公開日: 2020/04/02 (掲載号:No.363)
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〔会計不正調査報告書を読む〕 【第98回】ネットワンシステムズ株式会社「特別調査委員会最終報告書(2020年3月12日付)」

筆者: 米澤 勝

〔会計不正調査報告書を読む〕

【第98回】

ネットワンシステムズ株式会社

「特別調査委員会最終報告書(2020年3月12日付)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【特別調査委員会の概要】

〔適時開示〕

〔特別調査委員会〕

【委員長】

濵 邦久(弁護士 元東京高等検察庁検事長)

【委 員】

芝 昭彦(弁護士)

岩田 知孝(弁護士 公認会計士)

特別調査委員会は、和田法律事務所及びTMI総合法律事務所所属の弁護士22名に調査補助を依頼するとともに、デジタル・フォレンジック等について株式会社KPMG FASに所属する専門家を起用した。

〔調査期間〕

2019年12月13日から2020年3月11日まで

〔委嘱事項〕

東京国税局による税務調査で、納品の事実が確認できない取引がある旨の疑義があるとの指摘を受けたことから、社内調査を行った結果、事実経緯の正確な把握には、取引先を含めたより広範かつ深度ある調査が必要な状況にあるとの認識を持つに至り、特別調査委員会を設置することを決定した。

その目的は、納品の事実が確認できない取引及びこれに類似する不正の有無・態様の確認並びに原因究明等、連結財務諸表への影響額の算定及び判明した事実を踏まえた再発防止策に関する助言である。

〔調査結果〕

 

【ネットワンシステムズ株式会社の概要】

ネットワンシステムズ株式会社(以下「ネットワン」と略称する)は、1988(昭和63)年2月設立。情報インフラ構築と関連サービスの提供を主たる事業とする。売上高181,935百万円、経常利益13,258百万円、資本金12,279百万円、従業員数2,294名(いずれも訂正前2019年3月期実績)。本店所在地は東京都千代田区。東京証券取引所1部上場。会計監査人は有限責任監査法人トーマツ(以下「トーマツ」と略称する)。

 

【中間報告書に関する説明会における質疑応答】

ネットワンは、3月5日になって「特別調査委員会の中間報告書受領及び公表に関する説明会 質疑応答(要旨)」を公表した。質疑応答の要旨は次のとおりである。

➤ネットワンの架空売上高が他社と比べて少ないこと/利益率が高いこと

「純額取引」が含まれるため他社より売上高が少なく、利益率は高くなる

ネットワンを介さない架空取引パターンが存在している

➤他社との債権・債務はどうなっているか

債権・債務については確認済み

資金の清算については、各社の報告が出そろってから話し合うことになる

現段階では、会社の業績への影響は軽微ではないか

➤前回の再発防止策の効果がなかったこと

前回とは全く違う方法ですり抜けられてしまったという事実

伝票が偽造されて社外で案件名がすり替えられる、それが回って当社に元の案件名として戻ってくる等は、想定していなかった

➤A氏について

動機は明確には分かっていない

中途採用で2008年入社、マネージャーになったのは2014年

営業マンとしての評価は高かった

 

【調査最終報告書の概要】

特別調査委員会による「納品実体のない取引に関する調査最終報告書(開示版)」のうち、中間報告書の記載のない項目について、その概要を検証する。

1 新たに判明した不正取引

本連載第97回で取り上げた中間報告書段階で全容が解明されていなかった、ネットワンから戊社への架空発注による他社への資金流出問題について、特別調査委員会は、次の2つの商談を特定した。

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〔会計不正調査報告書を読む〕

【第98回】

ネットワンシステムズ株式会社

「特別調査委員会最終報告書(2020年3月12日付)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【特別調査委員会の概要】

〔適時開示〕

〔特別調査委員会〕

【委員長】

濵 邦久(弁護士 元東京高等検察庁検事長)

【委 員】

芝 昭彦(弁護士)

岩田 知孝(弁護士 公認会計士)

特別調査委員会は、和田法律事務所及びTMI総合法律事務所所属の弁護士22名に調査補助を依頼するとともに、デジタル・フォレンジック等について株式会社KPMG FASに所属する専門家を起用した。

〔調査期間〕

2019年12月13日から2020年3月11日まで

〔委嘱事項〕

東京国税局による税務調査で、納品の事実が確認できない取引がある旨の疑義があるとの指摘を受けたことから、社内調査を行った結果、事実経緯の正確な把握には、取引先を含めたより広範かつ深度ある調査が必要な状況にあるとの認識を持つに至り、特別調査委員会を設置することを決定した。

その目的は、納品の事実が確認できない取引及びこれに類似する不正の有無・態様の確認並びに原因究明等、連結財務諸表への影響額の算定及び判明した事実を踏まえた再発防止策に関する助言である。

〔調査結果〕

 

【ネットワンシステムズ株式会社の概要】

ネットワンシステムズ株式会社(以下「ネットワン」と略称する)は、1988(昭和63)年2月設立。情報インフラ構築と関連サービスの提供を主たる事業とする。売上高181,935百万円、経常利益13,258百万円、資本金12,279百万円、従業員数2,294名(いずれも訂正前2019年3月期実績)。本店所在地は東京都千代田区。東京証券取引所1部上場。会計監査人は有限責任監査法人トーマツ(以下「トーマツ」と略称する)。

 

【中間報告書に関する説明会における質疑応答】

ネットワンは、3月5日になって「特別調査委員会の中間報告書受領及び公表に関する説明会 質疑応答(要旨)」を公表した。質疑応答の要旨は次のとおりである。

➤ネットワンの架空売上高が他社と比べて少ないこと/利益率が高いこと

「純額取引」が含まれるため他社より売上高が少なく、利益率は高くなる

ネットワンを介さない架空取引パターンが存在している

➤他社との債権・債務はどうなっているか

債権・債務については確認済み

資金の清算については、各社の報告が出そろってから話し合うことになる

現段階では、会社の業績への影響は軽微ではないか

➤前回の再発防止策の効果がなかったこと

前回とは全く違う方法ですり抜けられてしまったという事実

伝票が偽造されて社外で案件名がすり替えられる、それが回って当社に元の案件名として戻ってくる等は、想定していなかった

➤A氏について

動機は明確には分かっていない

中途採用で2008年入社、マネージャーになったのは2014年

営業マンとしての評価は高かった

 

【調査最終報告書の概要】

特別調査委員会による「納品実体のない取引に関する調査最終報告書(開示版)」のうち、中間報告書の記載のない項目について、その概要を検証する。

1 新たに判明した不正取引

本連載第97回で取り上げた中間報告書段階で全容が解明されていなかった、ネットワンから戊社への架空発注による他社への資金流出問題について、特別調査委員会は、次の2つの商談を特定した。

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連載目次

会計不正調査報告書を読む

第1回~第140回 ※クリックするとご覧いただけます。

第141回~

筆者紹介

米澤 勝

(よねざわ・まさる)

税理士・公認不正検査士(CFE)

1997年12月 税理士試験合格
1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

【著書】

・『新版 架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2019)

・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

【寄稿】

・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

【セミナー・講演等】

一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
「会計不正の早期発見
――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

公益財団法人日本監査役協会主催
情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

株式会社プロフェッションネットワーク主催
「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

 

関連書籍

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公認会計士 鈴木広樹 著

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社会福祉法人の不正防止・内部統制・監査

全国社会福祉法人会計研究会 編著

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