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〔“もしも”のために知っておく〕中小企業の情報管理と法的責任 【第5回】「コンピュータがウィルスに感染して個人情報が漏えいした場合」

〔“もしも”のために知っておく〕 中小企業の情報管理と法的責任 【第5回】 「コンピュータがウィルスに感染して個人情報が漏えいした場合」   弁護士 影島 広泰   -Question- 会社が支給した従業員のコンピュータがウィルスメールに引っかかってしまい、個人データが漏えいしてしまいました。この場合、自社は個人情報保護法の義務違反になるでしょうか。 -Answer- コンピュータにウィルス対策ソフトを導入して、常にアップデートしておくなどしておかないと、義務違反を問われる可能性があります。 ウィルスメールに感染するなどしてコンピュータから個人データが漏えいした場合、通則ガイドラインが定める安全管理措置のうち「技術的安全管理措置」(下記表の⑥)を果たしていたかどうかが問われることになる。 ◆個人情報保護法のガイドラインが定める安全管理措置(概要) (※) ①~④については【第2回】で解説。また、⑤については【第3回】、【第4回】で解説。   ⑥ 技術的安全管理措置 コンピュータから情報漏えいしないための安全管理措置のことを「技術的安全管理措置」といい、通則ガイドラインでは以下の(1)~(4)が義務であるとされている。 (1) アクセス制御 まず、誰でも個人データに触ることができる状態にしておくことは禁止されている。アクセス制御を行い、個人データにアクセスできる者を限定しなければならない。 具体的には、個人データを取り扱うコンピュータを限定したり、システムのアクセス制御機能を使うなどして、アクセス制御していくことになる。 (2) アクセス者の識別と認証 次に、アクセスする人間を、ID・パスワード等で識別・認証しなければならない。 例えば、小規模な会社が顧客情報をコンピュータで管理するケースを考えると、顧客情報を保存するコンピュータを決めて、そのコンピュータの起動時にID・パスワードを設定しておけば、(1)と(2)を合わせた最低限の対策となるであろう。 (3) 外部からの不正アクセス等の防止 また、外部からの不正アクセスやウィルスへの感染等が発生しないための技術的な措置を講じなければならない。 通則ガイドラインでは、具体的手法として以下が挙げられている。 これによれば、ウィルス対策ソフトを導入した上で、そのソフトとOS(Windowsなど)を自動更新機能により常に最新版にしておけば、最低限の対策になると考えられる。 つまり、今回のQ&Aにあるように、万が一、会社内のコンピュータがウィルスに感染して個人データが漏えいした際に、「ウィルス対策もしてなければWindowsなどのOSも古いままであった」などということがあれば、それは技術的安全管理措置の中の「外部からの不正アクセス等の防止」の措置を講じていなかったとして、個人情報保護法に違反しているといわれる可能性があるので、注意したい。 なお、ここでもう1つ検討していただきたい点がある。それは、上記の例示の中にある「ログ等の定期的な分析」である。サーバ等のログを保管している会社は多いが、それを定期的に確認していない会社が多いように思われる。2014年に発生した大手通信教育事業社からの3,000万件の個人情報漏えい事件のように、情報が漏えいしていることに会社が長期間にわたり気づかずにいると、被害が拡大し続けてしまう。 情報漏えいを100%防ぐことはできない以上、会社としては、漏えいしていることにいち早く気づく体制を構築しておくことが重要である。ログの定期的な分析は、是非とも積極的にご検討いただきたい。 システム管理者が定期的にログを確認することが難しいようであれば、この部分についてはソリューションを導入することが考えられる。例えば、サーバから一定量以上のデータがダウンロードされた際にはシステム管理者等にメールで通知が行く、というアラート・システムを導入する。こうしておけば、情報漏えいにいち早く気づくことができるし、そのシステムの導入を社内外に周知しておけば、情報の不正取得に対する威嚇効果を発揮することができるのである。 (4) 情報システムの使用に伴う情報漏えいの防止 最後に、メールを送信するなど情報システムを使用して個人データを取り扱う際に情報漏えいしないための措置を講じなければならない。 具体的には、以下のような措置が例示されている。 メールに添付して個人データが含まれるエクセルファイルを送信する、といったことは日常的に行われていると思われるが、その際、添付するエクセルファイルにはパスワードを設定するなどしておきたい。 *  *  * これまで、個人情報保護法の安全管理措置を順に解説してきた。これまでに説明してきたことをベースに、中小企業が最低限やるべきことを簡単にまとめたものが以下の表である。実務の参考にしていただけると幸いである。 ※クリックすると別ページでPDFが開きます。 (了)

#No. 280(掲載号)
#影島 広泰
2018/08/09

《速報解説》 経営革新等支援機関の認定更新制、第1号~第3号認定の集中受付期間は本年11月末まで~実務経験不足の場合は中小機構による指定研修の受講及び試験合格も検討~

《速報解説》 経営革新等支援機関の認定更新制、 第1号~第3号認定の集中受付期間は本年11月末まで ~実務経験不足の場合は中小機構による指定研修の受講及び試験合格も検討~   Profession Journal編集部   既報のとおり本年7月9日に施行された産業競争力強化法等の一部を改正する法律において中小企業等経営強化法が改正され、同日から経営革新等支援機関認定制度に「認定の更新制」が導入されている。 経営革新等支援機関の認定制度とは、中小企業の経営課題が多様化・複雑化する中で、専門性の高い支援事業を行う個人・法人、中小企業支援機関等を「経営革新等支援機関」として認定することで、中小企業に対する専門性の高い支援体制の整備を行うことを目的に、2012年から開始されたもの。 本年6月には国が認定した経営革新等支援機関の数が29,188機関(その8割近くが税理士及び税理士法人)となり順調にその数を伸ばしている一方、直近1年間で認定支援業務を行っていない者も約3割存在しているといった問題点も指摘されていたことから、支援体制の質の維持を目的に、今回の更新制導入に至った。 導入された更新制では、経営革新等支援機関の認定期間に「5年」の有効期間が設けられ、期間満了時に改めて業務遂行能力について確認を受ける必要があり、主な確認項目は「専門的知識」「法定業務を含む一定の実務経験」「業務の継続実施に必要な体制」とされている。 このように、今後は認定を受けた日から起算して5年を経過するまでに認定の更新を受ける必要があるわけだが、上記のとおり認定制度は2012年からスタートしているため、すでにこの5年を経過している対象者も存在する。 このため中小企業庁は、既に更新時期を経過した場合を含む認定日が2015年7月8日以前である対象者については、更新事務が一時期に集中することを避けるため、特段の事情がない限り以下の更新時期に認定の更新を受けるよう求めている。 (※) 中小企業庁ホームページより 上表のとおり、制度開始当初に認定を受けた場合は本年11月末が受付期限となるケースもあるため留意が必要だ。ちなみに、自身の認定日については、次の「経営革新等支援機関認定一覧」ページから確認することができる。 なお、認定の更新を受けるために必要な「更新申請書」については、下記の中小企業庁HPもしくは各経済産業局HPにおいてWordファイルで入手することができ、更新申請書は認定申請書と同じ様式(様式第1(第2条第2項及び第6条第1項関係))となっている(様式自体は今回の法改正により誓約書の記載が一部変更されている)。 ここで気になるのは、認定日から更新申請日までの期間に、制度上求められる経営革新等支援業務等の実務経験が不足していた場合だが、本稿公開時点では中小企業庁HPに更新申請書の記載例がなく、各経済産業局によってHP上の情報量に違いがあるものの、東北経済産業局などでは個人・法人、士業ごとの更新申請書の記載要領が公表されており、例えば税理士(個人向け)の更新申請書記載要領のうち実務経験証明書の箇所において、 ・実務経験年数の対象期間は、直近の認定日から更新申請日までとする。 ・経営革新等支援業務に係る実務経験は通算で1年以上であればよい。 ・不足する場合は、(独)中小企業基盤整備機構(中小企業大学校)にて指定された研修を受講し、試験に合格した旨の証明書の写しを添付する。 との説明が見られることから、上記の研修を受け試験に合格することで、実務経験の不足を補うことができると考えられる。 ちなみに、中小企業基盤整備機構による認定支援機関向け研修の詳細は下記のページから確認することができる。 このように、自身の認定更新(申請)期限と実務経験については早めに確認・整理し、各経済産業局のホームページで公表された最新情報についても確認の上、必要に応じ問い合わせを行うようにしておきたい。 なお、今回の更新制導入に合わせ、認定の廃止を検討する機関に向け、廃止届出制度も整備されており、下記のページから廃止届出書の様式や記載要領を確認することができる。 (了)

#No. 279(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2018/08/07

《速報解説》 公認会計士・監査審査会より平成30年版の「監査事務所検査結果事例集」が公表される~「グループ監査」及び「財務諸表監査における不正」における指摘事項・留意点等の記載を充実~

《速報解説》 公認会計士・監査審査会より 平成30年版の「監査事務所検査結果事例集」が公表される ~「グループ監査」及び「財務諸表監査における不正」における 指摘事項・留意点等の記載を充実~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年7月31日、公認会計士・監査審査会は平成30年版の「監査事務所検査結果事例集」を公表した。 今回の事例集の特徴は次のとおりである。 「平成30年版 モニタリングレポート」も公表されており、監査法人の状況などについて、会計専門家ではない一般の利用者にもわかりやすく説明がなされている。 事例集は、公認会計士・監査審査会が行う監査事務所の検査で確認された指摘事例等を取りまとめたものであり、基本的に、監査事務所に関する内容である。 本稿では、事例集に記載された事項のうち、一般事業会社における会計処理等においても参考になると考えられるものを紹介する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 取締役、監査役、投資者等による活用を期待 事例集は、上場会社等の取締役・監査役や投資者等に対する参考情報の提示という観点から、最近の不正会計事案に関するものも含め、審査会検査で確認された指摘事例を記載し、また、監査事務所の改善取組において前向きな取組例も取り入れているので、会計監査人の適切な評価のために、是非参考にしていただきたいと考えているとのことである。   Ⅲ 個別業務における「問題となった事例」 事例集は、次のような事例について述べている。 会計上の見積りについては、継続して不備が頻出していると述べている。 (了)

#No. 279(掲載号)
#阿部 光成
2018/08/07

《速報解説》監査役協会より「『新オレンジ本』から読み解く監査役スタッフ業務の再整理(前編)」が公表される~研究会メンバーからの関心が高かったポイントを抽出、業務の勘所を明らかに~

《速報解説》 監査役協会より「『新オレンジ本』から読み解く 監査役スタッフ業務の再整理(前編)」が公表される ~研究会メンバーからの関心が高かったポイントを抽出、業務の勘所を明らかに~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年7月26日付(ホームページ掲載日は7月31日)、日本監査役協会の本部監査役スタッフ研究会は、「『新オレンジ本』から読み解く監査役スタッフ業務の再整理(前編)」を公表した。 これは、「監査役監査と監査役スタッフの業務」(通称「新オレンジ本」)で対応できなかった課題について取り組み、新オレンジ本を読み解きながら、監査役スタッフ業務の再整理を行えるようにするものである。 表紙を含めて94ページあるので、以下では主な内容について解説することとする。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 期初業務 監査計画はどの程度の詳細度で作成しているかについて、「監査役監査計画(簡易版)」の作成のみであっても、個別の監査業務(「事業所への往査」等)は、実施スケジュール、実施項目などは作成しており、大多数の会社では結果的には詳細版と同程度のものを作成していると考えられるなど、事例や実践についての考察が記載されている(7ページ)。 そのほか、常勤監査役の選定、監査役報酬等の協議など多岐にわたって記載されている。   Ⅲ 期中業務 1 子会社(国内・海外)への調査・確認 子会社の確認・調査はどのようにしているかについて、内部統制チェックリストを作成の上、本社と重要な子会社はチェックリストの全項目を確認すること、中堅の子会社はチェックリストの一部項目のみを確認すること、小規模なところはチェックリストを使わずにヒアリングのみ実施することなどの工夫について記載されている(32ページ)。 2 関連当事者との一般的でない取引の監査 基本的には、「M22:競業取引・利益相反取引の監査」と同じ流れで行っている会社が多かったこと、取締役会への出席及び稟議書閲覧により確認する会社がほとんどであったことなどが記載されている(41ページ)。 会計監査人が非通例取引に関する調査を実施した場合等は、監査役(会)がその調査結果を遅滞なく聴取することが、不祥事等の発生を牽制する上で重要な意味を持つものと考えられると記載されている(41ページ)。 3 子会社監査役との連携 子会社を有する会社は、ほとんどが子会社監査役との連携を行っていたことなどが記載されている(52ページ)。 改正会社法が施行され、企業集団の内部統制が強化されて以降、子会社監査役との連携を強化したという会社も多かったとのことである(52ページ)。 4 三様監査会議 三様監査会議を実施している会社はほとんどなかったことなどが記載されている(67ページ)。 監査役、会計監査人、内部監査部門が一堂に会して会議を行う必要性を見いだせないという意見があったとのことである(67ページ)。 5 内部通報制度の有効性の確認 監査役(室)が内部通報窓口となっている会社は一部で、多くの会社ではコンプライアンス、CSR、内部監査の部門が内部通報窓口となっていることなどが記載されている(70ページ)。 経営に関するもの(談合・背任行為・横領・個人情報漏洩等)と人権に関するもの(パワハラ・セクハラ・クレーム等)とで別個の窓口を設置している会社もあったこと、ほとんどの会社は、社内窓口とともに、弁護士や外部委託者などの社外窓口を設けていることなどが記載されている(70ページ)。 (了)

#No. 279(掲載号)
#阿部 光成
2018/08/03

《速報解説》 東証、2018年3月決算会社までの「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の開示分析結果を公表~IFRS適用済・適用決定及び適用予定会社で200社超に~

《速報解説》 東証、2018年3月決算会社までの 「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の開示分析結果を公表 ~IFRS適用済・適用決定及び適用予定会社で200社超に~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年7月31日、東京証券取引所は、2018年3月期決算会社までの「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の開示内容について分析を行い、その結果を公表した。 IFRS適用済会社、IFRS適用決定会社、IFRS適用予定会社の合計は、2017年6月末(171社)と比較して33社増加し、204社(下記図表の①から③までの会社数の合計)となっており、IFRS適用会社数の増加傾向が見られる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 「決算短信・四半期決算短信作成要領等」(2017年2月)の43ページには、「(3)決算短信(添付資料)の開示事項及び記載上の注意事項」として、次の規定が設けられている。 分析対象会社(3,594社)の分類は、次のとおりである。 出所:東京証券取引所の「『会計基準の選択に関する基本的な考え方』の開示内容の分析」の5~7ページをもとに作成。 「④IFRS適用に関する検討を実施している会社」において、最も多く挙げられていた検討事項は「マニュアル・指針の整備」(47社)である(15ページ)。 (了)

#No. 279(掲載号)
#阿部 光成
2018/08/03

プロフェッションジャーナル No.279が公開されました!~今週のお薦め記事~

2018年8月2日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.279を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2018/08/02

monthly TAX views -No.67-「来年度税制改正の課題」-所得相応性基準の議論-

monthly TAX views -No.67- 「来年度税制改正の課題」 -所得相応性基準の議論-   東京財団政策研究所研究主幹 中央大学法科大学院特任教授 森信 茂樹   平成29年度与党税制改正大綱には、移転価格税制の分野で、「BEPSプロジェクトで勧告された所得相応性基準の導入等必要な見直しを検討すること」とされている。さらに、続く平成30年度与党税制改正大綱においても、所得相応性基準については「諸外国の制度や運用実態等を踏まえて検討を進めること」と記載された。 「所得相応性基準」とは、無形資産の移転価格に係るルールであり、移転時に成功するかどうか予測が難しい「評価困難な無形資産(HTVI:Hard-To-Value Intangibles)」について、事後の取引結果を用いて価格の事後調整を可能とするというものである。 *  *  * 本年4月には、経済産業省の委託調査報告として「BEPSプロジェクトを踏まえた移転価格税制及び各国現地子会社等に対する課税問題に係る調査・研究事業」(2018年2月、EY税理士法人)が公表された。 報告書には、移転価格税制における無形資産の取扱い等に関する調査や日本企業が進出先国で抱えている課題分析などの調査概要、調査結果などがまとめられている。今後の移転価格税制の見直しに当たり、日本企業の海外展開を阻害しないよう、特に無形資産の取扱いを中心に実務上の課題や論点等の整理をしたものである。 この報告書に基づいて、企業関係者や筆者の集まる会で、以下のような意見が出された。 ◆ BEPSの議論・理屈は尊重するが、実務の各論になると詰めるべき点も多く、とりわけ企業の事務コストへの配慮が必要である。 ◆ 所得相応性基準を導入している米国では「伝家の宝刀」として使われており、発動例はほとんどないのではないか。 ◆ ドイツではエグジット・タックス(EXIT TAX)とも呼ばれているが、無形資産の移転時における譲渡益課税の実例はあるものの、遡って課税された実例はないのではないか。 ◆ 取引後の結果を見て対価を修正するという後知恵的側面や独立企業原則との整合性という問題もあることから、広範囲かつ具体的条件を備えた基準の例外規定を設け、その適用を適正な対価から顕著に乖離している無形資産取引に限定することが望ましい。 などである。 *  *  * この制度をわが国が導入する意義としては、企業価値が無形資産化する中で、無形資産取引も増加し、それを一定の基準により客観的に評価できるようにすることは、納税者・税務当局双方にとって利益につながるということだろう。 今後、年末に向けて十分な検討、経済界との対話が必要と思われるが、わが国企業が、無形資産の価値を改めて認識することの絶好の機会になれば、意味があると考える。 (了)

#No. 279(掲載号)
#森信 茂樹
2018/08/02

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第48回】

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第48回】   公認会計士 佐藤 信祐   (《第8章》 平成18年から平成21年までの議論) ② 合併の1ヶ月前のリストラと従業者引継要件の判定 (ⅰ) 平成21年当時の見解 拙著『組織再編における税制適格要件の実務Q&A(第3版)』(中央経済社)94頁では、「合併の直前」と規定されていることから、合併の直前の従業者を引き継げばよいのであって、合併の1ヶ月前に退職した従業者については引き継ぐ必要はないものとした。そして、合併の直前とは「合併の前日」を指すものとした。 ただし、合併の1ヶ月前に従業者を退職させ、合併の直前の従業者を引継予定の者のみにしてしまえば、容易に従業者引継要件を満たすことができることから、経済合理性もなく、単に従業者引継要件を満たすためだけにリストラを行うことについては、包括的租税回避防止規定(法法132の2)の適用リスクがあるものとしながらも、そのような事案は稀であるとの指摘をしていた。 その理由として、当時は、以下のように解説をしていた。 (ⅱ) 現在の私見 このような解説を行った理由は、ヤフー、IDCF事件が公表される前であったことから、経済合理性基準により包括的租税回避防止規定を検討する事案が多かったからである。ただし、その後、両事件により、制度濫用基準が導入されたため、上記の説明をやや変更する必要があると考えている。 すでに本連載で述べたように、従業者引継要件の制度趣旨は、事業単位の移転である。そうなると、合併の1ヶ月前において被合併法人でリストラを行ったとしても、被合併法人から合併法人への事業単位の移転が行われていれば、従業者引継要件の制度趣旨に反しないということになる。 これに対し、前述のように、「合併前におけるリストラにより被合併法人の従業者が不足し、合併が不成立になった場合には事業が成立しなくなる」場合には、従業者引継要件の制度趣旨に抵触すると考えられる。 具体的には、被合併法人で不足した従業者を合併法人やその他のグループ会社から出向させたり、一時的に派遣社員を雇用したりする場合には、一見、被合併法人に十分な従業者が存在する形になっているが、合併が不成立になったら、合併法人等から出向させた従業者は戻ってしまうし、派遣社員で補充して事業を成立させるというのが、長期的には難しい場合も考えられる。そのため、このような場合には、合併が不成立になった場合には事業が成立しなくなるため、包括的租税回避防止規定が適用されるリスクがあるということになる。 ただし、経済合理性基準により包括的租税回避防止規定を検討したとしても、似たような結論にはなるため、結果として、あまり大きな違いはないということが言える。 ③ 事業規模の縮小と従業者引継要件、事業継続要件 (ⅰ) 平成21年当時の見解 拙著106頁では、事業継続要件では、事業の継続のみが要求されており、事業規模の維持までは要求されていないものとした。ただし、同書106-107頁では、事業規模の縮小により、配置転換を行えず、リストラを行った場合には、従業者引継要件に抵触するものとした。 (ⅱ) 現在の私見 事業継続要件が、事業規模の維持まで求めていないのは、条文上、明らかであることから、現在であっても同様に解するべきだと思われる。また、事業単位の移転という制度趣旨を考えれば、たとえ事業規模が縮小したとしても、事業は残っていることから、制度趣旨に反するとまでは断言できない。 そうなると問題になるのが、従業者引継要件である。なぜなら、合併後に、事業規模が縮小する場合において、従業者のリストラが行われたとしても、事業単位の移転という観点からすれば、依然として事業が残っていることから、合併後のリストラを行ったとしても、従業者引継要件に抵触させるべきではないとする意見もあり得るからである。 そのため、平成13年当時では、合併の直前の従業者を合併の直後に引き継いでいればよく、継続雇用は不要であるというのが一般的な考え方であった。そして、法人税法2条12号の8ロ(1)でも、 と規定されており、「継続して従事することが見込まれていること」とは規定されていない。 しかし、平成15年度税制改正、平成29年度税制改正及び平成30年度税制改正により、二段階組織再編成の規定が整備され、 と規定された。 もし、第1次合併により合併法人に引き継がれた従業者が、その後、リストラされても構わないのであれば、第2次合併があった場合の取扱いは不要のはずである。なぜなら、第2次合併を行う前に、該当する従業者を辞めさせても、従業者引継要件に抵触しないからである。 しかしながら、平成29年度税制改正により、主要資産等引継要件における二段階組織再編成の規定は廃止されたものの、従業者引継要件及び事業継続要件における二段階組織再編成の規定が残ったため、二段階組織再編成が行われない通常の事案であっても、組織再編成の直前の従業者を組織再編成の直後に引き継ぐだけでなく、その後の継続雇用も必要であると解される。 このように、現在であっても、事業継続要件では、事業の継続のみが要求されており、事業規模の維持までは要求されていないと解するべきであるものの、事業の縮小により、配置転換を行えず、リストラを行った場合には、従業者引継要件に抵触すると解すべきであると考えられる。 *   *   * 次回では、引き続き税制適格要件の内容について触れる予定である。 (了)

#No. 279(掲載号)
#佐藤 信祐
2018/08/02

平成30年度税制改正における「一般社団法人等に関する相続税・贈与税の見直し」 【第1回】

平成30年度税制改正における 「一般社団法人等に関する相続税・贈与税の見直し」 【第1回】   国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦   1 はじめに いわゆる公益法人制度改革の一環として、それまで民法34条によって規定されていた公益法人制度が廃止され、代わって2006年5月に一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法人法」)が成立し、2008年12月に施行されて以来、一般社団法人の存在が日増しに高まってきている。 これには、事業承継の際に一般社団法人の法人格を利用することにより相続税の回避が可能となるという、主として税務目的によるという側面もあるものと考えられる。すなわち、法人格を有する代表的な組織形態である株式会社と比較した場合、一般社団法人には株式のような「持分」が存在しないため、原則として相続の際に相続税が課されないということに着目されたというわけである。 このような一般社団法人の特徴に着目した租税回避行為の実行可能性については、一般法人法成立直後から指摘され、事業承継に関心を持つ租税実務家の間では常識となっていたところである。当然のことながら、課税庁はそのような動向には気を配っていたようであり、それもあって今般の税制改正で、「目に余る」租税回避行為に対処するための立法措置を採ったものと考えられる。 そこで本稿では、一般社団法人の特徴と事業承継における具体的な利用のパターン、本年度の税制改正の内容と今後の動向について、以下で確認していきたい(※1)。 (※1) なお、本稿の主たる検討対象は一般社団法人であるが、財産を拠出し、それを原資に例えば奨学金を給付するときに利用される一般財団法人についても検討の射程に入っている。   2 一般社団法人の特徴 (1) 一般社団法人とは 社団法人は、共通の目的を実現しようとする人の集まりをいう。同じように法人格を有する株式会社とは異なり、法人の構成員である社員が利益を得ることを目的としていないことが必要である(非営利目的、一般法人法11②(※2))。これに対し、私法人(※3)のもう1つの類型である財団法人は、設立者が拠出した財産(目的財産)を基礎に、定款(※4)に示された設立者の意思を活動の準則とする法人である。 (※2) 法律上、「非営利」という用語は使用されていないが、11条2項で、定款で社員に対する剰余金又は残余財産の分配権を定めることができない旨が規定されている。ただし、当該条項に違反して剰余金又は残余財産の分配を行ったとしても、罰則規定はない。 (※3) 国家的公共の事務を遂行する目的で、公法に準拠して成立する法人である公法人に対する概念で、私人の自由な意思決定による事務遂行のため、私法に準拠して設立される法人をいう。四宮和夫・能見善久『民法総則(第九版)』(弘文堂・2018年)103-104頁。 (※4) 旧公益法人制度においては、「寄附行為」と呼ばれていた。 前述の通り、社団法人は一般法人法の制定により、準則主義(※5)で設立される非営利目的の一般社団法人(※6)へと改組されることとなった。また、一般社団法人は公益認定等委員会・審議会の諮問に基づいてなされる行政庁の認定を受けることにより、公益社団法人となる(公益認定法4、9)。なお、一般社団法人であっても公益目的の事業を行うことに制限はないが、公益性の認定を受けないと原則として税制上の優遇措置は受けられない(※7)。 (※5) 法律の定める要件を満たし、一定の手続きによって公示されたときに法人の成立を認めるものをいう。旧民法34条における公益法人制度やNPO法人(特定非営利活動法人)のような許可主義と異なり、特定の所管庁(主務官庁)による関与がなく自由度が高いのが特徴といえる。四宮・能見前掲(※3)書102-103頁。 (※6) ただし、一般社団法人は非営利事業のみでなく営利事業も行えるなど、事業についての制限は原則として存在しない。 (※7) ただし、法人税法上、非営利型法人に該当する場合には、収益事業から生じた所得に対してのみ課税される(法法2五・九の二、法令3)。 一般法人法制定に伴う一般社団法人の制度導入後における設立数の統計は、以下のグラフの通りである。 〇一般社団法人の設立数の推移 (出典) 法務省「一般社団法人の登記の件数(主たる事務所)」各年版 (2) 一般社団法人の設立 一般社団法人の設立には、まずその構成員である社員(正会員)になろうとする2人以上の者(設立時社員)が、定款を作成し、それに関し公証人によって認証を受ける必要がある(一般法人法10、13)。 設立者が最低でも300万円の財産を拠出する必要がある一般財団法人と異なり、一般社団法人は財産を拠出する必要がなく(一般法人法153②)、非営利目的の法人であるため、出資や持分という概念は存在しない(※8)。 (※8) 代わりに、基金制度がある(一般法人法131~140)。四宮・能見前掲(※3)書163-164頁参照。 その後、設立登記を行うことにより、法人が成立する(一般法人法22)。 (3) 一般社団法人の組織 一般社団法人において必ず置かなければならない機関は、社員総会と理事である(一般法人法60①)。 社員総会は、社員により構成される法人の最終意思決定機関であり(一般法人法35①)、毎事業年度の終了後に招集される定時社員総会と、必要に応じて招集される臨時社員総会がある(一般法人法36)。社員総会においては、理事・監事の選任・解任、計算書類等の承認、定款の変更等の重要事項の決定がなされる(※9)。社員の議決権は平等(1社員1票)であることが原則である(一般法人法48①)。 (※9) ただし、理事会設置の一般社団法人においては、社員総会は、法律に規定する事項及び定款で定められた事項に限り決議することができる(一般法人法35②)。 理事は法人の業務執行機関であるが(一般法人法60、76①)、一般財団法人と異なり、一般社団法人の場合、理事会は必ずしも設置する必要はない(理事会非設置の一般社団法人)。理事は最低1名置けばよく(一般法人法60①)、自然人のみならず法人でも就任できるものと解されている。 一般社団法人が理事会(※10)を設置する場合、理事は3名以上置く必要があり、業務執行権が代表理事(※11)(理事長)に集中する(一般法人法91)。また、理事会設置の一般社団法人の場合、監事も置く必要がある(一般法人法61)。さらに、理事会が置かれる場合、法人の重要な取引については、その決議を経て執行される(一般法人法90④)。 (※10) 業務執行についての意思決定と代表理事・業務担当理事による業務執行の監督を行う(一般法人法90②)。 (※11) 代表理事は登記事項である(一般法人法301)。 監事は、理事が法令違反の行為や定款違反の行為を行わないよう、その職務を監査する(一般法人法99①)。また、負債の額200億円以上の大規模な一般社団法人については、その計算書類及び附属明細書を監査する会計監査人を置く必要がある(一般法人法2二、62)。 一般社団法人の組織を図で示すと以下の通りとなる。 〇一般社団法人の組織・機関 (4) 一般社団法人の解散 一般社団法人は、以下の事由が生じたときは解散することとなる(一般法人法148)。 一般社団法人が解散すると、清算手続きが開始する。 清算手続きにおいて全ての債務を弁済した後、残余財産があるときは、定款の定めに従って処分される(一般法人法239①)。定款に残余財産の帰属先について定めがない場合には、清算法人の社員総会の決議によって処分方法が決定される(一般法人法239②)。この決議により、社員に残余財産を帰属させることもできると解されている(※12)。 (※12) ただし、社員総会の決議によって残余財産を社員に帰属させることについては、非営利性に反するとして立法論として反対する見解もある。四宮・能見前掲(※3)書156頁。 なお、公益社団法人の場合、残余財産を国・地方公共団体、学校法人等の類似の事業を目的とする他の公益法人等に帰属させる旨の定款を定める必要がある(公益認定法5十八)。   (了)

#No. 279(掲載号)
#安部 和彦
2018/08/02

〈平成30年度改正対応〉賃上げ・投資促進税制(旧・所得拡大促進税制)の適用上の留意点Q&A 【Q4】「継続雇用者給与等支給額の範囲」

〈平成30年度改正対応〉 賃上げ・投資促進税制(旧・所得拡大促進税制)の 適用上の留意点Q&A 【Q4】 「継続雇用者給与等支給額の範囲」   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   [Q4] 平成30年度の税制改正により、継続雇用者給与等支給額の集計方法が変わったと聞きましたが、具体的にはどのように見直されたのでしょうか。   [A4] 継続雇用者の定義が以下のいずれも満たす国内雇用者に変更されました。 ・適用年度とその前事業年度等の期間の各月分の給与等の支給を受けていること ・雇用保険一般被保険者に該当する者に限り、継続雇用制度適用対象者を除く 【解説】 (1) 継続雇用者の定義の見直し 改正前の制度における継続雇用者とは「適用年度及びその前事業年度等において給与等の支給を受けた国内雇用者」をいい(旧措法42の12の5②八)、継続雇用者給与等支給額は、継続雇用者のうち雇用保険一般被保険者に該当する者(継続雇用制度適用対象者を除く)に係る給与等支給額を集計することとされていた(旧措令27の12の5⑭)。 これまで、継続雇用者給与等支給額を集計するためには、まず継続雇用者の範囲を確定させ、さらに給与等支給額を集計すべき対象者を絞り込むという作業が必要であり、適用年度及びその前事業年度等のそれぞれにおいて一度でも給与等の支給を受けた者を拾い出すという作業は相当な負担になっていたと思われる。 たしかに、判定対象期間の2期にわたり給与等の支給を受けていれば、それぞれを比較することで賃上げの効果を測定することはできるが、実際には、個々人において賃上げが達成できているかという観点ではなく、個別の支給事情を考慮しない平均給与等支給額によって賃上げ効果を測定するような制度設計のもとでは、継続雇用者の定義自体がいささか細かすぎたように思う。 改正後の制度では、継続雇用者とは「適用年度及びその前事業年度の期間内の各月において当該法人の給与等の支給を受けた国内雇用者のうち一定のもの」とされ、「一定のもの」として「雇用保険の一般被保険者に該当するものに限り、継続雇用制度適用対象者を除く」と定義された(措法42の12の5③六、措令27の12の5⑬)。 これによって、期の中途で入社・退職した者は継続雇用者に該当しないこととなり、完全に集計から除外することができるようになった。 細かい話ではあるが、改正前の制度では、雇用保険関連の取扱いは「金額の集計」に関連して定められていたのに対し、改正後の制度では「継続雇用者の定義」の中に組み込まれている点に留意が必要である。すなわち、期の中途で雇用保険一般被保険者資格を得喪した者や継続雇用制度の適用対象者となった者も継続雇用者に該当しないこととなり、そもそも集計に含める必要がなくなった。 なお、定義を満たす継続雇用者が存在しない場合、継続雇用者比較給与等支給額はゼロとなり、本税制の適用要件を満たさないこととなる(措令27の12の5㉒)。 (2) 「期間内の各月」の意義と継続雇用者給与等支給額 継続雇用者の定義に含まれている「適用年度及びその前事業年度等の期間内の各月において当該法人の給与等の支給を受けた」という表現に関し、「期間内の各月」の取扱いについては、適用年度の月数と前事業年度等の月数が異なる場合には以下のように異なる取扱いが定められているので留意が必要である(特に、みなし事業年度が設定される事業年度付近で留意すべきと考えられる)。 そのうえで、継続雇用者とされた者に係る雇用者給与等支給額が「継続雇用者給与等支給額」とされる(措令27の12の5⑭)。 ① 適用期間の月数と前事業年度等の月数が同じ場合(措令27の12の5⑬一) 適用年度の期間及びその前事業年度等の期間内の各月にわたり給与等の支給を受けた者が継続雇用者に該当する。 【下図では・・・12ヶ月+12ヶ月=24ヶ月】 ② 前事業年度等の月数が適用年度の月数に満たない場合(措令27の12の5⑬二イ) 適用年度の期間及びその適用年度開始の日前1年以内に終了した各事業年度(前1年事業年度等)の期間内の各月にわたり給与等の支給を受けた者が継続雇用者に該当する。 ここで「前1年事業年度等」は、設立の日以後に終了した事業年度に限られ、適用年度開始の日から起算して1年前の日又は設立の日を含む前1年事業年度等にあっては、その1年前の日又はその設立の日のいずれか遅い日から当該前1年事業年度終了の日までの期間(前1年事業年度等特定期間)が対象となる。 【下図では・・・4ヶ月+8ヶ月+12ヶ月=24ヶ月】 (※1) 前1年事業年度等特定期間=上図の前々事業年度(4ヶ月)+前事業年度(8ヶ月) (※2) 最長でも、適用年度開始の日から起算して1年前の日以降の期間が集計対象となる。 ③ 前事業年度等の月数が適用年度の月数を超える場合(措令27の12の5⑬二ロ) 適用年度の期間及びその前事業年度等の期間のうちその適用年度の期間に相当する期間でその前事業年度等の終了の日に終了する期間(前事業年度等特定期間)内の各月にわたり給与等の支給を受けた者が継続雇用者に該当する。 【下図では・・・8ヶ月+8ヶ月=16ヶ月】 (3) 継続雇用者比較給与等支給額 (2)により継続雇用者給与等支給額が定められれば、それと対応する形で継続雇用者比較給与等支給額も集計することができる(措令27の12の5⑮)。この場合においても、適用年度の月数と前事業年度等の月数が異なる場合に応じて、それぞれ以下のように取り扱われるので留意が必要である。 ① 適用期間の月数と前事業年度等の月数が同じ場合(措令27の12の5⑮一) 継続雇用者比較給与等支給額は、継続雇用者に対する前事業年度等に係る給与等支給額とされる。 ② 前事業年度等の月数が適用年度の月数に満たない場合(措令27の12の5⑮二イ) 継続雇用者比較給与等支給額は、以下の算式で求められる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 このような按分計算が求められているのは、前1年事業年度等特定期間に設立事業年度が含まれている場合には、その期間が必ずしも適用年度の月数(上図では12ヶ月)と一致するわけではなく、月数補正が必要になる可能性があるためである。 ③ 前事業年度等の月数が適用年度の月数を超える場合(措令27の12の5⑮二ロ) 継続雇用者比較給与等支給額は、継続雇用者に対する前事業年度等特定期間に係る給与等支給額とされる。 (4) 決算・申告上の留意点 以上説明したとおり、継続雇用者の範囲は厳密には適用年度末まで確定しないものであるが、少なくとも、前事業年度のすべての月にわたり給与等の支給を受けた国内雇用者が最大の母集団となるはずである。ここから、適用年度の中途で退社等により給与等の支給を受けなくなった者等を除外すれば、適用年度における継続雇用者の範囲が確定することになる(適用年度中の新入社員は一切考慮不要)。 とすれば、継続雇用者比較給与等支給額をあらかじめ把握することも、ある程度可能な状況であるといえる(前事業年度のすべての月にわたり給与等の支給を受けた国内雇用者に係る給与等支給額を集計すればよい)。これは改正前の制度において継続雇用者比較給与等支給額の集計も年度末にならないと確定しなかったことと比較して大きな状況変化であると考える。 本税制の適用可否のシミュレーション上、継続雇用者給与等支給額の要件を満たすかどうか事前に検討する上で、集計方法の変更について留意されたい。 (了)

#No. 279(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2018/08/02
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