租税争訟レポート 【第48回】「居住者の認定を巡る無申告加算税・不納付加算税賦課決定処分と納税告知処分(第一審:東京地方裁判所2019(令和1)年5月30日判決、控訴審:東京高等裁判所2019(令和1)年11月27日判決)」
筆者:米澤 勝
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租税争訟レポート
【第48回】
「居住者の認定を巡る無申告加算税・不納付加算税賦課決定処分と納税告知処分
(第一審:東京地方裁判所2019(令和1)年5月30日判決、控訴審:東京高等裁判所2019(令和1)年11月27日判決)」
税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝
【判決の概要】
〈第一審〉
東京地方裁判所令和1年5月30日判決
更正すべき理由がない旨の通知処分取消等・源泉所得税納税告知処分取消等請求事件
TAINSコード:Z888-2256
[原告]
第1事件:原告B社
第2事件:原告A
第3事件:原告C社
[被告]
国
処分行政庁:名古屋中税務署、昭和税務署
[争点]
(1) 原告Aが本件各年において居住者に該当するか否か。
(2) 国税通則法66条1項ただし書及び同法67条1項ただし書に定める「正当な理由」の有無、各支給額は原告代表者に対する役員給与に該当するか。
[判決]
各処分の全部取消し(納税者勝訴)(被告控訴)
〈控訴審〉
東京高等裁判所令和1年11月27日判決
更正すべき理由がない旨の通知処分取消等・源泉所得税納税告知処分取消等請求事件
TAINSコード:Z888-2283
[控訴人](第一審被告)
国
処分行政庁:名古屋中税務署、昭和税務署
[被控訴人](第一審原告)
第1事件:原告B社
第2事件:原告A
第3事件:原告C社
[争点]
第一審原告Aが本件各年において居住者に該当するか否か。
[判決]
棄却(納税者勝訴)、確定
【お断り】
TAINS所収の判決文(情報公開法第9条第1項による開示情報)では、原告の名前がそれぞれ不開示とされ、■■、■■■、■■■■となっているため、本稿では、便宜上、非居住者であることを主張する納税者を原告A、原告Aに対し、役員報酬を支払う際の源泉所得税について不納付加算税の賦課決定処分を受けた法人を、それぞれ、原告B社及び原告C社と呼称することで統一した。
【事案の概要】
本件は、下記の第1事件及び第3事件について、原告B社及び原告C社が、各納税告知処分及び第1・3事件各賦課決定処分の取消しを求め、第2事件について、原告Aが各通知処分及び第2事件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。
1 第2事件
原告Aは、自らが所得税法2条1項5号の「非居住者」に該当するとの認識のもと、平成21年分から平成24年分について、いずれも確定申告期限までに所得税の申告をしなかったところ、同項3号の「居住者」に該当するとして所轄税務署長から期限後申告を勧奨されたため、各年分の所得税について期限後申告を行った上で、平成23年及び平成24年分の所得税について更正の請求をしたが、所轄税務署長から、いずれも更正をすべき理由がない旨の通知を受け、さらに、各年分の所得税の無申告加算税に係る賦課決定処分を受けた。
2 第1事件及び第3事件
原告Aが代表取締役を務める原告B社及び原告C社は、原告Aに対して支払った役員報酬について、原告Aが同項5号の「非居住者」に該当するとの前提で所得税を源泉徴収して納付していたところ、所轄税務署長から、原告Aが同項3号の「居住者」に該当するとして、平成21年11月から平成24年12月までの各月分の源泉徴収に係る所得税の納税告知処分及び不納付加算税の各賦課決定処分(以下「第1・3事件各賦課決定処分」という)を受けた。
【原告Aについて】
1 原告Aの国別滞在状況
判決別紙にまとめられた原告Aの国別滞在日数は、次のとおりである。本件で争点となっているいずれの年においても、日本での滞在日数は2分の1を下回っている。
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連載目次
租税争訟レポート
第1回~第30回
- 【第1回】 弁護士業の必要経費・弁護士会役員の交際費
- 【第2回】 架空役員給与認定による青色申告承認取消及び更正処分等に対する不服申立事件
- 【第3回】 納税者と法人が保険料を負担した養老保険に係る一時所得の計算
- 【第4回】 勝馬投票券の払戻金に係る所得を一時所得と判断した事例
- 【第5回】 税理士の過失による損害賠償義務の範囲
- 【第6回】 税理士の過失による損害賠償義務と納税者の過失相殺
- 【第7回】 法定外普通税の規定は地方税法違反で、無効〔納税者勝訴〕
- 【第8回】 クレディ・スイス元部長脱税事件第一審判決〔無罪〕
- 【第9回】 意思能力のない被相続人による保険契約の締結と税理士の債務不履行責任
- 【第10回】 勝馬投票券の払戻金に係る所得を雑所得と判断した事例
- 【第11回】 配偶者が受給する年金から特別徴収された介護保険料
- 【第12回】 架空外注費の認定による課税処分を否認した裁決
- 【第13回】 非課税貯蓄申込書の受付義務と損害賠償
- 【第14回】 理由附記の不備による課税処分の取消し
- 【第15回】 従業員による横領と法人に対する重加算税〔納税者勝訴〕
- 【第16回】 弁護士の必要経費(上告受理申立て不受理決定)
- 【第17回】 損害賠償金に対する課税(ライブドア事件による損害賠償金)〔納税者勝訴〕
- 【第18回】 勝馬投票券の払戻金に係る所得を雑所得と判断した事例(控訴審判決)
- 【第19回】 団地の管理組合が行う収益事業(国税不服審判所裁決)
- 【第20回】 株主優待券の使用に係る費用に対する課税(国税不服審判所裁決)
- 【第21回】 課税仕入れ等の範囲(国税不服審判所裁決)
- 【第22回】 的中馬券に対する課税(最高裁判決)
- 【第23回】 親子会社間の売上値引き・単価変更と寄附金該当性(東京地方裁判所判決)
- 【第24回】 馬券の払戻金の所得区分と外れ馬券の必要経費該当性(東京地方裁判所判決)〈前編〉
- 【第25回】 馬券の払戻金の所得区分と外れ馬券の必要経費該当性(東京地方裁判所判決)〈後編〉
- 【第26回】 債務免除益と源泉所得税の納税告知処分(最高裁判決)
- 【第27回】 分掌変更に伴う役員退職金の分割支給(東京地方裁判所判決)
- 【第28回】 馬券の払戻金の所得区分と外れ馬券の必要経費該当性(東京高等裁判所判決)
- 【第29回】 不動産所得、返還しなかった敷金に対する課税(国税不服審判所裁決)
- 【第30回】 使途を明らかにしない商品券の購入代金に対する課税(東京地方裁判所判決)
- 【第31回】 架空請求により取得した簿外資金の役員給与該当性(東京地方裁判所判決)
- 【第32回】 租税特別措置法上の当初申告要件(東京地方裁判所判決)
- 【第33回】 顧問税理士の不正発見義務(東京地方裁判所判決)
- 【第34回】 賃貸用建物の建築費用の用途区分(国税不服審判所裁決)
- 【第35回】 専ら従業員の慰安のために行われた「感謝の集い」に要した費用の交際費等該当性(福岡地方裁判所判決)
- 【第36回】 馬券の払戻金に係る所得区分と外れ馬券の必要経費性(最高裁判所平成29年12月15日判決)
- 【第37回】 架空の業務委託契約に係る消費税の仕入税額控除と源泉所得税の納税告知処分(東京地方裁判所平成29年5月11日判決)
- 【第38回】 架空循環取引をめぐる青色申告承認取消等の処分の要件該当性(宮崎地方裁判所平成28年11月25日判決)
- 【第39回】 消費税の適正な転嫁と課税庁による外注費の給与認定
- 【第40回】 所得税法第204条第1項第6号に規定する「ホステス等」の意義とは(国税不服審判所平成30年1月11日裁決他)
- 【第41回】 太陽光発電設備の減価償却をめぐる問題(国税不服審判所平成30年3月27日裁決、同6月19日裁決)
- 【第42回】 マンション管理組合が行う収益事業に対する課税関係(第一審:東京地方裁判所平成30年3月15日判決、控訴審:東京高等裁判所平成30年10月31日判決)
- 【第43回】 税理士に対する所得の秘匿行為を重加算税の賦課要件に該当すると判断した事例(東京地方裁判所平成30年6月29日判決)
- 【第44回】 代表者個人名義のクレジットカードによる交際費の支払い(重加算税賦課決定処分等取消し請求、国税不服審判所平成30年9月21日裁決)
- 【第45回】 相続税申告における現金の申告漏れに係る重加算税賦課決定処分等取消し請求(第一審:東京地方裁判所平成30年4月24日判決、控訴審:東京高等裁判所平成30年11月15日判決)
- 【第46回】 同族会社等の行為計算の否認(法人税法132条)-ユニバーサル・ミュージック事件-(第一審:東京地方裁判所2019(令和1)年6月27日判決)
- 【第47回】 内縁の妻に対して支給した給与の否認と納税告知処分(第一審:東京地方裁判所2019(令和1)年5月30日判決)
- 【第48回】 居住者の認定を巡る無申告加算税・不納付加算税賦課決定処分と納税告知処分(第一審:東京地方裁判所2019(令和1)年5月30日判決、控訴審:東京高等裁判所2019(令和1)年11月27日判決)
- 【第49回】 個人事業主の必要経費該当性(第一審:大阪地方裁判所2018(平成30)年4月19日判決、控訴審:大阪高等裁判所2018(平成30)年11月2日判決)
- 【第50回】 準確定申告における無申告加算税の正当な理由(国税不服審判所2019(平成31)年2月1日裁決)
- 【第51回】 経理担当者による横領と重加算税(国税不服審判所2018(平成30)年4月16日裁決)
- 【第52回】 課税仕入れの計上時期(第一審:東京地方裁判所2019(平成31)年3月15日判決、控訴審:東京高等裁判所2019(令和1)年9月26日判決)
筆者紹介
米澤 勝
(よねざわ・まさる)
税理士・公認不正検査士(CFE)
1997年12月 税理士試験合格
1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)【著書】
・『新版 架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2019)
・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)
・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)
【寄稿】
・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)
・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)
【セミナー・講演等】
・一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
「会計不正の早期発見
――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月・公益財団法人日本監査役協会主催
情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月・株式会社プロフェッションネットワーク主催
「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月
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