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《速報解説》 「四半期レビューに関する実務指針」 の改正が確定~「監査人の結論」を冒頭に変更し「結論の根拠」を新設~

《速報解説》 「四半期レビューに関する実務指針」 の改正が確定 ~「監査人の結論」を冒頭に変更し「結論の根拠」を新設~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2020年3月17日付けで(ホームページ掲載日は2020年3月31日)、日本公認会計士協会は、「監査・保証実務委員会報告第83号「四半期レビューに関する実務指針」の改正について」を公表した。これにより、2020年1月31日から意見募集していた公開草案が確定することになる。 これは、2019年9月3日の「四半期レビュー基準の改訂に関する意見書」(企業会計審議会)を受けたものである。 なお、コメントの概要及び対応も公表されており、コメントを受け、公開草案を修正している部分もある。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 主な改正内容 主な改正内容は次のとおりである。 四半期レビュー報告書の文例なども改正されている。 2 四半期レビュー報告書における監査人の結論関係 次のことが規定されている。   Ⅲ 適用時期等 2020年4月1日以後開始する連結会計年度又は事業年度に係る四半期連結財務諸表又は四半期財務諸表の四半期レビューから適用する。 (了)

#No. 363(掲載号)
#阿部 光成
2020/04/02

《速報解説》 会計士協会、監査基準等の改訂を受け「監査報告書の文例」を改正~意見募集での指摘により公開草案から一部修正~

《速報解説》 会計士協会、監査基準等の改訂を受け「監査報告書の文例」を改正 ~意見募集での指摘により公開草案から一部修正~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2020年3月17日付けで(ホームページ掲載日は2020年3月31日)、日本公認会計士協会は、「監査・保証実務委員会実務指針第85号「監査報告書の文例」の改正について」を公表した。これにより、2020年1月31日から意見募集していた公開草案が確定することになる。 これは、2019年9月3日の「監査基準の改訂に関する意見書」及び「中間監査基準の改訂に関する意見書」(企業会計審議会)を受けたものである。 なお、コメントの概要及び対応も公表されており、コメントを受け、公開草案を修正している部分がある。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 次のとおりである。   Ⅲ 適用時期等 (了)

#No. 363(掲載号)
#阿部 光成
2020/04/02

プロフェッションジャーナル No.363が公開されました!~今週のお薦め記事~

2020年4月2日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.363を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2020/04/02

monthly TAX views -No.87-「コロナ経済対策を機にあらゆる垣根を越えた「デジタルガバメント」構築を」

monthly TAX views -No.87- 「コロナ経済対策を機にあらゆる垣根を越えた「デジタルガバメント」構築を」   東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹   今回の新型コロナウイルス感染症問題で明らかになったことの1つは、わが国の様々な分野において、デジタル化が遅れているということである。 医療のオンライン診療は、医師会の圧力により診療報酬を低くすることで普及が抑制されてきた。オンラインによる遠隔教育も様々な利害関係や教材の著作権問題などの調整が進まず、本格的な普及には至っていない。現に昨年の規制改革委員会答申には、双方とも課題として取り上げられている。 一方、現在、本格的な経済対策として、政府部内で現金給付が検討されている。安倍首相は3月28日の記者会見で、経済減速の影響を受ける個人や中小企業に現金を給付する方針を明らかにしているが、所得補償や消費喚起策として、現金を配ることは即効性があり、それなりの効果が期待できる。 しかし、1つ大きな問題がある。それは現金給付金が、種々議論の結果、前回09年に実施された定額給付金のように、国民全員に一律配布されるようになれば、いかにも非効率であり、効果的ではないということだ。 *  *  * 今回の対応では、前年より所得が大きく減少したフリーランス・個人事業主、雇止めや解雇にあった非正規雇用者などを把握して、手厚く給付することが必要だ。一方で、国家・地方公務員や大企業正社員、さらには年金生活者などは、収入という面では被害が少なく、経済対策としての給付は制限・排除して、その分困窮者に手厚くすべきである。 国民の所得情報を知るためには、住基コードと結び付いたマイナンバーの活用が不可欠となる。もうすぐ確定申告が終われば、2019年分の所得が世帯も含めて把握できる。個々の自治体レベルでこれを活用すれば、生活困窮者を突き止めることができ、その人たちへの給付を効率的・効果的に行うことができる。 2014年4月の消費税5%から8%への引上げ時には、地方自治体がシステムを整備して、住民税非課税世帯に1人当たり1万5,000円の給付を行った。10%引上げの際には、住民税非課税の年金生活者に支援金を行った。今回そのシステムを改修して、「住民税非課税かどうか」ではなく「一定の所得基準(例えば収入700万円)」で線を引き、あとは窓口対応とすればよいのではないか。 *  *  * 所得情報(税務情報)と社会保障情報を結び付け、一体的に運営するシステムの構築は、デジタルガバメントの第一歩であり、今後わが国の社会保障制度にとって極めて重要な社会インフラとなる。 欧米では、番号により国民全員の税情報(課税所得)と社会保障給付が情報連携され、有機的に活用されている。 米国では、番号情報により貧困ラインを下回る収入の納税者には、勤労税額控除(EITC)という減税と給付が与えられる制度があり、申告の段階で適用されている。今回米国が行う対策は、それを活用して、既婚カップルには2,400ドル(17歳以下の子ども1人につき500ドル上乗せ)の一時金が給付されるが、所得が15万ドルを超えたところから逓減し、19万8,000ドルでなくなるという内容だ。 また英国には「ユニバーサル・クレジット」という制度があり、あらゆる社会保障給付と税負担が一体的に捉えられ、貧困対策・子育て支援としての給付が行われている。今回の対策はこれをフル活用している。同様の制度は、オランダ、スウェーデンなど主要欧州諸国、韓国などで導入されている。 *  *  * 今回のような緊急時は、これまで既得権益からの反対、各種規制、財源問題、各省間の縄張りなどから導入できなかったデジタルガバメント構築に向けて、一気に進めていくチャンスと捉えるべきだ。 (了)

#No. 363(掲載号)
#森信 茂樹
2020/04/02

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例16】「宅地造成に伴う雨水排水路工事費に係る見積金額の損金計上」

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例16】 「宅地造成に伴う雨水排水路工事費に係る見積金額の損金計上」   国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦   【Q】 私は埼玉県で宅地開発業を営む株式会社A(3月決算)の代表取締役です。今回のご相談は、わが社が数年前から行ってきた、県内のX市における宅地開発事業に関する法人税の取扱いに関するものです。 A社は、X市から土地を購入し、宅地として造成し販売することとしました。当該宅地開発は、都市計画法上、埼玉県知事の許可を必要とし、当該許可にはX市の同意が必要とされます。X市はこの同意権を背景に、A社に対して、今回の開発区域外にある雨水排水路の整備などを行うよう指導してきました。A社は当該指導を了承し、X市の同意を得て埼玉県知事から平成27年6月に開発許可を受けました。その後A社は当該宅地を造成して平成29年12月末までの6ヶ月間にすべて販売し、法人税の申告上、その収益を平成30年3月期の益金に算入しました。 しかし、宅地販売後になって、X市の担当者は雨水排水路の仕様の変更を要請してきましたが、これにより工事費が一挙に3倍となるため、A社は当該要請を拒否しました。その後X市の担当者は、当初の工費の範囲内で収まるような仕様の変更にとどめる代案を提示してきましたので、A社はこれを受け入れ、当該排水路の工事を行うB建築株式会社に見積もりを依頼しました。B社は直ちに見積もり(1億5,000万円)を提示してきたので、これをX市の担当者に連絡しました。 困ったことに、X市は更に方針を変更し、当該工事は公共事業として行うこととし、A社に対して、当該見積額を都市下水路整備負担金としてX市に支払うよう求めたため、A社はこれを平成30年3月までに了承しました。また、A社は当該負担金相当額を全額平成30年3月期の法人税の申告上、売上原価として損金に算入しました。X市も当該金額を平成30年度一般会計予算において歳入として計上したところです。 ところが、X市の住民が当該工事を含む下水路整備事業につき反対運動を起こしたため、X市は平成31年3月において当該工事を実施しないことを決定し、結局、A社もまた上記負担金の支出を行わないこととなりました。 このような経緯がありましたが、最近受けた税務調査で調査官から、都市下水路整備負担金として平成30年3月期に売上原価として損金算入した金額は、実際に支払っておらず、債務として確定していないことから、損金算入は認められない旨言い渡されました。平成30年3月の決算時点においては、都市下水路整備負担金を支出することは確実であり、その金額も合理的に見積もることができることから、実際に支払っていなくとも売上原価とするのは妥当と考えますが、いかがでしょうか。 〇宅地開発許可と都市下水路整備の負担   【A】 最高裁判決の判示から考えると、債務の確定していない支出の見込みであっても、その支出が相当程度の確実性をもって見込まれ、かつその金額を適正に見積もることができる場合には、法人税法第22条第3項第1号にいう売上原価として損金算入することに問題はないものと考えられます。 ただし、都市下水路整備負担金を事実上の(租税)公課と解する場合には、売上原価ではなく販管費となり、その損金算入には債務の確定が求められるため、平成30年3月期に損金算入することはできないとされる可能性はあります。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 法人税法上の「債務の確定」の意義 法人税法においては、損金をどの事業年度に計上すべきか(損金の年度帰属)については、一般に、企業会計上の発生主義及び費用収益対応の原則によることとされている。 一方で、企業会計上、費用収益対応の原則に基づき費用計上が広く認められる引当金や見積費用について、法人税法上は課税の公平等の観点からその計上を制限しているが(※1)、その理論的根拠として用いられているのが債務の確定(債務確定基準)という考え方である(法法22③二カッコ書)。 (※1) 租税法が債務の確定を求めるのは、販管費のような期間に基づく対応関係を基準に費用認識をするケースを制限するためと解されている。岡村忠生「法人税法22条3項1号の売上原価と費用見積金額」、中里他編『租税判例百選(第6版)』(有斐閣・2016年)105頁。 その内容については、法人税基本通達2-2-12によれば、以下の3つの要件を挙げている。 債務確定基準は、販売費・一般管理費のように、特定の収益との対応関係が明らかではないもの(期間的・間接的な対応関係に過ぎないもの)について適用される基準である(法法22③二)(※2)。 (※2) 金子名誉教授は、債務確定基準について、債務の発生が確実であり、かつその金額を正確に確認できることが要件であると解しており、後述(3)の最高裁平成16年10月29日判決・刑集58巻7号697頁と同様の立場(最高裁判決は売上原価に係るものであるが)を採っている。金子宏『租税法(第二十三版)』(弘文堂・2019年)368頁参照。 (2) 売上原価と「債務の確定」 法人税法上、損金の額に算入すべき金額の中には、当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額が挙げられ、収益(売上)に対応する売上原価は損金の額に算入すべきものとされている(法法22③一)。ここには、上記の「債務の確定」の文言は出てこない。 売上原価が認識されるのは、収益との直接的な対応関係に基づくもの(費用収益対応の原則)であり、商品等の仕入れに係る対価の支払債務の確定に基づくものではない。したがって、収益認識時点で仕入代価が決まっていなくとも(債務の確定がなくとも)、費用収益対応の原則から、売上原価は認識しなければならないというのが法人税法の考え方なのである。すなわち、法人税法上、売上原価の損金算入には債務確定の要件はない、ということを確認しておきたい。 (3) 見積費用の原価性 それでは、本件のように、収益計上時には負担することが見込まれているものの、翌期において結局支払いが中止となった見積費用(都市下水路整備負担金)は、売上原価として損金算入することに問題はないのであろうか。 この点について争われた裁判例(最高裁平成16年10月29日判決・刑集58巻7号697頁、TAINSコード:Z999-9050、虚偽過少申告をして法人税を免れたとして起訴された事案)があるので、以下でその内容を検討したい。 ① 事案の概要 被告人A株式会社は、茨城県稲敷郡牛久町(現牛久市)内の土地を購入して造成し宅地として販売することにした。被告会社は、上記開発行為につき茨城県知事の許可を得るため、都市計画法に基づいて牛久市と協議をした。牛久市は、宅地開発に当たっては、開発区域の内外を問わず、流末排水路を開発業者に整備させるという行政指導を行い、開発業者がこれに従わない場合には、同法32条に基づく公共施設の管理者としての同意を与えず、開発許可申請を茨城県知事に申達しないという取扱いをしていた。このため、牛久市の担当者は、被告会社に対し、本件土地内から排出された雨水が流下することになる開発区域外の長さ約400mの農業用水路を、直径2mの管を埋設した暗渠の雨水排水路とすることなどを内容とする改修工事を行うよう指導した。 被告会社は、これを了承し、牛久市の同意を得て、昭和58年6月に茨城県知事から開発許可を受けた。その後、被告会社は、本件土地を造成し、昭和62年6月にこれを販売した。 昭和62年7月ころ、牛久市の担当者は、方針を変更し、被告会社に対し、幅4mの開渠の雨水排水路とすることなどを内容とする改修工事を行うよう指導した。当該改定案は当初案の約3倍の工費を必要とするため、被告会社が難色を示すと、牛久市の担当者は、当初案の工費の範囲内で被告会社が改定案の工事を部分的に施工するとの代案を提示した。これを受け入れた被告会社は、本件改修工事を請け負わせようと考えていた株式会社C建設に対し、当初案の工費を見積もるよう依頼した。昭和62年9月ころ、同社は1億4,668万円と見積もり、被告会社はこの見積金額を牛久市の担当者に連絡した。 昭和62年10月ころ、牛久市側は、更に方針を変更し、本件改修工事をすべて公共工事として行うこととし、被告会社に対し、当初案の工費に相当する上記金額を都市下水路整備負担金として牛久市に支払うよう求め、被告会社はこれを了承した。 昭和62年11月30日、被告会社は、本件土地の販売に係る収益の額を昭和61年10月1日から同62年9月30日までの事業年度の益金の額に算入し、上記1億4,668万円を上記収益に係る売上原価の額として当期の損金の額に算入した上、確定申告をした。 牛久市は、昭和63年度から3年計画で本件改修工事を行うこととし、昭和63年3月成立の同年度一般会計予算において、被告会社が支出する上記負担金の初年度分として総額の約3分の1に当たる5,000万円を歳入に計上した。しかし、その後、牛久市は、住民の反対運動が起きることを懸念して同工事を行わず、被告会社も、上記負担金を支出していない。 一審の水戸地裁(平成11年5月31日判決・刑集[参]58巻7号813頁)は、被告会社と牛久市との間に改修工事に関して権利義務関係が成立していないとして、上記負担金の金額1億4,668万円を売上原価とすることはできないと判示した。 また、控訴審の東京高裁(平成12年10月20日判決・刑集[参]58巻7号865頁)も、 と判示して、上記負担金の金額全額を売上原価とすることはできないとした。 ② 事案の争点 都市下水路整備負担金である1億4,668万円を昭和62年9月期の収益に係る売上原価の額として損金の額に算入することの是非。 ③ 裁判所の判断 ④ 上記判決からいえること 本件の争点である、都市下水路整備負担金である1億4,668万円を昭和62年9月期の収益に係る売上原価の額として損金の額に算入することの是非について、最高裁はそれを是認した。その理由として、最高裁は以下の3つの事実に着目している。 上記から、最高裁は、「当期終了の日である同年9月末日において、被告会社が近い将来に上記費用を支出することが相当程度の確実性をもって見込まれており、かつ、同日の現況によりその金額を適正に見積もることが可能であったとみることができる」と判示している。そのため、昭和62年9月期において都市下水路整備負担金である1億4,668万円を売上原価として損金に算入することは妥当であるとの結論を導いている。 本件に関する最高裁の結論は妥当と考えられる。一方で、本件の最高裁の判示が一見、法人税基本通達2-2-12の3要件に似ているからといって、最高裁が売上原価の認識のタイミングに債務確定基準を適用したと理解することは誤りではないかと考える。これについては、既に(2)で見たとおり、法人税法は売上原価の認識のタイミングに関し債務確定基準を採用しておらず、あくまでも費用収益対応の原則により認識のタイミング(年度帰属)が決まるという点を確認しておきたい。 それでは、売上原価の「計上」と最高裁のいう「その金額を適正に見積もることが可能」とは、どのような関係にあるのであろうか。これは、売上(収益計上)時点で仕入代価が決まっていない(債務が確定していない)場合であっても、費用収益対応の原則から売上原価は認識しなければならず、そのために必要なものとして「見積計上」という手法があるということを意味するのである。 (4) 負担金の売上原価性 (3)の最高裁判決の事案及び本件に関し、そもそも論として、排水路改修の実施費用から転換した都市下水路整備負担金を、宅地販売収益との対応関係がある売上原価として捉えるのが妥当なのかについては、議論の余地があるだろう。すなわち、牛久市から負担を求められた都市下水路整備負担金は、宅地販売収益との直接の対応関係があるといえるのかどうか、必ずしも判然としない。 〇負担金の売上原価性 前述(3)④に掲げた最高裁の「牛久市は、都市計画法上の同意権を背景として、被告会社に対し本件改修工事を行うよう求めたものであって、被告会社は、事実上その費用を支出せざるを得ない立場に置かれていた」という判示をみると、最終的には支出しなかったとはいえ、少なくとも昭和62年9月期末においては、当該負担金は支出の可能性が高い金額であったといえるであろう。しかし、宅地販売収益と直接の対応関係があったといえるのかについては、必ずしも明確ではない。 仮に、事実上の強制力を伴う負担金であると解するのであれば、売上原価というよりは販管費の(租税)公課に分類されるという判断も可能であろう。その場合、当該負担金は法人税法第22条第3項第2号の「販売費、一般管理費その他の費用」となり、債務の確定により損金計上のタイミングが決まってくる。そうなると、昭和62年9月期末においてはまだ債務の確定はなく、損金計上はできないという結論になる可能性がある(※3)。 (※3) 岡村前掲(※1)評釈105頁参照。 (5) 本件への当てはめ 上記(3)で見てきた最高裁判決の判示から考えると、本件の都市下水路整備負担金のような債務の確定していない支出の見込みであっても、その支出が相当程度の確実性をもって見込まれ、かつその金額を適正に見積もることができる場合には、販売収益を計上した平成30年3月期において、法人税法第22条第3項第1号にいう売上原価として損金算入することに問題はないものと考えられる。 ただし、本件の都市下水路整備負担金を事実上の(租税)公課と解する場合には、売上原価ではなく販管費となり、その損金算入には債務の確定が求められるため、平成30年3月期に損金算入することはできないとされる可能性がある。 (了)

#No. 363(掲載号)
#安部 和彦
2020/04/02

〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第77回】「継続的取引の基本となる契約書⑧(販売協力金の支払に関する覚書)」

〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第77回】 「継続的取引の基本となる契約書⑧ (販売協力金の支払に関する覚書)」   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   当社は飲料商品等の製造会社です。当文書は当社と小売店との間で、販売協力金の支払について定める文書ですが、印紙税法上の課税文書に該当しますか。 なお、両社間には直接の売買取引はなく、取引には卸売会社が中間に入ります。 不課税文書に該当する。   [検討] 第7号文書に該当しないか 第7号文書の要件の1つとして、令第26条第1号において「営業者の間において、売買、売買の委託に関する二以上の取引を継続して行うため作成される契約書で、当該二以上の取引に共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格を定めるもの」と規定されている。 甲乙はともに営業者ではあるものの、売買の当事者は甲と卸売会社間、乙と卸売会社となるため甲乙は直接の売買取引がないので、第7号文書には該当しない。   ▷まとめ 事例の場合は、売買取引の直接の当事者間でないため、第7号文書には該当しないが、その売買取引の直接の当事者間であれば、事例のように売買に関する二以上の取引に際して作成する文書であり、取扱数量を定める場合は第7号文書に該当する。   (了)

#No. 363(掲載号)
#山端 美德
2020/04/02

租税争訟レポート 【第48回】「居住者の認定を巡る無申告加算税・不納付加算税賦課決定処分と納税告知処分(第一審:東京地方裁判所2019(令和1)年5月30日判決、控訴審:東京高等裁判所2019(令和1)年11月27日判決)」

租税争訟レポート 【第48回】 「居住者の認定を巡る無申告加算税・不納付加算税賦課決定処分と納税告知処分 (第一審:東京地方裁判所2019(令和1)年5月30日判決、控訴審:東京高等裁判所2019(令和1)年11月27日判決)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【判決の概要】 〈第一審〉 〈控訴審〉   【事案の概要】 本件は、下記の第1事件及び第3事件について、原告B社及び原告C社が、各納税告知処分及び第1・3事件各賦課決定処分の取消しを求め、第2事件について、原告Aが各通知処分及び第2事件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。 1 第2事件 原告Aは、自らが所得税法2条1項5号の「非居住者」に該当するとの認識のもと、平成21年分から平成24年分について、いずれも確定申告期限までに所得税の申告をしなかったところ、同項3号の「居住者」に該当するとして所轄税務署長から期限後申告を勧奨されたため、各年分の所得税について期限後申告を行った上で、平成23年及び平成24年分の所得税について更正の請求をしたが、所轄税務署長から、いずれも更正をすべき理由がない旨の通知を受け、さらに、各年分の所得税の無申告加算税に係る賦課決定処分を受けた。 2 第1事件及び第3事件 原告Aが代表取締役を務める原告B社及び原告C社は、原告Aに対して支払った役員報酬について、原告Aが同項5号の「非居住者」に該当するとの前提で所得税を源泉徴収して納付していたところ、所轄税務署長から、原告Aが同項3号の「居住者」に該当するとして、平成21年11月から平成24年12月までの各月分の源泉徴収に係る所得税の納税告知処分及び不納付加算税の各賦課決定処分(以下「第1・3事件各賦課決定処分」という)を受けた。   【原告Aについて】 1 原告Aの国別滞在状況 判決別紙にまとめられた原告Aの国別滞在日数は、次のとおりである。本件で争点となっているいずれの年においても、日本での滞在日数は2分の1を下回っている。 《原告Aの国別滞在日数》 2 原告Aの職務内容について 裁判所の認定した原告Aの各社での役職と役員報酬をまとめると、次のとおりとなる。 ※ 原告Aの海外関連会社の社名について、判決文は「不開示」となっているため特定はできないが、裁判所による事実認定における関連会社の検討順序から、それぞれの役員報酬を上記のとおりと判断している。   【第一審判決の概要】 1 争点 本件の争点は、本件各処分の適法性であるところ、具体的な争点は以下のとおりである。 2 裁判所の判断 東京地方裁判所は、原告Aが「居住者に該当するか否か」について検討するにあたって、次の項目について事実認定を行った。 裁判所は、「住民票その他の書類の状況」の項目で、原告Aが、各年を通じ、シンガポールにおいては居住者用の納税申告書を用いて納税申告を行い、アメリカにおいては、非居住者用の納税申告書を用いて納税申告を行っていたことを認定している。 そのうえで、最高裁判所平成23年2月18日第二小法廷判決を引用する形で、次のように検討の前提条件を示した。 さらに、「客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かは、滞在日数、住居、職業、生計を一にする配偶者その他の親族の居所、資産の所在等を総合的に考慮して判断するのが相当である」として、各項目について検討を行った。 (1) 滞在日数及び住居について 裁判所は、本件各年において原告Aが滞在していた各国のうち、原告Aが自己所有建物又は賃貸建物に居を構え、定住できる態勢の整っていた国は、日本、アメリカ、シンガポールの3ヶ国であり、そのうち、日本国内における滞在日数と、原告らが原告Aの住所があったと主張するシンガポールにおける滞在日数とを比較すると、いずれの年についても、日本国内における滞在日数が上回っていたが、両国における滞在日数に大きな差があるとはいえないことから、滞在日数の比較から、原告の生活の本拠が日本国内にあったことを積極的に基礎付けることはできないものというべきであると判断した。 (2) 原告Aの職業について 次いで、裁判所は、原告Aは、各年を通じ、各海外法人の営業活動や工場の管理等の業務のため、年間の66~75%程度の期間は、諸外国に滞在して業務を行っていたものと認められ、年間の約4割の日数においてシンガポール又は同国を起点として渡航したインドネシアや中国及びその他の国に滞在していたことになるから、原告Aの職業活動は、シンガポールを本拠として行われていたと評価することができるものといえると評価した。 さらにこの評価の裏付けとなる事実として、①原告A自身、シンガポールの居住者として納税申告をし、シンガポールに居住しているとの認識を有していたこと、②アメリカに居住していた長男を後にシンガポールに呼び寄せていることという認定した事実を挙げている。 (3) 生計を一にする配偶者その他の親族の居所について さらに、裁判所は、原告Aと生計を一にする妻や二女は、各年を通じて、日本居宅において居住を続けていたことが認められるとしながらも、原告Aとその妻は、年間の大部分を海外の各地で過ごすことになる原告Aの職業活動に適応した生活の在り方として、妻らの生活の本拠は海外に移さず、日本居宅のままとし、原告Aが帰国したときに休暇も兼ねて妻らと会うという方法を選択したものということができると評価したうえで、生計を一にする妻らが国内に居住していたことは、原告Aの生活の本拠が日本国内にあったことを積極的に基礎付けるものとはいえないという判断を示した。 (4) 資産の所在について 原告Aの資産の所在について、裁判所は、日本国内において原告各社の株式、日本居宅の共有持分権、自動車及び多額の預貯金等を有しているものの、シンガポールにおいても1,700万円以上の預貯金を有しており、当面生活するために十分な額の資産を有していたものと認定したうえで、日本の預貯金等の資産をシンガポールに移転していないことについては、家族を残して海外に赴任する者の行動として不自然なものとはいえないことから、原告Aが日本により多くの資産を所有していることをもって、その生活の本拠が日本にあったことを積極的に基礎付けるものとはいえないと評価した。 (5) その他の事情について 裁判所は、原告Aが、日本住所地における住民登録について転出の届出をしていなかったことについては、一般に、適切な届出がされないため、住民登録の所在が必ずしも生活の実体を反映したものとなっていない例があることや、海外に赴任する者が他の手続上の便宜のために日本国内に住民登録を残しておくこともその者の行動として不自然であるとはいい難いことから、住民登録について転出の届出をしていなかったことをもって、原告Aの生活の本拠が日本にあったことを積極的に基礎付けるものとはいえないと判断を示した。 また、裁判所は、原告Aが、各年を通じて、日本の健康保険組合に加入を継続し、日本国内の病院において、毎年の人間ドックを受診し、おおむね毎月通院していたほか、平成24年には網膜剥離や心臓の手術を受けるために入通院していたこともあったことが認められるものの、医療水準や保険制度の整備状況、通院や入退院の便宜等に鑑み、一時帰国時に日本の病院に通院等することが不自然であるとはいい難いことから、このことをもって、原告Aの生活の本拠が日本にあったことを積極的に基礎付けるものとはいえないと評価した。 (6) まとめ 以上の検討の結果、裁判所は、原告Aの職業活動はシンガポールを本拠として行われていたものと認める一方、日本国内における滞在日数とシンガポールにおける滞在日数とに有意な差を認めることはできず、原告Aと生計を一にする家族の居所、資産の所在及びその他の事情についても、原告Aの生活の本拠が日本にあったことを積極的に基礎付けるものとはいえないと判断をした そして、裁判所は、処分の対象となった各年のいずれにおいても、原告Aの生活の本拠が日本にあったと認めることはできないから、原告Aは所得税法2条1項3号に定める「居住者」に該当するとは認められないと結論づけ、原告Aが居住者に該当することを前提としてされた各処分は、その前提を欠くものとしていずれも違法であるとして、原告らの主張を認め、各処分について全部取消しの判決を下した。   【控訴審判決の概要】 控訴審である東京高等裁判所は、結論として、第一審原告Aは所得税法2条1項3号の「居住者」に該当するとは認められないから、「居住者」であることを前提になされた各処分は違法であると判断すると述べたうえで、第一審被告による主張について、次のとおり、補足的判断を付加して、主張をすべて斥けた。   【解説】 英語では、「perpetual traveler」とも「permanent traveler」とも呼ばれる「永遠の旅行者」問題。複数の国で、居住者に該当しないだけの日数を滞在して、合法的に税金を納付しない人のことである。本稿の原告Aもまた、各国の居住日数だけを見れば、すべての国で非居住者となりそうであるが、彼はシンガポールを自分の住所と定め、シンガポール居住者として納税を行っていた。ところが、処分行政庁である昭和税務署と名古屋中税務署は、原告Aを居住者であると主張して、課税処分を行い、裁判所が納税者の請求を認容する判決を出したことにより、敗訴してしまう。 1 武富士事件(最高裁判所平成23年2月18日第二小法廷判決) 日本国内において住所を有しているか否かが争われた事案としては、いわゆる武富士事件(最高裁判所平成23年2月18日第二小法廷判決)が判例となっており、本件第一審判決でもその一部が引用されている。最高裁の事実認定の枠組みは、本件第一審判決でも維持されていると考えられるので、概要をまとめておきたい。 以上の事実認定に基づいて、最高裁は、贈与を受けた時において、上告人は、香港居宅は生活の本拠たる実体を有していたものというべきであり、日本における杉並居宅が生活の本拠たる実体を有していたということはできないと結論付けたものである。 2 前回の税務調査での判断を覆してまで課税処分を行った理由は何か 判決の中では触れられていないのだが、原告Aは、本件各処分に先立つ平成16年から平成20年の各年についても税務調査を受けており、このときには、原告Aは非居住者であると判断されて、調査は終了している。 それを受けて、原告らは、次のように主張していた。 これに対し、第一審被告は、ある者が居住者として課税されるか否かは、客観的事実を総合的に勘案した上で判断されるものであるから、前回調査との間に有意な差があったか否かは本質的な問題とされるものではないとして、次のように主張した。 「生計を一にする親族の居所」が日本にあることを、前回の税務調査の判断と異なる課税処分を行う根拠としたわけだが、これが裁判所によって否定されたのは、上記の裁判所の判断の項で見てきたとおりである。   (了)

#No. 363(掲載号)
#米澤 勝
2020/04/02

〔中小企業のM&Aの成否を決める〕対象企業の見方・見られ方 【第1回】「相手を知ることがM&A巧者の第一歩」

〔中小企業のM&Aの成否を決める〕 対象企業の見方・見られ方 【第1回】 「相手を知ることがM&A巧者の第一歩」   公認会計士・税理士 荻窪 輝明     1 M&A当事者の関心事は違って当然 M&A当事者、特に買い手と売り手の視点や関心事を知れば、いかに当事者によって興味や関心、考えていることが違うかがよくわかります。それだけに、立場の異なる相手の視点を理解することは、M&A相手先の見方・見られ方を探る際の有益な情報源になるのです。 では、M&Aの当事者が買い手と売り手によってどれだけ視点や考え方が異なるのか、項目ごとに見ていきましょう。 〈中小企業のM&Aにおける買い手・売り手の主な視点〉   2 知るに値する「第三の目」 対象企業の見方・見られ方の中心となる買い手目線・売り手目線のほかにも、多くのM&Aのケースで「第三の目」が存在します。仲介者やアドバイザー、金融機関などの視点です。 第三の目である彼らは、M&Aをビジネスで行っている以上、その実施によって利益を追求するのが自然であり、採算度外視でM&A対象企業を支援することは稀です。ただし、M&Aを成功に導くために、中立的な視点を持ちつつ、M&Aの買い手と売り手の間に立って、バランス感覚のある判断を下す能力や豊富な経験を持ち合わせていることは確かです。 M&Aの買い手・売り手双方の当事者にとって、彼らのような「第三の目」が買い手・売り手をどう見ているかということも知るに値します。 多くのM&Aの場面で、対象企業を調査するために実施される「財務デューデリジェンス」の実施主体となる監査法人や公認会計士、コンサルティング会社などの視点は、主に売り手の財務面やリスクの観点から「何をどのように見ているか」を知ることができる点で有用です。 M&Aの買い手、売り手、支援側のいずれの立場に回るにしても、対象企業を俯瞰できることがM&Aを円滑に進め、望む相手と組むカギとなるはずです。 この連載ではこれから、M&Aにおけるそれぞれの当事者の立場を念頭に置きながら、対象企業の見方・見られ方について詳しくみていきましょう。 (了)

#No. 363(掲載号)
#荻窪 輝明
2020/04/02

税効果会計を学ぶ 【第1回】「税効果会計の目的と適用による損益計算書・貸借対照表」

税効果会計を学ぶ 【第1回】 「税効果会計の目的と適用による損益計算書・貸借対照表」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 本誌において、2013年に「税効果会計を学ぶ」シリーズを公開してから、日本公認会計士協会の作成した税効果会計に関する実務指針が企業会計基準委員会に移管されている。 税効果会計に関しては、次の会計基準等が公表されている。 企業会計基準委員会への移管に際しては、基本的に日本公認会計士協会の実務指針の内容を踏襲した上で、必要と考えられる見直しが行われている(「税効果会計に係る会計基準の適用指針」71項)。 本シリ-ズは、上記の会計基準等の移管及び見直しを踏まえ、改めて「税効果会計を学ぶ」として、税効果会計に関する解説を行うものである。 ただし、前述のように、企業会計基準委員会の公表した会計基準等は、基本的に日本公認会計士協会の実務指針の内容を踏襲していることから、実務指針の趣旨や公表時の背景、従来の実務慣行も引き続き、重要な側面があると思われる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 税効果会計の目的 企業会計において、財務諸表は一般に公正妥当と認められる会計基準に従って作成する一方、法人税法等は、課税所得等の範囲、税額の計算の方法などについて規定しており、両者には相違がある。 企業会計上の利益の額を基礎として法人税等の課税所得の計算が行われるものの、両者の相違から、一般的に、企業会計の収益又は費用と法人税法等の益金又は損金の認識時点や、企業会計の資産又は負債の額と法人税法等の資産又は負債の額に相違が見られる。 このため、税効果会計を適用しない場合には、課税所得を基礎とした法人税等の額が費用として計上され、法人税等を控除する前の企業会計上の利益と課税所得とに差異があるときは、法人税等の額が法人税等を控除する前の当期純利益と期間的に対応せず、また、将来の法人税等の支払額に対する影響が表示されないことになる(「税効果会計に係る会計基準の設定に関する意見書」(以下「税効果会計意見書」という)二、1。1998年10月30日、企業会計審議会)。そこで、このような相違を適切に調整する方法が必要とされ、「税効果会計に係る会計基準」が設定された。 つまり、税効果会計とは、法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等を合理的に対応させることを目的とする会計処理方法である(「税効果会計に係る会計基準」(企業会計審議会。以下「税効果会計基準」という)第一)。   Ⅲ 税効果会計の適用-損益計算書 税効果会計により、繰延税金資産及び繰延税金負債が貸借対照表に計上されるとともに、当期の法人税等として納付すべき額及び税効果会計の適用による法人税等の調整額が損益計算書に計上されることになる(税効果会計意見書二、2)。 このように、税効果会計は、法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等を合理的に対応させることを目的とする会計処理方法であるが、その適用方法は、企業会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上(税務上)の資産又は負債の額の相違に着目する会計処理方法である(税効果会計基準第一)。 ポイントは次のとおりである。 税効果会計を適用する場合と適用しない場合で、損益計算にどのような影響を与えるかを数字で見てみる。 《数値例》 (※1) (税引前当期純利益5,000+評価減1,000)×法定実効税率40%=2,400 (※2) 評価減1,000(=税務上の帳簿価額1,500-会計上の帳簿価額500)×法定実効税率40%=400 法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等が合理的に対応しているかどうかをみると、次のようになる。 〈税効果会計を適用しない場合〉 〈税効果会計を適用する場合〉 〈税効果会計を適用する場合〉には、法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等の比率は40%となる。これは法定実効税率40%と一致しているので、合理的な対応が図られていると考えられる。 〈税効果会計を適用しない場合〉には、法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等の比率は48%となり、法定実効税率40%と一致していない。つまり、法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等の合理的な対応が図られていないものと考えられる。 税効果会計を適用するという意味は、損益計算の観点からは、法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等の額を適切に期間対応させることにある。   Ⅳ 税効果会計の適用-貸借対照表 前述の《数値例》(注の(※2)の計算式)では、「評価減1,000(=税務上の帳簿価額1,500-会計上の帳簿価額500)×法定実効税率40%=400」と計算されており、会計処理は次のようになる。 (仕訳) 損益計算書では「法人税等調整額 400」が表示されるが、貸借対照表では「繰延税金資産 400」が表示される。つまり、税効果会計の適用により、貸借対照表では、基本的に、繰延税金資産及び繰延税金負債が計上されることになる。   Ⅴ 繰延税金資産と繰延税金負債 繰延税金資産は、将来の法人税等の支払額を減額する効果を有し、一般的には法人税等の前払額に相当するため、資産としての性格を有するものと考えられる(税効果会計意見書二、2)。 また、繰延税金負債は、将来の法人税等の支払額を増額する効果を有し、法人税等の未払額に相当するため、負債としての性格を有するものと考えられる(税効果会計意見書二、2)。 つまり、税効果会計の基本的な考え方としては、繰延税金資産又は繰延税金負債は、将来において、企業会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上(税務上)の資産又は負債の額の相違が解消するときに、納付する税額を減額又は増額する効果を有することに着目しているものと考えられる。 実務上、税効果会計の適用に際して判断に迷う場合には、将来における納付する税額に対して、どのように減額又は増額する効果があるかを考えてみるとよいと思われる。 (了)

#No. 363(掲載号)
#阿部 光成
2020/04/02

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第98回】ネットワンシステムズ株式会社「特別調査委員会最終報告書(2020年3月12日付)」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第98回】 ネットワンシステムズ株式会社 「特別調査委員会最終報告書(2020年3月12日付)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【特別調査委員会の概要】   【ネットワンシステムズ株式会社の概要】 ネットワンシステムズ株式会社(以下「ネットワン」と略称する)は、1988(昭和63)年2月設立。情報インフラ構築と関連サービスの提供を主たる事業とする。売上高181,935百万円、経常利益13,258百万円、資本金12,279百万円、従業員数2,294名(いずれも訂正前2019年3月期実績)。本店所在地は東京都千代田区。東京証券取引所1部上場。会計監査人は有限責任監査法人トーマツ(以下「トーマツ」と略称する)。   【中間報告書に関する説明会における質疑応答】 ネットワンは、3月5日になって「特別調査委員会の中間報告書受領及び公表に関する説明会 質疑応答(要旨)」を公表した。質疑応答の要旨は次のとおりである。   【調査最終報告書の概要】 特別調査委員会による「納品実体のない取引に関する調査最終報告書(開示版)」のうち、中間報告書の記載のない項目について、その概要を検証する。 1 新たに判明した不正取引 本連載第97回で取り上げた中間報告書段階で全容が解明されていなかった、ネットワンから戊社への架空発注による他社への資金流出問題について、特別調査委員会は、次の2つの商談を特定した。 (1) 庚社に対する損失補填名目の架空発注 2019年、A氏の部下であるC氏が担当する中央省庁の入札案件において、落札を見込める価格が想定より大幅に低いことが判明したため、庚社に対する発注予定価格を減額する必要が生じることとなった。 相談を受けたA氏は、庚社の見積額を5,470万円から780万円に減額させて、差額については戊社から発注することによって、庚社に損失が生じないようにすることを考案して、庚社の了解を得るよう指示した。 問題となった商談 損失補填取引 この結果、ネットワンは、戊社に対して、C氏が担当する他の中央省庁案件から2件、合計4,690万円の実体のない発注を行い、このうち、1,500万円はすでに支払済みであった。 (2) 甲社からの水増し受注に伴う検証機器の購入取引 独立行政法人をユーザーとする2019年2月の入札案件において、入札する甲社から、予算の都合でネットワンの原価の一部を他の案件に付け替えるように指示があり、別の組織向けの案件に5,376万円を上乗せして見積書を作成した。 甲社は、独立行政法人向けの案件を失注したにもかかわらず、上乗せ部分はそのままとなったため、この余った予算について、A氏と部下であるB氏が協議のうえ、社内の正規の手続きを経ることなく、霞が関オフィスの検証機器購入に使用した。購入に際して、A氏は検証機器メーカーに直接発注するのではなく、戊社を通じて購入するように示唆したため、戊社はこの取引で約4,000万円の利益を得ることとなった。 商談概要 検証機器購入取引 2 A氏による架空循環取引が行われた原因分析 特別調査委員会は、「本不正行為発生の原因分析」として、15ページという報告書全体の4分の1を超える紙数を割いて、A氏による架空循環取引が行われ、かつ、長期間発覚しなかった原因を分析している。まず、各項目の見出しを引用しておきたい。 調査委員会による原因分析のうち、本事案における特異点として、A氏が所属していた営業第1チームに関する組織マネジメントの問題を取り上げておきたい。 営業第1チームはネットワン本社ではなく、霞が関に独立のオフィスを構えていたのだが、2015年4月には組織変更による異動に伴い、霞が関オフィスに常駐する部長が不在となり、A氏ともう1人のマネージャーがいたところ、翌2016年4月にはもう1人のマネージャーも異動となり、A氏が霞が関オフィスのトップとなっている。さらに、2015年以降にA氏の上司となった部長・副部長は中央省庁案件の経験がなく、A氏の手掛ける案件の詳細を把握できなくなっていた。 A氏は、2008年12月に中途採用されて以来、一貫して中央省庁を担当する部署に所属し、順調に役職を上げるとともに、成績優秀者向けに実施される報奨旅行の常連であるとともに、2019年7月にはシニアマネージャーに昇格していた。中央省庁案件に対する豊富な経験から、上長であってもA氏には意見を言えず、また、部下には威圧的な態度をとる傾向がありながらも、面倒見の良い親分肌の一面を合わせて持っていたことから、部下もA氏に異を唱えることはできなかった。 さらに、調査委員会は、「内部統制に係る問題」の項目において、背景事情1から3として、ネットワンの購買部門の問題点を指摘しているので、確認しておきたい。 3 再発防止策の提言 調査委員会による再発防止策の提言は、次のとおりである。   【調査報告書の特徴】 筆者は、本連載第97回において、最終報告書のポイントとして、次のような疑問点が解明されるかどうかを注目する旨、述べておいた。 残念ながら、こうした疑問に対する直接の答えは、最終報告書にも記載がなく、不正行為をA氏が単独で行ったことがさらに強調される格好で、報告書はまとめられている。 1 2013年に発覚した水増し発注による資金横領事件における原因分析との類似性 本連載第97回でも触れたように、ネットワンは、2013年3月、得意先である十六銀行向け商談の担当者が、システム開発業務を委託する際に水増し発注を繰り返し、総額約8億円の損失が発生したことを公表している(本連載第6回「ネットワンシステムズ株式会社・元社員による不正行為「特別調査委員会調査報告書」」 )。 最終的には、元社員が逮捕されるというショッキングな事案の調査を担当した当時の特別調査委員会は、この元社員(報告書上は「A」と記載されている)について、次のように評している(一部表記を略称から改め、本連載第6回と同じものとするとともに、筆者による注書きを加筆した)。 本件で架空循環取引を主導したとされるシニアマネージャーA氏とその所属する霞が関オフィスの特異性については上述したとおりであるが、改めて2013年3月に公表された調査報告書を確認すると、2013年当時に本部長の職にあったA氏との類似点に驚かざるを得ない。中途入社でありながら、特定の分野では社内随一の経験を誇り、多額の売上実績から順調な出世を重ね、周囲には異論を唱える人間はいなかった。 2013年3月の調査報告書で当時の調査委員会は、十六銀行案件について、ネットワンのガバナンスに対する「治外法権の聖域」となったと評しているが、ネットワン経営陣は、新たな「聖域」を霞が関オフィスに作ってしまったことにより、A氏主導の架空循環取引が行われ、発覚まで4年以上継続されていたと言えよう。 2 過年度決算訂正/2020年第3四半期決算短信における疑問点 ネットワンは、2月14日に公表した「2020年3月期第3四半期 業績予想、及び、2020年3月期 通期業績予想の修正に関するお知らせ」に添附した資料の中で、「本不正行為に関する主な影響見込額」の項目で、特別調査委員会による影響見込額以外に、以下のように特別損失の計上を説明している。 訂正された損益計算書を見ると、以下のように特別損失が計上されている(単位:百万円)。 ところが、この「本不正行為に係る資金決済差額への手当」「不正取引関連損失」が何を意味しているのかが不明である。ネットワンが発出している訂正後の決算短信や他のリリースにこれを説明する文章はなく、調査報告書にも、こうした文言は記載されていない。 さらに、2020年第3四半期の決算短信における貸借対照表を見ると、次の2つの勘定科目で、大きく残高が増加していることがわかる(単位:百万円)。 決算短信における「財政状態に関する説明」では、棚卸資産の増加原因については言及がない一方、負債については、「不正行為に関連した取引を取消処理したことで生じた債務を含む流動負債のその他が44億37百万円、前受金が36億40百万円増加した」との説明が付されているが、未成工事支出金が9ヶ月間で2倍を超えていることは異常であり、上記の「本不正行為に係る資金決済差額への手当」も含めて、疑問の残る決算短信となっている。 3 特別調査委員会による原因分析と再発防止策 2013年3月公表の調査報告書における再発防止策では、大項目として「内部通報制度の改善」が挙げられていた。ネットワンには内部通報制度が存在し、一定数の通報があったにもかかわらず、当時の事件関係者からの通報がなかったという事実に基づいた再発防止策の提言であった。 本件でも、A氏による異常とも思えるような指示に関して、A氏の部下たちは時に疑問を口にすることはあっても、内部通報を行うということはなく、A氏による不正行為は国税局による税務調査がなければ発覚しなかった。 なぜ、ネットワン社内においては、内部通報システムが機能しないのかについて、特別調査委員会は、原因分析の中で触れることはなく、また、再発防止策としても内部通報制度の改善は取り上げられていない。 循環取引は、証憑がすべて揃っているうえに、売掛金・買掛金などの資金決済も契約通りに行われていることから、外部から不正を見抜くことが難しい不正行為であると言われており、この点は特別調査委員会も認めているところである。であればこそ、内部通報制度が機能することが求められるのではないか。取引内容に違和感・疑義を感じていたはずのA氏の部下たちはなぜ、通報しなかったのか。その分析なしには、再発防止策はまたしても画餅に帰することになるのではないだろうか。 4 ネットワンによる再発防止策 ネットワンは、特別調査委員会による再発防止策の提言を受けて、次のように再発防止策を説明している。 再発防止策の最初に、「付加価値が認められる案件のみを対応」することを宣言したことは評価できるが、「商流取引に該当しないことの承認を購買部から事前に得る」ことを条件に「直送取引」を認めることとした業務統制との兼ね合いについては、よくわからない点が残る。また、「純額取引ルール」の廃止が明言されていないことについても、疑問を感じる。 一方、購買部門による牽制機能については、2013年3月に公表された特別調査委員会による再発防止策の提言があったにもかかわらず、残念ながら、あまり活かされていなかったようであり、今回、あらためてネットワンが取り組むべき課題として認識されているようである。購買部門の強化には相応の組織改編と人員の増強が必要となろうが、そのあたりまで言明されていないところには、やや不満を感じるところである。 (了)

#No. 363(掲載号)
#米澤 勝
2020/04/02
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