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[子会社不祥事を未然に防ぐ]グループ企業における内部統制システムの再構築とリスクアプローチ 【第7回】「グループ企業への具体的な関与(その1)」~法令遵守に係る基本的・具体的アプローチ~

[子会社不祥事を未然に防ぐ] グループ企業における内部統制システムの再構築とリスクアプローチ 【第7回】 「グループ企業への具体的な関与(その1)」 ~法令遵守に係る基本的・具体的アプローチ~   弁護士 遠藤 元一   1 最優先で取り組むべき法令遵守態勢の整備 【第4回】で紹介したリスクベース・アプローチによる対応、すなわち 【リスクの影響の大きさ】・・・リスクが発生した場合に会社その他に及ぼす損害の深刻さ・程度 【発生頻度】・・・リスクが実際に発生する確率・頻度 を考慮して優先順位を付け、優先順位の高いリスクに重点を置いてメリハリをきかせたリスクのコントロール(リスクの発生の防止・低減等)対応策を検討する場合に、『法令遵守態勢の整備』を最優先で取り組むべきであるという点に、読者諸氏も異論はないところであろう。 法令違反を犯すと、所轄官庁によるエンフォースメント、(上場企業の場合は)取引所による制裁措置、さらに株主や取引先から損害賠償請求訴訟を提起されるリスクもある等、企業価値を著しく毀損する可能性があるからである。 そこで今回は、グループ企業における法令遵守態勢の整備について解説する。   2 親会社による統一的な社内ポリシーや規定類の策定・導入及び更新 法令遵守態勢を整備するには、法令遵守に関連する社内ポリシーや規定類の策定・導入がその出発点となる。 社内ポリシーや規定類の策定・導入については、基本的に親会社が統一的なフォーマットを策定・準備し、それをグループ企業に属する子会社に適用・展開させることが原則である。 なぜなら、子会社等のグループ企業は親会社に比べ法務体制が必ずしも盤石ではなく、事業部門から相談を受ける法的問題も子会社によりバラツキがある等、ガバナンスや法的知見のある領域・範囲が区々であることが多い。 そのため、社内規定類、決裁基準、取締役会規定、コンプライアンス上の取決め(各種業法上の社内ポリシー等)、就業規則等は、同じグループ企業に属する子会社については、親会社がトップダウンで、統一的で一貫した指針に基づき、グループ全体のためのポリシーや社内規定、就業規則等を準備して子会社に導入、展開させることが実践的で、有用でもあるからである。 また、単に社内ポリシーや規定類を策定・導入すればよいという話ではなく、それを実効的に運用することも重要である。そのためには法令遵守等についての法的知識の維持・整備、法務部門のスキル向上等を図る必要があるが、これを子会社の法務部門の自助努力に委ねることは適当ではない。 【第5回】でもふれたが、親会社の法務部門により、グループ企業のビジネスに関わる法令等の重要点の解説や事業遂行に関する留意点等を整理した資料(※)や、様々な取引に関する契約書ひな形を策定し、グループ企業に対するセミナー、研修(eラーニングを含む)、コミュニケーション等を通じてグループ企業の法務部門に浸透させ、さらに必要に応じて親会社の法務部門が直接、グループ企業の事業部門に対し上記の取組みやコンサルテーション等を実施することも重要となる。 (※) 法令の改正や実務指針、自主ルール等の策定・改正がある場合には、改正点等についての解説・留意点等を整理してタイムリーにグループ企業に配布し、グループ企業が最新の情報を共有できるようにすることも含む。 さらに、取締役会や経営会議等についての事務局としてのサポート業務等も、親会社法務部員の子会社法務部門への出向、子会社法務部員の親会社法務部門への出向等の人材交流を行い、出向期間終了後も定期的なミーティング等を実施する等して親会社の法務部門のリテラシーを子会社の法務部門にも共有させることにより、グループ企業における法務部門のボトムアップを実現することが可能となる。   3 子会社によるポリシー・社内規定のカスタマイズ等及び親会社のモニタリング 上記のとおり、親会社が主導・能動的な立場からグループ企業に統一的に策定・導入するのが原則であり、グループ経営(特にコーポレート機能)の強化が求められる潮流にある現在、上記の方針によりグループ企業の法令遵守態勢の整備がより一層進められることが予想される。 では、グループ企業側ではどのような対応が求められるか。 第1に考えられるのは、親会社が策定したポリシーや社内規定をグループ企業に導入する際の修正(調整・カスタマイズ)等の対応である。つまり、グループ企業が遂行する事業毎に適用される業法が異なる等、各社の事情に合わせてポリシーや社内規定を修正する必要がある。 特に、M&Aで買収したグループ企業であり、親会社には当該グループ企業の企業文化・社風さらには業務についての知見が十分ではないことがある。その場合、ポリシーや社内規定をどのように修正するかを当該グループ企業の自主性に委ね、親会社は、グループ企業において修正したポリシーや社内規定が適正に実施・運用されているかを取締役会・経営会議等で確認し、定期的な往査や報告等の方法を通じて、グループ企業との意思疎通を図りながら水準維持に努めることで対処することになる。 第2に、第1と表裏一体の問題として、親会社にとって、グループ会社から自主的・自発的な情報発信により情報を収集でき、的確に対応策を講じ得るよう指導・助言できる環境整備が重要となり、グループ企業側の積極的な協力体制も欠かすことができない。 親会社の法務部門は、親会社の主管部門とのコミュニケーションを深め、主管部門と協働・連携しながらグループ企業の事業部門に接するほか、親会社の法務部門からグループ企業への出向やその逆等の人的交流を図る等してグループ企業における法務部門としてのミッションを共有し、親子会社の法務部門の役割分担について相互に理解すること等も重要である。   4 シェアードサービス会社の活用 法務部門が存在せず、専任の法務担当者がいないグループ企業を支援するために、法務部門についてグループ企業を支援するシェアードサービスを独立した会社で提供する場合がある(シェアードサービスの業務は、会社法関連、契約書の文案作成・確認、M&A案件の支援等、多様なものが含まれるが、弁護士法との抵触を避けるため、紛争案件は除かれる)。 シェアードサービスは、シェアードサービス会社に法務パーソンを集約して相応の人数のそろった法務部門の設置が可能となること、また、グループ企業から業務受託を通じてノウハウを集約することで、グループ内の法務に関わる業務の高度化と効率化を図ることが可能となることに利点がある。 シェアードサービス会社には、法務部門だけでなく、内部監査部門、財務会計部門を設けることもあり、ガバナンスの観点からシェアードサービス会社の組織や人員の拡充を図る発想と、また、管理部門のオペレーショナルコストを節約するためシェアードサービス会社はコアとなる少数人数に絞り、外部の弁護士、会計士等への依頼を活用するという発想と両方がありうる。 どちらの方向で制度設計するかは、グループ企業全体をみたうえで決めるべき問題であろう。 (了)

#No. 152(掲載号)
#遠藤 元一
2016/01/14

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第41回】株式会社マツモトキヨシホールディングス「調査委員会調査報告書(平成27年11月11日付)」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第41回】 株式会社マツモトキヨシホールディングス 「調査委員会調査報告書(平成27年11月11日付)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【調査委員会の概要】   【株式会社マツモトキヨシホールディングスの概要】 株式会社マツモトキヨシホールディングス(以下「マツモトキヨシHD」と略称する)は、2007(平成19)年10月設立。株式会社マツモトキヨシ(以下「マツモトキヨシ」という)グループ中核会社とする子会社の管理・統括及び商品の仕入・販売を事業内容とする持株会社。 マツモトキヨシは1932(昭和7)年創業。連結売上高485,512百万円、連結経常利益20,031百万円(数字はいずれも平成27年3月期)。従業員数6,178名。本店所在地、千葉県松戸市。東京証券取引所一部上場。 不正な会計操作が行われていたことが発覚したのは、マツモトキヨシHDの連結子会社であった株式会社イタヤマ・メディコ(以下「イタヤマ・メディコ」という)。イタヤマ・メディコは、本店所在地である山梨県甲府市を中心に9店舗のドラッグストアを展開していたが、平成27年10月1日、マツモトキヨシHDの連結子会社である株式会社マツモトキヨシ甲信越販売(以下、「マツモトキヨシ甲信越販売」という)に吸収合併された。   【調査報告書のポイント】 1 不正行為が発覚した経緯 10月15日付リリースによれば、不正な会計操作は、イタヤマ・メディコとマツモトキヨシ甲信越販売との統合処理の過程において発覚した。 同リリースから不正の概要を引用する。   2 調査報告書により判明した事実 (1) 長期間にわたる不正の継続 イタヤマ・メディコ元社長の供述によると、最初に改竄データを作成して棚卸資産の架空計上を行ったのは平成15年3月期であり、調査委員会の入手した資料でも、同期において104百万円の差が発生していることを確認できたため、不正の開始時期は平成15年3月期であり、その後、発覚するまで12年以上、続けられていたことになる。 以後、架空棚卸資産の額は、マツモトキヨシHDによる子会社化(平成24年2月)まで漸増し、同期において約404百万円となった。子会社化以後においては、差額は増加することなく、発覚時の差額も約404百万円であった。 (2) 不正な会計操作の手口(調査報告書p.4) 不正な会計操作は、イタヤマ・メディコ元社長の指示により、イタヤマ・メディコ元常務取締役が実務を担当し、他の社員の関与はなかった。 具体的には という手順がとられていた。 (3) 不正な会計操作の動機(調査報告書p.8) イタヤマ・メディコ元社長の供述によれば、平成14年下半期以降業績が悪化し、赤字による金融機関からの資金融資のストップにより、倒産に陥る危機感から、会社存続のために在庫水増し処理によって赤字を回避した。 当初は、平成15年2月に基本合意したマツモトキヨシとの業務提携により、商品の仕入価格が下がるなどの優位性が生じると見込まれたため、改竄により発生した差異は穴埋めできると考えていたが、実際には売上低下が続き、また、新規出店のための資金融資が必要となり、赤字を回避するために水増し額は増加の一途を辿ることとなった。 (4) デューデリジェンスにおける問題点(調査報告書p.12) マツモトキヨシHDは、イタヤマ・メディコの子会社化にあたり、第三者機関によるデューデリジェンスを行い、サンプル店舗においては実査も同時に行われたが、在庫金額の差異など、不正な会計操作の兆候は発見できなかった。 デューデリジェンスの指摘事項としては、以下の2点により、約70百万円の資産減額が報告されている。 こうした減額を含め、デューデリジェンスにおける純資産は約300百万円の債務超過状態であり、マツモトキヨシHDは株式価値を1株当たり1円(合計1,200円)という備忘価額で交渉を進め、株式譲渡契約に至ったものである。 こうした経緯を見ると、デューデリジェンスにおいて本件不正が発見されていた場合に、マツモトキヨシHDが株式譲渡契約を締結しないという選択肢があったかどうかはわからないが、「不動となっている可能性が高い商品在庫」というリスクを指摘しておきながら、全店舗の実地棚卸を行わなかった点は惜しまれるところである。 (5) 僅少な会社(調査報告書p.7) マツモトキヨシHDに保有する店舗数は1,481(平成27年3月31日現在)。そのうちに占めるイタヤマ・メディコの店舗数はわずか9店舗であり、独自の店舗運営システムの使用を継続することが容認されていた。こうした状況が不正な会計操作を長期間発見できなかった要因となっていた。 ひとつには、マツモトキヨシHDでは、内部統制の評価範囲について、売上高を基準として決定し、決算・財務報告プロセスは上位95%を、業務プロセスは上位66.7%を対象会社としていたが、イタヤマ・メディコは僅少な会社として、いずれのプロセスにおいても内部統制の評価対象会社ではなかった。 また、イタヤマ・メディコ以外の子会社については、POSをはじめとする店舗管理システムの統合により、マツモトキヨシHDが直接各店舗のデータを確認することが可能となっているが、イタヤマ・メディコについてはシステム統合に伴う費用負担を補えるだけの業績を上げることができなかったことから、子会社化する前から使用していた独自システムが継続使用され、システム統合の計画が先送りされてきた。 こうした事情もあって、平成24年2月の子会社化後においても、イタヤマ・メディコの不正な会計操作は発覚しなかった。   3 再発防止策(調査報告書p.19以下) 調査委員会がまとめた再発防止策の概要は以下のとおりである。 イタヤマ・メディコのような内部統制評価の対象とならない「僅少な会社」をどのように管理監督していくかについて、調査委員会は各種の提言をまとめている。上記5(4)の一部を引用する。小売業においては、最もリスクが高いと考えられる棚卸プロセスについては例外を認めるべきではない、ということであろう。   4 調査報告書の特徴 (1) 過年度決算への影響(調査報告書p.17) 過年度決算の訂正として、以下の内容が挙げられている。 この結果、平成24年3月期のみ、当期純利益の訂正が行われ、それ以降の年度においてはそれぞれ純資産額を404百万円減額する決算訂正が行われている。 (2) 責任及び処分(調査報告書p.25) イタヤマ・メディコ元社長に対する損害賠償について、調査委員会は、「株式譲渡時に正しい処理が行われていたとしても譲渡価格には影響せず、譲渡価格自体は損害とはいえない」として、1株1円(合計1,200円)での譲渡契約という特殊性から、損害賠償については、「事実関係の調査や過年度決算の修正」に要した費用が損害賠償の対象となる、としている。 一方、処分については、イタヤマ・メディコ元社長はマツモトキヨシ甲信越販売の役員ではなく、10月31日付で自主退職していることから、それ以上の処分は必要ない、と判断している。 マツモトキヨシHD関係者の処分については、「子会社の社長による長期間にわたる不正会計処理という重大な事態」に対する経営者・業務統括担当役員としての管理監督責任、経営責任をとるかたちで、会長及び社長について、月額報酬の30%を1ヶ月自主返上することが相当であるとして、調査報告書を締めくくっている。 (3) 持株会社による事業会社である子会社の管理 マツモトキヨシHDは、マツモトキヨシをはじめとする子会社の管理・統括を事業内容とする持株会社であり、現時点においては、グループ内の基幹システム及び会計システムの統一がされ、運用を一元管理するとともに、子会社の経理業務も一括して受託していることから、事業会社である子会社の管理に関する環境は整っていたというべきである。 ただし、「僅少な会社」であり、資金負担の面から独自システムの使用を容認してきたイタヤマ・メディコにおいて長年続けられてきた不正を発見するところまではいかなかった。 マツモトキヨシHDから派遣されていた取締役及び監査役は、「商品在庫が過剰であること及び在庫を減らすべきことを複数回指摘している」ということであるが(調査報告書p.7)、不正な会計操作の発見までには至らなかった。 事業会社の業務監査、内部統制システムの評価を持株会社である親会社が行う場合における課題はいくつかあるが、本業とはあまり関係のない傍流の子会社や本件のような僅少な子会社をどう取り扱うかというのが、このところの課題として浮かび上がってきている。 本連載【第35回】で取り上げた北越紀州製紙株式会社の事例も、傍流の子会社において内部統制が機能していなかったものであったが、こうした子会社に対する業務監査手法、内部統制システムの評価対象の検討方法を再考すべき時期を迎えているといえよう。 (了)

#No. 152(掲載号)
#米澤 勝
2016/01/14

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第106回】引当金の会計処理②「ポイント引当金」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第106回】 引当金の会計処理② 「ポイント引当金」   仰星監査法人 公認会計士 上村 治     〈事例による解説〉   〈仕訳〉(単位:円) 販売時・ポイント付与時 ポイント利用による販売 期末(ポイント引当金の計上)   〈会計処理の解説〉 1 ポイント付与時 ポイント制度を採用している場合には、商品の販売があった時にポイントが付与されます。付与されたポイントは、顧客が次回以降の商品の購入の利用時にポイントを使用して割引を受けることができます。 ポイント付与時には、付与したポイントが顧客によって利用されるかどうか不明の状態であり、また、使用されたときにはじめて販売価格の割引が行われます。そのため、ポイント付与時にはポイントに関する会計処理は特に行われません。 2 ポイント利用時 ポイントが利用されたとき割引が行われ、販売価格が減額されます。そのため、ポイントによる割引分を売上値引もしくは販売促進費として費用処理します。 3 ポイント引当金の計上 付与されたポイントのうち期末時点の未利用残高については、引当金の要件を満たす場合、ポイント引当金の計上が必要になります。 企業会計原則注解18の引当金の要件は以下のとおりです。 ポイントの付与は「商品の販売」という事象に起因して発生し、ポイント利用時には割引が行われるため費用が発生します。そのため、将来の利用見込を合理的に見積もることができる場合にはポイント引当金の計上が必要になります。 ポイントの将来の利用見込は、過去のポイント利用実績などに基づいて算定することになります。そのため、ポイント残高とその利用実績を管理するためのシステム整備が必要になると考えられます。 また、ポイントには有効期限が設定されているケースもあり、有効期限が到来するとポイントが失効することになります。そのため、将来の利用見込額を算定する場合には、この点も考慮して見積もる必要があります。 なお、事例では引当金の見積りの基礎として販売価格ベースで算出する考え方によっていますが、商品原価ベースで算出する考え方もあります。その場合の引当金の金額は、例えば原価率が70%であるとすれば、420円(ポイント残高600×還元率1円/ポイント×原価率70%)となります。 (了) ※2月は連結会計を取り上げます。

#No. 152(掲載号)
#上村 治
2016/01/14

改正労働者派遣法への実務対応《派遣先企業編》~派遣社員を受け入れている企業は「いつまでに」「何をすべきか」~ 【第1回】「期間制限への対応①」

改正労働者派遣法への実務対応 《派遣先企業編》 ~派遣社員を受け入れている企業は「いつまでに」「何をすべきか」~ 【第1回】 「期間制限への対応①」   特定社会保険労務士 岩楯 めぐみ   【第1回】及び【第2回】は、改正により新しい考え方が導入された期間制限への対応について検討したい。なお「新しい期間制限の考え方」については下記の拙稿を参照されたい。   1 「事業所」「組織単位」の特定 (1) 「事業所」の特定 「事業所」単位の期間制限では、「事業所」毎に派遣可能期間が制限され、その期間は原則3年となる。そこで、「事業所」単位の期間制限に対応するためには、ここでいう「事業所」が、自社の組織にあてはめるとどの範囲になるのかについて整理が必要となる。 「事業所」とは、以下の観点等から実態に即して判断することとされている。 上記について補足すると、以下の通りとなる。 ① 場所的に独立していること 「事業所」の基本的な考え方となり、住所地毎に捉えることを意味する。つまり、住所地が同じであれば1つの「事業所」とし、住所地が異なれば別の「事業所」とする。 なお、同じビルの複数のフロアに入居している場合も、住所地はすべて同じと捉え、同じビルに入居している組織全体を1つの「事業所」として捉える。 ② 経営の単位として人事、経理、指揮監督、労働の態様等においてある程度の独立性を有すること 指揮命令等がある程度完結している単位を意味する。この点については、逆の視点で、経営の単位として独立性がない場合を除外する方がわかりやすい。 「経営の単位として独立性がない場合」とは、例えば、出張所やサテライトオフィス等で、規模が小さく、直属の上司は直近上位の組織に所属し、直近上位の組織にいる上司から指揮命令を受ける場合が該当する。 この場合は、直近上位の組織と出張所等の住所地は異なるが、出張所等は直近上位の「事業所」の一部として捉える。 ③ 一定期間継続し、施設としての持続性を有すること この点についても②と同様に、逆の視点で、施設としての持続性がない場合を除外する方がわかりやすい。 「施設としての持続性がない場合」とは、例えば、臨時的に事業所を設置する場合が該当し、この場合もその事業所は直近上位の「事業所」の一部として捉える。 *  *  * つまり、「事業所」とは、一部の例外(②③で除外されたもの)を除けば、住所地基準の組織グループであり、「事業所」単位の期間制限では、このグループ毎に派遣可能期間を管理することになる。 (2) 「組織単位」の特定 「個人」単位の期間制限では、派遣労働者「個人」毎に派遣可能期間が制限され、その期間は派遣労働者「個人」毎に同一の「組織単位」において3年となる。「組織単位」が変われば、派遣先は同じ派遣労働者を引き続き受け入れることが可能となるため、「個人」単位の期間制限に対応するためには、「組織単位」の考え方について整理が必要となる。 「組織単位」については、労働者派遣事業関係業務取扱要領で以下の考え方が示されているため、これらに照らして検討することとなる。 つまり、「個人」単位の期間制限では、基本的には指揮監督権限を有する組織の長を基準とするグループ毎に派遣可能期間を管理することになる。   2 意見聴取の手続き 「事業所」単位の期間制限では、「事業所」毎に派遣可能期間が制限され、その期間は原則3年となるが、意見聴取の手続きを行うことによって、派遣可能期間は3年を上限として何度でも延長することができる。 (1) 手続きの流れ 意見聴取は、事業所の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合(以下、過半数労働組合)に対して、過半数労働組合がない事業所では労働者の過半数を代表する者(以下、過半数代表者)(過半数労働組合と過半数代表者を合わせて、以下、過半数労働組合等)に対して行う必要があるが、その手続きの流れは以下の通りとなる。 (2) 留意点 ① 手続きの実施時期 上記[Step2]については「事業所」単位の期間制限の抵触日の1ヶ月前の日(例:派遣可能期間が9月30日までであれば、抵触日は10月1日となるため、その1ヶ月前の9月1日)までに、[Step3]については「事業所」単位の期間制限の抵触日の前日(例:派遣可能期間が9月30日までであれば、抵触日は10月1日となるためその前日の9月30日)までに実施する必要がある。 なお、労働者派遣契約においては、期間制限の抵触日以降の期間を派遣期間として定めることはできないため、労働者派遣契約の更新手続き時期を考慮すると、意見聴取の手続きは、期間制限の抵触日の1ヶ月前の日までに手続き完了を目指すのではなく、かなり早い段階で手続きを行うことになるだろう。 ② 異議 [Step3]における異議とは、派遣可能期間を延長することに反対する意見だけでなく、以下の意見も含まれるため、注意が必要となる。 また、2回目以降の意見聴取の際に、再度、過半数労働組合等から異議が述べられた場合は、その意見を十分に尊重し、派遣可能期間の延長の中止や延長期間の短縮、延長しようとする派遣労働者数の減少等の対応を検討した上で、その検討結果をより一層丁寧に過半数労働組合等に説明することが必要とされている。 ③ 事前準備 手続きの流れを確認した上で、意見聴取の際に必要となるものについては、準備しておくとよい。[Step1]や[Step2]で使用する書式は、労働局によってはサイト上で書式を例示しているので参考にしたい。 また、[Step5]の従業員への周知方法についても事前に決めておきたい。周知方法については上記のように法令で定めた方法による必要があるが、就業規則や労使協定等の周知でも法令に同様の定めがあるため、同じ対応をすればよいであろう。 ④ 延長の必要性 意見聴取をする前に、そもそも派遣可能期間を延長する必要があるのか、検討が必要となる。つまり、派遣労働の利用は臨時的・一時的なものが原則であるという考え方を踏まえて、自社において派遣労働者の受け入れを継続すべきか、派遣労働者の受け入れをやめて新しく従業員を採用すべきか、検討した上で方針を決定する必要がある。 なお、意見聴取により異議が述べられた場合は、ここで検討した内容を過半数労働組合等に説明することになる。 *  *  * 【第1回】は、派遣可能期間を管理する単位の整理と、「事業所」単位の派遣可能期間を延長する場合に必要な意見聴取の手続きを確認した。 次回は、過半数労働組合がない場合に意見聴取の当事者となる過半数代表者の選出等についてみていく。 (了)

#No. 152(掲載号)
#岩楯 めぐみ
2016/01/14

税理士ができる『中小企業の資金調達』支援実務 【第11回】「金融機関提出書類の作成ポイント(その3 貸借対照表)」~債務超過は避ける~

税理士ができる 『中小企業の資金調達』支援実務 【第11回】 「金融機関提出書類の作成ポイント(その3 貸借対照表)」 ~債務超過は避ける~   公認会計士・中小企業診断士・税理士 西田 恭隆   融資における決算書のポイントとして、今回は貸借対照表について述べる。   貸借対照表のポイント①:債務超過は避ける 避けるといって避けられるものではなく、この意味は「債務超過に陥る前に融資を申し込むよう社長に助言する」ということである。債務超過の状態だと、可能性はゼロではないけれども、融資獲得は難しくなる。繰越利益剰余金が大幅なマイナスとなっている会社は、「借金をして事業を続けてきたものの、毎年毎年赤字を積み重ね、お金を生み出す能力の無い会社」とみなされてしまう。金融機関は、債権回収見込みのない会社に融資することはできない。 債務超過に陥る前に、融資を申し込むかどうか、申し込みタイミングや金額について社長に提案、助言すべきである。 前回損益計算書のポイントと同様、前期末決算が債務超過の状態であっても、直近現在の状態が良好なのであれば、直近月までの残高試算表を積極的に提出する。最近は売上と利益が出ていることをアピールすれば融資可能性は高まる。売上の証拠として、通帳記録なども見せる。現在の債務返済能力の範囲内で、融資に応じてくれる場合がある。   貸借対照表のポイント②:仮勘定を整理する 債務超過かどうかは貸借対照表で判断される。その前提として、まず金融機関は貸借対照表項目に問題がないかチェックを行う。資産の過大計上や負債の過少計上があるとみなされると、科目修正と共に、繰越利益剰余金も切り下げられてしまう。修正によっては、決算上資産超過であった貸借対照表が、実質債務超過に逆転するおそれがある。繰越利益剰余金のうち、当期純利益が下方修正されれば、借金返済能力(当期純利益+減価償却費)にも不利な影響がでる。 以上の点を踏まえると、資産性に疑問を持たれるような、不明瞭な項目は貸借対照表に表示しない方が良い。具体的には、仮払金や仮受金などの仮勘定は残さないようにする。決算にあたっては、最初から別の勘定科目に振り替えておく。残してしまうと「本来経費計上すべきものを仮払金に入れて利益を水増ししているのではないか」、「仮受金を使って何か資産項目や負債項目の調整を行っているのではないか」等の誤解を招くおそれがあるからである。 やむを得ず多額の仮勘定が残る場合は、貸借対照表を提出する際、あらかじめ勘定内訳書や総勘定元帳を使って説明しておく。資産性に問題がないことをアピールする。   貸借対照表のポイント③:社長に対する貸付金を整理する 社長個人への貸付金がある場合、決算前に整理しておいた方が良い。社長への貸付金はいつ回収されるか不明なため、金融機関側は「資産性なし」と判断する。貸付金の金額によっては、資産が大きく目減りし、資産超過だと思っていた貸借対照表が、実質債務超過に逆転するおそれがある。 このため、社長にはできるだけ決算前にお金を返済するよう助言する。もしくは、社長に対する借入金や未払債務がある場合、決算整理で相殺し、貸付金勘定を消しておく。 やむを得ず多額の貸付金が残った場合は、貸付理由と、返済予定を合わせて金融機関に説明する。翌期にすでに回収済みであれば、証拠として、合計残高試算表や通帳記録を提出する。回収済みの事実が認められれば、遡って資産性があると判断してもらえる。 上記のとおり、社長への貸付金に対する金融機関の印象は良くない。将来、資金調達を考えるのであれば、普段から貸し付けは控えておいた方が良い。貸し付けるとしても一時的、金額は少額とし、決算前に返済できるようにしておく。社長に対する貸付金が膨らんでしまうと、融資申し込みの前に整理しきれないおそれがあるからである。 反対の勘定科目、社長からの借入金についても述べておく。金融機関の取り扱いも反対となり、融資判断に有利である。返済不要の借入金=実質資本金とみなされる。決算上、仮に債務超過であったとしても、社長からの借入金がそれを上回っていれば、実質資産超過と判断してもらえる。勘定科目表示の長短分類はどちらでも良い。   貸借対照表のポイント④:金額が大きい勘定科目は分かりやすく表示 金額が大きい勘定科目は、金融機関から質問を受ける可能性が高い。あらかじめ内容がひと目で分かるよう科目名を工夫したり、科目を複数に分けて表示しておくのが親切である。 例えば、上記のとおり、社長個人からの借入金は印象が良い。そこで、他の借入金とは区別して「代表者借入金」と表示すればひと目で分かりやすくなる。また、税務上の繰延資産を長期前払費用として処理している場合、金額の大きいものは、「〇〇団体入会金」等、内容が分かる勘定科目にする。ひと目で内容を理解しやすく、不要な誤解を避けることができる。ただし、細分化しすぎるとかえって内容が把握しづらくなるので、科目は絞る。この点は、前回損益計算書のポイントと同様である。注記表を用いて説明しても良い。 「申告書一式を提出しているのであるから、別表や勘定科目内訳明細書を見れば分かるだろう」と思われるかもしれない。確かにその通りである。しかし、金融機関の担当者は税務の専門家ではない。決算書以外の書類の見方に慣れていない方もいる。実際、別表や内訳書にそのまま書いてある内容について、質問を受けることは多い。できるだけ決算書のみで会社の実態が伝わるよう、工夫した方が良い。 細かい点であるけれども、別表や内訳書にそのまま書いてある内容について質問をうけた場合の対応について述べておく。「申告書に書いてある」とだけ回答するのは、金融機関や社長に冷たい印象を与えてしまう。筆者の場合、内容を改めて説明し、申告書の記載個所も併せて回答するようにしている。詳細説明として、自主的に総勘定元帳等を提出するよう会社に助言することもある。税理士は仲介者として、社長と金融機関が気持ちよく融資交渉できるように立ち回るべきである。 *   *   * 以上、金融機関に提出する書類の作成ポイントとして、決算書のポイントを説明した。次回は合計残高試算表について説明する。決算後、半年以上経過してから融資を申し込む場合、決算書に加え、直近の合計残高試算表の提出を求められる。 (了)

#No. 152(掲載号)
#西田 恭隆
2016/01/14

《速報解説》 国税関係書類のスキャナ保存、デジカメ・スマホも使用可能に~平成28年度税制改正大綱~

《速報解説》 国税関係書類のスキャナ保存、デジカメ・スマホも使用可能に ~平成28年度税制改正大綱~   税理士 佐藤 善恵   はじめに 国税関係書類のスキャナ保存制度は、平成17年の電子帳簿保存法改正に伴い認められたものである。それから既に10年が経過しているが、まだ一般的に利用されているとは言い難い。 このスキャナ保存制度について、昨年度(平成27年度)の改正では、対象とされる一定の書類についての3万円未満の金額基準撤廃など、様々な要件緩和がされたところであるが、平成28年度の改正においても、さらに手続要件等の見直しが行われることとなった。 平成28年度の要件緩和により、スキャナ保存の制度面は整ったといえる。今後は、承認を受けた民間企業に対してより利用しやすいタイムスタンプが提供されることで、制度利用が促進されるであろう。 これらの改正は、平成28年9月30日以後に行う承認申請について適用される。   1 固定型スキャナ以外も使用可能となる 現在、書類の電子化にあたっては、固定型スキャナ(原稿台と一体となったスキャナ)を利用することが要件とされているが、改正後は、デジタルカメラやスマートフォン等の機器の使用が認められる。 これによって、領収証等を事業所に持ち帰って電子化する必要がなくなり、領収証を受領した者はスマホの写真機能を使って、いつでも、どこでも、電子化して社内のパソコン等に転送し経費精算をするなどといったことも可能となる。【参考図①】 【参考図①】 (※) 経済産業省ホームページより なお、国税関係書類(契約書、領収書等の重要書類に限る)の受領等をした後、その受領等をした者は、その国税関係書類に署名を行った上で、特に速やか(3日以内)にタイムスタンプを付すこととされる。   2 適正事務処理要件の緩和 国税関係書類の作成又は受領からスキャナ読み取りまでの各事務について、平成27年度税制改正では、その適正な実施を確保するための一定の事務処理要件が創設された(電子帳簿保存法規則3⑤四)。平成28年度税制改正では、この事務処理要件に関して「相互けん制要件」と「定期検査要件」が緩和される。 【参考図②】 (※) 経済産業省ホームページより 【参考図③】 現行と改正案(全体イメージ) (※) 経済産業省ホームページより さらに、記録する国税関係書類が日本工業規格A列4番以下の大きさである場合には、国税関係書類の大きさに関する情報の保存を要しないとされる。 (了)

#No. 151(掲載号)
#佐藤 善恵
2016/01/13

《速報解説》 国税不服審判所「公表裁決事例(平成27年4月~6月)」~注目事例の紹介~

 《速報解説》 国税不服審判所 「公表裁決事例(平成27年4月~6月)」 ~注目事例の紹介~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   国税不服審判所は、平成27年12月17日、「平成27年4月から6月分までの裁決事例の追加等」を公表した。今回追加されたのは下表のとおり、全17件であり、前回(平成27年1月分~3月分)は6件と少なかったが、これまでの水準に復した感がある。 今回の公表裁決では、国税不服審判所によって課税処分等が全部又は一部が取り消された事例が6件、棄却又は却下された事例が11件と、原処分庁の主張が認められた事例が目立つ。税法・税目としては、国税通則法が5件、所得税法が4件、相続税法と法人税法が各2件、ほかに、消費税法、登録免許税法、国税徴収法及び租税特別措置法関係が各1件であった。 【公表裁決事例平成27年4月~6月分の一覧】 ※本稿で取り上げた裁決 本稿では、公表された6件の裁決事例のうち、税務調査手続の違法性と理由付記に関する国税不服審判所の考えが示された事例を紹介したい。 なお、毎回のことであるが、論点を簡素化するため、複数の争点がある裁決については、その一部を割愛させていただいていることを、あらかじめお断りしておきたい。   1 調査結果の説明の瑕疵と原処分の取消し(前掲表③) (1) 争点 本件の争点は、次の2点であるが、本稿では[争点1]に絞って、審判所の裁決を検討したい。 (2) 審査請求人の主張 審査請求人は、本件調査に当たって、調査の事前通知及び調査結果の説明を欠いており、調査手続に違法があることから、原処分の取消事由がある、と主張した。 (3) 審判所の判断 審判所は、調査担当職員が平成25年9月9日に請求人に対する事前通知を行ったとする主張を、「調査経過記録という職務上機械的に作成されたものにより客観的に裏付けられている上に、答述内容も、実際に体験した者でなければ語ることのできない迫真性を備えたもの」と評価し、同職員が平成25年9月9日に請求人に対する事前通知を行った事実を認めることができる、と判断した。 さらに、 調査手続の違法が課税処分の取消事由になる場合について次のように説明して、調査結果の説明に瑕疵があったとしても、原処分の取消事由にはならないことを明確にした。   2 一時所得の収入を得るために支出した金額(前掲表⑨) (1) 争点 本件の争点は、解約払戻金に係る一時所得の金額の計算上、法人支払保険料の額を控除することができるか否か、である。 (2) 審査請求人の主張 請求人は、以下のように主張して、解約払戻金に係る一時所得の金額の計算上、法人が支払った保険料の額を控除すべきである、とした。 (3) 審判所の判断 こうした請求人の主張について、審判所はまず、「支出した額」について、次のように述べる。 そのうえで、「その収入を得るために支出した金額」に該当するためには、それが収入を得た個人において自ら負担して支出したものといえる場合でなければならないとして、請求人の主張を退けた。 さらに、請求人の「最高裁判決によって政令や通達が改正され、解釈が変更された」という主張については、「最高裁判決は、所得税法第34条第2項に規定する「その収入を得るために支出した金額」の解釈を公権的に確定したもの」であり、同項の「その収入を得るために支出した金額」についての課税庁の解釈は、最高裁判決の前から一貫していたものであったと認められる」として、確定申告当時、これと異なる解釈がされていたとする「請求人の主張には理由がない」と判断した。   3 競売により一括で取得した土地及び建物等の取得価額の区分(前掲表⑩) (1) 争点 本件の争点は、請求人が競売によって一括取得した土地及び建物の取得価額の算出はどのような方法により行い、また、当該取得価額はそれぞれいくらであるか、である。 (2) 審査請求人の主張 請求人は、一括取得した土地及び建物の価額が区分されていない場合は、第三者である不動産鑑定士の鑑定評価による土地及び建物の評価額の比率により区分を行うことが客観的であり、かつ、合理的である、と主張する。 (3) 審判所の判断 これに対して、審判所は、まず、競売で取得した資産の譲渡価額については、各資産の価額は「あん分法」により区分すべきであるとしたうえで、「あん分法」を採用する際の価額については、請求人の主張する「落札金額を不動産鑑定士の鑑定評価による土地と建物の評価額による比率により区分する」方法を「一応の合理性が認められる」としながらも、以下の点から、本件の鑑定評価そのものの合理性を否定した。 一方、原処分庁が主張する「固定資産税評価額の比率による区分」については、その合理性を次のように説明する。 以上のことから、請求人が用いた不動産鑑定士の評価額の計算が必ずしも合理性のある算出方法となっていない一方、原処分庁が用いた土地及び家屋の固定資産税評価額は合理性があるというべきである。よって、固定資産税評価額の比率によってあん分することが相当である、と結論づけた。 (了)

#No. 151(掲載号)
#米澤 勝
2016/01/13

《速報解説》 修正国際基準及び改正会社法に係る「会社法施行規則・会社計算規則」の一部改正が公布、同日施行~経過措置に留意~

《速報解説》 修正国際基準及び改正会社法に係る 「会社法施行規則・会社計算規則」の一部改正が公布、同日施行 ~経過措置に留意~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成28年1月8日、法務省は「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令」(平成28年法務省令第1号)を公表した。これにより、平成27年11月6日付で意見募集されていた公開草案が確定することとなる。 これは、平成27年6月30日に、 企業会計基準委員会から公表された「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」を受けた会社計算規則の改正及び、会社法の一部を改正する法律(平成26年法律第90号)の施行に伴う会社法施行規則の改正を追加的に行うものである。 なお、修正国際基準を受けた連結財務諸表規則等の改正は、平成27年9月4日付で、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第52号)として公布されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 会社計算規則の改正 「修正国際基準で作成する連結計算書類に関する特則」(61条、120条の2)として、次の規定が設けられた。 「米国基準で作成する連結計算書類に関する特則」は、会社計算規則120条の3として規定された。   Ⅲ 会社法施行規則の改正 平成27年5月1日に施行された改正会社法を受け、以下の改正が行われた。   Ⅳ 適用時期等 公布の日(平成28年1月8日)から施行する。 次の経過措置が設けられている。 (了)

#No. 151(掲載号)
#阿部 光成
2016/01/12

プロフェッションジャーナル No.151が公開されました!~今週のお薦め記事~

2016年1月7日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.151を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2016/01/07

monthly TAX views -No.36-「本年の焦点は『1兆円の社会保障財源』の確保」

monthly TAX views -No.36- 「本年の焦点は『1兆円の社会保障財源』の確保」   中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹   2017年4月の消費税率10%引上げ時に、食料品や新聞への軽減税率の導入が決まり、1兆円の社会保障財源に穴が空くこととなった。 これについては、「平成28年度末までに安定的な恒久財源を確保する」という与党間の合意がなされているので、今年の税制議論の焦点は、『1兆円の財源を具体的にどのような形で決めるのか』という点になる。 すでに、民主党政権で導入が予定されていた総合合算制度の取りやめにより4,000億円を確保するということが言われているが、「社会保障のための恒久財源を社会保障の廃止により手当てする」ということは、どのような意味を持つのであろうか。論理矛盾のような感じがしないでもないが、それでもまだ6,000億円の恒久財源が必要となる。 ◆  ◆  ◆ 具体案の検討の前に確認すべき点がある。 消費税は全額社会保障財源となっているので、軽減税率で空いた穴を埋めるための財源は、社会保障とリンクさせる必要があるということである。 このための最も確実な方法は、「全額社会保障財源に充てられる消費税の標準税率を1兆円の減税分だけ引き上げること」である。その場合、消費税の標準税率は10.5%前後になる。 しかし、消費税増税を嫌う現政権の下では、このような選択肢は採りえないだろう。そこで、早くも自然増収論や埋蔵金での穴埋めといった議論が出ている。埋蔵金については、仮にそのようなへそくりが見つかったら、莫大な借金の穴埋めに使うのが本筋であり、それを軽減税率の財源にすることは筋違いだ。 では、自然増収論はどうだろうか。 たしかに安倍政権発足前の平成23年度(2011年度)から平成28年度(2016年度)までの5年間を見ると、税収は42.3兆円から57.6兆円(予算)と15兆円強増えており、一見大変な増収があるように見える。 しかし、リーマンショック前の07年度税収は51兆円であった。これが平時の税収とすると、16年度予算の税収である57.6兆円は、6兆円強の伸びということになる。 実はその間、消費税率は5%から8%へと引き上げられており、その増収額は6兆円程度である。そこでこれを除くと、税収は平時とトントン、つまりアベノミクスによりわが国経済が、リーマンショック前の平時に戻ったというだけの話である。決して、自然増収が恒常的に生じているという状況にはなく、これをもって恒久財源ということにはならないだろう。 ◆  ◆  ◆ わが国経済は、金融政策の手詰まりや外部経済環境の不安などから踊り場にある。要因の1つに、雇用者報酬の回復に比べて個人消費の伸びがみられないことが挙げられる。 筆者は、この背景には、「今は中流だがいつ下流に陥るかもしれない」という将来不安があるのではないかと考えている。社会保障財源に穴を空けることは、この不安をますます拡大させ、経済にマイナスの影響を与える。 最後に一言付け加えたい。 「1兆円の財源の具体論は選挙後に議論」ということのようだが、このような考え方は国民を愚弄していないだろうか。 選択肢だけでも選挙前に国民に示すべきではないか。 (了)

#No. 151(掲載号)
#森信 茂樹
2016/01/07
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