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〈平成30年度改正対応〉賃上げ・投資促進税制(旧・所得拡大促進税制)の適用上の留意点Q&A 【Q5】「国内設備投資額、当期償却費総額の意義」

〈平成30年度改正対応〉 賃上げ・投資促進税制(旧・所得拡大促進税制)の 適用上の留意点Q&A 【Q5】 「国内設備投資額、当期償却費総額の意義」   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   [Q5] 平成30年度の税制改正により新たに適用要件として定められた「国内設備投資額」及び「当期償却費総額」とは、具体的にどのように集計するのでしょうか。   [A5] 国内設備投資額及び当期償却費総額のそれぞれについて定義規定が設けられており、適用年度における一定の額を合計して集計することとなります。 【解説】 (1) 国内設備投資額の意義 本税制における「国内設備投資額」とは、法人が適用年度において取得等をした国内資産で、当該適用年度終了の日において有するものの取得価額の合計額をいう(措法42の12の5③八)。 ① 取得等 取得又は製作若しくは建設をいい、合併、分割、贈与、交換、現物出資又は現物分配、代物弁済による取得を除く(措令27の12の5⑯)。 本税制は設備投資を促進するための税制であるから、投資を伴わない資産の増加は除外する趣旨と考えられる。 ② 国内資産 国内にある当該法人の事業の用に供する機械及び装置その他の減価償却資産(時の経過によりその価値の減少しないものを除く)をいう(措令27の12の5⑰)。 この点、使用可能期間が1年未満であるもの又は取得価額が10万円未満であるもの(いわゆる少額減価償却資産)並びに一括償却資産も「減価償却資産」に含まれることから(法令133、133の2)、これらも「国内資産」に含まれる。 ここで「事業の用に供する」という表現は、実際に事業の用に供していることを必要としていないことに留意が必要である。 事業供用が必要な場合には「事業の用に供した機械及び装置・・・」、という表現になるべきであるし、これに続く「その他の減価償却資産」のカッコ書きからも、法人税法施行令第13条における減価償却資産の定義のカッコ書きに含まれている「事業の用に供していないもの」が除外され、単に「時の経過によりその価値の減少しないもの」のみが残されていることからも明らかである。このことは新たに設けられた通達においても明らかにされている(措通42の12の5-7)。 したがって以下のものは、「国内資産」に該当しないものと考えられる。 ●棚卸資産 ●有価証券(法法2二十一) ●繰延資産(法法2二十四) ●国外事業所にある減価償却資産 ●土地 ●取得価額が1点100万円以上の美術品等のうち、時の経過によりその価値が減少することが明らかなものを除いたもの ●取得価額が1点100万円未満の美術品等のうち、時の経過によりその価値が減少しないことが明らかなもの また、取得等した無形固定資産が国内資産に該当するかどうかの判定を行う場合には、下表のように取り扱われることが通達で明らかにされた(措通42の12の5-6)。 なお、適用年度中に取得等した国内資産であっても、適用年度終了の日の前に除売却したものの取得価額は「国内設備投資額」に含まれないので留意が必要である(措法42の12の5③八)。 (2) 当期償却費総額の意義 法人がその有する減価償却資産につき適用年度においてその償却費として損金経理をした金額をいう(措法42の12の5③九)。 償却費として損金経理をした金額には、当該適用年度の決算の確定の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法により特別償却準備金として積み立てた金額を含み、償却超過額の当期認容額、及び合併、分割等により移転を受けた減価償却資産に係る合併等事業年度前の損金未算入額は含まれない。また、法人税基本通達7-5-1又は7-5-2の取扱いにより償却費として損金経理をした金額に該当するものとされる金額が含まれる(措通42の12の5-11)。 当期償却費総額は、税務上の損金算入限度額ではなく、その母集団である「償却費として損金経理をした額」を対象とした概念であることに注意しておきたい。税務上は償却超過額として否認された部分も「当期償却費総額」に含まれることとなるから、前期以前の償却超過額の当期認容額は「当期償却費総額」から除かれているのである。また合併等事業年度前の損金未算入額についても、自己の設備投資に対応する償却費ではないことから、同じく「当期償却費総額」から除かれていると考えられる。 また、償却費として損金経理をした額には、少額減価償却資産又は一括償却資産の損金経理額も含まれると考えられる。 (3) 決算・申告上の留意点 設備投資に係る要件の判定に関し、「当期償却費総額」が確定する前であっても、前事業年度末の固定資産台帳(税務版)に基づいて翌期償却見込額を集計することは比較的容易と考えられる。 そこで、前年度末のデータに基づく翌期償却見込額を「当期償却費総額」とした場合に、適用要件を満たすために必要な国内設備投資額を逆算し、これに適用年度に予定されている設備投資計画と照らし合わせることによって、設備投資に係る要件を満たすかどうかの事前検討を行うことができると考えられる。 (了)

#No. 280(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2018/08/09

〔Q&A・取扱通達からみた〕適格請求書等保存方式(インボイス方式)の実務 【第2回】「適格請求書発行事業者の義務等」

〔Q&A・取扱通達からみた〕 適格請求書等保存方式(インボイス方式)の実務 【第2回】 「適格請求書発行事業者の義務等」   アースタックス税理士法人 税理士 島添 浩   【総論】 適格請求書の様式は、法令で定められていない。 したがって、適格請求書として必要な次の事項が記載されていれば、名称を問わず適格請求書に該当する(手書きの領収書でも可)。   適格請求書発行事業者が、適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書を交付した場合においては、これらの書類の記載事項に誤りがあったときには、これらの書類を交付した相手方(課税事業者に限る)に対して、修正した適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書を交付しなければならない。 また、記載事項に誤りがある適格請求書の交付を受けた事業者は、仕入税額控除を行うために、売手である適格請求書発行事業者に対して修正した適格請求書の交付を求め、その交付を受ける必要がある(自ら追記や修正を行うことはできない)。   登録日から通知を受けるまでの間の取引について、区分記載請求書を交付していた場合には、適格請求書の記載事項を満たしていないため、通知を受けた後、登録番号や税率ごとに区分した消費税額等を記載し、適格請求書の記載事項を満たした請求書を改めて相手方に交付する必要がある。 なお、通知を受けた後に登録番号などの適格請求書の記載事項として不足する事項を相手方に書面等で通知することで、既に交付した請求書と合わせて適格請求書の記載事項を満たすことができる。   【交付義務の免除】 適格請求書の交付義務が免除される公共交通機関特例の対象となるのは、3万円未満の公共交通機関による旅客の運送であり、この3万円未満の公共交通機関による旅客の運送かどうかは、1回の取引の税込価額が3万円未満かどうかで判定する。 したがって、1商品(切符1枚)ごとの金額や、月まとめ等の金額で判定することはできない。   特急料金、急行料金及び寝台料金は、旅客の運送に直接的に附帯する対価として、公共交通機関特例の対象となる。 また、入場料金や手回品料金は、旅客の運送に直接的に附帯する対価ではないので、公共交通機関特例の対象とならない。   卸売市場法に規定する卸売市場において、卸売の業務として出荷者から委託を受けた事業者が行う生鮮食料品等の販売は、適格請求書を交付することが困難な取引として、出荷者から生鮮食料品等を購入した事業者に対する適格請求書の交付義務が免除される。 なお、この場合において、生鮮食料品等を購入した事業者は、卸売の業務を行う事業者など媒介又は取次ぎに係る業務を行う者が作成する一定の書類を保存することが仕入税額控除の要件となる。   農協等の組合員その他の構成員が、農協等に対して、無条件委託方式かつ共同計算方式により販売を委託した、農林水産物の販売は、適格請求書を交付することが困難な取引として、組合員等から購入者に対する適格請求書の交付義務が免除される。 なお、無条件委託方式及び共同計算方式とは、次のものをいう。 また、この場合において、農林水産物を購入した事業者は、農協等が作成する一定の書類を保存することが仕入税額控除の要件となる。   適格請求書の交付義務が免除される自動販売機特例の対象となる自動販売機や自動サービス機とは、代金の受領と資産の譲渡等が自動で行われる機械装置であって、その機械装置のみで、代金の受領と資産の譲渡等が完結するものをいう。 したがって、例えば、自動販売機による飲食料品の販売のほか、コインロッカーやコインランドリー等によるサービスのように機械装置のみにより代金の受領と資産の譲渡等が完結するものが該当することとなる。 なお、小売店内に設置されたセルフレジを通じた販売のように、機械装置により単に精算が行われているだけのものや、自動券売機のように、代金の受領と券類の発行はその機械装置で行われるものの資産の譲渡等は別途行われるようなものは、自動販売機や自動サービス機による商品の販売等に含まれない。   【適格請求書の交付方法】 委託販売の場合、購入者に対して課税資産の譲渡等を行っているのは、委託者なので、本来、委託者が購入者に対して適格請求書を交付しなければならない。 このような場合、受託者が委託者を代理して、委託者の氏名又は名称及び登録番号を記載した、委託者の適格請求書を、相手方に交付することも認められる(代理交付)。 また、次の(イ)及び(ロ)の要件を満たすことにより、媒介又は取次ぎを行う者である受託者が、委託者の課税資産の譲渡等について、自己の氏名又は名称及び登録番号を記載した適格請求書又は適格請求書に係る電磁的記録を、委託者に代わって、購入者に交付し、又は提供することができる。 なお、媒介者交付特例を適用する場合における受託者の対応及び委託者の対応は、次のとおりである。   任意組合等が事業として行う課税資産の譲渡等については、その組合員の全てが適格請求書発行事業者であり、業務執行組合員等が、その旨を記載した届出書を税務署長に提出した場合に限り、適格請求書を交付することができる。 この場合、任意組合等のいずれかの組合員が適格請求書を交付することができ、その写しの保存は、適格請求書を交付した組合員が行うこととなる。 なお、交付する適格請求書に記載する「適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号」は、原則として組合員全員のものを記載することとなるが、次の事項を記載することも認められる。   適格請求書発行事業者が適格請求書発行事業者以外の者と資産を共有している場合、その資産の譲渡や貸付けについては、所有者ごとに取引を合理的に区分し、相手方の求めがある場合には、適格請求書発行事業者の所有割合に応じた部分について、適格請求書を交付しなければならない。   適格請求書には、適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号の記載が必要であるが、登録番号と紐付けて管理されている取引先コード表などを適格請求書発行事業者と相手先の間で共有しており、買手においても取引先コードから登録番号が確認できる場合には、取引先コードの表示により「適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号」の記載があるものと認められる。 また、請求書等に記載する名称については、例えば、請求書に電話番号を記載するなどし、請求書を交付する事業者が特定できる場合、屋号や省略した名称などの記載でも差し支えない。   適格請求書の記載事項である消費税額等については、一の適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理を行う。 なお、切上げ、切捨て、四捨五入などの端数処理の方法については、任意の方法とすることができる。 (注) 一の適格請求書に記載されている個々の商品ごとに消費税額等を計算し、1円未満の端数処理を行い、その合計額を消費税額等として記載することは認められない。   適格請求書発行事業者が発行する請求書に、適格請求書と適格返還請求書それぞれに必要な記載事項を記載して一枚の書類で交付することも可能である。 例えば、当月販売した商品について、適格請求書として必要な事項を記載するとともに、前月分の販売奨励金について、適格返還請求書として必要な事項を記載すれば、1枚の請求書を交付することで差し支えない。 また、継続して、課税資産の譲渡等の対価の額から売上げに係る対価の返還等の金額を控除した金額及びその金額に基づき計算した消費税額等を税率ごとに請求書等に記載することも認められる(純額主義)。   適格請求書は、一の書類のみで全ての記載事項を満たす必要はなく、交付された複数の書類相互の関連が明確であり、適格請求書の交付対象となる取引内容を正確に認識できる方法(例えば、請求書に納品書番号を記載するなど)で交付されていれば、その複数の書類の全体により適格請求書の記載事項を満たすことになる。   区分記載請求書等に登録番号を記載しても、区分記載請求書等の記載事項が記載されていれば、取引の相手方は、区分記載請求書等保存方式の間(平成31年10月1日から平成35年9月30日まで)における仕入税額控除の要件である区分記載請求書等を保存することができるので、区分記載請求書等に登録番号を記載しても差し支えない。   (了)

#No. 280(掲載号)
#島添 浩
2018/08/09

平成30年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第6回】「『大企業に対する租税特別措置の適用除外措置』の創設(その2:連結納税と単体納税の有利・不利)」

平成30年度税制改正における 『連結納税制度』改正事項の解説 【第6回】 「『大企業に対する租税特別措置の適用除外措置』の創設 (その2:連結納税と単体納税の有利・不利)」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   連結納税を採用した場合、大企業に対する租税特別措置の適用除外措置について、次の点で単体納税と比較した場合に有利・不利が生じることとなる。 ① 連結親法人が中小連結親法人に該当しない場合、連結グループ全体で租税特別措置の適用除外措置が適用されてしまう。 連結納税の場合、連結親法人が中小連結親法人に該当しない場合(連結親法人が中小企業者に該当しない場合、あるいは、中小企業者に該当するが連結納税の適用除外事業者に該当する場合)、連結グループ全体が適用除外措置の適用対象となってしまうため、単体納税で適用除外措置の適用対象外となっている連結法人がある場合、不利益が生じる。 [ケース1] 連結親法人の資本金が1億円以下のケース(その1) [ケース2] 連結親法人の資本金が1億円以下のケース(その2) [ケース3] 連結親法人の資本金が1億円超のケース [ケース4] 連結親法人が大規模法人の子会社のケース ② 大企業に対する租税特別措置の適用除外措置の適用要件を連結グループ全体で判定する。 連結グループ全体で適用要件(賃上げ要件、設備投資要件、所得減少要件)の判定を行うため、単体納税において、各連結法人ごとに適用要件を満たしてしまう場合でも、連結納税において、連結グループ全体で適用要件を満たさない場合がある。また、逆に、単体納税において、各連結法人ごとに適用要件を満たさない場合でも、連結納税において、連結グループ全体で適用要件を満たしてしまう場合がある。 [連結納税では租税特別措置の適用除外措置が適用されないケース] ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 [連結納税では租税特別措置の適用除外措置が適用されてしまうケース] ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (了)

#No. 280(掲載号)
#足立 好幸
2018/08/09

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第39回】「南九州コカ・コーラボトリング事件」~最判平成21年7月10日(民集63巻6号1092頁)~

さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第39回】 「南九州コカ・コーラボトリング事件」 ~最判平成21年7月10日(民集63巻6号1092頁)~   弁護士 菊田 雅裕   (了)

#No. 280(掲載号)
#菊田 雅裕
2018/08/09

M&Aに必要なデューデリジェンスの基本と実務-財務・税務編- 【第7回】「運転資本の分析(その5)」-仕入債務-

M&Aに必要な デューデリジェンスの基本と実務 -財務・税務編- 【第7回】 「運転資本の分析(その5)」 -仕入債務-   公認会計士 石田 晃一   ←(前回) | (次回)→   ▷仕入債務の調査 「仕入債務」は支払手形及び買掛金などの営業上の未払債務をいい、M&Aに際しての調査ポイントとしては、買収対象会社(事業)が営業上の債務として認識すべき仕入代金が網羅的に計上されているか否か、すなわち「仕入債務の網羅性」が重要な項目といえる。 非上場会社にあっては、仕入債務の計上科目として「未払金」や「未払費用」が使用されているケースも見受けられることから、こうした債務科目についても合わせて吟味する必要があろう。 仕入債務のデューデリジェンスにおける主な調査手続を挙げると以下のとおりである。   ▷仕入先との決済条件について 上記のうち、「③ 仕入計上に関する会計処理、仕入先との決済条件の把握」に関しては、本連載【第5回】の売上債権の項で述べたのと同様に、仕入債務の決済条件が買収側から見て「正常」な範囲に収まっているか否かの検討は欠かせないポイントといえよう。 例えば長年の取引関係から、特定の仕入先との間では特別な決済条件が許容されているような場合、そうした条件がM&A実行後も継続して適用されるものでなければ、買収に際して思わぬ運転資金負担が生じることになろう。 また、古い商慣習が残る業界や、業績の厳しい会社にあっては、特殊な商慣習が通用しているケースもあろう。例えば地方のホテル/旅館業では、毎月継続的に取引の発生する食材等の仕入先に対して、毎月一部の金額のみを支払い、あえて残額を延払にするケースも見受けられるし、和装業界等ではいわゆる「歩引き」といった商慣習が残っている場合もある。 さらに、特定の仕入先との間で、長期にわたる発注を契約上で確約することで、他社よりも有利な価格/条件での調達を行っている場合もある。こうした長期契約がM&A実行後も継続すべきものであるか否かについても検討が必要となるうえ、契約内容によっては、解約に際して多額の違約金支払等が発生する場合もある。 こうした契約上の課題等については、弁護士等による法務面の調査と連携を図りつつ、状況を把握する必要がある。   ▷計上漏れの起きやすい項目は何か 筆者らのこれまでの経験では、仕入債務の支払は「相手のある話」でもあり、商慣習上も毎月の締め日ごとに仕入先からの請求書が届くことが通常である。支払を失念したまま放置したり、一方的に期日を延期することもできないことから、仕入債務の計上漏れが多額に発見されるケースは(悪意をもった意図的な計上漏れ、すなわち粉飾を除けば)さほど多くはないといえよう。 むしろ多く見受けられるのは、毎月のルーティーンでの請求がなされないような、非経常的に発生する、以下のような取引に起因するものであろう。 【実務事例7-1】 ・年に数回、不定期にしか発生しない仕入取引に関して計上漏れが発生 ・仕入先担当者の入院により、仕入先からの請求忘れによって計上を失念 ・期末に緊急で実施した地方工場の生産現場の保守費用について、本社で計上を失念 ・通常月は少額しか発生しないため期末決算での未払計上の対象となっていなかった取引が、特殊な事情により多額に発生したため計上を失念 ・従来は少額の発生しかなかったため未払計上の対象となっていなかった取引が、近年の経済環境の変化により急速に取引金額が増加していたものの、依然として現金主義による処理を継続 ・年間購買量に基づくボリュームディスカウント・リベートに関する仕入値引等の精算が行われていなかったケース こうした取引であっても、必ず事後的な請求に基づく支払等が行われているはずなので、調査基準日以降の主な請求書を通査し、期間対応にズレの生じている取引を抽出することで、計上漏れを把握することができる。 例えば仕入債務等の科目を経ずに、(借)仕入 (貸)現金 といった仕訳で翌月以降に支払われている取引は、端的に仕入計上漏れに該当するケースが多いといえるので、基準日以降の仕訳データを通査することで計上漏れと思われる取引を抽出することも可能である。 さらに、仕入債務の計上漏れは仕入や外注費等の損益項目の月次推移の異常値等から把握されることも多い。   ▷「融通手形」の振出しにも注意 「融通手形」とは、資金繰りに窮した取引先などからの要請に基づき、実需を伴わずに振り出される約束手形で、受け取った側ではこの手形を銀行で割り引くことで資金繰りに充てるというもので、実質的には資金の貸付取引である。 振り出した側では当然に、手形期日が到来すれば資金が引き落とされるが、受け取った側では実需を伴っていないことから返済の裏付けとなる資金の発生がなく、極めて危険な取引である。 M&Aに際しては、全く見ず知らずの企業を買収するのであるから、こうした危険な取引の有無についても、支払手形の耳を通査すると同時に、仕入/外注費の発生と相関性の見られない取引はないか、慎重に調査する必要があろう。 融通手形の振出しが行われていなくとも、継続取引のある外注先等に対する外注費の期日前支払の事実等がある場合には同様の注意が必要と思われる。 (了)

#No. 280(掲載号)
#石田 晃一
2018/08/09

連結会計を学ぶ 【第24回】「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項等の注記」

連結会計を学ぶ 【第24回】 (最終回) 「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項等の注記」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 本連載の最終回となる今回は、連結財務諸表に関する主な注記について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 連結財務諸表の記載 連結財務諸表の表示方法は、「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号。以下「連結会計基準」という)などで規定されているが、有価証券報告書などを実際に作成する場合には、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という)に規定される様式に従って作成することになる。 連結会計基準は、連結貸借対照表の作成に関する会計処理における企業結合及び事業分離等に関する事項のうち、連結会計基準に定めのない事項については「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号。以下「企業結合会計基準」という)や「事業分離等に関する会計基準」(企業会計基準第7号。以下「事業分離等会計基準」という)の定めに従って会計処理すると規定している(連結会計基準19項、60項)。 このため、連結会計基準を適用する場合にも、例えば、次の規定が適用されることになる(「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(会計制度委員会報告第7号)7-2項)。   Ⅲ 連結の範囲等に関する記載 1 注記の誤りに注意 連結財務諸表規則では、財務諸表等規則と同様に、多くの注記事項が規定されている。 以下では、特に連結財務諸表に関係する注記として、連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項を記載している。 平成30年3月23日に、金融庁が公表した「平成30年度有価証券報告書レビューの実施について」では、財務局等からの質問状には、次の観点も反映しているとのことなので、実際の有価証券報告書における連結財務諸表の記載に際しては、注記の誤りのないように注意する。 2 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 連結の範囲に関する事項その他連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項として、次の事項を注記する(連結財務諸表規則13条)。 3 連結の範囲又は持分法適用の範囲の変更 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項のうち、連結の範囲又は持分法適用の範囲を変更した場合には、その旨及び変更の理由を注記しなければならない(連結財務諸表規則14条)。 連結財務諸表規則ガイドライン14では、連結の範囲又は持分法適用の範囲の変更は、会計方針の変更に該当しないことに留意すること、連結の範囲又は持分法適用の範囲の変更が、当連結会計年度の翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を与えることが確実であると認められる場合には、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を与える旨及びその影響の概要を併せて記載することが規定されている。   Ⅳ 終わりに 「連結会計を学ぶ」は、今回の【第24回】で終了することとなる。 連結財務諸表の作成は、各社の個別財務諸表を基礎に、連結特有の会計処理を用いて作成することから、個別財務諸表の作成と比較して、会計処理等の誤りが生じやすいものである。 「連結会計を学ぶ」では、基礎的な会計処理等に重点をおいて解説しており、今回の連載が少しでも実務に役立てば幸いである。 (連載了)

#No. 280(掲載号)
#阿部 光成
2018/08/09

副業・兼業社員の容認をめぐる企業の対応策と留意点 【第2回】「制度設計時の留意点と就業規則等の規定例」

副業・兼業社員の容認をめぐる 企業の対応策と留意点 【第2回】 「制度設計時の留意点と就業規則等の規定例」   TOMAコンサルタンツグループ(株) TOMA社会保険労務士法人 人事労務指導部 副部長 特定社会保険労務士 渡邉 哲史   前回は、副業・兼業の現状や副業・兼業をめぐる法的ルール、副業・兼業のメリット、デメリットと留意点について説明しました。今回は、副業・兼業先での契約が雇用契約であることを前提に、副業・兼業の制度を設計する際に留意すべき事項と就業規則等の具体的な規定の仕方について解説していきたいと思います。   1 制度設計時に留意すべき事項 実際に副業・兼業の制度を設計する際は、特に次の3点に注意する必要があります。 (1) 副業・兼業を認める際の手続き (2) 本業と副業・兼業の就業時間管理と把握の方法 (3) 健康管理 (1) 副業・兼業を認める際の手続き 【第1回】で述べたとおり、本業の労働時間以外の時間に副業・兼業を行うことは原則として自由ですが、 は、副業・兼業を制限できるとされています。 したがって、企業としては、上記3つの点について問題がないか、副業・兼業を認める上で確認する必要があるでしょう。特に、企業秘密の漏えいについては、万が一発生した場合、企業へのダメージは計り知れません。 そこで社内申請手続きとして、次の点に注意します。 ①の事前申請について、副業を始める前に「事前」に申請させることで、制限対象となるような副業・兼業を行うことがないか確認することができます。 また、厚生労働省ではモデルとして「届出」制としていますが、届出制は、企業に届出をしさえすれば原則として副業・兼業を認めることになります。「申請」の場合は、通常、企業の許可があって副業・兼業を認めることになりますので、会社による裁量的判断ができるように「申請」としておいたほうがよいでしょう。 次に②の秘密保持誓約書ですが、企業としては、企業秘密漏えいが最も避けねばならないことです。したがって、事前申請時に、所定の秘密保持誓約書を一緒に提出させるようにします。 最後に③の副業先での労働条件ですが、副業・兼業先に応募する際の求人票記載の労働条件や、副業・兼業を始める際に受領する雇用契約書等に記載のある労働条件を報告するようにさせます。こうすることで、次に述べる就業時間管理や健康管理をする際に役立てるとともに、企業機密漏えいや競業避止義務に違反しないかを確認します。 (2) 本業と副業・兼業の就業時間管理と把握の方法 前回にも述べたとおり、副業・兼業における就業時間管理において、就業時間は通算されますので、副業・兼業先の就業時間について把握しておく必要があります。これを怠ると、割増賃金の支払い義務の発生や、長時間労働による本業への悪影響が出る可能性があります。 副業先の就業時間を把握する具体的な方法としては、毎月1回、所定のフォーマットで副業先での就業時間を報告させることでしょう。ただし、副業先が長時間労働となる可能性のある業務を含む場合は、毎月1回とせず、毎週1回とするなど、就業時間が長時間になることを早めに把握できるような体制としたほうがよいでしょう。 (3) 健康管理 最後に、健康管理についてですが、健康診断などは本業と副業・兼業先の労働時間の通算を行わないため法的な受診義務はありませんが、(2)での就業時間管理において把握した労働時間が、通算して長時間労働となるような場合、企業としては当該兼業・副業の労働者の健康状態について積極的に把握し、健康確保措置を講じたほうがよいでしょう。 特に、時間外・休日労働が80時間を超えるような長時間労働となっている場合、企業として積極的に医師の面接指導を促すなどの仕組みづくりが重要です。副業・兼業者向けの相談窓口設置のほか、異常な所見があるような場合、必要に応じて会社指定医や産業医の受診を勧奨することなどを検討します。 仮に、副業先での長時間労働が原因で病気等を発症した場合、原則として本業は責任を負いませんが、本業の企業が副業先での長時間労働を認識しながら就業上の配慮をまったくせず、本業における残業命令を出すようなことがあれば、本業においても安全配慮義務違反が問われかねません。   2 就業規則等の具体的な規定の仕方 副業・兼業に関するルールを作れば、就業規則にそのルールを規定することも必要でしょう。ここでは、次の3点について具体的な就業規則規定例を紹介します。 (ⅰ) 副業・兼業の申請手続き (ⅱ) 副業・兼業の許可と取消し (ⅲ) 副業・兼業の服務規律と懲戒 (ⅰ) 副業・兼業の申請手続き〈規定例〉 (ⅱ) 副業・兼業の許可と取消し〈規定例〉 (ⅲ) 副業・兼業の服務規律と懲戒〈規定例〉 *  *  * 2回に分けて副業・兼業に関する企業の対応策と留意点を見てきましたが、実際にいろいろな問題や課題が見えてくるのはこれからです。政府の方針や対応についても逐一発表される可能性がありますので、今後も注視していく必要があるでしょう。 企業としてはまずはしっかりと情報を集めた上で、副業・兼業の制度の必要性や漏れのない制度設計をしていくべきと考えます。安易な制度導入で法的なリスクや社内の混乱が生じないように注意していただきたいと思います。 (連載了)

#No. 280(掲載号)
#渡邉 哲史
2018/08/09

税理士のための〈リスクを回避する〉顧問契約・委託契約Q&A 【第12回】「顧問税理士の顧客に対する守秘義務」

税理士のための 〈リスクを回避する〉 顧問契約・委託契約Q&A 【第12回】 (最終回) 「顧問税理士の顧客に対する守秘義務」   弁護士・税理士 米倉 裕樹 弁護士・ 関西大学法科大学院教授 元氏 成保 弁護士・税理士 橋森 正樹   Q 税理士は顧客に対して守秘義務を負うとされているが、この守秘義務について、顧問税理士としては、どのような点に留意すべきか。 A 1 税理士の守秘義務について 税理士は、その職務内容の性質上、顧客の所得、財産等の情報を知り得る立場にあることから、税理士法第38条に「税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならない。税理士でなくなった後においても、また同様とする。」と規定されているとおり、いわゆる守秘義務が課せられている。 そして、この守秘義務が遵守されることによって、社会からの税理士及び税理士制度に対する信頼が確保されているといえることから、これに違反した場合には、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金の刑事罰が予定されている(同法第59条)。 ただし、平成28年1月より施行されているいわゆるマイナンバー制度に関する番号法では、個人番号関係事務従事者が、正当な理由なく、特定個人情報ファイルを提供したときは、4年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金、又はその両方を科するなどとされており、特に重い刑罰が科せられていることから、この点は別途留意されたい。   2 税理士法第38条の「正当な理由」とは ところで、税理士法第38条によれば、正当な理由がある場合には、守秘義務が解除されると解されるところ、ここでいう「正当な理由」とは、いかなる場合を指すか。 この点、税理士法基本通達によれば、「正当な理由」とは、本人の許諾又は法令に基づく義務があることとされている(38-1)。 このうち、「本人の許諾」がある場合は、顧客との間で紛争となることは考え難いが(※)、「法令に基づく義務」がある場合については、その判断基準が必ずしも明確になっているとはいえず、また、開示の対象となる情報の多くは顧客のプライバシーに関するものであることから、顧客との間で紛争となる場合が想定される。 (※) 実務上、問題となり得るとすれば、顧客の許諾があったかどうかという事実関係について齟齬が生ずる場合が考えられるが、この点は、許諾の事実を証拠化しておくことで対応すべきこととなる。   3 「正当な理由」の解釈が問題となった裁判例 この裁判例の事案は、過去にX(個人)の確定申告業務を受任していた税理士Yが、Xと紛争関係(別件訴訟が提起されていた)にあるAの代理人弁護士により弁護士会経由でなされた照会(弁護士法第23条の2に基づく照会)に対し、Xの過去の確定申告書や総勘定元帳の写しを開示したことなどについて、XがYの開示行為は不法行為に該当するとして損害賠償請求した、というものである。 ところで、弁護士法第23条の2に基づく照会(一般に「23条照会」と呼ばれており、以下でもそのように呼称する)とは、弁護士が受任事件について訴訟資料の収集や事実調査等の職務活動を円滑に行うために設けられた制度であり、弁護士会が、会員弁護士からの照会申出につき必要性・相当性を審査し、公務所又は公私の団体に対し照会を発し、回答を受けるというものである(弁護士法第23条の2)。 当該事案においては、この23条照会に対する報告義務が税理士法第38条にいう「正当な理由」に該当するか否かが争われた。 これに対し、第一審である京都地裁(平成25年10月29日判決)は、23条照会に対する報告義務は、税理士法第38条の「正当な理由」に該当するとして、Xの請求を棄却した。 しかしながら、控訴審である大阪高裁(平成26年8月28日判決、判例タイムズ1409号241頁)は、23条照会と税理士法第38条の「正当な理由」の関係について、概要、次のように示し、事案に応じた個別具体的な判断を行うべきであるとした。 そして、大阪高裁は、概要、次のように事実を認定した上で、結論としてYの損害賠償責任(慰謝料30万円、弁護士費用5万円)を認めた。   4 実務上の留意点 税理士の守秘義務に関しては、顧問契約書上、「乙(税理士)は、業務上知り得た甲(顧客)の秘密を正当な理由なく他に漏らし、又は盗用してはならない。」というような規定を設けることが一般的であると思われる。 この点、税理士側のリスクヘッジの方策としては、例えば、前記裁判例で問題となった23条照会が、上記の条項例における「正当な理由」に含まれる旨を盛り込むことも考えられる。 しかしながら、前記裁判例が、税理士と顧客との委任契約に基づく善管注意義務違反を認定したものではなく、不法行為責任(契約関係にないことを前提とした損害賠償責任)を認定したことを踏まえれば、たとえ顧問契約書において一定の手当てを施したとしても、必ずしも税理士の守秘義務に関するリスクをすべて回避できるとも限らないといえる。 また、外部からの照会が法令に基づく場合、その多くは回答義務を伴うものといえることから、顧客の利益ばかりを重視するあまりに漫然と照会に対して回答しないという対応も、逆に照会機関から回答拒絶による法的責任を追及されるおそれも否定できないといえる。 そうすると、前記裁判例については税理士Yにとっては酷な結果であるとの見方もあるが、このような裁判例が存在する以上、税理士としては、顧客に関する情報について外部に漏えいしないように適切に管理する態勢を整備することはもちろんのこと、外部からの照会に対して回答すべきか否かについても、仮にそれが23条照会のような法令に基づく照会であったとしても、一律に回答する、あるいは、回答しないという対応は不適当であり、個別具体的に回答すべきかどうかを判断するという姿勢が必要というべきである。 (連載了)

#No. 280(掲載号)
#米倉 裕樹、元氏 成保、橋森 正樹
2018/08/09

〔“もしも”のために知っておく〕中小企業の情報管理と法的責任 【第5回】「コンピュータがウィルスに感染して個人情報が漏えいした場合」

〔“もしも”のために知っておく〕 中小企業の情報管理と法的責任 【第5回】 「コンピュータがウィルスに感染して個人情報が漏えいした場合」   弁護士 影島 広泰   -Question- 会社が支給した従業員のコンピュータがウィルスメールに引っかかってしまい、個人データが漏えいしてしまいました。この場合、自社は個人情報保護法の義務違反になるでしょうか。 -Answer- コンピュータにウィルス対策ソフトを導入して、常にアップデートしておくなどしておかないと、義務違反を問われる可能性があります。 ウィルスメールに感染するなどしてコンピュータから個人データが漏えいした場合、通則ガイドラインが定める安全管理措置のうち「技術的安全管理措置」(下記表の⑥)を果たしていたかどうかが問われることになる。 ◆個人情報保護法のガイドラインが定める安全管理措置(概要) (※) ①~④については【第2回】で解説。また、⑤については【第3回】、【第4回】で解説。   ⑥ 技術的安全管理措置 コンピュータから情報漏えいしないための安全管理措置のことを「技術的安全管理措置」といい、通則ガイドラインでは以下の(1)~(4)が義務であるとされている。 (1) アクセス制御 まず、誰でも個人データに触ることができる状態にしておくことは禁止されている。アクセス制御を行い、個人データにアクセスできる者を限定しなければならない。 具体的には、個人データを取り扱うコンピュータを限定したり、システムのアクセス制御機能を使うなどして、アクセス制御していくことになる。 (2) アクセス者の識別と認証 次に、アクセスする人間を、ID・パスワード等で識別・認証しなければならない。 例えば、小規模な会社が顧客情報をコンピュータで管理するケースを考えると、顧客情報を保存するコンピュータを決めて、そのコンピュータの起動時にID・パスワードを設定しておけば、(1)と(2)を合わせた最低限の対策となるであろう。 (3) 外部からの不正アクセス等の防止 また、外部からの不正アクセスやウィルスへの感染等が発生しないための技術的な措置を講じなければならない。 通則ガイドラインでは、具体的手法として以下が挙げられている。 これによれば、ウィルス対策ソフトを導入した上で、そのソフトとOS(Windowsなど)を自動更新機能により常に最新版にしておけば、最低限の対策になると考えられる。 つまり、今回のQ&Aにあるように、万が一、会社内のコンピュータがウィルスに感染して個人データが漏えいした際に、「ウィルス対策もしてなければWindowsなどのOSも古いままであった」などということがあれば、それは技術的安全管理措置の中の「外部からの不正アクセス等の防止」の措置を講じていなかったとして、個人情報保護法に違反しているといわれる可能性があるので、注意したい。 なお、ここでもう1つ検討していただきたい点がある。それは、上記の例示の中にある「ログ等の定期的な分析」である。サーバ等のログを保管している会社は多いが、それを定期的に確認していない会社が多いように思われる。2014年に発生した大手通信教育事業社からの3,000万件の個人情報漏えい事件のように、情報が漏えいしていることに会社が長期間にわたり気づかずにいると、被害が拡大し続けてしまう。 情報漏えいを100%防ぐことはできない以上、会社としては、漏えいしていることにいち早く気づく体制を構築しておくことが重要である。ログの定期的な分析は、是非とも積極的にご検討いただきたい。 システム管理者が定期的にログを確認することが難しいようであれば、この部分についてはソリューションを導入することが考えられる。例えば、サーバから一定量以上のデータがダウンロードされた際にはシステム管理者等にメールで通知が行く、というアラート・システムを導入する。こうしておけば、情報漏えいにいち早く気づくことができるし、そのシステムの導入を社内外に周知しておけば、情報の不正取得に対する威嚇効果を発揮することができるのである。 (4) 情報システムの使用に伴う情報漏えいの防止 最後に、メールを送信するなど情報システムを使用して個人データを取り扱う際に情報漏えいしないための措置を講じなければならない。 具体的には、以下のような措置が例示されている。 メールに添付して個人データが含まれるエクセルファイルを送信する、といったことは日常的に行われていると思われるが、その際、添付するエクセルファイルにはパスワードを設定するなどしておきたい。 *  *  * これまで、個人情報保護法の安全管理措置を順に解説してきた。これまでに説明してきたことをベースに、中小企業が最低限やるべきことを簡単にまとめたものが以下の表である。実務の参考にしていただけると幸いである。 ※クリックすると別ページでPDFが開きます。 (了)

#No. 280(掲載号)
#影島 広泰
2018/08/09

《速報解説》 経営革新等支援機関の認定更新制、第1号~第3号認定の集中受付期間は本年11月末まで~実務経験不足の場合は中小機構による指定研修の受講及び試験合格も検討~

《速報解説》 経営革新等支援機関の認定更新制、 第1号~第3号認定の集中受付期間は本年11月末まで ~実務経験不足の場合は中小機構による指定研修の受講及び試験合格も検討~   Profession Journal編集部   既報のとおり本年7月9日に施行された産業競争力強化法等の一部を改正する法律において中小企業等経営強化法が改正され、同日から経営革新等支援機関認定制度に「認定の更新制」が導入されている。 経営革新等支援機関の認定制度とは、中小企業の経営課題が多様化・複雑化する中で、専門性の高い支援事業を行う個人・法人、中小企業支援機関等を「経営革新等支援機関」として認定することで、中小企業に対する専門性の高い支援体制の整備を行うことを目的に、2012年から開始されたもの。 本年6月には国が認定した経営革新等支援機関の数が29,188機関(その8割近くが税理士及び税理士法人)となり順調にその数を伸ばしている一方、直近1年間で認定支援業務を行っていない者も約3割存在しているといった問題点も指摘されていたことから、支援体制の質の維持を目的に、今回の更新制導入に至った。 導入された更新制では、経営革新等支援機関の認定期間に「5年」の有効期間が設けられ、期間満了時に改めて業務遂行能力について確認を受ける必要があり、主な確認項目は「専門的知識」「法定業務を含む一定の実務経験」「業務の継続実施に必要な体制」とされている。 このように、今後は認定を受けた日から起算して5年を経過するまでに認定の更新を受ける必要があるわけだが、上記のとおり認定制度は2012年からスタートしているため、すでにこの5年を経過している対象者も存在する。 このため中小企業庁は、既に更新時期を経過した場合を含む認定日が2015年7月8日以前である対象者については、更新事務が一時期に集中することを避けるため、特段の事情がない限り以下の更新時期に認定の更新を受けるよう求めている。 (※) 中小企業庁ホームページより 上表のとおり、制度開始当初に認定を受けた場合は本年11月末が受付期限となるケースもあるため留意が必要だ。ちなみに、自身の認定日については、次の「経営革新等支援機関認定一覧」ページから確認することができる。 なお、認定の更新を受けるために必要な「更新申請書」については、下記の中小企業庁HPもしくは各経済産業局HPにおいてWordファイルで入手することができ、更新申請書は認定申請書と同じ様式(様式第1(第2条第2項及び第6条第1項関係))となっている(様式自体は今回の法改正により誓約書の記載が一部変更されている)。 ここで気になるのは、認定日から更新申請日までの期間に、制度上求められる経営革新等支援業務等の実務経験が不足していた場合だが、本稿公開時点では中小企業庁HPに更新申請書の記載例がなく、各経済産業局によってHP上の情報量に違いがあるものの、東北経済産業局などでは個人・法人、士業ごとの更新申請書の記載要領が公表されており、例えば税理士(個人向け)の更新申請書記載要領のうち実務経験証明書の箇所において、 ・実務経験年数の対象期間は、直近の認定日から更新申請日までとする。 ・経営革新等支援業務に係る実務経験は通算で1年以上であればよい。 ・不足する場合は、(独)中小企業基盤整備機構(中小企業大学校)にて指定された研修を受講し、試験に合格した旨の証明書の写しを添付する。 との説明が見られることから、上記の研修を受け試験に合格することで、実務経験の不足を補うことができると考えられる。 ちなみに、中小企業基盤整備機構による認定支援機関向け研修の詳細は下記のページから確認することができる。 このように、自身の認定更新(申請)期限と実務経験については早めに確認・整理し、各経済産業局のホームページで公表された最新情報についても確認の上、必要に応じ問い合わせを行うようにしておきたい。 なお、今回の更新制導入に合わせ、認定の廃止を検討する機関に向け、廃止届出制度も整備されており、下記のページから廃止届出書の様式や記載要領を確認することができる。 (了)

#No. 279(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2018/08/07
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