女性会計士の奮闘記 【第36話】 (最終回) 「これからが本番!」 公認会計士・税理士 小長谷 敦子 ・ ・ ・ 〈ノビ(株) 部門別損益表〉 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (おわり) ◆ワンポントアドバイス◆ 「経営を見える化」するために、部門別損益計算書の作成は、とても大切な作業です。ただし、作っただけで満足してはいけません。また、一部の人だけがその数字を見て議論していても、経営数字は良くなりません。 まず、この自部門の数字を、業績報告会でリーダーに発表してもらい、意見を出し合います。そして、リーダーが部門に帰って、メンバーに業績報告会の結果を伝えます。 そのことによって、全従業員が数字を共有することができるようになります。まさしくそれが全員参加経営です。 その全員参加経営によって、数字を良くするための知恵が生まれてくるのです。
《速報解説》 法人事業税、外形標準課税の割合を8分の5へ拡大、 所得割の税率は引下げ ~平成28年度税制改正大綱~ 公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎 1 はじめに 平成27年12月16日、与党(自由民主党及び公明党)より「平成28年度税制改正大綱」が公表された。法人課税をめぐる改正の方向性は過去の方針を引き継ぎ、「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」という考え方のもと、引き続き実効税率の引下げが盛り込まれたところである。 他方、法人事業税については、実効税率の引下げと課税ベースの拡大の観点からの見直しが盛り込まれており、前年度(平成27年度)の税制改正において外形標準課税の段階的拡大と法人事業税所得割の税率引下げが実施されたところ、平成28年度税制改正大綱においても、もう一段踏み込んだ改正が盛り込まれている。 本稿では、平成28年度税制改正大綱における、法人事業税に関連する改正点について解説を行う。なお、平成27年度税制改正に関する詳細については、下記の拙稿を参照されたい。 2 法人事業税の税率引下げと外形標準課税の拡大 平成27年度の税制改正において、法人事業税の税収に占める外形標準課税(付加価値割及び資本割)の割合を、平成27年度・平成28年度の2事業年度にわたって段階的に2分の1(8分の4)まで引き上げる改正が盛り込まれた。これに伴い、相対的に、法人事業税(所得割)の税率が段階的に引き下げられている(下図参照)。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 平成28年度税制改正大綱では、地域で雇用を支える中堅企業への影響に十分配慮しつつ、外形標準課税の割合を8分の5に拡大するとともに、所得割(地方法人特別税を含む)の標準税率を引き下げることとされた。 具体的には、資本金額が1億円超の普通法人の法人事業税の標準税率を下表の通りとし、平成28年4月1日以後開始事業年度から適用される。 図示すると以下のようになる。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 3 事業税の負担軽減措置 外形標準課税の割合が拡大することに伴い、所得水準次第ではむしろ税負担が増加する可能性があることから、平成27年度の税制改正において時限的な事業税の負担軽減措置が講じられたが、平成28年度の税制改正大綱においても外形標準課税の割合が一層引き上げられたことを受け、負担軽減措置についても見直しが行われている。 (1) 改正前の制度の概要(平成27年度税制改正) 平成28年度(平成28年4月1日~平成29年3月31日までの間に開始する事業年度)において、付加価値割の課税標準となる付加価値額が40億円未満の法人について、その事業年度に係る事業税額が平成28年3月31日現在の税率を適用して計算された額を超える場合にあっては、その超える額に一定の控除率を乗じた額を事業税額から控除する。 控除率は、付加価値額が30億円未満の場合には50%とされ、30億円以上から段階的に引き下げられ、40億円に達するところでゼロとなる(下図参照)。 (2) 平成28年度の税制改正の概要 負担軽減措置の適用対象年度が2年延長され、平成31年3月31日までの間に開始する事業年度(平成30年度)までが対象とされたうえで、各事業年度に係る事業税額が平成28年3月31日現在の標準税率で計算された税額を超える場合に、その超える額に一定の控除率を乗じて計算された額を、各事業年度の事業税額から控除することとされた。 控除率は年度ごとに段階的に引き下げられる(下図参照)。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (了)
《速報解説》 自動車取得税の廃止や自動車税における環境性能割の創設等、 車体課税の改正事項 ~平成28年度税制改正大綱~ 公認会計士・税理士 菊地 弘 平成27年12月16日に公表された平成28年度税制改正大綱(与党大綱)のうち、自動車の車体課税等に関する主な改正事項等は次のとおりである。 1 車体課税の見直し (1) 自動車重量税(国税) ▷改正事項なし。 ▷自動車重量税に係るエコカー減税の見直しについては、燃料水準が年々向上していることを踏まえ、燃費性能がより優れた自動車の普及を継続的に促す構造を確立する観点から、平成27年度与党税制改正大綱に沿って検討を行い、平成29年度税制改正において具体的な結論を得る。 (2) 自動車取得税(都道府県税) ▷自動車取得税は、平成29年3月31日をもって廃止する。 (3) 自動車税(都道府県税)及び軽自動車税(市町村税)における「環境性能割」(仮称)の創設 ▷現行の自動車税を自動車税排気量割(仮称)、現行の軽自動車税を軽自動車税排気量割(仮称)とするなどの措置を講ずる。 ▷新設される「環境性能割」の概要 ① 納税義務者等 ・自動車の主たる定置場の所在地において、当該自動車を取得した者に課する。 (注) 課税対象となる自動車は現行の自動車取得税の対象と同一とする。 ② 課税主体 ・登録車(普通自動車及び三輪以上の小型自動車)については、自動車税環境性能割として道府県が課す。 ・軽自動車(三輪以上の軽自動車)については、軽自動車税環境性能割として市町村が課す。 ③ 課税標準と免税点 ・課税標準は自動車の取得価額とする。 ・免税点は50万円とする。 ④ 徴収の方法 ・申告納付(申告書に証紙を貼って納付する方法を原則とし、現金納付も可能) ⑤ 環境性能に応じた税率の適用と非課税 ⑥ 用途、構造等による特例措置 ・都道府県の条例で定める路線の運行の用に供する一般乗合用のバスに係る環境性能割について、非課税とする措置を平成29年4月1日から2年間に限り講ずること 等 ⑦ 市町村交付金 ・道府県は自動車税環境性能割について、その徴収から徴税に要する経費に相当する額を控除した額の100分の65を市町村に交付する。 ⑧ 施行期日 ・平成29年4月1日以後の自動車の取得に対して課する環境性能割について適用する。 ⑨ 税率適用基準の見直し ・上記⑤に定める税率適用基準は2年ごとに見直す。 (4) グリーン化特例の見直し及び延長 ◆「グリーン化特例」とは・・・自動車税及び軽自動車税において講じている燃費性能等が優れた自動車の税率を軽減し、一定年数を経過した自動車の税率を重くする特例措置のこと。 ① 自動車税のグリーン化特例(軽課) ② 自動車税のグリーン化特例(重課) 現行のグリーン化特例(重課)の適用期限を1年延長し、平成29年度分を特例措置の対象とする。 ③ 軽自動車税のグリーン化特例(軽課) 現行のグリーン化特例(軽課)の適用期限を1年延長し、平成28年度に新規取得した三輪以上の軽自動車(新車に限る)について適用する。 2 復興支援のための税制上の措置 (1) 自動車重量税(延長) ① 被災自動車等に係る自動車重量税の還付措置の適用期限を3年延長する。 ② 被災自動車等の使用者であった者が取得する自動車に係る自動車重量税の免税措置の適用期限を3年延長する。 (2) 自動車取得税(延長) 被災代替自動車の取得に係る自動車取得税の非課税措置の適用期限を1年延長する。 (3) 自動車税・軽自動車税(延長) 自動車税及び軽自動車税の非課税措置の適用期限を次のとおり3年延長する。 3 租税特別措置等 (1) 自動車重量税(拡充) 排出ガス性能及び燃費性能の優れた環境負荷の小さい自動車に係る自動車重量税の免税等の特例措置(いわゆる「自動車重量税のエコカー減税」)の適用対象となる自動車の範囲に、車両総重量が7.5tを超えるバス・トラックで平成28年ディーゼル重量車排出ガス規制に適合し、かつ、平成27年度燃費基準を満たすものを加える。 (2) 自動車取得税(延長・拡充等) ① 排出ガス性能及び燃費性能の優れた環境負荷の小さい自動車(新車に限る。)に対して課する自動車取得税に係る特例措置(いわゆる「自動車取得税のエコカー減税」)の適用対象となる自動車の範囲に、車両総重量が7.5tを超えるバス・トラックで平成28年ディーゼル重量者排出ガス規制に適合し、かつ、平成27年度燃費基準を満たすものを加える。 ② 都道府県の条例で定める路線の運行の用に供する一般乗合用のバスに係る自動車取得税の非課税措置の適用期限を1年延長する。 【参考】車体課税の見直しについて (2016/12/18追記) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (経済産業省ホームページより) (了)
《速報解説》 BEPS行動13を受け 「移転価格税制に係る文書化制度」を整備 ~平成28年度税制改正大綱~ デロイト トーマツ税理士法人 パートナー/税理士 移転価格サービス 小林 正彦 1 はじめに 平成27年12月16日に公表された平成28年度税制改正大綱(与党大綱)において、移転価格税制に係る文書に関する改正が勧告された。 我が国における移転価格文書(いわゆるドキュメンテーション)としては、これまでは、租税特別措置法施行規則第22条の10第1号及び第2号に掲げられた項目を含んだ文書がそれに当たるものとされてきたが、OECDによる「BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクト」の行動13の最終報告書を踏まえ、我が国も諸外国並みのグローバルスタンダードとしての厳しい移転価格文書化の時代に突入することになる。 2 内容 【制度の担保策】 (1)及び(2)に関しては期限内に提出しない場合の罰則を設けることとされており、(3)に関しては罰則は設けないものの、国税当局が提出等を求めた場合において指定される日までに提出等しない場合の推定課税等の要件の明確化が行われている。ローカルファイルは同時文書化義務があるものについては提出依頼後45日以内の指定日までに、また、それ以外のローカルファイルについては60日以内の指定日までに提出がないときは推定課税・同業者調査ができるとされている。 なお、(1)及び(2)に係る改正は平成28年4月1日以後に開始する最終親事業体の会計年度に係る文書について適用することとされており、(3)に係る改正は平成29年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用することとされている。 3 留意点 (了)
《速報解説》 「更正予知に関する新たな加算税措置」 「繰り返しの無申告等に対する加算税の加重」 ~平成28年度税制改正大綱~ 税理士 佐藤 善恵 はじめに 12月16日に公表された与党税制改正大綱によると、平成28年度税制改正では、過少申告加算税(国税通則法(以下「通法」という)第65条)、無申告加算税(通法第66条)、不納付加算税(通法第67条)及び重加算税(通法第68条)の4種類の加算税のうち、過少申告加算税及び無申告加算税について、「更正があるべきことを予知してされたものでない」申告(※1)に関して新たな措置が導入される。 また、無申告加算税及び重加算税について、過去5年以内に同税目で無申告加算税又は重加算税が賦課された事実があれば、加算税の税率が加重される。 これらの措置は、いずれも当初申告のコンプライアンスを高めるとの趣旨によるものである。 (※1) 納税者へのインセンティブの趣旨等から、調査があったことにより更正があるべきことを予知(以下「更正予知」という)してされたものでない申告には、加算税を免除ないし軽減(以下、単に「免除」という)する制度が設けられている(過少申告加算税は通法65⑤、無申告加算税は通法66⑤)。 1 更正予知に関する新たな措置 更正予知に係る加算税の免除に関して、加算税通達(※2)は、臨場調査のための日時の連絡を行った段階で修正申告書等が提出された場合には、原則として更正予知には該当しない、つまり加算税が免除されるという扱いを示しているが、改正により、税務調査の事前通知がされてしまうと、更正予知せずに修正申告書等を提出したとしても、低率ではあるものの加算税が賦課されることが法定化される。 具体的には、平成29年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について、事前通知後、かつ、更正予知でない修正申告書等の提出があった場合、過少申告加算税は、本税に対して5%(申告漏れ過大部分は10%)の割合で、無申告加算税は、本税に対して10%(無申告過大部分は15%)の割合で、それぞれ加算税が課せられることとなる。 (※2) ・申告所得税及び復興特別所得税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針) 第1の2(注)、第2の2 ・相続税、贈与税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針) 第1の2(注)、第2の2 等 〈図解〉 通法、加算税通達及び平成28年度税制改正の内容を整理すると次のとおりである。 (例) 過少申告加算税で増差税額50万円以下の場合の各税率 (※3) 無申告加算税の場合は10% (※4) 無申告加算税の場合は15% Bの期間は、原則として更正予知に当たる。 なお、他の税目における更正の請求に基づく減額更正に伴って、調査対象税目において必要となる修正申告等、一定の場合には、上記の措置は適用されない。また、源泉所得税の不納付加算税は、改正による影響はない。 2 繰り返しの無申告等に対する加算税の加重 更正予知による期限後申告もしくは修正申告、更正や決定等(以下「期限後申告等」という)があった場合に、その期限後申告等があった日の前日から起算して5年前の日までの間に、その期限後申告等に係る税目について更正予知による無申告加算税又は重加算税が課されたことがあれば、加算税の税率が10%上乗せされる(平成29年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税より適用)。 したがって、無申告重課でこの措置の適用がある場合、重加算税の税率は、40%に10%が上乗せされて50%となる。 ◆無申告加算税(国税通則法65条)のまとめ(丸付数字は同法65条の項番号を指す。) (A) 当初申告が期限後申告の場合の無申告加算税(太枠が改正部分) (※) 更正予知によるものに限る(自発的申告を除く)。 (B) 期限後申告後の修正申告に対する無申告加算税(太枠が改正部分) (※) 更正予知によるものに限る(自発的申告を除く)。 ◆重加算税(国税通則法68条)のまとめ(太枠が改正部分)(丸付数字は同法68条の項番号を指す。) (※) 更正予知によるものに限る(自発的申告を除く)。 (了) ↓お勧め連載記事↓
《速報解説》 セルフメディケーション(自主服薬)推進のための スイッチOTC薬控除(医療費控除の特例)の創設 ~平成28年度税制改正大綱~ 税理士・社会保険労務士 上前 剛 1 概要 12月16日に公表された「平成28年度税制改正大綱」(与党大綱)において、セルフメディケーションの推進により医療費を削減するため、セルフメディケーション(自主服薬)推進のためのスイッチOTC薬控除(医療費控除の特例)が創設されることが決まった。 本制度は、特定健康診査、予防接種、定期健康診断、健康診査、がん検診(医師の関与があるものに限る)を受けている個人が、平成29年1月1日から平成33年12月31日までの間に、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係るスイッチOTC医薬品(類似の医療用医薬品が医療保険給付の対象外のものを除く)を購入した場合において、その年中に支払った購入額の合計額が12,000円を超えるときは、その超える部分の金額(その金額が88,000円を超える場合には、88,000円)をその年分の総所得金額等から控除できる制度である。 なお、現行の医療費控除との選択適用となる点には留意が必要である。 2 スイッチOTC医薬品とは 医薬品には、医師が処方する医療用医薬品と薬局・ドラッグストアで市販されるOTC医薬品がある。OTC医薬品のOTCとは、“Over The Counter”の頭文字で、薬局のカウンター越しに売られる薬が語源である。 OTC医薬品のうち、本制度の対象となるスイッチOTC医薬品とは、医療用医薬品の成分をOTC医薬品に転用(スイッチ)したものをいう。医療用医薬品の成分が含まれるため、効き目が良いとされる。 3 今後の課題 まず、“スイッチOTC医薬品”の存在が世間に知られていない点が課題として挙げられる。本制度を普及させるには、スイッチOTC医薬品の認知度を高めるための周知活動が必要である。 次に、スイッチOTC医薬品を購入する際、薬局・ドラッグストアで薬を手に取ってみても、箱に『スイッチOTC医薬品』と明記されていないので、スイッチOTC医薬品かどうか判別するのが困難という点が挙げられる。薬剤師を通じて購入すれば解決するが、箱に記載してもらえると利便性が増すであろう。 最後に、スイッチOTC医薬品を購入したレシートに『スイッチOTC医薬品』と明記されていないと、確定申告時の集計が困難という点が挙げられる。 (了)
《速報解説》 欠損金の繰越控除制度、平成28年4月以後の控除限度割合が縮小へ ~平成28年度税制改正大綱~ 税理士 小谷 羊太 平成28年度税制改正大綱(与党大綱)において、欠損金の繰越控除制度の見直しが行われることが明記された。以下その内容を解説する。 1 制度の確認 法人の各事業年度において青色申告書である確定申告書を提出する事業年度の欠損金、青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金及び連結欠損金が生じた場合に、翌事業年度以降の各事業年度において生じた所得金額からそれらの欠損金額を控除する措置として設けられた制度である。 所得事業年度の所得金額と欠損事業年度の欠損金額について損益通算をすることによって、納税者の担税力の確保を図るために設けられている制度である。 2 現行制度(平成27年度税制改正後)の確認 欠損金の繰越控除制度は、中小法人の場合は、繰越欠損金のうち所得から控除できる金額はその全額であるのに対して、大法人については80%までとされていた。 しかし、平成27年度税制改正後は、次のように段階的に控除限度割合を引き下げることとなっている。 3 平成28年度税制改正大綱の内容 ① 控除限度割合の段階的な引下げ 今回の税制改正大綱では、平成27年4月から平成29年4月までに控除限度割合を65%から50%に引き下げる措置について、50%までの最終的な引下げ時期を平成30年4月まで引き延ばし、さらに段階的な引下げの措置を講じている。 【参考】繰越欠損金制度の見直しのイメージ (2016/12/18追記) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (中小企業庁ホームページより) ② 欠損金の繰越期間の延長 平成27年度税制改正によって、平成29年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額(青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度、青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越控除制度及び連結欠損金の繰越控除制度)について、繰越期間を10年間に延長する措置が講じられた。 平成28年度税制改正大綱では、この繰越期間の適用事業年度を、平成30年4月1日以後に開始する事業年度に改める措置が講じられている。 ③ 欠損金の繰越控除制度の適用に係る帳簿書類の保存要件 上記②を踏まえて、平成27年度税制改正によって、青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度、青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越控除制度及び連結欠損金の繰越控除制度の適用に係る帳簿書類の保存期間を平成29年4月1日以後に開始する事業年度から10年とする措置が講じられた。 平成28年度税制改正大綱では、この保存要件の適用事業年度を、平成30年4月1日以後に開始する事業年度に改める措置が講じられている。 ④ 法人税の欠損金額に係る更正の期間制限 上記②を踏まえて、平成27年度税制改正によって、法人税の欠損金額に係る更正の期間制限を平成29年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額から10年とする措置が講じられた。 平成28年度税制改正大綱では、この更正の期間制限の適用事業年度を、平成30年4月1日以後に開始する事業年度に改める措置が講じられている。 ⑤ 法人税の欠損金額に係る更正の請求期間 上記②を踏まえて、平成27年度税制改正によって、法人税の欠損金額に係る更正の請求期間を平成29年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額から10年とする措置が講じられた。 平成28年度税制改正大綱では、この更正の請求期間の適用事業年度を、平成30年4月1日以後に開始する事業年度に改める措置が講じられている。 (了)
《速報解説》 減価償却制度、建物附属設備・構築物等の定率法が廃止へ ~平成28年度税制改正大綱~ 公認会計士・税理士 新名 貴則 自由民主党と公明党は、平成27年12月16日、平成28年度税制改正大綱(与党大綱)を発表した。この中で、減価償却制度の見直しが明記された。ここでは、その内容について解説する。 ◆見直しの内容 従来、平成10年4月1日以後に取得した建物については、償却方法が定額法に限定されていたが、建物附属設備や構築物については定率法も選択することができた。しかし、建物附属設備は建物と一体的に整備されること、また、構築物は建物と同様に長期安定的に使用されることから、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備及び構築物については、定率法を廃止し、償却方法を定額法に限定することになった。 また、同様に平成28年4月1日以後に取得する鉱業用減価償却資産(建物、建物附属設備及び構築物のみ)についても、定率法を廃止し、定額法又は生産高比例法に限定することになった。 なお、今回の改正後も、リース期間定額法、取替法等は存置される。 【平成28年4月1日以後に取得するもの】 ◆改正の影響 定率法及び定額法における償却を、事例に基づいて比較すると次の通りである。 これまで建物附属設備や構築物について定率法を選択していた法人では、今後は定額法に限定されるため、償却開始後の数年間は償却額が大幅に少なくなることに注意が必要である。 【 事 例 】 種類:建物附属設備 耐用年数:15年 取得価額:10,000,000円 (※1) 少数点以下の端数は切り捨てている。 (※2) 9年目以降は改定償却率による計算に変わっている。 (了) ↓お薦め連載記事↓
《速報解説》 平成28年度税制改正大綱(与党大綱)が正式公表 ~消費税軽減税率の制度設計の全容、法人実効税率引下げに係る内容等が明らかに Profession Journal編集部 (※) 訂正のお知らせ(2015/12/21) 当初12月10日の公表に向けて取りまとめが行われていた「平成28年度税制改正大綱」は、消費税の軽減税率を除く部分についてのみ自民党税制調査会の了承を得、「大綱(案)」として広く知られることとなっていた(※)が、このたび2015年12月16日付けで、軽減税率部分を織り込んだ大綱(いわゆる与党税制改正大綱)が正式に公表された。 (※) 現在すでに広く知られているものは自由民主党による「大綱(案)」であり与党大綱ではないため誤解のないよう留意されたい。 消費税の軽減税率が適用される対象品の線引きをめぐって与党間協議が難航していたが、自民党が大幅に譲歩する形で公明党が主張していた酒類及び外食を除く飲食料品(生鮮食品+加工食品)、さらに一部の新聞への適用で合意した(軽減税率の適用は消費税率10%引上げ日(平成29年(2017年)4月1日)から)。 また法人実効税率を20%台(平成28年度に29.97%、平成30年度に29.74%)まで引き下げることとされ、その代替財源として外形標準課税の拡大、減価償却制度の見直し、生産性向上設備投資促進税制の適用期限における廃止に加え、欠損金の繰越控除制度の見直し等の改正が盛り込まれた。 以下、主な改正事項をまとめた。なお、重要な改正情報については今後、個別に速報解説を公開していく。 また、こちらの資料リンク集ページも今後更新を重ねていくので、ログインの上、ブックマークボタンを押すなどして確認できるようにしていただきたい。 〇消費税の軽減税率、対象は加工食品まで~インボイスは簡易方式を経て平成33年4月から 大綱では「消費税率10%への引上げを平成29年4月に確実に実施する」としたうえで、低所得者対策として公明党が主張していた軽減税率(6.24%(地方消費税と合わせて8%))を、引上げ日(平成29年4月1日)から導入するとした。本改正については、大綱の末に【付記一】として詳細がまとめられている。 与党間で調整が難航していた軽減税率の対象について、大綱P111の【付記一】二では以下のように記載されている。 新聞については上記の通り、定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞が対象となるため、軽減税率が適用されるのは一部の新聞に限られる模様(書籍・雑誌への適用は継続検討)。 なお、軽減税率の適用範囲拡大で不足する財源については、「平成28年度末までに歳入及び歳出における法制上の措置等を講ずることにより、安定的な恒久財源を確保する」とされている。 また改正後の経理処理については、複数税率制度に対応した仕入税額控除の方式として、適格請求書等保存方式(いわゆる「インボイス制度」)を平成33年(2021年)4月1日から導入することとし、その間(平成29年4月1日~平成33年3月31日)までは、現行の請求書等保存方式を基本的に維持しつつ、区分経理に対応するための措置(区分記載請求書等保存方式)を講じることとされた。この適格請求書等保存方式の導入に伴い、適格請求書発行事業者登録制度が創設される(平成31年4月1日から申請受付)。その他この方式の詳細は大綱P114(【付記一】の四)を参照されたい。 上記経過期間における経理処理については、基準期間における課税売上高に応じて、仕入税額の簡便計算(みなし課税)を選択できることとされている。この経過措置の詳細は大綱P112(【付記一】の三)を参照されたい。 消費税率の引上げに関する今後のスケジュールは以下のようになっており、直近では10%引上げに係る経過措置の指定日についても留意しておきたい。 〇法人実効税率は20%台へ~外形標準課税の拡大、減価償却制度の見直しなどで財源を手当て 「成長志向の法人税改革を、更に大胆に推進する」として、法人実効税率の20%台への引下げを目的に、法人税率(現行23.9%)を平成28年4月1日以後開始事業年度より23.4%、平成30年4月1日以後開始事業年度より23.2%へ引き下げることとなった。 この減税部分を補填する財源として、法人事業税における所得割の税率引下げと外形標準課税の8分の4(※)から8分の5への拡大(負担変動の軽減措置あり(3年間))、減価償却資産のうち建物附属設備及び構築物並びに鉱業用の建物の償却方法について定率法が廃止される(平成28年4月1日以後取得分から)。 (※) 当初予定の平成28年度割合。 さらに欠損金の繰越控除制度は平成27年度改正で大法人のみ控除限度割合の段階的引下げが実施されていたが、この引下げスケジュールの見直しが行われ、平成28年4月1日以後開始事業年度の限度額が縮小(100分の65→100分の60)されることとなった(繰越期間の10年への延長は1年延期で平成30年4月1日から)。 また平成26年度改正で創設された「生産性向上設備投資促進税制」については、適用期限となる平成28年度末(平成29年3月31日までの取得等)をもって廃止することが明記された。大綱に明記した目的は「企業の投資判断の前倒しを促すため」とされている。 これらの改正により、法人実効税率は現行の32.11%から平成28年度に29.97%、平成30年度に29.74%まで引き下げられることとなる。 〇その他法人課税関連~地方創生の推進、中小企業への配慮等 上記のほか企業に係る税制としては、青色申告法人が地方創生推進寄附活用事業(仮称)に関連する寄附金を支出した場合に、既存の寄附金控除に加え税額控除が可能となる「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)」が創設される(地域再生法の改正法の施行日から平成32年3月31日まで)。 また、中小企業の設備投資を促す観点から、生産性向上設備(仮称)のうち一定の機械・装置を取得した場合に、その機械・装置に係る固定資産税について課税標準を最初の3年間価格の2分の1とする措置が講じられる(中小企業の生産性向上に関する法律(仮称)の施行日から平成31年3月31日まで)。 なお、中小企業者等の少額減価償却資産(30万円未満)の取得価額の損金算入の特例は対象法人の見直し(常時使用する従業員の数が1,000人超の法人を除外)を行ったうえで平成30年3月31日まで2年延長され、現在中小企業者等のみ認められている欠損金の繰戻し還付制度についても平成30年3月31日まで2年延長されることになった。 さらに交際費課税(交際費等の損金不算入制度)については、各省庁の税制改正要望では中小法人の特例措置のみ延長要望が出されており大法人への適用は廃止されるとの見方もあったが、接待飲食費に係る損金算入特例を含む制度全体の2年延長(平成30年3月31日まで)が決まった。 経済産業省から税制改正要望のあった株式報酬やROE(自己資本利益率)連動型の役員報酬をめぐっては、一定の譲渡制限付株式による給与について事前確定の届出を不要とするとともに、利益連動給与の算定指標の範囲にROEその他の利益に関連する一定の指標が含まれることを明確化する。 国際課税の関係ではBEPSへの対応として「移転価格税制に係る文書化」が明記されており、大綱P121には【付記二】として対象となる多国籍企業グループの範囲等がまとめられているので確認しておきたい。 その他、通勤手当の非課税限度額が現行の月額10万円から15万円へ拡大され、年間180万円までの通勤手当が非課税となる。これにより新幹線通勤を促進し、大都市圏への人口集中を緩和する狙いがある。 〇空き家対策、農地活用策織り込むも資産課税は軽微な改正にとどまる 27年度改正では倒壊等の恐れのある空き家について一定の場合、固定資産税等の特例措置から除外する改正が行われたが、さらに平成28年度改正においても、相続した一定の家屋(昭和56年5月31日以前の建築)を耐震改修を行う等して譲渡した場合に居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除が適用できる「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」が創設される。 昨年度改正で創設された「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」については、「その対象となる不妊治療に要する費用には薬局に支払われるものが含まれること等を明確化する。」と記載されており、費用範囲の拡充であるのか内閣府公表資料や法令・告示の改正等、今後の情報で確認する必要がある。 (※) 現行の規定では、「人工授精その他不妊治療に要する費用であって、病院(医療法第1条の5第1項に規定する病院をいう。以下同じ。)又は診療所(同条第2項に規定する診療所をいう。以下同じ。)に支払われるもの」(内閣府告示第48号)とされている。 その他、耕作放棄地(遊休農地のうち農業委員会から勧告を受けたもの)への固定資産税重課、農地中間管理機構(農地バンク)を通じて農業生産法人等へ10年以上貸し付けた農地の固定資産税半減(3年間(15年以上の場合は5年間))など、TPPを見据えた農地の有効活用・集約化を図る施策が織り込まれているものの、全体として資産課税は軽微な改正にとどまっている。 〇出産・子育ての不安解消、セルフメディケーション対策税制 若年世代の出産・子育ての不安を解消する観点から、居住用家屋に「一定の三世代同居改修工事」(①調理室、②浴室、③便所、④玄関のいずれかを増設する工事(改修後に①から④のいずれか2つ以上が複数となるもの)で工事費が50万円超)を行った場合に税額控除が受けられる特例措置が設けられる。 なお、次の特例措置については2年(平成29年12月31日まで)延長される一方、省エネ改修工事に係る住宅ローン控除等は適用期限をもって廃止される。(※) ・特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例 ・居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等 ・特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等 (※) 訂正のお知らせ 上記(※)部分につきまして、正しくは平成27年12月31日までの省エネ要件の緩和措置が廃止され、制度自体は廃止されません。お詫びの上、訂正させていただきます。 セルフメディケーション(自主服薬)を推進し増大する国民医療費を削減するため、定期健康診断や予防接種等の取組みを行う個人が自己又は生計同一親族に係る一定のスイッチOTC医薬品(医療用から転用された医薬品)の購入対価を支払った場合に、年間の支払い合計額が1万2,000円を超える部分について所得控除が受けられる医療費控除の特例制度が平成29年から創設される(8万8,000円を限度。医療費控除との重複不可)。 〇当初申告のコンプライアンス向上のため加算税制度を見直し 税務調査手続に関する通則法の改正で税務調査の事前通知が義務化されたことに伴い、事前通知から更正予知までの間に修正申告を行い加算税を回避するケースが増えていることから、このような場合に適用される新たな加算税の措置が創設される。また、無申告加算税及び重加算税について短期間(更正決定等があった日から過去5年以内)に無申告加算税・重加算税を課されたことがある場合の10%加重措置が講じられ、共に平成29年1月1日以後の法定申告期限到来分(国税)から適用される。 (了)
《速報解説》 ASBJより「税効果会計に適用する税率に関する適用指針(案)」が公表 ~適用税率は公布基準から国会での成立基準へ~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年12月10日、企業会計基準委員会は「税効果会計に適用する税率に関する適用指針(案)」(企業会計基準適用指針公開草案第55号)を公表し、意見募集を行っている。 これは、税効果会計の適用に際して、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率に関する取扱いを規定するものである。 意見募集期間は、平成28年2月10日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第10号)18項では、税効果会計上で適用する税率は、決算日現在における税法規定に基づく税率によるものと規定し、改正税法が当該決算日までに「公布」されており、将来の適用税率が確定している場合は改正後の税率を適用するとしている。 公開草案は、決算日において公布されている法人税法等に規定されている税率に代えて、決算日において国会で成立している法人税法等に規定されている税率によることを提案している(公開草案5項、15項)。 1 法人税、地方法人税及び地方法人特別税に関する税率 2 住民税(法人税割)及び事業税(所得割)に関する税率 決算日において国会で成立している地方税法等に基づく税率とは、次の税率をいう。 なお、次の2つの設例が設けられている。 Ⅲ 適用時期等 平成28年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用する予定である。 (了)