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《速報解説》 会計士協会が「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その4)」を公表~操業、営業停止中の固定費等の会計処理などについて言及~

《速報解説》 会計士協会が「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その4)」を公表 ~操業、営業停止中の固定費等の会計処理などについて言及~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2020年4月22日、日本公認会計士協会は、「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その4)」を公表した。 監査上の留意事項(その4)では、①操業、営業停止中の固定費等の会計処理と②銀行等金融機関の自己査定及び償却・引当について述べている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 操業、営業停止中の固定費等の会計処理 「企業会計原則」注解12 では、特別損益の内訳に臨時損益があげられている。 監査上の留意事項(その4)の基本的なポイントは次のとおりである。 2 銀行等金融機関の自己査定及び償却・引当 2020年3月17日付けで、「銀行等金融機関の資産の自己査定並びに貸倒償却及び貸倒引当金の監査に関する実務指針」(銀行等監査特別委員会報告第4号)が改正されている(2020年3月31日以後終了する事業年度から適用)。 監査上の留意事項(その4)の基本的なポイントは次のとおりである。 (了)

#No. 366(掲載号)
#阿部 光成
2020/04/27

プロフェッションジャーナル No.366が公開されました!~今週のお薦め記事~

2020年4月23日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.366を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2020/04/23

山本守之の法人税“一刀両断” 【第70回】「違法支出金の損金性」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第70回】 「違法支出金の損金性」   税理士 山本 守之   1 わが国における違法支出金の損金性への認識 わが国の多くの学者が、「違法支出金は損金の額に算入できない」とし、大学教育においてはそれが当たり前のようになっています。このような考え方は、アメリカ税法によるものです。 米国の内国歳入法典162条(a)項では、「いかなる営業若しくは事業であれ、その遂行に当たり、課税年度において支払われ又は発生した全ての通常かつ必要な経費は、控除として許容されるものとする」としています。 しかし、米国ではこれとは別に、「公序の理論(パブリック・ポリシー)」によって違法支出金の必要経費控除を認めていません。「公序の理論」は、アメリカにおける違法支出金について経費控除否定の論拠として判例の集積を経て形作られた法原理です。 例えば、1952年のリリー判決では、支出自体が違法であるものとして支出を禁止する連邦又は州の法律によって示されているものについては、公序に反する結果が生ずるので控除は認められないとしています。 この理論はアメリカにおける経費控除の一般的判断基準である「通常かつ必要」な経費に関する解釈原理として発展したものと言われています。 アメリカ税法の解釈としてはともかく、違法支出金の損金性否認の根拠を、わが国法人税法のどこに求めるかという根本的な問題は解決されていません。 わが国法人税法においては、課税所得に関して必要な事項を完結的かつ網羅的に規定しているのではなく、相当部分は白紙となっており、その白紙部分は「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」によって計算することとしているのです(法22④)。 つまり、法人が損金として計上したもののうち、「公正妥当と認められる会計処理基準に反するもの」と、「別段の定めがあるもの」、「客観的事実に反するもの」のみ損金算入を否認する構造となっています。 このため、「通常かつ必要」の理論を適用して損金算入を否認するには、法人税法第34条(役員報酬の損金不算入)や法人税法第36条(過大な使用人給与の損金不算入)のような別段の定めを置かなければならないのであり、「通常かつ必要」を前提として損金算入を否認するのは、法解釈の限界を超えていると言わなければならないでしょう。 筆者の私見とすれば、支出の事実が納税者によって立証されたものであり、しかも、実際問題として企業経営上支出を余儀なくされたものであれば、その支出に違法性があるということだけで損金性を否定するのは無理だと思います。 現実の課税実務においても、違法支出金というだけでは損金性を否定していません。例えば、租税逸税犯が薄外から支出した違法な費用を刑事裁判等で損金と主張することを否定したり、脱税経費について原価、費用、損失のいずれかに当たらないとしているのです。 わが国法人税法は、アメリカとは異なる構築がされており、損金性の判断はあくまで実定法にその根拠を求めるべきであるからです。 わが国税法の構築がアメリカと異なっているにもかかわらず、多くの学者が大学教育の通説として、違法支出金を単純に損金不算入としているのが気にかかります。   2 違法支出金の損金性について争われた裁決事例 以下では、国税不服審判所の裁決事例(平成25年6月6日、非公開裁決、TAINSコード:F0-1-528)から違法支出金の損金性についてみていきます。 問題となった「違法支出金」とは、次のような保険業法に反するというものです。 また、本件販売促進費の支払が保険業法第300条第1項で禁止されているにしても、同法はあくまでも業法に過ぎず、本件販売促進費の支払が民事上違法あるいは不法と評価されるものではないため、同法で禁止されているからといって、直ちに「所得を生ずべき業務について生じた費用」(所法37①)の該当性を失うものではありません。 ◎国税不服審判所の裁決 国税不服審判所の裁決は以下のようになっています。 ◎筆者の私見 原処分庁の主張のうち「販売促進費の支払の事実は認められない」ことについては、この費用は保険業法で禁止する違法な支出金ですから、保険契約者は「受け取っていない」とし、領収書も発行していなかったのです。 課税庁は、この事実を反面調査で取り上げて支払の事実はないとしています。 しかし、支出した甲の記録から支出の1時間前に引き出されていることが明らかであり、引出額が支出額と同額であることから支払の事実は容易に推認できたはずです。 また、保険料の値引分(販売促進費の支出)がなければ、保険契約をしないとしていた相手方の言動もあり、相手方はその後も保険契約を継続していたのですから、販売促進費(保険契約報酬から支払われた保険料の割引分)の支出を課税庁は推認できたはずです。 それを反面調査の契約相手方の答弁だけ取り上げ「支出の事実はない」と判断した原処分の判断は、余りにも平面的であると非難されても仕方がありません。この点は原処分庁の調査能力が疑われても仕方がないでしょう。 次に、原処分庁で必要経費としない理由の1つについて、「本件販売促進費の支払は、保険業法300条第1項第5号で禁止されている行為であり、業務の遂行上、通常かつ一般的に必要であると客観的に認められるものではなく、業務関連性があるものとは認められない。」としています。 しかし、これはアメリカの内国歳入法典162条の「控除として容認されるためには通常性、必要性を要する」というのと、わが国税法の「課税要件法定主義」との違いを理解していないと考えられます。 わが国税法は必要経費について通常性は要求されておらず、違法支出金も法令に制度の定めがなければ控除が認められるのです。 気を付けたいのは、所得税法第45条2項では違法支出金は「刑法に規定する賄賂と不正競争防止法に規定する金銭等」であり、事例のような保険業法第300条第1項第5号はこれに含まれないということです。 課税庁には租税法における「課税要件法定主義」を学んでほしいと思います。 課税要件法定主義とは、 というものです。 (了)

#No. 366(掲載号)
#山本 守之
2020/04/23

収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第27回】

収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第27回】   千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也   〈更なる検討〉 ~無償による資産の譲渡又は役務の提供に対する法人税法22条の2第2項の適用の可否~ 法人税法22条の2第2項は、無償による資産の譲渡又は無償による役務の提供の場合にも適用されるのであろうか。例えば、酒井克彦教授は、次のような見解を示される(酒井克彦『プログレッシブ税務会計論Ⅲ』252頁(中央経済社2019)参照)。 なるほど、「資産を無償譲渡又は低廉譲渡した場合に、当該資産の適正時価を導入して収益を計上することの当否については、企業会計原則上まだ何ら触れるところがないので、これを明らかにすることが妥当である。」という意見に代表されるように(昭和41年10月17日付大蔵省企業会計審議会中間報告「税法と企業会計との調整に関する意見書」三(7))、資産の無償譲渡等から当該資産の時価相当の収益を計上すべきであるという企業会計の基準は見当たらない。 無償取引に関して引渡日又は役務提供日に近接する日に収益計上するような一般に公正妥当と認められる会計処理の基準はないと解するならば、無償取引に対して法人税法22条の2第2項が適用されることは考え難く、1項の適用のみを考えればよいという考え方も出てくる(なお、無償譲渡の場合にも贈与契約等の契約や債権債務関係を観念しうることはいうまでもない)。 しかしながら、「無償による資産の販売等の会計処理においては、実務上は法人税法の規定が会計基準として機能するいわゆる逆基準性が生じる可能性がある」という指摘があるように(鈴木一水「収益会計基準と法人税法上の収益額」税務事例研究164号11頁)、無償取引に係る法人税の取扱いが資産の無償譲渡や無償による役務提供に係る収益を計上する会計慣行を形成してきた可能性も否めない。実際に、申告調整によらずに、かような会計処理を実行している企業も存在する。 このことを踏まえた上で、本稿では、現に存在する無償取引に係る会計慣行等に加えて、将来において基準や慣行が作成ないし生成されうることも考慮し、法人税法22条の2第2項の要件論や解釈論の場面・・・・・・・・・・において、同項は無償取引に適用されることはないと断ずることには慎重でありたい。例えば、法人税法22条の2第2項を目的論的に解釈することで同項は無償取引を適用対象とするものではないとするような理解からは距離を置くのである。 法人税法22条の2第2項の適用の場面・・・・・を想定するならば、一般に、無償取引の場合には引渡日又は役務提供日に近接する日に収益計上するような一般に公正妥当と認められる会計処理の基準はないと解されていることを前提として、同項が無償取引に適用されることは実際には考え難い可能性があるという程度の理解にとどめておく(泉絢也「収益認識会計基準公表に伴う法人税法の改正」千葉商大論叢57巻2号71頁以下参照)。 いずれにせよ、例えば、次のような疑問を投げかけておこう。 ◆有償取引と無償取引で適用する収益計上基準は異なると解すべきか。有償取引について、契約効力発生日基準を法人が継続的に採用していた場合に、単発的に発生した無償取引についても契約効力発生日基準を適用すべきであろうか。 ◆無償取引には近接日基準の適用はなく、引渡・役務提供基準のみが適用されることになるか。 ◆固定資産の譲渡に係る収益の帰属の時期について、引渡基準を原則としつつも、契約効力発生日による近接日基準も許容している法人税基本通達2-1-14は、無償取引にも適用があるのであろうか。 ◆そもそも、同通達による収益経理を採用した場合、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従ったことになるのであろうか。   (了)

#No. 366(掲載号)
#泉 絢也
2020/04/23

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例85(法人税)】 「建物の取得価額と取壊費用を取壊し時の損金の額に算入できたにもかかわらず、土地の取得価額に算入して棚卸資産として繰越処理をしたため、実効税率の差により、過大納付となってしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例85(法人税)】   税理士 齋藤 和助       《基礎知識》 ◆土地とともに取得した建物等の取壊費等(法基通7-3-6) 法人が建物等の存する土地を建物等とともに取得した場合又は自己の有する土地の上に存する借地人の建物等を取得した場合において、その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手する等、当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは、当該建物等の取壊しの時における帳簿価額及び取壊費用の合計額(廃材等の処分によって得た金額がある場合は、当該金額を控除した金額)は、当該土地の取得価額に算入する。 ◆土地とともに取得した建物を取り壊した場合でやむを得ない理由がある場合(国税庁タックスアンサーNo.5401) 初めは建物を事業に使用する目的で取得したが、その後やむを得ない理由が生じたことにより、その使用を諦めなければならないような場合には、その取得後おおむね1年以内にその建物を取り壊したときであっても、その建物の帳簿価額と取壊費用の合計額は、土地の取得価額に含めないで、取り壊したときの損金の額に算入することができる。       (了)

#No. 366(掲載号)
#齋藤 和助
2020/04/23

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第40回】「従業員の帰国後に会社が支払った外国所得税部分は居住者の所得として会社に源泉徴収義務があるか」

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第40回】 「従業員の帰国後に会社が支払った外国所得税部分は 居住者の所得として会社に源泉徴収義務があるか」   税理士 菅野 真美   - 質 問 - 当社では、海外勤務の従業員については、現地での所得税を会社が負担しており、日本での給与の手当を下回らないように支払っています。 このたび、ある従業員が現地で給与の支払いを受け、帰国後にその従業員の給与に係る現地の所得税を海外の事業所が納付しました。この従業員の現地の所得税相当分について、日本の法人は日本の源泉所得税の納税義務がありますか。   ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷給与の国内源泉所得、国外源泉所得 給与が国内源泉所得に該当するのは、国内において行う勤務その他の人的役務の提供に起因するものである。役員の場合は海外勤務の対価であったとしても国内源泉所得に該当する場合があるが、役員以外の場合は、国内での勤務の対価に限定されている(所法161十二イ)。   ▷源泉徴収義務 居住者に対して国内で給与等の支払いをする者は、その支払いの際に所得税等を源泉徴収して、原則的には徴収月の翌月10日までに納付しなければならない(所法183)。 ただし、年の途中で海外勤務となり居住者から非居住者に変更となる人に対して支払われる給与のうち、計算期間が1ヶ月以下のものについては、その全額が国内勤務対応分でない限り、国内源泉所得に該当しないものとして取り扱うことが認められている(所基通212-5)。 逆に海外勤務から帰国した者について居住者となった日以後に支給期が到来する給与については、海外勤務期間の部分があったとしても全額居住者に対する給与として取り扱われる(所基通212-5)。 なお、賞与について、計算期間の途中で居住者から非居住者に変更となった場合は、国内で給与を支払う者は、国内勤務期間に対応する部分については国内源泉所得に該当するものとして20.42%の税率で源泉徴収しなければならない(所法213①一、復興財確法28、所基通161-41)。 一方、計算期間の途中で非居住者から居住者となった者への賞与の支払いについては、支給期が居住者となった日以後である場合は期間按分せず全額が居住者の賞与として源泉徴収の対象となる。   ▷本件に関連する裁決事例 海外勤務の従業員について、その従業員の帰国後に会社が支払った外国所得税等の経済的利益について、会社に源泉徴収義務があるのだろうか。 この問題について裁決事例があったので、以下で検討する(平成17年5月から平成20年5月の各月分の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分及び不納付加算税の各賦課決定処分・全部取消し・平成23-06-28公表裁決)(TAINSコード:J83-2-11)。 この事案では、海外展開をしている法人が、海外転勤している従業員に対する給与について国内勤務の場合の給与の手取り額を下回らないようにするために、現地において課される租税公課のうち賃金に対して課される外国所得税については、法人が負担して納付していた。 ある従業員が帰国した後に会社がその者の外国所得税を納付したことから、課税庁は、帰国後に居住者となってから支払った給与等の支払いであるから会社に源泉徴収義務があったとして処分をし、その処分を不服とした会社が審査請求したものである。   ▷争点は何か この事案の争点は、以下の2つである。   ▷審判所の判断は この事案について審判所の判断は、外国所得税負担額の支払い事務は海外事業所が行っていたと認められるから、国内において給与等の支払いをしたことには当たらないとして納税告知処分を取り消すと判断し、②については、判断しなかった。 なお、海外事業所で給与の支払い事務が行われたと判断したのは、次のような事実があったからである。 まず、「給与の支払い事務」とは、給与等の支払額の計算、支出の決定、支払資金の用意、交付のことである。 この事案においては、現地の会計事務所が告知対象者の所得税の計算、申告納税手続きを行っており、税額の確認・支出の決定は海外事業所が行っている。また、海外事業所が所得税負担額の資金手当てを行っていた。そのため、審判所は給与の支払い事務を海外事業所が行っているものと判断したのである。   ▷外国所得税負担額は、非居住者の国内源泉所得以外の所得か 以下では、上記裁決においては判断されなかった②について検討する。 まず、非居住者の国内源泉所得以外の所得の場合は、日本に課税権がないから、源泉徴収義務は当然生じない。 この事案において、課税庁は、外国所得税負担額が納付された日又は納付期限のいずれか早い時期に外国所得税負担額の経済的利益を受けており、その時点では、対象となった従業員は日本に帰国して居住者となっているから、非居住者の国内源泉所得以外の所得に該当しないと主張した。 一方、法人は、外国所得税の額も保証した手取り額を基に計算したものだから、支給時に外国所得税額の支払債務が確定し賃金債権を取得しており、その租税債務の履行時期がたまたま従業員の帰国後に行われているにすぎないから、非居住者の国内源泉所得以外の所得に該当すると主張した。 この事案のように海外勤務の場合の給料については、手取りを保証したグロスアップの方法で給与総額を決めているケースが散見される。この場合は、会社負担の税金を日本で給与を支払う場合の源泉所得税と同じようにとらえて、会社が負担した部分も含めて通常の給与収入を構成するものと考える(所基通181~223共-4)。つまり、通常の給与と別建の経済的利益と考えない。 給与収入の計上時期は、支給日が定められている場合はその支給日となり、定められていない場合は実際の支給日となる(所基通36-9)。したがって、支給日が非居住者の期間である場合は、非居住者の国内源泉所得以外の所得に該当するから、源泉徴収義務も生じないと考える。   (了)

#No. 366(掲載号)
#菅野 真美
2020/04/23

〈会計基準等を読むための〉コトバの探求 【第1回】「「企業会計原則」と「企業会計の原則」」

〈会計基準等を読むための〉 コトバの探求 【第1回】 「企業会計原則」と「企業会計の原則」   公認会計士 阿部 光成   ◆はじめに 「企業会計原則」は、その設定以来、わが国の会計規範として会計学の発展に非常に大きな役割を果たしていると思われる。 ところが、「企業会計原則」ではなく、「企業会計の原則」と記載している会計基準がある。果たして両者は同じ意味なのだろうか。 たとえ類似した用語であっても、少しの相違によって異なる意味を示すことがある。そして、その用語の選択には、会計基準等の設定者の意思が反映されていることがある。 本連載では、それらの「用語(コトバ)」を取り上げて丁寧に検証し、会計基準等を「正しく読む」ことができるよう解説を行うものである。 今回は「企業会計原則」と「企業会計の原則」を取り上げる。   ◆「企業会計原則」とは 「企業会計原則」は、企業会計の実務の中に慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約したものである(「企業会計原則の設定について」(1949年7月9日、経済安定本部企業会計制度対策調査会中間報告)二、1)。 そして、「企業会計原則」の一般原則三では、「資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない」と規定されており、一般に、資本取引と損益取引との区別の原則と呼ばれている。   ◆「企業会計の原則」とは 前述した「企業会計の原則」の用語は、「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」(企業会計基準第1号。以下「自己株式会計基準」という)において登場する。登場するまでの自己株式会計基準の文脈を見てみよう。 まず、自己株式会計基準は、資本剰余金の各項目は、利益剰余金の各項目と混同してはならないとし、資本剰余金の利益剰余金への振替は原則として認められないと規定する(資本剰余金と利益剰余金の混同の禁止。自己株式会計基準19項)。 次に、資本剰余金と利益剰余金に関するこれまでの取扱いについて、自己株式会計基準は、従来、資本性の剰余金と利益性の剰余金は、払込資本と払込資本を利用して得られた成果を区分する考えから、原則的に混同しないようにされてきたと説明する(自己株式会計基準60項)。 そして、平成13年改正商法・会社法における配当に関する定めは、資本剰余金と利益剰余金の混同を禁止する企業会計の原則を変えるものではないとし、「企業会計原則」ではなく、「企業会計の原則」と記載している(自己株式会計基準60項)。加えて、自己株式会計基準62項でも、「企業会計の原則」と記載している。   ◆「企業会計原則」と「企業会計の原則」 「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」(企業会計基準第5号)では、新たな企業会計基準が「企業会計原則」に優先すると規定している(1項、26項)。 「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号)でも、資産の評価基準については「企業会計原則」に定めがあるが、金融商品に関しては、本会計基準が優先して適用されると規定している(1項)。 また、「棚卸資産の評価に関する会計基準」(企業会計基準第9号)は、棚卸資産の評価方法、評価基準及び開示に関しては、「企業会計原則」及び「原価計算基準」に定めがあるものの、本会計基準が優先して適用されると規定している(2項)。 このように企業会計基準委員会の会計基準等が「企業会計原則」よりも優先するとする規定を設けていることを考えると、「企業会計原則」と「企業会計の原則」との間には、重要な相違があるのかもしれない。 (了)

#No. 366(掲載号)
#阿部 光成
2020/04/23

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第158回】収益認識基準③「契約の識別」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第158回】 収益認識基準③ 「契約の識別」   仰星監査法人 公認会計士 渡邉 徹     〈事例による解説〉   〈会計処理〉(単位:千円) ◆X1年4月 〔B社との商品Yにかかる販売契約締結時〕 ⇒ 仕訳なし ◆X1年6月 〔B社との商品Yにかかる売上高の計上〕 ◆X2年4月 〔C社との商品Y販売にかかる契約締結時(前受金の受領時)〕 ◆X2年6月 〔C社との商品Yにかかる販売契約の解約時〕   〈会計処理の解説〉 まず、収益認識に関する会計基準等の適用対象範囲となる契約であるかを判断します。上記の設例は、商品の販売取引であり、前述の(a) から(f) までにかかる契約ではないため、収益認識に関する会計基準等の適用対象範囲であると判定されます。 次に、以下の①から⑤までの要件を満たしているかを検討し、満たしている場合には収益認識に関する会計基準等における契約として識別します。 なお、顧客との契約が、契約における取引開始日において上記の①から⑤までの要件を満たす場合には、事実及び状況の重要な変化の兆候がない限り、当該要件を満たすかどうかについて見直しを行いません。 顧客との契約が上記の①から⑤までの要件を満たさない場合には、この要件を事後的に満たすかどうかを引き続き評価し、顧客との契約が当該要件を満たしたときに収益認識に関する会計基準等における契約として識別されます。   1 B社との取引について (1) X1年4月 A社とB社は契約を締結し、契約書に移転する財、支払条件が明記されていることから、上記の①、②、③の要件を満たしています。また、この契約は商品Yの販売にかかるものであり、当然に経済的実質があると判断され、④の要件を満たします。さらに、A社は過去の取引実績により、B社から商品Yの販売にかかる対価を回収できる可能性は高いと判断しており、⑤の要件も満たします。 よって、A社はB社への商品Yの販売に係る契約を収益認識に関する会計基準等における契約として識別します。 (2) X1年6月 A社は、B社との契約について上記の①から⑤までの要件をすべて満たしていると判断し、収益認識に関する会計基準等における契約として識別したため、B社から回収する可能性が高いと見積った1,000千円の収益を認識します。   2 C社との取引について (1) X2年4月 A社とC社は契約を締結し、契約書に移転する財、支払条件が明記されていることから、上記の①、②、③の要件を満たしています。また、この契約は商品Yの販売にかかるものであり、当然に経済的実質があると判断され、④の要件を満たします。しかし、A社は、C社から商品Yの販売にかかる対価を回収できる可能性は高くないと判断していることから、⑤の要件を満たしません。 よって、A社はC社への商品Yの販売に係る契約を収益認識に関する会計基準等における契約として識別しません。そのため、C社からの手付金は前受金(負債)として計上します。 (2) X2年6月 契約が解約されており、C社から受け取った対価(手付金)10千円の返金は不要となったため、受け取った対価(手付金)10千円を雑収入等(収益)として認識します。 上記は基準上、下記のように整理されています。 顧客との契約が上記の①から⑤までの要件を満たさない場合でも、顧客から対価を受け取った際に、次の(ア)又は(イ)のいずれかに該当するときに、受け取った対価を収益として認識します(上記「X2年6月」の仕訳及び解説参照)。 顧客から受け取った対価については、上記の(ア)又は(イ)のいずれかに該当するまで、あるいは、上記の①から⑤の要件が事後的に満たされるまで、将来における財又はサービスを移転する義務又は対価を返金する義務として、負債を認識します(上記「X2年4月」の仕訳及び解説参照)。 上記のプロセスを図示すると、下記のとおりです。 *  *  * (了)

#No. 366(掲載号)
#渡邉 徹
2020/04/23

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第99回】株式会社共和コーポレーション「第三者委員会調査報告書(2020年3月13日付)」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第99回】 株式会社共和コーポレーション 「第三者委員会調査報告書(2020年3月13日付)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【第三者委員会の概要】   【株式会社共和コーポレーションの概要】 株式会社共和コーポレーション(以下「共和」と略称する)は、1982(昭和57)年1月創業、1986(昭和61)年5月設立。アミューズメント施設(ゲームセンター、バッティングセンター、ボーリング場など)の運営、ゲーム機器販売などを主たる事業とする。売上高12,168百万円、経常利益485百万円、資本金693百万円、従業員数177名(いずれも訂正前2019年3月期実績)。本店所在地は長野県長野市。東京証券取引所2部上場。会計監査人はEY新日本有限責任監査法人。   【調査報告書の概要】 2019年12月2日、共和は、「債権の取立不能または取立遅延のおそれに関するお知らせ」を公表し、ゲーム機等の販売先である株式会社アーネスト(以下、報告書と同じ「A社」と略称する)が破産申立て準備中であることから、A社に対する売掛金142百万円が取立不能又は取立遅延のおそれが生じたことをリリースした。 共和は、その後、債権回収のために情報収集の過程で、A社との取引が現物を伴わない架空取引であるとの疑惑を生じたことなどから、社内では十分な調査ができないと判断して、同月26日に第三者委員会を設置して、調査を委嘱することとなった。 第三者委員会が認定した架空取引に基づく資金循環額は、過去5年間で、1,719百万円、粗利益ベースで97百万円に達した。 1 架空循環取引 中古ゲーム機の売買取引を担当していた東京支店副支店長のa氏は、B社から仕入れたゲーム機をA社に販売するという取引で、多額の販売実績を上げる。 第三者委員会の調査では、a氏が、B社からの一括仕入れが多額になりすぎるのを避けるため、また、A社に対する売掛金が与信限度額を超過することを避けるため、この商流に、C社以下5社を参加させるとともに、共和を通さずにH社・I社・J社の3社をB社とA社との取引の間に入れていたことが判明した。 第三者委員会は、A社・B社などの関係者に対するヒアリングを含む調査の結果、a氏については、a氏が循環取引において、結果として重要な役割を担っていたことは疑いようがないものの、循環取引であった事実及び架空であった事実については把握していなかったと判断している。同時に、a氏の上司である執行役員東京支店長や購買部門を管掌する業務担当の専務取締役もまた、A社との取引が架空取引に基づく資金循環であることは知らなかったと判断している。 2 東京支店副支店長a氏による不正行為 中古ゲーム機をB社から仕入れてA社に販売するという取引を利用して、a氏は、いくつかの不正行為を行っていたことが、第三者委員会の調査により判明している。 (1) B社へのプール金取引(水増し発注) 第三者委員会の調査により、a氏が、B社から中古ゲーム機を仕入れる際に、B社の提示した価格よりも高い価格で発注して(水増し発注)、差額をB社に資金をプールしていた事実が判明している。 調査により判明した金額は約10百万円であるが、こうしたプール金の目的について、a氏は、後述するH社の売上や利益を伸ばすために、H社の機器仕入を安くしてもらうとともに、赤字取引等の問題が起きたときの損失補填資金であったと述べている。 (2) 競業取引 第三者委員会は、a氏が架空循環取引に加担していく中で、B社から仕入れたゲーム機を、共和を通すことなく、自身と関係の深いH社・I社・J社からA社に販売させていたことを突き止め、この取引を競業取引であると認定している。 中でも、H社は、a氏の母親を取締役に選任して毎月役員報酬を支払っており、さらに、H社とI社は、a氏に対して、毎月報酬を支払うとともに、法人クレジットカードの使用を認めており、a氏はこれらのカードを、遊興費などで私的に利用していた。 なお、調査報告書には、a氏に渡された報酬については具体的な金額の記載がなく、カードの利用金額についても、「多額の利用がある」と説明されるに止まってはいるものの、自ら関与する会社を通じて競業を行って、利益を得ていた事実が認められると結論付けている。 なお、a氏の動機について、第三者委員会は、「近い将来にこの会社(引用者注:共和のことであると考えられる)を退職して、H社に入るつもりでいたので、自分が入る会社の基盤をつくりたかった」というコメントを引用している。 (3) 売上計上の意図的遅延 B社から仕入れてA社に販売するというという取引において、a氏は、共和と両社との支払い条件の差を利用して、売上計上をわざと遅延させて、A社の資金繰りを支援していると見られる取引があったことが、第三者委員会の調査の結果、判明している。 つまり、共和はB社から仕入れた機器代金を月末締めの翌月末に支払うという決済条件になっており、一方、A社に販売した機器代金は20日締め翌月末に支払うという決済条件で、共和は売掛債権を回収していた。 a氏は、月末までにB社から仕入れた機器代金の売上計上を翌月の20日を過ぎてから行うことにより、A社の支払いが2ヶ月先に延びるよう画策していた。 第三者委員会は、この件について、a氏の動機を言及していないが、架空循環取引が長く続いた要因の1つは、こうした売上計上の遅延行為が、結果的にA社の資金繰りに余裕を与えていたことにあったと言えよう。 3 発生の原因分析 第三者委員会は、発生の原因分析として、以下の項目を挙げている。 第三者委員会は、共和が中古ゲームのビジネス拡大に際して、リスク分析が不十分であり、A社に対する与信限度額管理の不徹底や、原則として在庫は発生しない直送取引であり、A社の指定倉庫に納入しているにもかかわらず、共和の在庫とする取引の異常性などを原因分析として指摘している。 また、コンプライアンス体制については、監査室は統制の確認を十分行っておらず、深度のある監査が行われていないと評価し、取締役会は、内部統制システムを整備・運用していく責任を負っているにもかかわらず、リスク管理やコンプライアンス体制の強化が不十分であったと指摘している。 4 再発防止策の提言 第三者委員会が「再発防止策の提言」としてまとめた項目は、次のとおりである。 第三者委員会は、まず、「リスク管理の強化」として、常にリスクを評価するとともに、変化に応じた内部統制制度の整備運用が必要であり、その責務は、取締役会が負うことを明言している。 さらに、中古ゲーム機の販売取引については、業務プロセスの見直しを行っても、リスクが軽減できない場合、あるいはリスクを軽減するためのコストが多額となり利益が得にくい場合には、当該ビジネス自体禁止するルールを設けることも考えられると提言している。 そして、「管理部門の強化」として、モニタリングを充実させ、内部統制制度の不断の見直しのため、適材を配置し管理部門を強化するとともに、監査室についても、書面上の形式的な監査に終わることなく、常にリスクを踏まえた監査が必要であるから、実効性ある監査を実施する体制を整備する必要があるという提言をまとめている。   【調査報告書の特徴】 本連載【第97回】、【第98回】で検討してきたネットワンシステムズ社シニアマネージャーによる架空循環取引に引き続き、今回は、中古ゲーム機の販売取引を仮装した架空循環取引を取り上げることとした。実は、この2つの循環取引には、いくつかの類似点が見られる。 東京支店副支店長であるa氏の不正を、第三者委員会はどのように調査分析したのか、その特徴を検討したい。 1 東京支店副支店長a氏の動機は何だったのか 第三者委員会が指摘した「発生の原因分析」については、分析が十分ではないと評価する。 例えば、「第1 架空取引に基づく資金循環取引」の項では、冒頭に、「A社が事業停止するまで発見できなかった主な理由は次のとおりである」との記述があるが、本来の原因分析としては、a氏は、なぜ、架空循環取引に巻き込まれた(第三者委員会による評価)のか、なぜ、架空循環取引であることに気づかなかったのかに関する分析を行った後、はじめて、「長期間発覚しなかった理由」を論じるべきではないかと考える。 さらに、「リスク分析不十分」「管理不徹底・不備」といった文言が並んでおり、もちろんそうした事象が不正の発覚を妨げたことは理解できるのだが、なぜ、十分な分析ができなかったのか、なぜ、管理が不徹底となり、不備が生じていたかといった、真の意味での原因については分析されていない。 同様に、「第2 a氏の不正」の項においても、列挙されているのはあくまで「a氏の不正行為」であって、なぜ、a氏がこうした不正を行っていたのかついての分析はない。2015年5月に、C社(今回の循環取引でも社名が挙がっている)から共和に転職したa氏が、中古ゲーム機の仕入販売取引を担当する中で、B社代表取締役を紹介されたのを契機に、B社との取引がはじまり、同年7月頃には、B社⇒共和⇒A社の取引を開始する。 a氏としては、中古ゲーム機のディストリビューター業界において知識・経験が豊富なA社代表取締役と取引することが自身の将来の基盤を形成することになると考えるとともに、共和における中古ゲーム機取引の拡大方針と相まって取引を拡大していく(調査報告書12ページより抜粋)。 また、a氏は、第三者委員会のヒアリングに対して、競業取引をしていたことの動機として、「近い将来にこの会社を退職して、H社に入るつもりでいたので、自分が入る会社の基盤をつくりたかった。」と述べている(調査報告書34ページ)ということであるが、H社、I社から多額の報酬を得ていたり、遊興費を支払わせていたりしたことについては、a氏の動機は追及されている様子が見られない。 第三者委員会は、調査の結果、a氏は、循環取引であった事実及び架空であった事実については把握していなかったと判断しているが、筆者の個人的な印象では、a氏は明らかにこの取引が架空のものであることを知っており、また、共和には発覚しないことを見越したうえで、H社やI社を利用して経済的利益を得るとともに、近い将来の退職後に備えてH社にも資金を蓄積することを企図していたのではないかと考えている。 第三者委員会による調査があくまで任意のものであり、強制力を有さない以上、当人をはじめ関係者が口を閉ざし、または口裏を合わせることにより、確たる証拠を得ることができないことは間違いないし、それが調査の限界でもあるのだが、a氏の動機について、もう少し踏み込んだインタビューを行い、他社の証言や書証との整合性を破綻させ、真の動機を追及することができたのではないかと、感じた次第である。 2 業界の商取引上のルール 報告書を読んで目に付くのが、「業界ルール」という文言である。 例えば、中古ゲーム機のディストリビューターの業界では、自社の仕入先や販売先は明かさないという商取引上のルールがあることが繰り返し、説明されている。これは、商流において中抜きさせないためであるということであるが、こうした慣習のため、a氏は、B社から仕入れた中古ゲーム機が、A社からB社に販売されたものであるという循環取引を認識することはできなかったと説明されている。 また、執行役員東京支店長の小林光氏(報告書上はg氏)は、第三者委員会のインタビューに対し、業界では、メーカー直営店が、減価償却の終わった中古ゲーム機を売却して益出しを行うという情報があり、B社はそのようなルートから大量の仕入を行っているという認識のもと、在庫の実在性について疑ったことはなかったと答えている。 なお、取引に疑義を感じていた者もいたことが判明している。 代表取締役の配偶者で、専務取締役の宮本早苗氏(報告書上はc氏)は、2019年9月、B社に対する支払い稟議書(A社への販売分)の記載内容に、中古市場でなかなか手に入らない機種が含まれていたことに不審を抱き、在庫の実在性につき強く疑問を持ち、現物確認するまで支払いをしないように経理に指示した。そして、9月末に業務部長に在庫の実査を指示し、a氏にどこに在庫があるのか確認したところ、機器の納入が間に合わないとの連絡があったことから、この取引は行われなかったことが判明している。 また、第三者委員会が、原因分析で「業界環境の分析が不十分」として指摘しているように、全国的に、ゲームセンターの数が減少する中で、店舗閉鎖で多数の中古ゲーム機の買取案件が発生したとしても、大量の中古ゲーム機を購入する店舗が毎月あるとは考えられないというのが業界の環境であり、こうした事実を認識していた役員・社員が存在していたことは間違いない。 3 適時開示に関する問題点 第三者委員会は、「発生の原因分析」で「第3 管理部門の機能」として、適時開示について、「今後の改善が必要である」と指摘している。 共和は、A社の事業停止の通知を受けて、2019年12月2日に「債権の取立不能または取立遅延のおそれに関するお知らせ」を公表して、A社に対する約142百万円の売掛金が回収不能となる可能性について適時開示をしたものの、回収不能見込額が共和の売上高の1%程度であって業績に与える影響は少額であると考えたこと、a氏が循環取引や架空取引についての認識はなかったと述べたことから、同年12月26日に第三者委員会を設置したものの適時開示はしなかった。 こうした適時開示姿勢について、第三者委員会は次のように述べている。 筆者も、第三者委員会の設置時には適時開示が必要であったという意見に賛成するものであるが、こうした指摘は、第三者委員に就任することが決まった際に、第三者委員会から共和側に適時開示をするよう申し入れするべき事項であって、調査報告書の「発生の原因分析」の項で取り上げることについては違和感がある。「適時開示に消極的である」「適時開示を軽視している」とも考えられる共和側の姿勢が、「管理部門の機能」における問題点であるとの、第三者委員会の見解かもしれないが、共和が架空循環取引に巻き込まれ、長期間発覚しなかったことやa氏による不正の原因分析との関係性については疑問が残る。 4 共和による再発防止策 第三者委員会の調査報告書の公表と同時に、共和は、以下の内容の再発防止策を実施することを取締役会で決定し、既にそのうちの一部の改善については着手していること、すべてについて2020年5月末までには具体的行動に移すことをリリースしている。 基調としては、第三者委員会による提言に沿ったものとなっており、不正の未然防止策としては、内部監査について、リスクの高い業務を重点的に実地監査すること、監査等委員や会計監査人との連携・意見交換を更に強化することが挙げられ、第三者委員会の提言にはない、内部通報制度の浸透と利用促進を図ることも盛り込まれている。 なお、同時に、経営責任の明確化として、東京支店を管掌する常務取締役の降格と他の取締役の役員報酬の減額が公表されているが、a氏については、「当社規則に則り、厳正に処分」するとの説明があるだけで、処分内容について、開示されていない。 5 人事異動(2020年4月1日付) 共和は、3月30日、「人事異動に関するお知らせ」を公表して、上記の経営責任の明確化で触れた常務取締役の平取締役への降格人事と、執行役員東京支店長について執行役員の職を解いたうえで業務部長への異動、それに代わって、執行役員業務部長が執行役員東京支店長に就任することをリリースした。 リリースでは、人事異動の経緯や目的にはまったく触れておらず、同日開催の取締役会における決議事項であるとだけ説明されている。 (了)

#No. 366(掲載号)
#米澤 勝
2020/04/23

[〈税理士が知っておきたい〉中間試案からみる]改正民法・不動産登記法等のポイント 【前編】

[〈税理士が知っておきたい〉中間試案からみる] 改正民法・不動産登記法等のポイント 【前編】   司法書士 丸山 洋一郎   -はじめに- 民法・不動産登記法部会第11回会議(令和元年12月3日開催)において、「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案」が取りまとめられました。 この「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案」は、令和2年1月10日から同年3月10日までの期間に国民から意見や情報を募集するためパブリックコメント手続に付されていました。 民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正が実際になされた場合、税理士の職務にも大きく影響を与えると予想されます。 そこで、税理士も中間試案の段階から民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正の内容を把握しておくことが望ましいでしょう。 とはいえ、日ごろの忙しい税理士業務に従事する中で、全ての税理士が中間試案を分析し、現時点からその全てを把握しておく必要まではないでしょう。 その意味で、この連載は、あくまで現時点で税理士が教養レベルで把握しておいたほうがよいと思われる点に絞り、中間試案からみた改正民法・不動産登記法等についてコンパクトに解説することを目的とします。 なお、さらに詳しい内容を知りたい方は、下記をご参照ください。   1 民法・不動産登記法の改正の背景 不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない所有者不明土地は、民間の土地取引や公共事業の用地取得、森林の管理など様々な場面で問題となっています。 所有者不明土地は、土地の所有者が死亡しても相続登記がされないこと等によって発生しています。この相続登記が未了のまま相続が繰り返されると、所有者不明土地問題は更に深刻化するおそれがあります。そこで、民事基本法制の見直しを早急に図ることが必要です。 「経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太方針)」等の政府方針においても、①相続登記の義務化等を含めて相続等を登記に反映させるための仕組み、②登記簿と戸籍等の連携等による所有者情報を円滑に把握する仕組み、③土地を手放すための仕組み等について検討し、2020年までに必要な制度改正の実現を目指すこととされています。 このような所有者不明土地をめぐる近年の社会経済情勢に鑑み、相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組み、あるいは所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組みを整備する観点から、民法と不動産登記法等の改正を行うことが検討されています。   2 民法・不動産登記法の改正のスケジュール ※法務省民事局資料より抜粋 政府は、令和2年の秋の臨時国会に、民法と不動産登記法の改正案を提出する方針を示しています。   3 民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正の大きな方向性 大きく「所有者不明土地を円滑・適正に利用する仕組み」と「所有者不明土地の発生を予防するための仕組み」に分けて改正の概要を説明します。 ※法務省民事局資料より抜粋   4 所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組み (1) 共有制度の見直し(改正の概要) 所有者不明土地は共有地であることが少なくありません。不明共有者が存在し、共有者全員の同意が得られない場合など共有地は所有者不明土地になりやすいのです。そのため、共有制度に起因して生ずる問題を解消する必要があります。 見直しの方向性としては、以下の(ア)~(エ)が指針として挙げられます。 (2) 財産管理制度の見直し(改正の概要) 土地の所有者が所在不明となり、当該土地の管理等をしない場合には、土地の所有者に代わり当該土地の管理等をする者を選任する必要があります。現行民法においては、不在者の財産の管理制度(民法第25条以下)や、相続財産の管理制度(民法第951条以下)が置かれています。 もっとも、既存の財産管理制度については、管理コストが高額であるとの指摘があり、財産管理制度を見直す必要があると考えられています。 ◎ 特定の財産を管理する制度 不在者の財産の管理制度及び相続財産の管理制度は、不在者等の財産全般を管理するものであるために事務処理に要する費用が高くなります。そこで、管理コストを低減させる観点から、不在者等の特定の財産である土地又は共有持分のみを土地管理人による管理を命ずる処分(土地管理命令)を課せるようにすることが検討されています。 (3) 相隣関係規定の見直し(改正の概要) 現行民法の相隣関係に関する規定は、明治29年に民法が制定されて以来、実質的な見直しがされていませんでした。そのため、所有者不明土地問題が生じている近年の社会経済情勢に合わせて、規律を見直す必要があると考えられています。 見直しの方向性としては、以下の(ア)~(エ)が指針として挙げられます。   なお、筆者の周りの税理士に確認したところ、上記(1)~(3)の制度及び規定の見直しについては、関心が高いとは言えませんでした。紙面の都合もあるため、今回は各制度の見直しの方向性のみを軽く説明するにとどめています。 詳細を知りたい方は、「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案の補足説明」を確認したうえで、日本弁護士連合会や日本司法書士会連合会の「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案に対する意見書」等をご確認ください。 *  *  * 次回は「所有者不明土地の発生を予防するための仕組み」に関する事項を中心に解説します。 (続く)

#No. 366(掲載号)
#丸山 洋一郎
2020/04/23
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