日本の企業税制 【第57回】「改正相続法と税制への影響」
筆者:小畑 良晴
文字サイズ
- 中
- 大
- 特
日本の企業税制
【第57回】
「改正相続法と税制への影響」
一般社団法人日本経済団体連合会
経済基盤本部長 小畑 良晴
〇改正相続法の成立
7月6日、参議院本会議で、「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案」が可決成立した。
この法案は、高齢化の進展等の社会経済情勢の変化に鑑み、相続が開始した場合における配偶者の居住の権利及び遺産分割前における預貯金債権の行使に関する規定の新設、自筆証書遺言の方式の緩和、遺留分の減殺請求権の金銭債権化等を行うものである。
今回の改正は、1980年に配偶者の法定相続分の引上げや寄与分制度の創設等の見直しがされて以来、約40年ぶりの大規模な見直しである。
法案の主な内容は次のとおりである。
1 配偶者が、終身又は一定期間、無償で被相続人の財産に属した建物の使用及び収益をすることができる権利(配偶者居住権)を創設し、遺産分割又は遺贈により、これを取得することができることとする。
2 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち、一定額については、他の共同相続人の同意を得ることなく、単独で払戻しをすることができる。
3 自筆証書遺言の要件を緩和し、自筆証書に相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については自書することを要しないこととする。
4 遺留分を侵害された者の権利の行使によって遺贈又は贈与の全部又は一部が当然に失効するとされている現行法の規律を見直し、遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずることとする。
5 被相続人の親族で相続人以外の者(特別寄与者)が、被相続人の療養看護等を無償でしたことにより被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした場合には、相続の開始後、相続人に対して金銭(特別寄与料)の支払を請求することができる。
なお、今回の改正の施行期日は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日とされているが、上記1については公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日、3については公布の日から起算して6月を経過した日とされている。
○記事全文をご覧いただくには、プレミアム会員としてのログインが必要です。
○プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

○プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。
○一般会員の方は、下記ボタンよりプレミアム会員への移行手続きができます。
○非会員の皆さまにも、期間限定で閲覧していただける記事がございます(ログイン不要です)。
こちらからご覧ください。
連載目次
日本の企業税制
- 【第99回】 第2の柱のモデルルールが公表される-GloBEルールの範囲とメカニズムを規定-
- 【第100回】 第1の柱の利益Aに係る「ネクサスとソースルールに関するモデルルール案」の公表
- 【第101回】 揮発油税等のトリガー条項
- 【第102回】 賃上げ促進税制の抜本強化
- 【第103回】 本年度末で適用期限を迎える「長期保有土地等の買換え特例」
- 【第104回】 「新しい資本主義」実現に向けた“人への投資”
▷2021年
- 【第87回】 2度目の緊急事態宣言下での対応
- 【第88回】 改正法案からみる3つの新たな税制措置の相違-DX投資促進税制、CN投資促進税制、繰越欠損金の控除上限の特例-
- 【第89回】 グループ通算制度に係る税効果会計の検討
- 【第90回】 米国バイデン政権の税制改革計画
- 【第91回】 所有者不明土地問題に対処する法律が成立
- 【第92回】 税務に関するコーポレートガバナンスの充実
- 【第93回】 産業競争力強化法等の改正法案成立
- 【第94回】 令和4年度税制改正の課題
- 【第95回】 控除率が焦点となる住宅ローン控除制度の見直し
- 【第96回】 賃上げを行う企業への税制支援
- 【第97回】 OECDが国際課税の枠組みの見直しに関する解決策について合意
- 【第98回】 令和4年度税制改正大綱がまとまる
▷2020年
- 【第75回】 グループ通算制度の特徴
- 【第76回】 BEPS包摂的枠組みに関する声明(2020.1.31)から見た本年のデジタル課題の動向
- 【第77回】 グループ通算制度創設に伴う税効果会計の適用
- 【第78回】 緊急経済対策における税制上の措置
- 【第79回】 株主総会の延期と法人税の確定申告期限
- 【第80回】 連結納税制度適用会社のグループ通算制度への移行
- 【第81回】 令和元年の会社法改正を受けた税制措置と今後の動向-株式の無償交付による役員報酬等-
- 【第82回】 令和3年度税制改正における研究開発税制の課題-見直し事項とグループ通算制度での取扱い-
- 【第83回】 税務手続のデジタル化
- 【第84回】 各府省庁の「令和3年度税制改正要望」を概観する
- 【第85回】 OECDのブループリント
- 【第86回】 令和3年度与党税制改正大綱の概要
▷2019年
- 【第63回】 役員給与をめぐる規律の見直し
- 【第64回】 電子経済課税に関する動向
- 【第65回】 所有者不明土地問題解消に向けた法制・税制上の取組み
- 【第66回】 政府税調専門家会合で検討進む「連結納税制度の見直し案」-第2回会合資料(2019.2.14)から-
- 【第67回】 政府税調専門家会合で検討進む「連結納税制度の見直し案」-第3回会合資料(2019.4.18)から-
- 【第68回】 経済の電子化に伴う課税上の課題への対応
- 【第69回】 政府税調専門家会合で検討進む「連結納税制度の見直し案」-第4回会合資料(2019.6.26)から-
- 【第70回】 令和2年度税制改正の課題
- 【第71回】 各府省庁の「令和2年度税制改正要望」を概観する
- 【第72回】 OECDが電子経済への課税について「統合的アプローチ」を提案
- 【第73回】 OECDが最低税率課税を提案
- 【第74回】 令和2年度税制改正大綱における法人課税の主要改正点
▷2018年
- 【第51回】 事業承継税制の特例の創設
- 【第52回】 法案から見た法人税等の電子申告の義務化
- 【第53回】 会社法改正と税制との関係
- 【第54回】 所有者不明土地問題の解消に向けた施策
- 【第55回】 地方法人課税の偏在是正の動向
- 【第56回】 「骨太の方針2018」と消費税率引上げによる需要変動の平準化
- 【第57回】 改正相続法と税制への影響
- 【第58回】 期限を迎える教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与時の非課税措置
- 【第59回】 各府省庁の要望事項からみた「平成31年度税制改正」の課題
- 【第60回】 消費税率の引上げに向けた対策
- 【第61回】 シェアリングエコノミー・仮想通貨等の所得把握に向けた検討状況
- 【第62回】 平成31年度与党税制改正大綱における主な法人課税の改正点
▷2017年
- 【第39回】 外国子会社合算税制の抜本的見直し
- 【第40回】 業績連動給与の損金不算入-改正法案における規定の確認-
- 【第41回】 100%子会社化に係る税制(スクイーズアウト税制)の見直し
- 【第42回】 政府による電子申告推進の取組み-電子申告の義務化実現と法人の利用率100%を目標に-
- 【第43回】 国際課税に関する今後の改正動向を探る
- 【第44回】 各国が署名した「BEPS防止措置実施条約」とは何か?
- 【第45回】 「収益認識に関する会計基準」の策定が税務へ与える影響
- 【第46回】 個人所得課税における納税環境の整備(電子化)に向けた動向
- 【第47回】 平成30年度税制改正に向けた各省庁の要望事項のポイント
- 【第48回】 衆議院選の各党マニフェストからみた税制への取組み
- 【第49回】 米国下院による税制改革法案-法人税関係の主な改正点-
- 【第50回】 新経済政策パッケージから平成30年度税制改正へ
▷2016年
- 【第27回】 平成28年度税制改正における国際課税関係の概要
- 【第28回】 企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)について
- 【第29回】 軽減税率に係る消費税法の構造
- 【第30回】 法人実効税率引下げと税効果会計の対応
- 【第31回】 組織再編税制の適格要件の見直し-平成28年度税制改正事項-
- 【第32回】 消費税率引上げ延期の影響-見直しが必要な関係法令-
- 【第33回】 譲渡制限付株式を用いた役員報酬制度の創設
- 【第34回】 国別報告事項の提供制度の創設
- 【第35回】 各省庁の税制改正要望からみた平成29年度税制改正の課題(法人課税)
- 【第36回】 いわゆる『103万円の壁』の引上げがもたらす影響について
- 【第37回】 政府税制調査会が取りまとめた2つの報告書について
- 【第38回】 平成29年度税制改正大綱における配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し
▷2015年
- 【第15回】 成長戦略としての平成27年度税制改正
- 【第16回】 BEPSの進捗状況と行動計画13(移転価格の文書化)
- 【第17回】 BEPS行動6(租税条約の濫用防止)の動向
- 【第18回】 BEPS行動8~10:移転価格ガイドラインの改定
- 【第19回】 BEPS行動3:外国子会社合算税制の強化
- 【第20回】 BEPS行動8:価格付けが困難な無形資産
- 【第21回】 BEPS行動12:義務的情報開示ルール
- 【第22回】 BEPS行動14:紛争解決
- 【第23回】 平成28年度税制改正と法人税改革の早期実現
- 【第24回】 BEPS最終報告書と今後の動向
- 【第25回】 『法人税改革』早期完了への道筋
- 【第26回】 平成28年度税制改正大綱を概観する
▷2014年
筆者紹介
小畑 良晴
(おばた・よしはる)
一般社団法人 日本経済団体連合会 経済基盤本部長
1965年生まれ。1990年東京大学法学部卒業。同年(社)経済団体連合会(現 日本経済団体連合会)事務局入局。
2006年経済法制グループ長 兼 税制・会計グループ副長、2009年経済基盤本部主幹、2015年より現職。
税制、経済法規、金融・資本市場などの各委員会を担当。【著書】
・『改正会社法対応版 会社法関係法務省令 逐条実務詳解』共著(清文社)
・『税制改正の要点解説』共著(清文社)
他多数
Profession Journal関連記事
関連書籍
- NEW!
マンガと図解
新・くらしの税金百科 2022→2023
公益財団法人 納税協会連合会 編
定価:1,980円(税込)
会員価格:1,782円(税込)
- NEW!
新版
基礎から学ぶ相続法
弁護士 木村浩之 著
定価:2,860円(税込)
会員価格:2,574円(税込)
-
13訂版 図解&イラスト
中小企業の事業承継
税理士 牧口晴一 著 名古屋商科大学大学院教授 齋藤孝一 著
定価:3,520円(税込)
会員価格:3,168円(税込)
-
五訂版
もめない相続 困らない相続税
税理士 坪多晶子 著 弁護士 坪多聡美 著
定価:3,300円(税込)
会員価格:2,970円(税込)
-
税理士はいかにミスと向き合うべきか
税理士 白井一馬 著
定価:2,420円(税込)
会員価格:2,178円(税込)
-
はじめての国際相続
税理士法人ゆいアドバイザーズ 中山史子 著
定価:3,300円(税込)
会員価格:2,970円(税込)
-
民法・税法2つの視点で見る贈与
弁護士法人ピクト法律事務所 代表弁護士 永吉啓一郎 著
定価:3,300円(税込)
会員価格:2,970円(税込)
-
新版/改正通達に対応
相続・事業承継に役立つ生命保険活用術
税理士法人レディング 税理士 木下勇人 著
定価:2,860円(税込)
会員価格:2,574円(税込)
-
様々な悩みを“親愛信託”で解決!!
信託活用Q&A
よ・つ・ばグループ 協同組合親愛トラスト 編著
定価:2,420円(税込)
会員価格:2,178円(税込)
-
令和3年12月改訂
〇×判定ですぐわかる資産税の実務
公益財団法人 納税協会連合会 編集部 編
定価:2,750円(税込)
会員価格:2,475円(税込)