さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第74回】 「第二次納税義務における徴収不足の要件事件」 ~最判平成27年11月6日(民集59巻7号1796頁)~ 弁護士 菊田 雅裕 (了)
収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第76回】 千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也 (10) 請負に係る収益の帰属の時期(法人税基本通達2-1-21の7) ア 概要 請負に係る収益の帰属の時期について定める法人税基本通達2-1-21の7の内容を図表で示すと次のようになる。 (※1) 長期大規模工事に該当し工事進行基準による所得計算が強制されるもの(法人税法64①)及び請負工事について工事進行基準による所得計算を任意適用するもの(法人税法64②)については、別途これらの計算規定が適用されるので本通達の適用対象外となっている。 (※2) 物の引渡しを要する取引にあってはその目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日をいい、物の引渡しを要しない取引にあってはその約した役務の全部を完了した日(法基通2-1-21の2)。 (※3) 法人税基本通達2-1-21の5に準じて算定される額(本連載第75回参照)。 収益認識会計基準では、約束した財又はサービスを顧客に移転することにより履行義務を充足した時に又は充足するにつれて、充足した履行義務に配分された額で収益を認識する。履行義務は、所定の要件を満たす場合には一定の期間にわたり充足され、所定の要件を満たさない場合には一時点で充足される(基準17(5))。 本通達は、請負については、別に定めるものを除き、法人税基本通達2-1-21の2及び3にかかわらず(本連載第74回参照)、その引渡し等の日が法人税法22条の2第1項の役務の提供の日に該当し、その収益の額は、引渡し等の日の属する事業年度の益金の額に算入することが原則であることを留意的に明らかにしている。 その上で、本通達ただし書は、当該請負が法人税基本通達2-1-21の4(1)から(3)までのいずれかを満たす場合(履行義務が一定の期間にわたり充足されるものに該当する場合。本連載第74回参照:法人税基本通達2-1-21の2《履行義務が一定の期間にわたり充足されるものに係る収益の帰属の時期》)において、その履行義務が充足されていくそれぞれの日の属する事業年度において進捗度に応じて算定される額(同通達2-1-21の5に準じて算定される額(本連載第75回参照))を益金の額に算入しているときは、これを認めることを明らかにしている。 以下、留意点として次のようなものがある。 イ 本通達の趣旨 本通達の趣旨は次のとおりである(趣旨説明61頁以下)。 収益の帰属の時期についての伝統的な実現主義の考え方では、次の時点で収益認識することが一般的であったものと考えられる。 本通達は、請負についての民法における報酬の支払時期は、原則として、物の引渡しを要する取引にあってはその目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日であり、物の引渡しを要しない取引にあってはその約した役務の全部を完了した日であり、これらの時点をもって実現したものとして収益の計上時期とするのが伝統的な会計慣行であったことを踏まえ、旧通達2-1-5の取扱いを引き続き原則として据えるものである。 請負は、収益認識基準において「履行義務が一定の期間にわたり充足されるもの」に該当する場合もあり得るが、請負等の報酬の請求が可能となる日は民法上比較的明確であり、法律概念を優先した方が同じ法律である法人税法の安定に資するため、本通達では、収益認識会計基準の取扱いをむしろ例外としている。 請負の収益計上時期について、本通達は、その本文において伝統的な実現主義の考え方、そのただし書において同基準の考え方を採用している。 会計上、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準の範囲内の複数の選択肢の中から一の収益計上時期を選択しながら、申告調整によって他の収益計上時期に変更することは、法人税法22条の2第3項に照らしても認められないと考えるべきであろう。 このため、例えば、その請負に係る履行義務が充足されていくそれぞれの日の属する事業年度において収益経理を行った場合には、引渡し等の日の属する事業年度の収益の額として申告調整を行うことはできないことに留意が必要である。 ウ 本通達と役務提供基準 法人税法22条の2第1項の役務提供基準に関する議論に論及しておく。本通達は、役務提供基準を採用しているのか、引渡基準を採用しているのか、という視点で捉えておいてもよい。 捉え方によってはおよそすべての契約は役務提供契約の側面も有しているという見解も示されているところ、建設請負契約は、典型的な役務提供契約である一方、「物の取引にかかる」ように思われる役務提供型契約であるともいわれる(沖野眞已「契約類型としての『役務提供契約』概念(上)」NBL583号7頁(1995年)参照)。 かような建設請負契約等に係る収益計上時期について、これまで、法人税法においては、権利という法的な観点から一種の引渡基準を導出してきた。 請負報酬については、次の点が考慮され、物の引渡しを要する場合は仕事の目的物の引渡しの時に、物の引渡しを要しない場合は約定の仕事を完成した時に、現実の収入がなくても、その収入すべき権利が確定し、その時の属する年度の益金に計上すべきであるという説明がなされてきた。 民法632条にいう仕事の完成とは「請負工事が当初予定された最終の工程まで一応終了したこと」、同633条にいう引渡しとは、「正式の引渡証の交付の有無を問わず目的物の占有ないし、実力的支配の任意の移転」を意味することを前提とした場合に(大阪高裁昭和61年12月9日判決・判タ640号176頁)、上記のように引渡しをもって収益を計上することは権利確定主義や実現主義とも親和的である。 よって、平成30年度税制改正後においても上記のような引渡基準が建設請負工事等に係る収益計上時期を決する基準として妥当するように思われる。 この点について、法人税法22条の2第1項は役務提供取引については引渡基準ではなく役務提供基準を採用している。 本通達のように、物の引渡しを要する場合は仕事の完成ではなく、仕事の目的物の引渡しこそが同項の役務提供基準に適合するという解釈論もありうる。 しかしながら、同項の「役務の提供」の意義について場面によって引渡しを包蔵するような解釈論を展開するというのであれば、いわば引渡しや役務の提供を包摂する上位概念になりうる原理原則のようなルールを法に明定すべきではなかったか、という議論も検討の対象になりえよう。 (了)
〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2022年3月】 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2022年3月1日から3月31日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。 Ⅱ 公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律案 令和4年3月1日、第208回国会に「公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律案」が提出された。 これは、会計監査の信頼性の確保並びに公認会計士の一層の能力発揮及び能力向上を図り、もって企業財務書類の信頼性を高めるため、上場会社等の監査に係る登録制度の導入などの措置を講ずるものである。 Ⅲ 新会計基準関係 企業会計基準委員会から次のものが公表されている。 ① 「電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い(案)」(内容:電子記録移転有価証券表示権利等の発行・保有等に係る会計上の取扱いを示す) ② 「資金決済法上の暗号資産又は金融商品取引法上の電子記録移転権利に該当するICOトークンの発行及び保有に係る会計処理に関する論点の整理」(内容:金融商品取引法上の電子記録移転権利又は資金決済法上の暗号資産に該当するICOトークンの発行・保有等に係る会計上の取扱いに関する論点の整理を行うもの) ③ 「改正実務対応報告第40号「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い」」(内容:金利指標置換後の会計処理に関する取扱いの適用期間を、米ドル建LIBORとそれ以外の通貨建てのLIBORを分けることなく、一律に2024年3月31日以前に終了する事業年度まで延長することなどを示す)。 Ⅳ 有価証券報告書の開示関係 金融庁から次のものが公表されている。 ① 「記述情報の開示の好事例集2021」の更新(内容:監査の状況と役員の報酬等の好事例を追加) ② 「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項及び有価証券報告書レビューの実施について(令和4年度)」(内容:重点テーマ審査として収益認識会計基準に着目することなどを示す) ③ 「監査上の主要な検討事項(KAM)の特徴的な事例と記載のポイント」(内容:望ましいKAMの記載や現状の課題等を記載) Ⅴ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査に関連して、次のものが公表されている。 ① 「IT委員会研究報告第60号「監査データ標準化に関する留意事項とデータアナリティクスへの適用」」(内容:監査データの標準化の動向や将来の監査手法などを記載) ② 「監査意見不表明及び有価証券報告書等に係る訂正報告書の提出時期に関する留意事項(内容:過年度の会計不正が疑われるような状況の発生を踏まえ、監査意見不表明と有価証券報告書等に係る訂正報告書の提出時期について記載) ③ 「監査・保証実務委員会実務指針第103号「訂正報告書に含まれる財務諸表等に対する監査に関する実務指針」の改正」(内容:監査基準委員会報告書720「その他の記載内容に関連する監査人の責任」に関連する後発事象への対応などを記載) Ⅵ ESG関係 信託協会に設置された「企業のESGへの取り組み促進に関する研究会」から「「ESG版伊藤レポート」ESGへの実効性ある取り組みの促進と課題解決に向けて~マテリアリティの特定と役員報酬制度の在り方~」が公表されている。 ESG(環境・社会・ガバナンス(ESG:Environment Social Governance))への取り組みに関する実効性や情報開示の質の向上などの課題について検討したものである。 (了)
ハラスメント発覚から紛争解決までの 企 業 対 応 【第25回】 「中小企業のパワハラ防止措置の義務化に関連する留意点及びチェックポイント」 弁護士 柳田 忍 【Question】 4月から、中小企業に対しても、パワハラ防止のための雇用管理上の措置義務が課されることになりました。中小企業である当社においても体制整備等を行ったつもりですが、法の要求を満たしているのか不安があります。 中小企業において気をつけるべき点とあわせて最終チェックの際のチェックポイントを教えてください。 【Answer】 中小企業においては、企業の規模が小さいことから、相談者の身元が推測されやすく、プライバシーの侵害に繋がりやすいといった問題点などがありますので、これらに対処する必要があります。 チェックポイントについては本文の末尾に記載していますので、ご参照ください。 ● ● ● 解 説 ● ● ● 1 中小企業とパワハラ防止のための雇用管理上の措置義務 パワハラについては、労働施策総合推進法(パワハラ防止法)第30条の2、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年1月15日厚生労働省告示第5号・パワハラ指針)により、使用者に対してパワハラ防止のための雇用管理上の措置義務が課されている。 中小企業については令和4年3月31日までは努力義務であったので、「4月のタイミングにあわせて本腰を入れて準備をしたが、これで足りているのかよくわからない」といった中小企業も少なくないであろう。 そこで、以下のとおり、措置義務の履行に際して中小企業において特に気をつけるべき点を指摘し、チェックポイントを挙げるものとする。 2 パワハラ防止のための雇用管理上の措置義務の内容 パワハラ防止のための雇用管理上の措置義務の内容は、パワハラ指針に定められており、その概要は以下のとおりである。 (1) 事業主の方針等の明確化及び周知・啓発 (※) 上記の「(例)」はパワハラ指針が各項目について挙げている例の概要を示したものである。以下同様とする。 以上を端的にまとめると、以下のとおりである。 要は、何がパワハラであるか及び、それらのパワハラが行ってはならないことであることを明確にし、これらを従業員に知らしめなければパワハラを防止する効果は期待できないということであるが、更に上記1については、パワハラをしてはならない旨を就業規則等に定め、これに違反する行為を懲戒事由とすることにより、行為者の懲戒処分を可能にするという意味を持つ。 したがって、最低限の準備として、パワハラの定義等とこれを行ってはならないことを就業規則の服務規律等として定め、従業員に周知しておく必要がある。 (2) 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備 本項目において求められているのは、窓口を設置したうえで、実効性のある窓口の運用を確保することである。 場当たり的な運用では実効性のある窓口の運用は難しいことから、窓口における対応マニュアルを作成したり、窓口において受け付けた案件の処理フローを策定したりして準備しておくのがよいであろう。 なお、中小企業におけるパワハラ対応窓口の運用に際してよく問題となるのは、企業の規模が比較的小さいことから、(i)窓口への相談内容等により窓口担当者に相談者の身元が容易に推測されてしまうおそれが高いケースがあることや、(ⅱ)誰を窓口担当者に選任するにしても窓口担当者が社内の誰かしらと利害関係を有することが多く、相談対応の公正性について従業員が不信感を覚えがちであること、などである。 このような場合には従業員が窓口の利用を控えてしまい、その結果、会社によるパワハラ事案の発生の把握が妨げられるおそれがある。対応策としては、上記(2)①の例の1つとして挙げられているように、相談対応業務を外部機関に委託するのがよい。 なお、実務上、外部機関として顧問弁護士に相談窓口対応業務を委託する会社が少なくないが、顧問弁護士を受付窓口とすることについては、顧問弁護士に相談を行うことを躊躇する者が存在し、そのことがパワハラ事案の早期把握を妨げるおそれがあることに注意が必要である(※)。 (※) 消費者庁「公益通報者保護法に基づく指針(令和3年内閣府告示第118号)の解説(令和3年10月)」第3.Ⅱ.1(4)④参照。なお、同解説は、公益通報者保護法上の内部公益通報に該当しない通報についても、同解説で規定する内容に準じた対応を行うよう努めることが望ましいとしており(同解説第1.Ⅰ脚注4)、パワハラ防止のための措置義務の履行に際しても参考になる。 特に、中小企業の場合、企業のトップと顧問弁護士とが密接な関係を持っていることが多く、そのような場合、トップや幹部によるパワハラについて、被害者たる従業員が(内部窓口はもちろんのこと)外部窓口である顧問弁護士を信用できずに相談が遅れ、それにより事態が更に悪化することがある。 (3) パワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応 上記②及び③の例に記載がある「被害者と行為者を引き離すための配転」については、事後の対応策としては有効であるが、中小企業においては、物理的・機能的に困難を伴う場合が多い(対応策について、拙稿【第23回】参照)。 また、上記④については、すなわち、パワハラの事実が確認できるか否かにかかわらず、定期的な実施が求められているといえる。少なくとも年1回程度は、社内報を配布したり、社内ホームページの該当ページをメール等で通知したりする等の周知を行い、また、従業員に対する研修を行うべきである。 (4) (1)から(3)と併せて講ずべき措置 上記のとおり、企業の規模が小さい場合、相談内容の一部が漏洩しただけで相談者の身元等が容易に推測されてしまう場合がある。よって、中小企業においては、特に相談者等のプライバシーの保護が重要となる。 プライバシー保護のための措置としては、指針が定めるとおり、窓口業務や調査業務のマニュアル化や担当者に対する研修などもあるが、更に「プライバシー保護のための措置」として、誓約書等により相談対応担当者に守秘義務を課すこと、そしてこれに違反した場合に懲戒処分の対象となり得る旨を就業規則等に定めることも考えられる。 入社時に従業員の誓約書を取得する会社は多いであろうが、守秘義務の対象たる情報を明確にし、また、担当者に責任の重さを認識させるため、窓口や調査等の担当者に対して改めて誓約書を提出させることも有用である。 3 最終チェックポイント 以上の問題点に留意しつつ、中小企業においては、以下を参考に、改めて社内の体制等をチェックするのがよいであろう。 〈パワハラ防止措置チェックリスト〉 (了)
《速報解説》 JICPAが「ウクライナをめぐる現下の国際情勢を踏まえた監査上の対応」について示す ~企業や監査人の事業活動への影響を踏まえ、監査上の留意事項をまとめる~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2022年4月7日、日本公認会計士協会は、「2022年3月期監査上の留意事項(ウクライナをめぐる現下の国際情勢を踏まえた監査上の対応について)」を公表した。 これは、ウクライナをめぐる国際情勢により、グローバルに活動を展開する企業や監査人の事業活動にも影響が及んでいることから、監査上の留意事項をまとめたものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 監査人は、ウクライナをめぐる国際情勢が被監査企業の事業活動に及ぼす影響を理解した上で、それによる事業上のリスク等が財務諸表に重要な虚偽表示をもたらす可能性を考慮し、監査意見を表明するための十分かつ適切な監査証拠を入手することが求められるとし、以下に述べることを記載している。 1 関連する地域に被監査企業の拠点がある場合の直接的な影響 関連する地域に被監査企業の拠点がある場合、事業の見直しに基づく拠点の閉鎖等が監査基準委員会報告書315「重要な虚偽表示リスクの識別と評価」3項(2)の事業上のリスクに該当することが想定される場合がある。 2 政府の措置が産業や経済事象に及ぼす間接的な影響 日本政府を含め、各国政府は、諸般の措置を実施しており、監査人は、これらの措置により被監査企業に関連する産業や経済事象に影響が及ぶ可能性を考慮し、当初のリスク評価について修正が必要となるかどうか検討することを要する。 リスク評価への影響が生じる状況として、次の事項を例示している。 3 会計上の見積りの監査 会計上の見積りの監査において、基礎データとして用いられることが想定される各種経済指標は、ウクライナをめぐる国際情勢の直接的及び間接的な影響を踏まえ入手可能な最新の情報を検討することが必要である。 例えば、次のような経済指標が参考になるとのことである。 収束時期や帰結が不透明な場合など、不確実性の高い環境下における監査の基本的な考え方については、「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その2)」(2020年5月12日更新)が参考になるとのことである。 4 会計上の見積りへの影響 会計上の見積りへの影響として、例えば、将来キャッシュ・フロー等の予測に影響する次の項目(仮定や基礎データ)が挙げられている。 5 監査上の主要な検討事項 監査人が2022年3月期の財務諸表の監査において、会計上の見積りに関し、職業的専門家として特に重要であると判断した事項については、監査上の主要な検討事項として監査報告書に記載することに留意が必要であるとし、今般のウクライナをめぐる国際情勢による影響についても十分な検討が必要であるとしている。 6 グループ監査 現地子会社等に関連して、十分かつ適切な監査証拠を入手できない状況として、関連する地域において発生した次のような事態が例示されている。 十分かつ適切な監査証拠を入手できなかった場合には、グループ財務諸表の監査意見に与える影響を評価しなければならない。 7 経営者確認書 ウクライナをめぐる国際情勢について、経営者確認書の文例が示されている。 例えば、次のものである。 8 その他の記載内容 2022年3月期決算では、「その他の記載内容」に関して、監査人の検討が行われる。 「その他の記載内容」とは、監査した財務諸表を含む開示書類のうち当該財務諸表と監査報告書とを除いた部分の記載内容である。 「その他の記載内容」としては、計算書類等における事業報告及びその附属明細書や有価証券報告書における事業等のリスクや経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析等の記載内容があげられる。 今後の事業の見通し等、今般のウクライナをめぐる国際情勢に関する記載がその他の記載内容に含まれることがあることに留意する。 (了)
2022年4月7日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.464を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
monthly TAX views -No.111- 「MMT(現代貨幣理論)をめぐる議論」 東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹 筆者は3月8日の参議院予算委員会の公聴会に公述人として呼ばれ、最近わが国で話題になっているMMT(現代貨幣理論)について、以下の概要の話をした(※1)。 (※1) 「参議院 インターネット審議中継」にて配信(2022年3月8日付予算委員会公聴会)。 * * * 「MMT」の考え方は、政府と中央銀行の勘定を一体とみなし、財政赤字拡大に伴う国債の増発分は、それに見合う国民の資産増加となるので、公的債務の増加は将来世代の負担にはならないというもの。 したがって、自国通貨を発行する権限のある政府は、中央銀行が財政赤字分の国債を買い続けることによって、国民負担なく財政出動が可能となる。経済に需給ギャップがある限り、これを埋め合わせる財政出動を行うべきだとする。 積極財政の歯止めはインフレ懸念で、インフレ率が上昇し始めたら、増税や歳出削減によって対応する、そのルールをあらかじめ決めておけばいいとする。 金融政策が機能不全になりデフレ脱却にもがくわが国の現状に対し、財政赤字を気にすることなくコロナ対応も含めた経済対策の実行を主張する論者や政治家を正当化する文脈で用いられている。 しかしこの考え方には、①インフレ、②ワイズスペンディング(wise spending)、③国家の信認という3つの視点から疑問がある。 まず、①のインフレの視点からの疑問として「インフレ率が上昇し始めたら増税や歳出削減により対応する。そのための具体的方法をあらかじめ決めておけばよい」とするが、わが国の国会で、インフレ懸念が出始めれば増税や財政緊縮を行うということの具体策をあらかじめ決めることが可能だろうか。「増税」は所得税か消費税か新税か、「歳出削減」は社会保障か公共事業か、どの程度の規模か、これらが国会や議会であらかじめ立法化できるとは考えがたい。 また、政策のタイムラグの問題がある。高騰する地価対策として地価税が導入されたが、発動された1992年には既にバブルが崩壊し地価は下がり始めており、地価税の対象となった百貨店やホテルなどの経営をさらに苦しめる結果となったという経験がある。 インフレは一度生じれば一気に加速する。「インフレの兆しが見え始めたら対策をとればよい」というのでは間に合わない。 次に②の財政のワイズスペンディングについて、MMTのいうように需給ギャップがある限りそれを埋め合わせる財政追加支出をするというのでは、「ワイズスペンディング」は機能せず、非効率な政府支出や政府投資につながっていく。1990年代のわが国の財政政策は、数次に渡る減税と公共事業追加により総額120兆円の拡張的財政政策が実行されたが、非効率な公共投資が多く、わが国経済をデフレから脱却させることはできなかった。 また、市場メカニズムの下で民間にできることは民間に任せ、「市場の失敗」となりがちな分野には国が対応するという役割分担がなくなり、“何でもかんでも国が”となれば、経済の効率性や民間活力は失われてしまう。 最後に③は国家への信頼の問題で、制限なく国債発行(財政赤字)を続ければ、国債の買い手はどこにもいなくなり、国家や通貨に対する信認が失われ、通貨主権そのものが失われていく。 * * * このような筆者の主張に対して、与野党4名の国会議員から質問を受けたのだが、MMTに賛同する議員はおられなかった。 一方自民党内には、安倍元首相肝いりの「財政政策検討本部」(本部長、西田昌司参議院議員)が立ちあがり、積極財政を主張している。 筆者の予算委員会の公述に対して西田議員は、さっそく翌日、YouTube上で反論をしている(※2)。 (※2) YouTube「参議院予算委員会 中央公聴会での『財政緊縮派』のMMT否定論に真っ向から反論します!【西田昌司ビデオレター令和4年3月9日】」 米国のインフレの加速やロシア・ウクライナ情勢によるエネルギー価格の高騰で、わが国を取り巻く経済環境が不透明な中、理論的にも整備されていないMMTにすがりポピュリズム財政政策・経済対策を打ち出すことだけは避けたい。 (了)
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例40】 「過大支払電気料金の損金性と損害賠償請求権」 国際医療福祉大学大学院教授 税理士 安部 和彦 【Q】 私は、北関東のとある地方都市において、自動車部品の製造・販売業を営む株式会社Aにおいて経理課長を務めております。近年、自動車産業はEV(Electric Vehicle)化が世界的な潮流で、既存の自動車メーカーのみならず異業種が続々参入して、新たなデファクト・スタンダード(de facto standard)を確立しようとしのぎを削っており、2030年には雌雄が決するのではないかといわれております。 そのような中、エンジン関連の部品を国内の自動車用エンジン製造メーカーに納めている当社としても、今後業界がどのような方向性をたどるのか、また当社はどのような生き残り策を模索していくべきなのかにつき、必死の情報収集を行っているところです。 ところで、一昨年の秋口において、当社が電力会社と契約している電力料金につき、本来の使用量に基づく料金よりも過大に支払い続けていたことが判明しました。当社は当時、それまで5年程の間、大口需要者向けの業務用電力の契約を行っていましたが、一部の事業所につき、その適用を受けずに電力料金が計算され、過大に請求されていたというわけです。その事業所は本社や工場と比較して電力消費量はそれほど大きくないため、電力料金の請求が過大であることが分かりにくいという事情がありました。 このような事実は電力会社からの連絡で初めて判明したもので、当社は法人税の申告上、過去5年分の差額を一括で支払いを受けた前事業年度に益金算入し、過去の事業年度の申告内容はいじらないという経理処理を行いました。ただし、たまたま前事業年度はコロナ禍の影響で赤字決算であったため、当該収益にもかかわらず法人税の支払いは生じませんでした。なお、本件により当該電力会社に不信感を持ち、現在は別の事業会社と契約を締結し、電力の供給を受けています。 しかし、先週から受けている国税局の税務調査で、現在本件が問題となっております。調査部の主査がいうには、電力料金の過大請求分は前事業年度に判明し、それに係る電力会社からの支払いも前事業年度に一括で行われたのは事実であるが、過払い分はその前の5事業年度において発生しているのであり、その各事業年度において過払電気料金に係る返還請求権も確定しているのであるから、当社の益金・損金の経理処理には誤りがあるということです。 このような経理処理を同時両建説というのだそうですが、そもそも電力会社のミスでこの問題が起こったというばかりでなく、既に正当な料金と信じて支払いを終えているわが社が、電力会社からの連絡以前にその事実を知る由がないにもかかわらず、それ以前の各事業年度に返還請求権を計上しろとは無理な話であると考えます。 このような場合、法人税法上はどのように考えるのが妥当なのでしょうか、教えてください。 【A】 過去の電力料金につき、過払い分が生じた場合には、当該金額につきそれが生じた各事業年度において過払い返還請求権が確定しているとも考えられますが、その過払い分が生じた事業年度においてその金額を、電力会社からの連絡なしにA社が把握することは事実上不可能といえます。 そうなると、過払いが生じた各事業年度に損失が生じたものとし、一方で過払い分が判明した前事業年度に一括支払いを受けたことに基づきその事業年度に当該金額を益金に算入するというように、損失と収益とを切り離して所得計算を行う、いわゆる「異時両建説」を採用することは問題ないものと考えられます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 法人の被った被害に係る損失 法人税法上、損失については、条文上、明文で債務の確定という要件を付していない(法法22③三)。損失に関しては、一般に、債務の確定よりも実務上問題となるのは、損失の額を合理的に見積もることができるかどうかであり、損失の客観的な確実性である。具体的には、滅失等の資産損失があった場合がこれに該当する。 一方で、損失に関して債務の確定が問題となり得るのは、不法行為等に基づいて損害賠償義務が生じるようなケースである。この場合、原則として、損害賠償に関する支払債務が確定するまで損失が計上できず、損金に算入できないこととなる(債務の確定を要する)。損害賠償金については、通達の規定によれば、その事業年度において賠償すべき金額が確定していない場合であっても、その額として相手方に申し出た金額に相当する金額につき当該事業年度に未払金計上したときには、認められる(部分的債務確定、法基通2-2-13)。損害賠償金に係る債務のうち、相手方に申し出た金額は、当事者間で争いがないことから、部分的に債務が確定したとみて問題ないという取扱いである(※1)。 (※1) 髙橋正朗『法人税基本通達逐条解説(十訂版)』(税務研究会・令和3年)293-294頁。 (2) 損失と債権の両建て 上記(1)の後者のケースとの関連でいえば、法人が不法行為等によって被害を受けた場合、当該被害に係る損害(損金)と損害賠償請求権(益金)とを両建てで計上することにより、結果的に損金算入が制限される場合がある(※2)。例えば本件のように、電力料金の過払い分が生じている場合、当該過払い分に相当する額の損失(現金の流出)が生じていると同時に、電力会社に対する同額の損害賠償請求権を取得していると考えられるため、損金と益金が両建て処理され、法人の純資産に増減はないことから、課税所得にも増減がないこととなる。 (※2) 渡辺徹也『スタンダード法人税法(第2版)』(弘文堂・2019年)108-109頁。 この損金・益金両建て処理については、学説・判例上、損金の確定と益金の確定が同時に行われるという「同時両建説(同時確定説)」と、両者を切り離して別々に確定のタイミングを判断する「異時両建説」の2種類があるとされる(※3)。 (※3) 渡辺前掲(※2)109頁。なお、益金側のことは考えず、損金側のことだけ考えて損金内部で両建てを行う考え方を「内部両建説」といい、本文中の損金・益金両建て処理を「外部両建説」と称して区別しているケースがある。 同時両建説は、最高裁昭和43年10月17日判決・訟月14巻12号1437頁(大栄プラスチックス事件)で採用された考え方である。益金と損金とを表裏一体でとらえ、同一事業年度に計上すべきと判示している。 一方の異時両建説は、東京高裁昭和54年10月30日判決・訟月26巻2号306頁(日本総合物産事件)で示された考え方で、収益及び損失が同一原因によって生ずるものであっても、各個独立に確定すべきことを原則とし、両者互いに他方の確定を待たなければ当該事業年度における確定を妨げるという関係に立つものではないとして、益金と損金とを切り離して考えるという立場を明示している。 (3) 過大支払電気料金の損金性と損害賠償請求権の計上時期が問題となった裁判例 次に、本件と同様に、過大支払電気料金の損金性と損害賠償請求権の計上時期が問題となった裁判例(「相栄産業事件」最高裁平成4年10月29日判決・訟月39巻8号1591頁、TAINSコード:Z193-7013)があるので、以下で確認していきたい。 ① 事案の概要 原告(上告人)である相栄産業は、新潟県において自動車部品の金属プレス加工製品を製造する株式会社であるが、東北電力と電力供給に係る契約を締結していた。東北電力は、計量装置の計器用変成器の設定誤りにより、昭和47年4月から昭和59年10月までの間、上告人から電気料金等(電気料金、契約超過違約金及び電気税をいう)を過大に徴収していた。 東北電力は昭和59年12月頃になってこの事実を初めて発見したため、同年12月14日、上告人に対してこれを伝えて陳謝し、同月21日、右期間に係る過収電気料金の概算額を伝えた。その後、東北電力は、当該過収電気料金の返戻額の算定作業を進める一方で、上告人に対し、年6%の割合による利息を単利計算によって付加して支払うこと、東北電力が特別徴収義務者として上告人から過大に徴収した電気税については、昭和59年度分の税額に当たる額のみを返金し、その余の部分は上告人が放棄することなどを申し入れ、上告人もこれを了承した。このような交渉を経て、東北電力は上告人に対し、昭和60年3月28日、本件過収電気料金等1億5,311万1,819円を含む具体的精算金額を提示し、東北電力で作成した案どおりの確認書を取り交わすことを申し入れたところ、上告人もこれを了承し、翌3月29日、本件確認書が取り交わされるに至った。 本件過収電気料金等のうち電気料金の額は、昭和47年4月から昭和48年9月までの間の上告人の使用電力量を明らかにする資料が残っていなかったため、その間の過収電力量料金の額を昭和48年10月から昭和49年9月までの1年間の1ヶ月平均使用電力量を基礎として推計することによって算出したところである。 一審の新潟地裁平成2年7月5日判決・税資180号1頁では、電気料金等の過払いについて電力会社から返還を受けた場合に、その電気料金等を収益として計上すべき事業年度は、当該電気料金等の返還請求権が確定した日の属する事業年度であるとされ、また、当該返還請求権が確定した日の属する事業年度とは、最終的に精算を終了する旨の合意がなされた時であるとして、過払い分の返還があった事業年度に全額益金算入した課税庁の更正処分を適法とした。二審の東京高裁平成3年5月29日判決・税資183号856頁も原判決を相当とし、控訴を棄却したため、納税者側が上告した。 ② 本件の争点 電気料金等の過払いについて電力会社から返還を受けた場合に、その電気料金等を収益として計上すべき事業年度はいつか。また、その返還請求権が確定した事業年度はいつか。 ③ 裁判所の判断 なお、本件には以下の通り、味村裁判官の反対意見がある。 ④ 本裁判例から学ぶこと 本裁判例で最高裁は、過払い分が昭和60年度に一括で支払われているが、その事実を納税者側が実際に過払いのあった各事業年度において逐次把握することは事実上不可能であることをもって、返還請求権は一括での支払いがあった事業年度に確定したものと認定し、そのタイミングで益金を計上することを求めている。すなわち、本件は益金と損金とを切り離して考える異時両建説を採用した事例と位置付けられる(※4)。 (※4) 渡辺前掲(※2)112頁。 実務上、同時両建説に従った場合、過年度の過払いにつきそれぞれの事業年度において修正申告を行うという経理処理を採ることとなるが、これは事務手続き上相当面倒であるため、過年度は修正せず、一括で最終年度に処理することとなる異時両建説は、その意味で魅力的といえる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 一方、味村裁判官の反対意見はどのように位置づけられるのであろうか。「上告人の財産については、現金の喪失という資産の減少と不当利得返還請求権の取得という資産の増加が生じているが、この両者は、表裏の関係にあり、しかも、その発生の時点においては等価であると認められるから、過収電気料金等の支払によっては上告人の財産に増減を生じていない」という見解であるため、同時両建説のようにも見える。 しかし、現金の喪失という資産の減少は同額の損害賠償請求権の取得によって補われている限り、損失にはあたらないということをいっているため、益金のことは考えずに、損金側だけの問題として、損金内部で両建てを行っていることから、内部両建説に該当すると考えられる(※5)。ただし、内部両建説は反対意見であり、現在の最高裁の多数意見ではない点には留意すべきであろう。 (※5) 渡辺前掲(※2)109頁。 (4) 本件へのあてはめ 過去の電力料金につき、過払い分が生じた場合には、当該金額につきそれが生じた各事業年度において過払い返還請求権が確定しているとも考えられるが、その過払い分が生じた事業年度においてその金額を、電力会社からの連絡なしにA社が把握することは事実上不可能であるといえる。 このように、不可抗力により電力料金の過払い分が生じたときには、過払いが生じた各事業年度に損失が生じたものとし、一方で過払い分が判明した前事業年度に一括支払いを受けたことに基づき、その事業年度に当該金額を全額益金に算入するというように、損失と収益とを切り離して所得計算を行うという、いわゆる「異時両建説」を採用することは、特に問題ないものと考えられる。 (了)
〈判例・裁決例からみた〉 国際税務Q&A 【第17回】 「経済活動基準のうちの管理支配基準の具体的な要件は何か」 公認会計士・税理士 霞 晴久 〔Q〕 経済活動基準のうちの管理支配基準は、具体的にどのような要件が課されていますか。 〔A〕 外国関係会社がその本店又は主たる事務所の所在する国又は地域(本店所在地国)において主たる事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること、すなわち、事業計画の策定等を行い、その事業計画等に従い裁量をもって事業を執行することであり、これらの行為に係る結果及び責任が当該外国関係会社に帰属していることをいうとされています。 ●●●〔解説〕●●● 1 管理支配基準 管理支配基準は、外国関係会社がその本店又は主たる事務所の所在する国又は地域(本店所在地国)において主たる事業の管理、支配及び運営を自ら行っていることを要求している(措法66の6②三ロ、措令39の14の3④)。 ここでいう、主たる事業の管理、支配及び運営を自ら行っていることの意義は、外国関係会社が、自ら、事業計画の策定等を行い、その事業計画等に従い裁量をもって事業を執行することであり、これらの行為に係る結果及び責任が当該外国関係会社に帰属していることをいうとされており、次の事実があるとしてもそのことだけでこの要件を満たさないことにはならないことに留意することとされている(措基通66の6-7)。 また、主たる事業の管理、支配及び運営を本店所在地国において行っているかどうかの判定は、外国関係会社の株主総会及び取締役会等の開催(※1)、事業計画の策定等、役員等の職務執行、会計帳簿の作成及び保管等が行われている場所並びにその他の状況を総合的に勘案の上行うことに留意するとされている(措基通66の6-8)。 (※1) 経済産業省「外国子会社合算税制の適用除外基準である管理支配基準の判定(株主総会等のテレビ会議システム等の活用について)(平成26年1月)」では、テレビ会議システム等の情報通信機器を活用した株主総会や取締役会の開催について、一定の場合、その開催場所が本店所在地国等である場合と同様に取り扱って、管理支配基準の判定を行って差し支えないとの国税庁の回答を紹介している。 今回は、前回の事例(レンタルオフィススペース事件)を用いて、管理支配基準の具体的な当てはめについて検討する。 2 過去の裁判例 《レンタルオフィススペース事件》(※2) (※2) 第一審は、東京地裁平成24年10月11日判決(平成22年(行ウ)第725号・TAINSコード:Z262-12062)。控訴審は、東京高裁平成25年5月29日判決(平成24年(行コ)第421号・TAINSコード:Z263-12220)。 事案の概要については、前回を参照されたい。 (1) 管理支配基準の趣旨 東京地裁は、管理支配基準の趣旨について、次のとおり判示した。 (2) 裁判所の判断 本件の管理支配基準該当性について、東京地裁は、次のとおり事実認定し、「特定外国子会社A社の原告X以外の取締役である乙は、シンガポール在住取締役として、A社が法令・規制を遵守するために必要な各種届出等や税務申告を行い、A社の経理及び銀行取引及び為替管理を含む資金管理、営業担当者に対する指揮監督、売掛債権の督促・回収等の業務を行っていたものと認められるから、A社はその本店所在地国であるシンガポールにおいて、独立した法人としてその事業の管理・支配及び運営を自ら行っていたものと認められる」と判示した。 以上から、東京地裁は、Y(国側)の主張を退け、上記のとおり、A社はその本店所在地国であるシンガポールにおいて、独立した法人としてその事業の管理・支配及び運営を自ら行っていたものと認められると判示した。Yはこの判決を不服として控訴したが、東京高裁は原審を支持し、Y敗訴が確定した。 (3) 控訴審で争われたその他の争点 ◆外国子会社合算税制の適用除外要件の主張立証責任について 本件の控訴審において、Yが、租税特別措置法40条の4の条文の構造、国外に所在する子会社等の実態を把握することの難易性等から、同条4項の適用除外要件に関しては、納税者が主張立証責任を負っていると解すべきであると主張したことに対し、東京高裁は次のとおり判示した。 さらに東京高裁は、今村隆著『課税訴訟における要件事実論』170頁を引用し、課税取消訴訟におけるタックス・ヘイブン対策税制の適用除外要件について、東京地裁平成2年9月19日判決の裁判例を基に、「適用除外要件ー管理支配基準の評価根拠事実」(より正確にいえば、「適用除外要件ー管理支配基準を充足していないことの評価根拠事実」)を抗弁と説明している。 これらから、東京高裁は、「実務では、国に外国子会社合算税制の適用除外要件を充足していないことの主張立証責任を課していることが明らかである」と判示した。 (了)