〔知っておきたいプロの視点〕 病院・医院の経営改善 ─ポイントはここだ!─ 【第4回】 「DPC/PDPSへの参加は必須か」 東京医科歯科大学医学部附属病院 特任講師 井上 貴裕 連載の第3回では、多くの急性期病院が参加するDPC/PDPSの概要を解説した。 本稿では、DPC/PDPSへの参加条件及び参加することの意義について言及する。 1 DPC/PDPSへの参加 DPCは、その支払いを受けるDPC対象病院と、データ提出だけを行い支払いは出来高で算定する病院の2つに分けることができる。 多くの病院は前者のDPC対象病院であり、参加のためには7対1入院基本料、あるいは10対1入院基本料を算定していることに加え、「データ/病床」比という基準が存在し、2年間のデータ提出を行い提出データ(退院患者数)/病床数が0.875以上(月)であることが求められる。 これは、急性期病院は病床数に対して一定の退院患者がいることを意味しており、在院日数が短く新入院患者がある水準に達していれば容易にクリアできる。それに対して、DPC/PDPSでの支払いは受けない病院は、要求されるデータを提出することによってデータ提出加算という診療報酬を受け取ることができる。 データ提出加算は2012年度診療報酬改定で新設されたものであり、DPC対象病院とそれ以外の急性期病院の診療状況の違いを把握するために評価が行われた。 DPC対象病院が1,500以上に増加した要因として、経済的なメリットをあげることができる。 DPC/PDPSでは暫定調整係数という前年度並みの収入が保証される仕組みがあり(当該係数は、2018年までに廃止される予定)、出来高から包括払いへ移行しても損をしないような配慮が行われている。 実際には、多くの病院が診療単価の向上という経済的な便益を受けている。 2 DPCに参加しない病院の特徴 このような経済的利益があるにもかかわらず、DPC対象病院にもならず、データ提出も行わない病院も存在する。 200床以上の病院で、DPC参加の要件である7対1入院基本料あるいは10対1入院基本料を算定している病院は、約100病院であると予想される。これらの病院のうち、国立病院機構の旧療養所など筋ジストロフィーや重症心身障害などを扱う急性期的な機能を有しない一般病院もあり、10対1入院基本料以上を算定する病院が急性期病院であると考えるならば、実質的には相当な割合の急性期病院がDPCに参加(データ提出を含む)している。 3 DPC/PDPSへの参加は必須か 特殊な機能を持つ専門病院や小規模の急性期病院を除いて、以下の理由からDPC/PDPSへの参加は必須であると筆者は考えている。 まず1つ目の理由は、DPCには標準化・効率化を促すインセンティブが仕掛けられており、出来高算定のような過剰な検査や投薬など無駄を誘発しやすい仕組みが制度として残ることは医療費抑制という環境下を前提とすると考えづらいからである。 2012年度診療報酬改定で、データ提出加算が新設され、DPCに参加しない病院であっても、データを提出することの経済的なインセンティブが設けられた。これにより、DPC対象病院とそれ以外の病院の診療プロセス等が明らかにされ、その実態が明らかにされる日も遠くない。 そうなると、DPC対象病院が、少ない医療資源の投入量で、より効率的で効果的な医療を提供していることが明らかになるであろう。 例えば、急性心筋梗塞の院内死亡率が、DPC対象病院が出来高算定病院よりも低いにもかかわらず、検査などの医療資源の投入量は少ない、という結果が出てくることが予想される。また、外来データの提出も行われるため、入院前後の外来における診療実態も何らかの形で制度に反映されていくことであろう。 2つ目の理由は、現行の制度では、急性期病院の診療報酬には2体系が存在し、二重価格であるという矛盾が生じており、中長期的には是正されることが予想されるからである。 同一のサービスには同一の価格がつけられるのが、経済学でいう一物一価の法則である。しかし、出来高算定を選ぶことにより、本来必要のない検査や投薬を行うことにより診療収入を稼ぎ出すインセンティブが生じることは矛盾があると予想される。 3つ目の理由は、高い精度の診療データを持つことこそ、急性期病院だと言えるからである。 医療は質が重要であり、質の高い病院には高い診療報酬を支払うという仕掛けも重要であろう(Pay for Performanceという)。その際に、他院と比較可能な適切なデータを保有することは極めて重要な意義を有する(ただし、データを作成することと、DPC/PDPSにおいて支払いを受けることは別問題であるともいえる)。 (了)
事例で学ぶ内部統制 【第15回】 「平成23年度に取り組んだ 内部統制の簡素化事例」 株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦 はじめに 本連載の最終回となる今回は、平成23年度に取り組んだ内部統制の簡素化事例を紹介する。 制度4年目を迎えた平成23年3月、金融庁は内部統制の基準・実施基準の更なる簡素化・明確化を促す改訂実施基準を公表した。 筆者(株式会社スタンダード機構)主催の実務家交流会では、改訂実施基準が最初に適用される平成23年4月以降に、企業が新たに導入した簡素化の対応、その効果や課題、監査法人とのコミュニケーションのあり方について意見交換を行った。 各社が取り組んだ創意工夫を見てみよう。 平成23年度に導入した簡素化事例 改訂実施基準は、企業において可能となる簡素化・明確化として、ELCの評価範囲の明確化や評価方法の簡素化、PLCの評価範囲の更なる絞込みと評価手続の簡素化、サンプリングの簡素化などを挙げ、併せて、事業規模が小規模で比較的簡素な構造を有している中堅・中小上場企業における効率化事例を紹介している。 いずれの参加企業においてもその内容を熟知し、社内で相応の検討を経て簡素化に踏み出していた。 ① 評価範囲の絞込み 参加企業Aは、「以前は、評価対象拠点が毎年の業績変動によって入れ替わっていたので、制度運用の負担が大きいと感じていた。そこで、評価範囲の選定に使う金額的指標を連結売上高のみとし、その金額的基準が一定年数で連続達成していることを条件とし、さらにセグメントの重要性という質的基準を追加することにより、評価対象拠点を原則として固定化した」(精密機器メーカー)と、評価拠点の絞込みを進めた。 ② ELCの簡素化 参加企業Bは、「従来は、すべての子会社を個別にELCの評価対象としていたが、社内改定後は、前年度の内部監査・外部監査結果において問題がなければ、その子会社を評価範囲には含めつつも、個別に評価対象とせず、むしろ親組織の支店として扱い、親組織のELCの評価のみで対応することとした」(食品流通会社)と、一定の条件を満たす子会社のELCの評価を親会社のELCの評価の一環に取り込んでいた。 ③ PLCの簡素化 PLCの簡素化は、評価対象となる勘定科目や評価対象となる業務プロセスの絞込み、整備評価の簡素化、前年度の運用評価の結果を継続して利用する運用評価のローテーション、監査法人との評価対象サンプルの共有など、多くの領域にわたっていた。 前出の参加企業Aは、「まず、各拠点の決算財務報告プロセスの評価対象勘定科目が12科目だったが、社内改定後は、未払法人税を税効果会計に、投資有価証券や関係会社株式は期末時価評価に集約することで相互の重複を解消し、9科目に削減した。また、販売、購買、棚卸のコントロールのうち、改定前は、現業部門における評価と経理部門における評価の重複が発生していたが、改定後は、決算財務報告プロセスとしてまとめて評価することとした」と、評価対象勘定科目と勘定科目に紐付けられた業務プロセスの絞込みの両方を行っていた。 整備評価について、参加企業Cは、「従来は、内部統制を統括する部署が指定した証憑類について、ウォークスルーによる評価を必須としていたが、今後は、整備状況に重要な変更がない場合は任意とした」(情報通信)と、整備評価の効率化を行った。 運用評価について、前出の参加企業Bは、「前年度の内部監査及び外部監査結果で問題のなかった業務プロセスについては、前年度の運用評価結果を継続して利用し、3年に1回の運用評価に変更した」と、早速、運用評価のローテーションを取り入れていた。 他方、前出の参加企業Cも「B社さんと同じだが、ローテーションの間隔は、2年に1回とした」と話した。 評価対象のサンプルについて、前出の参加企業Aは、「社内改定前は、監査法人と経営者がそれぞれ別個にサンプリングして評価していたが、改訂実施基準を踏まえ内部統制の評価方法を社内で改定した後は、監査法人と経営者との間でサンプルを共有し評価することとした。例えば、25件のサンプルを評価する場合、10件のサンプルについて監査法人は経営者が評価した結果をそのまま採用することとした。また、経営者は監査法人が選んだサンプルをそのまま経営者のサンプルとしても使用できることにした」と、監査法人とサンプルを共有し、かつ共有したサンプルに対して監査法人は経営者が行った評価結果に依拠することとした。 参加企業Dは、「改訂実施基準が公開される前から、監査法人と経営者評価で半数未満を共用していたが、社内での対応を改めて、サンプルの3分の2程度を共用することにした」(建設会社)と、監査法人との間でサンプルの更なる共用化を図った。 簡素化によって得られた効果 多くの参加企業は、「評価を受ける側も評価する側も、運用評価のローテーションに加え、監査法人との間でサンプルを共有し、全体のサンプル件数が減少したことにより、サンプル資料収集工数、対応工数の削減が図られ、負担が減少した」と、簡素化がもたらす所期の効果について間然するところがない。 さらに、前出の参加企業Dは、「モニタリングの関係者を絞ったことにより、関係者間のスケジュール調整が容易になった。その副次的効果として、監査部が金融商品取引法の内部統制評価から解放され、業務監査に集中することができるようになった」と加えた。 もっとも、効果の中身は代わり映えしないものだったので、議論は盛り上がらなかった。 簡素化による更なる改善や課題 これに対して、簡素化による更なる改善や課題については、 「依然として、同一監査証憑や調書の重複保存の問題、拠点や各組織内の内部統制部門と本社所属の内部監査部門による内部監査との重複の問題、他の諸監査(システム監査・購買監査・棚卸監査等)との重複の問題が残っている」 「改訂実施基準によれば簡素化が許容されない財務報告の信頼性に特に重要な影響を及ぼす評価項目とは何であろうか。結局、負荷が大きい決算財務報告プロセスなどの評価は、簡素化が許容されないのではないか」 などと、様々な声が上がった。 それどころか、比較的多くの参加企業が、「PLCの運用評価のローテーションで省力化は達成できるだろうが、各部門の内部統制に対する意識低下を招くと思う。むしろモニタリング頻度を上げるべきだ」と、簡素化一辺倒の流れに慎重であった。 監査法人とのコミュニケーションのあり方 改訂実施基準は、企業の創意工夫を監査法人が理解し尊重することや開示すべき重要な不備の判断基準の明確化を謳っているため、監査法人とのコミュニケーションのあり方に議論が及んだ。 参加企業Eは、「内部統制報告制度が導入される以前ではブラックボックスだった監査法人による重要性の判断基準が共有されることで、企業にとっては不意打ち防止や法的安定性が期待され、監査法人にとっても企業が行った内部統制の経営者評価の結果を活用して重要な不備の発見を効率的に行うことが可能になるはずだ」(資材メーカー)と、コミュニケーションの改善が双方にもたらす効果を巨細(こさい)に話した。 参加企業Fも、「簡素化よりも基準の明確化によって財務諸表監査のポイントが分かるようになり、監査対応がスムーズになると同時に、監査対象の部門に対しても、リスクとコントロールの重要性の意味を伝えることができるようになった」(食品メーカー)と話した。 他方、参加企業Gは、「内部統制を通じて監査法人とコミュニケーションを図り、監査の負担が減ったはずなのに、監査報酬の減額にはつながっていない」(商社)と、冗談を交えて苦笑していた。 読者に向けて 実務家交流会で意見交換したいずれの参加企業も、制度運用に手間隙をかけ悩みを抱えつつも、この4年間で制度がもたらした便益を享受していることを自覚している。 だからこそ、改訂実施基準が公表されても、それを適用するにあたっては、簡素化や効率化の視点だけでなく、有効化の視点を持ち合わせ、自分の頭で腑に落ちるまで検討を重ねていた。 そのとき、事例に裏付けられた真剣な意見交換は、巷で情報を転売する有識者の大言壮語と違い、その企業に正しい解を示してくれる可能性がある。 筆者は、意見交換された言葉自体に接してほしいと考え、紙面の制約の中、対話型による実例紹介を行ってきた。パラフレーズした瞬間に、言葉は力を失うからである。 本稿で紹介してきたわずかばかりの事例と意見交換が、読者各位を有効かつ効率的な制度運用にいざなう道標となれば望外の喜である。 (連載了)
《速報解説》 サービス付き高齢者向け 賃貸住宅に係る 平成25年度税制改正事項 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 高齢化が急速に進む中、介護・医療と連携して高齢者支援サービスを提供できる住宅の確保が重要となっており、こうした住宅の供給を促進するために、建築費や改修費の補助、税制面、融資面における支援が実施されている。 このうち税制面での支援については、平成25年度税制改正において、次の措置が講じられることとなっている。 【1】 割増償却制度の適用期限の延長・制度の縮減(所得税・法人税) (1) 現行の制度の概要(平成25年3月31日まで) 「サービス付き高齢者向け賃貸住宅」を新築後取得し、又は新築して、これを賃貸の用に供した場合には、賃貸の用に供した日から5年間にわたり通常の償却費の1.28倍(耐用年数が35年以上であるものは1.4倍)の割増償却が認められている(措法14、47)。 「サービス付き高齢者向け賃貸住宅」とは、高齢者の居住の安定確保に関する法律5条1項に規定するサービス付き高齢者向け住宅のうち、賃貸借契約に基づいて供給されるもので、戸数が10戸以上あり、1戸当たりの床面積が25㎡以上(専用部分のみ)のものをいう(措令7、29の4)。 (2) 改正の内容 適用期限が平成28年3月31日まで3年延長される。 また、平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に取得等をした住宅については、割増償却率が次の通り引き下げられる。 【2】 固定資産税の減額措置に係る適用期限の延長 (1) 現行の減額措置の概要(平成25年3月31日まで) 次の要件をすべて満たすサービス付き高齢者向け住宅は、新築後5年間にわたって固定資産税額が3分の1に減額される(1戸当たりの共用部分を含む延床面積120㎡の部分まで)(地法附則15の6②、15の8④)。 (2) 改正の内容 適用期限が平成27年3月31日まで2年延長される。軽減の割合や対象となる住宅の要件に変更はない。 【3】 不動産取得税の特例措置に係る適用期限の延長 (1) 現行の特例措置の概要(平成25年3月31日まで) 次の要件をすべて満たすサービス付き高齢者向け住宅を新築したときは、家屋と土地に係る不動産取得税が次の通り軽減される(地法73の14①、73の24①、地法附則11⑭、11の4③)。 (2) 改正の内容 適用期限が平成27年3月31日まで2年延長される。特例措置の内容や対象となる住宅の要件に変更はない。 (了)
《速報解説》 平成25年度税制改正による 相続税等の納税義務者と 課税範囲の見直し 税理士 齋藤 和助 Ⅰ 改正内容 「平成25年度税制改正大綱」の「資産課税」「その他」の事項に、相続税等の納税義務者と課税範囲の見直しについて次のように記載されている。 現行法では、相続人等が外国に居住している場合、日本国籍を有していれば相続等により取得した国外財産に課税されるが、日本国籍を有していなければ課税されない。 これに対し、改正案では、日本国籍の有無に関係なく課税しようというもので、現行法での分類における下図の網掛け部分の「対象外」を「課税」にしようというものである。 2 納税義務者の意義 現行法における納税義務者の意義は、次のとおりである。 ただし、②において、当事者の双方が相続開始等前5年以内に日本国内に住所を有したことがない場合には③となる。 しかし、上記改正案が実現した場合には、もはや納税義務者の区分は意味がなく、日本国内に住所を有する者から相続等により財産を取得した場合には、上記区分に関係なく、すべての財産に課税されることになる。 3 改正の背景 現行法においては、例えば外国で出生した孫に外国籍を取得させれば、祖父から子への国外財産の贈与については課税されるが、孫への贈与には課税されない。 このように子や孫に外国籍を取得させることで、国外財産への課税を免れるような租税回避事例が生じていることから、今回の改正が行われることになった。 4 今後の動向 外国籍を取得した孫へ信託受益権の贈与があったとして贈与税の決定処分がなされ、税務訴訟となり、一審の名古屋地方裁判所において、決定処分を取り消す判決があり、国側が控訴している事件がある(事件番号:平成20年(行ウ)第114号)。 この判決は、信託設定時に利益を受ける者は存在しないという理由での取消しであり、納税義務の有無が問題となるものではなかった。しかし、控訴審で、納税義務や財産の所在等が問題となれば、今回の改正への影響も考えられることから、訴訟の経過とともに今回の改正の行方に注目したい。 (了)
《速報解説》 IFRS財団 会計基準アドバイザリー・フォーラム(ASAF)を設置 ~日本から企業会計基準委員会が立候補~ Profession Journal 編集部 IFRS財団は、国際会計基準審議会(IASB)が国際財務報告基準(IFRS)を開発するに当たって、世界の幅広い国や地域の意見を聞き、協議する場として、「会計基準アドバイザリー・フォーラム」(ASAF)を創設する。 ASAFは、各国の会計基準設定主体及び会計基準の設定に関与している地域団体(以下「地域団体」)※で構成される。4月8日もしくは9日に、第1回会議をロンドンで開催する。 国際会計基準審議会(IASB)と各国の会計基準設定主体や地域団体とが協力しIFRSの開発を進める正式な協議体として、ASAFでは、現在IASBが検討しているIFRS概念フレームワークの見直し、あるいは、個々の会計基準の開発において、専門的、技術的な議論を行う。 ASAFのメンバーは、会計基準設定主体や地域団体の12人のメンバーで構成される。IASB議長又は副議長が議長を務め、会議は通常、ロンドンで開催される。 メンバー構成は、経済地域のバランスを確保するため、以下の地域・議席に振り分けている。 メンバーは現在(2013年3月12日)、選考中である。日本からは、アジア・オセアニア代表として、企業会計基準委員会(ASBJ)が立候補している。 従来日本は、IFRSの基準づくりにあたり、IASBが作成した公開草案に意見を表明することにより、日本の立場を反映させてきた。ASAFに参加することにより、日本の市場関係者等の意見を踏まえて深く議論に関与できるため、日本の立場が、よりIFRSに反映されることが期待される。 ただ、ASAFは、あくまで諮問機関として議論する場であり、会計基準に関し、結論を出す場ではないとしている。 ※アジア・オセアニア基準設定主体グループ(AOSSG) 欧州財務報告諮問グループ(EFREG) ラテンアメリカ基準設定主体グループ(GLASS) 全アフリカ会計士連盟(PAFA) (了)
《速報解説》 「会社計算規則の一部を改正する省令案」 (公開草案)について 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成25年3月8日付けで、法務省は、「会社計算規則の一部を改正する省令案」(以下「省令案」という)を公表し、意見募集を行っている。 意見募集期間は平成25年4月8日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 省令案の主な改正点 省令案は、企業会計基準委員会の「退職給付に関する会計基準」(企業会計基準第26号)の公表等を踏まえて、会社計算規則を改正するものである。 改正内容は次のとおりである。 ① 負債の評価(改正) 退職給付引当金の規定に、「第75条第2項第2号において同じ」を追加する。 【省令案6②一イ】 ② 資産の部(新設) 前払年金費用(連結貸借対照表にあっては、退職給付に係る資産) 【省令案74③四ニ】 ③ 負債の部(改正) 引当金(資産に係る引当金、前号ニに掲げる引当金及びニに掲げる退職給付引当金を除く) 【省令案75②二ハ】 ④ 負債の部(新設) 退職給付引当金(連結貸借対照表にあっては、退職給付に係る負債) 【省令案75②二ニ】 ⑤ 純資産の部(新設) 退職給付に係る調整累計額 省令案76条7項5号の退職給付に係る調整累計額については、次に掲げる項目の額の合計額 【省令案76⑦五、⑨三】 ⑥ 株主資本等変動計算書等(新設) 退職給付に係る調整累計額 省令案96条5項5号の退職給付に係る調整累計額については、次に掲げる項目の額の合計額 【省令案96⑤五、⑨三】 Ⅲ 適用時期等 改正後の会社計算規則については、公布の日(未定)から施行することが予定されている。 ただし、経過措置として、平成25年4月1日前に開始する事業年度に係る計算関係書類については、なお従前の例によることとする予定である。 (了)
『日米租税条約 改定議定書』 改正のポイントと実務への影響 【第1回】 「改正の概要及び利子所得免税」 税理士法人トーマツ パートナー 税理士 小林 正彦 1 概要 日米租税条約の改正については、昨年6月に基本合意に達したことが公表されていたが、その後、2013年1月24日に改正議定書に署名されるとともに、改正内容の詳細が明らかになった。同条約の改正は2003年以来となる。 改正の主な項目は4に掲載した表のとおりであるが、中でも重要な改正点は以下の3点である。 2 発効時期 今後それぞれの国内手続(日本は国会の承認)を経て、両国間で批准書が交換されることにより効力を生ずる。 2003年の新条約締結時には、2003年11月6日に新条約に署名され、翌年3月30日に批准書が交換された。 3 適用対象・適用時期 この議定書に盛り込まれた新条約の内容は、次のものについて適用される(議定書15②)。 上記にかかわらず、相互協議中の事案については、仲裁に移行する基準となる期間の2年の起算日は、この議定書が効力を生ずる日となる(議定書15③)。 また、情報交換、徴収共助の規定は議定書の発効日から適用する。 なお、教授免税の特典を受ける権利を有する個人は、議定書が効力を生じた後においても、それまで有している権利を失うときまで特典を受ける権利を引き続き有する。 4 改正の概要 〈日米租税条約の改正内容(平成25年1月24日署名)〉 ※画像をクリックすると、PDFファイルが開きます。 5 利子所得に関する改正 (1) 原則として源泉地国免税となった 利子所得は、従来は、金融機関の得るものを除いて、利子の発生した国(源泉地国)において10%を限度税率として課税できるとされていたが、改正後は原則として源泉地国では免税となる。 例えば、日本親会社の米国子会社に対する貸付金の利子については、従来は居住地国である日本で全世界課税の中で利子所得も課税され、加えて源泉地国である米国でも10%の源泉徴収が行われ、日本における確定申告書上、外国税額控除により二重課税の一部排除を行うという仕組みをとっていた。 改正後は、米国での源泉地国課税は行われないことになるので、企業にとっては外国税額控除の申告に要する手間が省け、親会社側の外国税額控除の枠が足りないことにより二重課税が完全には排除できないという問題もなくなる。 日米双方の企業にとっては、資金のやり取りがしやすくなるという点で朗報である。 (2) 源泉地国免税の例外 次のものは、源泉地国課税の適用対象とされる(議定書4、新条約11②)。 このうち(a)は新設の規定であるが、それ以外は現行条約に同様の規定がある。 【参考】 財務省ホームページ ・「アメリカ合衆国との租税条約を改正する議定書が署名されました」 ・「アメリカ合衆国との租税条約を改正する議定書のポイント」 (了)
税制改正を学ぶ ~税制改正を理解するためには 過去の改正の背景・経緯を理解することが必要 税理士 朝長 英樹 1 近年の法人税に関する疑問点や争点のほとんどが平成12年度改正以後の改正部分 法人税に関しては、近年、大きな改正が続いています。 この法人税に関する大きな改正が始まったのは、平成12年度の金融取引に関する取扱いの抜本改正(有価証券の取引に関する取扱いの抜本改正、デリバティブ取引・ヘッジ取引に関する規定の創設、外国為替取引等に関する取扱いの抜本改正)からですが、この平成12年度改正前の法人税関係法令の規定の量は、同改正から近年の改正の基礎を作った平成15年度改正までの改正により約2倍となり、その後、現在までの改正により約3倍となっています。 このような近年の改正には、従前の改正とは大きく異なる特徴があります。 それは、改正内容が時代の要請に合うように制度を根幹から改めるものとなっていること、そして、改正規定が取扱いを非常に詳細に定めていることです。 現在の法人税法は、昭和40年度改正によって制定されましたが、その後、30数年の長きにわたって本格的な改正が行われてこなかったと言えます。 平成12年度改正以後の改正は、この30数年間の遅れを取り戻す改正という性格のものであるため、連年のように、制度の根幹を改めるような改正が行われることとなったわけです。 また、平成12年度改正以後の改正は、改正規定が非常に詳細に定められているという特徴がありますが、これは、従来、「通達行政」という批判を受けるような状態があったことに対する反省として、「租税法律主義」という原則に立ち返って税制度を設けることとしたことによるものです。 「デリバティブ・ヘッジを境に法人税の条文が全く変わった!」と言われることがよくありましたが、仮に、平成12年度改正以後の改正を従来のように大幅に通達等に委ねていたら、かなりの混乱が生ずることとなったと考えられます。 このように、平成12年度改正以後の改正には、制度の根幹を改め、取扱いを詳細に定めるという特徴があり、これらは基本的にはプラスに評価できると考えますが、その反面、改正が非常に複雑で難解であるというマイナス面も生ずることとなりました。 平成12年度の金融取引に関する取扱いの抜本改正、平成13年度の資本等取引の取扱いの抜本改正と組織再編成税制の創設、平成14年度・15年度の連結納税制度の創設などから始まる近年の改正は、従前の改正とは大きく異なっています。平成18年度の会社法創設に伴う改正や平成22年度のグループ法人税制に係る改正なども、非常に複雑で難解な改正となっています。 このような事情のため、近年の法人税に関する疑問点や争点のほとんどが平成12年度改正以後の改正部分に関して生じているのです。 2 近年は『平成○年度税制改正の解説』の解説がよく分からない 上記1で述べたような複雑で難解な大規模な改正が行われると、自ずと、その改正の解説が非常に重要となります。 法人税法の過去の改正に関する解説がどの程度のものであったのかということを推測する材料として、『改正税法のすべて』(大蔵財務協会)又は『税制改正の解説』(財務省)の法人税法の改正に関する部分の頁数を確認してみると、次のとおりです。 昭和40年度改正は現在の法人税法を制定した改正で全項目にわたる改正となっているわけですが、その解説の頁数が77頁となっているのに対して、平成12年度改正等は個別項目の改正でありながら、その解説に非常に多くの頁数を割いており、近年の改正の解説が詳細に行われていることを、この数字から容易に読み取ることができます。 改正の内容を詳しく解説するということは、非常に大事なことであり、積極的に評価することができます。 しかし、その反面、「昔は、『改正税法のすべて』の解説を読めば改正の意味や内容がよく分かったが、最近は、読んでも、よく分からない」、「『税制改正の解説』の解説に書いてあることに疑問を感ずる」というような声が少なくありません。特に、平成18年度改正と22年度改正に関しては、『税制改正の解説』に記載されていることに対する疑問の声が多く寄せられました。 近年の改正は、詳しく丁寧に解説が行われてはいるものの、一般には、その改正内容が必ずしも十分に咀嚼されて理解されているとは言えず、また、改正内容に課題を残す部分も存在する、という状態になっているように思われます。 3 改正を正しく理解するためにはその改正前の取扱いを定めた改正を正しく理解する必要がある 今後、平成25年度以後の改正内容は、現時点では、まだよく分かりませんが、改正は常に過去の改正によって改められたものを改正するということになりますので、平成25年度以後の改正も、それ以前の改正内容を理解していなければ、正しく理解することはできません。平成25年度改正以後の改正を正しく理解するためには、その改正前の取扱いを正しく理解しておくことが必要であり、その改正前の取扱いを定めた改正の正しい理解を避けて通ることはできない、ということです。 これに関して、具体的な例で確認してみましょう。 平成25年度改正においては、連結納税制度における投資簿価修正に関する改正が予定されています。 これは、連結法人が他の連結法人の株式を当該他の連結法人の自己株式取得に応じて譲渡した際に当該他の連結法人の株式について投資簿価修正が行われず、その後、当該他の連結法人の株式を譲渡することとなった場合に投資簿価修正を行って譲渡損益を計上するということにしたままでは譲渡益が過大に生じてしまう、という問題点を是正するための改正であると説明されています(政府税制調査会(平成24年11月14日)の資料「連結子法人の個別利益積立金額がマイナスである場合の投資簿価修正とみなし配当」を参照)。 このような説明からすると、この改正は、過大な課税が生じないように技術的なところに関して規定の整備を行うもの、というように受け取られる可能性があります。 しかし、この改正は、本来は、そのような規定の整備というような性格のものではない、と考えられます。 この改正で是正しようとされている過大な課税という状態は、平成22年度改正における投資簿価修正の改正及び100%グループ法人間の自己株式等の取引について譲渡損益を計上せず資本金等の額の増減で処理することとされた改正に伴って生じているものです。 すなわち、平成22年度において、100%グループ法人間の自己株式等の取引について譲渡損益を計上せずに資本金等の額の増減で処理するという改正を行わず、株式のキャピタルゲインとキャピタルロスを正しく譲渡益と譲渡損とすることとしていれば、そもそも上記のような過大な課税という状態が生ずることにはならないわけです。 この過大な課税に関しては、そもそも平成22年度改正において本来は譲渡損益を計上するべきであるところを資本金等の額の増減としたところに問題があるわけであり、その根本的な問題に目を向けず、対処療法的に、連結子法人の個別利益積立金額がマイナスの場合における投資簿価修正の改正、すなわち、課税が生ずる場面だけについて改正によって課税を生じさせないようにするという対応には、疑問がある、と言わざるを得ません。 このように、小さな部分の小さな改正であっても元がよく分かっていなければ本当の正しい理解はできないという例は、決して珍しいものではなく、今後、法人税法改正においては、数多く出てくることになるものと思われます。 4 税制改正の『解説』を解説するものが必要となっている 近年、我が国の法人税制は、改正を重ねることにより、先進諸外国と比較して遜色のないものになってきたものの、制度の解説が改正に追いつかず、これが我が国の大きな課題となっています。 財務省から『平成○年度税制改正の解説』として公表される毎年度の税制改正の解説についても、改正前の取扱いを詳しく説明したり、改正の内容を分かりやすく説明したり、実務上の留意点や疑問点を詳しく説明したり、また、理論的な問題点を解説するなど、「『解説』の解説」とも言うべきものが、新しく求められていると言えます。 (了) Digital book 『法人税制改正詳解 2011-2012』 編 集:税の街.jp 「議論の広場」編集会議 ページ数:528頁 定 価:2,100円(税込) 発 行 日:2013年1月31日 発 行:清文社 ※本書はデジタルブックです。専用画面より、ID・パスワードを入力し、ログインして閲覧するものです。 本書(デジタルブック)は、新制度の導入や多岐に亘る税制改正により複雑化する法人税の取扱いについて、財務省公表の『税制改正の解説』のうち法人税関連の内容のみに着目し、実践的な解説を行ったものです。初年度版においては平成23年度・平成24年度税制改正及び通達等を織り込み、実務において留意すべき事項や疑問点について詳細な解説を加えています。 過去の改正の背景・経緯を踏まえ、取扱い上の解釈や具体的な事例とともに、経験豊かな税理士・会計士がポイントをまとめた法人税実務の指針書です。 お問い合わせ・ご購入については、こちら(清文社ホームページ)から(試し読みもできます)。
〔平成9年4月改正の事例を踏まえた〕 消費税率の引上げに伴う 実務上の注意点 【第14回】 税率変更の問題点(13) 「経過措置に関する注意点(その4)」 アースタックス税理士法人 税理士 島添 浩 5 役務の提供に関する経過措置について 事業者が、施行日後に役務の提供を行った場合には、新税率を適用することとなるが、以下の経過措置の規定に該当する契約を指定日の前日までに締結した場合には、施行日後の役務の提供であっても旧税率を適用する。 この経過措置規定に該当する「役務の提供に係る契約」とは、その対象となる契約が少なく、具体的には冠婚葬祭のための施設の提供その他便宜の提供等に係る役務の提供(いわゆる冠婚葬祭の互助会における積立金)が該当する。 また、上記経過措置における2号の要件にある「役務の提供の対価の額の変更」には、当該契約において定められた役務の提供の内容の変更も含まれる。 したがって、役務の提供に係る契約であっても、契約期間の定めがあるビル等の清掃・メンテナンス業務、機械・器具等の資産の保守・管理業務などについては、契約期間中に継続して役務の提供を行うものであり、目的物の引渡しが一括して行われるものではないことから経過措置の対象とはならず、施行日後の期間に係る消費税について新税率が適用されることとなる。 なお、このメンテナンス業務や管理業務などの役務の提供に係る資産の譲渡等の時期は、原則として、役務の提供がすべて完了した日となるが、契約又は慣行により1年分の対価を収受することとしている場合で、事業者が継続して当該対価を収受した時に収益計上しているときは、施行日までに収受し、収益計上したものについては旧税率を適用する。 6 長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例を受ける場合における税率等に関する経過措置 (1) 長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例の意義 消費税法における資産の譲渡等の時期については、原則として「課税資産の譲渡等をした時」(いわゆる引渡基準)となっており(国税通則法15条2項7号)、具体的には、資産の譲渡等の場合は資産の引渡しのあった日、資産の貸付けの場合は使用料等の支払いを受けるべき日、役務の提供の場合はその目的物の全部を完成して引き渡した日又は役務の全部を完了した日となっている。 この消費税法の資産の譲渡等の時期の原則については、所得税法又は法人税法における総収入金額又は益金の額に算入すべき時期と同じ取扱いとなっている。 また、所得税法又は法人税法における資産の譲渡等の時期については、いくつかの特例規定を設けていることから、消費税法においてもその取扱いを統一するために、資産の譲渡等の時期の特例規定を設けている。 事業者が所得税法に規定する延払条件付販売等又は法人税法に規定する長期割賦販売等に該当する資産の譲渡等(以下「長期割賦販売等」という)を行った場合やリース譲渡(ファイナンスリース取引)を行った場合において、その長期割賦販売等に係る対価の額につき延払基準又はリース延払基準の方法により経理することとしているときは、その資産の譲渡等の賦払金の額で翌課税期間以後にその支払期日が到来する部分(すでに支払いを受けたものを除く)については、資産の譲渡等を行った課税期間において資産の譲渡等を行わなかったものとみなして、その部分に係る対価の額を当該資産の対価の額の合計額から控除することができる。 この長期割賦販売等に該当する資産の譲渡等とは、以下のすべての要件を満たすものをいう。 なお、リース譲渡については、上記の要件はなく、その契約につき中途解約ができず、フルペイアウトの取引(前回参照)であれば長期割賦販売等に該当し、資産の譲渡等の時期の特例の対象となる。 消費税法においては、所得税法又は法人税法において長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例規定を適用している場合であっても、原則として引渡基準が適用されるが、事業者の事務負担等を考慮して所得税法又は法人税法とその取扱いを統一するために延払基準又はリース延払基準を適用することができる。 なお、所得税法又は法人税法において延払基準又はリース延払基準により経理しなかった場合や消費税の納税義務規定により課税事業者が免税事業者となった場合、免税事業者が課税事業者となった場合には、この資産の譲渡等の時期の特例を適用することはできず、その不適用となる時に、その資産の対価の額のうち未だ資産の譲渡等を行わなかったとみなされている部分につき一括して資産の譲渡等が行われたものとして処理することとなる。 したがって、長期割賦販売等に係る特例規定の適用関係は以下のようになる。 また、長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例を適用した場合の延払基準に基づく売上計上金額の計算については、以下のようになる。 なお、消費税法における資産の譲渡等の時期の特例は、あくまで売上計上時期の特例であり、資産を譲り受けた事業者については、資産の引渡しを受けた日においてその対価の額の全額につき仕入税額控除を行うこととなるので注意しなければならない。 (2) リース譲渡を行った場合 事業者が平成20年4月1日以後に締結するリース取引については、そのリース資産を賃借人へ引き渡した時にその資産の売買があったものとされ、原則として、その引き渡した時にその資産の対価の額の全額が売上げに計上されることとなる。 しかしながら、このリース譲渡については、上記(1)のように長期割賦販売等に該当することから長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例規定の適用が認められている。 リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例については、上記(1)の延払基準以外にも、以下のようなリース延払基準により売上げを計上することも認められている。 消費税法においては、所得税法又は法人税法につき上記のリース延払基準により経理処理をしている場合、その同一の基準により資産の譲渡等の時期の特例を適用することとなり、所得税法又は法人税法と異なる基準で行うことはできないので留意しなければならない。 なお、消費税法におけるリース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例については、上記(1)と同様にあくまで売上計上時期に関する特例であり、リース取引の賃借人側は一括して仕入税額控除を行うこととなるが、リース譲渡については賃貸借処理による分割控除も認めている(前回参照)。 (3) 長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例における経過措置 上記(1)及び(2)の長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例を受ける場合において、施行日の前に資産の引渡しを行い、施行日以後に支払いを受ける賦払金については、以下の経過措置規定により旧税率が適用される。 この経過措置規定については、請負契約に関する経過措置や資産の貸付けに関する経過措置とは違い、指定日までに契約を締結する必要はなく、施行日前までに資産の引渡しを行っていれば経過措置の対象となる。 消費税法においては、あくまで引渡基準が原則であり、延払基準やリース延払基準は特例規定であり旧税率を適用することが妥当であると考えられている。 経過措置の適用のイメージとしては、以下のようになる。 〔経過措置の適用例〕 【ケース1】 施行日前に引き渡した場合 【ケース2】 施行日後に引き渡した場合 なお、平成27年10月1日以後の賦払金について、【ケース1】の場合には5%、【ケース2】の場合には8%が適用されることとなる。 また、この経過措置の適用を受けた長期割賦販売等について、売上げに係る対価の返還等又は貸倒れがあった場合には、施行日後の返還等又は貸倒れであっても旧税率により処理することとなるので注意しなければならない。 (了)
〔平成25年4月1日以後開始事業年度から適用〕 過大支払利子税制 ─企業戦略への影響と対策─ 【第2回】 「損金不算入額の計算方法」 アースタックス税理士法人 税理士 中村 武 前回は本制度創設の背景及び概要について解説したが、より理解を深めるため、今回は事例及び図解により、「損金不算入額」及びその後の事業年度における「損金算入額」の計算イメージについて示すこととする。なお、解説の都合上、適用除外基準については考慮外とする。 1 損金不算入額の計算イメージ 事例1 〈損金不算入額の計算〉 ① 調整所得金額の計算 当期所得金額50(C)に、関連者純支払利子等の額200(A)と減価償却費30(B)を加算し、調整所得金額を求める(計算イメージとしては、関連者純支払利子等の額及び減価償却費の損金算入前の所得金額を算出する形となる)。 本事例では280となる。 ② 損金算入限度額の計算 ①の調整所得金額の50%相当額である140が損金算入限度額となる。 ③ 損金不算入額の計算 (A)の関連者純支払利子等の額200から、②で求めた損金算入限度額140を引いた60が、損金不算入額となる。 〈事例1:イメージ図〉 このように、所得金額に比して関連者純支払利子等の額が多額である場合には、本制度導入により「所得の金額に比して過大な利子の金額」について損金不算入額が計上されることとなる。 これに対し、次の事例のように、関連者純支払利子等の額が、所得金額に比して多額でない場合には、本規定による損金不算入額は計上されない。 事例2 〈損金不算入額の計算〉 ① 調整所得金額の計算 調整所得金額は、(C)+(A)+(B)の算式により480となる。 ② 損金算入限度額の計算 損金算入限度額は①の50%相当額である240となる。 ③ 損金不算入額の計算 当該事業年度の損金不算入額の計算を行う。(A)-②で、-40となり、当該事業年度の関連者純支払利子額の全額が損金算入される。 〈事例2:イメージ図〉 2 超過利子額の損金算入額の計算 より理解を深めるためのため、その後の事業年度における超過利子額の損金算入額の計算及びそのイメージ図を次にまとめる。なお、上記の事例1を適用初年度、事例2を適用次年度として取り上げる。 事例3 〈超過利子額の損金算入額の計算〉 適用次年度において、 関連者純支払利子等の額(200) ≦ 損金算入限度額(240) であったことから、損金算入限度額に満たない部分の金額の40を限度として、適用初年度に生じた超過利子額が損金算入されることとなる。 具体的には、超過利子額60のうち40が適用次年度において損金算入され、残りの部分である20については翌事業年度以降に繰り越されることとなる。 〈事例3:イメージ図〉 このように、過大支払利子税制においては、損金不算入額を計算する際に、当期所得金額等を考慮に入れる必要があることが、従前の移転価格税制及び過少資本税制との大きな違いの1つとなっている。 また、損金不算入額についても、その後の事業年度において多額の所得金額が出ることが予想される場合には、その時に損金算入が考えられるため、当期のみならず翌期以降の所得予想が、本制度の影響を検討する際に必要となる。 次回以降においては、今回の損金不算入額及びその後の損金算入額計算のイメージをもとに、関連者純支払利子等の額、関連者等に対する支払利子等の範囲等、規定の具体的な内容について確認を行うものとする。 (了)