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相続税の実務問答 【第116回】「相続時精算課税を適用した贈与財産が無価値になった場合」

相続税の実務問答 【第116回】 「相続時精算課税を適用した贈与財産が無価値になった場合」   税理士 梶野 研二   [答] 相続時精算課税の適用に係る贈与者に相続が開始した場合、その贈与者から贈与により取得した財産で、相続時精算課税の適用を受けたものについては、その贈与者の相続開始までの間に、贈与を受けた財産の価額が減少し、あるいはその財産が消滅し又は無価値になったとしても、贈与時の価額を相続税の課税価格に加算又は算入しなければなりません。 ご質問の場合には、A社の株式の贈与を受けた時の価額3,000万円を相続税の課税価格に加算しなければなりません。   ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 相続時精算課税 (1) 相続時精算課税は、贈与時に、一定の贈与者(特定贈与者)からの贈与により取得した財産に対する贈与税を納め、その後、その贈与者が亡くなったときに、「相続時精算課税を適用した贈与財産の価額」と、相続又は遺贈により取得した財産の価額の合計額を基に算出した相続税額から既に納めた相続時精算課税に係る贈与税に相当する金額を控除した額を相続税額として納めることにより、贈与税と相続税を通じた一体的な課税を実現することができる課税方法です (2) この場合の「相続時精算課税を適用した贈与財産の価額」は、当該贈与財産の贈与の時における価額とされています(相法21の15①、21の16③、相基通21-15-2)。 このため、贈与を受けた後、その特定贈与者に相続が開始するまでの間に、贈与を受けた財産の価額が上昇したとしても、贈与を受けた時の価額を基に相続税を計算することとなりますから、この場合の贈与税と相続税の総合的な税負担は、当該贈与を受けた財産を相続まで待って相続によって承継するよりも有利となります。例えば、地価の上昇が見込まれる土地を地価が上昇する前に相続時精算課税を適用して贈与することにより、その贈与者に相続が開始した場合の相続税の負担を低く抑えることができます。また、親の有する取引相場のない株式を子に相続時精算課税により贈与することにより、その後、株式の贈与を受けた子の経営努力によって会社が成長し、株式の価額が上昇したとしても、贈与時の価額によって相続税が計算されることから、会社を成長させることにより自らの税負担が増加することはなくなりますので、子の会社経営に意欲がわくこととなります。 一方、相続税の課税価格に加算される金額が、贈与時の価額に固定されるため、贈与を受けた財産の価額が、贈与者の相続開始時までに下がったとしても、贈与時の高い価額を基に相続税が計算されることとなります。さらに、相続開始時までの間に、贈与を受けた財産が消滅し、又は無価値となってしまった場合であっても、贈与時の価額で相続税が計算されることとなりますので、税負担の軽減を狙って生前に贈与したとしてもそれが裏目に出ることとなります。 相続時精算課税を選択した場合には、このように納税者に有利となることもあれば、不利に働くこともあります。 (3) このような現象を引き起こす相続時精算課税は、贈与を受けた後、贈与を受けた者の判断と責任の下にその運用若しくは利用が行われることから、贈与を受けた財産の価額が、贈与を受けた後に増加し、又は減少したとしても、その結果は贈与を受けた者に帰属するとし、贈与者である被相続人から承継するものではないとする考え方が根底にあるといえます。 (注) 暦年課税贈与においても、加算対象期間内に行われた贈与については、贈与時の価額が相続税の課税価格に加算されることから、相続時精算課税を適用した場合と同様の現象が起こり得ます。従来は、暦年贈与における加算期間が贈与者の相続開始前3年以内でしたから、この間に、贈与を受けた財産の価額の変動幅もそれほど大きくはならず、あるいは贈与を受けた財産が消滅又は無価値になる可能性はそれほど高くはなかったといえます。令和5年度税制改正により、段階的に加算期間が延び、最終的には贈与者の相続開始前7年間になりますので、従来に比して、価額変動等の幅は大きくなり、贈与財産が消滅又は無価値になる可能性も高くなったといえますが、相続時精算課税における変動幅に比較すれば、その可能性はなお小さいといえます。   2 災害により相続時精算課税に係る財産の価値が減少した場合 相続時精算課税の利用件数は、制度の創設時に比して低迷しており、その原因として、贈与財産の価額が減少し、又はその財産が消滅し、若しくは無価値になったとしても贈与時の価額で相続税が計算されるリスク、とりわけ、贈与を受けた者に責任のない災害等によるリスクが指摘されていました。そのため、令和5年度税制改正において、相続時精算課税適用者が特定贈与者からの贈与により取得した土地又は建物が、令和6年1月1日以降に災害により一定の被害を受けた場合において、当該相続時精算課税適用者が税務署長の承認を受けたとき(災害発生日から3年を経過する日までに申請書を提出する必要があります。)は、当該特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算される土地又は建物の金額を、その贈与の時における価額からその災害により被害を受けた部分に対応するものとして計算した金額を控除した残額とすることができる制度(災害特例制度)が設けられました(措法70の3の3①、措令40の5の3⑤)。 この災害特例制度における災害とは、冷害、雪害、干害、落雷、噴火その他の自然現象の異変による災害及び鉱害、火薬類の爆発その他の人為による異常な災害並びに害虫、害獣その他の生物による異常な災害をいいます(措法70の3の3①、措令40の5の3①)。   3 質問の場合 相続時精算課税の適用に係る贈与者に相続が開始した場合、その贈与者から贈与により取得した財産で、相続時精算課税の適用を受けたものについては、原則として、贈与時の価額を相続税の課税価格に加算又は算入しなければなりません。 上記2の災害特例制度は、令和6年1月1日以後の災害による被害が生じた場合に適用され、その対象となる財産は土地及び建物に限られていますし、新型コロナ感染症の蔓延を原因とする会社の倒産は、上記の災害による被害でもありませんので、ご質問の場合には、この災害特例制度は適用されません。また、相続時精算課税に係る財産の価額の減少、その財産の消滅又は無価値化の原因が贈与を受けた者の責めに帰さないものであったとしても、この災害特例制度以外には贈与者に相続が開始した際に相続税の課税価格に加算又は算入する価額を減額することを認める規定はありません。 したがって、あなたがお父様からA社の株式の贈与を受けた時の価額3,000万円を、あなたの相続税の課税価格に加算しなければなりません。 相続時精算課税を選択しようとする場合には、その選択が、贈与税・相続税を通じた税負担の面で、有利になることもあれば、逆に不利となることもあり、大きなリスクを背負うものであることを十分に認識する必要があるといえます。 (了)

#No. 657(掲載号)
#梶野 研二
2026/02/19

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第90回】「株式譲渡と株式交換による買収スキームにおける低額譲渡による課税処分取消事件(東地令3.10.29)(その1)」~法人税法22条2項、25条の2、37条、130条~

〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第90回】 「株式譲渡と株式交換による買収スキームにおける 低額譲渡による課税処分取消事件(東地令3.10.29)(その1)」 ~法人税法22条2項、25条の2、37条、130条~   税理士 青木 幹     1 事案の概要 (1) Fら(F及びGをいう)及び上場内国法人H社は、内国法人E社(原告。平成18年8月に設立され、インターネット・携帯電話網等の情報処理通信網を利用したマーケティング・広告宣伝・商品の発注・物流・代金決済・管理等のサービス業務等を目的とする会社)を内国法人H社の完全子会社化するスキームについて基本合意をし、平成27年1月6日付けで覚書(以下、「本件覚書」という)を作成した。その後にFらは、平成27年2月設立の内国法人C社の全株式200株をC社の代表取締役から100株ずつ譲り受けて所有した【概要図①】。 ◆平成27年3月29日以前 【概要図①】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ※TAINZコード:Z271-13626の別紙【取引関係図】を参照のうえ、筆者作成(以下、同様) (2) 平成27年3月30日に外国法人D社は保有するE社株式の全部を内国法人C社へ12億1,000万円で譲渡(以下、「本件譲渡」という)した【概要図②】。 ◆平成27年3月30日【概要図②】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (3) 平成27年4月24日にFらは、J市場に上場している内国法人H社に対して株式交換によりC社の全株式200株を移転し、H社株式883,400株(13億1,538万2,600円相当)の移転を受けた【概要図③】。 ◆平成27年4月24日【概要図③】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (4) 平成27年11月●日に合併存続法人を内国法人E社とし、被合併法人を内国法人C社とする合併をし、E社の社名をA社に変更した【概要図④】。 ◆平成27年11月●日合併後【概要図④】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   2 当事者間の合意事項 上記事案の概要に記した行為は、以下の合意に基づいて行われた。 (1) 本件覚書(FらとH社の代表との間で締結)において、H社はE社の企業価値を30億2,000万円と評価し、同額の現金等価物のうち最低12億1,000万円は現金とするが、現金が最大となるように両者は努力し、現金部分は、D社を経由して引き渡すものとする。D社が保有するE社株について、Fらによって設立又は所有された会社(C社)が12億1,000万円でE社株式を取得し、その後、H社は、Fらが所有するC社株式とH社株式(18億1,000万円相当)を交換することにより、実質的にE社をH社の子会社にするものとする。 (2) 平成27年3月2日付け基本合意書を(H社、C社、D社、原告E社及びFらの間で)作成した。その要旨は以下のとおりである。 (3) 合意当事者は、C社株式及び本件E社株式の価値算定は収益還元法によることを基本とし、算定資料はC社及びH社が提出した事業計画及びその他の資料であることを確認する。基本合意締結日のC社株式の1株あたりの価値が1,248万6,203円から1,658万3,137円、本件E社株式の1株あたりの価値が843万7,622円から1,031万2,649円であることを相互に確認する。これらは第3者算定機関であるK株式会社により算定されたものである。合意当事者は、この算定に基づく株式価値により、株式交換比率及び譲渡対価を定めるものとする。 (4) 平成27年3月2日又は別途合意した日に、以下のとおり株式交換契約をH社とC社で締結する。H社を株式交換完全親会社、C社を株式交換完全子会社とし、C社株式1株につきH社普通株式4,417株を交付する。H社は、株式交換に際して88万3,400株を新たに発行する。株式交換効力発生日を平成27年4月24日とする。 (5) 平成27年3月30日をめどにC社とD社で株式譲渡契約を締結し、C社は本件E社株式の全部を譲渡対価12億1,000万円を上限にD社から譲り受ける。その他譲渡の諸条件は株式譲渡契約で定める。なお、本件譲渡が行われた平成27年3月30日のH社のJ市場の終値は1株あたり1,489円であった。 (6) 平成27年3月2日付けでH社及びC社は株式交換契約を締結し、平成27年4月24日を効力発生日とし、H社を完全親会社、C社を完全子会社とする株式交換を行った。H社は、FらにH社株式88万3,400株(Fらが保有するC社株式200株に交換比率4,417を乗じた株数)を割り当て交付した。   3 本件訴訟にいたる経緯 C社は、渋谷税務署長に対して平成28年1月24日に本件事業年度の法人税及び地方法人税について青色申告による確定申告書を期限内に提出した。平成30年7月27日付けで行政処分庁はC社分の本件確定申告について、本件更正処分及び賦課決定処分を組織再編成により権利義務を引き継いだA社(旧社名E社)に対して行った。 A社による平成30年10月25日付けの本件処分の取り消しを求めた再調査の請求は、平成30年12月17日付けで東京国税局長により棄却され、令和2年3月2日付けの国税不服審判所での裁決を経て、A社は令和2年9月1日に東京地方裁判所に提訴した。 なお、【概要図③】に示す株式交換及び【概要図④】に示す合併により本件の原告は株式を譲り受けたC社ではなく、C社の権利義務を引き継いだE社(名称変更によりA社)となっている。   4 争点   5 争点1に関する原告の主張 (1) 本件譲渡は、基本合意書に基づいて本件株式譲渡と株式交換を順次行ったものであり、本件E社株式の譲受けと株式交換はスキームの中で一体として行われたものであって、個別に行われたものではない。本件株式の対価12億1,000万円とFらが株式交換によるH社から移転を受けたH社株式88万3,400株(当時の時価13億1,538万2,600円)の取引は一体であり、C社がD社に対して支払った12億1,000万円に加えて、C社D社に13億1,538万2,600円(Fらが移転を受けたH社株式88万3,400株の時価と同額)を加えた金額を支払わなければならないということはあり得ない。C社からD社に13億1,538万2,600円の贈与があったとする本件更正処分の事実認定は誤っており違法である。 (2) 被告の主張は、法人税法22条2項の受贈益の額は、資産が低額譲渡された場合には、常に資産の対価と適正な価額の差額が益金の額に算入されるという解釈を前提にしているが、このような解釈は誤っている。受贈益の額は、資産の対価と適正な価額との差額のうち「実質的に贈与を受けたと認められる金額があるとき」に限られると解される。資産の低額譲渡を定めた法人税法37条8項は、資産の対価と適正な価額との差額のうち、「実質的に贈与(中略)をしたと認められる金額」のみが寄附金となると規定し、同様に、資産の低額譲受け等における受贈益の額について定めた法人税法25条の2第3項も、資産の対価の額のうち「実質的に贈与(中略)を受けたと認められる金額」のみが受贈益の額とされている。 (3) 以上から「実質的に贈与を受けたと認められる金額」は、「全契約の内容」に従って判断されるべきであり、株式交換がされたから、「実質的に贈与をされた金額」はなく、C社には受贈益の額はない。   6 争点1に関する被告の主張 (1) 法人税法22条2項は、当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資本等取引以外の収益の額である。同項にいう「資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受け」は資本等取引以外の取引の例示であり、それゆえに同項は、「資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のもの」に関わる収益の額を益金の額に算入していると解される。資産の低額譲受けの場合であっても、当該資産の適正な価額に相当する経済的価値の実現が認められることは、無償資産の譲受けと同様であるから、当該資産の適正な価額に相当する価値が収益の額として益金の額に算入されるべきである。  本件に関する第三者機関の評価は、36億円を上回るとされており、この評価が不合理であるとする理由も見当たらないことに加えて、本件各合意当事者において、本件株式の価額が25億2,538万2,600円(本件対価の額12億1,000万円+H社株式88万3,400株に1,489円を乗じた金額13億1,538万2,600円)と評価されていたことからすれば、本件株式の適正な価額は、25億2,538万2,600円を下回るものではなく、同金額を適正な価額とみることに合理性がある。  したがって、本件対価の額12億1,000万円は、本件株式の適正な価額25億2,538万2,600円に比して低額であるから、本件譲渡は低額譲渡に当たり、対価と適正な時価の差額13億1,538万2,600円は受贈益の額に当たり、本件事業年度の益金の額に算入されるべきである。 (2) 原告は本件スキームにおける本件株式譲受けと本件株式交換とは一体の取引であって、各取引において本件株式の時価に相当する25億2,538万2,600円で取引されているから、各取引者が贈与をしたり贈与を受けたりすることはないと主張するが、本件株式譲受けと本件株式交換は、取引の当事者、取引の対象となる資産及び取引形態が異なり別々の取引である。原告が指摘する法人税法25条の2第1項は、内国法人が当該内国法人との間に完全支配関係のある他の内国法人から受けた受贈益について、益金の額に算入しない旨を規定し、同条3項は資産の対価の額との差額のうち「実質的に贈与(中略)を受けたと認められる金額」のみが受贈益の額になるとする根拠に上記を主張するが、同項は、あくまで内国法人が他の内国法人との間に完全支配関係のある場合に、同条1項において不算入とされる受贈益についてその額を定めているに過ぎない規定であって、同法22条2項にいう「別段の定め」に該当するものである。このような特則の規定から溯って、益金算入に関する一般規定である同項の解釈を導き出すことは相当でない。 (3) 原告は、法人税法22条2項の解釈について、資産の低額譲受けがあった場合に、益金の額に算入すべき受贈益の額は「実質的に贈与を受けたと認められる金額」に限られると主張するが、そのように限定する理由はない。仮に原告の主張するように「実質的に贈与を受けたと認められる金額」に限られるとしても、上記のとおり本件株式の譲受けにより13億1,538万2,600円の差額が出ている以上、当該差額が「実質的に贈与を受けたと認められる金額」に該当する。 (4) したがって、本件対価の額と適正な価額との差額13億1,538万2,600円は、受贈益の額にあたり、益金の額に算入されるべきであるから、原告の主張には理由がない。 ((その2)へ続く)

#No. 657(掲載号)
#青木 幹
2026/02/19

〈経理部が知っておきたい〉炭素と会計の基礎知識 【第17回】「リスク管理の開示 ~リスク・マネジメントのプロセスをわかりやすく示す」

〈経理部が知っておきたい〉 炭素と会計の基礎知識 【第17回】 「リスク管理の開示 ~リスク・マネジメントのプロセスをわかりやすく示す」   公認会計士 石王丸 香菜子   〔ジャーナル食品社の登場人物〕 *  *  * SSBJ基準では、企業がサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する開示を行うにあたり、次の4要素を開示することが求められます(【第14回】参照)。 企業は、さまざまな不確実性(リスク)に直面しています。こうしたリスクを把握・評価し適切に対応するために企業が設ける体系的なプロセスは、リスク・マネジメントと呼ばれます。上記の「リスク管理」は、サステナビリティ関連のリスク・マネジメントについての開示を求めるものです。 *  *  * *  *  * 【(株)ニッスイ 2025年3月期有価証券報告書】 (第2 事業の状況 2【サステナビリティに関する考え方及び取組】 より抜粋) *  *  * *  *  * サステナビリティ関連のリスクは単独で存在するとは限らず、他のリスクと密接に関わることもあります。そのため、これらのリスクを総合的なリスク管理体制の中で把握・評価・対応することが不可欠です。 情報利用者である投資家も、サステナビリティ関連のリスク・マネジメントが全社的なリスク・マネジメントにどのように組み込まれているかにも大きな関心を寄せていると考えられます。 *  *  * 【イオンモール(株) 2025年2月期有価証券報告書】 (第2 事業の状況 2【サステナビリティに関する考え方及び取組】より抜粋) (第2 事業の状況 3【事業等のリスク】より抜粋) *  *  * なお、有価証券報告書の【事業等のリスク】欄の記載にあたっては、リスクの重要性や経営方針・経営戦略等との関連性の程度を踏まえわかりやすく説明することが求められています。リスクの重要性(マテリアリティ)をどのように判断しているかの説明や、リスクを把握し管理する体制・枠組みについての説明も含めることが望ましいとされています(※)。 (※) 金融庁「記述情報の開示に関する原則」参照 サステナビリティ関連財務開示の「リスク管理」は、一定要件を満たせば、こうした【事業等のリスク】などの箇所の記載を参照する形をとることもできると考えられます。 *  *  * *  *  * 【リスクの評価を説明する際に利用される図表のイメージ】 *  *  * *  *  * 4つのコア・コンテンツのうち「リスク管理」の開示は、企業がサステナビリティ関連のリスクや機会をどのように識別・評価・優先順位付け・モニタリングしているのか、そしてそれが全社的なリスク・マネジメントにどのように組み込まれているのかを伝える情報です。 「ガバナンス」(【第15回】参照)や「戦略」(【第16回】参照)と合わせて開示されることで、サステナビリティ関連のリスク・マネジメントの全体像を伝える役割を果たします。 *  *  * Q サステナビリティに関するリスク管理についてどのような開示をするの? A サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別・評価・優先順位付け・モニタリングするプロセスと、それが全体的なリスク・マネジメントにどのように統合されているかについて開示します。サステナビリティ関連のリスク・マネジメントの全体像を伝える役割を担っています。 (了)

#No. 657(掲載号)
#石王丸 香菜子
2026/02/19

連結会計を学ぶ(改) 【第15回】「子会社の資産及び負債の評価」

連結会計を学ぶ(改) 【第15回】 「子会社の資産及び負債の評価」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 連結貸借対照表の作成にあたっては、支配獲得日において、子会社の資産及び負債のすべてを支配獲得日の時価により評価することになる(「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号。以下「連結会計基準」という)20項)。 今回は、資本連結に関する子会社の資産及び負債の評価について解説する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 子会社の資産及び負債の評価 1 全面時価評価法 支配獲得時における資本連結の手続には次のものがある(「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(移管指針第4号。以下「資本連結実務指針」という)3項)。 連結会計基準は、連結貸借対照表の作成にあたっては、支配獲得日において、子会社の資産及び負債のすべてを支配獲得日の時価により評価する方法(全面時価評価法)により評価するとし、「全面時価評価法」を規定している(連結会計基準20項)。 時価により評価する子会社の資産及び負債の範囲については、部分時価評価法と全面時価評価法とが考えられる(連結会計基準61項、資本連結実務指針57項)。 前述のように、連結会計基準では「全面時価評価法」だけを採用している。 なお、持分法を適用する関連会社の資産及び負債のうち投資会社の持分に相当する部分については、部分時価評価法により、原則として投資日ごとに当該日における時価によって評価する(連結会計基準61項)。 2 時価 資本連結実務指針は、子会社の資産及び負債の時価評価額について、原則として市場価格等に基づく評価額とするが、子会社の株式取得時に、個々の貸借対照表項目について、当該株式の売買契約等により取得側と売却側との間に合意された評価額が存在し、かつ、それらに合理性がある場合には、当該金額によることができると規定している(資本連結実務指針12項)。 3 評価差額 子会社の資産及び負債の時価による評価額と当該資産及び負債の個別貸借対照表上の金額との差額(評価差額)は、子会社の資本になる(連結会計基準21項)。 これに関して、資本連結実務指針は、連結貸借対照表の作成に当たっては、支配獲得日において、取得した株式に係る子会社の資産及び負債を時価により評価し、この時価評価額と当該資産及び負債の個別貸借対照表上の金額との差額を資産及び負債の帳簿価額の修正額(以下「時価評価による簿価修正額」という)として計上するとともに、その純額を「評価差額」として子会社の資本に計上すると規定している(資本連結実務指針11項)。 時価評価による簿価修正額が税効果会計上の一時差異に該当する場合、当該一時差異について繰延税金資産又は繰延税金負債を計上し、当該税効果額は法人税等調整額に計上せずに直接評価差額から控除することになる。したがって、評価差額の残高は当該税効果額を控除した後の金額となる(資本連結実務指針11項)。 なお、評価差額に重要性が乏しい子会社の資産及び負債は、個別貸借対照表上の金額によることができる(連結会計基準22項)。この場合の重要性の有無は、個々の貸借対照表項目の時価評価による簿価修正額ごとに判断する(資本連結実務指針13項)。 親会社の子会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本については、投資と資本の相殺消去の資本連結手続が行われる(連結会計基準23項、24項)。 資本連結手続において相殺消去の対象となる子会社の資本の額は、以下の①及び②に③の項目を加えた額となる(以下の金額はいずれも当期までの期間に課税された法人税等及び税効果額控除後の金額である。資本連結実務指針9項)。 資産及び負債の時価評価の結果生じた評価差額は、個別貸借対照表の資本に計上されても投資と資本との相殺消去により消去され、又は非支配株主持分へ振り替えられて連結貸借対照表の資本には計上されない(資本連結実務指針57項)。 具体的な会計処理は、資本連結実務指針の「設例10 資産の売却により評価差額が実現した場合」を参照していただきたい。 4 時価評価による簿価修正額及び評価差額の計上後の処理 次の会計処理が行われる(資本連結実務指針25~29項、64項、設例10、「金融商品会計に関するQ&A」Q75)。   (了)

#No. 657(掲載号)
#阿部 光成
2026/02/19

給与計算の質問箱 【第74回】「青色事業専従者の給与計算」

給与計算の質問箱 【第74回】 「青色事業専従者の給与計算」   税理士・特定社会保険労務士 上前 剛   Q 今月、個人事業主として開業しました。妻に月額10万円の青色事業専従者給与を支給するため、所轄の税務署に青色事業専従者給与に関する届出書を提出しました。給与計算についてご教示ください。 A 以下、解説する。 * * 解 説 * * 1 雇用保険 同居親族は、原則として雇用保険に加入できない。 例外として以下の①~③をすべて満たす場合は雇用保険に加入できる。   2 社会保険(健康保険、介護保険、厚生年金保険) 従業員が常時5人未満の個人事業所や法定17業種以外の個人事業所は、社会保険の適用対象外の事業所とされる。常時5人以上の個人事業所や法定17業種の個人事業所は社会保険の適用対象とされるが、個人事業主の家族は原則として社会保険の被保険者にはならない。 例外として以下の①~④をすべて満たす場合は社会保険の被保険者になる。   3 源泉所得税 甲欄で源泉徴収する。他の勤務先に給与所得者の扶養控除等申告書を提出している場合には乙欄で源泉徴収する。その場合であっても、その年を通じて6ヶ月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、青色申告者の営む事業に専ら従事するという青色事業専従者給与の要件は満たす必要がある。   4 支給について 未払の場合は必要経費に算入できないとされる。   5 具体例 月額10万円―源泉所得税0円(甲欄)=10万円を振り込み、または、現金手渡しする。 (了)

#No. 657(掲載号)
#上前 剛
2026/02/19

《税理士のための》登記情報分析術 【第33回】「所有不動産記録証明制度がスタート」~制度の概要と既存制度との比較~

《税理士のための》 登記情報分析術 【第33回】 「所有不動産記録証明制度がスタート」 ~制度の概要と既存制度との比較~   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   2026年2月2日から法務局において、特定の個人や法人が所有する不動産を一覧的にリスト化した証明書を発行する「所有不動産記録証明制度」(以下、「本制度」という)がスタートした。 本制度は2024年4月1日から相続登記の申請が義務化されたことを受けて、被相続人が所有する不動産の調査を容易にすることを目的としてスタートした制度であるが、活用の余地は広く税理士実務にも影響を与えると思われる。 本稿では、所有不動産記録証明制度の概要や既存制度との比較について解説を行う。   1 本制度の創設理由 所有者不明土地問題の解消のため、2024年4月1日から相続登記の申請が義務化され、相続や遺贈により不動産の所有権を取得した相続人等は、不動産を相続等で取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をする必要がある。正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処することとされている。 相続登記を漏れなく行うことは意外に難しく、どれだけ不動産調査に力を入れても被相続人が所有する不動産の一部が漏れてしまうことがあり、意図せず期限を徒過してしまう事例も生じうる。そこでできるだけ不動産調査を容易にするために本制度が創設された。   2 他の制度との比較 これまでも不動産調査には様々な制度が利用されてきたが、本制度との比較は次のとおりである。 (1) 名寄帳 本制度とよく似た制度として「名寄帳」の制度がある。これは市町村が固定資産税の課税のために個人や法人が所管の区域内に所有する不動産を取りまとめた帳簿である。名寄帳はあくまで作成した市町村に存在する不動産のみが記載されるのに対して、本制度は日本全国に存在する不動産が対象になるという違いがある。 (2) 固定資産納税通知書 固定資産納税通知書も不動産の調査資料として活用されてきた。毎年市町村の方から郵送がなされるため入手しやすい資料であるといえる。 しかし1月1日時点の所有者に通知がされるため、1月2日以降に取得した不動産は記載がされない。また共有の不動産の場合は、特定の共有者に通知がされ他の共有者には届いていないこともある。これに対して本制度は交付の請求を行い、法務局が検索を行った時点の不動産が記載されることになる。   3 本制度の概要 本制度の利用方法などの概要は、次のとおりである。 (1) 請求ができる者 証明書の交付の請求ができる者は、所有権の登記名義人やその相続人等である(法人を含む)。司法書士に請求を依頼することも可能である。 (2) 請求方法等 証明書の交付の請求は、全ての法務局に対してすることが可能である。請求方法は書面又はオンライン請求で可能であるが、オンライン請求の場合は印鑑証明書等の必要書類もオンラインで提供する必要があり事実上書面によることがほとんどであると思われる。なお、書面にて請求を行う場合は郵送で請求することも可能となっている。 請求から証明書の交付までは一定の期間を要することになるため、個別に請求先の法務局に問い合わせる必要がある。 【証明書交付までの流れ】 (※) 検索条件とは、検索に必要となる住所や氏名等の情報である。現在の住所・氏名だけではなく過去の住所や氏名を検索条件として指定することで、住所等の変更登記が終わっていない不動産でも検索することが可能となる。  法務局では一定のルールのもと検索を行い、検索条件と合致するものについて選定し、証明書に記載する。 (3) 必要書類 証明書の交付の請求を行うにあたって、必要となる書類は次のとおりである。なお、いずれも原則として原本の提出が必要となる。 【所有権登記名義人が請求を行う場合の必要書類】 1―1 印鑑証明書(発行期限なし) 1-2 本人確認書類の写し(運転免許証、マイナンバーカードなど) 2 過去の住所や氏名を検索条件とするときは、その証明となる戸籍証明書や住民票の写しなど   1-1、1-2はいずれか一方が必要となる。ただし、1-2については窓口で原本の提示が必要になる。 所有権登記名義人の相続人等が請求する場合には、上記の【所有権登記名義人が請求を行う場合の必要書類】に加えて次の書類が必要になる。 【相続人その他の一般承継人が請求を行う場合の必要書類】 1 所有権登記名義人との相続関係を証明する戸籍証明書など 2 被相続人等の過去の住所や氏名を検索条件とするときは、その証明となる戸籍証明書等   このほか、代理人によって請求を行う場合は委任状が必要となる。 (4) 手数料 証明書の交付に必要となる手数料は次のとおりである。 (1つの検索条件につき1通当たり) (5) 受領方法 証明書の受領方法は、窓口での受領と郵送による受領が選択できる。郵送による受領の場合は請求の際に返信用封筒と切手の提出が必要となる(オンライン請求を除く)。 【所有不動産記録証明書のひな形】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (了)

#No. 657(掲載号)
#北詰 健太郎
2026/02/19

税理士が知っておきたい不動産鑑定評価の常識 【第74回】「売買の対象地が複数の筆の一部にまたがる場合」

税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第74回】 「売買の対象地が複数の筆の一部にまたがる場合」   不動産鑑定士 黒沢 泰   1 はじめに (資料1)のように、売買の対象地が隣接する他の複数の土地(筆)の一部にまたがり、しかも分筆がされていない状態で売買契約を締結することがあります。また、このような状態を前提(所与)として土地価格を評価することもあります。 (資料1) 売買の対象地が複数の筆(それぞれの一部)にまたがる場合 今回は、このようなケースを前提とする売買契約の考え方を中心に述べ、その場合の評価条件についても言及したいと思います。   2 拠り所となる最高裁判例 判決が下された時期は相当遡りますが、一筆の土地の一部の売買を可能とならしめる考え方の拠り所となるものとして最高裁昭和30年6月24日判決(裁判所ホームページ:裁判例情報、民集9巻919頁)があげられます。 判決の要旨は以下のとおりです。 このような方法が容認される理由として、次のような考え方が背景にあるものと推察されます。 ちなみに、民法第176条には以下の規定が置かれています。 すなわち、一筆の土地の一部であっても、その範囲が特定されていれば、譲渡の意思表示により所有権は買主に移転するという趣旨です。ただし、そのままの状態では物権の取得を第三者に対抗(主張)することはできず、対抗手段としては当該部分を分筆の上、所有権移転登記をしなければならないことはもちろんです(下記条文参照)。   3 過去の判例の推移 参考までに、判例は、古くは一筆の一部についての所有権時効取得を否定していたが(注1)、後にこれを改め(注2)、その後に取得時効以外の取引についても一筆の一部の所有権移転を認めるに至り、最高裁もこれを踏襲することを明らかにしている(注3)との解説があります(注4)。 (注1) 大審院大正11年10月10日判決、民集1巻575頁。 (注2) 大審院連合部大正13年10月7日判決、民集3巻509頁。 (注3) 本稿で紹介している昭和30年6月24日判決。 (注4) 大塚明「一筆の一部の土地の所有権移転請求訴訟 仮処分と本訴と分筆登記との関連」『神戸学院法学』第41巻第3・4号(2012年3月)、105頁~106頁。なお、(注1)から(注3)の出典も当該資料によっています。   4 重要事項説明書や売買契約書の作成にあたって 通常の場合、一筆の土地の一部について売買および所有権移転を行う際には、これに先立って分筆登記が行われます。しかし、なかには本稿で紹介しているようなケースもあります(筆者も実際にこのような取引を経験したことがあります)。 そのため、宅地建物取引業者が作成する重要事項説明書や売買契約書においては、対象物件の表示に関してそれなりの留意が必要となります。 例えば、測量図(ただし、該当部分の測量が済んでいる場合)や概略図面に売買対象土地の範囲を明確に印した上で、かつ、対象物件の表示(所在)の欄に、 というような記載をすることが求められます(またがる筆が複数ある場合は、それぞれの地番につき上記の要領で記載を行います)。(資料2)はその一例です。 (資料2) 売買契約書における記載例 仮に、売買契約後に正確な測量を実施する約定となっている場合には、重要事項説明書や売買契約書に記載した面積と相違が生じた際の売買代金の精算方法を定めておくことも重要です(例えば、契約書に記載された単価を用いて差額を精算する等の方法です)。 なお、既に述べてきたとおり、売買契約前に対象部分の分筆登記を行わず契約手続きを進めることは可能ですが、その流れが煩雑となるほか、所有者の異なる隣接地との境界査定の段階で予期しない紛争が生ずることもあり得ます。 このような事情を踏まえれば、できる限り売買契約の前に分筆登記を済ませ、確定した地番や面積を前提とした上で契約を締結することが望ましいといえます。   5 対象地が複数の筆の一部にまたがる場合の鑑定評価を行う場合 不動産鑑定士が(資料1)のような土地の鑑定評価を行う際には、例えば次のような評価条件(対象確定条件)を付しているのが通常です。 (了)

#No. 657(掲載号)
#黒沢 泰
2026/02/19

〈税務ライター・鈴木まゆ子の〉『ここがヘンだよ日本の税制』【第2回】「法的安定性とは何か?ひんぱんな基礎控除の改正がもたらす弊害とは」

〈税務ライター・鈴木まゆ子の〉 ここがヘンだよ日本の税制 第2回 法的安定性とは何か? ひんぱんな基礎控除の改正がもたらす弊害とは 税理士・税務ライター 鈴木 まゆ子   2回目のテーマは、前回に引き続き「基礎控除」です。 そうおっしゃる方もいるかもしれません。今回は基礎控除そのもの、というよりも繰り返される基礎控除の改正について扱います。 令和7年度・令和8年度と立て続けに基礎控除が改正されました。税の実務の現場からは「またか・・・」「ソフト対応、大丈夫かな」というため息が漏れます。 しかし、この基礎控除の相次ぐ改正がもたらす弊害は、実はそれだけではないのです。   令和7年度に続いて令和8年度も改正された基礎控除 皆さまがすでにご存じの通り、基礎控除は令和7年度に続いて令和8年度も税制改正の対象となりました。具体的には次の通りです。 ●基礎控除(所得税法部分) 令和7年度税制改正では、これまで最大48万円の所得控除だったのが10万円加算されて58万円となりました。同時に、所得制限の階段が1つ増えました。 【令和7年度改正後の基礎控除額の図】 これがしばらく続くかと思いきや、令和8年度税制改正で「最大58万円控除」がプラス4万円の「最大62万円控除」となりました。 【令和8年度改正後の基礎控除額の図】 ●基礎控除(租税特別措置法部分) 令和7年度税制改正では、初めて、租税特別措置法(以下「措置法」)に基礎控除の上乗せ部分が定められました。内容は「合計所得金額132万円以下は令和7年分以降ずっと基礎控除が37万円上乗せされる」というもの。それを超えると上乗せ額は減少し、合計所得金額655万円で打ち止めとなります。しかも、合計所得金額132万円超655万円以下については「2年間限定の上乗せ」でした。 令和8年度税制改正では、この措置法による上乗せ部分にもメスが入りました。令和7年分とまとめると、次のようになります。 合計所得金額 基礎控除の上乗せ額 令和7年 令和8年・9年 令和10年以降 132 万円以下 37 万円 42 万円 37 万円 132 万円超 336 万円以下 30 万円 0 円 336 万円超 489 万円以下 10 万円 489 万円超 655 万円以下 5 万円 5 万円 (※) 合計所得金額655万円超は基礎控除の上乗せは0円 2年限定ではありますが、42万円という上乗せが合計所得金額489万円以下なら受けられる、という形になったわけです。 所得税法・措置法それぞれの基礎控除を合わせて図にすると、次のようになります。 【基礎控除(所得税法+措置法) 令和8年・9年】 【基礎控除(所得税法+措置法) 令和10年以降】 このように政治家の方々は誇るわけですが、税務の現場と確定申告をする国民は混乱することが必至です。 そして、令和8年度税制改正大綱には、次のような一文がさらっと書かれていました。 引用元:令和8年度税制改正大綱|自由民主党ほか 要は「長年『38万円』『48万円』で固定されていた基礎控除を今後はこまめに見直していく」ということです。大綱の他の部分に目を向けると「所得税法部分だけでなく、措置法部分も定期的な見直しの対象とする」とあります。 生存権に由来する課税最低限の金額が物価変動の影響を受けることを考えれば至極当然な対応です。しかし同時に、法的安定性の見地から考えると、心配な点がいくつもあります。   法的安定性とは? 目的は「国民の自由と自律」 税務のテーマになると「法的安定性」という用語が出てきます。この法的安定性は、参議院での過去の答弁書の中で、次のように説明されています。 引用元:第193回国会(常会)答弁書第一六五号|参議院 そして現在、法学において、法的安定性は次の4つの側面から分析されています。 構成要素 内容 侵害された場合の状態 明確性 法規範の意味内容が一義的で明瞭であること あいまいで漠然とした法令により国民が不当に萎縮する 予見可能性 自己の行為がどのような法的評価を受けるか、事前に予測できること 突発的な規制強化や解釈変更で不意打ちを食らう 継続性 法秩序が時間的に連続しており、頻繁な変更がないこと 過度な法改正で国民が混乱する、事務負担が過重になる 信頼保護 既存の法に基づく個人の信頼が保護されること 遡及立法による権利はく奪   青色申告を期限内に行わないと65万円・55万円の特別控除が一律10万円になる ⇒ 「じゃあ期限までにがんばって間に合わせよう、そうしたら税金が安くなる」と国民が自ら期限までに自主申告しようとする 税理士法で税理士の独占業務が定められているだけでなく、税理士自身にも品位保持や法令遵守が求められている ⇒ 国民「ここまで法律で業務と違反行為が規定されている税理士なのだから、信頼して相談したり申告を依頼したりできる」 つまり、法令のありようや解釈が安定していることで、国民は自分の国の法体系を信頼するのみならず、自由かつ自律的に経済活動や社会生活を送ることができるというわけです。 しかし、基礎控除が今回立て続けに改正されたということ、そして今後も頻繁に見直されるということは、継続性の観点から法的安定性が担保できなくなるということにつながります。そのため、国民そして税の実務の現場に、次のような混乱が生じると思われます。   基礎控除の相次ぐ改正がもたらす主な弊害 ●還付申告・更正の請求・修正申告で混乱する 「施行当時の法令で申告などは行うもの」と認識しているのは、専門家だけです。一般の国民のほとんどは、そこまでの認識を持っていません。そして、3年前の医療費控除で還付申告しようとするケースも珍しくありません。このとき、現行法令の基礎控除額で間違った還付申告をしてしまうおそれが生じます。会計事務所もうっかりミスをしかねないポイントです。 ●税務署の負荷が増大する 基礎控除が頻繁に改正されれば、当然、確認する側の税務署の負荷も増えます。e-Taxが浸透してきたとはいえ、確認しなければいけない場面がゼロになるわけではないからです。適用時期を間違えれば一発アウトです。 このほか基礎控除が上がることにより、これまで受けていた所得控除を申告しなくなり、結果、住民税が発生して企業の総務や会計事務所、市区町村の窓口への問い合わせが増える可能性があります。 生存権に由来する基礎控除を、生存権を左右する物価変動に合わせてスライドしていくのは一見理想的です。しかし、理想を求めすぎるとかえって国民生活を混乱させるおそれがあります。 混乱させる税制はやがて国民から信頼を失ってゆきます。税制を信頼しなくなれば、国民から法令遵守の意識が薄れてゆきます。 そんな未来だってありうるのです。   基礎控除の相次ぐ改正は総則6項より致命的 そうおっしゃる方もおいでかと存じます。ご指摘はごもっともですが、いずれも基礎控除と決定的に違う点があります。それは「どれだけの多くの国民が深くかかわりをもつか」です。 住宅借入金等特別控除は「借金して家を買う世帯」しか関わりません。しかも初回の確定申告だけ心配していれば済む話です(実際は買った後も気にしないといけませんが)。 総則6項は、法的安定性・予測可能性という点で重要なテーマです。しかし実際に影響を受けるのは一部の富裕層に限られると思われます。 一方、基礎控除は国民全員にかかわりのあるものです。しかも税理士に依頼するまでもない、あるいは依頼するほど資力のない国民にも影響します。結果、相次ぐ改正は国民の混乱を誘発すると考えた方が自然です。 「e-Taxがあるから大丈夫」と思われるかもしれませんが、e-Taxはあくまで作業を簡素にするだけです。国民の税制への理解を簡素にするものではありません。 そして日本の税制は、主権者である国民の理解があってこそのものです。 国民にもっともかかわりの深い制度が頻繁に変えられ、結果、税制が国民のものではなく、ごく一部の為政者のものになってしまう・・・私はこれをもっとも懸念しています。 (了)

#No. 657(掲載号)
#鈴木 まゆ子
2026/02/19

《速報解説》 会計士協会、株主総会前の適切な情報提供に関する発出等を受け、一体書類に対する監査報告書の文例について再度検討を行い、実務ガイダンス案として新たに取りまとめ

《速報解説》 会計士協会、株主総会前の適切な情報提供に関する発出等を受け、 一体書類に対する監査報告書の文例について再度検討を行い、 実務ガイダンス案として新たに取りまとめ   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2026年2月17日、日本公認会計士協会は、「監査基準報告書700実務ガイダンス「事業報告等と有価証券報告書の一体書類に含まれる財務諸表等に対する監査報告書に係る実務ガイダンス(2026年版)」(公開草案)」公表し、意見募集を行っている。 これは、2021年8月に公表されたものを改正するものであり、確定版公表は2026年4月下旬を予定しているとのことである。 意見募集期間は2026年3月17日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 適用範囲 実務ガイダンスは、現行の法制度下における一体書類に対する監査報告書の文例について検討し、各種の文例を示している。 一体書類とは、一つの書類により、計算書類、事業報告(これらの附属明細書が含まれるときはこれらの附属明細書を含む)及び連結計算書類並びに有価証券報告書を作成する場合における当該書類をいう(3項)。 2 適用される財務報告の枠組み 一体書類においては、表示及び開示に関する財務諸表等規則等及び会社計算規則の両方が適用されることとなる(4項)。 一体書類に含まれる財務諸表等(財務諸表及び連結財務諸表並びに計算書類(その附属明細書が一体書類に含まれるときは附属明細書を含む)及び連結計算書類をいう)に対して監査を行う場合、監査人は、現行法制度下においては、金融商品取引法及び会社法のそれぞれの財務報告の枠組みが同時に適用されるものと考えている(5項)。 キャッシュ・フロー計算書は、会社法及び会社計算規則において開示対象及び監査対象とされないことから、監査報告書上も、その点が明確になる文例を示している。 3 一体書類に含まれる財務諸表等に対する監査報告書と内部統制監査報告書の一体作成 有価証券報告書提出会社が金融商品取引法及び会社法に基づき一体書類を作成する場合であっても、財務諸表監査に係る監査報告書と内部統制監査報告書を一体的に作成することを妨げる理由が見当たらず、そのため、実務ガイダンスにおいては一体的に作成することとしている(7項)。 (了)

#阿部 光成
2026/02/18

プロフェッションジャーナル No.656が公開されました!~今週のお薦め記事~

2026年2月12日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.656を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2026/02/12
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