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連結納税適用法人のための平成28年度税制改正 【第4回】「役員給与の見直し」

連結納税適用法人のための 平成28年度税制改正 【第4回】 「役員給与の見直し」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト パートナー 足立 好幸   [6] 役員給与の見直し 1 改正の内容 多様な株式報酬や業績連動報酬の導入を促進することで経営者に中長期的な企業価値向上のインセンティブを与えるため、役員給与について、次の見直しが行われている。 (1) 特定譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)の交付により支給される給与の取扱い 内国法人の支給する役員給与のうち、「特定譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)の交付により支給される給与」は、事前の届出をしなくても、事前確定届出給与として損金算入できることとなった(法法34①二)。 ここで、特定譲渡制限付株式とは、次に掲げる要件を満たす株式をいう(法法34①二、54①、法令111の2①)。 そして、役員に支給される特定譲渡制限付株式のうち、次に掲げる要件を満たすものが事前の届出が不要な事前確定届出給与として損金算入されることとなる(法法34①二、法令69②)。 また、内国法人を合併法人とする合併により被合併法人の特定譲渡制限付株式を有する者に対し交付される当該内国法人の譲渡制限付株式等(承継譲渡制限付株式)についても同様の取扱いとなる(法法34①二、54①、法令111の2③)。 なお、特定譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)等の交付による株式報酬制度を導入する手続については、平成25年7月に経済産業省が公表した「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会」の報告書や本年4月公表の「「攻めの経営」を促す役員報酬~新たな株式報酬(いわゆる「リストリクテッド・ストック」)の導入等の手引~」に取りまとめられている。 (2) 特定譲渡制限付株式の交付により支給される給与の損金算入の時期 内国法人が、役員又は従業員から受ける将来の役務の提供の対価として特定譲渡制限付株式を交付した場合には、その役務の提供に係る費用の額は、原則として、その譲渡制限付株式の譲渡制限が解除された日の属する事業年度の損金の額に算入する(法法54①、所令84①)。 また、この場合、役務の提供に係る費用の額は、特定譲渡制限付株式の交付が正常な取引条件で行われた場合には、当該特定譲渡制限付株式の交付につき給付され、又は消滅した債権(当該役務の提供の対価として役員又は従業員に生ずる債権に限る)の額に相当する金額とする(法令111の2⑤)。 なお、譲渡制限が解除されない場合、役務の提供を受けたことによる費用の額又は当該役務の全部若しくは一部の提供を受けられなかったことによる損失の額は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入できない(法法54②)。 また、役員又は従業員から役務の提供を受ける内国法人は、特定譲渡制限付株式の一株当たりの交付の時の価額、交付数、その事業年度において譲渡についての制限が解除された数その他当該特定譲渡制限付株式又は承継譲渡制限付株式の状況に関する明細書を当事業年度の確定申告書に添付しなければならない(法法54③)。 (3) 利益連動給与の算定指標の範囲の拡充 利益連動給与の算定指標の範囲に、純粋な利益指標(営業利益、経常利益等)に加え、ROE、ROA等など一定の利益に関連する指標が含まれることになった(法法34①三)。 具体的には、次に掲げる算定指標が対象となる(法法34①三、法令69⑧)。 なお、利益連動給与に関するそれ以外の取扱いは変更されていない。   2 適用時期 上記1(1)及び(3)については、平成28年4月1日以後に開始する連結事業年度から適用される(平成28年所法等改正法附則1・21)。 上記1(2)については、平成28年4月1日以後に交付の決議(当該決議が行われない場合には、その交付)がされる特定譲渡制限付株式及び承継譲渡制限付株式について適用される(平成28年所法等改正法附則1・24)。 (了)

#No. 177(掲載号)
#足立 好幸
2016/07/14

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第15回】「過大役員退職給与」~役員退職給与が過大であると判断した理由は?~

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第15回】 「過大役員退職給与」 ~役員退職給与が過大であると判断した理由は?~   中央大学大学院商学研究科 博士後期課程 (酒井克彦研究室所属) 泉 絢也   今回は、青色申告法人X社に対して、前代表取締役に対する役員退職給与の額が過大であるとして、その一部の損金算入を否認した法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた、静岡地裁昭和63年9月30日判決(判時1299号62頁。以下「本判決」という)を取り上げる。   1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注) 素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。   2 本件理由付記から読み取ることができる関係図   3 本判決の判断 本判決は、大要次のとおり、理由付記に不備はないと判断した(この判断は、控訴審である東京高裁平成元年1月23日判決・税資169号5頁においても維持されている)。 (1) 法人税法130条2項の趣旨 (2) 理由付記の十分性   4 私見 (1) 関係法令等の確認 本件更正処分は、X社が損金の額に算入した前代表取締役Mに対する役員退職給与の額の一部について、内国法人がその役員に対して支給する退職給与の額のうち不相当に高額な部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができないことを定める法人税法34条2項により、損金の額に算入しないというものである。 この不相当に高額な部分の金額、すなわち過大役員退職給与の額の損金不算入に係る要件は次のとおりである(法令70二)。 (2) 求められる理由付記の程度 本件更正処分は、X社が支給し、損金の額に計上した前代表取締役Mに対する役員退職給与の額2億7,269万1,500円について、その帳簿書類の記載を覆すことなくそのまま肯定した上で、類似法人の役員退職給与の支給状況に照らし、不相当に高額であると認められる部分の金額を、法人税法34条2項により、損金の額に算入することはできないとするものであるため、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当すると考える。 したがって、理由付記の程度としては、更正通知書記載の更正の理由が、そのような更正をした根拠について帳簿記載以上に信憑力のある資料を摘示するものでないとしても、更正の根拠を更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り、法の要求する更正理由の付記として欠けるところはないことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (3) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものであると考える。 本件理由付記は、本件更正処分の理由として、「X社は、×年×月×日に、前代表取締役Mに対して、役員退職給与の額2億7,269万1,500円を支給し、損金の額に算入していること」を記載しているため、支給年月日、支給対象者及び支給金額を特定した上で、「内国法人が各事業年度においてその退職した役員に対して退職給与を支給した」という上記(1)の過大役員退職給与の損金不算入に係る要件①に対応する事実を、処分の根拠として示していることになる。 また、本件理由付記は、本件役員退職給与の額には、X社と同種の事業を営み事業規模が類似すると認められる類似法人5社の役員に対する役員退職給与の支給状況に照らし、不相当に高額な部分の金額があるという課税庁の判断を示すとともに、その根拠として、課税庁が役員退職給与適正額を算出するに当たり用いた、最終月額報酬、勤続年数及び功績倍率の各根拠(別表)についても明らかにしており、上記(1)の過大役員退職給与の損金不算入に係る要件②に対応する事実を、処分の根拠として示していることになる。 そうすると、本件理由付記は、その記載内容から法令上の根拠が明らかになるものであり、かつ、法令上の要件に対応する具体的な事実を記載するものであり、これによって課税庁の判断過程が明らかとなるものであるから、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるという理由付記の趣旨目的に適うものであると考える。 (4) 異なる視点 今後の議論の発展のためにも、以下では、上記と異なる視点による主張を示しておく。 ア 更正処分庁の恣意抑制という趣旨との適合性 法人税法施行令70条2号は、「その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するもの」の役員に対する退職給与の支給の状況等に照らし、役員退職給与の過大性の判断を行うことを定めているにもかかわらず、本件理由付記には、別表の類似法人の事業種目、売上金額、所得金額、総資産額、資本金の額などの記載がなく、別表の類似法人がX社と「同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するもの」であることの根拠が明示されていない。 すると、本件理由付記は処分の根拠となる事実や判断過程を省略して記載しており、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するという理由付記の趣旨と必ずしも適合しないという主張もあり得る。 仮に、この程度の理由付記でも不備はないと解した場合には、厳密にはX社と「同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するもの」とは言い難いような他の法人について、役員退職給与の適正額を算出する場合の同業類似法人に含めるか否かの判断を課税庁が恣意的に行うことが可能となるから、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するという理由付記の趣旨に適うものとはいえないという見解もあり得よう。 実際、本判決の事案において、課税庁は、訴訟提起後に、本件更正処分の根拠とした5社とは別の類似法人8社を抽出して、処分の適法性を主張している。しかも、当該5社に係る勤続年数、最終月額報酬、支給退職金額及び功績倍率の各数値と、当該類似法人8社に係る各数値とを比較すると、1つとして合致するものがなかったというのであるから、課税庁は、本件訴訟において、本件更正処分の根拠に用いた5社はX社の同業類似法人としては妥当ではない面があると判断したものと推測される。 課税庁が実際に恣意的に類似法人の選択を行ったか否かは不明であるが、このことは、恣意的に行うことが可能となるような水準の理由付記をもって、理由付記に不備はないと論断することの危うさを表しているといえよう。 イ 不服申立ての便宜を与えるという趣旨との適合性 同様に、別表の類似法人がX社と「同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するもの」であることの根拠が明示されていないのであるから、処分の相手方が不服申立てを行うか否かを判断する際に、あるいは実際に不服申立てを行おうとする際に、具体的にどの点をどのような形で反論するべきであるかなどの点について、十分な検討ができない面がある。 このような意味では、本件理由付記は不服申立てを行う(又は行うか否かを判断しようとする)納税者にとって甚だ不都合であるから、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるという理由付記の趣旨に適うものとはいえないという主張があり得る。 *  *  * 次回は、修正申告書において損金の額に算入された収用等の特別控除を否認した法人税更正処分の理由付記の事例を取り上げる。 (了)

#No. 177(掲載号)
#泉 絢也
2016/07/14

裁判例・裁決例からみた非上場株式の評価 【第11回】「譲渡制限株式の譲渡①」

裁判例・裁決例からみた 非上場株式の評価 【第11回】 「譲渡制限株式の譲渡①」   公認会計士 佐藤 信祐   【第2回】から【第10回】までは、募集株式の発行等が有利発行に該当するか否かについて争われた事件をいくつか紹介した。 【第11回】以降は、譲渡制限株式の譲渡において、売買価格の決定の申立てがなされた事件について解説を行うこととする。   1 東京高裁平成20年4月4日決定・金判1295号49頁 (1) 事実の概要 発行済株式6,000株のうち3,600株を有する申立人に対して、株式会社カプコンがその保有する株式2,400株(1株当たり5万円)を譲渡した。引き続き、申立人が相手方に対して本件会社の株式3,600株(1株当たり5万5,555円)を譲渡した。その結果、相手方が3,600株、申立人が2,400株を保有することになった。 本事件は、その2年後に、申立人が有する株式の譲渡を行おうとしたところ、当該株式の譲渡を承認しないことの通知を受け、相手方を指定買受人に指定する決議がなされたため、売買価格の決定の申立てがなされた事件である。 (2) 申立人の主張 (3) 相手方の主張 (4) 原決定(東京地裁平成20年1月22日判決・金判1295号55頁) (5) 裁判所の判断 原審の判断をそのまま採用しているため、詳細な解説は省略する。 (6) 評釈 本事件は、譲渡制限株式の譲渡が経営権の移動に準じて取り扱うことができる場合として採用された事例である。 本事件は、申立人が40%、相手方が60%という分かりやすい持分比率であることから、経営権の移動に準じて取り扱うという判断になりやすいが、申立人の保有比率が20%程度であったとしても、個別の事情に応じ、同様の判断をすべきであると考えられる。 本事件では、取引事例が少ないこと、類似会社が存在しないこと、配当実績がないことなどから、結果として、収益還元方式と純資産方式のいずれか、または折衷することにより算定するのかという点が本事件の中心的な論点となっている。ただ、本事件では、取引事例が当事者間のものに近いものとなっており、裁判所としては、その内容をもう少し検証すべきだったように思われる。 裁判所は、創業してから間もないベンチャー企業であることや、年々、順調に売上が上昇していることから、純資産方式では過小評価になりかねず、収益還元法のみを採用することが相当であると判断したようである。しかしながら、資本還元率を「一般に用いられる10%」と算定しているが、資本還元率が10%となる企業の方が少なく、実際は、もう少し低い資本還元率になるはずである。 過去の裁判例の一定の傾向を見てみると、支配株主にとっての株式価値を算定するに当たっては、DCF法や収益還元法を採用しながらも、一定の場合には、純資産方式との折衷方式を採用するという傾向がある。 前回までで解説した募集株式の発行等についての裁判例と異なり、譲渡制限株式の売買価格の決定の申立ては、裁判所の裁量により価格が決定されるものである。そのため、最も正しい株式価値を算定することを目的とするものではないという点に留意が必要である。 次回では、福岡高裁平成21年5月15日決定について解説を行う予定である。 (了)

#No. 177(掲載号)
#佐藤 信祐
2016/07/14

税務判例を読むための税法の学び方【86】 〔第9章〕代表的な税務判例を読む(その14:「「退職所得」の意義①」(最判昭58.9.9))

税務判例を読むための税法の学び方【86】 〔第9章〕代表的な税務判例を読む (その14:「「退職所得」の意義①」(最判昭58.9.9))   立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘   1 はじめに この判例は、退職所得の意義を明らかにした最高裁判決である。 それまでは、厳密な意味で何が退職所得に該当するのかという点は明らかにされていなかったところ、昭和58年後半に、2つの退職金に関する最高裁判決(①5年で打切り支給の退職金として支払われた金員についての事案、②10年で打切り支給の退職金として支払われた金員についての事案)により明確にされた。そこで、今回はこの2つの判決を見ていこう。ただし①事案を中心に見ることとし、②事案は、検討のする中で一部を紹介するのに留める。   2 事案の概要 原告(控訴人・上告人)は、経営状態を不安視した労働組合(当時、中小企業が営業を停止し退職金を支払わずに従業員を解雇する事例が相次いでいた)からの申し入れにより、退職金の支払を実質上前払の形で保障し、併せて営業停止の際の退職金支払に要する経理上の負担を軽減する趣旨で、給与規程を改正し、同一条件で継続的に勤務する従業員も含め全ての従業員に対して勤務年数を5年間で打切り計算して退職金名義で手当を支給することとした。原告は、昭和41年4月から同44年5月までの間に勤続期間が5年に達した従業員に対しこの規程に基づきその都度退職金として金員を支給し、源泉徴収すべき所得税額はないとしていた。これに対して、原処分庁が、この退職金として支給した金額は給与所得(賞与)に該当するとして、各源泉所得税の納税告知処分及等を行ったため、処分の取消しを求めて出訴したものである。   3 関係法令等 (1) 法令 (2) 通達 (3) 本件事案の従業員給与規定および就業規則 (判決にあるものから可能な限り抽出した。) ① 従業員給与規定(昭和40年12月改訂) ② 就業規則(昭和42年8月改訂) *   *   * 次回からは、実際の裁判所の判断の内容について取り上げる。 (続く)

#No. 177(掲載号)
#長島 弘
2016/07/14

被災したクライアント企業への実務支援のポイント〔会計面のアドバイス〕 【第1回】「災害が会計制度に及ぼす影響」

被災したクライアント企業への 実務支援のポイント 〔会計面のアドバイス〕 【第1回】 「災害が会計制度に及ぼす影響」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   1 被災した法人の会計 法人が被災した場合の会計処理や表示等については、日本公認会計士協会より①「阪神・淡路大震災に係る災害損失の会計処理及び表示について」(平成7年3月28日付 震災対策本部)及び②「東北地方太平洋沖地震による災害に関する監査対応について」(平成23年3月30日付 会長通牒)が公表されている。 (※) ②については日本公認会計士協会のホームページ上で閲覧可能。 これら2つの文書には、法人が被災した場合の会計処理や表示等に関する基本的な考え方が示されている。被災時に適用する特別な会計基準は存在しないため、災害発生時には、上記文書を参考にすることが実務的な対応になると考えられる。   2 被災した事業年度の対応 災害は、法人の決算数値に対して広範囲に影響を及ぼし、その影響額も大きい。 被災した事業年度において、災害が会計に及ぼす影響と、考えられる対応をまとめると次のとおりである。 なお、連結子会社がある場合には、上記項目について連結ベースでの影響と対応を検討することも必要となる。   3 その後の事業年度の対応 見積りによって計上された費用・損失について、翌事業年度以降に見積りを変更する場合や、見積額と確定額との間に差額が発生した場合には、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の適用の検討が必要となる。 過去の見積りの方法が、その見積り時点で入手可能な情報に基づく最善のものであったかどうかを検討し、同会計基準に規定されている会計処理を行うことになる。 *  *  * 次回から7回にわたって、被災した法人の会計に係る具体的な対応について、重要性が高い項目をピックアップして解説を行う。 各回で取り上げる項目(予定)は次のとおりである。 (了)

#No. 177(掲載号)
#篠藤 敦子
2016/07/14

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第47回】株式会社日本製鋼所「内部調査委員会調査報告書(平成28年4月25日付)」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第47回】 株式会社日本製鋼所 「内部調査委員会調査報告書(平成28年4月25日付)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【内部調査委員会の概要】   【株式会社日本製鋼所の概要】 株式会社日本製鋼所は、1907(明治40)設立。わが国製鋼事業の草分け的存在。現在の事業分野は、素形材・エネルギー事業、産業機械事業及び不動産その他事業に区分されている。連結売上高223,301百万円、経常利益14,125百万円。従業員数5,224名(数字はいずれも平成28年3月期)。本店所在地は東京都品川区。東京証券取引所及び名古屋証券取引所一部上場。 不適切な会計処理が発覚したファインクリスタル株式会社(以下「FCC」と略称する)は昭和63年8月設立。事業内容は、「光学用ローパスフィルター、水晶原石、各種ウエハーの製造」であり、日本製鋼所の「素形材・エネルギー事業」に含まれる100%出資子会社。資本金880百万円、売上高2,216百万円、経常損失174百万円(平成27年3月期)。   【調査委員会報告書の概要】 1 不適切な会計処理が発覚した経緯 平成28年2月、日本製鋼所室蘭製作所経理部門が、FCCの財務諸表につき点検を行ったところ、貸借対照表の一部勘定科目において計上額が過大ではないかという疑念が生じた。この報告を受けた本社経理部門及び経営企画部門が詳細な調査を実施したところ、過年度から売上原価を仕掛品等に振り替える費用の繰延等が行われていたことが判明し、3月28日開催の取締役会において内部調査委員会が発足した。   2 不適切な会計処理の概要 FCC経理課長A氏は、本来は売上に対応する原価として計上すべき金額の一部を貸方に、また借方には買掛金、未収入金、仕掛品等として負債の減少又は資産の増加とする振替伝票を起票し、上司の承認を得ることなく、また、経理規程に違反して証跡を伝票に添付することもなく、自ら経理システムに入力することにより、粉飾決算を行っていた。 【売上原価の過少計上額】(単位:百万円)   3 不適切な会計処理に至った背景と目的 (1) A氏の過重な業務負担 FCC経理課は慢性的な人員不足状態であり、不正実行犯となったA氏の業務は、本来の経理業務以外に及んでおり、長時間残業や休日出勤が常態化していた。また、経営会議の資料作成や損益説明、質疑に対する回答もすべてA氏が担っており、1人でFCCの経理業務を背負う形となっていた。 (2) 帳簿システムの不備 FCCが平成25年10月から使用した帳簿システム(原価計算システム)における一般間接費の配賦方法に不備があり、原価計算の数値が会計ソフト上の数値と合わないことが判明した。 当時、経理担当者であったA氏は、売上原価を帳簿システム上の数値に合わせるため、平成26年3月期第3四半期決算において、売上原価を過少にする振替伝票を起票し、会計システム上の損益調整を行った。 (3) 代表取締役社長からのプレッシャー 平成26年1月、FCCの下期決算で経常損益がマイナスとなることが予想され、当時の代表取締役社長B氏は、A氏に対して、「下期の経常損益をゼロにできないか検討する」ことを指示した。しかし、経理担当者に過ぎないA氏に具体的な方策が講じられるはずもなく、A氏は、B氏からの質問や追及から逃れたいばかりに、原価計算の数値を改ざんしたものである。 (4) 取締役からのプレッシャー B氏の社長退任後、新たに取締役に就任したD氏は、FCCの経理に関する問題意識を強く持っており、経営会議におけるA氏の売上高や損益に関する説明に対し、予算と実績の差異について詳細な理由説明を求めていた。 A氏は、その質問を恐れ、予算と実績の差異を少額に調整するため、原価計算の数値を改ざんし続けることとなった。   4 発生原因 調査報告書には、本件不正が発生した背景として、以下のように分析している(調査報告書p.15以下)。 当事者であるA氏の意識や会計知識に問題があるという指摘は当然であるが、当時の代表取締役社長であったB氏についても、以下のように「不適切な対応」を認めている。   5 再発防止策 内部調査委員会は、再発防止策の提言の前に、直接的な対策として、 という3項目を挙げており、続いて、再発防止策として、大きく3項目を提言している(調査報告書p.27以下)。 再発防止策については、いずれも一般的な事項にとどまっており、むしろ、提言の前に示された「直接的な対策」を履行することで、FCCにおける会計不正の再発は十分に防止できるのではないかというのが印象である。   【調査報告書の特徴】 子会社の一従業員の手による会計不正――それもかなり初歩的な手段による不正が、日本有数の知名度を誇る名門企業に「有価証券報告書の訂正」という不名誉な作業を強いることになった本事例。調査報告書の特徴をいくつか検討したい。   1 会計監査人に対する厳しい指摘 日本製鋼所のグループの監査を担当した新日本有限責任監査法人に対して、不正実行者であるA氏の「監査法人による資料の確認が十分なされていないと認識した」という供述を引用する(調査報告書p.10)だけでなく、直接的な対策として、上述のとおり、「監査法人に対し少なくとも担当者の見直しを含む適切な改善策を求めるべき」と再発防止策の提言の前に述べている点、かなり厳しい指摘をしている。 新日本監査法人の担当者は、FCCの売上・受注が減少する中で、未収入金や仕掛品が増加していることに説明を求めてはいたものの、A氏による回答を深く追及することなく、結果的に不正を見逃したことについては、次のように書いている(調査報告書p.22)。   2 内部統制報告書の訂正 過年度決算の訂正と同日に公表した「内部統制報告書の訂正報告書の提出に関するお知らせ 」というリリースで、日本製鋼所は、本件について、以下のような「開示すべき重要な不備」を認識したとしている。   3 孤立する子会社経理課長 会計不正を行っていたA氏は、平成11年3月に専門学校を卒業し、信用組合での勤務を経て、平成12年7月に契約社員としてFCCに入社。平成15年9月に正社員となったのち、順調に資格を上げ、平成26年4月担当課長、翌年4月課長に昇進している。20歳で専門学校を卒業したとすれば、35歳で課長になっており、まずは順調な会社員人生であろう。 キャリアを重ねるにつれ、A氏の業務範囲は広がっていくが、経理課は増員されないままであり、社長から直々に損益改善を指示されても、相談できる相手もなく、子会社採用であることを考えれば、管掌する親会社にパイプがあるわけでもなかっただろう。 FCCにおける毎月の経営会議での質疑は損益に集中しており、社長からは、「経理は数字をまとめるだけでなく、売上やコストを管理・分析し、経営をサポートするべき」として、損益の改善を求められ、あるいは、自分が立案したわけでもない予算と実績の差異について取締役から質問が浴びせられるなど、監督すべき上司不在の中、A氏が孤立し、極めて単純な手口の会計不正に及んでしまう。 社長をはじめとする経営陣から「なぜ、損益改善ができたのか?」と追及されていたり、監査法人から詳細な説明を求められていたりすれば、A氏は、最初の不正の時点で自白したのではないか。経営陣の無関心、子会社管理する室蘭製作所や監査部の中途半端な追及の結果、不正を継続することになってしまったA氏にとっては、「もっと早く見つけてほしかった」というのが実感ではなかっただろうか。 (了)

#No. 177(掲載号)
#米澤 勝
2016/07/14

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第119回】ソフトウェア会計⑤「市場販売目的のソフトウェアの減価償却方法」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第119回】 ソフトウェア会計⑤ 「市場販売目的のソフトウェアの減価償却方法」   仰星監査法人 公認会計士 上村 治     〈事例による解説〉   〈会計処理〉(単位:千円) ① ×1年3月期 (※1) 見込販売数量に基づく減価償却額: 取得原価450,000千円×実績販売数量800個÷期首見込販売数量3,000個=120,000千円・・・A 残存有効期間に基づく均等配分償却額: 取得原価450,000千円÷残存有効期間3年=150,000千円・・・B A<Bのため、150,000千円を減価償却費とする。 ② ×2年3月期 (※2) 見込販売数量に基づく減価償却額: 期首未償却残高300,000千円×実績販売数量800個÷見込販売数量1,500個=160,000千円・・・C 残存有効期間に基づく均等配分償却額: 期首未償却残高300,000千円÷残存有効期間2年=150,000千円・・・D C>Dのため、160,000千円を減価償却費とする。 ③ ×3年3月期 (※3) ×3年3月期においては、当初の有効期間の最終年度であるため、当期首未償却残高を減価償却費として計上する。   〈会計処理の解説〉 1 市場販売目的のソフトウェアの償却方法 市場販売目的のソフトウェアに関して採用すべき減価償却の方法は、各企業が当該ソフトウェアの性格に応じて、その実態に応じ最も合理的と考えられる方法を採用する必要がありますが、販売期間の経過に伴い著しく販売価格が下落する性格を有するソフトウェアについては、見込販売収益に基づく償却方法を採用することが合理的です。 ただし、毎期の償却は、残存有効期間に基づく均等配分額を下回ってはならないため(研究開発費等に係る会計基準四5)、毎期の減価償却額は、見込販売数量(又は見込販売収益)に基づく償却額と残存有効期間に基づく均等配分額とを比較し、いずれか大きい額を計上することになります。これは、見込販売数量(又は見込販売収益)の見積りが困難であることから、償却期間が長期化することを防止するために毎期の償却額の下限を設定したものであり、販売可能な有効期間の見積りは、原則として3年以内の年数とされています(実務指針42項)。 本事例の業務アプリケーションソフトは市場販売目的のソフトウェアであり、見込販売数量に基づき償却計算が行われるとされています。 ×1年度においては、見込販売数量に基づく減価償却額が120,000千円と計算され、残存有効期間に基づく均等配分償却額150,000千円を下回ることになるため、残存有効期間に基づく均等配分償却額をもって減価償却費が計上されます。   2 見込販売数量等の見直しが行われた場合 ソフトウェアの見込販売数量(又は見込販売収益)の見積りは、様々な要因により影響を受けるものであり、それぞれの見積り時点では最善の見積りであっても、時の経過に伴う新たな要因の発生等により変動することが予想されます。 会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準第17項では、「会計上の見積りの変更は、当該変更が変更期間のみに影響する場合には、当該変更期間に会計処理を行い、当該変更が将来の期間にも影響する場合には、将来にわたり会計処理を行う。」こととされています。 このため、販売開始後の見込販売数量(又は見込販売収益)の見直しの結果、見込販売数量(又は見込販売収益)を変更した場合には、変更後の見込販売数量(又は見込販売収益)に基づき、当事業年度及び将来の期間の損益で認識することになります(実務指針43項)。 ×1年度末において見込販売数量の見直しが行われているため、×2年度の減価償却計算は見直し後の見込販売数量に基づき行われることになります。 これを前提に減価償却費を計算すると、見込販売数量に基づく減価償却額160,000千円と計算され、残存有効期間に基づく均等配分償却額150,000千円を上回ることになるため、見込販売数量に基づく減価償却額をもって減価償却費が計上されます。 ※8月は引当金を取り上げます。  (了)

#No. 177(掲載号)
#上村 治
2016/07/14

「従業員の解雇」をめぐる企業実務とリスク対応 【第5回】「普通解雇①」~能力不足、適格性欠如による解雇~

「従業員の解雇」をめぐる 企業実務とリスク対応 【第5回】 「普通解雇①」 ~能力不足、適格性欠如による解雇~   弁護士 鈴木 郁子   1 はじめに ~能力不足・適格性欠如による解雇の難易度は従業員の地位・採用経緯により異なる~ 他の従業員より勤務成績が低く能力不足で任せられる仕事がないとして、従業員を解雇することができるだろうか。 従業員は、会社に対し労務提供義務を負っているのであり、能力不足や適格性欠如により雇用契約において想定された業務を全く履行できないというのであれば、雇用契約上の債務不履行として、普通解雇の解雇原因となりうる。 (※) なお、実際の解雇にあたっては、①解雇制限に違反しないこと、②解雇手続の履践は当然必要となる。【第4回】を参照されたい。 しかしながら、実際にどの程度の能力不足や適格性の欠如であれば、解雇権濫用法理(【第4回】参照)との関係で、「客観的に合理的な理由」があり「社会通念上相当」であるとして、解雇が適法となるのであろうか。 能力不足・適格性欠如の場合、裁判では、能力不足が著しいことが必要とされ、 等に基づいて、総合考量により判断されることになる(なお、一般的な解雇権濫用の判断要素(【第4回】)も参照されたい)。 ①の当該職務に期待されている職務内容の如何は、当該従業員の地位・採用経緯により異なり、それに応じて解雇の難易度が明らかに異なってくるため、類型毎に検討したい。   2 新卒採用の場合 ~新卒は解雇できないと考えておいた方が無難~ (1) 一般新卒の場合 新卒採用は、そもそも長期雇用が前提の採用であり、また、採用時に業務経験・能力がないため、入社後の教育・研修や経験の積み重ねにより職務遂行能力を身につけることが期待されている。また、採用時に、最終的に担当する業務も固定化しておらず、将来、部署異動があることが前提となっている採用形態である。 したがって、一般新卒の場合、特定の能力や適格性があることは、必ずしも雇用契約の内容とはなっておらず、単なる能力不足や適格性の欠如を理由とする解雇は、非常に困難である。 またそもそも会社には、評価の高い者もいれば低い者もいることが当然に想定されるため、相対的に能力が低いことを理由として解雇することもできない。 すなわち、一般新卒の場合、辞めてもらうためには、合意退職を成立させるか、能力不足や適格性欠如以外の他の解雇理由が必要となる。 それも、他の解雇理由が、それのみで解雇理由たり得ないのであれば、研修・教育の機会を与えた上、他の部署での配属の現実的可能性がないことまで必要となると考えておいた方が無難である。 (2) 職種を限定した新卒採用の場合 もっとも、新卒採用であっても、職種を限定して採用がなされている場合には、雇用契約の内容として、採用時に一定の能力や適格性が備わっていることを前提としているとみる余地がないわけではない。 とはいえ、新卒の場合、職務経験がない中での採用である点において、後述する中途採用の場合とは異なる。したがって、ある程度の期間にわたる教育や改善機会の付与をすることが最低限必要であろうし、他の職種への配置換えの可能性の検討についても、場合によっては必要となるものと思われる。   3 中途採用の場合 ~解雇の余地はあるが、職務に想定されている内容の特定が必要~ (1) 中途採用の特殊性 中途採用の場合は、新卒の一括採用の場合と異なり、すでに職務経験があり、一定の経験・能力があることを前提とし、即戦力を期待されて雇用契約が締結される場合が多い。 したがって、一定の経験や能力を有していたり、特定の職務をなし得ることが雇用契約の内容となっている場合が多く、上述した新卒の場合に比べて、解雇の有効性は緩やかに判断される。 (2) 地位を特定して中途採用した場合 例えば、「人事部長」や「営業部長」などの地位を特定して採用した場合には、その地位に想定されている業務を遂行し得る能力がなく、不適格であるというのであれば、解雇し得る。 そして、地位を特定した採用を行っている以上、その地位に期待されている職務を遂行できないのであれば、原則として、降格や配置換えの措置を講じなくとも、債務不履行として解雇は可能である。 もっとも、雇用契約時に、地位に期待されている職務の内容が従業員との間で了解事項となっていたのか、職務を遂行する能力がなかったことを客観的に立証できるのか等、解雇に対して超えるべき現実的なハードルは決して低くない。 また、例えば営業部長の場合で、売上目標などを雇用契約の内容として定めていた場合であっても、そもそも客観的に時勢等から売上達成が不可能な状況であったり、売上目標に足りなくとも目標に対して一定程度の売上を達成できていた場合、また、そもそも地位に相応しい給与が支給されておらず、本人は降格・配置換え等により在職することを希望している等の事情がある場合は、解雇が難しいことには留意する必要がある。 (3) 専門職として中途採用した場合 職種を特定した専門職として中途採用した場合も、職種を特定した採用をしている以上、その職種に期待されている職務を遂行できる能力がないのであれば解雇し得るが、職種を特定する場合は、上記の地位を特定した採用よりも、能力と職務の結びつきが弱い。 したがって、改善の機会を与えることは当然として、解雇の前に、事務職等他の職種への職種変更を試みるべきである。 (4) 新卒と同様の中途採用の場合 中途採用であっても、いわゆる第二新卒であったり、能力や経験とは無関係に採用された者については、新卒と同様に考える必要がある。   4 実務上の留意点 ~地位・職務・職種の内容を特定する重要性~ (1) 採用条件の証拠化 上記のとおり、能力不足・適格性欠如を理由として解雇できるかどうかは、地位・職務・職種が限定された雇用契約であり、その地位・職務・職種に期待される内容が雇用契約時に明らかとなっており、雇用契約の内容となっているかという点に帰着する。 したがって、実務上、以下のような工夫をすることが望ましい。 実際には、採用面接で上記のような説明はしているが、これを雇用契約書の中身に盛り込んでいなかったり、説明したことの記録が何も残っていないため、争いになっているケースが極めて多い。 雇用契約書に盛り込むか、少なくとも、採用にあたり、採用時に説明した職務内容等をメールなどで本人に送っておくなどの工夫が必要である。 採用時にこれらの証拠化をしていないのであれば、改善指導等の際に改めて雇用条件の内容の確認をし、これを書面化しておくことが望ましい。 (2) 能力不足の立証 また、雇用契約時に、地位・職務・職種が限定されており、その内容が明らかになっていたとしても、期待された業務を遂行し得なかったこと、実際に当該職務についての能力が不足していたことの立証責任は会社側にある。 その評価期間は能力の有無を算定するのに十分な期間である必要があるし、その評価方法についても恣意の入らない客観的なものであることが必要である。また求める評価結果も、そもそも実現不能であったり、時勢の変化などを考慮していなかったり、評価結果に僅かに足りないだけで解雇するなど、不合理なものであってはならない。 人事評価制度がある場合には、その評価制度に評価期間の評価結果を反映させておくべきである。そしてその評価結果は、逐次本人に対してフィードバックし、これらを達成できないのであれば、解雇があることを伝えていくべきである。 なお、解雇するとしても、企業秩序違反の行為ではないので、懲戒解雇ではなく、普通解雇である(【第1回】参照)。 *  *  * このように、雇用契約時に採用条件を明確にし、さらに逐次その評価結果をフィードバックしていけば、期待された成果が上がらなかったとき、従業員は、会社が解雇というリスクを伴う手段(【第2回】参照)を講じるまでもなく、退職勧奨に応じたり、自ら辞めることを選択することが多い。   (了)

#No. 177(掲載号)
#鈴木 郁子
2016/07/14

マイナンバーの会社実務Q&A 【第14回】「就業規則の改定⑦(「特別休暇」の条文の追加)」

マイナンバーの会社実務 Q&A 【第14回】 「就業規則の改定⑦(「特別休暇」の条文の追加)」   税理士・社会保険労務士 上前 剛   〈Q〉 社員が平日に市区町村役場にマイナンバーカードを取りに行けるようにしたいのですが、特別休暇の条文を新たに追加するのと現在の年次有給休暇の条文で対応するのとどちらがよいでしょうか。 現在の年次有給休暇の条文は、以下の通りです。   〈A〉 年次有給休暇は、入社6ヶ月後に10日付与される。入社6ヶ月以内の新入社員は年次有給休暇が0日なので、全社員をカバーできない。また、マイナンバーカードを取りに行く程度で年次有給休暇を消化してもよいのだろうかと考える社員、もっと有効なことのために年次有給休暇を消化したいと考える社員がいるかもしれない。 したがって、特別休暇の条文を追加する方がよい。慶弔休暇に代表される特別休暇は、設定するもしないも会社の自由、有給・無給も会社の自由である。 〈パターン1〉 特別休暇としてマイナンバーカード取得休暇の条文を追加した。無給だと制度の利用者が少なくなると予想されるため、有給とした。 〈パターン2〉 第2項に“ただし、マイナンバーカード取得後1週間以内にマイナンバーカードの写しを会社に提出しない場合、無給とする。”を追加した。社員がマイナンバーカードを市区町村役場に取りに行った事実を確認し、マイナンバーをすみやかに取得するためである。 (了)

#No. 177(掲載号)
#上前 剛
2016/07/14

〔誤解しやすい〕各種法人の法制度と税務・会計上の留意点 【第8回】「医療法人(後編)」

〔誤解しやすい〕 各種法人の法制度と 税務・会計上の留意点 【第8回】 「医療法人(後編)」   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎 公認会計士・税理士 濱田 康宏   ▷〔前編〕はこちら ▷ 税務・会計について 3 基金について 持分なしの社団医療法人の場合に限り、定款で定めることで、基金を設置できる。この基金は、法人の財政的基盤を支えるものとの位置づけであり、利息を付されず、返済期限を定めない劣後債務として、会計上は、純資産の部に表示されることになる。 ただし、税務上は、あくまでも債務として扱われるため、法人税法における資本金あるいは資本金等の額についての規定の適用は行われないことになる。詳細は、下記の文書照会回答を確認されたい。 なお、法人設立時には一定の資金を必要とするため、個人事業からの法人成りでは、認可時において一定額の基金を拠出するように都道府県から指導を受けるのが通例である。この基金は、拠出側個人においては、相続財産となり、通常は、額面評価されることになる。 最近、この基金が相続財産としてそのまま額面評価されることを後で知ったがために生じたトラブルの例を幾つか聞いている。法人設立だけで話が終わらないということを、税理士がきちんと理解しておかないために生じた悲劇という見方もできるのではないだろうか。   4 会計 既に述べた点以外について、若干の補足を行う。 (1) 会計報告は現状病院会計準則主体だが医療法人会計基準への切り換えが必要な場合がある 医療法人については、従前、医療法人会計基準が制定されておらず、病院会計準則という施設基準を基礎に、法人の会計がなされてきた。しかし、ようやく医療法人会計基準の制定がなされ、今般、法令化もされたことで、今後、各法人は徐々に対応を進めていくものと考えられる。 特に、一定規模以上で、会計監査人による監査が必要とされた法人については、対応が強制となるため、早期の対応が必要不可欠となる。 詳細は、下記指針を確認されたい。 (上記指針より) (2) 施設会計などの管理会計が必要 先述したような業務区分(本来業務・附帯業務・収益業務)による事業の区別に加えて、既に社会福祉法人の回で説明したような、施設会計が必要になる。   5 税務 (1) 法人税 ① 同族会社関係の規定の適用はない 別表2における出資者の記載や別表3の留保金課税計算など同族会社を前提とする規定の適用はない。ただし、同族会社の行為計算否認については、これを肯定したと評価される裁判例が存在する。 ② 純資産の部は出資持分のありなしで分かれる 出資持分ありの場合には、決算書上「出資金」評価されているものを、株式会社の資本金同様に取り扱えばよいことになるが、出資持分なしの場合、「基金」はこれとは異なる点は、既に説明した通りである。 ③ 法人税率は特定医療法人の場合優遇だが利益供与チェックは厳しい 特定医療法人は、普通法人でありながら、税率の軽減を受けることが可能になる。承認申請が必要になるとともに、毎年定期提出書類が要求されている。 持分ありから持分なしに移行する際の課税関係を生じさせないことについて、いわばお墨付きのある類型であり、法人税の税率優遇だけでないメリットが得られる。反面、利益供与関係の税務調査は、国税局の専担者が行うが、通常の税務署の税務調査よりも非常に厳しく確認が行われる点、税理士としては要注意であろう。 ④ 社会医療法人は収益事業課税 社会医療法人は、法人税法上は、公益法人等に該当し、34業種の収益事業課税が行われることになる。既にNPO法人の回などでも説明したみなし寄附金制度が利用可能である。 この社会医療法人の収益事業課税の税務及び持分なしの普通法人から社会医療法人に移行する際の課税所得範囲の変更問題については、既に本誌において寄稿済みであるため、下記を参照されたい。 特に、収益事業課税の範囲については、業務範囲との関係での検討が重要になるが、筆者は他に扱った事例を見たことがないため、上記の論考は、関係する読者の参考になると考えている。 なお、週刊税務通信が過去に出した記事は、最近になって、実質的な訂正記事と思われる追加取材記事が出ているが、上記論考では、既に税務通信記事への疑問を呈している。 ⑤ 医療機器には、中小企業投資促進税制は適用できない 中小企業者等に該当する病院を経営する法人については、中小企業投資促進税制(措法42の6)の適用時に注意が必要である。 診療用又は治療用として取得をし、事業の用に供した超音波診断装置、人工腎臓装置、CTスキャナ装置、歯科診療用椅子などの医療機器は、該当しないとされているからである。詳細は、下記を参照されたい。 その代わりに、医療機器の特別償却(措法45の2)を使うべきだということになるが、ここで、医療機器の特別償却と中小企業投資促進税制は、選択適用できるかという論点がある。これについては、選択適用できないという裁決が出ている。 また、この特別償却は、金額だけでなく、リスト指定がある点に注意が必要である。 なお、獣医師の場合、「獣医業」もこの特別償却を適用可能とされている。 (2) 寄附税制 社会医療法人については、みなし寄附金制度の適用があるが、個人拠出者からの寄附金控除は存在しない点、他の公益法人とは異なっている部分がある。 (3) 事業税 事業税では、医療法人は特別法人とされ、税率適用区分が異なっている。 また、社会保険診療収入の非課税制度があるが、都道府県により、収入按分方式と所得按分方式との違いがあるとともに、計算方法に若干の違いがある。該当する都道府県の手引を入手して、熟読しておくことをお勧めする。 (4) 均等割 持分なし医療法人の場合の均等割については、従業者数が関係ない。ときに勘違いがあり、筆者の場合、同じ市町村からの照会を担当者が変わる都度受けたこともある。 (5) 消費税 社会医療法人については、特定収入計算(消法60④)が必要となる。 (6) 相続税・贈与税 近年、納税猶予・税額控除制度が新設された。第6次医療法改正により、既存の持分あり医療法人は、持分なし医療法人への移行計画を作成し、これについて認定を受ける仕組みが平成26年10月よりスタートしている。 元々、出資持分の定めがある医療法人を出資持分なしにするには、課税上3つのハードルがあった。 この税制改正では、この[2]についての解決策を提示している。 元々、[1]については、払戻しを受けるあるいは基金拠出型に切り替える場合以外には課税関係を生じない。 そして、[2]についても、出資者が全員同時にすべての出資持分を放棄すれば、残余する出資者が残らないので、課税関係は生じなかった。 今回の特例は、一度に全員がすべての放棄をできない場合、新制度である認定医療法人制度に乗っていれば、全員の放棄が終わるまで納税猶予を受けることを認めたものである。 ただし、納税猶予は課税関係が先に続くので、反射的に受けた経済的利益について、その時点で放棄すれば、贈与税の税額控除制度を用意して、その時点で、その残存出資者の課税関係を終わらせることもできることとした。とはいえ、この場合でも、[3]の問題は残ることになる。 最後に、[3]だが、同族関係で役員を固めているなどの条件を満たす場合には、法人に贈与税を課す場合があるものとされている(相法66④)。これについては、今回の制度では何ら手当がされていない。 結局、この点については、安全な移行を行うには、特定医療法人になるのとほぼ同じレベルの環境整備が必要になるという従来実務と全く変わっていないということができる。 診療所規模であれば、財産を失ってしまうリスクを考えると、積極的な移行を勧める意義はあまりないものと思われる。病院についても、診療所への転換の可能性について、充分検討が必要であろう。 ただし、地域医療との関係で、もはや病院としての経営を止めることができない場合で、同族経営からの脱皮やむなしとの判断が可能な場合には、本制度の利用を検討して良いのであろう。特に、今回の特例対象である「一度に出資者全員の持分全部放棄が難しい場合」に該当する法人であれば、まさに前向きに検討すべきかもしれない。 (了)

#No. 177(掲載号)
#北詰 健太郎、濱田 康宏
2016/07/14
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