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《速報解説》 平成31年度税制改正に対応した法人税申告書(別表)様式が明らかに~改正法人税法省令公布、普通法人と公益法人、特定医療法人等の別表1が同一様式に~

《速報解説》 平成31年度税制改正に対応した法人税申告書(別表)様式が明らかに ~改正法人税法省令公布、普通法人と公益法人、特定医療法人等の別表1が同一様式に~   Profession Journal編集部   平成31年度税制改正に対応した法人税申告書(別表)の様式を定めた改正法人税法施行規則が4月12日付官報号外第76号で公布された。これら改正後の様式は原則平成31年4月1日以後終了事業年度から適用される(改正法規附則2)。 (※) 官報同号にて地方法人税及び租税特別措置の適用額明細書の様式改正も行われている。 以下、主な様式の変更内容を紹介する。 まず改正後の申告書様式は全体として、5月からの改元前後も支障なく使用できるよう、様式内に平成を示す「平」と表記された箇所が削除されている(別表16(6)等では「昭」も削除)。 別表1関係はこれまで、大きく①普通法人、一般社団法人等及び人格のない社団等、②公益法人等及び協同組合等、③特定の医療法人ごとに様式が分かれていたが、改正後は下記のように「内国法人の分」として統一され、それぞれに適用される法人税率に対応したものとなっている(連結納税適用法人(1の2)及び外国法人(1の3)は改正前と同様に別様式)。 〈別表1 各事業年度の所得に係る申告書-内国法人の分〉 別表4は平成30年度改正で創設された「分配時調整外国税相当額の控除制度」(施行は2020.1.1~)に係る項目等の追加や既存項目の統合等が行われており、関連する様式として「別表6(5の2) 分配時調整外国税相当額の控除に関する明細書」が新設された。 平成31年度改正では研究開発税制について、税額控除率の見直しや本年3月31日で適用期限を迎えた高水準型の総額型への統合などの見直しが行われたが、新様式ではこれらの改正に対応しつつ、まだ旧制度の適用会社もあることを踏まえ改正前後の制度に対応したものとなっている(後述のとおり様式番号も変更されている)。 上記のように昨年度の改正により改正前後の制度に対応していた雇用促進税制及び賃上げ・投資促進税制(旧 所得拡大促進税制)に係る様式(別表6(19)及び6(23))は、それぞれ旧制度の記載事項が不要となったため項目の整理が行われ、特に賃上げ・投資促進税制は別表6(23)及び6(23)付表が下記のように1枚の様式(別表6(25))にまとめられた(中小企業向けの所得拡大促進税制に係る旧別表6(24)は項目の見直しを行い別表6(26)として改正前同様、1枚様式)。 〈別表6(25) 給与等の引上げ及び設備投資を行った場合の法人税額の特別控除に関する明細書〉 別表6関係では他に、「6(28) 法人税の額から控除される特別控除額に関する明細書」及び昨年新設の「6(29) 特定税額控除規定の適用可否の判定に関する明細書」がそれぞれ別表6(6)及び6(7)へ繰り上がったこと等もあり、多くの様式で枝番号の変更が行われているため留意したい。 その他、公益法人等又は協同組合等の貸倒引当金の特例(10%の割り増し)は3月31日で期限切れ廃止とされたが、経過措置である5年間の段階的な割増率の縮減に対応し、別表11(1の2)の項目が一部見直されている。 なお、今年度改正で新設された制度として、一定の防災・減殺設備を取得等した場合の特別償却制度(特定事業継続力強化設備等の特別償却(措法44の2、措令28の5))が挙げられるが、こちらは特別償却制度のため、後日、こちらの通達改正により付表様式が定められる。ちなみに本制度適用に必要な認定手続を定めた「中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律案」は本稿公開時点で、衆議院での審議が続いている。 国税庁では今後、今回の改正省令に対応した申告書様式のページが公表される予定となっている。 (了) ↓お薦め連載記事↓

#No. 315(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2019/04/18

プロフェッションジャーナル No.315が公開されました!~今週のお薦め記事~

2019年4月18日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.315を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2019/04/18

日本の企業税制 【第66回】「政府税調専門家会合で検討進む「連結納税制度の見直し案」」~第2回会合資料(2019.2.14)から~

日本の企業税制 【第66回】 「政府税調専門家会合で検討進む「連結納税制度の見直し案」」 ~第2回会合資料(2019.2.14)から~   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴   〇連結納税制度に関する専門家会合 昨年11月7日に第1回会合が開かれた政府税制調査会の「連結納税制度に関する専門家会合」は、本年2月14日に第2回が開かれ、さらに今後も検討が深められていくこととされている。 第2回会合の財務省説明資料(【連2-4】)では、事務負担の軽減を図る観点からの簡素化として、現行の連結グループ全体を1つの納税単位とする制度に代えて、各法人それぞれを納税単位とする個別申告方式とすることとし、基本的には、計算誤りがあった企業のみ修正・更正を行う方向が示されている。 既に連結納税制度を採用している企業グループにおいては、連結グループ一体で調整計算を行い、連結親法人が申告納税を行うシステムを構築していることから、今後個別申告方式が採用されることとなると、逆に各連結子法人に申告納付を行わせるべくシステムの改変等が生じることとなる。 一方、計算誤りがあった場合の修正・更正については、連結ベースへの影響がなくなることから実務負担の軽減が期待される。   〇個別申告方式をベースにした所得計算方式 第2回会合で提示された具体的な所得計算の方式では、まず、連結法人ごとに単体所得金額(調整前所得金額)を計算し、黒字の連結法人の所得金額の合計額と赤字の連結法人の欠損金額の合計額とを計算し、所得通算を行う。 所得通算の結果が黒字の場合には、赤字法人の欠損金額を黒字の連結法人の所得金額をベースに按分して、黒字の連結法人に配分する(赤字の連結法人の損益通算後の所得金額はゼロ)。 (出典) 第2回 連結納税制度に関する専門家会合「[連2-4]財務省説明資料(連結納税制度)」P11 一方、所得通算の結果が赤字の場合には、当期において通算すべき所得金額を赤字法人の欠損金額をベースに按分し、赤字の連結法人に配分する(黒字の連結法人の損益通算後の所得金額はゼロ)。 (出典) 第2回 連結納税制度に関する専門家会合「[連2-4]財務省説明資料(連結納税制度)」P13 このようにして各連結法人の課税所得金額を計算し、税率を乗じて調整前法人税額を求め、その上で税額調整(税額控除)を行うこととなる。   〇個別申告方式における懸念点 「グループ内の一法人に生じた修更正について、他の法人への影響を遮断する制度を導入する場合、グループ全体の法人税額の不当な減少を企図した制度の濫用が行われるおそれはないか」(【連2-4】12ページ)との指摘もされている。 例えば、ある連結子法人が期限切れを迎える特定連結欠損金額を有している場合に、過大な単体所得金額を計上し、特定連結欠損金額を損金算入した上で、後に過大申告として所得の減額の更正請求を行うことで、その影響は当該法人にのみチャージされることから、新たな欠損金の創出が可能になるのではないかという懸念がある。 また、連結欠損金個別帰属額を有する連結子法人が、連結グループからの離脱が見込まれる場合に、離脱前の期末において、他の連結法人において過少申告(欠損)を行い、離脱する連結子法人の連結欠損金個別帰属額を温存したまま離脱させるという事例も考えられなくはない。もっとも、過少申告した連結法人においては後日、増額の修正申告をすることになり新たな税負担が生じることから、杞憂なのかもしれない。   〇今後の検討課題 第2回会合では「次回以降の検討項目(案)」として、次の3点が掲げられている(【連2-4】14ページ)。 開始・加入時における時価評価課税・欠損金の持込制限は、連結納税制度の採用を決める上で重要な項目であるとともに、既に連結納税制度を採用している企業グループにあっては、事業ポートフォリオの見直しによって連結子法人の連結グループからの離脱や新たな連結子法人のグループへの加入における課税関係の変更は大きな影響がある。 企業の事業ポートフォリオの見直しによる競争力、稼ぐ力の向上の観点からは、課税上のハードルを極力低くすることが望ましく、組織再編税制との整合性からは、現行の連結納税開始・加入時における時価評価の対象は非適格再編の場合を超えて幅広く適用されていることから、その範囲の見直しに期待するところである。 また、現行制度では連結納税制度の開始・加入に際しては、時価評価課税及び連結開始・加入前欠損金の切捨ては、「する」か「しない」かの二者択一的取扱いであったが、組織再編税制との整合性からすれば、一定の要件を満たさない場合には時価評価はしないけれども一定期間は含み損益の使用の制限(組織再編税制における特定資産)を行うといった取扱いも考えられるのではなかろうか。 連結固有のグループ調整計算については、所得税額控除、外国税額控除、試験研究費の税額控除といった企業の税負担に大きな影響を及ぼすものがあり、グループ経営の実態に即した検討が不可欠である。また税額控除のみならず、寄附金の損金算入限度額の計算や受取配当等の株式区分判定・負債利子控除・短期保有株式等の判定など所得計算に影響するものも多い。 (了)

#No. 315(掲載号)
#小畑 良晴
2019/04/18

〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第1回】「CFOのみなし役員該当性」

〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第1回】 「CFOのみなし役員該当性」   税理士 中尾 隼大   ○●○● 解 説 ●○●○ CEO(最高経営責任者)やCOO(最高執行責任者)、そしてCFO等という肩書は、最近特に散見され、中小企業においても浸透しつつあるようである。これらは、会社法上に法定される存在ではなく、元々は米国の業務執行役員制度に端を発し、日本の企業が取り入れ始めた制度であるといわれている。 ところで、法人税法上における役員は、 とされており(法法2十五)、会社法上の役員より広範に設計されていることは周知の通りである。このうち下線部分に該当すれば、法人の意思決定に影響を与えることが可能な立場にあるとされ、これがいわゆる「みなし役員」と取り扱われる根拠である。 みなし役員に該当すれば形式的な役員と同様、法人税法34条の規定の適用を受けることとなり、定期同額給与等の規定が適用されるため、留意する必要があるだろう。 この「法人の経営に従事している」の具体的な判断は、法人の使用人以外の者のうち(法令7一)(※1)、以下のような者が該当するとされている(法基通9-2-1)。 (※1) 使用人であっても、同族会社の使用人であれば、持株割合による判定が別途あることを念のため申し添える(法令7二)。 上記のうち、本件の前提であるCFOに関しては、⑤「実質的に法人経営に従事している」という条件に該当すれば「みなし役員」とされるが、事実認定や実態に即して判断されるため事前の判断が難しく、判然としていないのが実態であると思われる。 この点、⑤に該当するか否かの判断基準について、以下のように説く見解がある(※2)。 (※2) 山本守之『判決・裁決例から見た役員報酬・賞与・退職金(四訂版)』(税務経理協会、1999)12頁。 本件で問われたCFOが上記(1)~(4)に該当するか否かの判断については、CFOは単なる経理責任者ではなく、事業計画を作成して資金調達を行ったり、証券会社や監査法人等との折衝によってIPOに備えたり、何より事実上、社長の「右腕」として経営判断に深く関わるのであれば、みなし役員とされる可能性は十分高いと考えられる。 みなし役員該当性を争点とした事例は国税不服審判所の裁決例に特に多く見られるが、審査請求や訴訟まで発展せず、税務調査段階で終了しているケースも相当数あると思われる。経営形態が多岐にわたる中小企業にとって、事前の慎重な判断のために今後の議論の発展や法による明示が望まれるところではあるが、経営形態が多種多様であるからこそ、判断基準が未だ判然としていないのが実情であろう。 このような現状を踏まえた実務上の対処としては、本件のCFOのようにみなし役員の対象となり得る存在をリストアップすると同時に、その業務内容や権限を明らかにしておくことが肝要であると思われる。その上で、その存在が日々どのような業務を行っているかを説明できるエビデンスを備え、当該対象者と他の従業員に諸条件の線引きがあれば明示し、納税者としてみなし役員該当・非該当の判断について論拠を整理しておくことで、税務上のリスクを事前に軽減することが可能であると考える。 (了)

#No. 315(掲載号)
#中尾 隼大
2019/04/18

船舶会社の事業承継に係る諸問題-株式評価と船舶評価について-

船舶会社の事業承継に係る諸問題 -株式評価と船舶評価について-   弁護士法人東町法律事務所  弁護士 田中 庸介  弁護士 羽柴 研吾  弁護士 佐々木 達耶   ◆事案の概要◆ 国内船舶会社X社の創業者オーナーのA氏は、息子であるB氏を後継者にすべく、事業承継を行うことを検討している。X社は、パナマ共和国を本店所在地とする株式会社Y社及びZ社の各株式を100%保有しており、Y社及びZ社は、合計10隻の船舶を所有している。 A氏が、B氏に事業承継を行うに際し、X社の事業価値を算定する必要があるところ、どのような点に留意するべきか。   【検討事項】 1 はじめに 愛媛(特に今治市)・広島を中心とする瀬戸内は、歴史的に見て、船舶会社や造船会社のような船舶関連企業が集積している地域である。また、瀬戸内地域の外航海運業者の事業形態は、首都圏や阪神地域の大手船舶会社の事業形態と比べて、個人が会社を設立して、その所有する船舶を傭船する船舶貸渡業であるところに特徴があり、X社のような会社の株主は、家業として船舶貸渡業を営んでいることが多い(愛媛県の外航船主群は「愛媛船主」と呼ばれている)。 そのため、事業の承継先は親族となり、その中心をなすのは親族に対する相続又は贈与による船舶会社の株式譲渡ということになる。ところが、船舶会社の株式の評価額は高額になることが多く、贈与又は相続による株式譲渡の際に巨額の贈与税又は相続税の負担を強いられるリスクがある。また、海運業界では、パナマ等の外国に子会社を設立し、当該外国子会社に船舶を所有させていることが多いため、この点も考慮に入れなければならない。 そこで、本稿では、上記のような船舶会社の事業承継の際に問題となる当該会社の企業価値(主として株式及び船舶評価)を算定する際の留意点について紹介することとしたい。   2 株価算定の基本的な仕組み 相続又は贈与の際の船舶会社の株式の時価(相続税法第22条)は、財産評価基本通達(以下「評価通達」という)に従って判断されるところ、上記1のような非上場の船舶会社の株式は、取引相場のない株式にあたるため、評価通達178に定める会社の規模区分(大会社、中会社、小会社)に応じて算定されることになる。 また、船舶貸渡業を営む船舶会社の中には、事例のX社のように外国子会社の株式を保有しており、その株式の資産に占める割合が50%以上である株式等保有特定会社(評価通達189)にあたるものが多いように思われる。この場合は、上記の会社規模区分に関係なく、原則として純資産価額方式(評価通達189-3)に基づいて行われることになる。 親会社の株式を純資産価額方式で評価する場合に問題となるのは、親会社の資産である当該子会社の株式をどのように評価するかであり、親会社が設立する外国子会社は、船舶保有目的のSPCであるため、当該外国子会社の株式も取引相場のない株式として評価通達179に基づいて評価することになる。 この点に関して、評価通達179に評価方式として定められている類似業種比準方式は、内国法人が発行する取引相場のない株式のみを対象としていることから、外国法人が発行する取引相場のない株式については、当該外国法人の会社規模に関わらず、純資産価額方式によって評価されることになる(国税不服審判所平成24年7月24日裁決参照)。これに伴い、当該外国子会社の資産である船舶を評価する必要が生じる。 なお、納税者と課税庁との間で親会社の株式の評価額をめぐり紛争になっている事案においては、親会社の取引相場のない株式及び外国子会社の取引相場のない株式を、純資産価額方式で算定する必要があった事案が比較的多いように見受けられる(前掲平成24年裁決、国税不服審判所平成28年3月7日裁決・TAINSコード:F0-3-457)。   3 船舶の時価額をどのように評価すべきか (1) 船舶の評価方法 基本通達136は以下のとおり、船舶の評価を、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価するものとし、売買実例価額、精通者意見価格等が明らかでない場合に、原価法によって評価する旨定めている。 【参考】 財産評価基本通達136(船舶の評価) ここで、精通者意見価格「等」と表現していることからも分かるとおり、参酌されるべき事由は、売買実例価額や精通者意見価格に限られず、これらと同等の要素があれば参酌できる。 例えば、当該船舶が実際に売却されている場合には、実際の売却額も考慮要素に含まれることになる。この場合、船舶売却の時期は、課税時期に近接したものに限定される可能性があるので、考慮要素として使用する場合には留意が必要である。 評価通達上、一見して明らかではないが、売買実例価額、精通者意見価格等、原価法の適用関係は、次のとおり整理することができる。 (2) 精通者意見価格とは 精通者意見価格について、「精通者」に該当するか否かは、評価額を算定した者が、 という観点から判断される。 その一方で、船舶鑑定には、不動産鑑定のような資格は特段求められず、鑑定手法に係る国際的な共通基準も存在しないため、課税庁と納税者の依頼した精通者によって船舶評価が大きく異なることがあり、鑑定の精緻さをめぐる紛争に発展することもある。 具体的には、船舶鑑定の精通者は、不動産の評価等の場合と同様に、市場性、費用性及び収益性の観点から、取引事例比較法、原価法、収益還元法に基づいて算定するのが通例である。例えば、取引事例比較法においては、収集した取引事例の価額を、①船齢による調整、②積載能力差・装備等の差異による調整、③定期傭船料による調整等を適宜行って評価することになる。 もっとも、船舶を定期傭船に付している場合に、傭船料収入の見込みを、残存契約年数を考慮して算定するか、合理的な基準によって年数を限定して算定するかによって、船舶の評価額に大きな差異が生じるので、当該精通者の鑑定方法には留意が必要である。   4 まとめ 船舶会社の事業価値を算定するにあたり、船舶会社及びその外国子会社の株式価値の算定(及びこれの基礎となる船舶の評価)は大きなポイントとなる。 特に、船舶の評価については、評価通達において、売買実例価額に加えて、精通者意見価格を優位に位置付けていることから、鑑定業者の実績や鑑定手法等を踏まえた取捨選択が求められる。また、精通者意見価格も相対的なものであるため、複数の鑑定業者を利用することが検討されるべきである。 近年、船舶会社向けの事業承継サービスを組織化する専門家、金融機関等も増えており、納税者は、各専門家と連携しながら対応することが肝要であるように思われる。 (了)

#No. 315(掲載号)
#田中 庸介、羽柴 研吾、佐々木 達耶
2019/04/18

相続税の実務問答 【第34回】「相続人以外の者に相続分を譲渡した場合の相続税の申告」

相続税の実務問答 【第34回】 「相続人以外の者に相続分を譲渡した場合の相続税の申告」   税理士 梶野 研二   [答] 相続税の納税義務者は、相続又は遺贈により被相続人の財産を取得した個人とされています。ご質問の場合、従妹の甲さんは、あなたから相続分の贈与を受け、お母様の遺産を手にすることになるわけです。お母様の遺産を相続又は遺贈により取得することとなるわけではありません。また、あなたが、ご自分の相続分を甲さんに贈与したとしても、あなたがお母様の相続人であることに変わりはありません。 つまり、あなたが、いったん相続により取得したお母様の遺産を、甲さんに贈与したと考えられますので、あなたには依然として相続税の申告義務があります。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 相続分の譲渡 相続人は、共同相続人間で遺産分割が調う前に、自分の相続分の全部又は一部を他の共同相続人又は共同相続人以外の者に有償又は無償で譲渡することができます。 前回及び前々回の質問は、共同相続人間で相続分の譲渡が行われた場合の相続税等の課税関係に関するものでしたが、今回は、相続人以外の者に対して相続分の贈与(無償譲渡)が行われた場合の相続税の課税関係についてのお尋ねです。   2 相続税の納税義務者 相続により財産を取得するのは、民法第5編第2章に定められた相続人に限られ、その相続人は、被相続人の相続開始とともに被相続人の財産を取得することとなります(民法896)。 また、民法は、遺言により、相続人又は相続人以外の者に対して、包括又は特定の名義で、遺言者の財産の全部又は一部を移転させる遺贈を認めています。遺贈についても、原則として、遺言者の死亡の時から効力が生じることとされています(民法985①)。 相続税の納税義務者は、この相続又は遺贈(注1)により財産を取得した個人(注2)とされています(相法1の3①一~五)。 (注1) 相続税の課税上、遺贈には死因贈与が含まれます。 (注2) 遺贈は法人に対して行うこともできますが、相続税の納税義務者とされるのは、原則として個人に限られます。 相続分の譲渡は、それが有償譲渡であれ、無償譲渡(贈与)であれ、譲渡人である相続人と譲受人の契約によって成立するものであり、その効果として遺産に係る共有持分が譲受人に移転すると考えられます。つまり、譲渡されるのは、譲渡人である相続人の財産権(相続人が被相続人から相続の開始によって取得した財産)であって、相続分の譲渡によって、相続人としての身分まで移転してしまうわけではありません。もちろん、民法には、相続人の地位の譲渡を認める規定はありません。 そうしますと、相続分が相続人以外の者に譲渡された場合には、いったん相続人が相続分の割合に応じて遺産を相続し、その全部又は一部を相続人以外の者に譲渡したと考えられますから、相続分の全部を譲渡したとしても、相続人として、相続分相当の財産を相続したことに変わりはありません。また、相続分を譲り受けた相続人以外の者は、相続分相当額の財産を相続により取得したのではなく、相続人から譲り受けたものであるということができます(平成17年4月20日さいたま地裁判決参照、控訴審判決である同年11月10日東京高裁判決も同旨)。 したがって、自分の相続分のすべてを相続人以外の者に譲渡したとしても、依然として相続税の納税義務者であり、相続人から相続分を譲り受けた相続人以外の者は相続税の納税義務者には該当しないこととなります。 〇平成17年4月20日さいたま地裁判決(訟務月報52巻8号2661頁)   3 相続分を相続人以外の者に譲渡した相続人の相続税の申告方法 (1) 申告書の提出期限までに遺産分割がされていない場合 相続分の譲渡が行われると、その譲受人が他の相続人との間で遺産分割を行うこととなります。相続税の申告書の提出期限までに、当該譲受人と他の相続人との間で遺産分割がされていない場合には、相続分の譲渡をした相続人が、相続税法第55条の規定に基づき、民法の規定による相続分の割合に従って、相続財産を取得したものとして相続税の課税価格及び相続税額を計算して相続税の申告を行うこととなります。 なお、同条の規定に従って相続税の課税価格の計算を行った申告書を提出した後に遺産分割が行われ、その結果、当初申告に係る課税価格が過大となったときには、上記の申告を行った相続人は相続税法第32条第1項第1号の規定による更正の請求を行うことができるものと考えられます。 (2) 申告書の提出期限までに遺産分割がされた場合 相続税の申告書の提出期限までに、当該譲受人と他の相続人との間で遺産分割が調った場合には、その遺産分割の結果、当該譲受人が取得することとなった財産を、当該譲受人に相続分を譲渡した相続人が相続により取得したものとして、相続税の課税価格及び相続税額を計算して、相続税の申告を行うこととなります。   4 ご質問の場合 従妹の甲さんは、あなたから相続分の贈与を受けて、お母様の遺産を手にすることになったとしても、そのことによってお母様の遺産を相続又は遺贈により取得することとなるわけではありませんし、あなたが、ご自分の相続分を甲さんに贈与したとしても、あなたがお母様の相続人であることに何ら変わりはありません。 つまり、あなたがご自分の相続分の全部を甲さんに贈与した場合には、あなたがいったん相続により取得したお母様の遺産を、甲さんに贈与したと考えられます。したがって、あなたには依然として相続税の申告義務がありますし、甲さんに相続税の納税義務が生じることはありません。   (了)

#No. 315(掲載号)
#梶野 研二
2019/04/18

基礎から身につく組織再編税制 【第3回】「支配関係の定義」

基礎から身につく組織再編税制 【第3回】 「支配関係の定義」   太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太   前回は、100%グループ内での組織再編の適格要件に用いられる「完全支配関係」の考え方について解説を行いました。 今回は、50%超100%未満グループ内での組織再編の適格要件に用いられる「支配関係」の考え方について解説していきます。 「支配関係」の考え方については、「完全支配関係」の考え方と類似しているため、同様の表現を用いて説明します。   1 支配関係 支配関係とは、次のような関係をいいます(法法2十二の七の五)。   2 「直接支配関係」及び「みなし直接支配関係」 一の者が法人の発行済株式等の50%超を保有する場合におけるその一の者とその法人との間の関係を直接支配関係といいます。 一の者及びこれとの間に直接支配関係がある一若しくは二以上の法人又はその一の者との間に直接支配関係がある一若しくは二以上の法人が他の法人の発行済株式等の50%超を保有するときは、その一の者はその他の法人の発行済株式等の50%超を保有するものとみなされます(法令4の2①)。   3 名義株がある場合の取扱い 支配関係があるかどうかは、原則として、法人の株主名簿、社員名簿又は定款に記載又は記録されている株主等により判定します。ただし、その株主名簿等に記載されている株主等が単なる名義人であって、その株主等以外の者が実際の権利者である場合には、その実際の権利者が保有するものとして判定します(法基通1-3の2-1)。   4 株主が個人の場合の取扱い 株主が個人の場合には、個人の保有する株式だけでなく、「特殊の関係のある個人」が保有する株式を含めて、支配関係があるかどうかを判定します(法令4①、4の2①)。 《特殊の関係のある個人》 (※) 親族とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族をいいます(民法725)。 (具体例) 親が発行済株式の50%超を保有するA社と子が発行済株式の50%超を保有するB社の場合は、親と子を一の者と考えて、A社とB社の間には一の者との間に当事者間の支配関係がある法人相互の関係(同一の者による支配関係)があることとなります。   5 支配関係を有することとなった日 組織再編税制では、支配関係が継続していることが要件となることがありますが、その支配関係がいつの時点で生じたものか、例えば株式の購入の場合には、株式購入契約の成立日、あるいは株式の引渡日のいずれの日をいうのかという疑義が生じます。 これに関して、「支配関係を有することとなった日」とは、一方の法人が他方の法人を支配することができる関係が生じた日をいい、その有することとなった原因が次に掲げる場合には、それぞれ次に掲げる日とされています(法基通1-3の2-2)。 なお、「完全支配関係を有することとなった日」についても同様です。 この場合、①の株式を譲渡した法人側では、その株式の譲渡損益については、原則として、株式の引渡しの日ではなく、その譲渡に係る契約の成立した日に計上することとされているため、留意が必要です(法法61の2①)。 ◆支配関係の判定上のポイント◆ 直接保有割合だけでなく間接保有割合も含めて判定します。 自己株式は発行済株式から除いて判定します。 名義株がある場合には、実際の権利者が保有しているとして判定します。 株主が個人の場合には「特殊の関係のある個人」を含めて判定します。   (了)

#No. 315(掲載号)
#川瀬 裕太
2019/04/18

企業経営とメンタルアカウンティング~管理会計で紐解く“ココロの会計”~ 【第13回】「「現状維持」という名の怠けグセ」

企業経営と メンタルアカウンティング ~管理会計で紐解く“ココロの会計”~ 【第13回】 「「現状維持」という名の怠けグセ」   公認会計士 石王丸 香菜子   *資料* ● 第2事業部では、商品の包装設備を利用している。現在利用している設備はリース会社よりリースしているものであり、間もなく契約が終了する。その後に利用する新設備について、以下の2つの案が考えられる。どちらの案も設備自体は同じであり、性能等に違いはない。 ● PN社の資本コストは税引後10%、法人税率は30%として計算する。 *  *  *   1 電力会社を変えるのって、面倒? 2016年に電力が全面自由化されました。みなさんのご家庭では、電力会社を切り替えましたか? 電力会社を切り替えると電気代が安くなることが多いと言われているものの、実際に電力会社を切り替える家庭は多数派ではないようです。 「どこの電力会社がいいのかわからない」「切り替え手続きが面倒そう」「電力会社を変えても、電気代は変わらないんじゃないの?」「スマートメーターって何? お金かかるの?」「停電したら困るし!」などなど、いろいろな理由や意見がありそうですね(注:スマートメーターは電力使用量をデジタルで遠隔計測できるメーターで、設置に費用はかかりません。また、電力会社の切り替えで停電になることはありません)。 具体的な個々の理由はさておき、現状に不便を感じているわけではないので、電力会社を変えるのをおっくうに感じるということは共通しているのではないでしょうか。電力会社の変更に限らず、誰でも、クレジット・カードや保険の変更など、既存のものを変更することに対して怠けがちになるものです。 このように、現状からの変更を面倒に感じ、なるべく現状からの変更を避けようとする傾向は、「」と呼ばれます。現状よりも悪くなって損失を被るのを避けたいという気持ちが非常に強く働く「損失回避性」(【第2回】参照)と関係している心理です。 PN社の第2事業部で利用されている包装設備についても、従来からリース契約しているため、現状維持バイアスが働いて、引き続きリース契約を結ぼうとしているようですね。   2 現状維持バイアスを取り払って計算してみると・・・ 社長の提案するように、現状維持バイアスを取り払って、《リース案》と《購入案》のどちらが有利か、計算してみましょう。 《リース案》 毎年のリース料支払額は600千円ですが、この600千円は法人税の計算上、原則として経費(税法上は「損金」と呼びます)として控除することができるので、税金を減らす効果を持っています。これを考慮すると、毎年の実際のキャッシュ・アウト・フローは、600千円×(1-30%)=420千円と考えることができます。 各年度のキャッシュ・フローを、経過した期間に応じて割引計算し、現在価値を求めます(割引計算の考え方は、【第12回】で取り扱っています)。10%で割引計算すると、以下のようになります。 《購入案》 借入をして設備を購入する場合、現時点では借入によるキャッシュ・イン・フロー2,400千円と、設備購入によるキャッシュ・アウト・フロー2,400千円が同時に生じます。 次に、毎年度末には、借入元本の返済額(2,400千円÷5年=)480千円と利息の支払額のキャッシュ・アウト・フローが生じます。 利息の支払額は、例えば1年度末には、2,400千円×5%=120千円ですが、先ほどのリース料と同様、法人税を減らす効果を持っています。これを考慮すると、実際のキャッシュ・アウト・フローは、120千円×(1-30%)=84千円と考えることができます。以降の年度でも、元本残高に応じた利息のキャッシュ・アウト・フローが生じていきます。 一方、取得した設備そのものに関しては、その後のキャッシュ・アウト・フローは生じません。2,400千円の取得価額を5年の定額法で減価償却するので、2,400千円÷5年=480千円の減価償却費が毎年生じますが、これは、取得時に資産として計上した2,400千円を、会計上5年間で費用処理しているだけになります。つまり、毎年480千円のキャッシュ・アウト・フローが生じるわけではありません。 ただし、この減価償却費は、リース料や利息と同様、法人税を計算する上で原則として損金として控除できるので、法人税を減らす効果を持っています。この効果の部分については、法人税の支払というキャッシュ・アウト・フローを節約することになるので、キャッシュ・イン・フローと同じと考えることができます。つまり、減価償却費480千円×30%=144千円を、キャッシュ・イン・フローとして扱う必要があるのです。 各年度のキャッシュ・フローを集計し、これを経過した期間で割引計算すると、以下のようになります。 *  *  * 以上より、《リース案》の現在価値は△1,593千円、《購入案》の現在価値は△1,476千円ですので、《購入案》のほうが117千円有利であることがわかります。 《購入案》における減価償却費のように、実際のキャッシュ・アウトを伴わない費用の持つ節税効果は、「」と呼ばれます。タックス・シールドは、計算に含めるのを忘れやすいので、このような効果があることを覚えておくとよいでしょう。 ◆◇◆今回のキーワード◆◇◆ ▷ 現状からの変更を面倒に感じ、なるべく現状からの変更を避けようとする傾向のこと。 ▷ 減価償却費などの非現金支出費用が持つ節税効果のこと。 (了)

#No. 315(掲載号)
#石王丸 香菜子
2019/04/18

企業結合会計を学ぶ 【第15回】「事業分離の会計処理③」-受取対価が分離先企業の株式のみである場合の分離元企業の会計処理-

企業結合会計を学ぶ 【第15回】 「事業分離の会計処理③」 -受取対価が分離先企業の株式のみである場合の分離元企業の会計処理-   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 【第14回】は、事業分離等会計基準における「受取対価が現金等の財産のみである場合の分離元企業の会計処理」について解説した。 今回は、事業分離等会計基準における「受取対価が分離先企業の株式のみである場合の分離元企業の会計処理」について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 事業分離の取引のパターン 会社分割等、事業分離の対価として分離先企業の株式のみを受け取った場合は、当該分離先企業に対する分離元企業の株式の持分比率等により、分離先企業は次のように分類される(結合分離適用指針97項)。   Ⅲ 受取対価が分離先企業の株式のみである場合の分離元企業の会計処理(分離先企業が子会社となる場合) 分離先企業の株式のみを受取対価とする事業分離において、分離先企業が新たに分離元企業の子会社となる場合、経済実態として、分離元企業における当該事業に関する投資がそのまま継続していると考えられる(事業分離等会計基準87項)。 このため、個別財務諸表上、当該取引において、移転損益は認識されず、当該分離元企業が受け取った分離先企業の株式(子会社株式)の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定する。 一方、分離元企業の連結財務諸表上、移転した事業に係る株主資本相当額と分離先企業に対する分離元企業(親会社)の持分との間に差額が生じる場合があり、当該差額の会計処理について、以下の各ケースのように規定している。 1 分離先企業が子会社となる場合(ケース1) 事業分離前に分離元企業は分離先企業の株式を有していないが、事業分離により分離先企業が新たに分離元企業の子会社となる場合、分離元企業(親会社)は次の処理を行う(事業分離等会計基準17項、結合分離適用指針98項)。 2 分離先企業が子会社となる場合(ケース2) 事業分離前に分離元企業は分離先企業の株式を有しその他有価証券(売買目的有価証券の場合を含む)又は関連会社株式としており、事業分離により分離先企業が新たに分離元企業の子会社となる場合、分離元企業(親会社)は次の処理を行う(事業分離等会計基準18項、結合分離適用指針99項)。 3 分離先企業が子会社となる場合(ケース3) 事業分離前に分離元企業は分離先企業の株式を有し子会社株式としており、事業分離により分離先企業の株式(子会社株式)を追加取得した場合、共通支配下の取引として取扱い、分離元企業(親会社)は次の処理を行う(事業分離等会計基準19項、結合分離適用指針99項、226項、229項)。   Ⅳ 受取対価が分離先企業の株式のみである場合の分離元企業の会計処理(分離先企業が関連会社となる場合) 分離先企業の株式のみを受取対価とする事業分離において、分離先企業が新たに関連会社となる場合、個別財務諸表上、投資が継続しているものとみて移転損益を認識しない会計処理を行う(事業分離等会計基準98項、99項)。 一方、分離元企業の連結財務諸表上、持分法適用により、関連会社に係る分離元企業の持分の増加額と、移転した事業に係る分離元企業の持分の減少額との間に生じる差額があり、当該差額の会計処理について、以下の各ケースのように規定している。 1 分離先企業が関連会社となる場合(ケース1) 事業分離前に分離元企業は分離先企業の株式を有していないが、事業分離により分離先企業が新たに分離元企業の関連会社となる場合(共同支配企業の形成の場合は含まない)、分離元企業は次の処理を行う(事業分離等会計基準20項、結合分離適用指針100項)。 2 分離先企業が関連会社となる場合(ケース2) 事業分離前に分離元企業は分離先企業の株式を有しその他有価証券としており、事業分離により分離先企業が新たに分離元企業の関連会社となる場合、分離元企業は次の処理を行う(事業分離等会計基準21項、結合分離適用指針101項)。 3 分離先企業が関連会社となる場合(ケース3) 事業分離前に分離元企業は分離先企業の株式を有し関連会社株式としており、事業分離により分離先企業の株式(関連会社株式)を追加取得した場合、分離元企業は、結合分離適用指針100項に準じて処理を行う(事業分離等会計基準22項、結合分離適用指針102項)。   Ⅴ 受取対価が分離先企業の株式のみである場合の分離元企業の会計処理(分離先企業が子会社や関連会社以外となる場合) 分離先企業の株式のみを受取対価とする事業分離により分離先企業が子会社や関連会社以外となる場合(共同支配企業の形成の場合を除く)、分離元企業の財務諸表において、分離先企業の株式はその他有価証券に分類されることとなる。 その他有価証券に分類されることとなる場合には、移転した事業に関する投資は継続していないものとみて、分離元企業の個別財務諸表上、原則として、移転損益を認識する(事業分離等会計基準23項、104項、結合分離適用指針103項)。 また、分離先企業の株式の取得原価は、移転した事業に係る時価又は当該分離先企業の株式の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価に基づいて算定される(事業分離等会計基準23項、結合分離適用指針103項)。   Ⅵ デット・エクイティ・スワップ 資産を移転し移転先の企業の株式を受け取る場合(事業分離に該当する場合を除く)において、移転元の企業の会計処理は、事業分離における分離元企業の会計処理に準じて行う(事業分離等会計基準31項)。 このため、「デット・エクイティ・スワップの実行時における債権者側の会計処理に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第6号)にかかわらず、移転先の企業が子会社又は関連会社となる場合及び共通支配下の取引には、結合分離適用指針の定めが優先して適用される(結合分離適用指針97-2項)。 (了)

#No. 315(掲載号)
#阿部 光成
2019/04/18

組織再編時に必要な労務基礎知識Q&A 【Q16】「会社分割にあたっては「労働者の理解と協力」を得るよう努めなければならないとされているが、どのような対応が必要か」

組織再編時に必要な労務基礎知識 Q&A 【Q16】 会社分割にあたっては「労働者の理解と協力」を得るよう努めなければならないとされているが、どのような対応が必要か   特定社会保険労務士 岩楯 めぐみ   【A】 労働者の理解と協力を得るために、分割会社のすべての事業場において、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、当該組合がない場合は労働者の過半数を代表する者等と、会社分割に係る事項について協議を行う対応が必要となる。 (※) 本稿では、会社分割により事業を分割する会社を「分割会社」、それを承継する会社(新設分割の場合の新設会社も含む)を「承継会社」という。   労働者の理解と協力 労働契約承継法第7条では、会社分割にあたり、分割会社において労働者の理解と協力を得るよう努めることを求めている。 これは、会社分割によって事業が承継されることにより、通常は分割会社で引き続き勤務する労働者と承継会社で勤務する労働者とに分かれることになるが、そのいずれの労働者に対しても少なからず影響を与えることが想定されるため、労働契約が承継される労働者か否かにかかわらず、分割会社で勤務する労働者全体の理解と協力を得るよう努めることを求めている。   過半数組合等との協議 労働契約承継法第7条において想定されている手続きは、分割会社のすべての事業場において、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合(以下、過半数組合)、当該組合がない場合は労働者の過半数を代表する者(以下、過半数代表者)と協議を行うことである。 なお、これらに準ずる方法として、労使対等の立場で誠意をもって協議が行われることが確保される場における協議も含まれるとされる。したがって、例えば、ある事業場に複数の労働組合があり、そのいずれも労働者の過半数で組織されたものではない場合に、それぞれの労働組合と協議することにより、労働契約承継法第7条の対応とすることが考えられ、協議する対象は過半数組合(又は過半数代表者)に限られない。   協議する事項 分割会社において労働者の理解と協力を得るために協議する事項として、指針において次の事項があげられている。これらはあくまで例示であり、他に追加すべき事項があれば対応が求められる。 (※1) 「承継される事業に主として従事する者」については前回参照。 (※2) 例えば、承継される事業に主として従事する者に該当するか否かについて、分割会社と労働者で見解に相違がある場合の問い合わせ窓口を設置する等が考えられる。 なお、労働者の理解と協力を得るために、上記の事項などについて協議する必要はあるが、合意することまでは求められていない。   協議すべき時期 労働契約承継法第7条の対応は、遅くとも商法等改正法附則第5条に基づく協議を開始する日までに着手する必要があり、必要に応じてその後も継続的に協議する必要がある。 なお、商法等改正法附則第5条に基づく協議は、承継される事業に従事している者等との個別協議となるが、この協議は労働契約承継法第2条に基づく通知期限日(例えば、株式会社で株主総会を要する会社分割を行う場合は、株主総会の日の2週間前の日の前日)までに実施することが求められているため、労働契約承継法第7条の対応はそれ以前に必要となる。   参考となる判例 労働契約承継法第7条の手続きに関する会社分割への効力については、日本IBM事件(最二小判平成22年7月12日、労判1010-5)において、次の考え方が示されている(下線筆者)。 上記の通り、労働契約承継法第7条の対応が適切でなかったとしても、直ちに労働契約承継の効力が否定されるものではないが、同裁判では下記の考え方も示されており、指針に沿った対応が求められる(下線筆者)。 (了)

#No. 315(掲載号)
#岩楯 めぐみ
2019/04/18
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