公開日: 2022/04/07 (掲載号:No.464)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例40】「過大支払電気料金の損金性と損害賠償請求権」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例40】

「過大支払電気料金の損金性と損害賠償請求権」

 

国際医療福祉大学大学院教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、北関東のとある地方都市において、自動車部品の製造・販売業を営む株式会社Aにおいて経理課長を務めております。近年、自動車産業はEV(Electric Vehicle)化が世界的な潮流で、既存の自動車メーカーのみならず異業種が続々参入して、新たなデファクト・スタンダード(de facto standard)を確立しようとしのぎを削っており、2030年には雌雄が決するのではないかといわれております。

そのような中、エンジン関連の部品を国内の自動車用エンジン製造メーカーに納めている当社としても、今後業界がどのような方向性をたどるのか、また当社はどのような生き残り策を模索していくべきなのかにつき、必死の情報収集を行っているところです。

ところで、一昨年の秋口において、当社が電力会社と契約している電力料金につき、本来の使用量に基づく料金よりも過大に支払い続けていたことが判明しました。当社は当時、それまで5年程の間、大口需要者向けの業務用電力の契約を行っていましたが、一部の事業所につき、その適用を受けずに電力料金が計算され、過大に請求されていたというわけです。その事業所は本社や工場と比較して電力消費量はそれほど大きくないため、電力料金の請求が過大であることが分かりにくいという事情がありました。

このような事実は電力会社からの連絡で初めて判明したもので、当社は法人税の申告上、過去5年分の差額を一括で支払いを受けた前事業年度に益金算入し、過去の事業年度の申告内容はいじらないという経理処理を行いました。ただし、たまたま前事業年度はコロナ禍の影響で赤字決算であったため、当該収益にもかかわらず法人税の支払いは生じませんでした。なお、本件により当該電力会社に不信感を持ち、現在は別の事業会社と契約を締結し、電力の供給を受けています。

しかし、先週から受けている国税局の税務調査で、現在本件が問題となっております。調査部の主査がいうには、電力料金の過大請求分は前事業年度に判明し、それに係る電力会社からの支払いも前事業年度に一括で行われたのは事実であるが、過払い分はその前の5事業年度において発生しているのであり、その各事業年度において過払電気料金に係る返還請求権も確定しているのであるから、当社の益金・損金の経理処理には誤りがあるということです。

このような経理処理を同時両建説というのだそうですが、そもそも電力会社のミスでこの問題が起こったというばかりでなく、既に正当な料金と信じて支払いを終えているわが社が、電力会社からの連絡以前にその事実を知る由がないにもかかわらず、それ以前の各事業年度に返還請求権を計上しろとは無理な話であると考えます。

このような場合、法人税法上はどのように考えるのが妥当なのでしょうか、教えてください。

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例40】

「過大支払電気料金の損金性と損害賠償請求権」

 

国際医療福祉大学大学院教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、北関東のとある地方都市において、自動車部品の製造・販売業を営む株式会社Aにおいて経理課長を務めております。近年、自動車産業はEV(Electric Vehicle)化が世界的な潮流で、既存の自動車メーカーのみならず異業種が続々参入して、新たなデファクト・スタンダード(de facto standard)を確立しようとしのぎを削っており、2030年には雌雄が決するのではないかといわれております。

そのような中、エンジン関連の部品を国内の自動車用エンジン製造メーカーに納めている当社としても、今後業界がどのような方向性をたどるのか、また当社はどのような生き残り策を模索していくべきなのかにつき、必死の情報収集を行っているところです。

ところで、一昨年の秋口において、当社が電力会社と契約している電力料金につき、本来の使用量に基づく料金よりも過大に支払い続けていたことが判明しました。当社は当時、それまで5年程の間、大口需要者向けの業務用電力の契約を行っていましたが、一部の事業所につき、その適用を受けずに電力料金が計算され、過大に請求されていたというわけです。その事業所は本社や工場と比較して電力消費量はそれほど大きくないため、電力料金の請求が過大であることが分かりにくいという事情がありました。

このような事実は電力会社からの連絡で初めて判明したもので、当社は法人税の申告上、過去5年分の差額を一括で支払いを受けた前事業年度に益金算入し、過去の事業年度の申告内容はいじらないという経理処理を行いました。ただし、たまたま前事業年度はコロナ禍の影響で赤字決算であったため、当該収益にもかかわらず法人税の支払いは生じませんでした。なお、本件により当該電力会社に不信感を持ち、現在は別の事業会社と契約を締結し、電力の供給を受けています。

しかし、先週から受けている国税局の税務調査で、現在本件が問題となっております。調査部の主査がいうには、電力料金の過大請求分は前事業年度に判明し、それに係る電力会社からの支払いも前事業年度に一括で行われたのは事実であるが、過払い分はその前の5事業年度において発生しているのであり、その各事業年度において過払電気料金に係る返還請求権も確定しているのであるから、当社の益金・損金の経理処理には誤りがあるということです。

このような経理処理を同時両建説というのだそうですが、そもそも電力会社のミスでこの問題が起こったというばかりでなく、既に正当な料金と信じて支払いを終えているわが社が、電力会社からの連絡以前にその事実を知る由がないにもかかわらず、それ以前の各事業年度に返還請求権を計上しろとは無理な話であると考えます。

このような場合、法人税法上はどのように考えるのが妥当なのでしょうか、教えてください。

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
国際医療福祉大学大学院教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。

【主要著書】
・『消費税 インボイス制度導入の実務』(清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ 消費税の判定誤りと実務対応』(清文社)
・『新版 医療・福祉施設における消費税の実務』(清文社)
・『【第三版】税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与実務Q&A』(清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税Q&A』(清文社)
・『Q&A 医療法人の事業承継ガイドブック』(清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(清文社)
・『修正申告と更正の請求の対応と実務』(清文社)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(税務経理協会)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(税務経理協会)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(中央経済社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(清文社)

【主要論文】
・「わが国企業の海外事業展開とタックスヘイブン対策税制について」(『国際税務』2001年12月号)
・「タックスヘイブン対策税制の適用範囲-キャドバリー・シュウェップス事件の欧州裁判所判決等を手がかりにして-」『税務弘報』(2007年10月号)
など
            

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