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税務判例を読むための税法の学び方【30】 〔第5章〕法令用語(その16)

税務判例を読むための税法の学び方【30】 〔第5章〕法令用語 (その16)   税理士 長島 弘   10 期限や期日を示す表現 (① 「以前」と「前」、「以後」と「後」) 【第27回参照】 (② 「期限」「期日」「期間」、③ 期間計算に関する国税通則法の定めと民法、④ 「・・・から・・・まで」)【第28回参照】 (⑤ 時をもって定める期限、⑥ 期限の特例と各種消費税の届出書、⑦ 国税通則法第10条第2項の期限の特例に関するその他注意点)【前回参照】 ⑧ 期間計算が過去にさかのぼる場合 期間の計算が、過去にさかのぼる場合には、その起算日が丸1日として計算できる場合を除き、その前日を第1日として過去にさかのぼって計算する。 その例として、国税徴収法第38条(事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務)を見てみよう。 この条文は、国税を滞納している納税者から一定の範囲の者が1年以内に資産を譲渡されている場合の第二次納税義務を定めたものである。そしてこの1年以内というのは、当該税額の法定納期限の前日より起算して1年を計算する。そして1年以上であるから、1年ちょうども含まれるため、1年前の応当日における譲渡も1年以上前の範囲に含まれることになる。 なお前回、国税通則法第10条第2項の期限の特例に関する注意点として、「「国税に関する法律に定める」「申告、申請、請求、届出その他書類の提出、通知、納付又は徴収」に関する期限」であるから、単に計算の基準となっている期間の末日や課税内容を定める際に基準となる期間の末日、一定事実の判断の基準としている期間の末日はこれに該当しない。」と書いた。上記国税徴収法第38条の内容はこれに該当するため、上記1年はこの応当日が休日であっても変更されない。 ⑨ 「経過する日」と「経過した日」 期限(期間の末日)を示す法令用語で、「経過する日」というのがあり、またそれと似た語として「経過した日」がある。 「経過する日」は、応当する日の午後12時までをいい、「経過した日」は「経過する日」の翌日の午前零時から午後12時までをいう。 「経過する日」の使用例として、国税通則法第35条(申告納税方式による国税等の納付)第2項第2号を見てみよう。 すなわち、更正又は決定があった場合には、更正通知書に更正により納付すべき税額として記載された金額又は決定通知書に納付すべき税額として記載された金額については、更正通知書又は決定通知書を発した翌日から起算して1月を経過する日が納期限となる。仮に3月15日に発せられたものならば、3月16日が起算日となり1月を経過する日は4月15日となる。 では次に、「経過した日」の使用例として、国税通則法第63条(納税の猶予等の場合の延滞税の免除)第6項第3号を見てみよう。 この条文は、災害等により国税が納付できない事由が生じた場合に、災害等が発生した日から消滅までの期間及びその後の7日間に対応する延滞税を免除するものである(なおこの災害等により納付できないという意味は、国税の納付行為そのものができないことを意味し、災害等により資金が不足して納付できない場合は含まれない)。 すなわち、災害等が発生した日からこれらの災害等が止んだ日以後7日を経過した日に対応する日数の分の延滞税を免除する旨の規定であるが、この期間の最終日をどう解釈するかにつき説明する。 すなわち、延滞税の免除期間に関する計算の起算日ではなく、最終日を確定するための起算日は、「その事由が消滅した日」であるから、災害等が消滅した日である。そしてその「以後」であるから、災害等が消滅した日を含んで「7日を経過した日」となる。例えば3月1日に災害が収まったならば、その3月1日を含んで7日「経過する」のは3月7日であり、7日経過した日は「3月8日」である。 したがって、3月8日までの分が、延滞税の免除される期間となる。 (了)

#No. 59(掲載号)
#長島 弘
2014/03/06

実務対応報告からみた「従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引」(日本版ESOP)の取扱い 【第1回】「対象となるスキーム」

実務対応報告からみた 「従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引」 (日本版ESOP)の取扱い 【第1回】 「対象となるスキーム」   公認会計士・税理士 大矢 昇太 公認会計士 中村 真之     1 はじめに 企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成25年12月25日に実務対応報告第30号「従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い」を公表し、いわゆる「日本版ESOP」について会計上の取扱いを示した。適用は平成26年4月1日以降に開始する事業年度の期首からとされているが、早期適用も認められている。 本稿では平成26年3月期の決算を目前に控え、本実務対応報告の概要について解説する。なお、文中の意見に関する部分は私見であることをあらかじめ申し添えさせていただく。   2 本実務対応報告を公表した経緯と対象となる取引 (1) 経緯 ESOPとは、正式には、「Employee Stock Ownership Plan」(従業員による株式所有計画)の頭文字であり、企業拠出による従業員に対する退職時雇用者株式給付制度を指す。もともと米国で発祥した制度であり、米国では、Employee Retirement Income Security Act(ERISA:従業員退職所得保障法)およびInternal Revenue Code (I.R.C.:内国歳入法典)において定義され、制度の租税法上の適格性要件が厳格に定められた適格退職金・年金制度であり、確定拠出型年金信託の一形態とされており、広く諸外国においても米国と同様の法制度が存在している。 これに対して、日本においても、ESOPと同じように、従業員または従業員持株会(以下「従業員等」という)に信託等を通じて自社の株式を交付することで、従業員が最終的に自社の株式を取得することができるようにスキームが考案されてきた。 しかし、いわゆる日本版ESOP(以下「日本版ESOP」という)は、法的には自己株式を用いるため会計処理に会社法が関連するものの、資本に関する会社法の取扱いについて明確になっていない点があり、また、会計処理についても、信託に関する会計処理について、「連結財務諸表における特別目的会社の取扱い等に関する論点の整理」(企業会計基準委員会 平成21年2月6日)の脚注10において、総額法によることが定められているものの、会計基準ではないため規範性はなく、また、そもそも、スキーム全体として拠って立つ会計基準が示されていなかった。 そのため、日本版ESOPの適用事例が増加してくると、スキームの種類や、どこを重視するかによって会計よりにばらつきが出るようになったことから、従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引の会計処理等について、現状の実務を整理し、当面、必要と考えられる実務上の取扱いを明らかにするため、本実務報告書が公表された(第1項)。 (2) 対象となる取引 本実務対応報告の対象となる取引の類型としては、「従業員への福利厚生を目的として、従業員持株会に信託を通じて自社の株式を交付する取引」(第3項)、「従業員への福利厚生を目的として、自社の株式を受け取ることができる権利(受給権)を付与された従業員に信託を通じて自社の株式を交付する取引」(第4項)を以下のとおり示している。 【第3項の取引】   第3項の取引は、概ね以下から構成される。 【第4項の取引】 第4項の取引は、概ね以下から構成される。 日本版ESOPについては、前述のとおり多種多様なスキームが考えられているため、取引の内容が、ここに記載された内容と大きく異ならない場合に、本実務報告書の対象となるかどうかについて、混乱が生じることを避けるため「概ね以下から構成される。」と表現されている(第25項)。 本実務対応報告の目的は、当面、必要と考えられる実務上の取扱いを示すことで、会計処理のばらつきを縮小することが目的であるため、本実務対応報告の対象範囲は典型的なものに限定することとしている(第26項)。 したがって、信託契約の内容が直接的に本実務対応報告に示されていないスキームによる場合、取引内容について本実務対応報告に定めるものであるかどうかを判断し、適切に実態を反映する会計処理方法を検討する必要があると考える。 また、従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引は、会社法や金融商品取引法、信託法、労働法等に基づく制度や規制等の対象となると考えるが、脚注1に記載されているとおり、本実務対応報告では取引の法律的な解釈を行うことを目的とはしていないため、取引の法的有効性については、必要に応じて法律専門家の関与を検討することも必要と考える。 (了)

#No. 59(掲載号)
#大矢 昇太、中村 真之
2014/03/06

企業担当者のための「不正リスク対応基準」の理解と対策 【第1回】「不正リスク対応基準の設定背景と不正リスクの想定」

企業担当者のための 「不正リスク対応基準」の理解と対策 【第1回】 「不正リスク対応基準の設定背景と不正リスクの想定」   公認会計士 金子 彰良   不正リスク対応基準の設定を契機に、企業では組織内の不正を阻止する風土の醸成と不正リスクの観点からリスク・コントロールの再評価が求められている。【第1回】では、不正リスク対応基準をめぐる現状把握として、不正リスク対応基準の設定背景と不正リスクの想定について解説する。   《不正リスク対応基準の設定背景》 平成25年3月に企業会計審議会は「監査における不正リスク対応基準」(以下、「不正リスク対応基準」という)を公表した。これは、2011年に発覚した上場企業の不正による有価証券報告書の虚偽記載の事案をきっかけに審議・設定されたものであるが、背景にはここ数年、過去に発生した不適切な会計処理により過年度に提出した有価証券報告書などの訂正事案が頻発している事情もある。これらの事案においては、結果として会計監査が有効に機能しておらず、より実効的な監査手続を求める指摘があるとともに、職業的専門家としての懐疑心の重要性が再認識されている。 このような状況の下、企業統治のあり方や不正に加担する外部協力者の行為の是正・予防、さらに検査・モニタリングの強化と並んで、会計監査のあり方も見直され、不正リスク対応基準の設定に至っている。 すなわち、不正リスク対応基準は、監査人が不正リスクを適切に評価し、評価した不正リスクに対応するために適切な監査手続を実施して監査の有効性を確保しようとしたものであり、これにより日本市場の透明性・公正性を確保し、投資家が信頼して投資できる環境を整備することを目的に設定されたものである。   ところで、不正リスク対応基準の内容だけを見れば監査人の問題であると思われるかもしれない。企業側はこの基準の中で何の行為者にも定義されていないため、監査を受ける立場として質問対応などに影響は限定されるという見方もある。しかし、基準設定にあたり市場から求められているのは「財務報告の信頼性の確保」であり、その前提としての「不正及び不正による重要な虚偽表示の排除」である。したがって企業側の努力なくして対応することはできない。 もし、今回の不正リスク対応基準の設定の意味合いを監査の有効性確保として監査人の問題と捉えるならば、不正発生の抑止効果としては限定されたものになるだろう。 重要なのは企業側が当事者意識を持つこと、すなわち、不正の発生を防止する組織風土の醸成や不正対策、不正発見時に被害を最小限に留めるための対応策を講じ、株主及び投資家に対して信頼性ある財務報告を作成・公表するのは企業の責任であるという意識を強く持つことである。   (不正)リスクは潜在的なものである。したがって意識して、「そこに(不正)リスクがあるかもしれない」と思わない限り、その存在を認識することはできない。筆者は、前述の「不正及び不正による重要な虚偽表示の排除」を望む市場の声は、企業に対して「不正があるかもしれない」という意識の持ち方を高めるよう訴えていると考える。 それでは、具体的に企業は不正リスク対応基準の導入を受けてどのように対応すべきであろうか。 一般的に不正リスクのように将来起こるかもしれない潜在的な課題に取り組むときは、次の4つに分けて検討する。 これらのうち本連載では、 企業がとるべき不正リスクへの対応として、「不正があるかもしれない」という意識の持ち方と関連が強い①~③について、企業内で内部統制を推進するまたは評価する立場にある担当者向けに解説をしていきたい。   《不正リスク想定》 監査人が財務諸表の監査において対象とする重要な虚偽表示の原因となる不正には、「不正な財務報告」と「資産の流用」がある。 前者の不正な財務報告は、財務諸表の作成の基礎となる会計記録や証憑類の改竄・偽造を行うことによって、架空売上・水増し仕入・評価損回避・簿外債務・費用繰り延べなど、財務報告自体を歪めることを目的として行われる。経営者や上位管理者による内部統制の枠外で引き起こされることも少なくなく、発見が難しいため過去の不正が発覚して、複数年度の財務諸表等の訂正が必要になるといったように、財務諸表の重要な虚偽表示につながる可能性が高い。 一方、後者の資産の流用は、個人が会社の現預金・有価証券・棚卸資産等を流用し、それを隠蔽・偽装して利益を得ること自体を目的に行われる。財務報告を歪めること自体を目的としているわけではないが、結果的に不正が発覚するまでの期間は財務報告が歪んだ状態となる。経営者や上位管理者が不正に関与する場合、損害が多額にのぼることもあるが、従業員による資産の流用では比較的少額の損害となる傾向にある。 今回の不正リスク対応基準において、監査人が注力するのは財務報告の重要な虚偽表示を及ぼす不正であることから、基準の内容は主に前者の不正な財務報告を念頭においたものとなっている。   自社においてどのような不正が発生するかを事前に想定することは難しいかもしれない。実際に事件が起きてから、「まさか自社で不正が発生するとは」と驚くように、性善説に立つことの多い日本企業においては、なかなか現実味がないからである。 そこで、未経験の仕事をするときに経験者の話を聞いたり、事案を調べたりするように、ここでも一般にどのような不正が発生しているのか、実際に発生した不正事案を知っておくことが有用となる。 前述したように、不正リスク対応基準において、監査人が注力するのは財務報告の重要な虚偽表示につながる不正である。このような観点から、自社においてどのような不正リスクが想定されるかを検討するにあたって、一般的に入手可能で、参考になるのが金融商品取引法の内部統制報告制度において公表されている「開示すべき重要な不備」の事案である。 内部統制報告制度では、内部統制の不備について、財務報告に及ぼす影響が質的または量的に重要な場合、内部統制報告書上で開示すべき重要な不備があり内部統制は有効でないとの評価結果を記載する。本来、この開示すべき重要な不備は、潜在的な虚偽表示リスクを評価して、経営者の許容可能な水準と比較して判断される。しかし実際には、通期の内部統制報告書は有効との評価結果を記載していたにもかかわらず、後になって過去の誤謬または不正による虚偽表示が顕在化することがある。このような場合、その誤謬又は不正が内部統制の不備(開示すべき重要な不備)に起因していると判断して、訂正内部統制報告書で内部統制は有効でないと評価結果を訂正するケースが多い。 つまり、財務報告の重要な虚偽表示を及ぼす不正の事案を知る方法の一つとして、内部統制報告書の評価結果で開示すべき重要な不備を記載した企業のうち、過去の不正が原因となっている事案を分析することが有効と考えられる。   そこで下の図表では、2013年1月から12月に内部統制報告書(通期の内部統制報告書および訂正内部統制報告書の両方を含む)において、開示すべき重要な不備(重要な欠陥)があり内部統制が有効でないとする評価結果を開示した企業のうち、不正が原因となっているものを抽出した。 昨年1年間の実態をみると、開示すべき重要な不備という財務報告の重要な虚偽表示につながる不正のほとんどが「不正な財務報告」であったことがわかる。 【図表】不正が原因となった開示すべき重要な不備(クリックすると別ウィンドウでPDFが開きます) (内部統制報告書、訂正内部統制報告書、各社公表資料より筆者にて作成) (*1) 影響額は、調査報告書などに記載された財務諸表の訂正額のうち純資産への影響額などを記載(会計監査手続が完了前の金額あり)。 (*2) 会社として仕入水増しに関連した資産の流用(キックバック)の事実があったことの疑義は払拭できないものの、確証は得ていないとしている。 これら事案を見る中で特筆すべきことは、不正な財務報告の虚偽表示の影響は、期間・金額の両面で非常に大きなものになるということである。 上記図表の対象ではないが、昨年7月に上場廃止した株式会社クロニクル(JASDAQ)の評価損を回避した不正事案でも総額1,622百万円の影響額(営業貸付金等、営業出資金、預け在庫の損失)が出ている。 上記はどのような不正が発生するか(不正リスク想定)として、2013年1月から12月に発生した不正な財務報告の事案のみを見ているが、その期間的・金額的な影響の大きさを鑑みると、投資家が信頼して投資できる環境の整備が重要になっているのが十分理解できる。また、企業としても、失墜した社会的な信頼を回復させるには長い期間が必要で、事業面への影響も計り知れない。 *   *   * 次回は、不正リスクを識別するための不正リスク要因の検討の重要性について解説する。 (了)

#No. 59(掲載号)
#金子 彰良
2014/03/06

設備投資減税を正しく活用して強い企業をつくる~設備投資における管理会計のポイント~ 【第5回】「「設備投資の経済性計算」を理解する」

設備投資減税を正しく活用して強い企業をつくる ~設備投資における管理会計のポイント~ 【第5回】 「「設備投資の経済性計算」を理解する」   公認会計士・税理士 若松 弘之   〈「設備投資の経済性計算」の理解〉 設備投資の意思決定をレベルアップするためには、管理会計の重要論点である「設備投資の経済性計算」を十分理解しておく必要がある。 この手法の、主なポイントは次のとおりである。 もちろん「設備投資の経済性計算」は絶対的なものさしではなく、最終的な投資可否の判断の有力な一材料であり、その他の影響やリスクを幅広に検討して判断すべきことはいうまでもない。 以下では、上記のポイントについて順に説明していくこととする。   〈「利益」概念から「キャッシュ・フロー」概念へ〉 設備投資を検討するうえで必ず理解しておかなくてはならないのは、「投資の採算性はキャッシュ・フローで考える」ということである。 これは企業や事業全体にもいえることであり、結局、事業の成果とは「調達したキャッシュ」(インプット)と「獲得したキャッシュ」(アウトプット)の差額がいくらだったのかという点に尽きる。 仮に、企業が誕生してから清算されるまでに稼いだキャッシュをすべて企業内部に留めていたならば、清算時に残るキャッシュは、その間の事業に関わるインプットとアウトプットの差額になるはずである。 そして、その途中経過としてのキャッシュの運用状態や、キャッシュにつながる「利益」の獲得状況を、「事業年度」という区切りで表したものが、貸借対照表や損益計算書となる。 また、一連のキャッシュの流れを「営業活動、投資活動、財務活動」の視点で表したものがキャッシュ・フロー計算書である。 大切な点は、貸借対照表の「資産」や損益計算書の「利益」も、最終的にはキャッシュとして回収されなくては意味がないということである。   〈設備投資と減価償却の関係〉 設備投資と減価償却は密接な関係にあるが、損益計算書や貸借対照表に影響を与える減価償却について、あらためてその役割を確認してみたい。 通常、設備は数年間にわたって稼働することで収益を生み出すため、本来その資産価値の消費も数年間にわたるはずである。それにもかかわらず、設備を購入した初年度に一括で費用処理したらどうなるだろうか。 購入初年度については、それほど売上は伸びないことが多いのに対して、購入額がすべて費用になるため、大きな損失となるだろう。 一方、翌年からは、設備はフル稼働しているにもかかわらず、まったく費用が発生しないため、逆に大きな利益が発生することになるだろう(下図参照)。 また、購入時一括費用処理の結果、2年目以降も明らかに価値を持ち続ける設備資産の帳簿価額がゼロになってしまう。 これでは本当の経営成績や実態が分からず、利害関係者である株主や債権者などは、経営状態の良否や先行きについて適切な判断ができなくなってしまう。   したがって、損益計算書や貸借対照表を通じて、適切に経営成績や財政状態を把握するために減価償却はなくてはならない会計処理なのである。   〈減価償却と税金の関係〉 経営成績や財政状態の実態把握という面以外にも、減価償却には「稼いだキャッシュを企業の内部に留めおく」という機能がある。 これは減価償却費が税務上、課税所得から減算される(損金算入される)ことによって、減価償却費に税率を掛けた金額が税金として外部流出することを防ぐというものである(下図参照)。 結果的に設備投資額がすべて減価償却された段階で、その額に見合うキャッシュが企業内部に貯まっていることになり、それが新たな設備投資の資金源になるのである。 これを「減価償却の自己金融」効果という。 もしも、設備を廃棄するまで、減価償却費が損金算入できないならば、減価償却相当額はすべて課税所得になってしまい、設備投資額に税率を掛けた金額は、納税という形で社外に流出してしまい、再投資や設備更新の資金繰りに重大な影響をもたらすことになる。 これまでの解説で「設備投資」「減価償却」「利益」「キャッシュ・フロー」「税金」の関係を明確に理解しておく必要性が分かってもらえたであろうか。 とかくあいまいな意味を含む「節税」については、単に「一時点の納税額を少なくすること」ではなく、「損金前倒しによる投資資金の早期回収効果」と本質的に理解しておくべきである。 そうすれば、早期回収した資金を別の投資に回したり、財務運用したりすることにこそ節税効果があることが明らかになるであろう。 設備投資の検討においては、「投資資金をどのくらいの期間で回収し、投資期間にわたりどの程度の正味キャッシュ・インフローが得られるのか」という点にこそ軸足を置くべきである。   〈キャッシュの時間的価値〉 「設備投資の経済性計算」を考えるうえで、もう1つ理解しておくべき重要な概念として、「キャッシュの時間的価値」がある。 これを理解するため、次の問いに答えてもらいたい。 直感的に、 と考える人も多いと思う。 このような考えには、自分の中に暗黙の前提をおいている場合が多い。すなわち、 という考えである。しかし一方では と思う人もいるかもしれない。 少し意地悪な質問であったが、この問いに対する答えは、各人のキャッシュに対する時間的価値やリスク判断によって変わってくる。 この問いでは、返金リスクはないという前提をおいているため、経済性の観点から厳密に検討すると以下の答えになる。 ここで大事なポイントは以下である。 「設備投資の経済性計算」を行うためには、設備投資後、将来にわたりどのようにキャッシュ・フローが増えるのかという投資効果を見積もらなければならない。 この「将来キャッシュ・フロー」の見積りに関していえば、5年後に100万円回収するよりも、1年後に100万円回収できた方が有利ということになる。 なぜなら、5年後の100万円の価値よりも、1年後の100万円の価値の方が高いからである。 したがって、「将来キャッシュ・フロー」の見積りについては、回収期間にわたる総額もさることながら、どの年度でいくらキャッシュ・フローがあるのかを合理的に見積もることが重要である。 今までの点をまとめると、「設備投資の経済性計算」の前提として必要な情報は次のとおりである。 *   *   * 次回からは「設備投資の経済性計算」の代表的な4つの手法について、1つずつ解説を行っていく。 (了)

#No. 59(掲載号)
#若松 弘之
2014/03/06

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第35回】消費税に関する会計処理①「税抜方式と税込方式」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第35回】 消費税に関する会計処理① 「税抜方式と税込方式」   仰星監査法人 公認会計士 大川 泰広   〈事例による解説〉 〈会計処理〉 ① 税抜方式の場合 (*1) 9,000×5%=450 (*2) 10,000×5%=500 ② 税込方式の場合 (*3) 9,000+9,000×5%=9,450 (*4) 10,000+10,000×5%=10,500 〈会計処理の解説〉 消費税は、事業者が国内で行った資産の消費又はサービスの提供に対して課せられる間接税です。消費税は、事業者が負担するものではなく、事業者が販売する商品やサービスの価格に含まれて次々と転嫁され、最終的に資産の消費又はサービスの提供を受けた消費者が負担します。 上図に示したとおり、生産、流通、小売の各段階で発生した「納付税額」の合計と、消費者が負担すべき消費税額は一致します。あくまで、事業者は消費者が負担すべき消費税を、消費者に代わって納付しているにすぎません。 税抜方式では、事業者が消費税を負担しないという事実に着目して、取引から発生する消費税をその都度「仮払消費税等」、「仮受消費税等」で処理し、消費税を損益に含めないようにしています。一方、税込方式では、会計処理の簡便性を重視して、税込の取引金額で仕訳を行います。したがって、税込方式を採用した場合、消費税が損益に含まれることとなります。 消費税は、消費者が負担するものであって、事業者は消費者の代わりに消費税を納付しているにすぎません。したがって、会計上は、損益に影響を及ぼさない税抜方式を採用することが適当とされています。 *   *   * 次回は、期末決算時の会計処理について解説します。 (了)

#No. 59(掲載号)
#大川 泰広
2014/03/06

過年度遡及会計基準の気になる実務Q&A 【第5回】「特別損益項目」

過年度遡及会計基準の気になる実務Q&A 【第5回】 「特別損益項目」   公認会計士 阿部 光成   《解 説》 過年度遡及会計基準に基づいて解説を行う。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 特別損益項目 「企業会計原則」注解12では、特別損益項目について次のように規定している。 特別損益項目は、臨時損益項目と前期損益修正項目の2つから構成されている。   Ⅱ 過年度遡及会計基準 1 過年度遡及会計基準の規定 過年度遡及会計基準では、過年度における引当金過不足修正額などについて、次のように取り扱っている(過年度遡及会計基準55項)。 前述のように、「企業会計原則」注解12は臨時損益項目と前期損益修正項目を規定しているが、このうち過年度遡及会計基準55項により、前期損益修正項目としての取扱いが認められないこととなる。 一方、臨時損益項目は従来どおりの取扱いということになる。 2 財務諸表等規則等の改正 平成22年9月30日の「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第45号)により、財務諸表等規則等が次のように改正されている。 このため、現在、財務諸表等規則等においては、前期損益修正項目に関する規定はないことになる。ただし、特別損益項目の規定は従来どおりなので、特別損益項目自体がなくなったわけではない。 【財務諸表等規則の改正】 【財規ガイドラインの改正】 (了)

#No. 59(掲載号)
#阿部 光成
2014/03/06

会社を成長させる「会計力」 【第7回】「経営情報システムの構築(SIGMA21プロジェクト)はどうやって成功をつかんだか(後編)」

会社を成長させる「会計力」 【第7回】 「経営情報システムの構築(SIGMA21プロジェクト)は どうやって成功をつかんだか(後編)」   島崎 憲明   私が関わった経営システム構築(SIGMA21プロジェクト)が成功した下記7つの要因について、前回に続き、今回は⑤から詳しく検証したい。   《進捗管理と予算管理の徹底》 プロジェクトの推進体制は、担当役員・部長の下に次のチームを組成し、各チームには複数のサブチーム(プロジェクトの最小単位)が作られた。 サブチームレベルで15を超えるジョブが同時に進行しており、1つのサブチームの遅れが全体の遅れにつながる。 これを全員が認識していることが、まず重要となる。 プロジェクトの遅延がプロジェクト予算にどう影響するのか、具体的な数値を示すことで各員のコストマインドを高めた。 つまり、「1日の遅れは、20百万円のコストインパクトがある」と伝えたのである。 全体の投資計画を4年で割るとこの金額になるが、抽象論ではなく、これだと誰でもが遅延によるコストインパクトをよく理解できる。 進捗管理の徹底に関しては、担当役員(CIO)出席の下、週次の進捗会議を次のような形で実施した。 進捗遅れの原因を早期に把握し、適切な対応を指示するのはプロジェクトリーダーの重要な役割となる。ある程度進んだ作業を白紙に戻し、一から、別な方法でやり直すなどという決断は、トップでなければできない。チームリーダーレベルでは「既にお金もかかっているから何とかしたい」という思いが強く、これが命取りになる場合がある。 このような路線変更の決断は、現場状況の十分な把握なくては難しい。下からの段階を踏んだ報告を受けているだけでは、情報がタイムリーに上がってこないこともあり、判断の遅れにつながる。 なお、進捗の遅れがベンダーの作業遅れに起因する場合の対応も極めて重要である。約束した通りに進んでいないため、プロジェクト全体の進みに影響が出てきた時、どう対応するかだ。技術的なトラブルやマンパワー不足などが遅延原因となる場合が多いが、双方の現場レベルでの対応では打開できないことがある。 このような場合、タイミングを見計らって、トップ同士の話し合いを持つことが必要だ。 私の経験では、ベンダーのドイツ本社に出かけトップと打ち合わせしたケースが数度あった。南アフリカでの会議の後、ベンダーのトップと打ち合わせするため、ドイツまで北上し、同じ週に真夏と真冬を体験したこともあった。 そこまでしてでも、トップ同士の話し合いは、計画通りプロジェクトを進める上で、極めて効果があったと思う。   《あらゆる角度からのコミュニケーション》 次に、成功要因の⑥「各層にわたるコミュニケーションを早い段階から実施したこと」である。 システム開発はチーム員1人1人に明確な業務目標と作業指示が与えられているので、個々人にとって、特にコミュニケーションをとる努力をしなくても最低限の仕事はできる。 しかしながら、発生した問題が、チーム内の他の仕事に影響が出てくような場合や、チームを超えた影響が出るような時には、その早期解決に、プロジェクト内のタテ・ヨコのコミュニケーションが欠かせない。 紙による情報共有に加え、フェース・トゥ・フェースのコミュニケーションをチーム内、チーム間で日次、週次で行ったが、これがチームワークを強化し、総合力発揮につながったと思っている。 さらに、チーム間だけでなく、システムのユーザーや経営幹部とのコミュニケーションも重要となる。 そこで、20~30名単位での部課長懇談会を開き、プロジェクトのビジョンや進捗状況を説明し、情報共有に努めた。プロジェクト主催の懇談会もあれば、経営計画説明会などに相乗りして開いたものなどを入れると数十回は開催したはずである。このコミュニケーションを通して、このプロジェクトが「全員参加による全社プロジェクト」と認識されつつあるとの手ごたえを強く感じた。 さらに、プロジェクトの進捗状況をシステム担当役員自ら取締役会や経営会議で定期的に説明することも必要である。 「システム屋」とか「経理屋」などと言われる専門家は、専門用語を多用するため、簡単なことでも難しい話になってしまうきらいがある。これでは、経営トップの理解とサポートが得られるはずもない。 そこで、トップへの報告では、予定通り進捗しているという話よりも問題点や課題を中心に行うこと、専門的な言葉は使わず、できるだけ平易に説明することが大事なポイントとなった。 また、ベンダー各社やシステム開発協力会社との各層でのコミュニケーションは、プロジェクトの円滑な進捗には欠かすことができないが、中でもトップ同士のダイレクトコミュニケーションは特に重要である。   《着眼大局、着手小局》 要因の7つ目である「着眼大局、着手小局」は、中国の古典「荀子」にある言葉である。 これは、物事を大局的な見地からみて構想を練り、実践は目の前の小さいことを積み重ねて事を成す、という意味である。 システム開発ではプロジェクトビジョンの明確化、すなわち、経営目標に沿ったシステム開発ビジョンを確立して全社で共有することが、プロジェクト成功の大きなカギであるが、「大きく考えて、小さく進める」ことが大事だと思っている。 プロジェクトの確実な推進は、地道な仕事の積み重ねであり、縁の下の力持ち的な仕事を疎かにせず、1人1人がきっちりと役割を果たしてこそ達成できるのである。 新春の箱根大学駅伝でも東洋大学が「その1秒を削り出せ」との合言葉で完全優勝したが、1人1人が1秒を削り出す努力が勝利に結びついたのだろう。 システム開発も同じである。総論的には立派な目標を掲げても、勝負は各論であり、地道な努力で決まると思っている。 私が手掛けた経営情報システムの構築においては、地味ではあったが、コード体系の統一化作業が、プロジェクトの成否を制するものであった。勘定科目、取引先、商品のコードを統一するために、全社の関連組織を巻き込んでの大仕事になった。取引先コードだけでも15万を超える数である。レガシーシステムにおいては、親子会社、国内外で使用するコードが統一されていなかった。共通化した基幹系システムをまず親会社本体に導入し、それを順次、国内外事業子会社での共通システムへと展開するには、コード体系の見直しと統一が不可欠であった。 これにより、新システムの目標であった運用コストの削減や連結ベースでの経営情報の提供が可能となったのである。   《結果としてのコスト・ベネフィットは?》 新経営情報システムがフル稼働したのが2004年4月であるから、ようやく10年経ったことになる。その間、ERPパッケージのバージョンアップ費用などが必要ではあったが、大きな追加投資はなかった。 住友商事は2011年3月期から会計基準をIFRSに変更したが、情報システムの手直しや追加投資はほとんど不要であったので、IFRS導入に要した費用は10億円までかからなかったとのことである。300億円のシステム投資ではあったが、10年間で償却すれば年間30億円である。 その間のシステム共通化・スリム化による運用費の削減や計画立案時に掲げたビジネスへの活用などの目標が達成されているから、10年間というスパンで考えると、費用対効果は十分に見合う投資であったと考えている。 (了)

#No. 59(掲載号)
#島崎 憲明
2014/03/06

私が出会った[相続]のお話 【第3回】「ベテラン税理士の思い込み」~60年間知らなかった後妻の真実~

私が出会った[相続]のお話 【第3回】 「ベテラン税理士の思い込み」 ~60年間知らなかった後妻の真実~   財務コンサルタント 木山 順三   〔後妻の相続〕 Aさんは某メーカーの役員として活躍され、その後退任されてからは自ら「100歳まで生きる!」と宣言され、97歳の時を迎えられました。 ただし、Aさんは若くして先妻と死に別れ、後妻とは約60年間にわたる夫婦生活を送られてきました。 Aさんは先妻との間に子供一人を儲け、後妻との間においては子供がありませんでした。 そこで後妻は、先妻との間の子供と養子縁組を取り交わしました。 実はAさんの後妻も約60年前、名家出身の夫と死に別れ、Aさんと再婚しました。 後妻と先夫の間にも子供はなく、後妻には先夫から相続した多額の固有の財産がありました。 したがって万一後妻が亡くなった場合は相続手続が必要で、相続人は夫Aさんと養子一人ということになります。 そんな時、Aさんよりも歳の若い後妻が亡くなりました。 相続の開始です。 Aさんは現役時代から付き合いのあった元国税局出身の税理士を、退任後も自分の顧問税理士として契約していました。そこで、今回の相続手続についても信頼できる彼に任せることになりました。 なお、相続財産の遺産整理手続などについて私は、銀行の「遺産整理業務契約」にてお手伝いする旨を申し入れたのですが、Aさん自身が 「ボケ防止のため、できるだけ自分でする」 と言われ、お断りになられました(結果的にこれが間違いのもとだったのですが・・・)。 それからかなり経ってから・・・   〔養子がもう一人!〕 ある時、私のもとにAさんが来られました。 「相続税の申告書も税理士先生から提出していただき、残るは納税手続のみとなりました。妻名義の預金を解約し納税していただけませんか?」 というご依頼です。 必要書類を預かり念のため相続人等の確認を行った後、できるだけ早く納税手続することを約束しました。 税理士先生が作成された相続税の申告書の控えを拝見し、相続人が2人となっているのに疑問を感じませんでしたが、戸籍謄本を一から溯りチェックしていたところ、一部連続性が途切れていて、最終確認に至りませんでした。 「Aさん、一部謄本の書類が足らないのですが・・・」 と言いますとAさんは、 「そんなことはない! 税理士さんがちゃんと確認し、現にそれで既に申告書も提出して税務署にも受け取ってもらっている」とのこと。 そこでAさんの了解のもと、足りない分を取り寄せることにしました。 取り寄せた書類を見るまでは「念のための作業」と安易に考えていました。 ところがなんと・・・Aさんの妻には別に養女が存在し、その養女はすでに亡くなっていて、代襲相続人に当たる方が一人(女性)おられるではありませんか! 驚いた私は、すぐにAさんへ連絡しました。 「Aさん、奥様はAさんと再婚なさる前、ある方と養子縁組をされ、既にその方は亡くなっており代襲相続人が一人おられます。何かそのようなことを聞いておられませんか?」 Aさん曰く、 「60年間子供がいることなんか一切聞いていない!・・・ただ、妻が前の家を出る条件として先夫の親戚が、『このままでは名家を継ぐ者がなくなる。こちらで探した人を家督相続させるので了解してくれ』と言われたと、言っていたことがあったなぁ・・・」 家督相続・・・そうです。 昭和22年5月2日の相続までは、戸主(戸籍上の家の長)すなわち基本的には長男が相続することとなっており、本件の場合、先夫亡き後Aさんの妻が戸主になっていたわけです。 したがって推測するに、Aさんの妻もあくまで再婚するための形式上の問題で、自分に養女がいるとは思っていなかったに違いありません。 でも、戸籍上は厳然とした事実でAさんの妻には養子がいて、結果として代襲相続人が存在するのです。 どうしてベテランの税理士先生はチェックされなかったのでしょう。 当然のことながら銀行として出金手続することはできず、あらためて書類の完備をお願いしました。 そして、新たな相続人との遺産分割協議交渉の難しさから、 「Aさん、できれば専門家である弁護士を通じて話された方が良いと思いますよ。何ならご紹介もいたしますから」 とお伝えしたのです。   〔先妻の養女の婿が・・・〕 それからしばらく経って、銀行の企業担当役員から連絡が入りました。 実は「先妻の養女の婿」が銀行の大切な取引先である某会社の役員で、「大変お節介なことをしてくれた!」と怒っておられるので、謝りに行ってほしいというのです。 正しい法定相続人を探し出し、場合により「遺産に係る基礎控除額の法定相続人増による税額減」に寄与した私が、なぜ怒られなければならないのでしょう。 きっと彼は「新たな相続人」の出現により、彼の妻の取り分が減ると思ったに違いありません。 いよいよ“半沢直樹”の出番です。 たとえお客様とはいえ、法律を無視するわけにはいきません。 養女の婿の会社で、私は銀行の役員に対し、 「君は本当に正式な法的手続を無視して出金するのか? それが公になれば結果的にお客様へご迷惑をかけることになるんだよ!」 そして養女の婿に対しては、 「申し訳ないが、本来このお怒りは税理士先生に向けられるべきでは? むしろ私は感謝されこそすれ、怒られる理由がありません。また丁寧にご説明すれば、一流企業の役員で社会的地位のある方が公私混同されることはないと信じていますから」 と申し上げ、さらに今後の対応については可能な限りのアドバイスをする旨、お伝えしました。 養女の婿「・・・」   〔どのような問題が?〕 さて、これからどのような事態が想定されるのでしよう。 したがって、まず代襲相続人とコンタクトを取り、彼女の言い分を聞かなくてはなりません。場合によっては彼女にとって「棚からボタモチ」の話であり、正当な権利を主張されるおそれもあります。 だからこそ、弁護士を紹介するとアドバイスしたのです。   〔Aさんがとった行動〕 でもAさんは毅然として 「私が直接お目にかかり状況を説明してきます。そして銀行に提出する書類をいただいてきます!」 と言われ、遠くにおられる代襲相続人の所へ行かれました(なんと97歳ですよ)。 そして数日後、Aさんから連絡が入りました。 「木山さん、いただいてきました『承諾書』を! これで出金手続をお願いします」 話し合いの状況を伺いますと、代襲相続人の女性は 「相続財産をいただこうとは思いません。むしろ私のおばあちゃんのルーツがわかって、喜んでいます」 とのことでした。 やはり名家の出の方は、我々とは違うのですね。   〔チェックミスの怖さ〕 その後、税理士により申告書の訂正が行われたかどうかまでは把握していません。 でも一つだけ言えることは、ちょっとしたチェックミスがここまで大事になるのです。 すなわち、プロであればあるほど、原理原則に沿った心構えを忘れてはなりません。 最近の新聞紙上を賑わせている「何十年前の幼児の取り違え」「DNA検査」等の、社会情勢変化に伴う真実の確認作業の徹底が、今後ますます必要となることだけは間違いないでしょう。 (了)  

#No. 59(掲載号)
#木山 順三
2014/03/06

《速報解説》 企業結合会計基準に対応する資本連結実務指針等の改正(確定)の解説

《速報解説》 企業結合会計基準に対応する 資本連結実務指針等の改正(確定)の解説   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成26年2月24日付で、日本公認会計士協会は、平成25年9月に改正された「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号)等に対応するため、「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第6号)などの一連の改正を行い、公表した。 これにより、平成25年11月11日の公開草案が確定することになる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 改正を必要とする実務指針は広範囲に及んでおり、次の実務指針について改正された。 以下では、公開草案から大きく変更された箇所を取り上げ、適宜補足を行った。 特に、「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」と「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」については、設例も含めてお読みいただきたい。 ① 「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」(会計制度委員会報告第4号) ⇒子会社株式の一部売却(支配は継続)に伴う為替換算調整勘定の処理(42-3項、76項、設例13)   ② 「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第6号) ⇒親会社の持分変動による差額(資本剰余金)に関連する法人税等の処理(39項、57-2項、設例4-2) ⇒追加取得や子会社の時価発行増資等により生じた資本剰余金に係る一時差異と会計処理(40項、40-2項、設例3等) ③ 「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(会計制度委員会報告第7号) ⇒支配獲得後に追加取得や一部売却等が行われた後に、子会社株式を一部売却し、持分法適用関連会社となった場合におけるのれんの取扱い(45-2項、66-6項、設例5、設例6) ⇒子会社株式を売却し連結範囲から除外する場合に過去に計上した資本剰余金の処理(49-2項、68-2項) ⇒子会社株式を売却し持分法適用関連会社となった場合における付随費用の処理及び子会社株式を売却しその他有価証券となった場合における付随費用の処理(46-2項) ⇒複数の取引が1つの企業結合等を構成している場合の取扱い(7-3項、7-4項、66-4項)   ⇒共通支配下の取引等により発生したのれんの償却(40項) ④ 「株式の間接所有に係る資本連結手続に関する実務指針」(会計制度委員会報告第7号(追補)) ⇒非支配株主持分などの用語   ⑤ 「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」(会計制度委員会報告第8号) ⇒連結範囲の変動を伴わない子会社株式の追加取得又は一部売却に関するキャッシュ・フローの区分(9-2項、設例) ⑥ 「持分法会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第9号) ⇒持分法適用非連結子会社の会計処理(2-2項、3-2項)   ⑦ 土地再評価差額金の会計処理に関するQ&A ⇒現行規則への対応   ⑧ 金融商品会計に関するQ&A ⇒有価証券の取得の付随費用と取得関連費用について、Q15-2の新設 (了)

#No. 58(掲載号)
#阿部 光成
2014/02/27

《速報解説》 四半期財務諸表に関する会計基準の改正(公開草案)について

《速報解説》 四半期財務諸表に関する会計基準の改正(公開草案)について   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成26年2月25日付で、 企業会計基準委員会は次の公開草案を公表した。 意見募集期間は、平成26年4月24日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正事項 平成25年9月13日に改正された「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号)等において、企業結合に係る暫定的な会計処理が確定した場合の取扱いが示されたことに対応して、四半期財務諸表における取扱いを示している。   Ⅲ 適用時期 適用時期は、平成25年改正企業結合会計基準と同様とする。 (了)

#No. 58(掲載号)
#阿部 光成
2014/02/27
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