給与計算の質問箱 【第32回】 「年俸制と月給制における社会保険料等の違い」 税理士・特定社会保険労務士 上前 剛 Q 当社では現在、月給制により従業員に年2回賞与を支給していますが、今後賞与は支給せずに「年俸÷12」を毎月支給する年俸制を検討しています。両者の社会保険料や税金の違いについてご教示ください。 A 年収1,200万円、年収900万円、年収600万円の3つのパターンで、40歳未満かつ扶養親族無しと仮定したうえで、両者の社会保険料及び所得税の違いを以下のように試算した(健康保険料と厚生年金保険料は下部の〈表1〉をもとに試算)。 * * 解 説 * * 1 年収1,200万円のケース 《年収1,200万円の場合の試算》 【年俸制】 【月給制(賞与2回)】 2 年収900万円のケース 《年収900万円の場合の試算》 【年俸制】 【月給制(賞与2回)】 3 年収600万円のケース 《年収600万円の場合の試算》 【年俸制】 【月給制(賞与2回)】 〈表1〉令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都) (※) 協会けんぽホームページより (了)
税理士が知っておきたい 不動産鑑定評価の常識 【第32回】 「接面街路との高低差が価格に与える影響」 ~鑑定評価と相続税財産評価の捉え方の相違~ 不動産鑑定士 黒沢 泰 1 はじめに 接面街路と高低差のある土地はそれが減価要因として価格に影響する場合が多いのですが、なかには増価要因として作用することもあります。鑑定評価においては、それぞれの土地の用途や状況を踏まえながら価格に与える影響度を判断していますが、相続税の財産評価では接面街路との高低差に関する規定は置かれておらず、国税庁タックスアンサーにおいては利用価値が著しく低下している宅地の評価の取扱いがなされています。 今回は、両者の捉え方を比較しつつ、接面街路との高低差が価格に与える影響度について考えてみます。 2 鑑定評価における接面街路との高低差の捉え方 鑑定評価においては、用途別にそれぞれ以下のような捉え方をしています。 (1) 住宅地の場合 ① 道路よりやや高い場合~増価要因 住宅地の場合、接面街路より高い位置にある宅地は、一般的に日照が優れ、風通しや排水も良く、見通しやプライバシー保護の点からも快適性に優っています。また、敷地内にわざわざ車庫のスペースを確保しなくても、宅盤より低い部分を駐車場として利用できるなどのメリットもあります。このため、地盤が道路面よりある程度高い状況にあることは、むしろ増価要因として作用するといえます。 ② 道路より一定以上高い場合~減価要因 しかし、一定の高さ(地域により程度に差があります)を超えた場合、出入りに不便を生じ、反対に減価要因の方が強くなることも事実です(玄関と道路との間に階段を設けているケースも多く見受けられます)。 また、程度にもよりますが、建築工事費が割高になることもあります。このように、道路との高低差は宅地価格に対し増価要因として作用する場合もあれば、減価要因として作用する場合もあります(画一的な捉え方はできませんが、総じて住宅地では一定の高さの範囲内においては増価要因となり、これを超える場合には減価要因となる傾向が強いといえます)。 ③ 道路より低い場合~減価要因 接面街路より低い位置にある宅地の場合、そのほとんどが減価要因として捉えられます。その理由は、このような宅地は日照が劣り、風通しや排水も悪く、見通しやプライバシー保護の点からも快適性に劣るからです。また、このような宅地は出入りが不便なだけでなく、道路と等高な宅地とするために盛土や整地工事を要する金額に見合う分を減価要因として考慮する必要があります。 (2) 商業地の場合 ① 道路より高い場合~減価要因(ケースにより増価要因) 商業地の場合、住宅地と異なり快適性よりも収益性の面から価格が形成されています。この観点から捉えた場合、宅地が接面街路より高い位置にあることはむしろ出入りを不便なものとし、集客力を減少させるため、減価要因として作用することの方が多いと考えられます。また、道路との間に高低差があれば商品の搬出入も不便になり、商業地としての効用もそれだけ減少します。 ただし、なかには建物の配置・設計等により外観・グレード・宣伝効果に好影響を与える場合も考えられる(※1)ため、個々の状況を鑑みて判断をすべきことに留意が必要です。 (※1) 一般財団法人資産評価システム研究センター「土地に関する調査研究 宅地評価における接面街路との高低差の影響等について」(2006年)によります。 ② 道路より低い場合~減価要因 接面街路より低い位置にある宅地は、総じて減価要因として作用する点は住宅地の場合と同様であり、収益性や宣伝効果に与えるマイナス影響、商品の搬出入の不便さ等を考慮すれば、接面街路より低い位置にある宅地の方が高い位置にある宅地に比べて効用が低い(減価の程度が大きい)ことは明らかであるといえます。 (3) 工業地の場合 〇 道路より高い場合及び低い場合~減価要因 工業地についても接面街路との高低差の関係を検討する必要がありますが、一般的にはその格差率の程度は住宅地、商業地と比べて少ないと考えられます。その理由としては、工業地の場合、住宅地や商業地のように高低差が快適性や収益性(集客力)という形で価格に直接的な影響を与える度合いが少ないことがあげられます。しかし、高低差の程度が著しい場合は別問題であり、個々にその影響を勘案して格差率の大小を判定すべきことはいうまでもありません。 (4) 土地価格比準表における格差率の一例 土地価格比準表では、用途により接面街路との高低差が土地価格に与える影響が異なることから、用途的地域(住宅地域、商業地域等)ごとに格差率を規定しています。参考までに、〈資料1〉は優良住宅地域及び普通住宅地域、〈資料2〉は高度商業地域に関する高低差の格差率を示したものです。 「土地価格比準表」による高低差の格差率 〈資料1〉 優良住宅地域(※2)及び標準住宅地域(※3)の場合 (※2) 優良住宅地域とは、敷地が広く、街区及び画地が整然とし、植生と眺望、景観等が優れ、建築の施工の質が高い建物が連たんし、良好な近隣環境を形成する等居住環境の極めて良好な地域であり、従来から名声の高い住宅地域を指します。 (※3) 標準住宅地域とは、敷地の規模及び建築の施工の質が標準的な住宅を中心として形成される居住環境の良好な住宅地域を指します。 〈資料2〉 高度商業地域(※4)の場合 (※4) 高度商業地域とは、大都市の都心又は副都心にあって、広域的商圏を有し、比較的大規模な中高層の店舗、事務所等が高密度に集積している地域を指します。 3 相続税の財産評価における接面街路との高低差の捉え方 既に述べたとおり、相続税の財産評価では接面街路との高低差に関する規定は置かれていませんが、国税庁タックスアンサー「No.4617 利用価値が著しく低下している宅地の評価」では、次の考え方が示されています。 上記のとおり、相続税の評価においては対象地が周辺の土地よりも著しく高低差のある場合には、「利用価値が著しく低下している宅地」として評価減をすることが認められていますが、高低差があるからといって必ずしも評価減が認められるわけではない点に留意が必要です。 例えば、対象地周辺の宅地も街路と高低差があり、それによる価値の減少が路線価に織り込み済みである場合は画地計算において減価を考慮することはできません。また、周辺の宅地には高低差がなく対象地だけ高低差が認められるものの、対象地には周辺の路線価と同一のものが付されている場合は、画地計算において高低差による評価減を織り込むことができると考えられます。しかし、その差が何m以上であれば減価が認められるかについてはタックスアンサーにも明記されておらず、国税不服審判所裁決事例においても個々の土地の状況に応じて判断されているようです。 4 まとめ 鑑定評価の場合、接面街路との高低差が個々の土地の利用効率等に及ぼす影響度を不動産鑑定士が判断の上、増減価の程度を価格に反映させています。一方、相続税の財産評価では、接面街路との高低差があることにより「利用価値が著しく低下している」と認められる宅地について10%の評価減ができるとされている点に留意が必要です。 (了)
〈エピソードでわかる〉 M&A最前線 【第4回】 「直近の動向を踏まえたM&Aの実務」 -非事業用資産の切り離し- 株式会社日本M&Aセンター コーポレートアドバイザー統括部 ゼネラルマネージャー 経営支援室 副室長 公認会計士 長坂 晃義 【第4回】では、直近の動向を踏まえたM&A実務について説明します。日本M&Aセンターで支援している年間約1,000件のM&A案件を専門家の立場から見ている中で、最近増えており、よく用いられるスキームについて事例を交えてご紹介します。 1 非事業用資産を切り離せ! 平成29年度税制改正により分割型分割の適格要件が変更となりました。具体的には、改正前は分割後に分割法人と分割承継法人双方について支配関係が継続することが見込まれることが要件とされていたものが、改正後は分割承継法人との支配関係の継続のみが求められることになりました。 これがM&Aの実務において、具体的にどのような変化をもたらしたか、事例を交えて見ていきましょう。 【対象企業データ】 本件、譲渡企業のオーナーのニーズを満たすために税制改正前においてはM&A実行時に賃貸不動産を退職金の現物支給として行うか、いったん不動産を含めて株式譲渡を行い、株主が受領した対価を原資として不動産買取を行う方法が想定されていました。 退職金を現物支給するにあたって、賃貸不動産の価値が高い場合、過大退職金の問題が生じます。また、不動産譲渡のケースであっても、賃貸不動産に含み益がある場合、譲渡によりその含み益が顕在化することで、対象会社において法人税が生じるリスクや、株主が受領した対価から不動産の買取資金を拠出するため、株式譲渡所得に対する税金負担後の金額を原資とせざるを得ないことで税効率が悪いといった問題点がありました。 そこで、前述の税制改正により分割型分割を実施することで、このような問題を解決することが可能になり、実際M&Aの現場においても多数活用されることになりました。 以下では、具体的なスキームについて図を交えて説明します。 《会社分割における税制適格要件》 ※ 上述した事例のように社長が株式を100%所有している場合は、100%グループ内組織再編に該当します。この場合は、分割対価として分割承継会社株式すなわち新会社株式が交付され、そのすべての分割対価が社長に交付されることで、①金銭等不交付要件②按分型要件を満たすことになります。 《会社分割における不動産取得税の非課税要件》 2 留意点 上記の事例における留意点としては、以下のようなものがあります。 ◆まとめ◆ 以上のように一定の要件を満たす必要がありますが、適格分割型分割を用いることで、非事業用資産を譲渡オーナーの手許に経済的負担が少なく移転することができ、同時に譲受企業にとってもM&Aの資金負担を軽減することができます。そのため非事業用資産を手元に残しておきたい譲渡オーナーのニーズがある案件においては有効な手段と言えます。 (了)
《速報解説》 国税庁、副業収入等の「雑所得」の範囲を明確化へ ~所得税基本通達の改正案に対するパブコメを募集~ 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 令和4年8月1日、国税庁は、「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正案(雑所得の例示等)に対するパブリックコメントの募集を開始した。 意見の募集期間は、令和4年8月1日(月)から8月31日(水)までの1ヶ月間であり、意見の提出方法として次の3つが示されている。 【1】 改正の趣旨 今回の改正は、シェアリングエコノミー等の「新分野の経済活動に係る所得」や「副業に係る所得」について、所得区分の判定が難しいという課題に対応し、所得税基本通達を改正することによって雑所得の範囲の明確化を図るものである。 【2】 改正案の概要 雑所得の範囲を例示する所得税基本通達35-1と35-2の改正を予定している。 改正案の概要は、次のとおりである。 (1) 「その他雑所得」の範囲の明確化(改正案所基通35-1) その他の雑所得(公的年金等に係る雑所得及び業務に係る雑所得以外の雑所得をいう)の範囲に、譲渡所得の起因とならない資産の譲渡から生ずる所得(営利を目的として継続的に行う当該資産の譲渡から生ずる所得及び山林の譲渡による所得を除く)が含まれることを明確化する(改正案所基通35-1(12))。 (2) 「業務に係る雑所得」の範囲の明確化(改正案所基通35-2) 「業務にかかる雑所得」の範囲に、営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得が含まれることを明確化する(改正案所基通35-2(7))。 また、事業所得又は「業務に係る雑所得」のいずれに該当するかの判定は、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定するが、その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証のない限り、「業務に係る雑所得」と取り扱うこととされる(改正案所基通35-2(注))。 【3】 適用時期 改正後の所得税基本通達の取扱いは、令和4年分以後の所得税について適用される予定である。 (了)
《速報解説》 会計士協会が「監査報告書に係るQ&A」の改正案を公表 ~開示書類等で監査報告書を開示せず、監査を受けている旨の記載を企業が行う場合の留意点等示す~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2022年8月9日、日本公認会計士協会は、「監査基準委員会研究報告第6号「監査報告書に係るQ&A」の改正について」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 以下の事項に関するQ&Aが追加されている。 また、監査基準報告書(序)「監査基準報告書及び関連する公表物の体系及び用語」(2022年7月21日付け改正)に対応し、研究報告の名称を「監査基準委員会研究報告第6号「監査報告書に係るQ&A」」から「監査基準報告書700実務ガイダンス第1号「監査報告書に係るQ&A」」に変更し、本文の適合修正も行われている。 意見募集期間は2022年9月14日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 開示書類等において、監査報告書を開示せず、監査を受けている旨の記載を企業が行う場合の留意点 「Q1-9」として、「開示書類等において、監査報告書を開示せず、監査を受けている旨の記載を企業が行う場合の留意点」を追加している。 監査報告書は対象である財務諸表と一体として全文を掲載して利用されることが想定されているが、ディスクロージャー誌等の開示書類等において監査報告書を開示せず監査を受けている旨のみの記載が行われることがある。 そこで、「Q1-9」では、単に監査を受けている旨の記載のみがなされると監査意見の内容について利用者の誤解が生じるリスクがあることなどから、監査意見の内容や監査対象の財務諸表について利用者の誤解が生じないように、監査意見の類型の記載や監査対象の財務諸表に関する追加的な情報の記載を行うなど状況に応じた対応をとることが重要であるとしている。 状況の例と起こり得る利用者の誤解について具体的に記載し、対応例を示している。 Ⅲ EDINETで提出する監査報告書関係のQ&A 次のQ&Aを追加している。 (了)
《速報解説》 「責任あるサプライチェーンにおける 人権尊重のためのガイドライン(案)」を経産省が公表 ~海外の法規制導入も背景に企業の取組強化の必要性からガイドライン作成~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 令和4(2022)年8月8日、経済産業省は、「責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン(案)」を公表し、意見募集を行っている。 これは、欧米を中心に人権尊重を理由とする法規制の導入が進み、企業として取組の強化も求められていることもあり、わが国において、サプライチェーンにおける人権尊重の取組に関する業種横断的なガイドラインを作成するものである。 意見募集期間は2022年8月29日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 主な内容は次のとおりである。 1 人権尊重の意義 ガイドラインにおいて、「人権」とは、国際的に認められた人権をいう。 企業は、例えば、強制労働や児童労働に服さない自由、結社の自由、団体交渉権、雇用及び職業における差別を受けない自由、居住移転の自由、人種、障害の有無、宗教、社会的出身、ジェンダーによる差別を受けない自由等への影響について検討する必要がある。 すべての企業には人権を尊重する責任があるとし、当該責任は、企業が他者への人権侵害を回避し、企業が関与した人権への負の影響に対処すべきことを意味している。 企業は、国際スタンダードに基づく本ガイドラインに則り、自社・グループ会社、サプライヤー等(国内外のサプライチェーン上の企業及びその他のビジネス上の関係先をいう)における人権尊重の取組に最大限努めるべきであるとしている。 「サプライチェーン」とは、自社の製品・サービスの原材料や資源、設備やソフトウェアの調達・確保等に関係する「上流」と自社の製品・サービスの販売・消費等に関係する「下流」を意味している。 「その他のビジネス上の関係先」は、サプライチェーン上の企業以外の企業であって、自社の事業・製品・サービスと関連する他企業を指している(例:企業の投融資先や合弁企業の共同出資者、設備の保守点検や警備サービスを提供する事業者等)。 2 人権方針 人権方針は、企業が、その人権尊重責任を果たすという企業によるコミットメント(約束)を企業の内外のステークホルダーに向けて明確に示すものである。 事業の種類や規模等は各企業によって様々であり、負の影響が生じ得る人権の種類や、想定される負の影響の深刻度等も各企業によって異なることから、人権方針の策定にあたっては、まずは、自社が影響を与える可能性のある人権を把握する必要があるとのことである。 3 人権デュー・ディリジェンス(人権DD) 人権DDは、企業が、自社・グループ会社及びサプライヤー等における人権への負の影響を特定し、防止・軽減し、取組の実効性を評価し、どのように対処したかについて説明・情報開示していくために実施する一連の行為を指している。 ガイドラインは、人権に対する「負の影響」として次の3類型を示している。 次の事項について詳細に記載している。 4 人権尊重の取組にあたっての考え方 人権尊重の取組にあたっての考え方として、次のポイントを示している。 5 救済 救済とは、人権への負の影響から生じた被害を軽減・回復すること及びそのためのプロセスを指している。 企業による救済が求められるのは、自社が人権への負の影響を引き起こし又は助長している場合であるが、企業の事業・製品・サービスが人権への負の影響と直接関連するのみであっても、企業は、負の影響を引き起こし又は助長している他企業に対して、影響力を行使するように努めることが求められる。 適切な救済の種類又は組み合わせは、負の影響の性質や影響が及んだ範囲により異なり、人権への負の影響を受けたステークホルダーの視点から適切な救済が提供されるべきである。 具体例として、謝罪、原状回復、金銭的又は非金銭的な補償のほか、再発防止プロセスの構築・表明、サプライヤー等に対する再発防止の要請等が挙げられている。 救済の仕組みには、大きく分けて、企業を含む国家以外の主体によるものと国家によるものとがある。 苦情処理メカニズムと国家による救済の仕組みについて記載されている。 (了)
2022年8月10日(水)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.481を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第110回】 「節税商品取引を巡る法律問題(その4)」 中央大学法科大学院教授・法学博士 酒井 克彦 2 説明内容の二重構造性 前回の1(1)のとおり、節税商品は二重構造性を有しており、融資契約を介在していることが多い。例えば、借入金を使って減価償却資産を購入し、支払利息の計上とキャッシュフローを伴わない減価償却費の計上を織り込むことで所得税や法人税を軽減する節税商品や、不動産が財産評価基本通達によって評価されることを前提として借入金を使って不動産を購入することで相続税を軽減させる節税商品などがそれである。 かような節税商品に特有な説明義務の問題として、「基本的契約に係る説明」と「課税上の取扱いに係る説明」という説明内容の二重構造性を指摘することができる。このことを、本稿においては「説明内容の二重構造性」と呼ぶこととする。 金融サービスの提供に関する法律(金融サービス提供法)は、金融商品販売業者等の説明義務として、顧客に対し重要事項について説明をしなければならないとする(金サ法4①柱書)。具体的には、商品の仕組みに係る説明義務について、例えば、「元本欠損が生ずるおそれを生じさせる当該金融商品の販売に係る取引の仕組みのうちの重要な部分」(同三ハ)(※1)とか、「当初元本を上回る損失が生ずるおそれを生じさせる当該金融商品の販売に係る取引の仕組みのうちの重要な部分」(同四ハ)(※2)などと規定されているが、租税法に基づく節税構造についてまでも、かかる説明義務に包摂されているか否かについては検討の余地があろう。 (※1) 「元本欠損が生ずるおそれ」とは、当該金融商品の販売が行われることにより顧客の支払うこととなる金銭の合計額が、当該金融商品の販売により当該顧客等の取得することとなる金銭の合計額を上回ることとなるおそれをいう(金サ法4③)。 (※2) 「当初元本を上回る損失が生ずるおそれ」とは、例えば、次に掲げるものなどをいう(金サ法4④)。 ① 当該金融商品の販売について金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動により損失が生ずることとなるおそれがある場合における当該損失の額が当該金融商品の販売が行われることにより顧客が支払うべき委託証拠金その他の保証金の金銭の額を上回ることとなるおそれ ② 当該金融商品の販売について当該金融商品の販売を行う者その他の者の業務又は財産の状況の変化により損失が生ずることとなるおそれがある場合における当該損失の額が当該金融商品の販売が行われることにより顧客が支払うべき委託証拠金その他の保証金の金銭の額を上回ることとなるおそれ 商品の仕組みに係る説明義務が、金融サービス提供法の前身である旧金融商品販売法上の説明事項に含まれているかについては、同法審議中の参議院財政金融委員会において、当時の大蔵省金融企画局長が、「手数料とか税金とか商品の仕組み一般」について、「重要事項に密接に関連する部分につきましては、当然その重要事項を説明する必要性があり、当然説明されることになる。」と答弁している。 この答弁から、旧金融商品販売法の予定するところとして、重要事項に密接に関連する商品の仕組み一般についての説明義務が課されることが窺われるが、果たして、租税法上の構造についてまで踏み込む説明がなされるべきなのであろうか。 この点、節税商品取引における商品の構造を説明するに当たっては、商品の基本構造のみならず、課税上の取扱いに係る説明までなされることが求められるべきではなかろうか。なぜなら、節税効果に関する課税上の仕組みを説明してこそ、節税商品の仕組みを説明したことになるからである。 例えば、相続税対策として変額保険を勧誘する際には、どのような場合に相続税対策となり、どのような場合にならないかといったことについても説明義務があると解すべきではなかろうか。これも説明内容の二重構造性の問題として、節税商品取引の説明義務に特有の論点である。 なお、金融サービス提供法4条《金融商品販売業者等の説明義務》2項が、「前項〔筆者注:重要事項の説明義務〕の説明は、顧客の知識、経験、財産の状況及び当該金融商品の販売に係る契約を締結する目的に照らして、当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度によるものでなければならない。」と規定するとおり、かかる説明には適合性原則の適用があることはいうまでもない。 3 説明義務者の専門的知識の欠如の問題(説明義務者の適合性の問題) 仮に、節税商品取引における説明義務者の問題が、一般的金融商品に係る説明義務者の問題と同質であって、その履行上の問題を議論すれば足りるのであれば、特段、節税商品取引に着目して検討する必要はない。 しかしながら、節税商品取引における説明義務の履行には、次に掲げる2つの特徴的な問題が介在することに鑑みて、一般的金融商品取引におけるそれとは異なった観点からの検討の必要性を指摘することができる。 すなわち、1つ目の特徴として、説明義務者としての適合性の問題が存在する。当然のことながら、節税商品取引においては、一般的金融商品取引に比して、特に税務という専門領域に係る知識を必要とするため、販売者の専門的知識の欠如が起こりやすいという特徴がある。販売者の付け焼刃的な知識では、複雑な課税上の取扱いを理解することが困難であるばかりでなく、購入者に対して十分な説明をすることは不可能であろう。ここに説明義務の履行者としての適合性の問題が惹起される。 2つ目に、かような適合性の問題の延長として、税理士資格を有しない販売者が商品の仕組みである課税上の取扱いの説明を個別具体的に行うことにつき、税理士法に抵触するおそれがあることである。税理士でない者による課税上の説明には一定の制限がかかる。この点も、節税商品取引に特有な説明義務の検討が求められる所以の1つである。 このように、説明義務者の適合性の問題として、①販売者の専門的知識の欠如の問題と、②税理士法による説明義務制限の問題を検討する必要性からも、一般的金融商品取引とは別個に節税商品取引を取り上げて検討すべき理由を指摘し得るのである。 4 小括 前述のとおり、米国におけるタックスシェルター・マルプラクティス訴訟の傾向から節税商品過誤訴訟の増加の可能性を探ることが可能であると思われる。 そのような中にあって、節税商品取引が法的問題を孕んでいなければ問題はないのであるが、節税商品の特殊構造ゆえに一般的金融商品取引における説明義務とは異なった検討が必要であることを確認してきた。上記の種々の理由から、節税商品取引を一般の金融商品とは異なるものとして取り上げる必要性が指摘され得るのである。 (続く)
谷口教授と学ぶ 国税通則法の構造と手続 【第5回】 「国税通則法4条」 -他の国税に関する法律との関係- 大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫 国税通則法4条(他の国税に関する法律との関係) 1 存在意義と論点 国税通則法4条(以下「本条」という)は、「他の国税に関する法律」に別段の定めすなわち特別規定があるときは、その定めが国税通則法に優先する旨を規定するが、これは、「特別法は一般法を破る。」という法諺ないし法格言を国税通則法と「他の国税に関する法律」との関係について確認的に規定したものである(志場喜徳郎ほか共編『国税通則法精解〔令和4年改訂・17版〕』(大蔵財務協会・2022年)85頁参照)。 本条は、国税通則法が「国税についての基本的な事項及び共通的な事項」(1条)を定め、これに関する別段の定め(特別規定)を「他の国税に関する法律」が規定するという役割分担を前提にして、定められたものであり、立法者がそのような役割分担を前提にして国税通則法及び「他の国税に関する法律」の規定を整備する場合に、両法の適用関係の調整規定として存在意義を有するものである。 ところで、本条では「他の国税に関する法律」(下線筆者)と規定されているにもかかわらず、「国税に関する法律」を「国税の確定、納付、徴収及び還付等に関する事項を規定した法律」としてこれに国税通則法を含めて解説する場合(志場ほか共編・前掲書170頁、武田昌輔監修『DHCコンメンタール国税通則法』(第一法規・加除式)691頁)があるが、それは本条の解説としては、国税通則法と「他の国税に関する法律」の規律事項が共通することを示す以外に特に意味がない(中川一郎・清永敬次編『コンメンタール国税通則法』(税法研究所・加除式[1989年追録第5号加除済])D132~150[中川一郎執筆]も参照)。 そもそも、「国税に関する法律」という語は他の条文においてもしばしば用いられているが(例えば国税通則法第1章「総則」だけをみても2条5号~9号、8条、10条、11条、12条1項、13条1項・4項で用いられている)、その用語が他の条文においても前記の解説にいう「国税の確定、納付、徴収及び還付等に関する事項を規定した法律」という意味で用いられているとは限らない。例えば、第3回で検討した「納税者」の定義規定(税通2条5号)が「国税に関する規定により国税(源泉徴収等による国税を除く。)を納める義務がある者」と定める場合、そこでいう「国税に関する法律」は納税義務の成立要件である課税要件に関する事項を規定した法律を含むものである(第3回2参照)から、本条でいう「国税に関する法律」よりも広い範囲をカバーするものである。 しかし、前記の解説は、第3回3で述べた「国税通則法のタイブレーク制的構造」を前提にして、国税通則法の規律対象を「国税の確定、納付、徴収及び還付等に関する事項」として捉えた上で、本条にいう「国税に関する法律」という用語を「国税の確定、納付、徴収及び還付等に関する事項を規定した法律」の意味で用いていると理解すべきであるように思われる(志場ほか共編・前掲書84頁も参照)。というのも、そのように理解しなければ、前記の解説が「国税に関する法律」すなわち「国税の確定、納付、徴収及び還付等に関する事項を規定した法律」に「各種の国税の課税要件及び内容等を定めた課税実体法」やその特例法を含めていること(志場ほか共編・前掲書170-171頁、武田監修・前掲書692頁参照)を合理的に説明することができないからである。 本条については、「国税に関する法律」の意義をめぐる以上のような論点はあるとしても、これ以外には、本条それ自体の内容に関する問題はないように思われる。もっとも、「他の国税に関する法律」の規定を国税通則法に編入する場合には、本条の存在意義が問い直されることがあるのではないかとも思われる。そこで、このことについて次の2で検討しておくことにする。 2 「他の国税に関する法律」の規定の編入と本条の存在意義 「他の国税に関する法律」の規定が国税通則法にかなり大規模に編入された例としては、①平成23年度税制改正における税務調査手続の見直しと②平成29年度税制改正における国税犯則調査手続の見直しがある。 上記①の税務調査手続の見直しに当たっては、それまで各税法(「他の国税に関する法律」)が定めていた質問検査権について、国税通則法において、「一連の手続として、各税法から集約して横断的に整備すること」(財務省「平成24年度 税制改正の解説(平成23年12月改正)」229-230頁)という考え方に基づき、各税法から質問検査権規定が削除されるとともに、各税目を5つのグループに分けそれぞれのグループごとにそれらの規定が集約され(酒税以外の税目)又はそのまま(酒税)国税通則法に同法74条の2ないし74条の6の各規定として編入された(同230-231頁参照)。この点については次の解説(同231頁。下線筆者)がなされている。 この「参考」の中で引用されているのは、税制調査会「国税通則法の制定に関する答申(税制調査会第二次答申)」(昭和36年7月)15頁の答申内容であるが、同16頁は「質問、検査及び諮問の方法等」について次のとおり答申していた。 国税通則法の制定時には、「質問検査権限の国税通則法への集約化」は見送られたが、平成23年度税制改正においてそれが実現し、併せて質問検査の方法等について新たに規定が整備され「国税通則法の制定に関する答申」の想定していたところよりも大幅に明確化が図られたと考えられる。 本条(税通4条)との関係で平成23年度税制改正を評価すると、同改正は「質問検査権限の国税通則法への集約化」によって本条の存在意義を減ずるものとみることができるかもしれない。しかし、国税通則法の当初の構想からすると、質問検査権に関する事項はそもそも国税通則法において規定されるべきものであって「他の国税に関する法律」で別段の定めとして規定されるべきものではなかったのであるから、上記改正による「質問検査権限の国税通則法への集約化」は本条の存在意義に実質的には何ら影響を与えるものではないとみるべきである。 次に、前記②の国税犯則調査手続の見直しについては、その実質的な理由は「国税犯則取締法については、昭和23年を最後に大幅な改正がなされておらず、条文が片仮名・文語体であるなど表現形式が現代離れしているばかりではなく、内容的にも同じ性格の関税法に基づく犯則調査手続の諸規定と比較して不備な点が少なからず認められる」(財務省「平成29年度 税制改正の解説」992頁)、「これに加えて、近年、業務連絡における電子メールの活用や電子データの外部サーバへの保管など経済活動のICT化が進展する中にあって、犯罪嫌疑者の故意や脱税金額の立証等に必要な客観的証拠の収集が一層困難になっている」(同頁)ことにあるが、国税犯則調査関係規定の国税通則法(第11章)への編入は次のような考え方(同993頁。下線筆者)に基づき行われたものである。 ここで述べられている考え方によれば、国税犯則取締法の廃止・国税犯則調査関係規定の国税通則法(第11章)への編入も、「国税についての基本的な事項及び共通的な事項」(税通1条)を定める国税通則法の性格や「他の国税に関する法律」との役割分担に適合するものであり、「法形式面での整備」にすぎず、実質的には本条(税通4条)の存在意義を減ずるものではないといえよう。 最後に、まだ実現してはいないが、国税徴収法の定める国税徴収関係規定の国税通則法への編入について若干コメントしておくことにする。 既に第1回2で国税徴収法の改正の経緯に関してみた、「いわば中間的な租税通則法」という国税徴収法の性格や「実は[手続の]実体的には一本のやつを、便宜主義的に二本に分かれている」という国税通則法との関係に関する見方からすると、国税徴収関係規定の国税通則法への編入は、自然な流れであるようにも思われる。確かに、「国税徴収法も、このような[滞納の場合という]特殊な分野において国税諸法の共通法たる面を有しており、国税通則法とならぶものである」(志場ほか共編・前掲書86頁)から、国税犯則調査という特殊な分野において国税諸法の共通法であった国税犯則取締法の場合(前記②)と同じく、国税徴収関係規定の国税通則法への編入も「法形式面での整備」にすぎないと考えることもできるかもしれない。 しかし、国税通則法が「税法の体系的な構成を整備し、かつ、国税に関する法律関係を明確にする」(1条)に当たって国税徴収法の側からみて規定の整備を行ったという同法の実定的構造(第1回3参照)と、「国税通則法が国税諸法の一般法に当たることは、もとより国税徴収法との関係についてもいえることである。」(志場ほか共編・前掲書86頁)という同法の性格を勘案すると、国税徴収関係規定の国税通則法への編入を、単純にあるいは直ちに、自然な流れというわけにはいかないように思われる。これは、国税通則法の実定的構造にビルトインされた実質的考慮と「国税に関する法律」の一般法としての国税通則法の法形式的性格との関係をどのように調整するかにかかっているといってよかろう。その調整の如何によっては、本条(税通4条)の存在意義が実質的に問い直されることになるかもしれない。 (了)
令和4年度税制改正における 『グループ通算制度』改正事項の解説 【第2回】 公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸 Ⅱ 交際費等の損金不算入制度 1 交際費等の損金不算入制度(概要) 通算法人が平成26年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度(適用年度)において支出する交際費等の額について、次に掲げる通算法人の区分に応じて次に掲げる金額は、その適用年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されない(措法61の4①②③)。 [通算法人の交際費等の損金不算入額の計算] ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 上記のうち❷の(A)の定額控除限度額を上限に交際費等が損金算入される取扱いを「定額控除限度額の特例」ということとする。 2 通算法人の区分の判定 (1) 資本金の額等が100億円超の通算法人の判定 通算法人については、通算グループ内の通算法人のいずれかで資本金の額又は出資金の額が100億円を超える場合、交際費等が接待飲食費の額を含めて全額損金不算入となる(措法61の4①)。 具体的には、「その通算法人又はその通算法人の適用年度終了の日においてその通算法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人のうちいずれかの法人の同日における資本金の額又は出資金の額が100億円を超える場合におけるその通算法人」が全額損金不算入の対象となる(措法61の4①)。 つまり、通算グループ内で1社でも資本金の額が100億円を超える通算法人がある場合は、通算法人全社で交際費等が接待飲食費の額を含めて全額損金不算入となる。 なお、通算親法人の事業年度の中途において通算承認の効力を失った通算法人(中途離脱法人)の100億円超の判定についても、その効力を失った日の前日に終了する事業年度終了の日(中途離脱法人の適用年度終了の日)において通算グループ全体で判定する(措法61の4①、措通61の4(2)-8)。 また、通算親法人の100億円超の判定において、通算親法人が資本又は出資を有しない法人である場合、通算親法人の資本金の額又は出資金の額とみなす金額は、その適用年度終了の日における確定決算に基づく貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額から貸借対照表に計上されている総負債の帳簿価額を控除した金額(貸借対照表にその適用年度に係る利益の額が計上されているときは、その額を控除した金額とし、その適用年度に係る欠損金の額が計上されているときは、その額を加算した金額とする)の60%に相当する金額とする(措法61の4①、措令37の4①、措通61の4(2)-2~61の4(2)-5)。 さらに、通算子法人の100億円超の判定において、通算親法人が資本又は出資を有しない法人である場合、通算親法人の資本金の額又は出資金の額とみなす金額は、その通算法人の適用年度終了の日以前に最後に終了した通算親法人の事業年度終了の日における確定決算に基づく貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額から貸借対照表に計上されている総負債の帳簿価額を控除した金額(貸借対照表にその事業年度に係る利益の額が計上されているときは、その額を控除した金額とし、その事業年度に係る欠損金の額が計上されているときは、その額を加算した金額とする)の60%に相当する金額(その適用年度終了の日以前に終了した通算親法人の事業年度がない場合には、通算親法人の設立の日における貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額から貸借対照表に計上されている総負債の帳簿価額を控除した金額の60%に相当する金額)とする(措法61の4①、措令37の4②)。 (2) 定額控除限度額の特例が適用される通算法人の判定(中小通算法人の判定) 定額控除限度額の特例が適用される通算法人とは、大通算法人以外の通算法人(中小通算法人)をいう(措法61の4②)。 ここで、大通算法人とは、その通算法人又はその通算法人の適用年度終了の日においてその通算法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人のうち、いずれかの法人が次の法人である場合におけるその通算法人をいう(措法61の4②、法法66⑤二・三)。 なお、通算親法人の事業年度の中途において通算承認の効力を失った通算法人(中途離脱法人)の大通算法人の判定についても、その効力を失った日の前日に終了する事業年度(中途離脱法人の適用年度)終了の日において通算グループ全体で判定する(措法61の4②、措通61の4(2)-8)。 また、通算親法人の中小通算法人の判定において、通算親法人が資本又は出資を有しない法人である場合、通算親法人の資本金の額又は出資金の額とみなす金額は、その適用年度終了の日における確定決算に基づく貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額から貸借対照表に計上されている総負債の帳簿価額を控除した金額(貸借対照表にその適用年度に係る利益の額が計上されているときは、その額を控除した金額とし、その適用年度に係る欠損金の額が計上されているときは、その額を加算した金額とする)の60%に相当する金額とする(措法61の4①②、措令37の4①)。 さらに、通算子法人の中小通算法人の判定において、通算親法人が資本又は出資を有しない法人である場合、通算親法人の資本金の額又は出資金の額とみなす金額は、その通算法人の適用年度終了の日以前に最後に終了した通算親法人の事業年度終了の日における確定決算に基づく貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額から貸借対照表に計上されている総負債の帳簿価額を控除した金額(貸借対照表にその事業年度に係る利益の額が計上されているときは、その額を控除した金額とし、その事業年度に係る欠損金の額が計上されているときは、その額を加算した金額とする)の60%に相当する金額(その適用年度終了の日以前に終了した通算親法人の事業年度がない場合には、通算親法人の設立の日における貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額から貸借対照表に計上されている総負債の帳簿価額を控除した金額の60%に相当する金額)とする(措法61の4①②、措令37の4②)。 (続く)