被災したクライアント企業への 実務支援のポイント 〔会計面のアドバイス〕 【第3回】 「費用・損失の計上②」 公認会計士・税理士 新名 貴則 1 被災による損失の表示 大地震などによって法人が被災した場合に、直接的・間接的に法人に発生する損失については、原則として当該損失を示す適当な勘定科目を用いて、損益計算書の特別損失として計上する。具体的には次のような科目である。 ただし、金額的重要性がないと判断される場合には、特別損失ではなく経常的な費用として表示することも可能である。この場合は、その内容に応じて売上原価、販売費及び一般管理費又は営業外費用として計上することになる。 損益計算書における表示科目としては、上記のように当該損失を示す適当な勘定科目を用いて表示するのではなく、「災害損失」「災害による損失」などの科目を用いて、一括して表示することもできる。実務上はこの表示方法が多く採用されているようである。 ただし、当該損失の主な内容について注記を行うべきと考えられる。 【災害による損失の開示例】 ◆損益計算書 ◆注記事項 (損益計算書関係) 2 災害損失に係る引当金の表示 損壊した資産の点検費や撤去費用等や、被害を受けた資産の原状回復費用などであって、決算日後に予定されているもので引当金の要件を満たすものについては、引当金を計上することになる。具体的な勘定科目としては、「災害損失引当金」が多く用いられているようである。 当該引当金は、その内容に応じて貸借対照表の流動負債又は固定負債に計上し、その計上基準を重要な会計方針として開示する必要がある。 当該引当金の繰入額は、原則として「災害損失引当金繰入額」等の科目により損益計算書の特別損失として計上する。ただし、「災害による損失」等の科目に含めて表示することもできる。 【災害損失引当金の開示例】 ◆貸借対照表 ◆重要な会計方針 ◆損益計算書(引当金繰入額を一括して計上する場合) ◆注記事項 (損益計算書関係) (※) 損益計算書上で引当金繰入額を別掲する場合 ◆損益計算書 ◆注記事項 (損益計算書関係) (了)
「従業員の解雇」をめぐる 企業実務とリスク対応 【第6回】 「普通解雇②」 ~協調性欠如、勤務態度不良による解雇~ 弁護士 鈴木 郁子 1 はじめに ~協調性欠如、勤務態度不良は改善機会の付与が肝心~ 解雇の相談で最も多く、また、最も扱いが難しいのが、この協調性欠如・勤務態度不良を理由とした解雇である。 前回(第5回)解説した能力不足・適格性欠如の解雇類型は雇用契約時の雇用契約の内容の如何によってその解雇の可否の結論が変わってくる類型であったが、本類型の特徴は、従業員の雇用契約後の問題行動が「解雇」という最終手段を講じなければ回避し得ないものであったのか、が問題となる類型である。 【第4回】に紹介した解雇権濫用の判断基準でいえば、 が問題となり、会社の対応の如何で解雇の帰趨が異なってくる類型である。 それでは以下、検討を行いたい(従業員の問題行動のうち非違行為(企業の社会秩序義務違反)については、【第8回】で取り上げる)。 なお、実際の解雇にあたって、①解雇制限に違反しないこと、②解雇手続の履践は当然必要となるが、この点については後述する「4 実務上の留意点」を参照されたい。 2 協調性欠如による解雇 (1) 協調性を欠くことが解雇理由となるためには 会社は、組織であり、他の従業員と協調し、全体として業務を遂行することが当然に想定されている。したがって、他の従業員と協調して労務を提供することが雇用契約上の債務の一内容となっており、協調性を欠くため会社の業務に支障を来している場合には、債務不履行(不完全履行)として、普通解雇の解雇理由となり得る。 とはいえ、 (Ⅰ) どの程度の協調性不足であれば、 また、 (Ⅱ) 会社として何をすれば、 ① 客観的な理由があり ② 社会通念上相当(解雇権濫用法理) として解雇できるのだろうか。 (2) 他の従業員・取引先からの申入れは解雇原因になり得るか まず、協調性欠如といっても、現に全体の業務に支障を来たしていないのであれば、解雇はできない。 一方で、当該従業員のために、他の従業員から「当該従業員を辞めさせてほしい、辞めないのであれば自分が辞める」との申入れがあったり、取引先からも「担当者を代えてほしい」との申入れがあった場合には、現に業務に支障を来たしているので、解雇原因となり得る。 ただし、単なる相性の問題であって、むしろ苦情を申し立てた従業員や取引先の方に問題があるケースも少なくない。 したがって、真に当該従業員の行動に問題があるのか、いじめではないのか等、他の従業員の声なども確認した上で慎重に判断をする必要がある。 いずれにせよ、業務への支障の程度は相当程度のものが必要である。 (3) 注意や配転等による改善機会を設ける そして、現に業務に支障を来たしているような協調性欠如の事実があったとしても、すぐにこれを解雇することはできない。 本人に対して具体的なエピソード等を示し、協調性の欠如により業務に支障を来たしている具体的内容を示して注意をすべきである。そして注意により様子を見てそれでも改まらないのであれば、書面による厳重注意や譴責等の懲戒処分を行うことになる。 また、人との関わりがなくとも業務を行うことができる部署があるのであればそちらに配転する、また、部署の特定の人間関係が原因となっていることも少なくないので、その場合には他の部署に配転し様子を見ることなども必要となる。なお、配転にあたっては、協調性不足が配転の理由であることを説明し、配転自体がその改善の機会の付与であることを本人に自覚させなければならない。 どの程度改善の機会を与えなければならないかは状況により異なるが、他部署への配転が可能な大企業の場合には、配転は必須の条件といえる。一方で、少人数しかおらず配転の余地がない中小企業の場合には、そこまでの対応ができなくとも、解雇が認められることがある。 ただし、いずれにせよ、解雇に至る前に、懲戒処分を経ること、改善されないのであれば解雇の可能性があることを告げることは、最低限必要であろう。 3 勤務態度不良による解雇 遅刻が多い、無断欠勤が多い、上司に無駄にたてつく、取引先とトラブルを起こす、業務指示を守らない、提出すべき書類の提出を頻繁に怠る等、勤務態度不良を理由として、会社は従業員を解雇し得るだろうか。 この類型の特徴は、それぞれの事実は、単体として見ると業務に著しい支障を生じさせているわけではないが、いくつかの事実の積み重ねがあって、はじめて業務に著しい支障を来たしていると評価され、解雇し得る類型であるということである。 解雇し得るというためには、いくつかの種類の事実の積み重ねが必要であるし、その問題行動が起きている期間についても、ある程度の期間、回数も相当程度であることが必要である。 そして、注意、勤務態度の改善機会の付与なくしての解雇はあり得ない。 本人に対して、勤務態度不良・問題行動の内容を詳しく告知し、注意、懲戒処分等を繰り返す必要があるし、改善しなければ解雇がありうることを注意・懲戒の際に告知しなければならない。 むしろ、この勤務態度不良のみを理由とする解雇は原則としてできないが、よほどの事情があり、また、注意、懲戒等を繰り返すことで、ようやく解雇が認められる余地がごく僅か生じてくる、と考えておいた方が無難である。 4 実務上の留意点 (1) 問題に関する客観的な証拠の収集 以上述べたとおり、協調性不足・勤務態度不良による解雇はあり得るものの、実務上は極めて難しく、繊細な対応の必要な類型である。 そして、解雇事由の存在、解雇権濫用に当たらないことの立証責任は会社側にあり、まず、協調性不足・勤務態度不良により業務に支障を来たしていることを会社が立証しなくてはならない。 したがって、協調性不足・勤務態度不良の具体的エピソードの客観的な裏付け資料を収集し、これを証拠化することになる。 まず、本人からのメール内容等、メールでのやりとりの内容等自体が、協調性不足・勤務態度不良の表れであるときは、それ自体が証拠となる。また他の従業員からの報告により会社が本人の問題行動を把握するケースもあるが、その場合は、当該従業員からの報告書や報告メールが証拠となる。 ただし、問題従業員から告げ口をしたと思われるのを避けたいため、報告は口頭であったり、報告書の作成を拒絶されることがある。その場合には、報告を聞いた者が上司や人事担当者等に、「本日、〇〇(報告者)から**(問題従業員)に関し、以下のとおり報告がありました」等とヒアリングした内容を報告メールの形で残して証拠化しておくとよい(メールは、その日時にメール記載の内容のやりとりが実際になされた証拠となりうるので、有効活用するべきである)。 ここで注意しなければならないのは、会社で人事評価の記録を付けている場合には、その記録に、本人に問題行動があることを反映させておくということである。 人事評価の記録にこれらの事項が何も記載されていないのであれば、会社として本人の問題行動を問題行動として受け止めていないと見られかねないからである。 (2) 改善機会を付与したことの証拠も そして、本人に対する注意や懲戒処分を行うことになるが、まずは本人に対して問題行動を指摘し、そのことについて本人の言い分を確認すべきである。そして、その言い分について改めて調査が必要な場合には追加調査を行い、その上で注意や懲戒処分等を行うことになる。 人事上の注意にとどめるのか、懲戒処分を行うのか、懲戒処分といってもどの程度のレベルのものにするのかは、本人の問題行動の内容及びこれまでの注意の回数にもよる。 解雇に踏み切る前には、その前の注意・懲戒の際に「問題行動が改められなければ次は解雇もありうる」等と告げるべきであるが、そのように告げた事実自体も、注意や懲戒処分結果の内容とあわせて記録化すべきである(注意や懲戒の処分結果の記録簿のようなものがないときは、少なくとも前述のとおり、報告の形をとったメールを残しておくべきである)。そして、本人に対する注意・懲戒自体は、書面で行う。 このとおり、解雇前に改善機会を付与したことの立証責任も会社にあるのである。 (3) まずは退職勧奨に取り組む その結果、問題行動が改まらなければ解雇を検討することになるが、解雇を行う前に、退職勧奨を行ってみた方がよい(解雇に伴う会社のリスクについては【第2回】を参照されたい)。 それまでの注意や懲戒の手続が慎重に丁寧に行われているのであれば、退職勧奨に応じるケースも多い。その際に、再就職のための就職活動期間に配慮して退職日を先に延ばすなどの配慮をすることも、合意退職の成立には有効である(その場合は、当該日付の合意退職書をとる)。 なお、合意退職に応じなければ、解雇をすることになるが、そもそも解雇が困難な類型であるので、懲戒解雇ではなく、普通解雇の形をとるべきである。 (4) 試用期間を有効に活用する このように、協調性不足・勤務態度不良による解雇には、踏まなければならない手続も多く、また争われるリスクも高い。 したがって、採用の段階から、そのことを覚悟した上で慎重に採用に臨む必要があるし、協調性不足・勤務態度不良等は、入社直後から問題行動として表れることが多いので、試用期間を有効に活用するべきである。 もちろん、試用期間にも解雇権濫用法理は適用されるが、緩やかに適用されるし、また本人も試用期間中であれば退職につき納得を得られやすく、解雇を争わず、また、退職勧奨にも応じやすいからである。 むしろ、問題行動を認識しつつ、試用期間を経て正社員として任用した場合には、その直後に解雇をすることはできないと覚悟しておいた方がよい。 (5) パワーハラスメントにならないよう注意 なお、本人に対する注意や退職勧奨を行う場合には、これがパワーハラスメントに当たらないよう、方法や伝え方には留意する必要がある。 まず、業務時間中、会社内で行う必要があるが、本人の名誉・プライバシー等に配慮し、他の従業員の面前で行うことは避けるべきである。また、怒鳴る、執拗に同じことを何度も言う、長時間にわたるなど、感情的・威迫的な態様で行うことは禁物であり、冷静沈着かつ端的に行わなければならない。 なお、一対一であると従業員の対応によっては興奮して不適切な発言をしてしまう可能性がある場合には、2~3名で行うこともよいであろう(人数が多すぎるのはよくない)。 (了)
マイナンバーの会社実務 Q&A 【第15回】 「就業規則の改定⑧(「賃金規程」の条文の追加)」 税理士・社会保険労務士 上前 剛 〈Q〉 当社でマイナンバーを業務上取り扱う社員は、3名です。1名は事務取扱責任者、2名は事務取扱担当者です。3名の業務量が増加したことを考慮し、マイナンバー手当を支給することにしましたので、賃金規程の条文の追加について教えてください。 現在の賃金規程の諸手当の条文(一部)は、以下の通りです。 〈A〉 基本給と通勤手当しか規定していない会社もあれば、様々な諸手当を規定している会社もある。諸手当は、会社で自由に設定できる。 〈パターン1〉 マイナンバー手当の条文を追加した。事務取扱責任者と事務取扱担当者で手当の支給額に差をつけた。 〈パターン2〉 カッコ書きに“事務取扱責任者・事務取扱担当者”を追加した。〈パターン1〉の“役職に応じて”を削除し、事務取扱責任者と事務取扱担当者の手当を同額とした。 (了)
〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例7】 アキュセラ・インク 「ドライ型加齢黄斑変性治療薬候補『エミクススタト塩酸塩』の 臨床第2b/3相試験におけるトップラインデータについて」 (2016.5.26) 事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹 1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、アキュセラ・インク(以下「アキュセラ」という)が平成28年5月26日に開示した「ドライ型加齢黄斑変性治療薬候補『エミクススタト塩酸塩』の臨床第2b/3相試験におけるトップラインデータについて」である。製薬会社である同社が、研究開発していた新薬候補「エミクススタト塩酸塩」の臨床試験の結果について開示したものである。 「地図上萎縮を伴うドライ型加齢黄斑変性を適応症とする「エミクススタト塩酸塩」(以下、「エミクススタト」)の臨床第2b/3相試験におけるトップラインデータを発表いたします。」として、臨床試験の結果が淡々と記載されているのだが、その後に次のような記載がある。臨床試験の結果に関する記載だけでは分かりにくいのだが、「エミクススタト塩酸塩」に効果が認められなかったのである。 大手製薬会社でこうした開示があれば、「新薬候補の1つが失敗したか」くらいで済むかもしれないが、アキュセラにとって、今回の失敗はそれで済むものではなかった。同社は、平成27年12月期有価証券報告書の「事業等のリスク」において、次のように記載している。今回の失敗は、会社の存亡に関わる事態と言えるだろう。 2 パートナーにも見放されて この開示には、次のようにも記載されていた。 しかし、アキュセラは、平成28年6月14日に「大塚製薬とのエミクススタト塩酸塩契約およびOPA-6566契約の終了および定時株主総会開催の延期および基準日の変更に関するお知らせ」を開示した。そこには次のように記載されていた。大塚製薬株式会社(以下「大塚製薬」という)と今回の臨床試験の結果を分析し、今後の計画を立て直そうと考えていたのだが、その大塚製薬から見放されてしまったのである。 これだけを見ると、大塚製薬が冷酷であるかのように見えてしまうが、大塚製薬としては当然のことである。大塚製薬は、自社の株主のために、利益にならないことにコストをかけ続けるわけにはいかないのである。 ただ、この大塚製薬との契約終了も、アキュセラにとっては、「提携先の1つがなくなった」で済むものではなく、会社の存亡に関わる事態であった。平成27年12月期有価証券報告書の「事業等のリスク」には、次のようにも記載されていた。 3 想定しておくべき事態 アキュセラは、平成28年6月1日に「株主・投資家の皆様へのメッセージ」を開示し、その中の「今後のビジネス戦略について」において、次のように記載している。 株主と投資家に対して、今回の事態を受けて、「お詫び」を言っているのだが、そうしたことを言う必要はまったくないだろう(言葉の揚げ足取りのようだが、同社の株式を未だ取得していない投資家に対して、そうしたことを言う必要はそもそもない)。 同社は、平成27年12月期有価証券報告書の「事業等のリスク」において、「視覚サイクルモジュレーターは新たな技術であり、その長期的な安全性および有効性は不明であります。従って当社の治療薬候補が規制承認を取得することができるとの保証はありません。」と記載しているし、その最初には次のようにも記載している。同社の株式は、今回のような事態を想定したうえで取得しなければならないものなのである。 なお、同社は、平成28年6月22日に「当社株式の取引を対象とする調査に関する報道について」を開示している。日本取引所グループが、同社株式のインサイダー取引が行われた疑いがあるため、調査を開始したことを受けた開示である。 もしも実際にインサイダー取引が行われたならば、今度は必ず株主だけでなく投資家に対しても「お詫び」を言わなければならないだろう。インサイダー取引は株式市場の秩序を乱すものである。上場会社ならば、会社関係者によるインサイダー取引は防がなくてはならないし、情報管理を徹底して、社外の者によるインサイダー取引も防がなくてはならない。それを行えていなかったとしたら、上場会社として失格である。 (了)
《編集部レポート》 税理士三田会、創立30周年を記念し 清家篤慶應義塾大学塾長による特別講演会を開催 Profession Journal 編集部 慶応義塾大学出身の税理士による任意団体として昭和61年に設立した税理士三田会はこのたび創立30周年を記念し、7月23日(土)、慶應義塾大学北館ホールにおいて清家篤慶應義塾大学塾長を招き特別講演会を開催した。 鈴木雅博三田会会長の挨拶に続き登壇された清家氏は、『社会保障制度を将来世代に伝えるために』と題したテーマで、世界に類を見ない日本の急速な高齢化、長寿化の現状を各種統計データにより紹介した上で、労働力不足の問題を解決するために65歳以上の高齢者や30代女性の労働力が欠かせない点、及びその労働力率を上げる具体的な施策について説明が行われた。 講演後、同会会員でもある神津信一日本税理士会連合会会長が謝辞を述べられ講演会は活況のうちに閉会、その後は関係者を交えた懇親会が開催された。 (清家篤慶應義塾大学塾長) (了)
《速報解説》 財務省、「平成28年度税制改正の解説」を公表 ~改正消費税法は平成28年3月31日公布の内容で解説 Profession Journal編集部 財務省主税局が税制改正の内容を詳解した「平成28年度税制改正の解説」(全983ページ)が、7月27日に財務省ホームページ上で公表された。税制改正の解説を行うページは毎年7月上旬には掲載されることから、本年は通常より遅れての公表となった。 なお、今年度改正で成立した消費税の軽減税率については既報の通り、消費税率10%の引上げが2年半延期されたことに伴いその導入時期も平成31年10月からとされたが、6月の安倍首相による延期表明以降、新たな法令等の改正は行われておらず、秋の臨時国会での成立が予定されている。 この点、今回公表された解説では、「消費税法等の改正」ページにおいて下記の通り、3月31日に公布された関係法令等に規定されている消費税関係の改正内容の解説を行う旨が記載されている。 今後、上記の税制関連法案が成立した場合には、それらが公布された後の「税制改正の解説」の中で解説するとしており、当該ページ内もしくは新たな解説ページにおいて取り上げられる見込みだ。 (※) 財務省「平成28年度税制改正の解説」p758より なお、冒頭「平成28年度税制改正について」にも同趣旨の記載がある(下線は編集部)。 (了)
《速報解説》 国税庁、税務に関するコーポレートガバナンスの事務実施要領を公表 ~大企業の効果的な取組事例の紹介も~ 税理士・社会保険労務士 上前 剛 7月15日、国税庁のホームページにて「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組の事務実施要領」が公表され、さらに税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた効果的な取組事例として「大企業の税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組事例」も合わせて公表された。 1 税務CGへの税務当局の対応方針をまとめた事務実施要領 税務に関するコーポレートガバナンスの状況が良好な法人のうち、税務調査の結果に大口・悪質な是正事項がなく調査の必要度が低いと国税局から判断された法人は、次回の税務調査までの間隔が延長される。 ただし、見解の相違が生じやすい取引で取引金額が多額(売上の0.1%以上。売上1兆円超の法人については10億円以上)の場合は自主開示しなければならない。 今回公表された事務実施要領では、税務当局におけるこれらの取扱いについて、以下の構成でまとめられている。まだ制度全体がつかみにくいと感じていた税理士や対象企業にとっては参考となる点が多いだろう。 さらに確認項目の評価・判定を行う際に利用する「別紙1 税務に関するコーポレートガバナンスの確認項目の評価ポイント」及び自主開示を依頼する際に提示される「別紙2 自主開示について」も公表されており、特に別紙2において、見解の相違が生じやすい取引として以下の取引が列挙されている点には注目されたい。 上記の項目は国税局が見解の相違が生じやすいと認めているのだから、法人の規模や取引金額に関わらず注意しなければならないと考える。 2 効果的な取組事例 「大企業の税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組事例」では、国税局が大企業から収集した税務コンプライアンスの維持・向上に効果的な取組事例がまとめられている。 効果的な取組事例を公開した意図としては、効果的な取組事例を参考にしたり真似たりして税務コンプライアンスの維持・向上につなげてほしいというものであろう。 実際に収集された情報だけあって実践的な内容が書かれており、税務CGに取り組む企業にとってはすぐに実行できるものもあるのではないだろうか。 筆者は事例2ページ目「社内監査の効果的な実施」における以下の取組事例に注目した。 上記の「模擬税務調査」については、すでにこれをビジネスにしている税理士も多いが、事例として紹介されたことから税務当局も税務CGにおけるその効果を認めているものと思われる。 (了)
《速報解説》 東証、2016年3月決算会社までの 「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の 開示分析結果を公表 ~IFRS適用(及び適用予定)会社は141社に~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年7月20日、東京証券取引所は、2016年3月決算会社までの「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の開示内容について分析を行い、その結果を公表した。 同分析については、平成27年9月1日(2015年3月31日決算会社(早期適用含む))、平成28年4月13日(2015年3月から12月決算会社)にも行われている。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 「決算短信・四半期決算短信作成要領等」(2015年3月)の27ページに次の規定が設けられている。 分析対象会社等の推移は次のとおりである。 出所:東京証券取引所の「『会計基準の選択に関する基本的な考え方』の開示内容の分析」の5~7ページをもとに作成。 (了)
《速報解説》 配偶者の居住権保護、法定相続分の見直しなど含む 「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案」がパブコメへ ~意見・情報受付締切日は9月末。今後の見通しは? Profession Journal編集部 昨年4月からの「法制審議会-民法(相続関係)部会」における審議を経て、7月12日付けで「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案」がパブリックコメントに付された。 今回の改正案に至る流れは平成25年の婚外子の相続差別をめぐる最高裁判決を受け民法900条《法定相続分》が改正されたことが契機となっており、その反動として、遺産分割における「配偶者の権利」に係る改正内容が柱の1つとなっている。 パブコメの期間は9月30日までであり、10月からは寄せられた意見を踏まえ部会における調査審議が再開される予定だ。 以下、主な改正論点と今後の見通しをまとめた。 * * * 〇配偶者の居住権を保護 配偶者が相続開始時に遺産に属する建物に居住している場合に、遺産分割により住み慣れた居住建物からの急な退去が求められることのないよう、「短期居住権」の新設が検討されている。短期居住権とは、遺産分割が確定するまでの間など一定期間、無償でその建物を使用することができる権利のこと。 また、「長期居住権」として、終身又は一定期間、配偶者にその使用を認めることを内容とする法定の権利を創設し、遺産分割において配偶者による選択肢の1つとする案が示された。この長期居住権については、取得した場合、配偶者はその財産的価値に相当する金額を相続したものと扱うとされており、この算定方法については今後の検討課題とされている。 〇被相続人財産の婚姻後増加額や婚姻期間により配偶者の法定相続分を拡大 現在2分の1とされている配偶者の法定相続割合について、被相続人の財産形成に対する配偶者の貢献が類型的に大きいと考えられる一定の条件に応じて、その割合を拡大する案が検討されている。 具体的には、被相続人の財産が婚姻後に一定の割合以上増加した場合(一定の算式による)にその割合に応じて配偶者の具体的相続分を増加させる案や、婚姻後一定期間(20年や30年)経過した場合、協議により(もしくは期間経過で当然に)配偶者の法定相続分を引き上げる案が検討されている。 〇相続人以外の者の貢献を考慮する方策 現行法上では、いわゆる寄与分は相続人にのみ認められているため、例えば相続人の妻が被相続人(夫の父)の療養看護に努めた場合であっても、相続人でない妻が寄与分を主張することはできない。一方で療養看護等を全く行わなかった相続人がその遺産の分配を受けることについて不公平感を覚える者が多いとの指摘もある。 このため、請求権者の範囲を限定する、あるいは寄与行為の態様を限定する等の一定の要件の下、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした者が、相続開始後、相続人に対して金銭請求をすることができる権利の創設が検討されている。 〇遺留分をめぐる制度の見直し 遺留分減殺請求が行われた場合、物権的効果が生ずるとされている現行の規律を改め、原則として金銭債権が発生するものとする見直しが検討されている。つまり遺留分権利者は減殺請求をすることによって受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを求めることになる(協議による現物返還も認められる)。 これは現行法上、減殺請求が行われた場合、遺贈又は贈与の目的財産が受遺者又は受贈者と遺留分権利者との共有になることが多く、共有関係の解消をめぐり新たな紛争となれば円滑な事業承継を困難にするとの問題に対応したものである。 その他遺留分については、算定の基礎となる財産に含めるべき相続人に対する生前贈与の範囲を、相続開始前の一定期間(例えば5年間)とする案なども検討されている。 〇自筆証書遺言の利便性向上へ 一般に相続対策では公正証書遺言の作成が望ましいとされているものの、自筆証書遺言についても家庭裁判所での検認件数が年々増加傾向にあることから、高齢化社会を踏まえその利便性を高める方策が検討されている。 具体的には、自筆証書遺言について、遺贈等の対象となる「財産の特定に関する事項」については、対象を特定するための形式的な事項でありすべての自書が煩雑なことから、自書でなくてもよいものとする案が検討されている。 なお「財産の特定に関する事項」としては、 ・不動産の表示(土地であれば所在、地番、地目及び地積/建物であれば所在、家屋番号、種類、構造及び床面積) ・預貯金の表示(銀行名、口座の種類、口座番号及び口座名義人等) 等が想定されている。 これにより、遺言書の末尾に添付されることが多いいわゆる遺産目録(物件等目録など)についてはパソコン等による作成が可能となるほか、遺言者以外の者による代筆も認められることとなる。 ただし財産の特定に関する事項を自書以外の方法で記載した場合は、その事項が記載されたすべてのページに遺言者の署名及び押印が必要とされる(今回のパブコメでは「緩和方式として考えられる例」が示されている)。 また、作成後の紛失や相続人による隠匿・変造を避ける等の趣旨から、自筆証書遺言の原本の保管を公的機関(例えば法務局、公証役場、市区町村など)に委ねる制度の創設も検討されており、保管された遺言書については家庭裁判所の検認を要しないこととされるなど、公正証書遺言に近づけた制度設計が検討されている。 * * * 上記以外にも、現在は遺産分割の対象外とされている預貯金債権等の可分債権を遺産分割の対象に含める案や、遺言執行者の法的地位及び一般的な権限を明確化する案などが織り込まれている。 〇民法改正の時期は? 今回公表された中間試案では、見直しの方向性や議論の途中経過を示した内容となっており、補足説明においても と述べられていることから、法律の改正までにはかなりの時間を要するだろう。 実際にパブコメの締め切りは9月末であるが、当局は多くの意見が寄せられるとみており、取りまとめが10月までにできるか疑問視されているとのこと。当局としては法案を平成30年の国会提出としたい考えだが、未だ債権法の成立がなされていないことから、予定どおりに進まない可能性が高いとする向きもある。 このため改正法は、周知期間を2年経て施行とした場合、最短でも32年になりそうな見込みであり、これと合わせて税制の対応も最短で32年度改正となろう。 ただし、今回の改正内容が実現された場合、相続対策の見直しや税制への影響など税理士業務へのインパクトは大きい。中間試案自体は16ページと短いものだが、税理士はその審議内容について詳しく解説された補足説明(全85ページ)にも目を通しておきたい。 (了) ↓お勧め連載記事↓
2016年7月21日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.178を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。