラシの部数を算出した上で、当該部数を記載した「部数表」と呼ばれる一覧表を作成し、部数表に記載された部数に応じて広告宣伝費を按分して配賦することにしていた。 ところが、第三者委員会の調査において、広告宣伝費を各店舗に按分して配賦する際に、部数表上、一部の強化対策店舗等の折込チラシの部数をゼロにし又は減少させると同時に、その分他の店舗の部数を増加させるといった操作を行うことにより、特定の店舗が負担すべき広告宣伝費を他の店舗に付け替える処理を行っていたことが判明した。 なお、この不適切な費用の付替えについては、第72期(平成25年5月期)の決算手続を進める過程で、会計監査人から、恣意的に基準を変えて経費を配賦することは許されない旨の指摘があったにもかかわらず、規模は縮小されたものの、その後も強化対策店舗の一部について広告宣伝費の他店への付替えが継続されていた。 (7) その他の不適切な会計処理 上記以外にも、第三者委員会は、強化対策店舗の損益に与える影響は小さいものの、以下の会計処理が不適切であるとの指摘を行っている。 5 関係者の関与・責任 (1) リベートの傾斜配分などに直接関与した取締役 第三者委員会を設置して調査を行うこととなった不適切なリベートの傾斜配賦は、本調査対象期間である第69期(平成22年5月期)から会計監査人の指摘を受けた第71期(平成24年5月期)までは、当時の営業本部長であった元専務取締役の半田直之氏(以下「半田元専務」と略称する)の主導の下、同人からの対象店舗やリベート金額を含む具体的指示により、食品第一事業部長である常務取締役富田博隆氏(以下「富田常務」と略称する)、当時の食品第二事業部長であった常勤監査役山本恭二郎氏(以下「山本常勤監査役」と略称する)が、各商品部長・MDにおいて単独で又はそれぞれ指示・相談の上で行われてきた。 なお、本期間のリベート傾斜配賦は配賦ルール導入前のものであり、遵守すべき会計処理のルールを認識しながら敢えてこれに反して行われたものではなかった。 半田元専務の退任した第72期(平成25年5月期)以降について、富田常務は、食品第一事業部におけるリベートの傾斜配賦への関与を否定している。 一方、食品第二事業部長に就任した専務取締役梶川貴光氏(以下「梶川専務」と略称する)は、具体的に本件配賦ルールに違反したリベート傾斜配賦を行うよう指示した事実は認められなかったが、食品第二事業部に所属する自らの部下らが本件配賦ルールに違反してリベートを減損懸念店舗等に傾斜配賦することを認識し、かつ容認していたと、第三者委員会は認定した。 (2) 代表取締役会長 代表取締役会長である梶川志郎氏(以下「梶川会長」と略称する)は、ドミーの利益の追求に熱心であり、毎月1回開催される取締役会や毎週1回開催される全体会議において、各店舗の経営状況や予算の達成状況を確認し、各店舗における売上高や利益率を向上させるよう、経営陣をはじめとする出席役職員に指導や叱咤激励を行ってきた。 特に店舗に係る減損損失を計上した翌期である第72期(平成25年5月期)以降の取締役会や全体会議においては、強化対策店舗の担当役員に、店舗損益の改善による減損の回避を強く求めていた。 第三者委員会は、ドミーの役職員らは、梶川会長の要請に応えようと利益の追求を最優先に考えて必死に営業努力を試みるのであるが、こうした必死の営業努力によっても減損の回避という目的が達成できない場合に、本件不適切会計処理を行うに至ったものであると断じた。 そのうえで、梶川会長の役職員に対する影響力の大きさに鑑みると、梶川会長から役職員に対して、コンプライアンスの徹底を指示していれば、役職員がその指示に反する行為に及んだり、黙認ないし放置することは考えにくく、本件不適切会計処理を抑止し、又は早期に発見できた可能性は高いと考えられるとして、第三者委員会は、梶川会長が、企業としての利益を追求するという強い意向に比して、コンプライアンスに対する意識が不十分であったことが、本件不適切会計処理を引き起こした一因であると言わざるを得ないと判断した。 (3) 代表取締役社長 代表取締役社長である梶川勇次氏(以下「梶川社長」と略称する)は、創業家一族として、梶川会長とともに代表取締役を務め、ドミーの役職員に対する強い影響力を及ぼし得る立場にあった。 第三者委員会は、梶川社長が、利益の追求を志向する梶川会長に対して、コンプライアンスの徹底を進言することなく、代表取締役として、コンプライアンスを徹底する姿勢を全職員に打ち出すこともせず、取締役会において、コンプライアンスの遵守状況の報告を求めたり、未然防止策の検討等を行ったりした形跡も認められないことは、梶川会長に対する進言が難しかったことを斟酌しても、経営トップとして、コンプライアンスに対する意識は十分とはいえないと断じている。 6 発生原因の概要 第三者委員会の調査報告書に基づく発生原因の概要は以下のとおりである。 7 再発防止策の提言 第三者委員会は、調査報告書において、不適切な会計処理の発生原因に関して、それぞれの原因の除去及び是正を目的とする再発防止策について、以下のとおり提言している。 【調査報告書の特徴】 3ヶ月余りにわたる調査の結果、4月20日、ドミー第三者委員会は70ページに及ぶ調査報告書を提出した。しかし、ドミーは、平成30年5月期第2四半期報告書を、延長承認後の提出期限の経過後8営業日以内(平成30年2月26日まで)に提出できなかったため、2月26日をもって整理銘柄に指定され、3月27日付で上場廃止となってしまった。 第三者委員会による調査報告書は、数千円の不正な利益の付替えまでをも指摘する非常に細かい調査に基づくものであり、調査結果についても、よく分析がなされていると評価できる内容である。 しかし、おそらくは上場維持を望んでいたと思われる株主を含む多くのステークホルダーにとって、調査が長引いてしまったことにより、会計監査が終わらず、結果的に半期報告書が提出できないことを理由に上場廃止という流れは、どのように映っているのであろうか。 1 営業不振店舗の減損回避のための損益調整 ドミーが上場会社であり、減損会計を導入している以上、2期連続して赤字となるなどの営業不振店舗については減損を行い、損失を計上するというルールを遵守しなければならないことは言うまでもないことである。 ところが、経常利益が2億円台から4億円程度で推移しているドミーにとって、複数の減損懸念店舗を抱え、1店舗あたり、数千万円から億単位の減損損失を計上することは、赤字転落につながりかねない事態であった。 こうしたことから、梶川会長のもと、強化対策店舗に担当役員を配置して、損益のテコ入れを図ったことが、結果的には裏目に出てしまった。不採算店舗を廃止して、利益の出る店舗に経営資源を集中するという選択肢は、地域密着型で、地産地消を標榜し、ドミナントエリア戦略(※)を掲げるドミーにとっては、なかったのかもしれない。 (※) 「ドミーレポート第76期(平成29年5月期)」には、以下のような説明がある。 2 減損会計におけるグルーピング 調査報告書には言及はないが、上記のドミナントエリア戦略をとるドミーにとって、「小売業界では、通常、店舗別に投資意思決定を行う」ことから、「1店舗を1資産グループとして、減損損失の認識・測定を行う単位とする」という判断が、果たして、減損会計の適用上、適切であったのかどうかという疑念がある。 不採算店舗も含めて、地域に存する店舗全体の効率化・コスト削減を含めるという経営方針からは、同地域の複数店舗をまとめて資産のグルーピングを行い、その中で、減損損失計上の可否を判断するという議論を、会計監査人との間でできなかったのだろうか。 3 会計監査人の異動 ドミーは、5月18日、「会計監査人の異動及び一時会計監査人の選任に関するお知らせ」というリリースを公表し、会計監査人である新日本有限責任監査法人との間の「監査及び四半期レビュー契約」を合意解除して、一時会計監査人に監査法人ハイビスカスを選任したことを発表した。 異動理由については、「新日本有限責任監査法人と協議した結果」としか記載がないものの、過年度有価証券報告書の訂正については、「監査法人ハイビスカスの監査の下、第三者委員会の調査報告書を踏まえて、過年度の有価証券報告書等に必要な訂正を行う予定です」との記載がある。 4 ドミーによる再発防止策 ドミーが5月28日に公表した「当社における不適切な会計処理に対する再発防止策等に関するお知らせ」では、第三者委員会による提言に沿った形で、10項目の再発防止策が策定されている。 なかでも、「責任の明確化」として、梶川会長が代表取締役会長及び取締役を辞任して、相談役をして信頼回復に尽力すること、不適切な会計処理を容認していた梶川専務及び富田常務が、それぞれ取締役を辞任して、子会社へ出向することが明記されている。 (了)
連結会計を学ぶ 【第20回】 「連結範囲からの除外に関する取扱い」 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 今回は、連結範囲からの除外に関する取扱いについて、「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号。以下「連結会計基準」という)及び「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(会計制度委員会報告第7号。以下「資本連結実務指針」という)にしたがって解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 子会社に対する支配の喪失 1 連結対象となる子会社の財務諸表の範囲 連結財務諸表では、子会社に対する支配を獲得した場合には、支配獲得日以後の当該子会社の資産・負債及び収益・費用を親会社の財務諸表の各項目に連結し、一方、子会社に対する支配を喪失した場合には、支配喪失日以後の当該会社の資産・負債及び収益・費用を連結から除外することになる(資本連結実務指針2項)。 連結対象となる子会社の財務諸表の範囲は、いずれの時点において支配の獲得又は喪失が生じたとみなすかにより、次のように取り扱われる(資本連結実務指針7項)。 2 連結除外に関する会計処理 子会社株式の売却により支配を喪失して関連会社となる場合には、資本連結実務指針45項(支配を喪失して関連会社になった場合の処理)及び45-2項(支配を喪失して関連会社になった場合ののれんの未償却額の取扱い)に従って会計処理する(資本連結実務指針41項)。 子会社株式の売却により支配を喪失して連結子会社及び関連会社のいずれにも該当しなくなった場合には、資本連結実務指針46項(支配を喪失して関連会社にも該当しなくなった場合の処理)に従って会計処理する(資本連結実務指針41項)。 3 連結除外に関する資本剰余金の会計処理(子会社株式の追加取得及び一部売却等によって生じたもの) 子会社株式の追加取得及び一部売却等(親会社と子会社の支配関係が継続している場合に限る)が行われた場合、追加取得持分と追加投資額との間に生じた差額又は売却による親会社の持分の減少額と売却価額との間に生じた差額は、資本剰余金として処理される(連結会計基準28項、29項)。 この資本剰余金は、支配を喪失して連結範囲及び持分法適用範囲から除外されたとしても、過去の追加取得又は一部売却取引で計上された資本剰余金は取り崩さず、結果として、資本剰余金は子会社でも関連会社でもなくなってもそのまま計上されることとなる(資本連結実務指針49-2項、68-2項)。 これは、支配継続中の一部売却等の取引は、親会社と子会社の非支配株主との間の取引であり、当該取引によって生じた資本剰余金は子会社に帰属するものではないためである(資本連結実務指針68-2項)。 なお、資本剰余金が負の値となり、当該負の値を利益剰余金から減額する処理を行っていた場合には、連結範囲から除外された後も当該処理は、連結財務諸表上、引き継がれることになる(資本連結実務指針49-2項、39-2項)。 (了)
副業・兼業社員の容認をめぐる 企業の対応策と留意点 【第1回】 「副業・兼業のメリット・デメリットと法的ルール」 TOMAコンサルタンツグループ(株) TOMA社会保険労務士法人 人事労務指導部 副部長 特定社会保険労務士 渡邉 哲史 1 はじめに 平成30年6月現在、厚生労働省は、平成29年3月28日に働き方改革実現会議で決定した「働き方改革実行計画」を踏まえ、副業・兼業の普及促進を図っています。こうした状況のなか、政府は、厚生労働省の「柔軟な働き方に関する検討会」での議論を踏まえ、平成30年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表しました。 また、同時に、厚生労働省はモデル就業規則を改定し、これまで遵守事項にあった「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除し、副業・兼業についての規定を新設しました。 本連載では、このような政府・厚生労働省の、「副業・兼業」の普及促進を図る上での現状、メリット・デメリット、法的ルール、企業として副業・兼業を容認するにあたっての制度設計上の留意点、就業規則等の具体的な規定の仕方について、2回にわたってご説明いたします。 2 副業・兼業の現状 総務省が5年ごとに実施している「就業構造基本調査」(平成24年度)によれば、副業希望者は360万人を超え、就業者全体に占める割合は5.7%を占めており、毎回の調査で増加が続いています。 また、中小企業庁委託事業である「平成26年度兼業・副業に係る取組実態調査事業」によれば、実に85%以上の企業が、「副業・兼業を認めていない」という状況となっています。 こうした中で、なぜ、政府は副業・兼業を普及推進しているのでしょうか。 それは、副業・兼業を通して、柔軟な働き方がしやすい環境を整備することが、新たな技術開発、オープンイノベーションや起業の手段として有効と考えているからです。 また、これらを通じ、労働生産性が改善し、働く一人ひとりが豊かになり、消費を押し上げることにつながるとしています。 3 副業・兼業のメリット・デメリット 副業・兼業するメリット・デメリットはどんな点があるのでしょうか。 ガイドラインを参考に、労働者側、企業側の観点で整理すると、次のような点が挙げられています。 (※) 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を参考に筆者作成 上記は一例であり、実務上は、労働者及び企業の状況により検討する必要があります。 特に、副業・兼業を認める場合は、企業として、就業時間の把握・管理、健康管理、職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務の対応が不可欠でしょう。副業・兼業の制度設計をするにあたっては、この点を十分に検討しておくことが重要です。 4 副業・兼業をめぐる法的ルール それでは、副業・兼業をめぐる法的ルールはどうなっているのでしょうか。 実は、副業・兼業に関する制限について、法律で決まっているわけではありません。裁判でも、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由としており、例外的に会社において副業・兼業を制限することが許されるのは、 などであり、こうした理由から多くの企業では企業の利益を害する恐れがあるとして、副業・兼業を禁止していることが多くなっています。 一方で、労務管理の実務上問題となるのは、「3 副業・兼業のメリット・デメリット」でも触れたように、(1)就業時間管理、(2)健康管理です。以下、確認していきます。 (1) 就業時間管理 副業・兼業における就業時間管理において、就業時間の通算の考え方については、従来から次のとおり労働基準法で規定されています。 【労働基準法第38条1項】 また、厚生労働省の通達でも 【厚生労働省 昭23.5.14基発769号】 としています。 したがって、例えばA社で所定労働時間を8時間勤務した後、B社で3時間勤務した場合、B社での3時間は時間外労働となります。また、この場合の3時間の時間外労働に対する割増賃金はB社が支払い義務を負うことになります。 以上のことから、企業は、副業・兼業を容認していく際に、副業・兼業の有無や、副業・兼業先の就業時間などを労働者に申告させ把握しなければ、未払い賃金が発生する可能性があります。 なお、個人事業主として、請負契約などを締結して兼業・副業を行う者や労働基準法の管理監督者にあたる者は、労働基準法に規定する労働時間が適用されませんが、いずれも形式だけで労働実態として労働基準法が適用される者と変わらない働き方の場合は、原則どおり、労働時間の管理、通算が必要ですので注意が必要です。 (2) 健康管理 もう1つの問題が、健康管理です。労働安全衛生法第66条では、使用者は常時使用する労働者に健康診断を受診させる必要があります。「常時使用する労働者」とは、次の要件を満たす者です。 【平成26年7月24日付基発0724第2号】 以上の要件を満たすか否かは各事業場で判断されるため、副業・兼業先の労働時間の通算は不要となっていますが、副業・兼業を推奨しているような企業の場合は、健康診断等の必要な健康確保措置を講じることが適当であるとされています。 したがって、必要な健康管理を行い、過重労働や健康障害を防止するために、本業と副業・兼業先双方において、時間外・休日労働などを把握し調整する仕組みづくりが重要となります。 * * * 次回は、副業・兼業の制度設計時の留意点、就業規則等の具体的な規定の仕方について説明していきたいと思います。 (了)
税理士のための 〈リスクを回避する〉 顧問契約・委託契約Q&A 【第10回】 「顧問契約の解除に関するトラブル」 弁護士・税理士 米倉 裕樹 弁護士・ 関西大学法科大学院教授 元氏 成保 弁護士・税理士 橋森 正樹 Q A税理士とB顧客との顧問契約には、解約告知に関し、以下の規定が存在する。 B顧客は些細なことで声を荒げたり、発言内容が日によって二転三転することが続いたため、A税理士は本顧問契約第5条第2項に基づき、B顧客との顧問契約を即時解除すると通知したところ、B顧客からは、決算時期なので業務を継続せよと要求された。 A 1 総論 税理士と顧客との顧問契約は、準委任契約に該当するところ(※1)、当事者間の信頼関係を基礎として成立し存続するという委任契約の中核的性質に鑑みれば、本件解除規定の解釈も、その性質に沿った形でなされるべきである。 (※1) 民法第656条により準委任についても委任に関する規定が準用される。 もともと民法の規定(民651)は、理由を告げることなく即時の解除を認めているのに対し、本顧問契約第5条第1項は、3ヶ月の予告期間を要する点において民法第651条が変更されている。 同様に、同条第2項本文については、やむを得ない事情の告知を要する点において、同条第2項ただし書については、相手方の不利な時期であるかを問わず、帰責事由のある側に損害賠償義務を課し、賠償額の予定を定めた点においてそれぞれ民法第651条が変更されている。 同条が任意規定である以上、当事者間においてこのような特約を設けること自体は有効である。 以上を前提に、〔Q①〕及び〔Q②〕につき検討する。 2 〔Q①〕について 当事者間の信頼関係が損なわれた場合には容易に契約関係の解消を認める民法第651条の趣旨からすれば、本顧問契約第5条第2項本文の即時解除についても、解除そのものについてはそれを認めるものとして解釈されるべきである。 最高裁昭和58年9月20日判決においても、 と判示している。 (※2) 「受任者の利益」とは受任者がその利益を享受することにつき、委任者がこれを承認しなければならない何らかの関係が存在するものであることが必要であり、弁済充当のための取立委任などがこれに該当し、専ら報酬を得ることによるものは除かれる。そのため、仮にB顧客のほうから即時解除した場合でも、期間満了までの残報酬をもって受任者であるA税理士の利益をも目的とした契約であるとはいえず、B顧客による即時解除は可能である。なお、債権法改正後の民法第651条では、受任者の利益をも目的とした委任契約でも即時解除は認めた上で、損害賠償にて処理している。 上記のとおり、本顧問契約第5条第2項本文は、やむを得ない事情の告知を要する点において民法第651条第1項を修正しているに過ぎないため、やむを得ない事情の告知を行うことによってA税理士は本顧問契約を即時解除することができる。 この点、やむを得ない事情が生じた場合でなければ、たとえ告知を行ったとしても即時解除は認められないのではないか、との疑問も生じるが、当事者間の信頼関係を基礎とする委任契約の性質に照らし、即時解除権の行使の要件を限定的に解することは相当ではない(大阪高判平成27年4月9日)。 そのため、損害賠償の点はさておき、解除に至ってもやむを得ないとA税理士が考える事情をB顧客に告知することで本顧問契約を即時解除することは可能である。 なお、「やむを得ない事情が生じた場合に限り」との文言からは当事者間で疑義が生じる可能性を否定できないため、本顧問契約第5条第2項本文については、以下のように修正しておくことが好ましい。 ただし、民法第651条第2項本文では、「当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。」と規定している。 ここでいう「不利な時期」とは、委任者が直ちに自分で事務の処理を開始することもできず、また他人に事務を処理させることもできない時期を意味するところ(我妻榮、有泉亨、清水誠、田山輝明著『第4版我妻・有泉コンメンタール民法 総則・物権・債権』日本評論社、2016年、1205頁)、本件でも、B顧客が決算処理を開始できず、また他の税理士に処理させることもできない時期に即時解除を行った場合には、それによりB顧客が被る損害をA税理士は賠償しなければならない。 もっとも、その場合でも、民法第651条第2項ただし書では、「やむを得ない事由があったときは、この限りではない。」としているため、B顧客による言動等により信頼関係が破壊されているような場合には、「やむを得ない事由」があったとしてA税理士が損害を賠償する必要はない。 なお、「不利な時期」に即時解除がなされたことの立証責任はB顧客にあり、「やむを得ない事由」の立証責任はA税理士にある。 3 〔Q②〕について 上記のとおり、本顧問契約第5条第2項ただし書は、相手方の不利な時期であるかを問わず、帰責事由のある側に損害賠償義務を課し、賠償額の予定を定めた点において民法第651条が変更されているが、本顧問契約第5条第2項ただし書に基づく損害賠償額が最大180万円(15万円×12ヶ月)に及び得ることに鑑みれば、同ただし書での「一方の責に帰すべき事由」は、専らまたは主として一方当事者の責に帰すべき事由であることを要するというべきである(大阪高判平成27年4月9日)。 そのため、本件でも、B顧客の言動の要因が専らまたは主としてB顧客自身にあると認められるような場合には、月額顧問報酬に契約期間の残月数を乗じた金額を損害賠償として請求できる。 なお、「やむを得ない事情が一方の責に帰すべき事由により生じた」ことの立証責任は、その文言上、損害賠償を請求する側、すなわちA税理士にある。 (了)
〔“もしも”のために知っておく〕 中小企業の情報管理と法的責任 【第3回】 「事務所内に保管していた電子媒体が盗まれ個人情報が流出した場合」 弁護士 影島 広泰 -Question- 事務所の鍵が壊され、机の上に出していた顧客の銀行口座の情報が入ったUSBメモリが盗まれて、情報が流出してしまいました。責任を問われるでしょうか。 -Answer- 鍵のかかるキャビネット等に保管していなかったことで管理体制が不十分であったとされる可能性がありますので、注意が必要です。 個人データが保存されている媒体が盗まれてしまった場合、通則ガイドラインが定める安全管理措置のうち「物理的安全管理措置」(下記表の⑤)を果たしていたかどうかが問われることになる。 ◆個人情報保護法のガイドラインが定める安全管理措置(概要) (※) ①~④については【第2回】で解説 ⑤ 物理的安全管理措置 「物理的安全管理措置」とは、個人データが保存された媒体等から情報の漏えい、滅失、毀損が発生しないよう、「物理的」な措置を講じる義務のことである。 具体的には、 の4つが義務付けられている。以下、順にポイントを説明する。 (1) 個人データを取り扱う区域の管理 サーバ等の重要なITシステムが管理されている場所のことを「管理区域」、個人データを取り扱う事務を実施する区域のことを「取扱区域」といい、それぞれで適切な管理を行わなければならない。 通則ガイドラインでは、「管理区域」の措置としては「入退室管理及び持ち込む機器の制限等」が例示され、「取扱区域」の措置としては「壁又は間仕切り等の設置、座席配置の工夫、のぞき込みを防止する措置の実施等による、権限を有しない者による個人データの閲覧等の防止」が例示されている。 マイナンバー法のガイドラインが公表された際に、「管理区域」と「取扱区域」という新しい概念が登場し、企業においては人事や経理のオフィスを「取扱区域」として間仕切りを設置したり、税理士事務所などでは事務所全体を「管理区域」兼「取扱区域」として入退室管理を実施するなどの対応をしたという記憶が新しいところであろう。 今回の改正個人情報保護法のガイドラインで、マイナンバーのガイドラインで登場した「区域の管理」という概念が、個人情報保護法においても登場したということである。 「管理区域」とは、要するにサーバルームのことであり、サーバルームには鍵くらいはかかっているであろうから、「管理区域」の対応はできている会社が多いと思われる。 問題は「取扱区域」である。今どき、個人データを取り扱っていないオフィスなど存在しないであろうから、ほぼ全てのオフィスが「取扱区域」になってしまう。そうなると「壁又は間仕切り等の設置」などを実施することは現実的ではない。 この点、個人情報保護委員会は、ガイドラインのQ&A「Q7-15」で以下の措置が「取扱区域」での適切な管理に当たると例示している。 これらの措置は、かなり現実的であると思われる。社内で、「パソコンは、離席時にはパスワード付きスクリーンセーバーを起動しましょう」、「個人データを机の上に放置して帰宅してはいけません(クリアデスクの原則)」などの方策を徹底すればよいからである。 (2) 機器及び電子媒体等の盗難等の防止 盗難等の防止に関しては、通則ガイドラインでは鍵のかかる場所に保管するなどの措置が例示されている。 盗まれては困るモノは鍵を掛けて保管するというのは基本中の基本であり、重要性の高い対策であるといえる。 もっとも、あらゆる個人データを金庫に保管することはできないであろうから、ガイドラインに列挙されている措置について、「いったいどこまで対応したらよいのか」、というのが企業が抱える一番大きな悩みである。 この点について、通則ガイドラインは以下のとおり述べている。 (※) ①から④の番号は、筆者による追記 上記は情報管理にとって極めて重要なポイントである。 つまり、ガイドラインに列挙されている措置をどの「深さ」でやるかは、「本人が被る権利利益の侵害の大きさを考慮し」、「リスクに応じて」考えるべきであり、それでよいとされているのである。 例えば、同じ氏名と住所という情報であっても、それが顧客の自宅の住所である場合と、取引先のオフィスの住所である場合では、漏えいした場合に本人が被る権利利益の侵害の程度は大きく異なる。 社内の全ての情報を同レベルで管理することは無理であるし、ガイドライン上もそこまでは求められていない。つまり、社内の情報のうち、「これは漏えいしたら本人が困る」という情報を重点的に管理すればよいのである。 したがって、冒頭の質問の例でいえば、通常は事務所に鍵がかかっていれば「盗難等の防止」として十分であるといえるであろうが、それが非常にセンシティブな情報であった場合(例えば、顧客の銀行口座の残高や給与額が記載されているような場合)であれば、鍵を掛けたキャビネットに保管しておくべきであったと判断されることもあり得る、ということになる。 (了)
AIで 士業は変わるか? 【第18回】 「AIで税理士業は変わるか」 デロイト トーマツ税理士法人 パートナー 税理士 橋本 純 今後、AI(人工知能)を中心とした技術開発によって、税務の世界、特に税理士を取り巻く世界はどのように変化するか、また変わらないものは何であろうか。 1 AIの進化と税務への関わり ① AIに取って代わられる職業 皆さんもご存知かもしれないが、「AIの進化により、将来なくなるかもしれない職業は何か?」といった情報は、しばしば巷で見聞きするであろう。そのリストに必ず上位にランクされている職業に税理士がある。 おそらくそれら記事を書いている者の多くが参考にしている元データは、「THE FUTURE OF EMPLOYMENT」というイギリスのオックスフォード大学のオズボーン博士らが書いた論文であろうと思われる。その論文では、「税理士」とは書かれておらず、「税務申告書作成者(Tax Preparers)」となっているものの、それが「税理士」として巷では言われているものになる。 確かに、税金の計算は、論理的に行われるものであるし、誰が計算しても、同じ前提であれば同じ金額が算定されるように税法で規定されているものであるから、早期より税務申告書作成ソフトが普及したように、税務AIも普及をして、その結果、税務申告書作成はすべてAIに置き換わってしまう、という想定は容易につく。 この予測を前提とすると、将来なくなるかもしれないと言われる職業をわざわざ目指す者も減ってくるであろうし、事実、わが国では、過去数年にわたって税理士試験の申込者数は減少しており、今後もその傾向が続くとすると、日本の税理士業界にとっても人材確保の面で先行きが危ぶまれる。 だからこそAIを活用しなければならないとも言えるし、そもそも労働生産人口が減少する中では税理士業界に限らずAIの活用は避けて通れない議論である。では、「果たして本当にAIにより税理士は脅威に追い込まれるのか?」を次項以降で考察する。 なお、余談であるが、税理士試験申込者数の減少は、税理士試験の合格者数が変わらない限り、合格率の相対的な上昇につながる話であり、真剣に勉強する者にとっては、むしろ試験には合格しやすくなっているという点で税理士試験の魅力が上がっているかもしれない、とは言いすぎであろうか。 ② 税理士の仕事がAIに取って代わられるか? そもそも税理士の立場からすると、確かに税務申告書作成は業務上重要な位置を占めているもの、我々はそれのみを業としているわけではなく、むしろ税務申告書に反映する前の会計上の取り扱いや、会計処理以前の取引形態の相談、契約書への反映のさせ方などの相談業務への対応が、より高い比重を占めているはずである。 これら相談業務において我々が最も時間をかける点は、『その取引や事案の前提条件は何か』といった理解である。これら前提条件の理解などをAIが代替して置き換わる、といった想定はオズボーン博士もしていない。その予測では、比較的単純な判断あるいは定型的な判断が置き換わることが前提であり、我々の業務で日常触れているような複雑な経済事象を十分理解して判断することは、当面の間AIにはできないと思われる。 したがって、我々が日ごろクライアントから受けるようなレベルの税務相談業務が主である限り、税理士業務がAIに取って代わられることはないと考える。少なくとも、前提条件を理解し、その条件を整理する部分までは人間が行う分野であり、税務AIは教科書的な回答をするための補助にすぎない使い方に留まるであろう。それでも、うまい使い方をすれば、相当に有用であるはずである。 また、仮にAIにより税務申告書作成業務の一部が置き換わったとしても、それは、昔、手書きの申告書作成に一生懸命であった計理士が(いかにきれいに数字を書くか、桁をそろえるかなどもその一部であったろう)、税務申告書作成ソフトを使うようになって、果たして廃業に追い込まれたか?と考えてみるとよい。 決してそのような事態は起きなかったわけであるし、税理士としての職分にも何ら変化は起きなかったわけであるから、税務申告書作成がAIにより自動化されたとしても、脅威にはならず、むしろ利便性を享受できる、といった前向きなとらえ方をすればよいと思う。 したがって、税理士の業務において、AIは脅威である、といった見方は間違いで、むしろ有効活用すべきツールである、と考えるべきであるし、その利便性を追求すべく努力すべきである。 ③ 国税の取り組み 日本の国税庁は、平成29年6月に、「税務行政の将来像~スマート化を目指して~」という国税の将来あるべき姿の考察を発表している。その中では、以下のように複数にわたり、AIの活用をうたっている。 上記のいずれも、現段階では実現していないし、今後2~3年で実現するようなものでもないが、5~10年後を考えると、一部が実用化されていると想定される。国税がAIの活用で目指しているものは、それにより限られた人的資源をより高度な業務(調査など)へ転用させることである。 国税がこのような取り組みをすでに構想として持っている以上、民間の税理士が同等あるいはそれ以上の対応を目指すことは当然である。いずれも視点は「業務の高度化」のためのAIの活用であり、比較的付加価値の低い業務あるいは時間がかかる業務を置き換えることを目標としている。税理士としても、同様の視点でAIの活用を考えるべきであろう。 ④ AIとの競合 高度な相談業務を執り行えるAIが出現した場合(前提条件などは人間が整理整頓したうえで質問等を投入することが必要と考えられるものの)、そのAIは税理士との知識レベルと競合するであろうか。おそらく、答えは「競合する」あるいは「凌駕する」であろう。 AIの学習量には制限がないのであるから、教科書的な質問対応に限れば、巷で出版されている問答集のすべてや、あるいは条文もすべて覚えたうえで回答を導き出そうとすることは、AIであれば可能である。税理士は生身の人間である以上、すべての条文を丸暗記している税理士などいない。よって、特定の分野に限っては、競合あるいは脅威である、と言えるだろう。 しかし、繰り返しになるが、企業あるいは個人が直面するあらゆる経済事象の背景を理解し、またその取引を行う心理背景、経済事情なども理解したうえで、回答を導き出すことは、人間ならではの能力であるし、その人間としての判断はAIに置き換わることはないだろう。したがって、やはり、AIとは競合するのではなく、活用する、といった姿勢で臨むべきである。 2 税理士としてあるべき姿とは ① 税理士の仕事のスタイルの変化 将来的に申告書作成がAIなどにより自動化すると、申告書作成プロセスのノウハウや、ソフトウェアの使い方、はたまた正確な電卓のたたき方、調書の作成など、従来、若手が学んでいた取り組みはだんだん不要になるだろう。 自分では申告書作成は行わない(ただしチェックはする)という税理士が増えてくると、相対的に、相談業務の比重が高まるはずである。それは税理士としての本分、税法に関わる法律家、といった側面が強まることにつながるし、税理士として望ましい方向性になると思われる。 ② AIに代替されない税理士としての役割 まずは、税法をしっかり理解することである。AIがどんなに進化した世界になっても、税法自体がなくなることは想像できない。また、AIの回答は100%正解ではない、という前提では、必ず専門家がチェックするプロセスが残されるはずである。また、そもそも税法を理解していなければ、AIにデータの正しい投入もできないし検証もできない。 したがって、税理士としては、「税法の専門家」として、条文の理解に努める重要性がますます高まるものと思われる。 ③ 税理士を目指す者へのメッセージ 冒頭に記載した通り、巷では「税理士」はなくなる職業の上位にランクされる常連であり、したがって若者がこれから目指す職業ではない、と思われる者も多いであろう。しかし、現場の第一線の税理士としては、そのような世界は来ないと考える。 税理士がなくなる世界が来たときは、いわゆる「シンギュラリティ」が訪れたときであり、税理士がなくなることを悲しんでいる場合ではないのだから、それを考えても仕方がない。 現在の技術予測を前提とすれば、税理士業界は、むしろ「AIを有効活用できる最前線にいる」と捉えて、これからの変化を楽しめばよいだろう。 今後数十年変わらないであろう職業の世界を楽しむか、大きく変わっていく世界を楽しむかは個人のし好の問題もあろうかと思うが、人間社会は進化していく、といった視点で、職業上の変化を味わいたいし、その最前線にある税理士業界は、きっと他の職業よりも楽しい職業かもしれない、と思いたい。 (了)
《速報解説》 国税庁、「平成30年分給与所得の源泉徴収票の記載のしかた」等を公表 ~配偶者控除・配偶者特別控除の見直しを受けた記載上の留意事項・記載例を示す~ 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 国税庁は5月31日付けで、以下の情報を公表した。 平成30年から適用される配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しに伴い、源泉徴収票の項目名や記載内容も平成30年分から変更される。今回公表された情報には、変更後の源泉徴収票の記載要領と記載に当たっての留意事項が説明され、記載例も示されている。 本稿では、配偶者控除と配偶者特別控除の見直しの概要をまとめた上、「給与所得の源泉徴収票」について、変更された項目と記載に当たっての留意事項の解説を行う。 なお、金額はすべて所得金額で記載する。給与のみの場合に給与収入ベースでいくらになるかについては、次の表をご参照いただきたい(給与所得=給与収入-給与所得控除額)。 また、平成30年度税制改正における所得控除の見直し(平成32年から適用)については下記拙稿を参照されたい。 【1】 配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し (1) 見直しの概要 平成30年分の所得税(住民税は平成31年分)から、配偶者控除及び配偶者特別控除について次の見直しが行われている。 ① 配偶者控除の適用に、所得者本人の所得制限を設定(所法83①) ② 配偶者特別控除の適用対象者の拡大(所法83の2①) (※) 合計所得金額85万円以下の場合の控除額は配偶者控除と同額。 ③ 所得者本人の所得に応じ控除額が逓減する仕組みの導入(所法83①、83の2①) (※) 改正前後ともに、配偶者特別控除は、所得者本人の合計所得金額が1,000万円以下でなければ適用できない。 〈参考〉 平成30年分以後の配偶者控除額及び配偶者特別控除額の一覧表 (※) 国税庁ホームページより (2) 源泉徴収及び年末調整における配偶者の取扱い ① 源泉徴収における取扱い 平成30年1月以後は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(以下、扶養控除等申告書という)に源泉控除対象配偶者がいる旨の記載がある場合には、源泉徴収を行うときの扶養親族等の数に1人を加算する(所法185①)。 1人を加算する対象は、源泉控除対象配偶者であることから、配偶者控除の対象となる配偶者だけでなく、配偶者特別控除の対象となる配偶者のうち控除額が38万円となる者も含まれることとなる。 また、同一生計配偶者が障害者又は同居特別障害者に該当する場合には、これらの一に該当するごとに扶養親族等の数に1人を加算する(所法187)。 〈参考〉 配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しにより、所得税法上、配偶者に関し3つの用語が定義されている(所法2①三十三・三十三の二・三十三の三・三十三の四)。 (※1) 配偶者控除額又は配偶者特別控除額 (※2) 改正前の控除対象配偶者とは定義が異なる。改正前は、控除対象配偶者の定義に居住者の合計所得金額の要件は設けられていなかった。控除対象配偶者のうち70歳以上の者を、老人控除対象配偶者という。 (※3) いずれも、青色事業専従者等は除かれる。 ② 年末調整における取扱い ①で示したとおり、毎月の源泉徴収では、配偶者が障害者である場合を除くと、源泉控除対象配偶者がいる場合のみ徴収税額に控除額が反映されている。 配偶者控除又は配偶者特別控除の適用対象となる配偶者は、源泉控除対象配偶者に限られない。また、改正後は、所得者本人の合計所得金額と配偶者の合計所得金額の両方が控除額に影響するため、給与等の支払者は所得者本人と配偶者の合計所得金額を正確に把握する必要がある。これらの事情から、平成30年分以後の年末調整で配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受ける場合には、「給与所得者の配偶者控除等申告書」(以下、配偶者控除等申告書という)を、その年最後の給与等の支給を受けるまでに給与等の支払者へ提出することされた(所法195の2)。 【2】 「給与所得の源泉徴収票」の変更点(概要) 「平成30年分 給与所得の源泉徴収票」の項目名及び記載内容のうち、平成29年分から変更されているものは次のからである。 (※) 国税庁ホームページより 【3】 各変更点の解説 (源泉)控除対象配偶者の有無等 「(源泉)控除対象配偶者の有無等」の欄には、次の記載が求められる。 「有」欄の(ア)と(イ)は、年末調整を受けているか受けていないかの点で違いがある。(イ)に「〇」を記載するのは、源泉控除対象配偶者がいる受給者が年の中途で退職した場合等が考えられる。 配偶者(特別)控除の額 配偶者控除等申告書に基づいて計算された配偶者控除額又は配偶者特別控除額を記載する。 平成29年分以前の様式では、この欄は「配偶者特別控除の額」であった。平成30年分以後は、配偶者特別控除の額だけでなく配偶者控除の額もこの欄に記載することになる。 (源泉・特別)控除対象配偶者 控除対象配偶者又は配偶者特別控除の対象となる配偶者の氏名及びマイナンバー(※)を記載する。また、当該配偶者が非居住者である場合には、「区分」欄に「〇」を記載する。なお、年末調整を受けていない場合(年の中途で退職した受給者等)には、源泉控除対象配偶者の氏名及びマイナンバー(※)を記載する。 (※) マイナンバーは、受給者交付用の源泉徴収票には記載しない。 平成29年分以前の様式では、この欄は「控除対象配偶者」であり、年末調整で配偶者特別控除の適用を受けた配偶者の氏名等は摘要欄に記載していた。平成30年分以後は、控除対象配偶者だけでなく、年末調整で配偶者特別控除の適用を受けた配偶者の氏名等もこの欄に記載することになる。 配偶者の合計所得 控除対象配偶者又は配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額を記載する。なお、年の中途で退職した受給者が源泉控除対象配偶者を有している場合には、扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者の所得の見積額を記載する。 平成29年分以前の様式でもこの欄は「配偶者の合計所得」であった。しかし、記入するのは年末調整で配偶者特別控除の適用を受けた配偶者の合計所得金額であり、控除対象配偶者の合計所得金額は記載されていなかった。項目名は同じであるが、記載する対象が変わっていることに注意が必要である。 摘要 控除対象配偶者以外の同一生計配偶者が、障害者、特別障害者又は同居特別障害者に該当する場合に氏名を記載する。 障害者控除の適用対象となる配偶者は、障害者又は特別障害者に該当する同一生計配偶者である(所法79②)。③欄に氏名が記載される配偶者は、控除対象配偶者又は配偶者特別控除の対象となる配偶者(年末調整を受けていない場合は、源泉控除対象配偶者)であるため、障害者に該当する同一生計配偶者のうち控除対象配偶者以外の者については氏名が記載されない。 そこで、控除対象配偶者以外の同一生計配偶者が障害者、又は特別障害者に該当する場合には、摘要欄に氏名及び同一生計配偶者である旨を記載する(例:「〇〇〇子(同配)」)。 * * * 情報には、以下の記載例が示されているので参考にされたい。 (了) ↓お勧め連載記事↓
《速報解説》 金融庁、「収益認識に関する会計基準」を受け財務諸表等規則を改正 ~「収益認識に関する注記」が新設される~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成30年6月8日、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第29号)が公布された。これにより、平成30年4月13日から意見募集していた公開草案が確定することになる。 これは、平成30年3月30日に、企業会計基準委員会が公表した「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等に対応するものである。 財務諸表等規則等の改正に際して、「「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等に対するパブリックコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方」(以下「コメント対応」という)が公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 1 収益認識に関する注記など 財務諸表等規則8条の32(収益認識に関する注記)として次の規定を設ける。 連結財務諸表規則、中間連結財務諸表規則などの改正は、主に財務諸表等規則の改正に伴う準用規定の改正である。 上記の他、たな卸資産及び工事損失引当金の表示の改正(財規54条の4)、売上高の表示方法の改正(財規72条)、割賦販売売上高の表示方法の削除(財規73条)がある。 2 財規ガイドラインの改正 改正後の主な財規ガイドラインは次のとおりである。 《8の2-7》 規則第8条の2第7号に規定する収益及び費用の計上基準には、ファイナンス・リース取引に係る収益及び費用の計上基準等、財務諸表について適正な判断を行うために必要があると認められる事項を記載するものとする。また、財務諸表提出会社が「収益認識に関する会計基準」を適用している場合には、その旨を記載するものとする。 (※) 改正前の財規ガイドライン8の2-7では、工事契約に関する工事進捗度を見積るために用いた方法の記載が求められている。 《8の32》 規則第8条の32に規定する注記とは、「収益認識に関する会計基準」が適用される場合の注記とし、同条に規定する顧客、契約及び履行義務とは、「収益認識に関する会計基準」にいう顧客、契約及び履行義務をいうものとする。 《72-1》 規則第72条第1項に規定する売上高については、各企業の実態に応じ、適切な名称を付すことに留意する。 (※) 改正前の財規ガイドラインでは、作業くず、手持原材料又は貯蔵品の売却に関する取扱いが規定されている。 《72-1-2》 削除する。 (※) 改正前の財規ガイドラインでは、売上値引、売上割引、売上割戻について規定している。 なお、売上割引については、改正後の財規ガイドライン93において、「売上割引(代金支払期日前の支払に対する売掛金の一部免除等をいう。)」と規定されている。 《79》 規則第79条の仕入値引とは、仕入品の量目不足、品質不良、破損等の理由により代価から控除される額をいい、代金支払期日前の支払に対する買掛金の一部免除等の仕入割引と区別するものとする。なお、一定期間に多額又は多量の取引をした得意先に対する仕入代金の返戻額等の仕入割戻は、仕入値引に準じて取扱うものとする。 連結財規ガイドライン、中間連結財規ガイドラインなどの改正は、主に財規ガイドラインの改正に伴う準用規定の改正である。 3 コメント対応の概要 公開草案に対しては、2団体より2件のコメントが寄せられたとのことである。 コメント対応(No.1)では、財務諸表等規則等の改正案では、企業会計基準79項の契約資産、契約負債又は債権に関する表示(同会計基準88項に規定する内容も含む)が示されていないことへのコメントに対して、次のように考え方を示している。 また、コメント対応(No.2)では、財務諸表等規則ガイドライン72-1の売上高の勘定科目に関するコメントに対して、次のように考え方を示している。 Ⅲ 適用時期等 公布の日(平成30年6月8日)から施行する。 経過措置が設けられているので、実際の適用に際しては注意が必要である。 (了) ↓お勧め連載記事↓
2018年6月7日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.271を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
monthly TAX views -No.65- 「軽減税率と価格設定の自由度」 東京財団政策研究所研究主幹 中央大学法科大学院特任教授 森信 茂樹 新聞情報によると、6月中旬に予定されている「骨太の方針」に、「2019年10月1日の消費税率引上げにあたって、税率引上げの前後で、需要に応じて、事業者の判断によって、価格の設定が自由に行われることで、駆け込み需要やその反動減が抑制されるような方策について、具体的に検討する。」という文言が入るという。 これを受けて「価格設定に関するガイドライン」が新たに作られるという。「税率引上げ前」に本体価格を上げるとしても、それは「駆け込み需要などが見込まれるから強気の価格設定で行こう」という(事業者)の価格設定・判断であり、便乗値上げとはいえない、ということを明確化するのであろう。 また、「税率引上げ後」に、エコポイントや各種減税等の優遇措置(これから年末にかけて検討される)があることを説明せずに、駆け込み需要をあおるような行為も牽制されるようだ。 これは、筆者が本連載No.63で述べたように、2月20日の経済財政諮問会議での「消費増税に伴う経済の変動を少なくする方策について、欧州の事例にも学びつつ検討するように」という安倍総理の指示を受けたものである。背景には、消費増税に伴う経済変動が大きいのはわが国特有の事情なので、それを是正したいという事情がある。 * * * さて、以下は筆者からのクエスチョンである。 2019年10月から消費税率が10%に引き上げられる際には、食料品・新聞購読料について8%の軽減税率が導入される。一方、レストランサービスには標準税率の10%がかかる。そこで、コンビニでコーヒーを買う場合、イートインするのかテイクアウトするのかにより税率が異なり、事業者は、正しい消費税申告を行うために、顧客にその判断を尋ねて適用税率を区分する必要がある。 問題は、その際の価格である。税抜き100円のコーヒーを例にとって考えてみると、テイクアウトの場合は108円、イートインすると110円というのが「正しい」価格設定ということになるのだろうか。 このような事例について、ドイツのマクドナルドでは、テイクアウトでもイートインでも、税率は異なるが値段は同じに設定している。 値段を変えると、お客さんの常として、値段が安い方のテイクアウト(軽減税率)と言って購入し、その場で飲食(イートイン、標準税率)することを防ぐためだ、と説明されている。 * * * わが国で、来年10月以降、コンビニなどでこの点がどのような値付けになるのだろうか、大変興味深い。 「当店では、イートインもテイクアウトも同じ値段」というお店が現れたら、マスコミや国民は、「益税」、「損税」、「過剰転嫁」だと言うのであろうか。今回そのような議論が出ないようにと、事業者の価格設定の自由度を高めるのだから、そのような議論はやめるべきだろう。 (了)