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金融・投資商品の税務Q&A 【Q40】「外国籍ユニットトラストからの収益分配金の取扱い」

金融・投資商品の税務Q&A 【Q40】 「外国籍ユニットトラストからの収益分配金の取扱い」   PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 箱田 晶子   ●○ 検 討 ○● 1 外国籍ユニットトラストの税務上の取扱い 日本の税務上、外国籍のユニットトラストを含む外国の事業体がどのように取り扱われるかについて、明示的な規定はありません。 外国において外国の法令に基づいて設定された信託のうち、日本の投資信託に類するものについては、日本の法律上、外国投資信託として分類されます(投資信託及び投資法人に関する法律(以下「投信法」)第2条第24項)。投信法第2条第24項に規定される外国投資信託は、所得税法上も外国投資信託として取り扱われます。 外国籍のユニット・トラスト(unit trust)が日本の投信法上の外国投資信託として取り扱われるかについては、個々のトラストごとに法的な観点からの分析が必要となり一概にはいえませんが、例えばケイマン籍やアイルランド籍のユニットトラスト等で多くの受益者(投資家)がいるものについては、実務上、外国投資信託として取り扱われているケースが一般的には多いように思われます。 所得税法上、外国投資信託の受益権は「株式等」として取り扱われますので、外国金融商品市場に上場され売買されている外国投資信託の受益権は、租税特別措置法第37条の11第2項に規定する「上場株式等」に分類されます。 以下では、本件の外国籍ユニットトラストが税務上「外国投資信託」として取り扱われる場合の取扱いを記載します。   2 収益分配金に係る源泉徴収 日本国外で発行された投資信託の受益権の収益分配金については、居住者たる個人が日本国内における支払の取扱者を通じてその交付を受ける場合、交付の際に支払を受けるべき金額(外国所得税が課されている場合は控除後の金額)に対し当該支払の取扱者により日本で源泉徴収がなされます。 一方、投資信託の受益権の収益分配金を国内における支払の取扱者を通じないで受け取る場合(すなわち日本国外で直接受け取る場合)、当該分配金の金額に対して日本の源泉税は課されません。   3 収益分配金の申告の有無 居住者たる個人が受け取る国外で発行された株式/投資信託の配当等で、国内における支払の取扱者を通じて交付を受けるもの以外のものについては、原則として申告を行う必要があります(少額配当又は上場株式等の配当の申告不要制度の適用はありません)。 個人は以下のいずれかの課税方法を選択することができますが、自身が保有するその他の上場株式等の配当を含むすべての上場株式等の配当について、以下のどちらかを選択する必要があります。 ① 総合課税 上場株式等の配当について総合課税を選択する場合、配当所得として総所得金額に含まれ、総合課税(所得税最高税率約46%、住民税原則10%)の対象となります。配当所得の計算上、株式、投資信託などを取得するための借入金の利子を控除することができます。 投資信託のうち、株式投資信託で一定の約款記載要件(非株式割合や外貨建資産割合)を満たすものについては配当控除の適用が可能ですが、外国投資信託については約款記載要件を満たさないと考えられることから、配当控除の適用はないと考えられます。 ② 申告分離課税 上場株式等の配当所得として、申告により分離課税が適用されます。配当所得の計算上、株式、投資信託などを取得するための借入金の利子を控除することができます。適用税率は20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)です。 当年度の上場株式等の譲渡損失や過去から繰り越された上場株式等の譲渡損失の金額との損益通算を行う場合は、上場株式等の配当所得について申告分離課税を選択する必要があります。 申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得については、配当控除の適用はありません。 ◆  ◆  ◆ 上記は所得税の取扱いですが、住民税も上記①又は②のいずれかを適用することができます。なお、所得税と住民税で異なる課税関係を選択することができます(その場合、住民税の申告書を別途提出する必要があります)。   3 本件についてのあてはめ 本件の外国籍ユニットトラストが日本の税務上、外国投資信託に該当する場合、本件のユニットトラストの受益権は外国金融商品市場に上場され売買されていることから、上場株式等として取り扱われると考えられます。 外国籍ユニットトラストの受益権の収益分配金の金額については、個人が直接海外の口座で受け取るため、日本の源泉税は課されません。収益分配金については原則として申告が必要となり、配当所得として総合課税又は上場株式等の配当所得として申告分離課税を適用することになります。 (了)

#No. 293(掲載号)
#箱田 晶子
2018/11/08

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第62回】

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第62回】 (最終回)   公認会計士 佐藤 信祐   《第12章》 平成29年度から平成30年度までの税制改正 1 平成29年度税制改正 平成29年度税制改正についての解説は、下記拙稿において既に本誌で行っているため、本稿では、財務省が公表した『平成29年度税制改正の解説』から読み取れる内容について、追加的に解説を行うこととする。 まず、スピンオフ税制の制度趣旨は、同書317頁において、 と解説されている。 この点については、やや強引な説明であるとの批判があるが、移転資産に対する支配の継続という概念により組織再編税制を構築しようとした財務省の意図を理解することができる。 次に、ブート税制を導入した理由として、同書318頁において、 と解説されている。ただし、同書327頁では、租税回避の防止やグループ法人税制との整合性により、吸収合併と株式交換以外の組織再編成については対象外とされたことが明らかにされている。 そして、同書318頁では、全部取得条項付種類株式、株式併合及び株式等売渡請求による100%子会社化について、「少数株主の個別の意思にかかわらず強制的に少数株主から子会社株式が取得されることという点において、単なる資産の売買・交換とは異なる共通点を有する」という理由により、株式交換・移転税制と足並みを揃えることとしたことが明らかにされている。 また、時価評価課税の範囲の見直しにより、結果的に、連結納税の開始・加入に伴う時価評価、非適格株式交換・移転に伴う時価評価において、営業権に対する時価評価課税が不要とされたが、同書333頁では、 と解説されている。 この論点があることは、本連載【第53回】でも解説したが、個人的見解とはいえ、財務省主税局に所属している者から明確に指摘されたのは初めてであり、今後の実務においても参考にすることができる。 そのほか、分割型分割における支配関係継続要件の見直しを行った理由として、同書334頁では、 と解説されている。 分割により移転する資産に対してのみ支配が継続していれば、「移転資産に対する支配の継続」があったみなすことができるという意味では、平成13年度税制改正から続いてきた基本的な考え方は維持されているということが言える。   2 平成30年度税制改正 平成30年度税制改正についての解説は、既に本誌掲載の下記拙稿で行っているため、本稿では、財務省が公表した『平成30年度税制改正の解説』から読み取れる内容について、追加的に解説を行うこととする。 拙稿「平成30年度税制改正における『組織再編税制・M&A税制』改正事項の確認」では、無対価組織再編について、資産調整勘定の金額につき、第三者による資産評定に委ねられる部分が多いことを指摘した。この点につき、同書318頁(注1)では、 としている。そのため、M&A、事業再生で資産評定が行われることが想定され、同書318頁(注1)でも、 としている。すなわち、第三者による資産評定が必要になるにしても、それほど厳密なものは求められていないということが言える。 さらに、同書319頁(注2)では、 と記載されていることから、資産評定がなかったとしても、対価を交付する非適格組織再編成と資産調整勘定の金額は変わらないことがほとんどであると思われる。   《終 章》 まとめ 本連載では、平成13年度税制改正により組織再編税制が導入された時代まで遡り、現在の組織再編税制がどのように変わってきたのか、そして、どのような趣旨により改正されてきたのかについて解説した。 気づかれた読者も多いと思われるが、組織再編税制の中心となるものは「移転資産に対する支配の継続」という概念であり、組織再編税制の多くはその概念で説明することができる。しかしながら、極めて曖昧な概念であることから、いずれその下位概念を明確にする必要があると思われる。 当時の資料から推測すると、「移転資産に対する支配の継続」という概念は、アメリカの税制からも、ドイツの税制からも読み解けない日本独自の概念であると言え、むしろ、企業結合会計、事業分離等会計の方が近い概念を導入している可能性が高いと思われる。そのため、「移転資産に対する支配の継続」を分析していくためには、これらの会計制度を分析した後に、組織再編税制の分析をする必要があると考えている。この点については、今後の研究課題と考えている。 (連載了)

#No. 293(掲載号)
#佐藤 信祐
2018/11/08

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第42回】「弁護士顧問料事件」~最判昭和56年4月24日(民集35巻3号672頁)~

さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第42回】 「弁護士顧問料事件」 ~最判昭和56年4月24日(民集35巻3号672頁)~   弁護士 菊田 雅裕   (了)

#No. 293(掲載号)
#菊田 雅裕
2018/11/08

「収益認識に関する会計基準」及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」の徹底解説 【第4回】

「収益認識に関する会計基準」及び 「収益認識に関する会計基準の適用指針」の徹底解説 【第4回】   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   7 【STEP3】取引価格の算定 【STEP3】では取引価格を算定する。「取引価格」とは、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額(ただし、第三者のために回収する額を除く)をいう(基準8、47)。 取引価格の算定においては、以下の5つについて検討する(基準48)。特に(1)、(2)、(5)は影響が大きい論点である。 (1-1) 第三者のために回収する額 収益の額には、第三者のために回収する額は含まれない。第三者のために回収する額には、消費税、たばこ税、宿泊税等の間接税、代理人取引における本人のための代金回収等がある。 したがって、従来、売上に間接税や第三者のために回収した金額を含めていた場合、それは、売上から控除しなければならない。 なお、間接税によっては、顧客に販売しなくても企業が税金を負担する場合がある。このような間接税は、第三者のために回収する額に該当するかどうかを検討する必要がある。具体的には、本人か代理かの検討(11.連載第7回参照)が必要となる。 本人に該当する場合(自ら納税資金を用意して納税している場合)には収益の額(取引価格)に含め、代理人に該当する場合(顧客から税金を預り、納税している場合)には収益の額(取引価格)から除くことになる。 (1-2) 第三者のために回収する額(従来との相違点等) ① 従来との相違点 ② 影響がある取引(例示) ③ 適用上の課題 ④ 財務諸表への影響 (2-1) 変動対価 変動対価とは、顧客と約束した対価のうち変動する可能性のある部分をいう(基準50)。つまり、まだ確定していない取引価格ということである。 なお、知的財産のライセンスを供与した際に、売上高又は使用量に基づくロイヤルティを受け取る場合、その対価については、適用指針第67項(ライセンスの供与の規定(17.(連載第9回)参照))を適用する(適用指針26)。 変動対価では、以下の4つの検討が必要である。 ① 変動対価の識別 まず、取引価格に変動対価が含まれているかどうかを検討する必要がある。例えば、値引き、売上リベート、返金、インセンティブ、業績に基づく割増金、ペナルティー等の形態により対価の額が変動する場合や、返品権付きの販売等がある(適用指針23)。 ② 変動対価の見積り 取引価格に変動対価が含まれている場合、対価が確定していないため、その対価の額を見積って、売上を計上する(基準50)。 変動対価の額の見積りにあたっては、以下の2つの方法がある。対価の額をより適切に予測できる方法を選択する(基準51、140、142)。 見積る際には、契約全体を通じて単一の方法を首尾一貫して適用する(基準52)。また、契約ごとに見積り方法を変えるのは、会計方針として適切ではないため、類似の契約についても同一の見積り方法を適用する必要があると考えられる。さらに、見積った取引価格は、各決算日に見直し、取引価格が変動する場合には、基準第74項から第76項(取引価格の変動の規定(8.(連載第5回)(4)参照))を適用する(基準55)。 なお、見積りにあたっては、企業が合理的に入手できるすべての情報を考慮し、発生し得ると考えられる対価の額について合理的な数のシナリオを識別する(基準52)。最頻値法では、実務上、可能性の低いシナリオの結果を数値化する必要はない。期待値法も、実務上、企業が大量のデータを有し、多くの結果を識別できる場合であっても、複雑なモデルを用いてすべてのシナリオの結果を考慮する必要はない(基準142)。 ③ 収益の著しい減額が発生しない可能性が非常に高い部分 見積った変動対価の額は、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が非常に高い部分に限り(制限規定)、取引価格に含める(基準54)。過大な収益計上にならないように当該規定が設けられている。 収益の著しい減額が発生しない可能性が非常に高いかどうかの判定の際には、収益が減額される確率及び減額の程度の両方を考慮する。「収益が減額される確率又は減額の程度を増大させる可能性のある要因」には、例えば、以下の(ⅰ)から(ⅴ)がある(適用指針25)。 ④ 顧客から受け取った又は受け取る対価がある場合 顧客から受け取った又は受け取る対価の一部又は全部を顧客に返金すると見込む場合、受け取った又は受け取る対価の額のうち、企業が権利を得ると見込まない額について、返金負債を認識する。返金負債の額は、各決算日に見直す(基準53)。 (2-2) 変動対価(従来との相違点等) ① 従来との相違点 ② 影響がある取引(例示) ③ 適用上の課題 ④ 財務諸表への影響 (3-1) 契約における重要な金融要素 契約の当事者が合意した支払時期により、財又はサービスの顧客への移転に係る信用供与(言い換えると、融資目的)についての重要な便益が顧客又は企業に提供される場合、顧客との契約に重要な金融要素が含まれている(基準56)。 契約における重要な金融要素では、以下の2つの検討が必要となる。 ① 金融要素の識別 金融要素が契約に含まれるかどうか及び金融要素が契約にとって重要であるかどうかを判断するにあたっては、以下の(ⅰ)及び(ⅱ)を含む、関連するすべての事実及び状況を考慮する(適用指針27)。重要かどうかの判断は、契約単位で行う(適用指針128)。なお、下記(ⅰ)及び(ⅱ)は、契約に金融要素が含まれているかどうかの指標の1つにすぎないので留意する必要がある。 なお、上記にかかわらず、以下の(ア)から(ウ)のいずれかに該当する場合には、顧客との契約は重要な金融要素を含まない(適用指針28)。 ② 金利相当分の影響の調整 顧客との契約に重要な金融要素が含まれる場合、取引価格の算定にあたっては、約束した対価の額に含まれる金利相当分の影響を調整する(基準57)。つまり、割引計算等をするということである。 割引率は、約束した販売価格の現在価値が、財又はサービスが顧客に移転される時の「現金」販売価格と等しくなるような利率を使用する。取引開始日後は、金利の変動や顧客の信用リスクの評価の変動等により割引率を見直さない(適用指針29)。 そして、収益は、約束した財又はサービスが顧客に移転した時点で(又は移転するにつれて)、当該財又はサービスに対して顧客が支払うと見込まれる現金販売価格を反映する金額で認識する(基準57)。 なお、契約における取引開始日において、約束した財又はサービスを顧客に移転する時点と顧客が支払を行う時点の間が1年以内であると見込まれる場合には、重要な金融要素の影響について調整しないことができる(基準58)。 (3-2) 契約における重要な金融要素(従来との相違点等) ① 従来との相違点 ② 影響のある取引(例示) ③ 適用上の課題 ④ 財務諸表への影響 (4) 現金以外の対価 契約における対価が現金以外の場合、取引価格の算定は当該対価を時価により算定する(基準59)。例えば、対価が株式などの場合である。 また、企業による契約の履行のために、顧客が財又はサービス(例えば、材料、設備又は労働)を企業に提供する場合には、企業は、顧客から提供された財又はサービスに対する支配(6(連載第3回)の(4)参照)を獲得するかどうかを判定し、企業が当該財又はサービスに対する支配を獲得する場合には、当該財又はサービスを、顧客から受け取る現金以外の対価として会計処理する(基準62)。 ① 時価を合理的に見積ることができない場合 現金以外の対価の時価を合理的に見積ることができない場合、当該対価と交換に顧客に約束した財又はサービスの独立販売価格を基礎として当該対価を算定する(基準60)。 ② 変動対価 現金以外の対価の時価が変動する理由が、株価の変動等、対価の種類によるものだけではない場合(例えば、企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて時価が変動する場合)には、基準第54項(変動対価の規定(上記(2-1)参照))を適用する(基準61)。 (5-1) 顧客に支払われる対価 顧客に支払われる対価とは、企業が顧客(あるいは顧客から企業の財又はサービスを購入する他の当事者)に対して支払う又は支払うと見込まれる現金や顧客が企業(あるいは顧客から企業の財又はサービスを購入する他の当事者)に対する債務額に充当できるものをいう(基準63)。 例えば、売上リベート(販売手数料、センターフィー)、キャッシュバック、棚代、クーポン等が考えられる。 顧客に支払われる対価には、変動要素が含まれていることが多いため、顧客に支払われる対価と変動対価の規定はセットで検討することが多いと考えられる。 ① 会計処理 顧客に支払われる対価は、顧客から受領する別個の財又はサービスと交換に支払われるものである場合を除き、取引価格(売上)から減額する(基準63)。顧客に支払われる対価を販管費で計上することはできない。 顧客に支払われる対価に変動対価が含まれている場合には、取引価格の見積りを基準第50項から第54項(変動対価の規定(上記(2-1)参照))に従って行う(基準63)。 顧客に支払われる対価を取引価格から減額する時期は、以下の(ⅰ)又は(ⅱ)のいずれか遅い方が発生した時点である(基準64)。 なお、顧客に支払われる対価が顧客から受領する別個の財又はサービスと交換に支払われるものである場合、当該財又はサービスを仕入先からの購入と同様の方法で処理する(適用指針30)。つまり、通常の仕入と同様に会計処理するということである。 一方、顧客に支払われる対価が顧客から受領する別個の財又はサービスの時価を超えるときには、当該超過額を取引価格から減額する。 しかし、顧客から受領する別個の財又はサービスの時価を合理的に見積ることができない場合には、顧客に支払われる対価の全額を取引価格から減額する(適用指針30)。 (5-2) 顧客に支払われる対価(従来との相違点等) ① 従来との相違点 ② 影響のある取引(例示) ③ 適用上の課題 ④ 財務諸表への影響 (了)

#No. 293(掲載号)
#西田 友洋
2018/11/08

M&Aに必要なデューデリジェンスの基本と実務-財務・税務編- 【第13回】「労働債務の分析(その1)」-未払給与、賞与等-

M&Aに必要な デューデリジェンスの基本と実務 -財務・税務編-   公認会計士 石田 晃一   ←(前回) | (次回)→   第5節 労働債務の分析 【第13回】 「労働債務の分析(その1)」 -未払給与、賞与等-   〔分析の対象となる主な勘定科目〕   ▷労働債務の調査 「労働債務」は会計上の用語ではないが、本稿では従業員(役員を含む)による労働等の対価として法人が支払うべきものの未払額を総称して「労働債務」と呼ぶことにする。 代表的な労働債務としては未払給与や未払賞与、退職給付引当金や役員退職慰労引当金のほか、我が国では馴染みの薄い有給休暇に関する引当金などが挙げられる。 今回はこれらのうち、いわゆる「短期従業員給付」に当たる項目について概説する。   ▷未払給与 給与は従業員との雇用契約に基づいて法人が従業員から受けた役務提供の対価として支払われるものであり、通常、「毎月20日締めの翌月10日払い」のような形態で支給されている。 この場合、月末時点で認識すべき労働債務には2種類ある。1つは20日締めで計算された(前月21日からの)1ヶ月分の未払給与であり、もう1つは当月の21日から月末までの10日分の未払給与である。前者は債務として確定しているため「未払金」としての未払給与であり、後者は(債務として確定していないが)雇用契約に基づき発生主義的に認識される「未払費用」としての未払給与である。 後者は通常、決算時のみ計上されることが多く、月次では計上されないことが多い。このため、M&Aに際しては、調査基準日が決算期末以外の月である場合、未払費用部分の未払給与を発生主義に基づいて負債として把握する必要がある。   ▷未払賞与 賞与は毎月支給される給与を補完するものとして、給与の後払としての性質を有すると同時に、従業員の勤務継続に対する功労報奨や期間業績に応じた利益配分としての性質も有するとされ、通常の場合、例えば「毎年12月から5月末までの勤務に対して夏季賞与を7月に、6月から11月末までの勤務に対して冬季賞与を12月に支給する」というような方法で支給されている。 賞与の支給は通常、年2回であることから、支給月以外の月次損益に賞与勘定は発生させない代わりに、月次損益のブレを平準化させる目的で、予算等に基づく年間賞与支給見込額の1/12を「賞与引当金繰入/賞与引当金」のように月次で引当計上し、実際支給時に引当金を取り崩す場合も多い。 決算時には、決算月と支給対象期間とのズレの期間について「賞与引当金」もしくは「未払賞与」が計上される。引当金とするか未払費用、未払金とするかは、支給額が確定しているか否か、確定している場合には支給額が支給対象期間以外の基準に基づき算定されているか否かで判断されることになる。   ▷未消化の有給休暇 有給休暇には未消化部分を翌年度に繰り越すことができる「累積型」と繰り越しのできない「非累積型」があり、累積型には、当該従業員の退職時に、消化しきれなかった有給休暇を企業が買い取るケースもある。将来、買取りが必要となる未消化の有給日数の給与相当額について、国際会計基準では負債として認識することを求めている。 日本の会計基準ではこうした会計慣行は現時点では定着していないが、金額的にインパクトが大きい項目になり得るため、M&Aの買い手側が国際会計基準を適用している場合等は留意が必要となる。   ▷簿外債務としての未払労働債務(未払残業代等) 少子高齢化が進む我が国では、とりわけ地方での労働力不足が深刻となっている一方、これと相反する問題ともいえる長時間労働の是正とワーク・ライフ・バランスの改善を通した労働参加率の向上が喫緊の課題とされている。 長時間残業やパワーハラスメントに起因する過労死問題等もあり、潜在債務・簿外債務としての未払残業代等の存在は、多くの企業に共通の問題として認識されるべきものであるため、労務管理体制の構築・運用状況の巧拙は、事業上の重大なリスク要因となり得る。 M&A対象企業の労務管理体制の瑕疵により、M&A実行後、場合によっては買い手側で思わぬ痛手を被ることにもなりかねない。未払残業代も金額的に多額に上る項目であることから、M&Aにおける買収価格にも大きな影響を与える余地もあり、留意を要する。 未払残業代が発生するケースとしては、以下のようなケースが挙げられよう。 【実務事例13-1】 残業時間が打ち切り(定額)残業代の上限を超えているが、これを支払っていない。 「裁量労働制」や「年俸制」を採用していることから、残業代は支払っていない。 管理監督者の範囲を拡大解釈し、管理職に対して割増残業代を支払っていない。 残業時間の計算で30分未満の端数が切り捨てられている。 残業代や休日出勤・深夜残業等の割増賃金の算定に含めるべき手当を含めていない。 残業代を支払わないことについて従業員と文書で「合意」している。   残業代に関する労働債務の消滅時効は2年間(不法行為による場合は3年、債務不履行の場合は10年)とされることから、未払残業代の金額の把握には労力を要することが多い。直近での労働基準監督署等による調査結果等を踏まえ、必要に応じて弁護士等による法務デューデリジェンスと連携して事実の有無を把握する必要がある。 なお、法務面からみた労務分野の調査上の留意点については、[法務編] 【第5回】、【第6回】 を参照されたい。   ▷未払残業代に特に注意の必要な業種 厚生労働省労働基準局が発表する「毎月勤労統計調査(平成29年分結果確報)」によれば、業種別にみた一般労働者の平均的な1ヶ月当たりの所定外労働時間は以下のとおりとなっている。 ◆月間所定外労働時間(一般労働者) (出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査(平成29年分結果確報)」から筆者作成) 筆者らの経験則では、(上記統計結果とは若干異なるが)運輸業や旅館業、建設業等は一般的には残業時間が多い印象があり、特に小規模な旅館業においては労務管理体制の構築が遅れている場合も多く、誤解を恐れずに言えば、残業代の未払はある意味、「あって当たり前」のような印象を有している。   ▷未払残業代の調査手続 M&Aデューデリジェンスにおける未払残業代に関する主な調査手続を挙げると以下のとおりである。   ▷その他の留意事項 労働債務に関連して留意すべき項目として、預り金に計上されるべき源泉税や社会保険料についても未納となっているものがないか調査する必要があるだろう。従業員から預かった源泉税や社会保険料が納付期日までに納付されず、預り金に残ったままとなっていないか、もしくはそれらが他の支払等に流用されていないか等についても合わせて調査する必要があるだろう。 (了)

#No. 293(掲載号)
#石田 晃一
2018/11/08

企業結合会計を学ぶ 【第5回】「取得原価の算定方法」-段階取得・一体取引-

企業結合会計を学ぶ 【第5回】 「取得原価の算定方法」 -段階取得・一体取引-   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 今回は、取得原価の算定方法に関して、段階取得・一体取引について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 段階取得 1 定義 例えば、企業結合が行われる前に、被取得企業の株式を一部取得し、その後、追加で株式を取得して、他の企業に対する支配を獲得することがある。このように「取得」が複数の取引により達成された場合を「段階取得」という(企業結合会計基準25項)。 株式を追加的に取得した場合だけでなく、合併などにおいても、取得企業の個別財務諸表では当該原価の合計額をもって取得原価となるが、連結財務諸表では企業結合日における当該時価を基礎として取得原価を算定するため、個別財務諸表上の取得原価と連結財務諸表上の取得原価の差額は、連結財務諸表における当期の損益として処理することとなる(企業結合会計基準90項、結合分離適用指針46項、46-2項)。 2 会計処理 段階取得における被取得企業の取得原価の算定は次のように行う(企業結合会計基準25項)。 3 個別財務諸表上の会計処理の留意点 企業結合日直前の被取得企業の株式の帳簿価額については、以下の点に留意する(結合分離適用指針46項)。 4 連結財務諸表上の会計処理の留意点 例えば、取得企業(吸収合併存続会社)の株式が交付され、取得企業が吸収合併直前に被取得企業の株式を保有していた場合の取得の対価は、取得企業が交付する取得企業の株式の時価(結合分離適用指針38項)と吸収合併直前の被取得企業の株式の時価(結合分離適用指針38項に準じて算定)を合算して算定し、吸収合併直前の被取得企業の株式の帳簿価額と合併期日の時価との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理する。また、これに見合う金額は、個別財務諸表において計上されたのれん(又は負ののれん)の修正として処理する(結合分離適用指針46-2項)。 結合分離適用指針の「[設例4]取得原価の算定-段階取得(取得が複数の取引により達成された場合)の会計処理(取得企業が被取得企業の株式を保有していた場合)」が示されている。 投資会社が持分法適用関連会社と企業結合した場合には、支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価は持分法による評価額を指す(企業結合会計基準25 項(2)なお書き)ため、その場合には、企業結合日直前の被取得企業の株式(関連会社株式)の持分法による評価額と企業結合日の時価との差額は、当期の段階取得に係る損益とし、これに見合う金額は、のれん(又は負ののれん)の修正として処理する(結合分離適用指針46-2項)。 企業結合日直前の個別財務諸表上の関連会社株式の帳簿価額と持分法による評価額との差額は、のれん(又は負ののれん)の修正として処理する。 持分法による評価額には、関連会社株式に含めて処理されているのれんの未償却残高、未実現損益に関する修正額が含まれる。 5 基本的な考え方 企業が他の企業を支配することとなるという事実は、当該企業の株式を単に追加取得することとは大きく異なるものである。このため、被取得企業の取得原価は、過去から所有している株式の原価の合計額ではなく、当該企業を取得するために必要な額とすべきであると考えるものである(企業結合会計基準89項)。 つまり、取得に相当する企業結合が行われた場合には、支配を獲得したことにより、過去に所有していた投資の実態又は本質が変わったものとみなし、その時点でいったん投資が清算され、改めて投資を行ったと考えられるため、企業結合時点での時価を新たな投資原価とするのである(企業結合会計基準89項)。 個別財務諸表においては、段階取得によって支配を獲得しても、過去に所有していた投資の実態又は本質が変わったものとみなせない場合も多く、投資は継続していると考える方が適当であると考えられた。つまり、平成20年に改正された企業結合会計基準では、前述のとおり、段階取得における被取得企業の取得原価は、個別財務諸表においては従来どおり支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額をもって算定するのである。 一方、連結財務諸表においては、国際的な会計基準とのコンバージェンスを重視したものである(企業結合会計基準90項)。   Ⅲ 一体取引 企業結合会計基準は、複数の取引が1つの企業結合を構成している場合には、それらを一体として取り扱うと規定している(企業結合会計基準5項)。事業分離等会計基準も、複数の取引が1つの事業分離を構成している場合には、それらを一体として取り扱うと規定している(事業分離等会計基準4項)。 企業結合会計基準などでは、通常、複数の取引が1事業年度内に完了する場合には一体として取り扱うことが適当であると考えられるが、1つの企業結合を構成しているかどうかは状況によって異なるため、当初取引時における当事者間の意図や当該取引の目的等を勘案し、実態に応じて判断することとなるとしている(企業結合会計基準66項、事業分離等会計基準62項)。 「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(会計制度委員会報告第7号)7-3項では、複数の取引が行われる場合、通常、取引の手順に従って、それぞれの取引について会計処理が行われるとしている。 複数の取引が一体として取り扱われるかどうかは、事前に契約等により複数の取引が1つの企業結合等を構成しているかどうかなどを踏まえ、取引の実態や状況に応じて判断するものと考えられるとしている。 前述のように、企業結合会計基準及び事業分離等会計基準では、「通常、複数の取引が1事業年度内に完了する場合には一体として取り扱うことが適当であると考えられる」としているが、これは例示と解される。つまり、複数の取引が1事業年度内に完了するかどうかを基準にして画一的に判断するのではなく、取引の実態や状況に応じて実質的に判断すべきものと解される。 (了)

#No. 293(掲載号)
#阿部 光成
2018/11/08

〔“もしも”のために知っておく〕中小企業の情報管理と法的責任 【第8回】「電子データを営業秘密として管理する方法」

〔“もしも”のために知っておく〕 中小企業の情報管理と法的責任 【第8回】 「電子データを営業秘密として管理する方法」   弁護士 影島 広泰   -Question- 紙に印刷された情報については「秘」と記載しておけば営業秘密として管理できることは分かりますが、電子データの場合にはどうしたらよいでしょうか。 -Answer- ファイル名にマル秘表示をしたり、文書のヘッダーやフッターにマル秘表示をする方法のほか、ファイルが保存されているフォルダにパスワードを設定しておく方法なども考えられます。 自社の情報が他社に漏えいしてしまった際に、その情報が不正競争防止法の「営業秘密」の要件を満たすように秘密として管理してあれば、その会社に対して情報の廃棄や損害賠償の請求をすることができる。 「秘密として管理してある」といえるためには、「合理的な方法で管理する(秘密管理措置)」ことで、情報に接した人間にとって秘密であることが十分に認識できるようになっていることが必要である。具体的には、(ⅰ)対象情報の一般情報(営業秘密ではない情報)からの合理的区分と、(ⅱ)対象情報について営業秘密であることを明らかにする措置を講じることになる(詳細は【第7回】を参照されたい)。 秘密管理措置=「(ⅰ)合理的区分」+「(ⅱ)営業秘密であることを明らかにする措置」 今回は、具体的にどのように管理しておけば、営業秘密として保護されるのかを解説する。   1 紙媒体の場合 営業秘密として保護したいと考えている紙媒体(例えば、顧客リストをプリントアウトしたもの)については、専用のファイルに綴じ込んだ上で、ファイルの背表紙に「秘」と記載しておく、あるいは鍵のかかるキャビネットに保管しておくなどが典型的な方法であることは、【第7回】で述べたとおりである。   2 電子媒体の場合 電子媒体の場合も、記録媒体や保管ケースにマル秘の表示をしておくなど、基本的には紙媒体と同じ方法を用いることができる。 また、電子データの場合には、媒体にマル秘の表示をするのではなく、電子ファイルやフォルダの名前にマル秘と入れておくことも考えられる(例えば、「【秘】顧客一覧.xls」のようなファイル名にする)。 ファイルを開くためのパスワードを設定しておくことも1つの方法である。パスワードを設定してあれば、それを開こうとした人にとって、それが秘密として管理されている情報であることが十分に認識できることになるからである。 さらに、経済産業省の営業秘密管理指針によれば、電子ファイルそのものではなく、フォルダの閲覧にパスワードを設定しておくことも考えられるとされている。これは実務的には有効なヒントとなる。例えば、あるプロジェクトを始めるときに、最初は社内ルールに従ってエクセルファイルのヘッダーに「【秘密】」などと記載していたのに、プロジェクトが佳境にさしかかって忙しくなってくると、いつの間にかそのような記載がないファイルが増えてきてしまうことがあるのではないだろうか。 実際に、営業秘密の案件を取り扱っていると、一番肝心な最終バージョンのファイルに「【秘密】」と記載されていないことがある。そのような場合でも、せめてファイルが保存されていたフォルダにパスワードが設定されていれば、裁判になったときに「フォルダにはパスワードが設定されており、秘密管理措置が講じられていた」と主張することができる。 そのため、営業秘密を取り扱うことが考えられるプロジェクトを始める際には、そのプロジェクトのファイルを保存するフォルダにパスワードを設定しておくと安心である。 ◆電子媒体に対する秘密管理措置(営業秘密管理指針p.9)   3 物件に営業秘密が化体している場合 物件に営業秘密情報が化体している場合にはどうしたらよいであろうか。例えば、製造機械や金型、高機能微生物、新製品の試作品などである。これらにおいては、金型にマル秘と記載しておくわけにもいかないし、鍵のかかるところに保管しておくことも難しい。 このような場合には、物件がある部屋の扉に「関係者以外立入禁止」の張り紙をしておくなどとして、その物件を秘密として管理する意思があることを分かるようにしておくことが重要である。 そうしておけば、万が一その物件の形状等が盗まれた際に、それを盗んだ者は、「『関係者以外立入禁止』と記載された扉の向こうに保管されている物件が秘密であると思わなかった」などという不合理な言い訳をしなければならないことになる。 「秘密管理措置」とは、「合理的な方法で管理すること(秘密管理措置)により、秘密として管理された情報であることが分かるようにしておくこと」であることがお分かりいただけるであろう。 ◆物件に営業秘密が化体している場合の秘密管理措置(営業秘密管理指針p.10)   4 媒体が利用されない場合 無形のノウハウや従業員が職務として記憶した顧客情報のように、媒体が利用されていない情報であっても、営業秘密として保護することは可能である。 もっとも、何が営業秘密として保護されており、何が保護されていないのかが分からない状態で、無形のノウハウや記憶した顧客情報が営業秘密であるとされてしまうと、転職しようとする従業員の職業選択の自由を不当に侵害する可能性がある。 そこで、原則として、下記のような形でその内容を紙その他の媒体に可視化することが必要になるとされている。 ◆媒体が利用されない場合の秘密管理措置(営業秘密管理指針p.11) 一方で、情報量、情報の性質、当該営業秘密を知りうる従業員の多寡等を勘案して、その営業秘密の範囲が従業員にとって明らかな場合(例えば、未出願の発明や特定の反応温度、反応時間、微量成分、複数の物質の混合比率が営業秘密になっている場合など)には、必ずしも内容そのものが可視化されていなくとも、当該情報の範囲・カテゴリーを口頭ないし書面で伝達することによって、従業員の認識可能性を確保することができるものと考えられるとされている。 (了)

#No. 293(掲載号)
#影島 広泰
2018/11/08

《速報解説》 6月公表のディスクロージャーWG報告を受け記述情報や役員報酬等の有報等記載事項を示した改正開示府令(公開草案)が公表される

《速報解説》 6月公表のディスクロージャーWG報告を受け 記述情報や役員報酬等の有報等記載事項を示した 改正開示府令(公開草案)が公表される   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年11月2日、金融庁は「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正案を公表し、意見募集を行っている。 これは平成30年6月に公表された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告において、「財務情報及び記述情報の充実」、「建設的な対話の促進に向けた情報の提供」、「情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組」に向けて、適切な制度整備を行うべきとの提言を受け、有価証券報告書等の記載事項を改正するものである。 意見募集期間は平成30年12月3日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 主に次の改正を行う。具体的な規定については、第二号様式「有価証券届出書」の規定を示す。 1 財務情報及び記述情報の充実 2 建設的な対話の促進に向けた情報の提供 3 情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組   Ⅲ 適用時期等 改正後の規定は公布の日から施行する予定である。 改正後の規定は、以下の適用予定である。 (了)

#No. 292(掲載号)
#阿部 光成
2018/11/05

《速報解説》国税庁、初の自動的情報交換により64ヶ国・地域から55万超の非居住者金融口座情報を受領~国外財産調書等、現保有情報との分析により海外資産隠し・租税回避へ対応~

《速報解説》 国税庁、初の自動的情報交換により 64ヶ国・地域から55万超の非居住者金融口座情報を受領 ~国外財産調書等、現保有情報との分析により海外資産隠し・租税回避へ対応~   税理士・行政書士 島田 弘大   1 はじめに 国税庁は平成30年10月31日に「CRS情報及びCbCRの自動的情報交換の開始について」を公表した。 CbCR(Country by Country Report:国別報告事項)及びCRS(Common Reporting Standard:「共通報告基準」)はOECDによる国際基準やBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転)プロジェクトに基づいたものであり、日本でも昨今の税制改正により対応が始まったものである。今回はそれらの自動的情報交換の状況について初めて公表が行われた。 なお、以下文中の意見に関する部分について私見が一部含まれることをご容赦いただきたい。   2 CbCRの自動的情報交換の状況 CbCR(Country by Country Report:国別報告事項)は、BEPSプロジェクトの勧告(行動13「多国籍企業情報の文書化」)に基づくもので、日本では平成28年度税制改正(参照:「移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし」)により、特定多国籍企業グループの最終親会社等がCbCRを国税庁に報告する制度が導入された。 報告されたCbCRは、平成28年4月1日以後に開始する最終親会計年度終了の日の翌日から18ヶ月以内(次年度以降は15ヶ月以内)に外国税務当局に提供することとされていたが、今回はその交換の状況が公表された形だ。 国税庁の公表によると、国税庁は日本に所在する最終親会社609社分のCbCRを39ヶ国・地域に提供した一方、558社のCbCRを29ヶ国・地域から受領したとのことだ(速報値:10月31日現在)。 (※) 国税庁ホームページより 受領したCbCRの情報は、移転価格のリスク評価等に使用することとされている。   3 CRSの自動的情報交換の状況 また、CRS(Common Reporting Standard:「共通報告基準」)に基づく非居住者金融口座情報(CRS情報)の自動的情報交換についても初回の交換状況について公表された。 CRS情報の初回交換において、国税庁は日本の非居住者に係る金融口座情報89,672件を58ヶ国・地域に提供した一方、日本の居住者に係る金融口座情報550,705件を64ヶ国・地域から受領したとのことだ(速報値:10月31日現在)。 (※) 国税庁ホームページより これらの受領した金融口座情報については、国外財産調書等の様々な情報と併せて分析を行い、海外への資産隠しや国際的租税回避行為等の問題の解決に活用される予定である。 日本において、CbCRについては平成28年4月1日以後に開始する最終親会計年度終了の日の翌日から18ヶ月以内に外国税務当局に提供することとされており、またCRS情報の交換に関しては平成30年9月までに初回交換を行うこととされていた。つまり、いずれも始まったばかりの制度であり、またこれらの情報交換の実施をこれから新たに開始する国・地域もあることを考えると、交換件数は今後も増えていくと考えられる。   4 (参考)平成29事務年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要 なお、同日に、「平成29事務年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要」も公表されているため、こちらも触れておきたい。 租税条約等に基づく情報交換には、「要請に基づく情報交換」、「自発的情報交換」及び「自動的情報交換」の3つの類型がある。この情報交換は上記CRSやCbCRが導入される前から運用されていたものであるが、これらの情報交換について最新事務年度の状況が公表された。「自発的情報交換」については、ほぼ前年並みの件数となっているものの、「要請に基づく情報交換」及び「自動的情報交換」については、増加傾向が続いている。 CRS・CbCRの交換も始まり、またこれらの租税条約等に基づく従来からの情報交換も件数が増えているところを見ると、やはり国際的な脱税等の把握や防止に対する取組みは明らかに進んでいると言えるだろう。 (了)

#No. 292(掲載号)
#島田 弘大
2018/11/02

プロフェッションジャーナル No.292が公開されました!~今週のお薦め記事~

2018年11月1日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.292を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2018/11/01
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