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M&Aに必要なデューデリジェンスの基本と実務 「むすびに代えて」~「財務・税務と法務との対話と協働」再び~(前編:弁護士はなぜ『計算書類の適正』を表明保証させるのか?)

M&Aに必要な デューデリジェンスの基本と実務   弁護士法人ほくと総合法律事務所 パートナー 弁護士 石毛 和夫   ◆むすびに代えて◆ ~「財務・税務と法務との対話と協働」再び~ 【前編】 「弁護士はなぜ『計算書類の適正』を表明保証させるのか?」   長きにわたった本連載も、今回からいよいよ最終コーナーに入る。 本連載ではこれまで、「財務・税務デューデリジェンス編」と「法務デューデリジェンス編」とを姉妹編として、両者の協働の重要性、そして両者を繋ぐものとしての依頼者=当事者との協働の重要性をたびたび強調してきた。 そこで本連載の最終テーマとして、こうした協働が、「買収契約書」という1つの「締めくくり」の場面でどう機能するのか、いささか風変わりな趣向ではあるが、「会社担当者と専門家たちとの架空の対話」という形で紹介したいと思う。 *  *  * (※) 「表明保証条項」については、法務編【第8回】を参照。 (つづく)

#No. 337(掲載号)
#石毛 和夫
2019/09/26

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例39】アスクル株式会社「ヤフー株式会社からの社長退陣要求と、アスクルからの提携解消協議申入れのお知らせ」(2019.7.17)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例39】 アスクル株式会社 「ヤフー株式会社からの社長退陣要求と、 アスクルからの提携解消協議申入れのお知らせ」 (2019.7.17)   事業創造大学院大学准教授/公認会計士 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、アスクル株式会社(以下、「アスクル」という)が2019年7月17日に開示した「ヤフー株式会社からの社長退陣要求と、アスクルからの提携解消協議申入れのお知らせ」である。 アスクルの議決権を45%有するヤフー株式会社(以下、「ヤフー」という)が、8月のアスクルの定時株主総会において、アスクルの岩田彰一郎代表取締役社長(以下、「岩田氏」という)の取締役再任に反対の議決権を行使するというので、アスクルは、ヤフーに対して、ヤフーとの業務・資本提携契約の解消を申し入れることにした、という内容である。 本件に関するマスコミの報道は、どちらかというと、「強引なヤフーに対して、可哀想なアスクル」といった感じで、ヤフーが悪者であるかのような論調が多かったように思われる。しかし、そうした捉え方は正しいのだろうか。   2 何か問題があるのか? アスクルは、今回の開示において、ヤフーが岩田氏の取締役再任に反対の議決権を行使することについて、「ガバナンスプロセスを逸脱する行為」であるとして、次のように記載している。 このアスクルの主張は、「取締役を誰にするかは、指名・報酬委員会が決めるから、株主であっても、それに口出しをするな」というものであり、ガバナンスを理解していない主張であると言わざるを得ない。 取締役を選任するのは株主総会である。ヤフーは、2019年7月18日に開示した「アスクル株式会社の本日(2019年7月18日)開催の記者会見について」において、「アスクルの数年に渡る業績低迷の早期回復に向けて、株主権の行使を考えています」と記載しているように、正当に株主権を行使しているだけであり、「ガバナンスプロセスを逸脱する行為」などではないはずである。   3 独立役員が「独立」していないとしたら? その後、ヤフーは、2019年7月24日に「アスクル株式会社の第56回定時株主総会における取締役選任議案(第2号議案)に対する、当社の議決権行使のお知らせ」を開示した。その本文は次のとおりである。岩田氏だけでなく、独立社外取締役3名の取締役再任にも反対の議決権を行使したのである。 これに対して、アスクルは、2019年7月28日に「アスクル株式会社独立役員会による『ヤフーによるアスクルの企業統治を蹂躙した議決権行使を深く憂慮する声明』提出について」を開示したのだが、それに添付された「ヤフーによるアスクルの企業統治を蹂躙した議決権行使を深く憂慮する声明」には、次のような記載がある。 確かに独立社外取締役には、支配株主の利益が優先され、少数株主の利益が犠牲にされるような経営が行われないように監督するという役割が期待されていると思われる。しかし、もしも独立社外取締役が、そうした役割を果たしていない場合、どうしたらいいのだろうか。例えば、業績が低迷し、その責任があるにもかかわらず、退任しようとしない経営者を支持し、少数株主を含めた全ての株主の利益を損なうような判断をしている、形式的には独立しているが、実質的には独立していない社外取締役がいた場合、株主はどうすべきなのだろうか。 ヤフーの開示を見る限り、同社は、株主として普通の判断を行っているだけである。ヤフーにとっては、アスクルの独立社外取締役が「独立」しているようには見えなかったのだ。それに対して、アスクル独立役員会の主張は、これまた「独立社外取締役は神聖な存在であり、株主であろうと、誰も辞めさせることはできない」と言っているようなものである。   4 親子上場の問題か? 本件については、親子上場の弊害が露呈したものだとする見解がある。例えば、2019年8月5日付の日本経済新聞朝刊の社説は、「看過できなくなってきた親子上場の弊害」と題して、本件を論じている。しかし、果たしてそうなのだろうか。 親子上場の弊害とは、親会社が自社の利益を優先し、子会社の利益を犠牲にするため、子会社の少数株主の利益が損なわれてしまうことである。本件の場合、ヤフーは、アスクルの利益を犠牲にして、アスクルの少数株主の利益を損なっているだろうか。開示を見る限り、そう捉えるのは困難であるかと思われる。 なお、ヤフーは、新しい代表取締役社長はアスクル側で選んでもらい、自社から派遣するつもりはないとしているし(2019年7月18日開示)、新しい独立社外取締役の選任についても、アクスルにおける指名プロセスの独立性を前提としながら、最大限協力するとしている(2019年7月29日開示「アスクルの第56回定時株主総会における取締役選任議案(第2号議案)の議決権行使について」)。また、本稿では触れなかったLOHACO事業の譲渡についても、今後も申し入れる方針はないとしている(2019年7月18日開示)。   5 そもそも株式会社とは ヤフーは、2019年7月31日に開示した「アスクルにおける第56回定時株主総会および『ヤフー株式会社に対する当社株式の売渡請求の件』を目的とする取締役会について」において、「株主総会が、株式会社における最高の意思決定機関である」として、次のように記載している。 株式会社における最終的な意思決定権者は株主であり、株主が複数いる場合は多数派の意見が採用されるというのが、株式会社の基本原則である。親子上場でなくても、本件と同様の事態は生じうるし(例えば、複数の株主が結託して、彼らの意見が多数派となれば、その意見が通る)、独立社外取締役が適任か否かは、最終的には株主総会で判断せざるを得ない。 そうした基本原則を受け入れられないのならば、少なくとも上場会社の経営に関わるべきではない。アスクルの主張は、株主に対して「金は出しても口を出すな」と言っているのと等しい。 (了)

#No. 337(掲載号)
#鈴木 広樹
2019/09/26

《速報解説》「特定事業継続力強化設備等の特別償却(中小企業防災・減災投資促進税制)」に関する通達が新設~事業者の判定・取得価額の判定等、適用要件の詳細が明らかに~

《速報解説》 「特定事業継続力強化設備等の特別償却 (中小企業防災・減災投資促進税制)」に関する通達が新設 ~事業者の判定・取得価額の判定等、適用要件の詳細が明らかに~   公認会計士・税理士 新名 貴則   令和元年(2019年)9月11日、各国税局長及び沖縄国税事務所長に対して、国税庁長官名で「租税特別措置法関係通達(法人税編)等の一部改正について(法令解釈通達)」が通達された。 この中で、令和元年度税制改正において創設された「特定事業継続力強化設備等の特別償却制度(中小企業防災・減災投資促進税制)」に関する通達が新設されている。ここでは、その内容について解説する。   1 税制の概要 ① 概要 中小企業強靭化法に基づく「事業継続力強化計画」又は「連携事業継続力強化計画」の認定を受けた青色申告書を提出する中小企業者等が、当該計画に基づいて、指定期間内に一定の設備(特定事業継続力強化設備等)への投資を行う場合に、20%の特別償却を認める制度である。 ② 適用要件 当該税制を適用するためには、具体的には次の要件を満たすことが必要となる。 各要件の詳細については、拙稿「「特定事業継続力強化設備等の特別償却(中小企業防災・減災投資促進税制)」の解説 【第1回】「特別償却の適用要件」」を参照のこと。 《対象事業者》 《対象設備》   2 新設された通達 「特定事業継続力強化設備等の特別償却制度(中小企業防災・減災投資促進税制)」を適用するには、上記の要件を満たす必要があるが、今回新設された通達により次の点が明らかにされている。 ◎中小企業者の判定 事業者が中小企業者に該当するか否かは、特定事業継続力強化設備等の取得等をした日及び事業供用した日の現況による。 ◎適用除外事業者の判定 前3事業年度の平均所得額が15億円超の法人は、適用除外となる(平成31年4月1日以後に開始する事業年度より)。 当該判定は正当な金額により行う必要があるので、修正申告等により金額変更があった場合には、改めて判定を行う必要がある。 ◎取得価額の判定単位 次のものは機械及び装置本体と合算の上、取得価額要件の判定を行うことができる。 ⇒ 機械及び装置本体と同時に設置する附属機器で、本体と一体になって使用するもの。 ◎圧縮記帳をした場合の取得価額 圧縮記帳を行った特定事業継続力強化設備等については、圧縮記帳後の金額に基づいて取得価額要件の判定を行う。 (了)

#No. 336(掲載号)
#新名 貴則
2019/09/25

プロフェッションジャーナル No.336が公開されました!~今週のお薦め記事~

2019年9月19日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.336を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2019/09/19

日本の企業税制 【第71回】「各府省庁の「令和2年度税制改正要望」を概観する」

日本の企業税制 【第71回】 「各府省庁の「令和2年度税制改正要望」を概観する」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴   8月末に、各府省庁から令和最初となる令和2年度税制改正要望が出揃った。 今回の要望項目数は、単純合計で、国税196項目、地方税191項目、重複排除ベースで、国税141項目、地方税141項目であった。なお、廃止・縮減項目数は単純合計・重複排除ベースともに、国税2項目、地方税3項目であった。   〇土地・住宅関係 今回の改正では、土地・住宅関係の期限切れ措置が多数あることから、国土交通省の要望が目立つ。 まず、国税関係では、所得税・法人税のみならず個人住民税・法人住民税も含めて土地等の譲渡益に対する追加課税制度(重課)の停止措置の延長はもとより、所得税・個人住民税における特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例措置・居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除制度・特定の居住用財産の譲渡損失の繰越控除制度の延長、登録免許税における住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る特例措置の延長などが要望されている。 また地方税関係では、新築住宅に係る固定資産税の減額措置の延長は国土交通省が、認定長期優良住宅の不動産取得税・固定資産税の減額措置の延長は国土交通省・環境省が要望している。既存住宅の耐震・バリアフリー・省エネ・長期優良住宅化リフォームに係る固定資産税の特例措置の延長は、国土交通省の他に経済産業省・環境省も要望している。   〇金融関係 金融庁の要望では、家計の安定的な資産形成の促進と経済成長に必要な成長資金の供給拡大の両立を図る観点から、NISA制度(一般・ジュニア・つみたて)の恒久化、中でもつみたてNISAについては、開始時期にかかわらず20年間の積立期間が確保されるよう制度年限(2037年)の延長を要望している。さらに、企業が従業員に対して一定の要件を満たす規約に基づき支給する、つみたてNISA 奨励金については、毎月1,000 円を限度として非課税とすること(3年の時限措置)も要望している。 また、上場株式の相続税評価に関して、課税時期(死亡日)の前年の年平均株価、課税時期の属する月以前2年間の平均株価も対象とすることを要望している。   〇法人関係 (1) 連結納税制度の見直し 経済産業省の要望の筆頭には連結納税制度の見直しが掲げられた。 具体的には、「企業間連携を促し、機動的な事業再編の円滑化・効率的なグループ経営を後押しするため、連結グループへの加入時の時価評価課税や繰越欠損金の切捨ての対象を縮小するなどの見直しを行う。その際、研究開発税制や外国税額控除等、連結グループ一体となって活用されるべき税制措置の取扱いや親会社繰越欠損金の取扱いを堅持する。」とされている。 政府税調の連結納税制度に関する専門家会合の報告書では、連結納税開始時・連結グループへの加入時の時価評価課税の対象については現行制度よりも限定する方向が示されている一方、連結納税開始前の親会社の欠損金については、現行の特定連結子法人と同様に当該親会社の所得の範囲でのみ繰越控除できるようにするという考え方も提示されているところである。また、研究開発税制や外国税額控除等の連結調整計算については、個別計算に戻す考え方も記載されている。年末に向け、これらの論点の帰趨が注目される。 (2) 中小企業関連税制 中小企業税制関係では、まず、期限切れ租税特別措置については、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例措置の延長は経済産業省・厚生労働省・総務省から、交際費の課税の特例(中小法人における損金算入の特例)措置の延長は経済産業省・厚生労働省から、また、中小企業・小規模事業者の再編・統合等に係る登録免許税の軽減措置の延長は経済産業省・厚生労働省・農林水産省から出されている。 平成30年度税制改正で中小法人の事業承継税制の10年間の特例(非上場株式についての相続税・贈与税の納税猶予の特例)が設けられ、平成31年度税制改正では個人事業者の事業承継税制が創設されたが、今回の各省庁の要望では、第三者に対する事業承継が課題として挙げられている。 後継者不在の中小企業の経営者が、株式譲渡や事業譲渡等のM&Aを行う際の譲渡益に係る税負担の軽減を求める要望が、経済産業省をはじめ国土交通省、農林水産省、厚生労働省から出されている。また、非上場株式についての相続税・贈与税の納税猶予の特例に関しても、民法改正(遺留分)を踏まえた確定事由の適正化等の要望が経済産業省から出されている。厚生労働省からは、医師少数区域等における医療法人の承継税制の創設が要望されている。 既存企業とベンチャー企業とのオープンイノベーションを促進し国際競争力を強化する観点から、一定の要件を満たしたベンチャー投資を行う既存企業に対する措置を経済産業省が連結納税制度の見直しと並ぶ重点要望項目として掲げている。また、エンジェル税制の要件緩和は、経済産業省・総務省の要望である。 (3) 企業関連の租税特別措置 最も多くの省庁が要望しているのは、企業年金等・退職等年金給付の積立金に対する特別法人税の撤廃又は課税停止措置の延長である。金融庁、経済産業省、農林水産省、厚生労働省、財務省、総務省、文部科学省がそろって要望している。 その他、法人税関係の租税特別措置では、主なところでは、長期保有土地等に係る特定事業用資産の買換特例の延長が国土交通省・経済産業省から、海外投資等損失準備金の延長が経済産業省から、省エネ再エネ高度化投資促進税制の拡充・延長が経済産業省・国土交通省・農林水産省・環境省から要望されている。 総務省は、5G投資促進税制の創設を新規要望している。要望によれば、平年度ベースの減収見込額が、法人税・所得税で220億円弱、法人住民税・事業税・固定資産税で90億円強とされている。 また、地方創生の関係では、内閣官房・内閣府が、期限切れとなる企業版ふるさと納税について、控除限度額を2倍にする等、制度を拡充した上で延長するよう要望している。地方拠点強化税制についても雇用増加要件の緩和等の拡充も含め延長要望が内閣府から出されている。 (了)

#No. 336(掲載号)
#小畑 良晴
2019/09/19

これからの国際税務 【第15回】「デジタル経済下での市場国課税権の拡大」-過去の移転価格ルール改定からみた作業計画の本質-

これからの国際税務 【第15回】 「デジタル経済下での市場国課税権の拡大」 -過去の移転価格ルール改定からみた作業計画の本質-   21世紀政策研究所 国際租税研究主幹 青山 慶二   1 デジタル課税ルールについての長期的解決策の見通し デジタル経済への国際課税ルールについては、去る6月のG20サミットで、市場国の課税権を拡大する方向での作業計画への支持が表明され、2020年の最終報告に向けOECDでの細部の検討が行われている。 本稿では、課税権の配分に関し市場国の発言権が拡大してきた沿革を振り返り、今回のデジタル経済対応を契機とした課税ルールの見直しは、突然出現したものではなく、これまでのルール改定のトレンド、特に独立企業原則の下での移転価格ルールの見直しの延長線上に位置づけられることを確認するものである。   2 市場の特性を考慮した移転価格税制における課税権配分の検討 最初にこのテーマが論じられたのは、低コストの製造地開拓に伴い享受する利益(ロケーションセービングがもたらす超過利益)を親会社所在地と製造地のどちらが享受するかという場面であった。この場合は、コスト削減に伴い発生する超過利益は、完全競争条件下においては先行企業に与えられる経過的な利益に過ぎないとして、製造地における独立企業間比較対象取引の選択を適正に行うことにより、いわば片側検証によって製造地への所得配分問題は解決されると整理された。 次に登場したのが、製造地を超えて市場提供国の有利な諸条件がもたらす超過収益の帰属をめぐる議論である。2010年代に入って国連の税の専門家委員会で中国によって初めて提起された課題であり、市場の特性を市場管轄地に所在する無形資産と実質的に同視して、超過収益に対する課税権配分を市場国に配分するよう求める主張であった。 ここで主張された超過収益の源となる市場の特性には、市場国が設定する政府規制や顧客のブランド志向、更には高度成長下での旺盛な購買力など、他の市場にみられない有利な市場条件(ロケーション・スペシフィック・アドバンテージ)全般が視野に入れられており、それが生み出す他の市場と差別化される超過収益について、現地の販売子会社への帰属を求めるものであった。なお、この過程においては、無形資産の所有権は、使用される地域(特許権などのケース)や顧客の評価(ブランドなどのケース)によって所得源泉地に徐々に移転するという理論構成も併せて主張されている。 この問題はその後OECDの移転価格ガイドラインでも取り上げられることとなったが、その処方箋については、基本的にはロケーションセービングと同様、比較対象取引の選択(この場合には販売機能に関する独立企業間取引の選択)により解決されるべきと、伝統的な移転価格の片側検証メカニズムの下で総論的には整理されている。ただし、中国は国連の移転価格マニュアルにおいて、国内法上独自の課税手法を採用することにつき留保している。   3 電子経済課税で検討されている市場国課税権 現在OECDで検討されている作業計画では、電子経済対応の第1の柱として、ネクサス(課税上のつながり)と利益配分に関する国際ルールの改定を目指す中で、ユーザー参加或いはマーケティング上の無形資産を根拠として、市場国への超過収益に対する新たな課税権配分を模索している。 米国が主張するマーケティング上の無形資産を根拠とする提案は、ブランド等につき市場国での一定の無形資産価値を認めたうえで超過収益の一部をそれに帰属させるとするものであり、上記のロケーション・スペシフィック・アドバンテージへの課税権付与を部分的にではあるが追認するものといえる。この整理は、移転価格税制を巡るこれまでの経緯との連続性も認められないわけではなく、課税権配分に関し専門家の理解を比較的得やすいとも考えられる。 ただし、電子経済は物理的なネクサスを必要としないため、ネクサスの有する市場国での個別会計情報に依存してきた伝統的な利益配分(個別の比較対象取引によるもの)は、電子経済では期待できない。超過収益の市場国配分割合をどのように決定するべきか、ビジネスモデルごとの配分率の差異をどのように斟酌するかなど、統合アプローチの合意に至る過程での検討にはまだ困難が予測される。 もっとも、130ヶ国に達する包括的枠組の下での合意のためには、超過収益の市場国配分に当たっては、一定の簡素化された手法が必要と認識されており、残余利益分割の理念を損なわない範囲でどのような簡素化策に到達できるのかは、政治的な決断も必要とされると思われ、注意深く来年に向けた議論の動向を見守る必要があろう。 OECDによれば、今秋には再度のパブリックコンサルテーションが予定されているようであり、そこでのドラフトがどのように提示されるかが注目される。 (了)

#No. 336(掲載号)
#青山 慶二
2019/09/19

相続税の実務問答 【第39回】「第二次相続があった場合の相続税の申告期限」

相続税の実務問答 【第39回】 「第二次相続があった場合の相続税の申告期限」   税理士 梶野 研二   [答] あなたは伯父様である被相続人Aの相続人であるお父様Cの相続人として、被相続人を伯父様Aとする相続税の申告書を提出しなければなりません。 この申告書は、あなたがお父様の相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に提出しなければなりませんが、その日は、お父様Cから伯父Aの相続人としての地位を承継したことをあなたが知った日と解することが相当であると考えられます。その日が今年(令和元年)の8月1日だとしますと、相続税の申告書の提出期限は、令和2年6月1日となります。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 相続税の申告書の提出期限 相続の開始があった場合、相続人(包括受遺者を含みます)は、被相続人に課されるべき又はその被相続人が納付し、若しくは徴収されるべき国税を納める義務を承継することとされています(通法5①)。 したがって、ある人に相続が開始し(第一次相続)、その者の財産を相続した相続人(第一次相続人)が亡くなった場合(第二次相続)には、第二次相続の相続人(第二次相続人)が、第一次相続人が申告し納付すべきであった相続税を納付する義務を承継することとなります。 相続又は遺贈により財産を取得した者は、被相続人に相続が開始したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告書を提出し(相法27①)、その申告書に記載した相続税額を納付することとされています(相法33)が、相続又は遺贈により財産を取得し、相続税の申告書を提出しなければならない者(第一次相続人)が、相続税の申告書を提出せずに亡くなった場合には、その者の相続人(包括受遺者を含みます)(第二次相続人)が、第一次相続に係る第一次相続人の申告及び納付の義務を承継することとなります。 この場合、その相続税の申告書は、第二次相続人が第一次相続人について相続(第二次相続)の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に提出し(相法27②)、申告書に記載した相続税額を納付することとなります(相法33)。   2 「相続の開始があったことを知った日」の意義 上記1のとおり、相続税の申告書を提出すべき者が当該申告書の提出期限前に当該申告書を提出しないで死亡した場合には、その者の相続人(包括受遺者を含みます)は、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に、その死亡した者に係る相続税の申告書を提出しなければならないこととされています。 この「相続の開始があったことを知った日」とは、自己のために相続の開始があったことを知った日をいうものとされ(相基通27-4)、一般的には、被相続人死亡の事実及び自分がその被相続人の相続人であることを知った日と解されます。 そうしますと、第一次相続に係る相続人が、第一次相続があったことを知らずに亡くなった場合、つまり、第一次相続に係る被相続人が亡くなった事実及び自分がその相続人であることを知らずに亡くなった場合においても、第二次相続人が第二次相続の開始を知った日(第二次相続に係る被相続人が死亡した事実と、自己がその被相続人の相続人であることを知った日)をもって第一次相続に係る相続税の申告書の提出期限の起算日となります。 しかしながら、第二次相続に係る相続人も、第二次相続に係る被相続人が第一次相続に係る相続人であったことを知らないときに、第二次相続の開始を知った日の翌日から起算して10ヶ月以内に第一次相続に係る相続税の申告書の提出を求めることは、当該相続人に不可能を強いることになりかねず、適当ではないと考えられます。 最近、この点に関し参考となる次のような最高裁判決が出されました。 (出典) 裁判所ホームページ(最高裁判所判例集)より一部抜粋 この最高裁判決は、熟慮期間(相続の承認・放棄の意思表示をすることができる期間)の起算日に関するもので、第二次相続に係る相続人が第一次相続の放棄をすることができる熟慮期間の始期である「相続の開始があったことを知った時」を、相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が、当該死亡した者からの相続により当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を自己が承継した事実を知った時と解することにより、第二次相続に係る相続人にとって事実上相続の承認・放棄の判断を開始することができることとなった時とするものです。 第二次相続に係る被相続人の納税義務を承継した第二次相続に係る相続人の第一次相続に係る相続税の申告書の提出期限の起算日である「第二次相続に係る相続人が第一次相続に係る相続人について相続の開始があったことを知った日」(相法27②)についても、この最高裁判所判決の考え方に準じて、第二次相続に係る相続人が第一次相続に係る相続税の申告の準備を開始することができることとなった日、すなわち、第二次相続に係る被相続人が第一次相続に係る相続人であることを第二次相続に係る相続人が知り、自分がその地位を承継したことを知った日と解することが相当であると考えられます。   3 ご質問の場合 伯父様Aの相続をその相続人であるBが適法に放棄したことから、あなたのお父様Cが伯父様の相続人となりました。お父様は、伯父様の唯一の相続人ですから、伯父様のすべての財産及び債務を相続することになります。あなたのご説明に従って相続税の課税価格の合計額を見積もりますと、相続税の基礎控除額を超えると見込まれますので、お父様には伯父様からの相続について相続税の申告及び納付の義務があったと考えられますが、お父様は相続税の申告書を提出せずに亡くなられていますので、お父様の相続人であるあなたが、その義務を承継することになります。 なお、Bの相続放棄により、あなたのお父様Cが伯父様Aの相続人となったわけですが、お父様はそのことを知らずにお亡くなりになられました。今年(令和元年)の8月1日に、金融機関から伯父様の借入金に係る督促状が届いたことを契機として、あなたはお父様が伯父様の相続人であり、その地位を承継したあなたに被相続人を伯父様とする相続税の申告及び納付の義務のあることを知ったとしますと、同日をもって被相続人を伯父様とする相続税の申告書の提出期限の起算日とすることが相当であると考えられます。そうしますと相続税の申告書の提出期限は、令和2年6月1日となります。 (了)

#No. 336(掲載号)
#梶野 研二
2019/09/19

〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第6回】「M&A後の出向に係る税務上の留意点」

〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第6回】 「M&A後の出向に係る税務上の留意点」   税理士 中尾 隼大   ○●○● 解 説 ●○●○ (1) M&Aの活性化とその後の管理 近年、中小企業のM&Aが活性化している。中小企業にとってもM&Aは、売手は後継者不足の解消、買手は成長戦略の一環として、双方にとってメリットがある。このようなM&Aの活性化については、日本全国において後継者不足が深刻化していることを背景としている。 一般に、中小企業は所有と経営が分離しておらず、M&Aにおける売手は株主兼代表者である。代表者の後継者が不在であることから、M&Aが選択されるのである。 すなわち、売手は対象企業の雇用を維持し、事業継続を望んで株式を譲渡するため、M&Aの終了後は買手から対象企業へ経営や管理職を担う人材を提供し、役員に就かせることが常だろう。したがって、売手である代表者は完全に辞任するのが道理ではあるが、代表者の人柄や人脈など対象企業に対する定性的な貢献を維持するため、顧問等の形で一定期間留任するケースも見受けられる。 ここで、法人同士によるM&Aにおいて、通常であれば完全支配関係が生まれるため(※1)、対象法人と買手は親子会社としての関係になる。したがって、人材を提供する場合、税務上は主として出向に係る税務上の取扱いを確認することとなる。 (※1) 内国法人をM&Aにより100%子会社化した場合、グループ法人税制の適用対象となり、寄附金・受贈益の全額がそれぞれ損金不算入・益金不算入となる等の規制がある。以下、完全支配関係を前提とする。 買手である親会社(以下、「出向元法人」)から従業員を出向させ、対象会社である子会社(以下、「出向先法人」)にて役員に就く場合の給与支給は、大別して、①出向元法人が当該出向者に直接人件費を支給し出向先法人から出向負担金を受け入れるパターンと、②出向先法人が当該出向者の人件費を負担するパターンに分けることができる。 以下、それぞれについて解説する。   (2) 出向元法人が出向者に直接人件費を支給するケース 出向元法人が在籍出向という形で従業員を出向させ、人件費は引き続き出向元法人が従業員に支給しながら、出向先法人に勤務する場合である。グループ内出向の場合、こちらのパターンの方が多いと思われる。 この場合、当該出向者が労務を提供するのは出向先法人である。すなわち、出向先法人側が何も負担しなければ、本来負担すべき人件費相当額を出向元法人に肩代わりさせたこととなり、税務上、寄附金の額となる(法法37⑦)。 したがって、出向先法人は出向元法人に対し、出向負担金や経営指導料名目で対価を支出することとなるだろう。このような場合、当該支出したものは、実質的に出向者の給与負担である限り、税務上は出向者に対する給与として取り扱われる(法基通9-2-45)。 そして、出向者が出向先法人にて役員に就任した場合、次の①及び②の要件を満たす場合に限り、その支出は役員給与の損金不算入の規定が適用されることとなる(法基通9-2-46)。 したがって、出向負担金等を支出する場合、定期同額給与や事前確定届出給与等の規定に留意することで損金算入が可能となる。なお、上記①及び②の要件を満たさない場合、事前の定めがない役員給与とされ損金不算入となる(※2)。 (※2) 本連載の【第3回】「代表取締役に対する不相当高額給与の指摘」にて触れた通り、事前の定めがないという形式基準によって損金不算入となる。 なお、出向先法人が、出向元法人が出向者に対して支給すべき給与額を超えて給与負担金を支出している場合、当該超える部分は給与負担金としての性格はないため、合理的な理由がない場合には、出向元法人に対する寄附金として取り扱われるため留意されたい。   (3) 出向先法人が人件費を支給するケース 出向先法人が直接出向者に対して人件費を負担し、出向元法人から当該出向者への支給をしないケースである。 出向者が出向先法人で役員に就任している場合、出向先法人が株主総会等で役員給与額を定め、適正に運用することが必要となり、自社の役員に支給する手続きとまったく同様の取扱いとなる。   (4) 両社が負担するケース(較差補填を行うケース) 上記の通り、グループ内の法人に従業員を出向させる場合、出向元法人に在籍しながら出向するという在籍出向形態を選択するケースが多いと思われる。在籍出向を選択する理由は、出向元法人との雇用関係や労働条件を維持して出向者のモチベーションを高め、異なる現場で多くの経験を積ませることにある。 特にM&Aにて買収した企業であれば、企業文化や財務体質そのものが出向元法人と異なるため給与水準も当然異なり、出向者が役員として赴任しても出向元法人における従業員と同水準の役員報酬が望めない場合もある。 このような場合、出向元法人が支出した較差補填の損金算入を認める根拠が法基通9-2-47である。当該通達は、端的にいえば「出向先法人が負担すべき給与水準を負担している限り、出向先法人の給与水準を超える部分のみ出向元法人が負担してよい」という通達である。その趣旨として、出向元法人は出向者に対して労働条件を保証する必要があり、給与の較差部分について出向元法人が負担すべきである旨が説かれている。すなわち、出向元法人との雇用契約があるため、当該負担した金額は出向元法人において損金の額に算入されるべきという考えである(※3)。 (※3) 佐藤友一郎編著『法人税基本通達逐条解説 九訂版』(税務研究会出版局、2019)883頁。 較差補填について税務上問題とならないために、出向先法人の給与水準を明らかにし、出向先法人が負担すべき額を負担することが求められる。出向先法人が負担すべき金額を負担せず、その部分を出向元法人が負担していた場合、その部分が出向元法人から出向先法人への寄附金の額であるという指摘が行われることとなる。 なお、法基通9-2-47の適用は国内・海外の出向を問わないが、海外出向者の較差補填について言及される場合が多い。したがって、M&Aの対象が海外企業であった場合の出向については、現地国の給与水準(※4)や出向者と同ポジション(階級や勤務歴等)にいるプロパー役員・社員の給与水準を把握し、給与規程等の整備をしておくことが肝要である。 (※4) 日本貿易振興機構(JETRO)HP等で把握可能である。 (了)

#No. 336(掲載号)
#中尾 隼大
2019/09/19

基礎から身につく組織再編税制 【第8回】「適格合併(共同事業)」

基礎から身につく組織再編税制 【第8回】 「適格合併(共同事業)」   太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太   今回は、共同事業を行うための適格合併の要件について解説します。   1 共同事業を行うための適格合併の要件 共同事業を行うための適格合併の要件は、次の6つです。   2 金銭等不交付要件 「金銭等不交付要件」とは、被合併法人の株主に合併法人株式以外の資産が交付されないことをいいます(法法2十二の八)。 ただし、次の①から④を交付しても、金銭等不交付要件には抵触しません。 (※) ①~④の詳細は、本連載の【第6回】を参照。   3 従業者引継要件 (1) 従業者引継要件とは 「従業者引継要件」とは、被合併法人の合併直前の従業者のうち、その総数のおおむね80%以上に相当する数の者が合併後に合併法人の業務((2)参照)に従事することが見込まれていることをいいます(法令4の3④三)。 (2) 「合併法人の業務」について 前回解説した「支配関係がある場合の適格要件」と同様に、合併法人との間に完全支配関係がある法人の業務と合併後の次の適格合併に係る合併法人の業務も合併法人の業務に含まれます。   4 事業継続要件 「事業継続要件」とは、被合併法人の合併前に行う主要な事業が、合併後に合併法人において引き続き行われることが見込まれていることをいいます(法令4の3④四)。 前回解説した「支配関係がある場合の適格要件」と同様に、合併法人との間に完全支配関係がある法人、合併後の次の適格合併に係る合併法人において、被合併法人の主要な事業が引き続き行われることが見込まれる場合も含まれます。   5 事業関連性要件 (1) 事業関連性要件とは 「事業関連性要件」とは、被合併法人の合併前に行う主要な事業のうちのいずれかの事業(被合併事業)と合併法人の合併前に行ういずれかの事業(合併事業)とが相互に関連するもの((3)参照)であることをいいます(法令4の3④一)。 (2) 「事業」とは 事業関連性要件における「事業」とは、次のように、固定施設を有していること、従業者を有していること、売上が生じていることという3つの要件を満たすものをいいます(法規3①一)。 (3) 「相互に関連する」とは 事業関連性要件における「相互に関連する」とは、次のような場合をいいます(法規3①二・②)。 【具体例①】 事務用品の製造卸売業を行う法人とその事務用品の販売業を行う法人が合併し、それぞれの事業が一体となってユーザーに直結した流通網の構築を目指して合理化を図るもの(何らかの相乗効果が生ずるようなもの)については、事業関連性があると判定されます(国税庁質疑応答事例「事業関連性要件における相互に関連するものについて」参照)。   6 事業規模要件又は経営参画要件 冒頭述べた通り、共同事業を行うための適格合併の要件として、事業規模要件又は経営参画要件のいずれかを満たすことが求められています(法令4の3④二)。 (1) 事業規模要件 「事業規模要件」とは、被合併法人の合併前に行う主要な事業のうちのいずれかの事業と合併法人の被合併事業と関連する合併事業のそれぞれの売上金額、従業者の数、被合併法人と合併法人のそれぞれの資本金の額若しくはこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね5倍を超えないことをいいます。 事業規模要件は、規模があまりに異なる合併は共同で事業を行うものとは認められないという趣旨により設けられたもので、事業の規模の割合がおおむね5倍を超えないかどうかは、いずれか1つの指標が要件を満たすかどうかにより判定します(法基通1-4-6(注))。 (2) 経営参画要件 ① 経営参画要件とは 「経営参画要件」とは、合併前の被合併法人の特定役員(②参照)のいずれかと合併法人の特定役員のいずれかとが、合併後に合併法人の特定役員となることが見込まれていることをいいます。 事業規模要件を満たさない場合でも、被合併法人と合併法人の両方の経営陣が合併後に経営参画しているものは共同で事業を行うためのものとして認めるという趣旨により設けられています。 ② 特定役員とは 「特定役員」とは、社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者(③参照)で法人の経営に従事している者をいいます。 ③ 「これらに準ずる者」とは 「これらに準ずる者」とは、役員又は役員以外の者で、社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役又は常務取締役と同等に、法人の経営の中枢に参画している者をいいます(法基通1-4-7)。 【具体例②】 下図のように、会社法上の役員ではないC事業本部長が、被合併法人において経営の中枢に参画しており、合併後、合併法人においても事業本部長として合併法人の経営の中枢に参画する見込みである場合には、経営参画要件を満たすこととされています(国税庁質疑応答事例「特定役員引継要件(みなし役員)の判定」参照)。 (出典) 国税庁質疑応答事例「特定役員引継要件(みなし役員)の判定」   7 株式継続保有要件 (1) 株式継続保有要件とは 「株式継続保有要件」とは、合併により交付される合併法人の株式又は合併親法人株式のいずれか一方の株式(議決権のないものを除きます)のうち、支配株主((2)参照)に交付されるものの全部が支配株主により継続して保有されることが見込まれていることをいいます。 (2) 「支配株主」とは 株式継続保有要件における「支配株主」とは、合併の直前に、被合併法人の発行済株式の50%超を保有する株主をいいます。 下図の株主Aは、支配株主に該当するため対価(合併法人株式)を継続保有することが求められます。   ◆共同事業を営むための適格合併の要件のポイント◆ 金銭等不交付要件において、原則として株式以外の対価を交付しないことが求められています。 合併後に次の合併が見込まれている場合には留意が必要です。 被合併法人の合併直前の従業者の総数のおおむね80%以上に相当する者が合併法人の業務に従事することが見込まれているかを確認します。 被合併法人の主要な事業が合併後に合併法人において引き続き営まれることが見込まれるかを確認します。 事業関連性の判定において、被合併法人側は合併前の主要な事業に限定されていますが、合併法人の事業は限定されていません。 事業規模要件については、事業関連性要件の判定において関連性があるとした事業により判定します。 経営参画要件については、単なる役員ではなく、特定役員に就任する必要があります。 支配株主がいる場合のみ株式継続保有要件の判定を行います。   (了)

#No. 336(掲載号)
#川瀬 裕太
2019/09/19

収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第12回】

収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第12回】   千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也   〈更なる検討〉 ~法人税法22条の2第1項と22条2項の規律範囲・内容の比較~ 法人税法22条の2第1項の意義を理解するために、 ① 法人税法22条2項が規律し、22条の2第1項は規律していないもの ② 法人税法22条2項が規律し、22条の2第1項も規律しているもの ③ 法人税法22条2項は規律しておらず、22条の2第1項が規律しているもの を検討する。 ここでの検討は、いかなるものを益金の額に含めるべきであるかという点に関しては、法人税法22条が規律するところであり、資産の販売等に係る収益の計上時期に関しては、引渡し・役務提供基準という法人税法22条2項よりも明確かつ具体的な収益の計上時期に関するルールを明記している22条の2第1項が、22条2項と併せて、あるいは22条2項に優先して、適用されることになるのではないかという上記(前回参照)に示した推測と関わる。 《①法人税法22条2項が規律し、22条の2第1項は規律していないもの》 法人税法22条2項は、当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、「資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引」で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額としている。 「資産の譲渡又は役務の提供」の前には「有償又は無償による」という語が置かれている。「資産の販売」の前には「有償による」という語が置かれていないものの、棚卸資産の譲渡としての「資産の販売」を意味していると解されることから、また、「販売」という語が与える語感からしても、ここでいう「資産の販売」は有償であることを当然の前提としていると解される。 法人税法22条2項は、無償による資産の譲渡の場合も収益の額が発生し、益金の額に算入されることをわざわざ定めた規定であり(本連載第8回参照)、益金の額(収益の額)に算入すべきものの範囲を規律していることがわかる。 「当該事業年度の」という時間的帰属の規律を一旦脇に置き、法人税法22条2項は、時間的帰属を含まないという意味でいわば“裸の”「収益の額」を規律していると説明することも可能である。このことは、法人税法22条2項について、次に示すとおり、「各事業年度の」と「当該事業年度の」という部分を削除して読むとわかりやすい。逆に言えば、法人税法22条2項は、わざわざ「当該事業年度の」という語を挿入しているのであるから、やはり時間的帰属を規律する趣旨を含み持つ規定であるといえよう。 法人税法22条の2第1項に目を戻すとどうか。①同項は、「資産の譲渡又は役務の提供」の前に「有償又は無償による」という語を置いていない。②しかも、「法人税法22条2項が定める」(「前条2項に規定する」)資産の販売、資産の譲渡又は役務の提供、あるいは収益の額という定め方もしていない。このことの意味をどのように解すべきであろうか。 ②については別途検討する予定であり、ここでは①について、検討を加えておく。 法人税法22条2項は、一般の感覚では直ちには理解しがたいような、収益の発生することのない無償取引からも収益が発生することを明らかにしたものであり、「無償による」という部分にそれなりに大きな意味がある。かように、無償による資産の譲渡からも収益が発生することは、すでに、法人税法22条2項が定めている。重ねて、22条の2第1項でそのことを定める必要はない。 このような考えに基づいて、法人税法22条の2第1項は、「有償又は無償による」という語を重複して定めることを避けたのかもしれない。法人税法22条の2第1項について、「無償による」という語を用いていないことをもって無償による資産の譲渡をその規律対象から除外する趣旨であると解すべきではない。 以上のことは、法人税法22条の2第1項は、「その資産の販売等に係る目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度の」という部分を強調して読むことが妥当であり、収益の計上時期(時間的帰属)の規範を定めたものであるという、上記で示した理解とも整合する。 さらにいえば、法人税法22条の2第6項は、「前各項及び前条第2項の場合には、無償による資産の譲渡に係る収益の額は、金銭以外の資産による利益又は剰余金の分配及び残余財産の分配又は引渡しその他これらに類する行為としての資産の譲渡に係る収益の額を含むものとする。〔下線筆者〕」と規定している。この場合の「前各項」には法人税法22条の2第1項が含まれる。法人税法22条の2第6項は、1項の「資産の譲渡」には「無償による資産の譲渡」が包摂されていることの証左となる。 なお、法人税法22条の2第1項は、22条2項と異なり、「無償による資産の譲受けその他の取引」については規定していない。この点については、後で検討する。 《②法人税法22条2項が規律し、22条の2第1項も規律しているもの》及び《③法人税法22条2項は規律しておらず、22条の2第1項が規律しているもの》 これまで論じてきたところではあるが、法人税法22条の2第1項の規範範囲や内容を理解するにあたり、22条2項との対比において考察を進めることが重要であるため、再度確認しておこう。 法人税法22条2項にいう「当該事業年度の」とは、当該事業年度に「帰属する」という意味であり、同項は収益の計上時期(時間的帰属)を規律する定めとして設けられたものである(本連載第6回参照)。よって、同じく収益の計上時期(時間的帰属)の規範を定めた法人税法22条の2第1項との関係をどのように理解すべきかが問題となる。《②法人税法22条2項が規律し、22条の2第1項も規律しているもの》という視点である。 収益の計上時期の規範という点において両規定を比べると、その違いは明らかである。収益の計上時期のルールを定めているといっても、法人税法22条2項は、「当該事業年度の」としか規定していない。「当該事業年度の」という語を「当該事業年度に帰属する」と読み替えたところで、具体的なルールは直ちには見えてこない。よって、通常、法人税法22条4項を踏まえた解釈論が採用されている(本連載第6回参照)。 他方、法人税法22条2項と異なり、22条の2第1項は、収益の額は、その資産の販売等に係る目的物の引渡し又は役務の提供の日の事業年度において益金の額に算入するとし、収益の計上時期のルールとして引渡・役務提供基準を明定している。ここでいう「引渡し」又は「役務の提供」の意義について解釈の余地は残されているが、少なくとも、法人税法22条の2第1項は、22条2項よりも明確かつ具体的なルールとしての引渡・役務提供基準を法律に明記していることが際立つ。よって、法人税法22条の2第1項は、22条2項が収益の計上時期に関して抽象的に定めていたところに、引渡・役務提供基準という具体的な基準を提供するものであるという整理が成り立つ。 かような整理は、法人税法22条の2第1項は、「その資産の販売等に係る目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度の」という部分を強調して読むことが妥当であり、収益の計上時期(時間的帰属)の規範を定めたものであるという、上記で示した理解とも整合する。 以上の考察は、《③法人税法22条2項は規律しておらず、22条の2第1項が規律しているもの》という視点を意識させる。法人税法22条2項も収益の計上時期について規律しており、この限りにおいて22条の2第1項と規律範囲が重なるが、22条2項は22条の2第1項と異なり明確かつ具体的なルール(引渡・役務提供基準)を定めていない。解釈に委ねられているのである。 かような法人税法22の2第1項について、同項は、22条2項と内容が重複しており、22条の2第1項に定められたことは、既に、22条2項において定められていたことであって、22条の2第1項を定めたことにより、「資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供」に係る「収益の額」の認識時期について、2つの定めが存在するという異例の状態となっている、という指摘もなされている(朝長英樹「『収益認識に関する会計基準等への対応』として平成30年度に行われた税法・通達改正の検証(3)」T&A master751号16頁参照)。 法人税法22条の2に関する研究の必要性を裏付ける指摘であるといえよう。   (了)

#No. 336(掲載号)
#泉 絢也
2019/09/19
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