令和5年度税制改正に関する 《資料リンク集》 このページでは「令和5年度税制改正」に関し各府省庁・主な団体等から公表された情報ページへのリンク先をまとめています。 新たな情報の公表により、随時更新します。 - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
《速報解説》 国税庁、「通勤手当の非課税限度額の改正に関するQ&A」を公表 ~令和8年度税制改正による駐車場等加算措置等の実務上の取扱いを明確化~ Profession Journal編集部 Ⅰ はじめに 国税庁は令和8年4月、特設ページ「通勤手当の非課税限度額の改正について」を更新し、「通勤手当の非課税限度額の改正に関するQ&A」を公表した。 本Q&Aは、令和8年度税制改正による通勤手当の非課税限度額の改正に関する実務上の一般的な疑問に回答するものである。 Ⅱ 改正の概要(再確認) 令和8年度税制改正により、自動車などの交通用具を使用して通勤する給与所得者に支給する通勤手当の非課税限度額について、次の2点の改正が行われた。 1 片道65㎞以上の距離区分の新設等 これまで「片道55㎞以上」で一律38,700円とされていた区分が細分化され、新たに片道65㎞以上の距離区分(10㎞刻み)が設けられた。最高額は片道95㎞以上の66,400円となった。 2 駐車場等の料金相当額に係る加算措置の創設 一定の要件を満たす駐車場等を利用し、その料金を負担することを常例とする者については、通勤距離の区分に応じた非課税限度額に、1か月当たりの駐車場等の料金相当額(上限5,000円)を加算した金額が新たな非課税限度額となった。 3 適用時期 改正後の非課税限度額は、令和8年4月1日以後に支払われるべき通勤手当(同日前に支払われるべき通勤手当の差額として追加支給するものを除く)について適用される。 Ⅲ Q&Aの主な内容 公表されたQ&Aは、「改正の概要」「非課税の対象となる駐車場等の範囲」「駐車場等の利用がある場合の非課税限度額の計算」「その他」の4項目で構成されている。以下、特に確認しておきたい事項を紹介する。 1 非課税の対象となる「一定の要件を満たす駐車場等」の範囲 加算措置の対象となる「一定の要件を満たす駐車場等」とは、通勤のために使用する交通用具の駐車のための施設のうち、勤務する場所の周辺又は通勤のために利用する交通機関の駅若しくは停留所その他の施設の周辺にあるものをいうとされている(Q2-1)。 主な留意点は以下のとおりである。 2 非課税限度額の計算方法 加算措置の適用がある場合の非課税限度額の計算については、(Q3-1)及び(Q3-2)において、以下の4パターンの設例(ケースA~D)及び交通機関併用型の設例(ケースE)が示されている。 ケース 概要 A 距離分手当と駐車場代を区分支給/支給額が非課税限度額を超過 B 距離分手当と駐車場代を区分支給/支給額が非課税限度額以下 C 駐車場代が5,000円以下のケース D 通勤手当と駐車場代を区分せずに一括支給するケース E 電車(定期代)+自動車+駐車場等の併用ケース(上限150,000円の適用) このうちケースDでは、通勤距離に応じた手当と駐車場代を区分せずに支給した場合であっても、駐車場等の料金相当額(上限5,000円)を加算した金額を非課税限度額として計算する取扱いが示されている点が注目される。 3 「1か月当たりの駐車場等の料金相当額」の算出方法 (Q3-3)では、駐車場等の料金体系に応じた「1か月当たりの駐車場等の料金相当額」の算出方法が、次の4つの区分に分けて示されている。 特に(3)については、①実費の1か月間の合計額、②1回当たり料金×利用回数、③その他合理的な方法による計算額の3つの計算方法が例示されており、回数券利用や時間貸し駐車場利用の具体的な計算例(端数切上げの取扱いを含む)が示されている。 なお、計算の簡素化のため、回数券の1枚単価×利用日数による概算計算(例:120円×20日=2,400円)も差し支えないとされている。 4 その他の実務上の留意点 駐車場等の料金相当額の通勤手当を非課税として支給するに当たり、契約書や領収書等の書類の提示を受けることは法令上の義務とはされていない。ただし、料金相当額の算出に必要な金額を確認するため、従業員から必要な書類等の提示を受けるなどして金額を確認する必要があるとされている(Q4-1)。 確認は支給の都度行う必要はないが、駐車場等の料金に変更があった場合には、従業員からの申出を受けて確認する必要がある(既に5,000円を超えている場合の値上げを除く)。 また、会社が従業員に代わって駐車場を契約し、駐車場代を負担している場合についても、実態として駐車場代相当額の通勤手当を支給しているものと変わらないとして、加算措置の対象として非課税限度額を計算することとされている(Q4-2)。 Ⅳ おわりに 令和8年度税制改正による通勤手当の非課税限度額の改正は、片道65㎞以上の距離区分の新設に加え、駐車場等の利用実態を反映した加算措置の創設を含むものであり、給与計算実務に直接影響する。 今回公表されたQ&Aでは、駐車場等の範囲、料金相当額の計算方法、書類確認の要否など、実務担当者が判断に迷いやすい論点について、具体的な計算例を交えて解説されている。給与支払者においては、本Q&Aの内容を踏まえ、社内の通勤手当規程や給与計算システム上の取扱いについて、改正内容に沿った整備を進めていくことが望まれる。 (了)
《速報解説》 改正法人税法施行規則の公布に伴い、 R8改正等に対応した法人税申告書(別表)様式が示される ~大胆な投資促進税制創設に伴う様式の新設や賃上げ促進税制の見直し等を反映~ Profession Journal編集部 令和8年度税制改正等に対応した法人税申告書(別表)の様式を定めた改正法人税法施行規則(財務省令第39号)が4月14日付官報号外第88号で公布された。改正後の様式は原則、令和8年4月1日以後終了事業年度から適用される(改正法規附則4)。 また、官報同号では防衛特別法人税に関する省令等の一部を改正する省令(財務省令第42号)も公布されており、防衛特別法人税に係る申告書様式の一部見直しが示されている。 その他、地方法人税及び租税特別措置の適用額明細書の様式改正も行われている。 以下、新設された様式及び主な既存様式の改正事項について紹介する。 1 大胆な投資促進税制の創設に伴い新設された様式 まず、令和8年度税制改正で創設された特定生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除(大胆な投資促進税制)に伴い、「別表6(27) 特定生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」が新たに設けられている。なお、本様式については、令和8年4月1日以後に終了する事業年度からの適用ではなく、現在(令和8年4月24日時点)審議中の改正産業競争力強化法の施行の日以後に終了する事業年度からの適用となる(改正法規附則1三、五)。 〈別表6(27) 特定生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書〉 2 主な既存様式の改正 (1) 研究開発税制の見直しに伴う様式の変更 主な既存様式の改正として、令和8年度税制改正で見直しがあった研究開発税制については、一般型の試験研究費の額に係る税額控除制度の控除率及び控除上限の見直しや国外委託試験研究費の対象範囲の見直しに伴い、「別表6(9) 一般試験研究費の額に係る法人税額の特別控除に関する明細書」において記載欄の追加等が行われているほか、「別表6(10) 中小企業者等の試験研究費の額に係る法人税額の特別控除に関する明細書」では、繰越控除制度の導入に伴って「翌期繰越税額控除限度超過額の計算」欄等が新たに設けられた。 〈別表6(9) 一般試験研究費の額に係る法人税額の特別控除に関する明細書〉 〈別表6(10) 中小企業者等の試験研究費の額に係る法人税額の特別控除に関する明細書〉 (2) 賃上げ促進税制の見直しに伴う様式の変更 そのほか、令和8年度税制改正で一部縮減等もあった賃上げ促進税制では、適用要件等の見直し及び全法人向け措置の令和8年3月31日の廃止に伴い、「別表6(24) 給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」の「税額控除限度額等の計算」欄において、「令和8年3月31日以前に開始した事業年度の場合」と「令和9年4月1日以降に開始する事業年度の場合」欄が設けられ、場合分けがされている。 〈別表6(24) 給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書〉 (3) その他既存様式の変更 また、前述の大胆な投資促進税制の創設を受け、別表6(7)では、「特定生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除の適用可否の判定」欄の追加等がされたほか、別表6(6)及びその付表でも「特定生産性向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除」欄の追加等がされている。 そのほか、使用頻度の高い既存様式の細かな改正として、別表1付表の表中では「中小通算法人等」を「中小通算法人」と改めているほか、別表4の表中では番号の一部変更が行われている。 なお、令和7年度税制改正で創設された防衛特別法人税に係る申告書様式(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用)についても別表1及び別表2の表中において番号の一部変更等が行われている。 (了)
2026年4月23日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.666を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第91回】 東洋大学法学部教授 泉 絢也 ウ オンランプ・オフランプという現実世界との接点 暗号資産には分散的な特性があるとしても、法定通貨を暗号資産に交換するプロセス(オンランプ)とその逆のプロセス(オフランプ)では、本人確認規制やマネーロンダリング・テロ資金供与規制に従って中央集権的な機関がサービスを提供していることが多い(※)。 (※) よって、警察庁のJAFIC(Japan Financial Intelligence Center:犯罪収益移転防止対策室)が外国のFIU(Financial Intelligence Unit:資金情報機関)から得たマネーロンダリング及びテロ資金供与に関する疑わしい取引報告に係る情報が一定の法的手続を経て、査察部門に共有される可能性もある。 FIUは、各国のマネーロンダリング・テロ資金供与対策を担う情報収集機関であり、日本ではJAFICがその役割を担っている。国際的な情報交換枠組みにより、国外取引所に関する情報が共有される可能性もある。 オンランプとは、銀行口座等から暗号資産を購入する入口であり、オフランプとは暗号資産を売却して法定通貨に戻す出口である。 これらの場面では、取引所等においてKYC(顧客確認)手続が実施されるのが通常である。このため、これらのプロセスは、ブロックチェーン上の活動と現実世界の身元を結びつける上で重要な接点である。 したがって、ここが税務当局にとって最も重要な情報源となる。 すなわち、ブロックチェーンがいかに分散的であっても、法定通貨との接続点が存在する限り、完全な匿名経済圏として閉じたものとすることは困難である。よって、税務執行の観点からは、この「出入口」に着目することが基本戦略となる。 このような状況は、法定通貨と比較して、何らかの対価として暗号資産を受け取る機会は少なく、また、暗号資産での支払が可能な場面は限られており、暗号資産の多くが主として支払手段以外の用途を持たないことによって維持されている(※)。 (※) ただし、高所得国における典型的な暗号資産の納税者は暗号資産を投資資産として保有し、支払手段としての使用は付随的なものにすぎない一方、低所得国における暗号資産の納税者は、通貨代替として利用しているという見方もある(See Bob Michel & Tatiana Falcão, Cryptoization Through Currency Substitution: Tax Policy Options for Low-Income Countries, 108 TAX NOTES INT’L 973,975(Nov.21,2022))。 すなわち、多くの投資家は最終的に法定通貨に戻したり、暗号資産を実際にモノやサービスと交換する必要があるため、多くの場合において、「どこかで必ずオンランプ又はオフランプを経由する」ことになる。 この点は、暗号資産の経済圏が完全に自律的な閉鎖空間ではなく、現実世界の金融システムと結びついていることを示している。 なお、DEX(分散型取引所)は原則として法定通貨との直接交換機能を持たないが、近年は第三者決済業者やブリッジサービスを介した間接的な法定通貨への接続が存在する場合もあり、「完全に接点がない」とまではいえない。 さらに、ステーブルコインを介した価値移転は、法定通貨との接続を間接化させる機能を持つが、その発行体や償還窓口を通じて再び中央集権的接点が生じるという側面も有する。 オンランプ又はオフランプに含まれるかどうかに関わらず、税務当局としては、暗号資産を他の財産やサービスと交換するためのサービスを提供しているプラットフォーム等を情報源として着目して、調査を展開することが考えられる。 オフランプは、厳密には暗号資産を法定通貨に転換する出口を指す。 しかし、課税実務の観点から重要なのは、法定通貨への転換に限られない。暗号資産を財やサービスと交換する場合も、現実経済との接点が生じる点では同様である。 したがって、税務執行上は、オンランプ・オフランプという法定通貨との接続点に加え、暗号資産が現実の財やサービスと交換される現実経済との接点にも着目する必要がある。 具体例として、CEX、DEX、ウォレット(※1)、暗号資産ATM、暗号資産デビットカード、ピアツーピアプラットフォーム、ブロックチェーンゲーム、Crypto Faucets (※2)、オンラインカジノ、財やサービスの提供サイトなどを挙げることができる。 (※1) ウォレットそのものは中央集権的管理主体を必ずしも伴わないが、ブロックチェーン分析の起点となり、資金移動の出発点又は到達点として、分析上の重要なハブとなる。 (※2) 簡単なタスクやアクティビティ等の報酬として、少額の暗号資産を配付するオンラインプラットフォーム又はアプリケーション。 暗号資産の世界は分散性により、把握困難と考えられがちである。 しかし、実際には分散性と公開性・仮名性(疑似匿名性)が同時に存在し、さらに現実世界の法定通貨や財・サービスとの接点が残存しているという特性を有している。この特性を前提に、どの接点が現実世界と結びついているのかを理解することが、課税実務にとって重要である。 (了)
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例157(所得税)】 税理士 齋藤 和助 《基礎知識》 ◆固定資産を交換した場合の課税の特例(「交換特例」)(所法58) (1) 制度の概要 「交換特例」とは、個人が1年以上所有していた特定の資産を、他の者が1年以上所有していた同種の固定資産と交換し、その交換取得資産を交換譲渡資産の譲渡直前の用途と同一の用途に供した場合で、交換取得資産の時価と交換譲渡資産の時価との差額が、これらのうちいずれか高い金額の20%以内のときは、譲渡所得の計算上、交換に伴って受け取った交換差金等の価額に相当する部分を除き、その譲渡がなかったものとみなされるものである。 (2) 適用要件 特例の適用を受けるためには次の要件を満たす必要がある。 ◆取得資産を譲渡資産の譲渡直前の用途と同一の用途に供したかどうかの判定(所通58-6) 資産を交換した場合において、取得資産を譲渡資産の譲渡直前の用途と同一の用途に供したかどうかは、その資産の種類に応じ、おおむね次に掲げる区分により判定する。 したがって、例えば、交換譲渡した土地が宅地として使用されていたものであれば、交換取得した土地も宅地として使用するという場合が資産の種類と用途の区分を同一にすることになる。 交換譲渡資産の種類 区 分 土 地 宅地、田畑、鉱泉地、池沼、山林、牧場又は原野、その他 建 物 居住用、店舗又は事務所用、工場用、倉庫用、その他 機械装置 耐用年数省令別表第2に掲げる設備の種類の区分 船 舶 漁船、運送船、作業船、その他 ◆交換により取得した2以上の同種類の資産のうちに同一の用途に供さないものがある場合(所通58-5) 交換により種類を同じくする2以上の資産を取得した場合において、その取得した資産のうちに譲渡直前の用途と同一の用途に供さなかったものがあるときは、「交換特例」の適用については、その用途に供さなかった資産は、「交換特例」の適用がある取得資産には該当せず、その資産は交換差金等となる。 ◆交換差金等に対する課税 交換に伴って相手方から取得資産とともに金銭その他の資産を取得した場合には、その金銭の額及び金銭以外の資産の価額に相当する部分は、「交換特例」を適用できる場合であっても、譲渡所得として課税の対象になる。 なお、親族同士の交換である場合には、交換資産の時価の差額であっても贈与税の課税対象となる。 (了)
固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第59回】 「一の収用換地等に係る事業で、2以上の年にわたる資産の譲渡のうち、最初の年以外の資産の譲渡に該当するから、特別控除の適用を受けることはできないとされた事例」 税理士 菅野 真美 ▷収用の特別控除と一の事業について、資産の譲渡が2年以上にわたったときの適用 収用等は、公共の用に供するため、半ば強制的に資産の譲渡をすることである。譲渡対価として補償金を受け取ることがあるが、迅速な収用を実現させるために一定の条件を満たす場合は、譲渡益のうち5,000万円までの損金算入を認める制度がある(措法65の2)。 要件はいくつもあるが、その一つとして一の収用換地等に係る事業について、2年以上にわたって譲渡が行われたときは、最初の年の譲渡に限られること(措法65の2③二)がある。これは、資産の譲渡を分割して行うことを認めると、迅速な収用が難しくなり、かつ、特別控除の限度額を意図的に増額させることになることから制限を設けた規定である。 とはいっても、収用等に供される状況によっては、やむを得ず、2年以上にわたって資産の譲渡が行われる場合がある。このようなケースに対応するために次の通達がある。 〈租税特別措置法関係通達65の2-10〉 今回は、収用等による資産の譲渡で最初の年以外の譲渡につき収用等の特別控除の適用の可否が争われた事案を検討する。 ▷事案の概要 納税者である法人は、館林市が認可したF土地区画整理事業の施行地区における道路の変更に関する工事の施行のために、所有する建築物等の移転をして補償金を取得することになった。 物件の移転の時期は年度計画に基づき、補償金の支払いは10年間の分割払いである。 移転により受け取った損失補償金等について、納税者は次のように益金に計上した。 これらはいずれも未収入金として計上していたが、収用等の特別控除として損金算入をしたのは、平成19年9月期である。この申告について、課税庁が更正処分等をしたことから、異議申立てをして一部取り消されたが、その後に審査請求を行い、棄却された。 そこで、税務相談における指導にも違法があった等として国家賠償法に基づく損害の賠償又は不当利得の返還等の請求をして訴えたのが本事案である。 ▷税務相談における指導の何が違法と納税者は主張したか 平成17年11月11日に、申告業をしていた会計事務所の職員を通じて、税務署の上席に税務相談した結果、上席が次のような指導を行った。 このように上席は、特例の適用について、市役所に丸投げしており、唯一行った②の指導が誤っていたから違法であると、納税者は主張した。 なぜ②が誤った指導であり違法かというと、この特別控除は、一の収用換地等に係る事業で資産の譲渡が2以上の年に行われているときは、最初の年の譲渡のみ適用があるものである。しかし、「全体で一度限り」というならば、譲渡が複数年にわたって行われた場合、どの年に特例を適用することができるかは選択できるととれるような発言をしたからである。 ▷なぜ、納税者は平成19年9月期に収用の特別控除を申告したのか 平成17年9月期、平成18年9月期において7,000万円弱の補償金の益金算入額があるのに、収用等の特別控除を行わなかったのは、これらの事業年度において未処理欠損金があり、収用等の特別控除により損金算入されると、繰越控除の適用期限を超えた未処理損失が切り捨てられることからである。 納税者としては、まず、繰越欠損金の控除を使い切り、所得が生ずる平成19年9月期に収用等の特別控除を適用することが、節税効果としては一番大きいからと考えられる。 ▷地裁の判断:一の収用換地等に係る事業に該当するか 市町村が施行する土地区画整理事業においては、基本的に、認可に係る事業をもって「一の収益換地等に係る事業」に当たると解するのが相当である。F土地区画整理事業という単一の事業の名称のものとして認可され、その施行地区が事業計画又は施行規定において工区に分けられたことや、施行地区を地域を区分して計画され、この計画に従って地域ごとに時期を異にして事業を施行することとされていたことはうかがわれない。 事業計画が定められた時点で単一の事業として想定されていたのであり、その後に事業計画が変更された等の事情の存在をうかがわせる証拠は見当たらない。納税者の所有する土地に存する建築物等の移転については、事業の施行地区内の道路の整備に関する工事の施行に伴う納税者の事業の継続等への影響等を考慮した上で、複数年に分けて順次そのための手順を踏むことが合意されたものである。各年の建築物等の移転又は工事の施行ごとに実質的に別個の事業と見るべき事情は格別存在しない。よって、一の収用換地等に係る事業に該当すると解するのが相当である。 「事業が1期工事、2期工事等と地域を区分して計画されており、当該計画に従って当該地域ごとに時期を異にして事業を施行する場合」(措通65の2-10(3))は、区分された地域ごとに別個の事業として同号の規定を適用するものとしているが、これは、事業規模が大きく、施行期間が長いいわゆる公共事業にある例で、第1期工事、第2期工事等と地域を区分して順次用地買収が行われる事例を想定して定められたものである。納税者の土地等に存する建築物等の移転について上記定めに当たるというべき事情の存在はうかがわれない。 ▷地裁の判断:税務相談における指導にも違法があったか 措置法65条の2第3項2号は、少なくとも税理士の資格を有する程度の知識等を備えた者においては明白に読み取れように規定してある。 税務相談がされた当時(平成17年11月11日)が上記の規定にいう「最初に当該譲渡があった年」に当たっていたこと及び上席においても上記の規定の内容を理解していたものと推認されることを踏まえると、上席の「全体で一度限りしか使えない」旨の発言については、上記の規定の内容をその時点における事実関係を前提に端的に説明したものと見るのが自然である。以上を超えて、次の年以降にされる納税者の建築物等の移転に伴う補償金についても本件特例の適用を受けることができる旨を積極的に示唆したと解する余地のあるような発言をしたことを裏付ける的確な証拠は見当たらない。 よって、納税者の違法であるという主張は採用できない。 ▷まとめ 本件は、納税者の請求が棄却され確定した。 繰越控除期限の近い未処理欠損金を多額に抱えた顧問先に対して、節税メリットを最大限取りたいために、まず、繰越欠損金を使用し、なくなったところで収用等の特別控除を利用したいという税理士側の思惑が引き起こした裁判だったと考える。 平成19年9月期に関して、収用等の特別控除は適用できない一方で、圧縮記帳の特例の適用は要件を満たせば可能だったかもしれないが、税の繰延べにしかならないことから税理士は選択しなかったのだろう。 なお、本件は、地裁で確定している。 (了)
街の税理士が「あれっ?」と思う 税務の疑問点 【第11回】 「相続時に空室だった場合の貸家及び貸家建付地」 城東税務勉強会 税理士 大塚 進一 問 題 父親が所有していた一棟のマンションについて、満室ではなく空室が数室ある状態で亡くなりました。新築当初は満室であったものの昨今の賃貸市場の影響もあり、相続開始前の数年は満室の時もあれば数室の空きが出る時もありました。 賃貸物件について空室になった直後には賃借人の募集をかけ、いつでも貸し出せる状態にしていました。相続開始後に賃貸された部屋の空室期間は長いもので3年、短いものでは半年ほどであり相続税の申告期限にも空室のままの部屋もありました。 この場合の貸家や貸家建付地評価において賃貸割合100%として申告してよいでしょうか。 回 答 賃貸割合は100%ではなく、空室部分を除いた賃貸割合で申告する方がよいでしょう。 貸家と貸家建付地の評価は以下のように計算します。 国税庁より、借地権割合は場所によって路線価図や倍率表で示され、借家権割合は現状一律30%となっており、賃貸割合は以下のように定められています。 このように、貸家や貸家建付地の評価は賃貸割合が高いほど、自用家屋や自用地の評価額より低い評価額になります。貸している部屋には借主の権利があり、貸主の権利が少なくなるので、評価する場合それを減じますが、空室の場合は減じるべき借主の権利はないという考え方です。 ただし、継続的に賃貸されているアパートマンション等で、相続開始時に一時的に空室である場合は、以下の事実関係から総合的に判断します。 最近の判決からは、上記④について厳密に判断されるようになっています。詳細は次で考察します。 考 察 貸家及び貸家建付地の評価において、その空室が一時的か否かの考察が必要です。以前は上記の要件の④以外を満たせば、④における「例えば1か月程度」の期間については柔軟的に取り扱っていました。 として、空室であった事情も含め一時的な空室と認めていました。 しかし、最近の事例では、むしろ課税時期における空室の期間に重きを置いています。 この両判決から空室期間についてみると、「例えば1か月程度」でなければ長期間で、3か月近くにも及ぶと一時的な空室とは言えないことになります。 なお(平成30年1月12日大阪高裁判決)では、賃貸住宅の状況により入居者募集をしても空室であることは、相続開始日において賃貸の見込みがない事から、一時的な空室でないとしています。 しかし、常識的な不動産賃貸業務では、退室後に室内を点検し貸主と借主の修復箇所の負担の取決め、劣化部分の修繕補修、入居見込み者の内見等の手続きがあるので、2か月程度の空室で貸し出せるのは稀であるとしか言えません。入学入社や転勤等が多い時期と重なり退室後すぐに入居見込み者が見つかり賃貸借契約に至り、簡単なクリーニングのみで貸し出せる場合に限られるでしょう。 なお、一時的な空室の概念は、各独立部分(隔壁、扉、階層等によって他の部分と完全に遮断されている部分)があるアパートマンション等に対するものであるので、一軒家である戸建住宅については、相続開始時に空き家であれば、貸家や貸家建付地に該当しません。 また、貸付事業用宅地等として小規模宅地等の特例の適用においても、一時的な空室の概念がありますが、それは、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例に係る相続税の申告書の記載例等について(情報)」に示されています。 この小規模宅地等の特例については、空室期間についての具体的な言及はなく、貸家や貸家建付地の場合より広く捉えられています。このため、貸家建付地には該当しないが、小規模宅地等の特例の適用が可能な場合もありえます。 なお、(令和5年4月12日裁決事例)では、共同住宅の一部が空室となっていた場合の小規模宅地等の特例の適用において、形式的な入居者の募集広告の掲載のみならず、不動産業者との入退室時の連絡など具体的な関わりがないと、いつでも入居可能な状態に空室を管理しているとは言えないと判断しているので、注意が必要です。 (了)
〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第94回】 「租税条約上の居住者該当性が争われた事例 (東地令5.5.30)(その1)」 税理士 柿本 雅一 1 事案の概要 アラブ首長国連邦(以下「UAE」)の首長国の一つであるドバイに本店を置くリミテッドライアビリティカンパニー(以下「LLC」)である原告が、豊島税務署長から、原告は「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアラブ首長国連邦との間の条約」(以下「本件条約」)4条1の「一方の締約国の居住者」には該当しないため、平成27年12月期から平成30年12月期までの間に原告が行った株式譲渡に係る所得及び役務提供に係る所得は、法人税法138条1号(平成26年法律第10号による改正前のもの)に規定する国内源泉所得に該当するものとして法人税及び地方法人税並びに無申告加算税が課されたことを不服として各処分の全部の取消しを求めた事案である。 【租税条約における居住者の定義】 日本 UAE 租税条約 OECD モデル租税条約 この条約の適用上、「一方の締約国の居住者」とは、一方の締約国の法令の下において、住所、居所、本店又は主たる事務所の所在地、事業の管理の場所その他これらに類する基準により当該一方の締約国において課税を受けるべきものとされる者をいい、当該一方の締約国及び当該一方の締約国の地方政府又は地方公共団体を含む。 ただし、「一方の締約国の居住者」には、一方の締約国内に源泉のある所得のみについて当該一方の締約国において租税を課される者を含まない。 この条約の適用上、「一方の締約国の居住者」とは、当該一方の締約国の法令の下において、住所、居所、事業の管理の場所その他これらに類する基準により当該一方の締約国において租税を課されるべきものとされる者をいう。ただし、一方の締約国の居住者には、当該一方の締約国内に源泉のある所得又は当該一方の締約国に存在する財産のみについて当該一方の締約国において課税される者を含まない。 【ドバイ所得税命令】 1条 全ての課税対象者の課税所得に対して、1969 年1月1日以降の各課税年度について、所定の税率による所得税を課す 2条3 課税対象者とは、直接であるか他の法人による代理を通じてであるかにかかわらず、課税年度のいずれかの時点において、ドバイに存在する恒久的施設を通じて取引又は事業を遂行し、かつ、ドバイ所得税命令に基づき課税される所得税債務を他の根拠に基づき免除されない法人であり、設立地は問わず、また、当該法人の全ての支店も含まれる 2条5 課税所得とは、課税対象者がドバイにおける取引又は事業の遂行に由来してドバイにおいて稼得した所得から、所定の控除を行った後の純所得をいう 2 争点 本件における争点は下記の3つであるが、以下において居住者該当性と恒久的施設帰属所得該当性を検討することとする。 3 当事者の主張と裁判所の判断 (1) 居住者該当性について ① 被告(税務当局)の主張 税務当局は、以下のようにOECDモデル租税条約のコメンタリーを参照して、住所等を基準として包括的租税債務を負う者を言うと主張している。 加えて、租税条約上の居住者該当性を判定する前提として居住者基準があると考え、UAE及びドバイにおける租税制度(※1)にはこの居住者基準が存在しないと持論を展開し、原告は本件条約に規定する居住者には該当しないと主張している(※2)。 (※1) 当時のドバイ法令において実際に租税を課されていたのは石油会社、ガス会社、石油化学会社又は外国銀行の支店等に限られていた。なお、UAEは2023年6月1日以降開始事業年度よりUAE内で設立登記された法人等に対する連邦法人税を導入している。 (※2) 当該解釈の結果として、国等を除けば本件条約の議定書2項で確認されたUAE側の6機関に限定されるとしている。 ② 原告(納税者)の主張 納税者は、その国の法令で包括的な所得課税の対象とされていれば良く、これで足りると主張している。 ③ 裁判所の判断 OECDモデル条約を参照しつつ、国内法で「居住者」と取り扱われる条件を定め、その条件を満たす納税者に無制限納税義務を課している場合を言うと結論づけている。 そして、ドバイ税制の特徴を以下のように分析し、全ての課税対象者の課税所得に対して所得税を課すことにしているがその法人の本店所在地等を問わないことを理由に居住者基準による課税で無いこと、また、その課税所得はドバイ源泉所得に限定して課税していることを指摘し、原告は本件条約における居住者に該当しないと判示した。 (2) 恒久的施設帰属所得該当性について ① 被告(税務当局)の主張 まず、日本の活動拠点内において、各種事務機器及び事務机等が設置されていること、本件代表者の指示を受けて業務を行っていた者の席が確保されていること、事務所内に設置されているパソコンやキャビネットには事業に関するデータや書類等が保管されていることを根拠に事業を行う一定の場所があると認定している。 次に、恒久的施設に帰属する所得の判定は、本件活動拠点における人的機能の有無、使用されている資産の有無、リスクの帰属を勘案して決せられると主張した。 ② 原告(納税者)の主張 日本において課税できる範囲は、国内にある恒久的施設に帰せられる部分のみであり、以下の通り、ドバイ本店は実体があり日本における事業内容に一定の関与があることを鑑みれば、日本の活動拠点に所得が100%帰属することは不合理であると主張した。 ③ 裁判所の判断 以下の事実関係から、国内の活動拠点を恒久的施設と認定している。 次に、恒久的施設帰属所得は、「第1に、・・・機能・事実分析によって、当該恒久的施設が引き受ける経済的に重要な活動及び責任を特定しなければならず、第2に、・・・移転価格算定の手段を類推適用して、擬制された企業間の内部取引の報酬を決定する」ことで算定することになると示した。 ((その2)へ続く)
【新基準対応版】 〈一から学ぶ〉 リースの会計と税務 【第1回】 「リースの定義」 〜“レンタル”や“購入”との違い〜 公認会計士・税理士 喜多 弘美 ◆◇◆◇◆◇連載開始にあたって◇◆◇◆◇◆ ~「リース」ってなに?~ 経理の仕事をしていると、「リース」という言葉を聞くことがありませんか? 「これはリースだから会計処理に注意してね。」 筆者が新卒で経理の仕事をしていた時、資料を持った上司からそう声をかけられました。 当時、筆者は固定資産の担当で、固定資産台帳の登録や固定資産に関する会計伝票を作成する必要がありました。 この記事を読んでくださっている方には、同じような経験をされている方がいらっしゃると思います。 本連載では、当時の筆者のようにまだリースになじみのない経理実務担当者の方やリース取引について一から学びたい方を対象に、リースの会計と税務の基礎を解説していく連載となっています。 リース会計は、2024年9月に企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」が公表され、話題になりました。「リースに関する会計基準」は、新リース会計基準と言われることが多いです。今回の連載では、今までの会計基準からの変更点も含めて、お伝えします。 まず、【第1回】となる今回は、リースの定義を確認し、レンタルや購入との違いを具体的に見ていきましょう。 1 リースの定義 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」の第6項では、リースを以下のとおり定義しています。 難しく書いてありますが、簡単に言うと、リースは「一定期間、お金と引き換えに、ものを使う権利をもらう/あげる約束」です。つまり、リースは、ものを所有している人と実際に使っている人が異なるという特徴があります。 ちなみに、民法第601条では、「賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる」と定義されています。リースは、民法上の賃貸借の一種としてイメージすることができます。 《リースの定義のイメージ》 2 リースとレンタルの違い 「リース」と「レンタル」は、一見すると同じ意味のように思えます。 確かにリースもレンタルも賃貸借取引になりますが、実は以下のような違いがあります。 このように、リースとレンタルの主な違いとしては、「物件を誰が選ぶか」と「契約期間の長短」が挙げられます。 特にリースは借手が物件を選択するため、借手以外の人が必要としない特殊な機械装置などが対象になることがあります。そうすると借手以外の人が必要としないため、リース契約満了時に借手が安く買い取る権利を最初からつけている場合もあります。 一方で、レンタルの場合は汎用性が高いものが多く、借手が使った後も他の人が必要としている場合が多いです。レンタカーやシェアサイクルがイメージしやすいでしょう。 3 リースと購入(銀行借入、割賦販売)の違い 次に、リースと購入の違いを見ていきましょう。両者の一番大きな違いは所有権が誰にあるかです。リースは貸手(リース会社)に、購入は買主に、それぞれ所有権があります。 《リースのイメージ》 《購入のイメージ》 特にリースとよく似ている購入方法は、割賦販売と銀行借入した資金で物件を購入する場合です。この3つはどれも、物件の耐用年数の全期間にわたり、物件使用者が対象物件を使用する可能性が高いです。また、支払いが一括ではなく一定期間にわたります。 具体的には、リースはリース会社に毎月定額を支払い、割賦販売では販売会社へ特定の金額を分割して支払い、銀行借入の場合は銀行から全額借入をした後に一定期間にわたり、銀行と決めた方法で借入金を銀行へ返済することがほとんどです。 割賦販売では、一般的に代金完済までは売主に所有権が留保されるため、所有権がリース会社にあるリースと少し似ています。ただ一方で、契約満了時の処理については、リースでは物件をリース会社へ返還するのに対し、割賦販売では所有権の留保が解除されて、所有権が買主に変わるのです。 また、銀行借入した資金で購入した場合とリースの大きな違いは担保の設定です。銀行借入では、銀行に担保を求められる場合がありますが、リースでリース会社に担保を設定することはほとんどありません。そのため、銀行借入の場合は担保物件の調査などで契約を締結するまでに時間がかかる一方、リースは比較的手続などが簡単で契約締結までの時間が短い傾向があります。 リース・割賦販売・銀行借入した資金で購入する場合は、上記のとおり、それぞれ違いがありますが、ファイナンス(資金調達)の意味合いを持つことが多いといえます。つまり、どれも自己資金で一括購入することが厳しい、又は、資金に余裕を持たせるためなど、資金繰りのために採用されるということです。 (了)