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《速報解説》 連結財務諸表規則等の改正に関する公開草案(企業結合関係)の解説

《速報解説》 連結財務諸表規則等の改正に関する 公開草案(企業結合関係)の解説   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成25年11月18日、金融庁は、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表した。 公開草案は、平成25年9月13日に改正された「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号)及び「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第10号)等を踏まえたものである。 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則、財務諸表等の監査証明に関する内閣府令、関連するガイドラインなど広範囲な改正が予定されている。 意見募集期間は平成25年12月18日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 1 連結財務諸表規則関係 連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則の一部改正(案)では、主な改正事項として次のものが予定されている。   2 適用時期等 ●平成27年4月1日以後に開始する事業年度に係る財務諸表及び同日以後に開始する中間会計期間に係る中間財務諸表並びに同日以後に開始する事業年度に属する四半期累計期間及び四半期会計期間(以下「四半期累計期間等」という)に係る四半期財務諸表について適用する。 ただし、平成26年4月1日以後に開始する事業年度に係る財務諸表及び同日以後に開始する中間会計期間に係る中間財務諸表並びに同日以後に開始する事業年度に属する四半期累計期間等に係る四半期財務諸表について適用できる。 ●平成27年4月1日以後に開始する連結会計年度に係る連結財務諸表及び同日以後に開始する中間連結会計期間に係る中間連結財務諸表並びに同日以後に開始する連結会計年度に属する四半期連結累計期間及び四半期連結会計期間(以下「四半期連結累計期間等」という)に係る四半期連結財務諸表について適用する。 ただし、表示に係る事項(連結財務諸表規則2条、42条など)を除いては、平成26年4月1日以後に開始する連結会計年度に係る連結財務諸表及び同日以後に開始する中間連結会計期間に係る中間連結財務諸表並びに同日以後に開始する連結会計年度に属する四半期連結累計期間等に係る四半期連結財務諸表について適用できる。 (了)

#No. 44(掲載号)
#阿部 光成
2013/11/19

《速報解説》 消費税転嫁対策特別措置法に関する調査(公正取引委員会・中小企業庁)の概要と対応について

《速報解説》 消費税転嫁対策特別措置法に関する調査 (公正取引委員会・中小企業庁)の概要と対応について   弁護士 大東 泰雄   平成25年11月1日、公正取引委員会(以下「公取委」という)と中小企業庁は、それぞれ、多数の企業等に対し、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(以下「消費税転嫁対策特別措置法」という)が禁止する消費税の転嫁拒否等の行為の有無に関する調査票(以下あわせて「本調査票」という)を一斉に発した。 なお、消費税転嫁対策特別措置法については、拙稿「『消費税転嫁対策特措法』を理解するポイント」(本誌No.25掲載)及び拙著(共著)『Q&A改正消費税の経過措置と転嫁・価格表示の実務』(清文社)を参照されたい。   1 本調査票の概要 公取委の本調査票は「消費税の転嫁拒否等の行為の有無についての調査」、中小企業庁の本調査票は「消費税の転嫁拒否等に関する調査について」と題し、設問の組み立てや書式は異なっているが、いずれも、おおよそ以下のようなものである。   2 本調査への対応 (1) 本調査票の受領への対応 本調査票は、全国の事業者から無作為に抽出して送付されたものであるため、本調査票が送付されてきたこと自体について、心配する必要はない。 しかし、本調査の目的は、中小企業庁の調査書に、 と明記されているとおり、当局が、転嫁拒否等の行為を把握し、本格的な調査を行うための端緒とすることにある。 したがって、公取委及び中小企業庁は、本調査票に対する回答を分析した後、転嫁拒否等の行為について本格的な取締りを開始するものと思われる。 (2) 報告(回答)の検討 本調査票の特徴的な点は、特定供給事業者(売り手)の立場における回答のみを求めるものであり、特定事業者(買い手)の立場からの回答を求めるものではないということである。 そこで、本調査票は企業等に対し回答を義務づけるものではないものの、取引先から転嫁拒否等の行為を受けている場合には、本調査票への回答が当局の調査の端緒となる可能性もあるため、積極的に回答すべきである。 また、取引上優位な地位に立ちやすい大企業であっても、物やサービスを販売する場面では「特定供給事業者」に当たる可能性があるため、報告を検討すべきであろう。 なお、消費税転嫁対策特別措置法は、特定事業者が転嫁拒否等の行為を行っていることを公取委等に知らせたことを理由に、取引の数量を減らしたり、取引を停止したりするなど不利益な取扱いをすること(報復行為)を厳しく禁止しているから(消費税転嫁対策特別措置法3条4号)、「特定事業者」による報復を恐れるべきではない。 (3) 下請法に基づく書面調査との関連 公取委は、平成25年11月8日付けで、下請法に基づき、下請事業者に対する書面調査(マークシート方式のもの)を行っており、消費税転嫁対策特別措置法に関する上記調査票とほぼ同時期に受領した企業も多いと考えられるが、これら2つの調査は、相互に緩やかな関連性はあるものの、別の法律に基づく別の調査であるため、双方に対する回答を検討することが必要である。 (了)  

#No. 44(掲載号)
#大東 泰雄
2013/11/15

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第9回】「武富士事件(その3)」~租税回避の意図と「住所」の認定~

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第9回】 「武富士事件(その3)」 ~租税回避の意図と「住所」の認定~   国士舘大学法学部教授・法学博士 酒井 克彦   1 検討―承前 以上のように、納税者Xの主張を認めた最高裁判決は、住所判断において「居住意思」を重視しない態度をとる。すなわち、最高裁は、いかなる理由によって作出された外形であっても、それが客観的判断基準を表わしている限り、それに従うという態度を表明しているとみることができる。 そして、このような態度が、「租税回避の意図」によって操作され得る滞在日数の多寡を住所の判断基準とすることを否定しないという結論にも結び付いているようである。 この点が、東京高裁が客観的事実に加えて客観的に認識可能な居住意思をも併せて判断すべきとしている点との大きな差異であるといえよう。 最高裁が判断の参考とした判例は、 であり、東京高裁が判断の参考としたのは、①と③のほか、 であった。 ところで、東京高裁が引用しなかった②は公職選挙法上の「住所」が争点となった事例であるが、最高裁はどのように住所について説示しているのであろうか。 ②の最高裁は、 としている。 すなわち、住所の認定に当たっては、居住意思だけでは判断せずに、客観的な実体があることが必要であるとしているのである。このような考え方は、本件の東京高裁の判断と抵触するものではない。したがって、②の判例が東京高裁と最高裁の判断を分けたとみることは難しいように思われる。 では、東京高裁が参考としながら、最高裁が参考としなかった④の判例はどうであろうか。 ④の最高裁は、 としている。 この判例は、「住所」を認定するに当たっては、客観的事実のみに従うべきものではないとする考え方を明らかにしているのである。本件の最高裁は、この④の判例を東京高裁が引用しているのにもかかわらず、これについては何も触れていないのである。   2 主観を「住所」認定に持ち込むべきか? 従来から、民法上の「住所」概念の理解に当たっては、主観説と客観説との対立があった。 この客観説と主観説の対立に関しては、住所認定において「居住意思」を客観的にみて合理的な意思というように捉えるのであれば、主観説と客観説との差異はほとんど消失するといえる。この点から判示したのが、東京高裁だったのではないかと思われる。 すなわち、主観というのは当事者の内在的な心の問題であるから、これに基づいて判断をすることは困難であるため、「客観的に認識可能な居住意思」によって判断をすべきとするのが同高裁の考え方であったのだ。 しかしながら、最高裁は、このような「客観的に認識可能な居住意思」を住所の認定に当たって斟酌しないとする態度に出たものと思われる。定住の事実のみで原則として住所を認定しようとする客観説の立場に立っているとみることができそうである。 この点については、例えば、民法学者の石田喜久夫教授が、 と論じられるところである(石田『新版注釈民法(1)』336頁(有斐閣,1988))。 さて、本件の事例において、客観的にXの意思を認定できたのであろうか。 この点は、最高裁判決の裁判長である須藤正彦裁判官自身の補足意見をみれば、Xが「租税回避」の意思をもって住所を香港に移転させようとした事例であると位置付けていることが判然とする。 すなわち、須藤裁判長は、 とし、さらにXについて、 と論じるのである。 つまり、本件において、Xは租税回避を目的として、香港に暫定的に滞在しただけのものであり、香港に定住する意思や永続的に居住する意思はなかったと最高裁は認定していた事例であるとみることができよう。 そうであるとすれば、そのような意思が明確に認定されている中にあって、それでも、客観的な居住実体のみを前提とした判断を下したとすれば、上記④の判例の考え、すなわち、「客観的施設の有無によってのみ」判断すべきでないとする説示に抵触し得る判断であったようにも思われるのである。 一般的に客観説が重視されるのは、主観を明らかにすることが困難であるからであって、本件事案は「定住する意思はないと言い放つ者」との認定があるわけではないが、少なくとも、最高裁の裁判長が「暫定的に滞在しただけ」と位置付けている事案である。この点は軽視されるべきではないように思われる。   3 租税回避は「住所」認定に影響を与えるか? 上記須藤裁判長は、補足意見において、 とする。 この補足意見はどのように理解すべきであろうか。 ここでなぜ、贈与税回避スキームに対する一般的な法感情の問題を持ち出す必要があるのか疑問である。 すなわち、租税回避に対する「けしからん罪」などないのであるから、かような説示は意味をなさない。ましてや、「国内での無数の消費者を相手方とする金銭消費貸借契約上の利息収入によって稼得した巨額な富の化体」などを説示する必要性はさらに分からない。このくだりは、本質をぼやかす意味しか持ち合わせていないのではなかろうか。 租税法律主義の見地から議論するべきであるのは当然である。問題は、租税法律主義の見地からみた場合に、果たして、「住所」をいかに理解し、いかに解釈するかという場面で、租税回避の意図が「住所」の認定に何か影響を与えるのかという点につきる。 再三述べるが、これは租税回避を否認すべきか否かを論じる場面ではない。したがって、須藤裁判長の言うような「個別否認規定がないにもかかわらず、この租税回避スキームを否認することには、やはり大きな困難を覚えざるを得ない。」という問題ではないのである。 このことは、例えば、越境入学目的のために住所を暫定的に移転させたケースにおいても同様の議論があるはずである。 これは、越境入学を排除する個別否認規定がない限り、越境入学のために暫定的に家族が居住の地を子息の学区内に移転したとしても、本当にそこを生活の本拠と認定していいのかどうかという問題であり、そこでは、越境入学がけしからんかそうではないかが問われているわけではないのである。 このように、本質的な問題は、租税回避であるか否かにあるのではなく、「国外に暫定的に滞在しただけ」の租税回避目的の滞在であるのにもかかわらず、その認定された意思(租税回避という意思)を全く排除して「住所」認定をすることの是非である。 租税法律主義によるのであるから、「住所」認定において客観的に明らかとなっている意思を排除するのは当然という表現では説明をしたことにはならないはずである。「住所」認定において、客観的主観をも客観的事実に合わせて判断すべきか、あるいは、客観的に認定された主観を排除すべきかは、「租税法律主義」を根拠として説明するものでないことは明白である。 ましていわんや、裁判長が、 と述べていることは、繰り返しになるが、本質をぼやかす以上の意味を有してはいないのではないかと思わずにいられないのである。 そうであるにもかかわらず、最高裁は、 としているのであって、この点についての疑問は残されたままであるといえよう。 (了)

#No. 44(掲載号)
#酒井 克彦
2013/11/14

〈平成25年分〉おさえておきたい年末調整のポイント 【第4回】「復興特別所得税(その2)」~年末調整の手順と設例~

〈平成25年分〉 おさえておきたい 年末調整のポイント 【第4回】 「復興特別所得税(その2)」 ~年末調整の手順と設例~   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   前回は復興特別所得税の基礎的事項について確認したが、第4回目は復興特別所得税の年末調整実務について解説を行う。 1 平成25年分の年末調整 所得税法第190条(年末調整)に規定する給与等の支払者は、同条に規定する居住者(「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出したもので、その年中に支払うべきことが確定した給与等の金額が2,000万円以下であるもの)に対し、その年の最後に支払う給与等について、所得税と復興特別所得税を併せたところで年末調整を行わなければならない(復興財確法30①)。 具体的には、毎月の給与や賞与から源泉徴収した所得税及び復興特別所得税の額と、所得税法第190条第2号に掲げる税額(*1)及び当該税額に2.1/100を乗じて計算した復興特別所得税の額の合計額(*2)とを比較して、過不足があるときには、次の①又は②の方法で税額の精算を行う。 (*1) 年末調整で住宅借入金等特別控除の適用を受ける場合には、特別控除適用後の税額。 (*2) 合計額に100円未満の端数があるときは端数金額を切り捨てた金額、その合計額が100円未満のときはその全額を切り捨てた金額。   年末調整の基本的な流れは平成24年分までと同じであり、復興特別所得税が関係する部分に対してのみ注意が必要となる。   2 源泉徴収簿「年末調整欄」の様式 平成25年分から所得税と復興特別所得税を併せたところで年末調整を行うことになったため、所得税源泉徴収簿の「年末調整」欄の一部が変更されている(下線部分が変更点)。 〈平成24年分〉 〈平成25年分〉 次の表の下線部分が変更された部分である。また、平成24年分の「23」欄から「29」欄は、平成25年分の「24」欄から「30」欄に1行ずつ下がっているが、そのまま対応している。 所得税と復興特別所得税を併せて年末調整するときのポイントは、まず年末調整後の所得税の額を算出し、その金額に2.1%の復興特別所得税を上乗せすることにより、復興特別所得税を含めた年末調整後の税額を算出する点にある。   3 設例 設例に基づいて算出される平成25年分の年調年税額(年末調整後の所得税及び復興特別所得税の額の合計額)と源泉徴収簿「年末調整」欄への記入例は次の通りである。   4 源泉徴収票 平成25年分の源泉徴収票の様式は、平成24年分のものと同じである。 「源泉徴収税額」欄に、源泉徴収した(年末調整済みの)所得税及び復興特別所得税の額の合計額を記入すればよい。 3の設例に基づいて源泉徴収票を作成すると、次の通りである。 ◆  ◆  ◆ 次回(最終回)は、年末調整について実務で質問を受けることが多い事項、判断に迷う事項を取り上げ、解説を行う予定である。 (了)

#No. 44(掲載号)
#篠藤 敦子
2013/11/14

居住用財産の譲渡所得3,000万円特別控除[一問一答] 【第6問】「共有土地上に2棟の家屋がある場合」-居住用財産の範囲-

居住用財産の譲渡所得 3,000万円特別控除 [一問一答] 【第6問】 「共有土地上に2棟の家屋がある場合」 -居住用財産の範囲-   税理士 大久保 昭佳   Q 下図のような所有関係にあるX及びYの家屋と土地を一括して譲渡しました。 なお、X及びY所有の家屋の敷地使用割合は、土地全体の各々1/2です。 この場合、X及びYの「3,000万円特別控除(措法35)」に係る適用関係はどのようになるのでしょうか? A X及びYは共に、それぞれの所有する家屋及び土地(全体の1/2)のすべてについて「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けることができる。 〈解説〉 土地の持分に相当する部分の土地(その家屋の敷地の範囲内に限る)は、すべて「居住用財産」の範囲内であると考えられる。 なお、家屋の敷地の範囲の判定については措通31の3-12(居住用家屋の敷地の判定)で取り扱われており、 こととされている。 (了)

#No. 44(掲載号)
#大久保 昭佳
2013/11/14

〔しっかり身に付けたい!〕はじめての相続税申告業務 【第9回】「土地を評価する②」~評価方式の適用判定と倍率方式による評価~

〔しっかり身に付けたい!〕 はじめての相続税申告業務 【第9回】 「土地を評価する②」 ~評価方式の適用判定と倍率方式による評価~   税理士法人ネクスト 公認会計士・税理士 根岸 二良   前回は土地評価における「地目判定」「評価単位判定」について学んだが、今回は、前回同様に宅地を前提として、路線価方式・倍率方式の適用判定方法及び、倍率方式による評価を学ぶこととする。 〔路線価方式・倍率方式の適用判定〕 宅地の評価は、路線価方式又は倍率方式のいずれかにより評価する(評基通11)。 ただし、どちらかを任意に選択できるというわけではなく、宅地毎に路線価方式又は倍率方式のいずれで評価することが、課税当局によりあらかじめ定められている。 宅地のうち、「市街地的形態を形成する地域にある宅地」は路線価方式で評価を行い、それ以外については倍率方式で評価する(評基通11)ことになっており、わかりやすくいえば、一般的な住宅地は路線価方式で評価を行い、周囲に建物がほとんどないような場所にある宅地については、倍率方式で評価すると理解すればよいであろう。 評価対象となる宅地を、路線価方式で評価するのか、倍率方式で評価するのか、具体的に判断するには、国税庁公表の課税時期の属する年分の「倍率表」をみることで確認できる。 例えば、他界日が平成25年5月1日である被相続人の所有する土地(東京都新宿区)について、路線価方式又は倍率方式のいずれかを適用すべきか確認するには、以下の手順で行う。   〔倍率方式による評価〕 倍率方式による土地評価は、評価対象宅地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じた金額をもって評価する方法である(評基通21)。 通常の住宅地にある宅地であれば路線価方式による評価になるため、都市部にのみ宅地を所有するケースでは倍率方式による評価が必要とされることは少ないかもしれない。 なお、留意すべき点としては以下の通りである。   〔倍率方式による評価にあたり必要となる資料〕 なお、宅地評価(倍率方式による評価)を行うに当たり、以下の資料が最低限必要となる。 なお、財産評価基本通達22から24-8に規定する補正項目(広大地、セットバック、都市計画道路予定地など)に該当する場合には別途資料が必要になるため、留意が必要である。 *  *  * 次回は路線価方式による評価について説明することとする。 (了)

#No. 44(掲載号)
#根岸 二良
2013/11/14

小説 『法人課税第三部門にて。』 【第20話】「調査の終了の際の手続に関する納税義務者の同意書」

小説 『法人課税第三部門にて。』 【第20話】 「調査の終了の際の手続に関する納税義務者の同意書」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「この「同意書」を提出していなかったので・・・」 山口調査官は、渕崎統括官に説明する。 山口調査官の右手には、「調査の終了の際の手続に関する納税義務者の同意書」がある。 「そうか・・・それは仕方ないな」 渕崎統括官は苦笑いする。 「調査結果の内容の説明については、国税通則法74条の11の2項できっちりと、法令で定められたからなあ」 渕崎統括官は傍らの「税務六法」を手に取り、その条文を読む。 「この条文を根拠に、君は、納税義務者に調査結果を説明したというわけだ」 渕崎統括官は、大きく頷く。 「ええ。そばに税理士もいましたけど・・・」 山口調査官の言葉に、渕崎統括官は頷く。 「申告書の記載ミスがけっこうあったので、そのことも更正の内容に含まれるので説明しました」 渕崎統括官は、含み笑いをする。 その会社の顧問税理士である小野は、国専13期で、渕崎統括官とは同期である。 小野税理士は若くして国税局を退官し、税理士になっていた。 その小野税理士が、昨日、渕崎統括官に電話をかけてきたのである。 「納税者の前で、恥をかいた・・・」 小野税理士は、そう愚痴った。 「これまでは、税理士のミスは、こっそりと事前に、税理士に伝えてくれていたのに・・・今回は納税者の前で、突然こちらのミスを指摘されて・・・」 小野税理士の電話の声は、少し昂ぶっていた。 「しかし、調査担当者は法律通りに調査結果の内容を納税者に説明したのだから、こちらとしては・・・」 渕崎統括官は、山口調査官を庇う。 「ただ、今までは事前に知らせてくれたのに・・・」 小野税理士は、まだ、納得しかねているようであった。 「これからは納税者に対して、調査内容を説明するように法律で明らかになったのだから、担当者はそれに従ってやったまでだよ・・・」 渕崎統括官は、言葉を続ける。 「この規定は、税務当局の納税者に対する説明責任を強化する観点から、法令上、明確にしたもので・・・実質的に従来と変わっていないのだけれど。・・・まあ、法律に書かれると、こちらも、かまえてしまうことになるんだ」 渕崎統括官は、受話器を握りしめながら、説明する。 小野税理士は、最後は諦めたように、「わかったよ」と言って、電話を切った。 「・・・・・・」 渕崎統括官は、昨日の小野税理士の言葉を思い出しながら、山口調査官に尋ねる。 「その「同意書」って、税理士だったら誰でも知っているものだろう?」 「そうですね・・・でも、最近できたものだから、知らない税理士もいるかも・・・」 山口調査官は、自信のない返事をする。 「この同意書を提出していたら、納税者の同伴なしに、代理人である税理士に、事前に調査の結果についての内容を話すことができるのですが・・・」 山口調査官も苦笑いをする。 「ということは、税理士がそのことを事前に聞いていたら、納税者に対して何らかの釈明を考える余地があるということか・・・」 渕崎統括官は、大きく頷く。 「調査の終了の際の手続に関する納税義務者の同意書」には「対象とする行為」欄に該当する項目に「チェック√」を付すようになっている。 その欄は1項~3項まであるが、その各項には次の行為がそれぞれ挙げられている。 「・・・ところで、この同意書を提出している税理士って、多いの?」 渕崎統括官が尋ねる。 「私の担当している法人では、ほとんど提出していません」 山口調査官が応える。 「しかし、この届出書のひな型は、日本税理士会連合会が税理士のために作成したものと聞いているが・・・」 渕崎統括官は、山口調査官の顔を見る。 「そうですね・・・」 山口調査官は、思案顔になる。 「税理士会のホームページに届出書のひな型は載っていますけれど、もっと税理士に周知させないといけませんね」 山口調査官は、返事をする。 「そうだな。そうか・・・小野には、この届出書のことを知らせてやろう」 そう言うと、渕崎統括官は、机の上の受話器に腕を伸ばした。 (つづく)

#No. 44(掲載号)
#八ッ尾 順一
2013/11/14

貸倒損失における税務上の取扱い 【第5回】「子会社支援のための無償取引①」

貸倒損失における税務上の取扱い 【第5回】 「子会社支援のための無償取引①」   公認会計士 佐藤 信祐   法人税基本通達9-4-1、9-4-2においては、子会社支援税制が定められており、一定の要件を満たした債権放棄等については、寄附金の額に算入せず、損金の額に算入することが認められている。 まず、本稿では、子会社支援税制の概要について解説する。また、第6回以降では、法人税法における無償による金銭の貸付けである清水惣事件等、所得税法における無償による金銭の貸付けである平和事件等について解説を行いながら、法人税法における子会社支援のための無償取引の考え方について分析をする予定である。   1 法人税基本通達9-4-1 このように、法人税基本通達においては、子会社等の解散、経営権の譲渡等に伴って、「債務の引受けその他の損失負担又は債権放棄等」を行った場合について、一定の要件を満たした場合には、寄附金の額に該当しないこととしている。このように、「子会社等の解散、経営権の譲渡等」に伴った処理であることから、いわゆる無償による金銭の貸付け等は含まれていない。実務上、子会社等の解散、経営権の譲渡等が生じる場合には、やむを得ず損失負担をすることが多いため、本通達に該当するか否かの判断に悩むことはそれほど多くはない。   2 法人税基本通達9-4-2 このように、法人税基本通達9-4-2においては、「合理的な再建計画」がある場合において、「金銭の無償若しくは通常の利率よりも低い利率での貸付け又は債権放棄等」を行ったときは、寄附金の額に該当しないこととしている。 法人税基本通達9-4-1で想定している場面と異なり、子会社等との関係が続くことを前提としているため、継続的な取引である「金銭の無償若しくは通常の利率よりも低い利率での貸付け」が含まれているだけでなく、むしろ、文面上は、債権放棄等よりも優先して規定しているというところに特徴がある。 次回以降、解説を予定している清水惣事件は、子会社に対して無償による金銭の貸付けを行った事件であり、現在、類似の事件が生じた場合には、法人税基本通達9-4-2に該当するか否かが争われるべき事件である。 また、子会社に対する支援については、①無償取引により損益計算書を改善し、その結果として、貸借対照表を改善する手法、②債権放棄により貸借対照表を改善した上で、支払利息が減ったことにより、損益計算書を改善する手法の2つが考えられる。 私見ではあるが、貸倒損失、子会社支援税制の本質論を理解するためには、法人税法第22条の詳細な分析が必要になると考えている。法人税法22条の規定内容については、一般的になじみのあるものではなく、実務家としては、ほとんど意識したことがない規定であろう。貸倒損失についての取扱いについても、おそらくは、法人税基本通達の規定内容とその解説書のみで判断して実務を行っている同業者も多いと思われる。 しかしながら、法人税法22条こそが、貸倒損失、子会社支援税制の根拠条文であり、別段の定めである寄附金の規定(法人税法37条)に該当しないことを根拠として、損金の額に算入することが認められていることから、まずは、本連載においては、法人税法22条の詳細な分析を行うことから開始したい。 そのため、本連載においては、「①無償取引により損益計算書を改善し、その結果として、貸借対照表を改善する手法」について分析を行ったうえで、「②債権放棄により貸借対照表を改善した上で、支払利息が減ったことにより、損益計算書を改善する手法」を分析することとなる。   3 法人税法22条の規定内容 無償取引において議論になりやすいのは、法人税法22条2項において、「無償による資産の譲渡又は役務の提供」により、贈与を受けた側だけでなく、贈与を行った側についても、益金の額を認識しなければならないという点である。 例えば、無償による金銭の貸付けであれば、収受すべき利息について、以下の仕訳を行うべきであるという結論になる。 【無償による金銭の貸付け】 また、債権放棄についても、前述の通り、法人税法22条3項3号、4項において、損失の額について、別段の定め(寄附金の規定)があるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って、損金の額に算入すべきことが明らかにされている。 (了)  

#No. 44(掲載号)
#佐藤 信祐
2013/11/14

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載44〕 事業承継税制における上場株式1銘柄3%以上保有規制と株主のグルーピング

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載44〕 事業承継税制における 上場株式1銘柄3%以上保有規制と株主のグルーピング   税理士 竹内 陽一   Q 事業承継税制における認定会社等が、上場株式等を1銘柄につき発行済株式等の総数等の3%以上保有する場合の猶予税額の除外計算の特例と特別関係者等のグル-ピングとの関係について教えて下さい。 A (1) この上場株式等1銘柄3%以上保有規制の対象となる認定会社は、資産管理会社に該当する場合に限定されている。 (2) 上場株式等を1銘柄につき発行済株式等の総数等の3%以上保有する場合の株主集団である認定会社等とは、①認定会社、②後継者とその同族関係者及び、③認定会社の特別関係会社とされている。非常に広い範囲の者が保有する株式数で3%以上保有を判定するので、注意が必要である。 (3) 猶予税額の除外計算の対象となる上場株式は、①認定会社が保有する上場株式と、②認定会社の特別関係会社であって、かつ、認定会社の支配関係法人である法人が有する上場株式の合計とされている。 (4) 以上のように、上記(2)の1銘柄3%以上保有を判定する個人及び法人の株主集団と、上記(3)の猶予税額の除外計算の対象となる法人株主集団は、その範囲(グルーピング)が異なるので注意が必要である。 解 説 事業承継税制における株主の範囲には、次の4つのグル-ピングがある。 中小企業経営承継円滑化規則における同族関係者(承継規1⑨)、租税特別措置法における特別関係者(措法70の7②三ハ、措令40の8⑩)とは、下記[例1]から[例4]における各A社、B社、C社、D社が認定会社である場合におけるその上位株主をいう(なお、本稿においては、租税特別措置法の根拠法令条文は平成27年1月1日以降施行予定のものとし、基本的に、贈与税の納税猶予関係のものを記載した)。 〈グルーピング①:特別関係者〉 下図[例1]から[例4]におけるA社、B社、C社、D社のいずれもが認定会社となることができる。 措法70の7②三ハにおける後継者要件には、後継者とその同族関係者が保有する株式数50%超要件があるが、これは普通株式(完全議決権株式)と一部制限株式の数で判定する。これを〈グルーピング①:特別関係者〉とする(措令40の8⑩、承継法1⑨)。 なお、特例非上場株式等の納税猶予対象となる2/3限度要件は、普通株式だけでカウントする(措令40の8②)。 [例1] 認定会社が子会社である場合(以下[例1]~[例3]は同族関係者と認定会社、認定会社より上位が特別関係者(グルーピング①))   [例2] 認定会社が孫会社である場合   [例3] 認定会社がひ孫会社である場合 中小企業経営承継円滑化法及び同平成21年改正法における特別子会社とは、下記[例4]におけるA、B、C、D社の各社がそれぞれ認定会社である場合の各社とその下位3階層までの会社をいう。この場合、範囲の判定の頂点は、後継者と認定会社のそれぞれになる(ダブルトップ)ので、グルーピングの範囲は拡大する(承継規1⑩、措法70の7②一ハ(会社要件))。 〈グルーピング②:特別関係会社〉 租税特別措置法においては、平成22年度改正以後、「特別子会社」を「特別関係会社」と呼んでいる。 この範囲は非常に広く、例えば、[例3]のD社が認定会社であるとした場合には、[例3]のA社、B社、C社だけでなく、D社をA社と置き換えたときの、[例5]で示したE社、F社、G社を含めた合計6階層の水平に位置する会社([例5]参照)が対象となり、特別関係会社([例4])と規定されている。 これらのいずれか1社が、①上場会社、②大会社、又は③風俗営業会社のいずれかに該当すれば、会社要件としての認定及び死亡時確認を受けることはできない。 また、認定後においても承継期間内に、これらの特別関係会社の1社が、上記③の風俗営業会社に該当することになれば、認定取消しとなる(承継6①七ヘ、9②十五)。 事業承継税制において株主の範囲が最大となるこのグル-ピングが、〈グルーピング②:特別関係会社〉という概念である(平成21年改正時の措令40の8⑥)。 [例4] D社が認定会社の場合の特別関係会社 ・A社以下D社まで、後継者等からみて直接間接の支配関係 ・E社以下G社まで、D社からみて直接間接の支配関係 *上記は、D社が認定会社である場合のグルーピング②である。 *平成23年度改正前は、このグルーピング②の判定の頂点(トップ)である個人株主は、後継者等として後継者とその親族とされていた。   〈グルーピング③:特定特別関係会社〉 しかし、この判定のトップである個人株主を、後継者とその親族とすると、後継者だけでなく、その配偶者と3親等の姻族及び6親等の血族まで拡がる。これはあまりにも範囲が広すぎ適用要件が厳しいということから、平成23年度改正において、この上述した特別関係会社に関するトップの個人株主である代表者の親族については、代表者と生計を一にする親族と限定し、これを特定特別関係会社とする改正がされた(措法40の8⑥⑦)。 これは、[例4]、[例6]について、それぞれ下記の[例5]、[例7]とする改正がされたことになる。 [例5] D社が認定会社の場合の特別関係会社 ・A社以下D社まで、後継者等からみて直接間接の支配関係 ・E社以下G社まで、D社からみて直接間接の支配関係 *上記は、D社が認定会社である場合のグルーピング③である。 *平成23年度改正後は、このグルーピング③の判定の頂点(トップ)である個人株主は、後継者等として後継者とその生計を一にする親族に限定された。   [例6] 個人である同族関係者に支配されている会社の兄弟子会社(平成23年度改正前) ※A2社が、風俗営業会社、大会社、情状会社の場合、A1社やB社において適用不可となっていた。   [例7] 個人である同族関係者に支配されている会社の兄弟子会社(平成23年度改正後) (A1社とB社は特定特別関係会社となり、A2社は特別関係会社となる) ※A2社が風俗営業会社等であっても、A1社やB社等において適用可   〈グル-ピング④:認定会社の特別関係会社と認定会社との間に支配関係のある法人が重複する範囲〉 平成21年度の制度創設時には、この特別子会社に外国会社が入るか否かが、定かではなかった。さらに外国会社が入るとした場合には、中小企業要件をどうするのかという問題があった。 これについては平成22年度改正において、認定会社の特別関係会社には外国会社を含むことが明確化され(措令40の8⑥)、認定会社の特別関係会社に外国会社がある場合の認定要件には、常時使用従業員5人以上要件が追加された(措法70の7②一ホ、措令40の8⑧)(措法70の7②一ホ、措令40の8⑧)。 また、この外国会社は、特別関係会社の中で認定会社をトップとして、支配関係(発行済株式数ベース)がある法人が外国会社に該当する場合とされた。これを〈グル-ピング④:認定会社の特別関係会社と認定会社との間に支配関係のある法人が重複する範囲〉とする。[例8]を参照。 [例8] 認定会社の「特別関係会社」と「認定会社との間に支配関係のある法人」の基本型 (『平成22年度改正税法のすべて』p458図1の基本型による(応用例は同書参照))   平成25年度改正において創設された、認定会社等が上場株式1銘柄3%以上保有する場合の猶予税額の除外計算の特例という保有規制は、この3%の保有集団を平成23年度改正前における〈グル-ピング②:特別関係会社〉と同じものとして判定するようになっている(措令40の8⑪、⑥)。 このため、非常に広い範囲の株主の合計で上場株式1銘柄3%以上保有であるか否かをチェックしなければならないと制度なっているので、注意が必要である。 具体的には、次の[例9]を参照いただきたい。 [例4]の〈グル-ピング②:特別関係会社〉と同じ範囲の株主で上場株式1銘柄3%以上の保有であるか否かを判定する。 [例9] 認定会社等が上場株式1銘柄3%以上保有する場合の猶予税額の除外計算の特例となる保有規制の株主集団 (了)

#No. 44(掲載号)
#竹内 陽一
2013/11/14

会計リレーエッセイ 【第11回】森川徹治氏インタビュー「連結会計システムベンダーとして。連結経営者として。」

会計リレーエッセイ 【第11回】 森川徹治氏インタビュー 「連結会計システムベンダーとして。連結経営者として。」   株式会社アバント 代表取締役社長 グループCEO 森川 徹治   ――連結決算システムの提供を始めた背景 まず、我々が行っている連結決算システムのサービス提供、という事業を始めた背景について少しお話したいと思います。 我々のテーマとして、「経営に役立つ情報システムをしっかりお客様に届けたい」というものがあります。 これは「経営情報の大衆化」というミッションを掲げて取り組んでいるのですが、従来、経営者が意思決定を行う際に、そのすべてが論理的に説明可能なものとして判断していたか、アカウンタビリティをもって意思決定を行っていたかというと、必ずしもそうではありませんでした。 これは当然で、やはり意思決定するための要素、判断基準というのは広範囲に及びますから、それまでの経験や勘による判断というものも往々にしてあるべきですし、逆にそれが一番効率の良い意思決定手法であることが多いのも事実です。 ただし、企業規模が大きくなり、会社というもの自体が公共性を高めていく中で、従業員や投資家、顧客など様々なステークホルダーの期待に応えていくことが求められるようになると、従来に比して経営判断におけるアカウンタビリティの重要性は飛躍的に高まっていきます。そういう時に、連結会計の考え方がアカウンタビリティの確立に役立つのではないか、と考えるようになりました。 実は、当初は意思決定の判断根拠となる情報として、戦略的なシミュレーションであったり、将来的なプランニングやマーケティングといったものをシステムとして提供することに価値があると考えていました。 しかし実際には、その部分は経営者がクリエイティブに戦略を立てて意思決定していく領域であって、そういう将来の意思決定を創造する際に「これまではどうだったのか?」という過去の情報をシステム化しておくことが役に立つという理解に至り、そのためのシステムとして連結会計システムを位置づけていたところでした。 そういった中で、先ほどの意思決定におけるアカウンタビリティの確立というテーマと、連結会計システムの提供がたまたまマッチングした、と言っていいかと思います。   ――連結会計はなぜアカウンタビリティに資するのか では、連結会計がなぜ意思決定とアカウンタビリティの双方に有用なのかというと、まず1つ目のポイントは、連結会計は「情報の最小単位が財務諸表そのものである」ということです。 一般的には会計というと、個々の取引などを仕訳にして、それを積み上げて財務諸表を作り上げるものですが、連結会計についてはスタートがすでに完成された財務諸表であり、連結財務諸表はそれを組み合わせたものです。 ですから、個々の会計処理ではなく、すでにある財務諸表によって「複数の事業体を1つの事業体のように見せる」だけではなく、経営判断としてその事業体を見るときに、「事業の切り口としてはその見方でよいのか」、「地域軸で見るとどう判断できるか」、などの「経営として見たい形」に情報を切り替える会計として、連結会計の視点が有用になるわけです。 もう1つのポイントとして、連結会計そのものがディスクロージャーの要請からできたものである、ということがあります。 つまり、もともと経営的な要件から確立されたわけではなく、あくまでも投資家から「投資する上で必要な情報だから、連結でディスクローズしてほしい」と要請されて出来上がったものなのです。 ですから、経営者が投資家に対して説明責任を果たすツールとしての連結会計は適切であると同時に、さらに発展させることで、投資家だけではなくステークホルダー全般に対するアカウンタビリティ確立のためのツールとして意義があるのではないか。こういった理由で、連結会計のシステム事業に注目、着手することになりました。 ただし、そういった我々の本質的な目的、つまり連結決算のためだけのシステムではなく、「経営における意思決定に資する会計システムとしての連結会計を提供したい」ということを最初からお客様に説明・理解してもらい、ビジネスとして成立させるのは、容易ではありませんでした。 そのため、当初は大きな目的の説明は行わず、「連結決算のためのシステムです」とだけ説明して、まずは少しでも多くのお客様に使ってもらって実績を作ろうとしていたのが、1999年までのことでした。   ――会計ビッグバンからリーマン・ショックを経て、ニーズは変容したか? そういった形で事業を行っていた中、2000年にいわゆる“会計ビッグバン”がありました。 これにより、連結会計を中心に会計制度が大きく変化し、企業側の負担が増加、「連結決算にどう対応していくか」「連結決算早期化のためにはどのような仕組みが必要か」ということに対する、ひいては我々の作った連結決算の仕組みに対するニーズが急増しました。 さらに、2003年からのJ-SOXにより、内部統制の整理という観点から、さまざまなバックエンドプロセスの整理に対するニーズが上昇し、ここでもその一環として、多くの企業により連結システムに対する投資が行われました。 しかし、こういった企業の会計システム投資が続く状態が急転したのが、2008年のリーマン・ショックです。 急激な景況悪化により、多くの企業で会計や情報システムに対する投資の見直しが行われ、本当に必要なもの以外はコストダウンという観点から縮小されていきました。 しかし、我々の提供しているサービスへのニーズが完全になくなったわけではありませんでした。 つまり、従来の決算のためのシステムに対するニーズから、我々が最初に目指していた、「意思決定に資するシステム」に対するニーズへと変化していったのです。 ただ、我々が当初目指していたものとはいえ、それまでは制度的なものも追随して「連結決算はこうすれば大丈夫です」と提案することで一定のニーズに応えられていたものが、企業のより深い業務内容まで踏み込み、「その企業が何を必要としているのか」ということを理解した上での提案が必要になりましたから、従来に比べかなり難しい状況に変化したといってよいでしょう。 さらに、こういったリーマン・ショックを境にした変化は、我々ベンダーサイドだけではなく、企業の経理部門にも影響を及ぼすようになりました。 それまでもすでにギリギリの状況で、なんとかディスクローズをやっていたところに、経営者から「君たちの存在意義は何だ」「今までどおりやっていていいのか」と言われ、それまでやっていた業務全体の見直しと、さらなる貢献を求められるようになったことで、皆さん悩まれ、我々もそれにどうやって応えていけばいいのか悩んでいた。 リーマン・ショック以降というのは、このような時期だったと思います。   ――経理部の役割は「レポーティング」から「インテリジェンス」へ この悩みというのは大変深いものだったのですが、一方で「経営に役に立つ会計」を提供しようという我々の本来のコンセプトからすると、前向きに捉えるべきものでした。ただし、前向きに捉えるといっても、具体的にどう応えていくのかという問題があることに変わりありません。 そこで我々がテーマとして提案したのは、「レポーティングからインテリジェンスへ」というものでした。 これは従来、経理部の作成する会計情報というのはレポーティング、つまり外部開示に向けたワンウェイなものであったのを、これからはインテリジェンス、つまり経理部を、経営における意思決定を行うための情報を作成する部隊に切り替えていく必要があるというものです。 しかし、そのためにはすでにギリギリの状況で行っている、従来のレポーティングの業務負担を減らす必要がありました。 そこで、それまで我々は連結決算システムだけを提供していたのですが、レポーティング、つまり外部開示の業務そのものをアウトソーシングとして請け負うことを提案し始めたのです。 そもそも、外部開示に関しては会社固有の作業である必要はなく、比較可能性の観点から、他の多くの企業と同じ基準で作成・開示されるべきものです。そうであれば、そこは各企業が個別に労力をかけなくとも、アウトソーシングすることで開示情報の比較可能性は高まり、経理部はレポーティングに必要な情報の作成から解放され、「インテリジェンスとして有用な情報」、言い換えるなら「経営が本当に必要としている情報」、「戦略的なIRを行うために必要な情報」といったものを考え、作り出すことができるようになります。 これはまだビジネスとして我々の中で大きなウェイトを占めているとは言えませんが、それでも現時点で30社弱のお客様に採用していただいています。アウトソーシングを受けている業務範囲は、企業毎に部分的であったりレポーティング全体であったりと差異はありますが、そういった中でも傾向として見えてくるものとして、比較的小規模な企業より、大規模企業に採用いただいている、ということが挙げられます。 当初、我々の想定としては、レポーティングの業務負担が企業規模に対して大きい、上場会社の中でもあまり規模の大きくないお客様にニーズがあると考えていました。しかし実際には、大規模企業の方がより経理部に対して強い期待を持っており、レポーティングのための情報を作るといったルーティンワークは可能であればアウトソーシングしてしまい、経理部門の位置づけを、従来のレポーティング担当部署から、インテリジェンス的な情報作成を行う部門へと本気で変革する必要がある、という危機感を持っておられたのです。 実際に、現時点でも採用を検討していただいているお客様はやはりそういった大規模企業がほとんどであり、我々の当初の想定とは違う動きで意外だった、というのが正直なところです。   ――制度会計と管理会計、接点はどこに 次に、レポーティングからインテリジェンスへの変革を進めていく中で論点になるのが、制度会計と管理会計について、つまり「制管一致」についての問題です。 制度会計と管理会計を一致させるべきなのか、分離させるべきなのか、はたまた融合させるべきなのか、という問題については、私もこれまで試行錯誤してきました。 その中で至った結論としては、理想的にはもちろん一致させるべきだが、現実的には分離していくしかない、というものです。 つまり、現場が見ている数字をすべて制度会計の開示される情報に置き換えて、現場の実務がうまくいくのか。例えばシステムサービス会社で工事進行基準を適用していない場合、進行基準を適用せず会計上仕掛として計上されていると、実際のオペレーション上は進行基準に近い稼働状況等に応じた運営をする必要があるため、制度会計の情報をマネジメントに活用することができないわけです。 ただ、現場のオペレーティングに使う数字は従来の管理会計の考え方に則り必ずしも制度会計に合わせる必要がない一方で、経営者が経営判断をする根拠として見る数字は制度会計により作られた数字であるべきだ、とも考えています。 というのも、昨年弊社グループの一員となったジール社がグループ入りする際に経験したことなのですが、ジール社はもともと非上場会社で管理会計の面では非常に強かった一方、制度会計の面では多くの弱点を抱えていました。 そのため、管理会計で行っていた数字の算出を単純に制度会計に切り替えたことで、従来の経営判断に使っていた管理会計の数字とは大きく異なる数字が開示情報として出てきてしまい、決算直前で対応に追われるということが発生してしまったのです。 非上場企業であれば、経営判断に使う数字は管理会計で作成した数字で問題ありません。しかし、この時の経験から、上場企業であるのであれば、当然投資家は開示情報、つまり制度会計で出てきた数字のみで評価します。ですから、アカウンタビリティを求められる経営者が意思決定の根拠として使用する数字も、当然制度会計によって出てきた数字でなくてはならないと結論づけました。 これまで、管理会計と制度会計の議論は、特に単体の企業だと二律背反的なものとしてしか議論されてこなかった感がありますが、連結企業においては、開示に直結する制度会計の数字と、現場のオペレーションに直結する管理会計の数字は必ずしも一致しなくてもよいとも考えています。開示されない個別の情報を、あえて制度会計に合わせた情報にする必要はありませんし、制度会計の手法は個々の事業における数字の管理手法としては向かないことも多々あります。 しかし、こと経営者の意思決定においては、連結対象となっている事業単位ごとの責任者とコミュニケーションをとる際に、開示情報に直結する制度会計に則った情報で意思疎通を行わないと、それぞれの事業の業績評価を正しく行えませんし、それによる経営判断のアカウンタビリティも確保できません。 ですので、管理会計を全部排除しようとするのではなく、管理会計と制度会計というもの自体をもう一度よく整理をして、現場のオペレーションを回す「オペレーションの会計」は個別にやっていてもいい一方で、「グループ経営という観点で見る会計」は絶対的に一元管理して1つの会計基準でやらなくてはならないというのが私の今の仮説であり、実行していることです。 この考えはあくまで1つの仮説でしかないと当初は考えていたのですが、多くの顧客からヒアリングすると、むしろ超大企業でこそ同様の考えに至っているケースが多いことが最近わかってきました。 さらに、大規模企業のグループ経営の観点から数字を見る際には、個々の事業の営業利益に留まらず、グループ全体の最終利益の範囲まで含めて総合的に制度会計による数字を判断する必要があるのはもちろんのこと、全体をマネジメントする上では、個別の事業ごとのパフォーマンスを評価することも必要です。 その際に、個別の事業における数字が制度会計により統一されたものでなければ、当然適切な評価はできません。そのため、先述したように難しいのを承知の上で、各現場に制管一致させることを求める経営者も増加しています。 結局、これらの動きには、リーマン・ショック以降、どのグループ企業もそれぞれの事業から上がってくる最終的な数字に余裕がなくなった、という背景があるかと思います。 それまでのように各事業から上がってくる数字をバッファをきかせながら制度会計に則った数字に変換していくことで、最終的には予定調和的に黒字の決算書が出来上がるという状況ではなくなっていて、集まってきた数字のフタを開けてみると、つまり制度会計に則った数字に直してみると、その時点で赤字決算になってしまうことがわかるということが、非常に大きなリスクとなっている。 そういう事態を防ぐために、将来的に外部開示を行う前提の情報は、各事業部門で最初から制度会計に則った数字に落とし込んでおくことが重要と考える経営者が増えている、というのが最近のトレンドだと思います。   ――決算早期化のニーズは弱まらない これまでお話してきたように、まず経理部門に求められる役割がレポーティングからインテリジェンスへと変容していること、次に制管一致のトレンドが強まっていること、そして3つ目のトレンドとしては、古くからの永遠の課題ですが、「決算早期化」の問題というものがあります。 制管一致を目指すということは、会計基準を合わせるだけではなく、決算サイクルの問題もあります。経営判断にはスピード感が必要ということで、管理会計は、多少粗い数字でもよいのでとにかく早く数字を出すことを求められていた一方、制度会計は経営者が見ない数字だからということで、決算日から開示まで1ヶ月半かけてもいいというのがこれまで普通であったのが、制管一致というトレンドによって、制度会計の決算早期化が求められるようになりました。 そうはいっても、一時期のように大手企業の間で足並みをそろえて「本決算の月内開示を」というような決算早期化競争が行われていた時期に比べれば、今は多少トーンダウンしていて、闇雲に早さだけを求めるのではなく、開示は適切な時に適切に行えばいい、という風潮にはなっています。 ただ、これは決算の作業そのものが遅くなっているわけではなく、決算数字を整える作業自体は制管一致の観点からも可能な限り早く進め、それを開示するまでの意思決定期間を長くとりたいと考える企業が増えているのが実情です。内部的には決算から15日~20日くらいで開示できるための情報というのは整っている企業が増えてきていますから、実質的な決算早期化に対するニーズは改めて増加しつつあると言えます。 これは意外と見落とされがちなのですが、決算早期化というのは永遠の課題、各社の競争力の源泉として、制管一致のトレンドと含めて強くなってこそすれ、少なくとも弱くなっていることは全くないのです。 (次ページへ続く) (前ページへ) ――IFRSを使いこなす企業とは 次に、我々の事業とも関係の深いIFRSについてお話したいと思います。 民主党政権時代の自見金融担当大臣の発言で、国内のIFRSについての議論が大きくトーンダウンしたのはご存知の通りです。事実、「適用することが義務化されるから」というだけの理由でIFRSの検討を行っていた企業は、その時点で完全に動きが止まってしまったのですが、一方で先ほどの「レポーティングからインテリジェンスへ」という流れの中で、IFRSを適用することによって、ガバナンスも含めて連結グループ全体の会計処理を制管一致させ整えていこうと検討している企業は、動きを止めることなく粛々と検討を続けていました。つまり、IFRSを適用するということを御旗にして、制管だけでなく、グループ内会計基準も統一していこうというわけです。 IFRSはあくまで開示のための会計基準です。ただし、経営者が判断に使用している情報と同等のものを投資家にも開示することを求めているものなので、形式よりも実態を重視している点が特徴と理解しています。そういった中で、任意適用が認められているということ自体は変わらなかったわけですから、トーンダウンさせる理由がないのです。 また、10月28日付けで内閣府令の改正が公表され、IFRSの任意適用可能対象企業の範囲が広がることになりましたが、これにより適用可能となるベンチャー企業は加速度的にIFRS適用へシフトしていくのではないかと考えています。 その理由は、コストの問題ではなくリスクをとる経営にとって、とったリスク(B/S)とオペレーションの健全性(P/L)を明確にすることができることから、成長よりも利益を重視されがちな日本市場においてもリスクをとりやすくなるためです。具体的には、のれんの償却や研究開発費の資産計上といった部分がこれに該当します。 例えば仮にM&Aをしてのれんの償却がある場合などは、のれんの償却後の利益を見ても、実態を表しているとはいえないわけです。売上に対する利益があって、それに対する労働分配率を見たときに、のれん償却後の最終利益だけで見てしまうと、日本基準ですと利益が出ていないような数字が出てきて、社員への適切な還元ができなくなってしまいます。つまり、のれんとは別に、本来きちんと活動している成果としての利益から逆算したときに、これぐらいしっかりと還元すべきだという判断にズレが生じてしまうのです。 のれんというのは、あくまでも投資をした側がしっかりとリスクを持って、通常のオペレーションとは別のところで見ていかなければならないのが今の日本基準ですから、そのあたりで使いづらいところがある。 そういった観点では、M&Aをする機会がある会社にとってみれば、IFRSというのは1つの力になると思います。 また、研究開発費についても、特にIT企業の場合はなかなか資産計上できませんし、資産計上したもの自体が改めて売却可能性があるかというとほとんどありませんから、基本的には資産計上せずに可能な限り経費で落とすようにしてきていますが、それをし過ぎると赤字が膨らみ利益率が下がりやすい。そういった観点で、投資を促せないというリスクがあります。 もちろん、事業規模が小さい時は、事業の継続性の観点からその方が良いのですが、ある程度体力がついてくると、1年以上の単位で投資をして回収するというモデルをリスクをとってやっていかない限り、サービスカンパニーではなくプロダクトベンダーとしてやっていく以上、成功は難しいと思います。ここも今までの日本基準だとなかなか使えなかったところですが、IFRSを適用することで一定のリスクと引き替えに資産計上することが可能になります。 そうすることで、経営者としては今まで以上に、投資に対する「リスクへの感度」を高めなければならなくなります。しかし、それを高めることによってリスクのある選択肢を選ぶことができるようになり、B/Sを使った経営がやりやすくなる。 ですから、ベンチャー的な志向がある企業というのは、こういった面でIFRSの使い勝手はすごく良いのではないかと思っています。   ――連結経営者になって見えてきたもの 次に、我々アバント自身のグループ経営について、どういったテーマを持って臨んでいるかをお話します。 我々のグループ経営においても、冒頭で述べた「アカウンタビリティ経営の実践」を重要視しています。 もちろん、プライベートカンパニー、非上場会社であればそのような必要はないのかもしれませんが、やはり公開企業、パブリックな存在としての上場企業である以上、アカウンタビリティを担保することは絶対に必要なことだと考えています。 その際、すべてを闇雲にディスクローズすればいいと考えているわけではありませんが、いざ開示を求められた時にはすぐに出せる、そういった心づもりをして企業経営に臨む必要があると考えています。 事実、私自身、経費の細部に至るまで、説明がつけられる範囲のものしか使わないよう、万が一誰かに見られても恥ずかしくないようにするというのは、創業の時から心がけてきました。 しかし、このアカウンタビリティを、経営者である私だけに留まらず、いかに現場に落とし込むかということは大きな課題でした。 現場を事業部単位で分割し、P/Lも事業部単位に分解して、個々にマネジメントするようなモデルを試したりもしてみたのですが、なかなかうまくいきませんでした。結局のところ、事業部を細分化した場合には、個々の事業部にP/Lとして管理させるのは、いくら近年会計リテラシーが上がったといっても無理があったのです。 ただ一方で、例えば家計簿程度のレベルまで落としてしまうと、それをマネージするだけでは、現場レベルにアカウンタビリティを持たせるというテーマは達成できません。やはり分割されていても、P/Lという単位を管理できる組織単位は作る必要がありました。 これについては試行錯誤した結果、1単位として数千万程度の事業単位では難しいのですが、数億程度の事業部単位であればP/Lとしての管理が可能になる、という結論に最近至っています。 今は、この単位での管理・運営ができる体制を作り込んでいるところです。   ――ホールディングカンパニーは、事業のセコンド役 こうして事業部単位でP/Lを管理するようにしていくことで1点問題になってきたのは、「事業そのものの継続可否については、誰が判断するのか?」ということでした。 個々の事業部ごとにP/Lに落とし込んで、それをマネージしてくと、当然自分たちの事業部のP/Lをいかに最大化させていくか、どうやって一番良いパフォーマンスをしていくかということが最大目標になっていきます。 これはこれで良いことなのですが、時と場合によっては、「その事業は継続せず、たたむべきではないか」という経営判断をしなくてはならない時も出てきます。しかし、その事業のP/L単位で管理を任されている現場からすると、なかなか事業そのものの打切りを自分たちで判断することは難しい。 このようにP/Lの細分化は、権限を委譲して現場の人間のモチベーションを上げるという意味では非常に有用なのですが、どうしてもタコツボ化してしまう傾向にあります。 ですから、経営的にはやはり「セコンドのような立場の人間」、タオルを投げる役割がどうしても必要になりますし、これは現場とは別に設ける必要があります。 そういった判断をする際に、最も参考になるのがB/Sです。 B/Sを管理することで、企業全体の事業資産を把握して、各事業部に予算を設定し、事業部毎のROEなどのパフォーマンスを管理することで、事業継続の可否を、つまりタオルを投げるべきかどうかを判断する役割として機能します。 そして、その役割を持たせるために、今回、ホールディングカンパニーを設立することになりました(2013年10月、株式会社ディーバから株式会社アバントへ商号を変更し持株会社制へ移行)。 このホールディングカンパニーが司令塔として、各事業部が結果を出せるように徹底的にサポートして現場との信頼関係をつくることで、各事業のP/Lを管理する現場は自分たちの事業に集中できますし、事業継続の可否についてはホールディングカンパニー側で適切な判断が可能になります。 つまり、財務諸表的な観点から、P/Lドライブの人とB/Sドライブの人の役割を明確に分けて、B/Sプライムの組織としてホールディングカンパニーを設立した、というのが、会計的な視点から見た今回のホールディングに至った経緯、ということになります。 マネジメントの人材はホールディングに籍を置かせて、基本的にマネジメントのプロとして事業体に出向させていく。さらには人の一部とお金と情報に関してはすべてホールディングの所有にして各事業へ再配分していくことで、タコツボ化が起きにくく、全体的な視野を持った組織にしていく。 そうすることで、事業部制のメリットとデメリットをそれぞれクリアにし、新しい成果を出せるタイプの事業部制をつくっていきたいというのが、現在の我々のチャレンジです。   ――公器としての企業であり続けるために これらの事業のノウハウは、もちろんこれまで多くの顧客から話を伺ってきたことが大きな財産として活かされています。 ですが、すべてがどこかのモデルをそのままコピーしたものかというと、そうではありません。やはり自分たち自身が連結経営のあり方そのものに関わっている以上、自分たちなりに考え、かつ、自分たちの事業モデルとして一番有効であろうというモデルを導入し、なおかつプラスアルファで独自性を出していく必要があると考えています。 少なくとも全体の1割程度はオリジナリティを投入した経営モデルを作っていきたいという意識を持っています。 例えば最近ですと、わりと近い業種でMBOをしている企業がいくつかあるのですが、我々としてはこれに追従することなく、パブリックな存在、公器としての企業という存在として独自色を出し、これからも経営を続けていくつもりです。 MBOもファイナンス的には決してネガティブな選択肢ではないのですが、上場企業として、絶対的にアカウンタビリティを求められる企業体として、それでも投資家からの要望に応えつつ、説得しきって経営を続けていく。これが当初から目標としているアカウンタビリティ経営の真骨頂だと思っていますし、我々の経営におけるこだわりでもあります。 もちろん、容易なことではありませんが、それでもアカウンタビリティに資するものとして連結システムの提供を行っている以上、絶対にやりきるべきものだと考えています。 ですから、私は創業者ではあるのですが、「オーナーシップでは経営しない」「リーダーシップで経営していく」と言い続けていて、今後は一層多様なステークホルダーの集まりにしていきたいという志向があります。 これも公器としての企業という立ち位置を、アカウンタビリティを徹底的追求することにつながると思っていますし、そうすることで中長期的に、さらに超長期的に考えるとフリーキャッシュフローを最大化することができるというコンセプトを持って経営に臨んでいます。 もちろん簡単にはいかないでしょうし、30年程度では結果が出ないかもしれませんが、50年後にはこの選択が結果的には正しかった、ということを実証できればいい、と思っています。 (了)

#No. 44(掲載号)
#森川 徹治
2013/11/14
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