税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第51回】 「減価の査定にそれなりの判断を伴う土地(その5)」 ~がけ条例の適用を受ける場合~ 不動産鑑定士 黒沢 泰 1 はじめに 数多い土地のなかには、がけに隣接しているものも見られます。例えば、以下のようなイメージの土地がこれに該当します。 〈がけに隣接した土地のイメージ〉 (出所) 埼玉県ホームページ「埼玉県建築基準法施行条例と解説」 一般の人を対象にこのような土地の価格について説明する場合には、「近隣でがけに接していない土地と比較して、がけによる危険度を考慮(減価)してX円/㎡と査定しました」という話の方が分かりやすいと思われます。しかし、がけの高さのいかんによってはこれだけでは説明がつかず、減価の程度を査定するに当たっては建築基準法の知識を必要とするケースがあります。 今回取り上げるのは、いわゆるがけ条例(正式には「○○県建築基準法施行条例」等の名称で都道府県ごとに定められている条例中のがけに関する規定)が適用される土地であり、厳しい建築制限が課されているケースです。 2 建築基準法及び条例による建築制限 建築基準法では、以下のとおり、地方公共団体が条例により本来の規定以上に制限を厳しくすることができる旨を定めています。 この規定を根拠に、都道府県が建築基準法の施行に関する条例を定めているケースが多く見受けられますが、今回取り上げるがけ条例もこれに該当します。 例えば、ある県の建築基準法施行条例では、がけについて以下の規定を置いています(下線は筆者によります)。 なお、「がけ」とは斜面の勾配が30度を超えるものを指すのが一般的です。 この条例の趣旨を要約すれば、がけ高が2mを超える場合は、擁壁を築造せずにがけの下端の基点からがけ高の2倍以内の位置に建築物を建築すること(そのための敷地造成も含みます)が禁止されるということです(擁壁の築造には相当の費用を要するため、これに見合う分が土地の評価減となります)。 3 鑑定評価に当たって がけに隣接する土地には上記のような建築制限があるため、不動産鑑定士が鑑定評価を行う際には、市町村等の建築担当窓口で対象地ががけ条例の適用を受けるかどうかを十分に確認するようにしています。 また、がけ条例の適用を受ける土地の場合、(上記条例でも掲げているとおり、技術的な面から擁壁の築造が不要とされる例外規定も存することから)、次の事項の確認も欠かすことはできません。 これらの調査結果を踏まえ、(ア)建替えの際には新しい擁壁に置き換えることが必要であるとか、(イ)(建替え又は現状どおりの建物使用を含めて)既設の擁壁に補強が必要である旨の判断がなされた場合には、費用面から減価の程度を査定することとなります。 4 宅地建物取引業法における重要事項説明義務との関連 土地評価の問題ではありませんが、不動産売買における重要事項説明の対象としてがけ条例の存在は大きな意味を有しています。 これに係る裁判例ですが、土地の購入者が宅地建物取引業者から、がけ条例が存在することの説明を受けなかったとして売買契約の解除を認められたケースがあります(東京地裁平成23年4月20日判決、ウエストロー・ジャパン)。 本件において、裁判所は次の旨判示しています。 (※) 2020年4月1日から施行された改正民法前の規定に基づく裁判例であり、現行民法では、契約不適合責任の規定(同法第565条)が適用されています。 (了)
《税理士のための》 登記情報分析術 【第10回】 「登記の優先順位」 ~同一区内の優先順位~ 司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎 1 「順位番号」がポイント 不動産に関する登記記録の権利部は「甲区」と「乙区」から構成されている。「甲区」には主に所有権に関する事項が登記され、「乙区」には担保権などの所有権以外の権利に関する事項が登記されている。「甲区」内、「乙区」内にそれぞれ複数の権利が登記されることもあり、権利の対立が起きた場合に優先順位が問題になることがある。 「甲区」内の複数の権利や、「乙区」内の複数の権利のように「同一区」内で権利が対立し、どちらを優先すべきか問題が生じた場合には、登記された「順位番号」を基準に判断することになる。 2 「甲区」内で複数の権利が登記されているケース 【差押の登記後に所有権移転登記がされているケース】 この事例では、順位番号2番で差押の登記がなされた後に、順位番号3番で「佐藤太郎」が所有権移転登記を行っている。差押の登記が入っていることを知りながら不動産を購入することは通常はないが、不動産取引が行われている最中に差押の登記がなされ、気が付かないまま売買代金を支払い、所有権移転登記が行われる事例は稀に発生しているようである。この場合、差押に基づき不動産競売が実行されると、佐藤太郎の所有権の登記は抹消されることになる。 【仮登記がされた後に所有権移転登記がされているケース】 この事例では、順位番号2番で「佐藤次郎」が所有権移転請求権仮登記を行った後に、順位番号3番で「鈴木太郎」が所有権移転登記を行っている。「仮登記」の意義については別の機会に解説を行うが、仮登記には「順位を保全する効力」がある。佐藤次郎が順位番号2番で登記された仮登記に基づき、所有権移転の「本登記」を行うと、鈴木太郎の所有権移転登記は最終的には抹消される結果となる。 3 「乙区」内で複数の権利が登記されているケース 【賃借権設定登記後に根抵当権設定登記がされているケース】 この事例では、順位番号1番で賃借権者である「山田太郎」が賃借権設定登記を受けた後に、順位番号2番で根抵当権者「ABC銀行」が根抵当権の設定登記を受けている。もし、根抵当権者ABC銀行が根抵当権を実行して不動産を競売にかけた場合、順位番号1番で登記された賃借権は消滅してしまうのだろうか。もちろんこの事例では、賃借権の設定登記が先になされているため、不動産の競売が行われても抹消されることはない。 4 まず登記記録をしっかり見ることが重要 同一区内の登記の優先順位は、順位番号によることになるためどちらが優先されるかの判断はそれほど難しくはない。しかし、実務では自らの権利が否定される可能性があるにもかかわらず、認識しないまま登記をしていることもある。まずは登記記録を見て登記を行うことが重要といえる。 (了)
2024年株主総会における 実務対応のポイント 三井住友信託銀行 ガバナンスコンサルティング部 部長(法務管掌) 斎藤 誠 本年は、株主総会実務に直接的に影響のある制度改正は特段ないものの、株主総会資料の電子提供制度への対応が2年目となり、新型コロナが「5類」となってからも2年目の総会運営となる。株主総会プロセスの電子化の定着と、アフターコロナの総会対応という、引き続き新たな取組みに向けた模索が続くこととなる。 ここでは、これらの留意点を踏まえたうえで、本年株主総会における実務対応のポイントについて解説する。 なお、文中意見にわたる部分は、筆者の私見であることをあらかじめお断り申し上げる。 1 株主総会資料の電子提供制度対応 (1) 株主あて送付物の対応 2023年6月総会での株主あて送付物は、アクセス通知が7%、サマリーが29%、フルセットが64%となり(当社調べ)、当初の予想どおりに、これまでの送付物と同じ内容の招集通知を作成し、送付するフルセットが過半を占めることとなった。 しかし、これは株主数によって大きく傾向が分かれ、株主数3,000名未満の会社ではフルセットが82%を占めたが、株主数30,000名以上の会社ではサマリーが60%と過半を占めることとなった。やはり株主数の少ない会社では、従来どおりのフルセットでもあまりコスト的な負担感はないものの、株主数の多い会社では送付物のスリム化に向けた関心が高いという結果となった。 そもそも電子提供制度の移行初年度において、事業報告や株主総会参考書類の情報を原則ウェブ掲載とすることが、株主への情報提供の大きな後退となり、議決権行使比率が低下する懸念があったこともフルセットやサマリーが多くを占めた理由でもあった。 しかしながら、肝心の議決権行使比率については、最もシンプルなアクセス通知の送付でも前年より向上しており、当社の調べではアクセス通知を送付した会社の事前行使率(株主数に占める事前行使株主の割合)は、41.8%となって前年より0.6ポイント上昇した。特にその内訳としてインターネット行使は26.2%と、前年より2.7ポイントも上昇している。これは個人株主の議決権行使方法としてスマートフォンの利用が大幅に普及したことと、株主に事前の議決権行使を丁寧に要請した発行会社の努力によるものと考えられる。 当初の懸念であった議決権行使への影響も概ね杞憂となり、実際にアクセス通知を選択した会社の株主からも目立ったクレーム等は寄せられなかった状況を踏まえると、今後は制度趣旨を勘案したうえでフルセットからサマリー又はアクセス通知を選択する流れになるものと予想する。もちろん2年目から急激にアクセス通知が増加するとも考え難いが、実生活において、日常的な情報提供がネットでなされていることを踏まえれば、いつまでも多量の紙媒体による情報提供を続けることに一般株主が逆に違和感を感じることも考えられる。 なお、電子提供制度でのアクセス通知の様式は全株懇モデルの一体型アクセス通知(※1)が参照されたが、本年2月に一部改正がなされているので(※2)、そちらも併せて参照されたい。 (※1) 全国株懇連合会理事会決定「電子提供制度における招集通知モデル(電子提供措置事項の一部を含んだ一体型アクセス通知)の制定について」(2022年10月21日) (※2) 全国株懇連合会理事会決定「電子提供制度における招集通知モデル(電子提供措置事項の一部を含んだ一体型アクセス通知)の改正について」(2024年2月2日) (2) 書面交付請求 どのぐらいの請求があるのか注目された書面交付請求であるが、当社調べでは2023年6月総会での総議決権株主数に対する書面交付請求の割合については、平均0.44%と僅少であった。また基準日後に書面での送付要請があったかどうかについては、送付要請なしの会社の割合は72%となった。2023年はフルセット対応の会社が多かったことから、株主も制度変更に気づかなかったことも考えられるが、書面交付請求株主は予想より大幅に少ない状況であった。 なお、書面交付請求を失効させる異議催告手続きは(会社法325条の5第4項)、書面交付請求から1年を経過した株主に対して可能なため、本年から実施できるが、そもそも書面交付請求があまりなかったことから、本年早々に実施する会社は少ないであろう。 2 アフターコロナでの総会運営 (1) 2023年の状況 コロナが「5類」となって行動制限もなくなった2023年6月総会においては、出席者数はまだまだコロナ前には及ばないものの徐々に増加しており、所要時間と質問数はかなりコロナ前に戻ってきた印象である。 出席者数がコロナ前の水準に至らないのは、総会のお土産の実施割合が大幅に減少したことも要因の1つとなっている。当社調べでは、コロナ前の2019年6月総会でのお土産の実施割合は57%であったが、2023年6月総会では10%程度となっている。一部お土産を復活させた動きもあるものの、限定的である。お土産がなくても経営陣とのやり取りを期待して来場する株主を前提とする総会が、アフターコロナでの総会運営となったと考えられる。 (2) 運営の留意点 コロナ禍での総会運営の特徴として、総会時間短縮のためにこれまで形式的であった運営事項の大幅な簡略化がなされたが、もはや大幅短縮の必要もなくなったことから再び従前の運営に戻す動きも出てきた。 しかしながら、総会運営の中で大きなウェイトを占める事業報告の説明については、事業報告に記載されている内容を一字一句読み上げることはせずに、業績のポイントや成長戦略に絞って説明する方が株主の満足度も高いと考えられる。 電子提供制度となって、そもそも紙ベースでの従前の招集通知を作成・配布する必要もなくなって、総会場でのスクリーン等でのスライド・ビデオ映像を主体とした説明となれば、株主にとっても事業のトピックスを中心にビジュアルで説明された方がわかりやすく、会社への理解度も上がることにつながるであろう。また、総会当日の事業報告の映像を総会後にオンデマンド配信することも総会には来場できない株主の情報収集の助けとなる。このような取組みで合理的に会社の説明時間を短縮し、その分を株主との質疑応答に充てられるようにしたい。 3 機関投資家の議決権行使基準の動向 機関投資家の議決権行使基準は年々厳格化しており、その傾向を踏まえた対応策も年々必要となっている。特に近年では社内取締役に関する議決権行使のポイントも多岐にわたっており、本年はISSが取締役選任議案への賛否推奨における「ROE基準」の適用を再開したことは注目される。 すなわちISSは新型コロナの感染拡大により2020年6月から同基準の適用を停止していたが、本年はROEが基準(過去5期平均のROEが5%)を下回りかつ改善傾向にない場合、経営トップである取締役への反対推奨が再開されることとなったのである(※3、4)。 (※3) ISS「2024年版ISS議決権行使助言方針(ポリシー)改定に関するコメント募集」、「2024年版日本向け議決権行使助言基準(2024年2月適用)」などを参照されたい。 (※4) グラスルイスの議決権行使助言基準も参照されたい。 そのほか国内機関投資家の主な動きとしては、①取締役会の多様性、②社外取締役の在任期間、③政策保有株式等がポイントとなっている。①取締役会の多様性については、ジェンダーダイバーシティにかかる議決権行使基準を厳格化する動きがあり、女性取締役が不在の場合、経営トップ等へ反対行使がされる。②社外取締役の在任期間については、社外取締役の独立性への懸念が生じると判断される在籍年数を12年とする動きがあり、計画的な社外取締役のサクセッションに取り組む必要が出てきた。加えて、③過大な政策保有株式等にかかる基準を新設する動きがあり、基準を満たさない場合は経営トップ等への反対行使がなされることとなる。 このような環境から、経営トップに反対行使がされやすい状況が続いている。必ずしも昨年の議決権行使結果と同水準の賛成行使がされるとは限らないことから、必要に応じて議案の賛否状況のシミュレーションをしておくことが考えられる。 4 おわりに 年明け以降も株式市場は活況を呈しており、本年1月からの新NISAの影響も勘案すると会社によっては個人株主が大幅に増加していることも考えられる。これまでの抑制モードから平常モードに転換し、会社の成長戦略をアピールする総会運営に切り替えていくことも必要であろう。株式市況のニュースが日常的となり、株価への株主の関心は高まっていると考えられる。東証からは「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」(※5)が要請されていることも相まって、自社の株価について経営の意識や取組み姿勢を問う質問も大いに想定される。株主からのこれらの問いかけには、会社からもしっかりした対応が望まれる。 (※5) 東京証券取引所「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」 (了)
《速報解説》 国税庁、定額減税Q&Aへ新たに8問を追加 ~今月下旬からは給与支払者向けの説明会(事前予約制)を全国で開始、専用コールセンターも~ Profession Journal 編集部 「令和6年分所得税の定額減税」に関する源泉徴収義務者に向けた情報発信として、既報のとおり国税庁は2月5日に「令和6年分所得税の定額減税Q&A」を公表しているが、このほど3月18日付けで同Q&Aを更新、新たに8つの設問を追加した。 今回追加されたのは以下の設問。 新設された6-13では、「令和6年中の所得金額の見積額が 900 万円超の基準日在職者が、その同一生計配偶者について障害者控除を受けるため、同一生計配偶者の氏名等を扶養控除等申告書の摘要欄に記載している場合、この同一生計配偶者は月次減税額の計算に含めることになるか」との問いに対し、「扶養控除等申告書に記載された同一生計配偶者のうち、月次減税額の計算に含めることができるのは、源泉控除対象配偶者である同一生計配偶者に限られるため、源泉控除対象配偶者でない同一生計配偶者を、月次減税額の計算に含めるためには、別途、基準日在職者から、同一生計配偶者についての記載がある「源泉徴収に係る申告書」の提出を受ける必要がある」としている。 「扶養控除等申告書」には同一生計配偶者が障害者控除を受けるための記載欄が設けられているが、この記載事項をもって月次減税の計算へ含めることはできないため、留意が必要だ。 「扶養控除等申告書に記載された同一生計配偶者」のうち、月次減税額の計算に含めることができるのは「源泉控除対象配偶者である同一生計配偶者」に限られるため、既設問6-5にある通り、扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者の「令和6年中の所得金額の見積額」が 48万円以下であるかどうかを確認し、月次減税額の計算に含めるべき同一生計配偶者か否かを判定することになる。 一方、「源泉控除対象配偶者でない同一生計配偶者」については、既報のとおり様式案が公表されている「令和6年分 源泉徴収に係る定額減税のための申告書」に同一生計配偶者に関する記載を行い提出することで月次減税額の計算に含めることができるとされているが、新設された6-14では、「扶養控除等申告書等以外の様式を使用して、基準日在職者から月次減税額の計算に含める配偶者や扶養親族の氏名等の提出を受けてもよいか」との問いに対し、「法令で定められた記載すべき事項が漏れなく記載できるのであれば、国税庁ホームページに掲載されている扶養控除等申告書及び「源泉徴収に係る申告書」以外の様式を使用して、基準日在職者から月次減税額の計算に含める配偶者や扶養親族の氏名等の提出を受けて差し支えない」とする柔軟な見解を示した。 また、「給与の支払者が、基準日在職者から扶養控除等申告書等に記載すべき事項に関し、電磁的提供を受けるための必要な措置を講じる等の一定の要件を満たしている場合には、その基準日在職者は、書面による申告書の提出に代えて、電磁的方法により申告書に記載すべき事項の提供を行うことができる」としている。 なお国税庁は3月1日に定額減税特設サイトにおいて「給与支払者向け所得税定額減税コールセンター」の開設を公表するとともに、早ければ今週後半にも「給与支払者向け定額減税説明会」を全国各地で開催するとし(無料・事前予約制)、同月8日には「定額減税に係る源泉徴収事務」の動画も公開している。 今後、これら相談者からの相談事例をもとに、新たなQ&Aが追加されることも想定されよう。 (了) ↓お勧め連載記事↓
《速報解説》 国税庁、「インボイス制度に関して多く寄せられるご質問」を更新、 クレジットカード決済のタクシーチケットについては 回収特例を適用可との見解を示す Profession Journal編集部 国税庁は3月18日付けで、先月29日に続き「インボイス制度に関して多く寄せられるご質問」を更新、新たに下記2問を追加した。 【令和6年3月18日公表分】 新設された問㉕では、クレジットカード会社が発行しているタクシーチケットについて、「タクシー事業者等が発行しているものとは異なり、クレジットカード利用明細書しか送られてこず、また、タクシーチケット自体、取引先等に手交していることから、タクシーを利用した際に交付を受ける適格簡易請求書の保存をすることもできない」との質問に対し、「クレジットカード会社が発行しているタクシーチケットについては原則としてタクシー事業者から受領した適格簡易請求書の保存が必要となる」としつつ、「タクシーチケットは取引先等に手交されることも多いことを踏まえれば、適格簡易請求書の保存が困難といった事情があると考えられる」ことから、使用の際に回収される入場券等と同様の取扱い(いわゆる「回収特例」(消令49①一ロ))が適用できるとの見解を示した。 具体的には、受領したクレジットカード利用明細書及び以下の資料に記載された内容等に基づき、利用されたタクシー事業者が適格請求書発行事業者であることが確認できる場合には、適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除く)が記載されている証票が使用の際に回収される取引として、帳簿のみの保存により仕入税額控除の適用を受けることができるとしている。 また問㉖では、毎月末に使用料等を受領し領収書を発行している免税事業者(資産の貸付けの他、棚卸資産の譲渡及び役務の提供を行っている)が、月の途中に適格請求書発行事業者の登録を受けた場合で、上記の3つの取引の態様ごとに、適格請求書の交付義務の有無について解説している。 なお同日には「銀行振込手数料のインボイス対応」についての動画もアップされており、「ETC対応」「立替金精算」と合わせ3つの動画が国税庁動画チャンネル(YouTube)で公開されている。 (了) ↓お勧め連載記事↓
令和4年度税制改正に関する 《資料リンク集》 このページでは「令和4年度税制改正」に関し各府省庁・主な団体等から公表された情報ページへのリンク先をまとめています。 新たな情報の公表により、随時更新します。 - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
2024年3月14日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.560を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第129回】 「消費税法上の実質行為者課税の原則(その2)」 中央大学法科大学院教授・法学博士 酒井 克彦 Ⅱ 実質所得者課税の原則 1 形式と実質 消費税法13条《資産の譲渡等又は特定仕入れを行った者の実質判定》1項は、「法律上資産の譲渡等を行ったとみられる者が単なる名義人であって、その資産の譲渡等に係る対価を享受せず、その者以外の者がその資産の譲渡等に係る対価を享受する場合には、当該資産の譲渡等は、当該対価を享受する者が行ったものとして、この法律の規定を適用する。」と規定する。 所得税法や法人税法においては「実質所得者課税の原則」という表現が採られているが、この点、金子宏東京大学名誉教授は消費税法13条については、「実質行為者課税の原則」と表現されている(※1)。 (※1) 金子宏『租税法〔第24版〕』830頁(弘文堂2021)。 金子教授は、「消費税においても、課税物件の帰属、すなわち、資産の譲渡等をしたのは誰か、特定仕入れをしたのは誰か、または外国貨物を保税地域から引き取ったのは誰かについて疑義が生ずることが少なくない。」ため、この点について、「消費税法13条1項は、所得税法12条、法人税法11条等の例にならい」実質行為者課税の原則を規定しているとされる(※2)。また、この規定は、「資産の譲渡等または特定仕入れの帰属について、名義と実体、形式と実質が一致しない場合の判定基準として、いわゆる実質行為者課税の原則を定めたものである。この規定の意義についても、法律的帰属説と経済的帰属説とがありうるが、法律的帰属説が妥当である。」と説明される(※3)。 (※2) 金子・前掲(※1)、830頁。 (※3) 金子・前掲(※1)、830頁。 ここでは、誰が実質的な行為者かを判断する基準としての意味が消費税法13条にあると述べられるのであろう。ここにいう「行為者」とは、消費税法に特有の意味を有すると思われるところ、「資産の譲渡等を行った者」としての意味が付与されていると解される。この点が、所得税法や法人税法とは建付けが異なる点である。 すなわち、所得税法や法人税法は、行為をした者(行為者)に着目するのではなく、何らかの原因に基づいて結果的に利益を享受した者に課税をするという法律構成を採用しているのに対し、消費税法は、資産の譲渡等を行った者(行為者)に対して課税をするという点で、その構成を異にしているのである。 2 原因・結果アプローチ 所得税法12条と法人税法11条は、それぞれ次のとおり規定する。 これらの条文は「実質所得者課税の原則」と呼ばれているが、かかる規定の解釈について、原因と結果に分けて考えてみたい(原因・結果アプローチ)。 所得税法や法人税法における実質所得者課税の原則では、長い間、経済的帰属説と法律的帰属説の対立があった。 すなわち、課税物件の法律上(私法上)の帰属と経済上の帰属が相違している場合に、経済上の帰属に即して課税物件の帰属を判定すべきと解する立場が「経済的帰属説」と呼ばれるものである(金子・前掲(※1)、182頁)。これに対して、課税物件の法律上(私法上)の帰属につき、その形式と実質とが相違している場合に、実質に即して帰属を判定すべきであるという趣旨として実質所得者課税の原則を理解する考え方を「法律的帰属説」と呼ぶ(同182頁)。これらのうち、法律的帰属説が判例・通説の採用するところであるといえよう。 この両者の対立を考えてみると、通説である法律的帰属説は、例えば資産性所得などの場合には、資産の所有者を判定した上で、資産から生じる果実であれば法律的にはかかる資産の所有者にこそ果実の収受権があるとして所得の帰属を考えるのであるから、いわば原因(行為)側に着眼をする考え方であるということができる。 また、勤労性所得などの場合には、何らかの経済的行為によって所得が発生することになる。例えば、給与所得は労務提供の対価であるから、その所得の発生原因は労働力の提供にある。されば、法律的には労働力の提供を行った者にこそ対価の収受権があると考えられるから、原則として、原因行為を行った者を認定することによって所得の帰属を考えることができよう。 これに対して、経済的帰属説を採用する立場からすれば、それが資産性所得であるとしても、その資産の所有者が誰であるかが問題となるのではなく、所得税法12条や法人税法11条が規定するとおり、「享受」をした者が誰なのかにこそ関心を寄せるべきことになる。つまり、資産の所有者に拘泥する必要はなく、実際の収益の享受者にこそ所得が帰属したものと解すべきであるという考え方である。これは、法律的帰属説が原因(行為)に着目するのに対して、収益の発生、さらにその先にあるかかる収益の享受という結果に着目した考え方であるということができよう。 このような観察方法が妥当するとした場合、これを消費税法上の実質行為者課税の原則になぞらえて考えると、同法における実質性は原因(行為)の方に着眼した原則であるとみることができるのではなかろうか。 すなわち、消費税法は、所得課税法よりも、さらに原因ないし「行為」という点に重きを置いていることは、課税対象を「課税資産の譲渡等」としていることからも判然としよう。かような意味において、金子教授が消費税法上の実質帰属の問題を「実質行為者課税の原則」と銘打っているのは、この点を明確に表す表現であるとみることができよう。 (続く)
谷口教授と学ぶ 国税通則法の構造と手続 【第24回】 「国税通則法68条(69条)」 -附帯税(3) 重加算税の「隠蔽・仮装要件」- 大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫 国税通則法68条(重加算税) 1 重加算税の意義と趣旨 重加算税(税通68条)は、過少申告加算税(同65条)、無申告加算税(同66条)及び不納付加算税(同67条)の各賦課要件に該当する場合(自発的修正申告、自発的期限後申告又は自発的納付の場合を除く。前回4(1)参照)において、納税者が「その額の計算の基礎となる税額の属する税目の国税」(同69条)の課税標準等又は税額等(同19条1項柱書参照)の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を「隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき」(以下「隠蔽・仮装要件」という)納税申告書を提出し、法定申告期限までに納税申告書を提出せず、又は法定納期限までに租税を納付しなかったときは、これらの加算税に「代え」より大きな賦課割合で課される金銭的負担であり、それぞれの場合に応じて過少申告重加算税ないし重過少申告加算税、無申告重加算税ないし重無申告加算税、不納付重加算税ないし重不納付加算税と呼ばれる。 重加算税の趣旨については、判例上、一方で、刑罰との区別の観点から次の理解(最判昭和45年9月11日刑集24巻10号1033頁。下線筆者)が確立されている(谷口教授と学ぶ「税法基本判例」第32回Ⅲ参照)。 他方で、過少申告加算税の趣旨に関する確立された次の判示(最判平成18年4月20日民集60巻4号1611頁。以下「平成18年最判」という。下線筆者。前回2参照)の中で、「主観的責任の追及という意味での制裁的な要素」に着目した理解が示されている。 これらの理解によれば、国税通則法68条に規定する重加算税は、「違反者の不正行為の反社会性ないし反道徳性に着目してこれに対する制裁として科せられる刑罰」ではなく、「同法65条ないし67条に規定する各種加算税を課すべき納税義務違反」に対する行政上の制裁として課される行政罰であるが、ただ、上記の「主観的責任の追及という意味での制裁的な要素」は同法65条ないし67条に規定する各種加算税に比して多いものである、といってよかろう。 このような理解の系として、重加算税は、「故意に納税義務違反を犯したことに対する制裁」ではなく、これの賦課には、「納税者が故意に課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺい、仮装行為を原因として過少申告の結果が発生したものであれば足り、それ以上に、申告に際し、納税者において過少申告を行うことの認識を有していることまでを必要とするものではない」と解されている(最判昭和62年5月8日訟月34巻1号149頁)。 この点において、逋脱犯(狭義の脱税犯)の構成要件(所税238条1項・239条1項、法税159条1項、相税68条1項、消税64条1項等)に規定する「偽りその他不正の行為」が、「逋脱の意図をもつて、その手段として税の賦課徴収を不能もしくは著しく困難ならしめるようななんらかの偽計その他の工作を行なうこと」(最大判昭和42年11月8日刑集21巻9号1197頁)をいうのとは明確に異なる。 なお、平成28年度税制改正により、納税者が過去5年間という短期間に無申告又は隠蔽・仮装を繰り返した場合には、重加算税の賦課割合が10%加重されることとされたが(税通68条4項。前回3(3)参照)、この加重措置は、重加算税の「主観的責任の追及という意味での制裁的な要素」をより多く盛り込んだものであり、累犯加重(刑法57条・59条)的発想に基づく「厳罰化」の一環として位置づけられるべきものである。 また、酒税等の間接国税(消費税を除く)については、平成29年度税制改正前は、申告納税方式(税通16条1項1号)が適用される国税であるにもかかわらず、通告処分の対象とされ、重加算税は適用しないこととされていたが(同改正前税通68条5項)、同改正により、国税犯則取締法の廃止及び国税通則法(第11章)への編入に伴い、通告処分の対象外とされ(税通157条1項。同156条1項柱書括弧書参照)、重加算税が適用されることとなった(同68条1項・2項・4項)。この改正について財務省「平成29年度税制改正の解説」1027-1028頁は次のとおり解説している。 2 隠蔽・仮装要件その1-事実の隠蔽・仮装の意義 隠蔽・仮装要件にいう事実の隠蔽・仮装という不正手段の意義については、「事実の隠蔽は、二重帳簿の作成、売上除外、架空仕入若しくは架空経費の計上、たな卸資産の一部除外等によるものをその典型的なものとする。事実の仮装は、取引上の他人名義の使用、虚偽答弁等をその典型的なものとする」(志場喜徳郎ほか共編『国税通則法精解〔令和4年改訂・17版〕』(大蔵財務協会・2022年)833頁。金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂・2021年)914頁も参照)と解説されているが、一般論としては、「法68条1項の隠ぺい行為等とは、納税者の取引状況などの所得を基礎づける事実を隠ぺい又は仮装するなど申告納税主義の趣旨を没却する行為をいうと解するのが相当である。」(神戸地判平成5年3月29日民集49巻4号1261頁)といってよかろう。 ただし、上掲神戸地判の上告審・最判平成7年4月28日民集49巻4号1193頁(以下「平成7年最判」という)は、重加算税制度の趣旨に鑑み、下記のとおり判示し(下線筆者)、隠蔽・仮装につき「架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為」までは要件でない旨を説示している。 なお、課税実務では、「申告所得税及び復興特別所得税の重加算税の取扱いについて」(平成12年7月3日課所4-15ほか3課共同)、「法人税の重加算税の取扱いについて」(平成12年7月3日課法2-8ほか3課共同)など税目ごとに重加算税の取扱いに関する事務運営指針の中で、仮装・隠蔽に該当する事実(「不正事実」)が例示されている(武田昌輔監修『DHCコンメンタール国税通則法』(第一法規・加除式)3637の2頁以下参照)。 3 隠蔽・仮装要件その2-隠蔽・仮装行為主体 隠蔽・仮装の行為主体は、国税通則法68条の規定上は「納税者」と定められているが、納税者以外の者が隠蔽・仮装を行った場合においても納税者本人に対する重加算税の賦課が認められるかどうかという問題(隠蔽・仮装の行為主体問題)が以前から議論されてきた(その問題に関する筆者の検討について詳しくは谷口教授と学ぶ「税法基本判例」第33回参照)。その問題に関するリーディング・ケースである大阪地判昭和36年8月10日行集12巻8号1608頁がこれを肯定して以来、下級審で数多くの判断が示され学説でも様々な議論がされてきたが、判例の立場は、平成18年最判の下記の判示(下線筆者)で確立された。 ここでは、納税者以外の者の行為を納税者本人の行為と「同視」することができるという考え方を重加算税制度の趣旨・目的から導き出しているが、平成18年最判は、これに引き続き、「納税者が税理士に納税申告の手続を委任した場合についていえば」として、「同視」することができる場合とできない場合を次のとおり判示している(下線筆者)。 4 隠蔽・仮装要件その3-つまみ申告・殊更の過少申告 隠蔽・仮装要件は、文理上は、①納税者が事実の隠蔽・仮装をすることだけでなく②「その隠蔽し、又は仮装したところに基づき」納税申告書を提出することをも定めているが、上記の①と②との関係をめぐっていわゆるつまみ申告の隠蔽・仮装要件該当性が問題とされてきた(その問題に関する筆者の検討について詳しくは谷口教授と学ぶ「税法基本判例」第32回参照)。つまみ申告とは、「主に課税実務で用いられている言葉で、納税者が自己の所得の一部を抽出して(つまんで)、税額を過少に申告すること」をいい(小貫芳信「判批」法務省訟務局内行政判例研究会編『平成6年行政関係判例解説』(ぎょうせい・1995年)110頁、112頁)、「殊更の過少申告」と呼ばれることもある(川神裕「判解」最判解民事篇(平成6年度)586頁、589-590頁等参照)。 つまみ申告の隠蔽・仮装要件該当性については、同要件の文理を重視し前記の①と②とを別個の要件とみてこれを否定する消極説も説かれることがあったが、課税実務や判例はこれを肯定する積極説の立場を採ってきた(この議論については差し当たり川神・前掲「判解」594-597頁参照)。そのような状況の下で、大阪高判平成5年4月27日訟月40巻4号856頁が、消極説の立場から次のとおり判示し(下線筆者)、「大きな話題」(岩橋健定「判批」法学協会雑誌114巻4号(1997年)462頁、467頁)となった。 この判断を受けて、最高裁はこの問題にいわば本腰を入れ、最判昭和52年1月25日訟月23巻3号563頁や最判昭和63年10月23日税資166号370頁のような単なる原審判断是認のいわゆる例文判決ではなく、最判平成6年11月22日民集48巻7号1379頁(以下「平成6年最判」という)で当該事案の事実関係の下で「真実の所得金額を隠ぺいしようという確定的な意図」に着目して積極説の立場に立つ判断を示した。 平成6年最判については、「本判決は、一般論を示しておらず、消極説を採用しなかったことは明らかであるが、・・・・・・、少なくとも、本判決が、外形的、客観的に隠ぺいの意図の表れと明らかに認められる行動を挙示した上、これらの行動からすれば、当初から真実の所得金額を隠ぺいしようという確定的な意図をもって作為的な虚偽申告をし、事後的にもその意図を貫こうとする行動をとっているという評価がされざるを得ないことを重視して、重加算税の賦課要件を満たすと判断していることは明らかである。」(川神・前掲「判解」604-605頁。下線筆者)と解説されている。 しかし、平成6年最判に対しては、「事実関係から総合判断されるのは、実質的には、隠ぺい行為ではなく、隠ぺいの意図なのである。」(岡村忠生「判批」民商法雑誌113巻1号(1995年)96頁、109頁)、「この『確定的な意図』を『総合判断』する過程では、過少申告行為の背後にある主観的状況が間接事実として無限定に取り込まれ、最終的には、税法の遵守意識、税務行政への不信感や反感、公徳心や租税倫理といった納税者の人格までが射程に入り得るであろう。」(同頁)などを筆頭に、重加算税賦課判断の「主観化」が厳しく批判された。 ただ、平成6年最判は「本件事案に応じた事例判断」(川神・前掲「判解」605頁)すなわち事例判決と解すべきものである。その後、平成7年最判は前記2の引用判示の中で、「重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為そのものが隠ぺい、仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為そのものとは別に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたことを要するものである。しかし、右の重加算税制度の趣旨にかんがみれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、納税者が、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、重加算税の右賦課要件が満たされるものと解すべきである。」(下線筆者)という「一般論」(近藤崇晴「判解」最判解民事篇(平成7年度)471頁、481頁)を示したが、この「一般論」とりわけ下線部の判示によって重加算税賦課判断の「主観化」に対して一定の歯止めをかけようとしたものと解される。 最後に、平成7年最判に関する調査官解説で従来の最高裁判例を総合して示された「判例理論」を以下に引用しておこう(近藤・前掲「判解」480頁。下線原文。判例①=最判昭和45年9月11日刑集24巻10号1333頁、判例②=最判昭和58年10月27日民集37巻8号1196頁、判例③=最判昭和62年5月8日裁判集民151号35頁、判例④=平成6年最判、判例⑤=最判昭和48年3月20日刑集27巻2号138頁)。 この「判例理論」では平成7年最判が考慮されていないが、これを「判例⑥」として、「納税者が、・・・・・・ような場合には、殊更の過少申告として重加算税の賦課要件が満たされる〔判例④⑤〕。そして、どのような場合に殊更の過少申告として重加算税の賦課要件が満たされるかについては、」の部分を、「納税者が、・・・・・・ような場合には、重加算税の賦課要件が満たされる〔判例④⑤〕。ただし、納税者が、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合に限る〔判例⑥〕。そして、それが具体的にはどのような場合であるかについては、」と加筆修正することによって、平成7年最判が重加算税賦課判断の「主観化」に一定の歯止めをかけたことを明示すべきであろう。 (了)
〔疑問点を紐解く〕 インボイス制度Q&A 【第36回】 「インボイス制度に関して法人が決算に向けて対応しておくべき事項」 税理士 石川 幸恵 【Q】 当社は、インボイス制度開始と同時に適格請求書発行事業者となった3月決算の法人です。インボイス制度について決算に向けて対応しておくべきことを教えてください。 〔ポイント〕 自社の申告書の計算方法が、2割特例・簡易課税・一般課税、一般課税の中でも少額特例の適用が可能か否かで対応すべき範囲が異なります。 「課税仕入れの相手が適格請求書発行事業者であることさえ確認すれば、インボイスの交付を受けていなくても仕入税額控除できる」などの思い違いがしばしば見受けられますが、「インボイスの保存」が必須ですので、確認をお願いします。 * * * 【A】 次に列挙するチェック項目の確認をしてください。 (1) 適格請求書発行事業者の登録を受けたことにより課税事業者となった事業者 適格請求書発行事業者の登録を受けたことにより課税事業者となった事業者は、次のチェックを行ってください。 適格請求書発行事業者の登録を受けたことにより課税事業者となった事業者で2割特例又は簡易課税を選択する場合、以降のチェックは不要です。2割特例又は簡易課税にせず、一般課税を選択する場合は、(3)に進んでください。 (2) インボイス制度開始前より課税事業者で、簡易課税の適用を受ける事業者 インボイス制度開始前より課税事業者で、簡易課税の適用を受ける事業者は上記(1)の No.3 と No.4(※)のチェックを行ってください。 (※) この2つの項目では、適格請求書発行事業者の登録を受けたことを前提としていますが、適格請求書発行事業者の登録を受けていない場合、売上税額の計算は割戻し計算のみです。 簡易課税の適用を受ける事業者が、決算に向けてチェックすべきことは以上です。 (3) インボイス制度開始前より課税事業者で、一般課税により計算をする事業者 インボイス制度開始前より課税事業者で、一般課税により計算をする事業者は次のチェックを行ってください。 ただし、少額特例の適用が可能な事業者(インボイスQ&A問111)は、税込み1万円未満の課税仕入れはインボイスの保存なしで仕入税額控除ができますので、チェックの対象を税込み1万円以上の取引に限定しても問題ありません。 (了)