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経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第101回】1株当たり情報③「潜在株式調整後1株当たり当期純利益」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第101回】 1株当たり情報③ 「潜在株式調整後1株当たり当期純利益」   仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明 日本公認会計士協会準会員 永井 智恵     〈事例による解説〉 〈会計処理〉 ① 1株当たり当期純利益の算定 ② 潜在株式調整後1株当たり純資産額の算定 (1) 普通株式増加数の算定 (*1) 2,000,000株×行使価格@500円÷平均株価620円 (*2) 387,097株×304日/365日 (2) 潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定   〈会計処理の解説〉 ① 用語の解説 「潜在株式」とは、その保有者が普通株式を取得することができる権利若しくは普通株式への転換請求権又はこれらに準じる権利が付された証券又は契約をいい、例えばワラントや転換証券がこれに含まれます(会計基準 第9項)。 「ワラント」とは、その保有者が普通株式を取得することのできる権利又はこれに準じる権利をいい、代表的なものとして新株予約権が挙げられます(会計基準 第10項参照)。 潜在株式に係る権利の行使を仮定することにより算定した1株当たり当期純利益(以下、「潜在株式調整後1株当たり当期純利益」)が、1株当たり当期純利益を下回る場合に、当該潜在株式は「希薄化効果を有する」とされます(会計基準 第20項)。 新株予約権を発行している場合での潜在株式に係る権利の行使を仮定するとは、新株予約権が期首又は発行時に行使されたと仮定し、行使による入金額をもって期中平均株価により普通株式を買い受けた(自己株式を取得した)ということを意味します(会計基準 第56項)。 そのような仮定の下で、期中平均株価が行使価格を上回ると、新株予約権の行使により発行される株式数が、取得する自己株式数よりも多くなるため、1株当たり当期純利益を算出する際の期中平均株式数(分母)が大きくなります。 その結果、潜在株式調整後1株当たり当期純利益は1株当たり当期純利益を下回り、当該新株予約権は希薄化効果を有するということになります。 新株予約権が希薄化効果を有する場合、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定にあたっては、普通株式の期中平均株式数に普通株式増加数を加えます(会計基準 第25項)。普通株式増加数は、希薄化効果を有する新株予約権が期首又は発行時においてすべて行使されたと仮定した場合に発行される普通株式数から、期中平均株価にて普通株式を買い受けたと仮定した普通株式数を差し引いて算定します(会計基準 第26項)。上記の図中の外部に残った9.1株がこれに該当します。 ② 事例の解説 本事例において、新株予約権の発行時から期末までの期中平均株価は620円であり、新株予約権の行使価格である500円を上回ります。当該新株予約権がすべて行使されたと仮定することにより算定した潜在株式調整後1株当たり当期純利益は、〈会計処理〉①で算定した1株当たり当期純利益を下回るため、当該新株予約権は希薄化効果を有するということになります。 新株予約権が希薄化効果を有する場合は、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定にあたって、普通株式の期中平均株式数に普通株式増加数を加える必要があるため、普通株式増加数の算定が必要になります。 本事例における普通株式増加数は、新株予約権が発行時であるX0年5月31日においてすべて行使されたと仮定した場合に発行される普通株式数2,000,000株から、期中平均株価620円にて普通株式を買い受けた(自己株式を取得し)と仮定した普通株式数1,612,903株(=2,000,000株×行使価格@500円÷平均株価620円)を差し引いて算定します(〈会計処理〉②を参照)。 (了) ※12月は税金に係る会計処理について取り上げます。

#No. 145(掲載号)
#竹本 泰明、永井 智恵
2015/11/19

中小企業事業主のための年金構築のポイント 【第17回】「2つ以上の年金が受給できるときの調整」

中小企業事業主のための 年金構築のポイント 【第17回】 「2つ以上の年金が受給できるときの調整」   特定社会保険労務士 古川 裕子   前回と前々回は、遺族年金について解説したが、今回は、遺族年金を受給している人が老齢の年金が受給できる年齢になったときの調整について解説する。   1 一人一年金の原則 年金は、一人につき、一つの年金を受給することが基本である。したがって2つ以上の年金が受給できるときは、どちらか一方を選択することになる。 ただし、支給事由が同じものは、両方の年金が受給できる。たとえば、国民年金から支給される老齢基礎年金と厚生年金保険から支給される老齢厚生年金は、「老齢」という同じ事由で支給されるものなので、両方の年金が受給できる。 しかし、遺族厚生年金等の遺族の年金と老齢厚生年金等の老齢の年金は、「遺族」と「老齢」という異なる事由で支給されるため、どちらか一方しか受給できない。 〈事例1〉 一人一年金の原則により、60歳に達したときに、遺族厚生年金か自分自身の老齢厚生年金を選択することになる。   2 一人一年金の原則の例外 (1) 遺族年金の例外 65歳までは、1で述べたとおり、支給事由が同一のもの以外は両方の年金を受給することはできない。 しかし、65歳以降、遺族の年金は、老齢の年金と併せて受給できる場合がある。 上記〈事例1〉の場合、65歳以降は、下記のいずれかを選択(③は配偶者に限る)することができ、老齢と遺族の年金を受給することが可能となる。 なお、平成19年4月より、65歳以上の配偶者が自分自身の老齢厚生年金の受給権を有する場合には、老齢厚生年金を全額受給した上で、上記3つの選択肢のうちいずれか有利な受給方法により受給した場合の年金額と自分の老齢厚生年金との差額を遺族厚生年金として受給することになっている。つまり、自ら納めた老齢厚生年金をまず全額受け取る仕組みになっている。 〈事例2〉 夫の遺族厚生年金90万円(上記選択肢①)を選択するのが最も有利な受給方法になる。 ただし、自分の老齢厚生年金を優先的に受給するため、夫の遺族厚生年金90万円のうち、妻の老齢厚生年金の全額40万円と、90万円との差額50万円を遺族厚生年金として受給することになる。 (2) 障害年金の例外 65歳以降、「障害基礎年金と老齢厚生年金」又は「障害基礎年金と遺族厚生年金」の組み合わせは併給できる。 〈事例3〉 「老齢基礎年金+老齢厚生年金」 と 「障害基礎年金+老齢厚生年金」 のうち、どちらか有利な方を選択することになる。   《おさらいQ&A》 (了)

#No. 145(掲載号)
#古川 裕子
2015/11/19

養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント 【第12回】「離縁の無効・取消し」

養子縁組を使った相続対策と 法規制・手続のポイント 【第12回】 「離縁の無効・取消し」   弁護士・税理士 米倉 裕樹   [1] はじめに 【第8回】で解説したように、離縁には、協議離縁、調停離縁、審判離縁、判決離縁の4種類があるものの、調停離縁、審判離縁、判決離縁の場合には裁判所が関与するためにその有効性が問題となることはなく、問題となるのは、特段の離縁原因を必要としない協議離縁の場合である。 そこで以下、協議離縁の無効・取消しに関して解説を行う。   [2] 離縁の無効原因 協議離縁が有効に成立するためには、当事者間に離縁の意思の合致がなければならない。「離縁意思」とは、無条件・無期限に養親子関係を解消する意思、すなわち社会通念上、法定の親子と認められている関係を、以後永久に消滅させようとする意思をいう。 そのため、当事者が通謀して戸籍上だけの離縁をすることとし、後に再度、縁組届けをして戸籍を復元することを約して離縁届けを行うような、いわゆる「偽装離縁」の場合には、離縁意思を欠くものとして無効となる。 同様に、離縁当事者の一方がまったく知らないうちに、他方によって勝手に離縁の届出がなされた場合にも、法律上の縁組解消を解消する意思(離縁意思)の合致が欠けるため無効となる。 さらに、当事者の離縁意思は、合意や届出作成の時点だけでなく、届出が受理される時点においても必要となるため、離縁の合意と届出は存在するものの、届出受理時において離縁当事者の一方が離縁意思を翻意したり、意思能力を失っていたりした場合にも当該離縁は無効となる。   [3] 無効の効果と戸籍の訂正 離縁の無効原因が存在する場合には、無効を確認した審判・判決がなくとも当然に無効であるとの当然無効説が実務の考え方であり、裁判例の多くも当然無効説を前提としている(最高裁昭和62年7月17日等)。 しかしながら、戸籍実務においてその訂正を行うためには、仮に当事者間において離縁の無効に関して争いがなくとも、離縁が無効である旨の審判または判決が必要とされている。もっとも、その無効が戸籍面上明らかな場合には、戸籍訂正許可審判(戸法114)によって訂正が可能である(昭和26年2月10日民事甲209号回答)。 離縁無効の訴えの確定判決は第三者に対しても効力が及び(人訴24①)、勝訴した当事者は判決確定の日から1ヶ月以内に判決の謄本を添付して戸籍の訂正を申請しなければならない(戸法116①)。原告がその申請をしない場合には、被告において申請することができる(戸法117・62②前段)。 なお、無効な離縁であっても、離縁届出当時に事実上の離縁が成立している状況において、届出のなされていることを認識した上で、離縁する意思をもって追認の意思表示が行われれば、届出時に遡って有効になる。   [4] 離縁の取消し 詐欺または強迫によって協議離縁を行った者は、その離縁の取消しを家庭裁判所に請求することができる(民812・747)。取消権者は、詐欺または強迫によって協議離縁を行った者、すなわち養親または養子である(民812・747①)。当事者が詐欺を発見し、もしくは強迫を免れた後6ヶ月を経過し、または追認をしたときは、この取消権は消滅する(民812・747②)。 離縁の取消しの訴えを提起する前に、まず家庭裁判所に対し調停を申し立てなければならない(調停前置主義・家法257・244)。合意に相当する審判が確定すれば、取消しの判決が確定したのと同様の効果を生じる(家法277・281)。 離縁取消しの審判または判決が確定した場合には、訴えを提起した者は、確定の日から10日以内に、審判または判決の謄本を添付して、その旨を届け出なければならず(戸法73・63①)、訴えを提起した者がその届出をしない場合には、相手方が届出をすることができる(戸法73・63②)。 (了)

#No. 145(掲載号)
#米倉 裕樹
2015/11/19

常識としてのビジネス法律 【第29回】「知的財産権入門(その2)」

常識としてのビジネス法律 【第29回】 「知的財産権入門(その2)」   弁護士 矢野 千秋   2 特許権と実用新案権(承前) (5) 特許侵害の判定-A+B+Cとは? ① 権利侵害の成立要件 権利侵害の成立要件(侵害ワンツースリー)は、次の3要件である。 これは土地所有権の侵害と同じことであり、土地の侵害であれば となる。 したがって内容証明郵便による警告状等の記載内容も上記の侵害ワンツースリーを記載することになる。 損害賠償請求権を行使するためには、侵害3要件以外に、侵害者に故意または過失があること(推定規定有り。特許法103条)、損害が発生したこと(軽減規定有り。特許法102条1項)、および、侵害行為と損害の間に因果関係があること(認める規定有り。特許法102条1項)等が要求されるが、いずれも( )内に記した通り立証の容易化が図られている。 ② 権利侵害の発見(権利者側) ③ 権利侵害の主張への相手方の対応 ④ 権利範囲に属するとの判断 (※) ただし、回答書に抵触するとの判断を明記する例は少ない。④と後述する⑤(権利範囲に属さないとの判断)は同時進行となることが多い。無体財産権の抵触判断は難しいことの一つの表れである。 以下、相手方の主たる対応策である。 ⑤ 権利範囲に属さないとの判断 上述した通り、④と⑤は同時進行となることが多い。 ⑥ 私的法規 冒頭に掲げた「A+B+C」とは、[要件3]の判断に係るものである。つまり特許請求の範囲(以下「クレーム」という)は法規を作っているのと同じである。 例えば、刑法199条(殺人罪)では、A+Bつまり「人」+「殺した」(という構成要件に発生した事実が当てはまることを立証すれば)=「死刑または無期若しくは5年以上の懲役」という法効果すなわち刑罰が与えられる。 ⑦ 請求項の構成要件と該当性 クレームも同じことで、権利の範囲に実施行為を要件に分けて当てはめる。すなわち大前提であるクレームの各A、B、Cの要件に小前提である実施行為の各a、b、cの事実のすべてが当てはまれば、法効果である差止請求権等が発生するわけである(法的三段論法)。 (6) 特許権に関する重要判例の紹介   3 意匠権 (1) 基礎知識と改正法 意匠法は、意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、産業の発達に寄与することを目的とする(意匠法1条)。 意匠とは「物品の形状、模様もしくは色彩またはこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」をいう。これらの意匠中で、工業上利用し得る(工業上の利用可能性)、今まで世間に知られていない(新規性)、従来意匠から容易に創作できない(創作性)意匠に意匠権が付与される。 意匠権は設定の登録によって発生し、設定登録の日から20年をもって終了する(意匠法21条1項)(平成19年4月1日の出願から)。 近時の重要な法改正は以下の通り。 (2) 意匠権の効力 登録されれば、登録意匠または登録意匠に類似する意匠を表した物品を製造、販売、使用などを、業として行う専用権(意匠権)を取得するわけであるから、他人が無断で登録意匠または登録意匠に類似する意匠を表した物品を業として実施(製造、販売等)していれば、その実施の中止を求めることができる(差止請求権)。 また、無断で意匠を実施されたわけであるから、その間の損害の賠償を求めることができる(損害賠償請求権)(詳細は特許権の箇所(前回)を参照のこと)。 また、侵害者とライセンス契約を結んで、実施料(ロイヤルティー)を取ることもできるし、侵害者が持っている無体財産権などとクロスライセンス契約を締結することも可能である。 重要なのは侵害3要件の判断である。 有効な登録意匠または登録意匠に同一または類似した意匠を業として無権限で実施していれば侵害になる。「意匠が類似であるか否か」とは、取引者、需要者からみた意匠の美感における類否である。 (3) 意匠の要部とは 意匠権侵害訴訟では、登録意匠と侵害者の使用する意匠の同一性または類似性が問題となる。そしてこれは意匠権の範囲の確定の作業として、実務上、「意匠の要部は何か」という点をめぐって争われる。 まず、意匠に係る物品が同一または類似していなければならない。意匠は物品の形状などで構成されているから、物品を離れて意匠は存在し得ず、必ず物品と一体化して判断される。 次に、意匠の類否は全体観察による総合判断である。意匠は全体として認知されるものであるから、意匠の類否も全体観察により判断される。 意匠は全体観察により判断されるのであるが、各部分が全く等価値に認知されるわけではない。特徴のある部分は目立つし、ありふれた部分は見る人の注意を惹かない。このような特徴的な部分、換言すれば「創作性のある部分」を意匠の要部と呼び、要部が強い印象を見る者に与えるのだから、類似判断を支配する部分となる。 (4) 判例に見る意匠の類否判断基準 意匠権の侵害訴訟においては、登録意匠に含まれている公知の形状や物品の機能に由来する当然の形状を除外し、それ以外の部分を意匠の要部として、その点につき両意匠の類似があるか否かを判断する。そしてこの要部が類似していないと、両意匠は類似していないと判断されることになる。 これは登録意匠にいかなる範囲の保護を与えるかの問題である。だとすると意匠は「創作」の保護(意匠法1条)なのであるから、登録意匠中に公知の形状が含まれている場合は、その部分は創作には当たらないため、その部分には保護が与えられない。その部分が類似していても両意匠が類似とはされない。つまり登録意匠は保護されないことになる。 参考となる判例として、以下のものがある。   4 商標権 (1) 基礎知識と改正法 商標法は、商標を保護することにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする(商標法1条)。 商標とは「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合またはこれらと色彩との結合」で1号2号に該当するものをいう(商標法2条1項)。 商標には商品に使用するものと、役務つまりサービスに使用するものとがあり、前者を「商品商標」、後者を「役務商標・サービスマーク」という。 商標によって消費者は商品生産者やサービス提供者を知り、他社のものと区別でき(出所表示機能)、商標によって商品やサービスの質を知ることができる(品質保証機能)。 商標権は設定の登録によって発生し、設定登録の日から10年をもって終了するが、登録を更新することができる(商標法19条)。 近時の重要な法改正は以下の通り。 (2) 登録要件 (a) 一般的登録要件(商標の識別性) どのような商標でも出願すれば登録されるわけではない。商標としての根本的な機能、すなわち、自他商品等の識別力を備えているもののみが登録可能であり、誰の商品等であるのか識別できないものは登録を受けることができない。商標法3条1項に具体的に規定されている。 以上の通り、1項各号に掲げる商標は、自他商品・役務の識別力がなく商標登録を受けることができないわけであるが、3号、4号、5号に該当する商標であっても特定の者によって長期間「使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品・役務であることを認識することができるもの」については、商標登録を認めることとしている(同条2項)。 これは、「永年使用による特別顕著性の取得」とか「使用による識別力」といわれている。4号の例外としては、自動車、バイク等を指定商品とする「ホンダ」「スズキ」などがある。 参考となる判例を挙げると以下の通りである。 (b) 具体的登録要件(不登録事由) 商標法4条は、より具体的に公益上の理由あるいは私益との調整のため商標登録を受けることができない事由を定めている(4条1項)。以下概略を示す。 (3) 商標権の効力 商標権者は、指定商品または指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する(商標法25条)。独占的効力と排他的効力があるという点は、他の工業所有権と同じである。 商標権の侵害に対しては、差止請求、損害賠償請求などができる(詳細は特許権の箇所(前回)を参照)。 (4) 商標の類否判断 商標の類否判断の基準は、商標をその称呼、外観、観念の3要素に分け、それぞれの要素について類否の判断をし、原則として1要素でも類似していると両商標は互いに類似とする。商品・役務の同一または類似を前提とする。 参考となる判例として以下のものがある。 (5) 並行輸入 真正商品の並行輸入の可否の問題には前提が2つある。 まず各国の商標権は独立であり、A国での商標権の存否は、B国での商標権の存否に影響を与えない(商標権独立の原則)。 次に商標権者が登録商標を使用した商品を一度市場に出した場合、当該商品に関して商標権は使い尽くされたものとして消尽すると考えられる(消尽論)。 ならばAB両国で同一人などにより商標登録がなされている場合、A国で市場におかれた真正商品がB国に輸出されたとき、A国の商標権は消尽しても(消尽論)、B国の商標権の存否には影響しないから(商標権独立の原則)、当該真正商品の輸入をB国の商標権に基づいて差し止められるのかという問題である。下記パーカー事件判決により、一定の条件の下では、真正商品の並行輸入は国内商標権の侵害とはならないとされた。 そしてフレッドペリー事件判決で最高裁は、製造地域制限条項に違反する商品と違法性について、商標の品質保証機能等との関係での判断を示している。 (続く)

#No. 145(掲載号)
#矢野 千秋
2015/11/19

企業の不正を明らかにする『デジタルフォレンジックス』 【第2回】「デジタルフォレンジックスの効果と限界」~何ができて何ができないのか?~

企業の不正を明らかにする 『デジタルフォレンジックス』 【第2回】 「デジタルフォレンジックスの効果と限界」 ~何ができて何ができないのか?~   プライスウォーターハウスクーパース株式会社 シニアマネージャー 池田 雄一   1 不正調査とデジタルフォレンジックス 【第1回】では、デジタルフォレンジックスは「どんなことでもわかってしまう魔法のような調査手法」ではない、という点について触れたが、今回はデジタルフォレンジックスで可能な調査とその限界について解説していく。 現在、企業内で発生するほとんどすべての不正事案において、コンピュータやスマートフォンなどを含むデジタル端末が何らかの役割を果たしている。逆に、デジタル端末が関係しない不正事案を探すほうが困難と思えるほど、デジタル端末は日常生活および企業活動に浸透している。 デジタル端末が不正事案に直接使われず、直接的な証拠が残っていなかったとしても、不正事案を示唆する間接的な証拠が含まれていることは少なからずあり、どのような調査案件においても、デジタル端末に保存されている情報は重要な位置を占めている。 デジタルフォレンジックスの相談は、依頼人側で不正行為の事実をある程度確認した段階で受けることが多い。また、内部告発であるため不正行為の可能性が浮上した際の内部調査の初動の1つとして、弁護士のアドバイスを受け、デジタルフォレンジックスの実施を決めるケースが依頼のほとんどを占める。時には、依頼人側で多少の証拠をつかんでいることもある。 そのため、デジタルフォレンジックスには、より強力な証拠を特定、または既につかんでいる証拠の裏付けを取ることが期待される。 今日の不正調査において、デジタルフォレンジックスは必要不可欠な要素になっているものの、デジタルフォレンジックスが対応できる範囲と得られる結果、その限界については理解が進んでいない現状がある。 「消去されたメールを復元」や「携帯電話からSNSメッセージを復元」など、特徴的な側面ばかりが独り歩きしていることも原因し、前回述べたように、デジタルフォレンジックスが「どんなことでもわかってしまう魔法のような調査手法」として認識される状況に繋がっていると筆者は考える。   2 セキュリティ対策とデジタルフォレンジックスの相反する関係 依頼者側にはほとんど認識されていないデジタルフォレンジックスを難しくする要因の筆頭に挙げられるのが、ハードディスクの暗号化に代表されるセキュリティ対策である。 妙な話に聞こえるかもしれないが、デジタルフォレンジックスによって得られる情報の量は、セキュリティの高さに反比例している。 これは、主に2つの観点からの議論となる。 1つ目は、セキュリティ対策が「不正行為者の行動」に与える影響である。 セキュリティ対策の目的は、コンピュータ上でユーザーが行える行為をシステム的に制限するとともに、心理的にも不正を起こす気を削ぐことで、違反行為の発生リスクおよび情報漏洩事故などを低減することにある。 例えば、ブラウザを通してアクセスできる個人メールやオンラインストレージ、外部記録媒体を接続するためのUSBポートのブロックなどのセキュリティ対策は、今や多くの企業で見られる最も一般的な例かもしれない。また、コンピュータ上でのユーザーの行動監視(少なくとも、監視するための設備は整っており、常時監視していなくとも「監視している」と従業員にアナウンスしている)についても典型的な例である。 もちろん、これらのセキュリティ対策は直接的もしくは間接的に不正行為者の行動を制限することで、一定の成果を上げていることは間違いないが、軽微な違反者の違反行動は防げても、「明確な意思を持った不正行為者」による不正行為を完全に防ぐことはできないと筆者は感じる。 実際に、企業、政府機関、セキュリティ対策のレベルに関わらず、不正行為の発生は場所を選ばない。「地下に潜る」とも表されるように、不正行為者はセキュリティの抜け道を探し、貸与されているコンピュータの使用を避け、スマートフォンなどを含む個人所有のデジタル媒体を使用することで不正行為が発生しているにもかかわらず、通常デジタルフォレンジックスの対象となる会社貸与のコンピュータ上に蓄積される証拠となる情報量が極端に少なくなるか、まったく存在しないこともある。 デジタルフォレンジックスを難しくする2つ目の要因は、ハードディスクの暗号化である。 暗号化されたハードディスク上では、消去されたデータについても暗号化された状態で消去されているため、暗号化されていないハードディスクと比較すると、消去データの復元を難しくする原因となっている。 このように、不正行為や情報漏洩を防ぐ目的で導入されているセキュリティ対策が、デジタルフォレンジックスの難易度を上げていることは、依頼する側では意外に知られていない。   3 デジタルフォレンジックスの限界への理解 (1) 「存在しない情報」は特定できない 冗談に聞こえるかもしれないが、調査依頼者に対して、デジタルフォレンジックスの限界について説明する際、 と伝えることがしばしばある。 これは、消去データの復元による証拠の特定や、予想もしていなかった情報の発見など、コンピュータフォレンジックスは強力な調査手法である反面、不正行為者が調査対象のコンピュータを使用していなければ証拠となるような情報は保存されず、そもそも存在していない情報は、いくら調査をしたとしても特定できないことを意味する。 調査を行う専門家の腕を疑うかもしれないが、経験豊富なスーパーバイザーによる指揮の下、適切なトレーニングを受け、実践経験を積んだデジタルフォレンジックスの専門家であれば、著しい破壊行為を受けていない限り、データが消去・隠ぺいされていても、大抵の場合は特定することができる。 中には、「絶対に証拠が見つかるはず」と非常に高い期待を抱いている依頼者もいるが、上記のとおり必ずしも依頼者が「想定している証拠」が見つかるとは限らないため、デジタルフォレンジックスの限界について依頼者に説明することも、調査業務に加えて重要な責務の1つなのである。 上記とは反対に、調査対象者がコンピュータを使って不正行為を行っていた場合、その使い方にもよるが、証拠となる情報が多く残留している確率が高くなるのは言うまでもない。 たとえ不正行為者が証拠となる情報を消去したとしても、専用のデータ抹消ツールでハードディスク上のデータをすべて抹消するか、ハードディスクを物理的に破壊しない限り、その情報がコンピュータに存在していたことを完全に消し去ることはできない。 デジタルフォレンジックスによりファイルそのものの完全な復元ができなかったとしても、上書きされていないデータの一部、ファイル名、ファイルパスなど、ハードディスクのあらゆる場所に残っているデータの断片を寄せ集めることで、証拠の構築が可能となる。 (2) 「状況証拠」の点と点を結ぶ また、意外に認識されていないのが、デジタルフォレンジックスによって特定される不正行為を直接的に示すメールや隠し帳簿のような文書以外は、そのほとんどが「状況証拠」であり、それだけで不正行為を完全に証明することは困難である、という点である。 例えば、情報漏洩の調査においても、機密情報がどのサーバからいつコンピュータにコピーされ、どのような外部記録媒体にいつコピーされたのか、といった一連の流れを明確に示す情報は、コンピュータには残らない。そこで、消去ファイルの状況、ファイルのタイムスタンプの分析、外部記録媒体の接続履歴の分析などから読み取れる情報を組み合わせることで、外部記録媒体を使用した情報の持ち出しを示唆する「兆候」をつかむことができる。 しかしながら、これだけでは情報の不正な持ち出しを「断定」することは困難であるため、漏洩者の自宅のコンピュータを調査し(弁護士に相談し、調査対象者の同意を得たうえで調査を実施)、本来個人のコンピュータに保存されているべきではないデータが特定された段階で、情報の不正な持ち出しを始めて「断定」することができる。 デジタルフォレンジックスの調査のほとんどは、「状況証拠」の点と点を結び、結論を導き出すことである。 今後、デジタルフォレンジックスが使用される機会が一段と多くなる中で、デジタルフォレンジックスを依頼する側および提供する側が、共にデジタルフォレンジックスで可能な調査の範囲とその限界について理解を深めることで、より効果的に利用していくことが可能になると筆者は考える。 (了)

#No. 145(掲載号)
#池田 雄一
2015/11/19

女性会計士の奮闘記 【第35話】「M子、初めてN男の会社へ」

女性会計士の奮闘記 【第35話】 「M子、初めてN男の会社へ」   公認会計士・税理士 小長谷 敦子   〈ノビ(株) 部門別損益表〉 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 〈ノビ(株) 等級別給与 部門別人数集計表〉 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。   ◆ワンポントアドバイス◆ 部門別損益計算書では、まず、その月に仕入れたものやサービスを受けたものはすべてその月の原価や経費として“本当の利益”を計算します。 この“本当の利益”が赤字である場合には、部門の売上を伸ばすか、無駄な仕入を減らすか、経費を削減するか、作業効率を上げるか等、いずれかの手を打って黒字化していかなければなりません。 まず、部門別損益計算書で経営状態を「見える化」し、赤字であれば、部門のメンバー全員でその原因を探り、経営を立て直す方法を考えてもらいましょう。 会計事務所の仕事は、「経営の見える化」です。経営を伸ばす知恵は会社内部にあるのです。 (了)

#No. 145(掲載号)
#小長谷 敦子
2015/11/19

《速報解説》 会計士協会、会社法と金融商品取引法による開示・監査制度の一元化を提言~株主総会の分散化等柔軟な対応を求める~

《速報解説》 会計士協会、会社法と金融商品取引法による 開示・監査制度の一元化を提言 ~株主総会の分散化等柔軟な対応を求める~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成27年11月4日付け(ホームページ掲載日は11月13日)、日本公認会計士協会は、「開示・監査制度の在り方に関する提言-会社法と金融商品取引法における開示・監査制度の一元化に向けての考察-」を公表した。 これは、コーポレートガバナンス・コードの適用や「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会報告書」(経済産業省)における提言内容を踏まえて、会社法と金融商品取引法による開示・監査制度の一元化を提言するものである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 開示・監査制度の一元化をめぐる議論の状況 1 経済産業省 「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会報告書」(経済産業省)では、対話型の株主総会プロセスを実現するための総会日程やその前提となる議決権の基準日の設定を見直す際の考え方や方法、一体的・統合的な企業情報開示の実現に向けた方策等が提言されている。 2 金融審議会 金融審議会では、企業や投資家、関係省庁等を集めた検討の場を設け、会社法、金融商品取引法、証券取引所上場規則等に基づく開示を検証し、重複排除や相互参照の活用、実質的な監査の一元化、株主総会関連の日程の適切な設定等を含め、統合的な開示の在り方について総合的な検討を行い、今年度中に結論を得る予定である。 3 日本公認会計士協会 日本公認会計士協会では、「会社法と金商法に基づく監査制度の一元化」について検討を行ってきており、平成21年5月に「上場会社のコーポレート・ガバナンスとディスクロージャー制度のあり方に関する提言-上場会社の財務情報の信頼性向上のために-」を公表し、提言を行っている。   Ⅲ 提言の概要 日本公認会計士協会は、平成21年5月の提言を踏まえ、改めて会社法と金商法による開示・監査制度の一元化に向けた検討を行い、今回、「開示・監査制度の在り方に関する提言」を公表するものである。 「提言の概要」として、次のことを述べている(1ページ)。 (了)

#No. 144(掲載号)
#阿部 光成
2015/11/17

《速報解説》 東京国税局、「固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例」に関する文書回答事例を公表~異なる種類の資産の取引は「一の資産」に該当せず所基通58-9は適用無し~

 《速報解説》 東京国税局、「固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例」に関する 文書回答事例を公表 ~異なる種類の資産の取引は「一の資産」に該当せず所基通58-9は適用無し~   税理士 内山 隆一   東京国税局は平成27年11月6日付けホームページにおいて、文書回答事例「所得税法第58条の適用における土地については交換契約を締結し、建物については売買契約を締結した場合の所得税基本通達58-9の適用について」を公表した。   1 所得税法58条の交換の特例 所得税法58条の交換の特例(以下「交換の特例」という)は、下記の要件をすべて満たす固定資産の交換を行った場合に適用される。   2 本件事前照会の内容 【図1】 甲はA土地を乙に引き渡し、乙からB土地及びC建物を取得する取引について、C建物を交換差金等として取り扱うのか、C建物部分は交換契約とは切り離して単体で売買取引として取り扱うことができるのかという点について、所得税法基本通達58-9を引き合いに出して照会したものである。   3 所得税基本通達58-9の内容 例えば、甲所有の時価が5,000万円の土地と、乙所有の時価が7,000円の土地の交換があった場合において、上記1(3)の判定を行うと下記のとおり交換の特例は適用できないこととなる。 そこで、取引を2つに区分し、乙所有の土地を2つに分筆し、5,000万円部分は等価交換契約とし、2,000万円部分を売買契約とすれば、結果的に5,000万円部分について交換の特例ができるようになってしまう。 【図2】 このように、本来価額要件を満たさない物件についても、取引を区分してしまえば交換の特例がとれてしまうということでは、価額要件そのものの意味がないため、所得税基本通達58-9では、「一の資産」の一部を交換とし、一部を売買としているときは、全体を一の交換取引として取り扱い、売買代金を交換差金等とすることとされている。   4 本件事前照会に対する結論 上記3のとおり、所得税基本通達58-9は、「一の資産」の一部を交換、一部を売買とすることを問題としているものであり、本件事前照会のように、「土地」と「建物」という異なる資産については問題としていないことから、本件取引について所得税基本通達58-9の適用はないと回答されている。 なお、所得税基本通達58-9は、従前は「同種の資産」という表現であったが、下記のような取引を考慮して、昭和56年の通達改正の際に「一の資産」という表現に改められている。 【図3】 甲はA土地を乙に引き渡し、乙からB土地(A土地と等価)及びC土地を取得する取引について、B土地とC土地は「一の資産」ではないため、C土地を交換差金等とする必要はなく、C土地は単体で購入したものとすることができる。 (了)

#No. 144(掲載号)
#内山 隆一
2015/11/17

《速報解説》 「監査委員会監査報告のひな型」「監査等委員会監査報告のひな型」等が公表

《速報解説》 「監査委員会監査報告のひな型」 「監査等委員会監査報告のひな型」等が公表   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成27年11月10日付けで、日本監査役協会は、次のものを公表した。 この結果、現在、次のものが公表されていることになる。 (※) 「監査等委員会設置会社における監査等委員会規則(ひな型)」、「指名委員会等設置会社における監査委員会規則(ひな型)」は公表済みである(ホームページ掲載日平成27年8月4日)。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 監査等委員会関係 「監査等委員会監査報告のひな型」では、「事業報告等に係る監査報告」と「各事業年度に係る計算書類等に係る監査報告」を一体化して作成する形を採用している。 ひな型では、多くの注記と解説がなされているので、それらの記載にも注意が必要である。   Ⅲ 監査委員会関係 「監査委員会監査報告のひな型」では、次の対応を行っている。 ひな型では、多くの注記と解説がなされているので、それらの記載にも注意が必要である。   Ⅳ 「財務報告に係る内部統制報告制度の下での監査報告書記載上の取扱いについて-文例集の作成にあたって-」 文例集では、次の対応を行っている。 (了)

#No. 144(掲載号)
#阿部 光成
2015/11/16

《速報解説》 日本監査役協会より「会計監査人の評価及び選定基準策定に関する監査役等の実務指針」が公表~監査役の重要性高まりを受け品質向上への利用を期待~

《速報解説》 日本監査役協会より 「会計監査人の評価及び選定基準策定に関する 監査役等の実務指針」が公表 ~監査役の重要性高まりを受け品質向上への利用を期待~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成27年11月10日付けで、日本監査役協会会計委員会は、「会計監査人の評価及び選定基準策定に関する監査役等の実務指針」を公表した。 これは、会社法において、監査役等に会計監査人の選解任権の決定権が付与され、また、コーポレートガバナンス・コードにおいて監査役会が会計監査人の選定及び評価の基準を設けることなどが規定されたことに対応するものである。 なお、会計監査人に関する最近の動向としては、次のようなものがある。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 各項目についてチェックリストの形式で記載されていたり、解説が述べられるなど、実務に役立つように工夫されている。 1 会計監査人の評価基準 会計監査人の評価基準として、次の項目を記載している。 2 会計監査人の選定基準 会計監査人の選定基準として、次の項目を記載している。 3 付録 付録に記載されている「会計監査人の評価基準項目例の時系列表示」(p36~)は、本文に記載されている内容を時系列(監査契約の更新時、期中、期末など)で整理したものである。 また、「監査調書例」(p52~)は、チェックすべき項目と評価結果の形式で整理したものである。 いずれも実務に資するように工夫されている。 (了)

#No. 144(掲載号)
#阿部 光成
2015/11/13
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