《速報解説》 有料老人ホームの飲食料品の提供に対する軽減税率の適用について、 東京局より文書回答事例が公表される Profession Journal 編集部 本日(2019年10月1日)より消費税の税率は8%から10%へと引き上げられ、それと同時に8%の軽減税率が導入された。 軽減税率が適用されるのは酒類を除く飲食料品と週2回以上発行される新聞(定期購読契約によるもの)であり、レストランやフードコートなどでの食事は、飲食料品を飲食させる役務の提供として標準税率(10%)が適用されるのだが、学校給食や有料老人ホームでの入所者への食事の提供については、一定の条件の下、軽減税率が適用される。 上記のうち有料老人ホームの入所者に対する食事の提供については、軽減税率の対象となる費用の限度額が財務省告示(※1)及び厚生労働省告示(※2)によって定められており、「有料老人ホーム等の設置者又は運営者が、同一の日に同一の者に対して行う飲食料品の提供の対価の額(税抜き)が1食につき640円以下であるもののうち、その累計額が1,920円に達するまでの飲食料品の提供」であること、すなわち1食当たり640円(基準額)以下、1日当たりの累計額が1,920円(限度額)までとされている。 (※1) 「消費税法施行令等の一部を改正する政令附則第3条第2項の規定に基づく財務大臣の定める基準」(平成28年財務省告示第100号) (※2) 「入院時食事療養費に係る食事療養及び入院時生活療養費に係る生活療養の費用の額の算定に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第99号) そしてこのほど東京国税局は、上記の取扱いに関連する文書回答事例を公表した。 本事例の照会者は、老人福祉法第29条第1項の規定による届出が行われている有料老人ホームで、入所者に対する食事の提供(法令の要件を充たすもの)を行っているのだが、その提供の対価は下記のように、日額の食材費(食材の調達費)と月額の業務委託費(調理に係る費用)で構成されている。 ※ 1 業務委託費は、欠食(1日3食とも食べないことをいう。)の有無にかかわらず、月額31,000円となる(消費税別)。 2 食材費は1日3食800円となる。本件入居者は800円(消費税別)に喫食(欠食以外のことをいう。)日数を乗じた金額を当月分の食材費として支払う。 3 欠食の場合に限り、1日分の食材費は発生しない。 上記の場合の1食当たりの基準額及び1日当たりの限度額の計算に当たっては、「食材費」は食材を調達するための費用で、「業務委託費」は調理に係る費用であり、ともに飲食料品の提供を行うために要するものであることから、食材費と業務委託費が区分されている場合であっても、食材費と業務委託費の合計額が飲食料品の提供の対価の額になるとした。 その上で、月額で定められた業務委託費を含む飲食料品の提供の対価の額が1食につき基準額(640円)以下であり、かつ1日の累計額が限度額(1,920円)以下であるかどうかの判定を行う合理的な方法として、①業務委託費の額を月の日数で除して食材費を含む「1日当たりの食費の累計額」を算定し、②その累計額を1日当たりの食数で除して「1食当たりの金額」を算定する考え方を示し、この方法で「1日当たりの食費の累計額」及び「1食当たりの金額」を計算すると、下表のとおり、いずれの場合においても限度額及び基準額以下となることから、軽減税率の対象となるという見解を示した。 なお、有料老人ホームが提供する飲食料品の軽減税率については、1日3食の他に間食を提供している場合の累計額の取扱い(問80)や、給食事業者が有料老人ホームとの委託契約により食事の調理を行っている場合の取扱い(問83)など、国税庁の「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」の関連問答も合わせて確認しておきたい。 (了)
《速報解説》 10月1日からの特別法人事業税の創設等、 地方法人課税の偏在是正措置に留意 ~財産評価基本通達も一部改正へ~ Profession Journal編集部 消費税率の2度にわたる引上げ延期の影響で、ここまで適用が延期されてきた地方法人課税の偏在是正措置もいよいよ適用が開始される。具体的には、令和元年10月1日以後開始事業年度から、以下の改正が行われることになる。 このほど国税庁は9月25日付で「地方法人税の税率の改正のお知らせ」を公表、平成31年4月1日以後終了課税事業年度分の申告書様式は、改正前後に対応させるために「4.4%」と「10.3%」の両方の税率を記載している旨等、上記改正①②に関する周知を図っている。 また上記改正③~⑤に関しては、9月27日付で「財産評価基本通達の一部改正について(法令解釈通達)」を公表、取引相場のない株式等を評価する場合の純資産価額方式における法人税額等相当額について定めた財産評価基本通達186-2を改正した(改正のあらまし(情報)も同時に公表)。 改正通達では、186-2に定めた「法人税率等の合計割合」の算定根拠について該当する部分が次のとおり改正されている(令和元年10月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した取引相場のない株式等の評価に適用)。 なお下表のとおり、今回の改正による令和元年10月1日以後の「法人税率等の合計割合」は改正前と同じ割合となることから、その割合については37%のまま改正されていない。 【参考】令和元年10 月1日以後に開始する事業年度等の「法人税率等の合計割合」の内訳 (※) 国税庁ホームページより さらに上記改正通達を受け評価明細書の様式等について定めた「相続税及び贈与税における取引相場のない株式等の評価明細書の様式及び記載方法等について」も一部改正が行われている。 冒頭の①~⑤は過年度の税制改正から今年度改正にわたって行われてきたことから、認識が薄れている可能性もあり、消費税率引上げに注目が集まる中で、上記改正への対応も失念しないよう留意したい。 (了)
2019年9月26日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.337を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第63回】 「デジタル経済の中の税務」 税理士 山本 守之 1 BEPSプロジェクトの流れ BEPSプロジェクトとは、多国籍企業の活動実態と国際課税のルールの間に生じたずれや隙間を狙った過度な租税回避を抑制し、また、企業の公平な競争条件を確保するといった観点から、国際課税のルールを見直して、各国が協調して、こうしたずれや隙間をなくしていこうという国際的な取組みです。 OECDは、2012年にBEPSプロジェクトを立ち上げました。G20のメンバーの支持を得て、2015年9月に「最終報告書」がとりまとめられました。現在129ヶ国・地域が参加しています。 BEPSプロジェクトは次のようになっています。 (出所) 財務省資料 2 BEPS最終報告書 (出所) 財務省資料 上表のAの行動1については、消費税に関するガイダンスがまとまり、その後日本は行動10まで2015年度改正(平成27年度)で対応しました。しかし、法人税の問題は2015年でまとまらず、2020年までにまとめようとして議論が進んでいます。 3 国際的課税逃れ対策 次の図は、国際的課税逃れ対策(BEPS・税の情報交換)の2つの検討状況を示したものです。 (出所) 財務省資料 上図の左側(BEPS)は租税回避に対処しようとするもので、右側(税の透明性・情報交換)は主に脱税防止を念頭においた議論です。税の透明性・情報交換の関係については非居住者の金融口座情報の自動的交換が各国で行われており、このような進展を踏まえ、昨年、税の透明性の基準が改定されました。この新基準を満たしていない非協力的な国のリストを更新していこうという取組みをしているところです。 4 G20のロードマップ 2019年6月8日のG20にて承認された経済協力開発機構(OECD)「経済のデジタル化によって生じる租税問題を解決するためのロードマップ」は、全ての企業(デジタル企業以外も)を対象と考えています。 デジタル経済の発達に伴い、シェアリングエコノミー(ヒト・モノ・場所・乗り物・お金など、個人が所有する活用可能な資産を、インターネットを介して個人間で貸し借りや交換)という新たな経済が生まれています。 ギグ・ワーカーも増えており、ギグ・エコノミー(インターネットを通して単発の仕事を受注)と呼ばれています。 わが国では、「働き方改革」で副業・兼業が増え、同じような状況が生じています。ギグ・ワーカー、ギグ・エコノミーに、税制や社会保障は適切に対応していかなければなりませんが、追いついていないのが実情です。税負担の公平性、タックス・ギャップの拡大といった問題に、わが国の対応は遅れています。 デジタル経済の中で税務はどう対応していくかを研究しなければなりません。 (了)
谷口教授と学ぶ 税法の基礎理論 【第20回】 「租税法律主義と租税回避との相克と調和」 -実質主義と租税回避との相克- 大阪大学大学院高等司法研究科教授 谷口 勢津夫 Ⅰ はじめに 前回まで、「租税法律主義と実質主義との相克」という主題の下、税法の解釈適用の「過形成」を検討してきたが、その検討を始めるに当たって、第6回で「税法の解釈適用論上の原理的課題」という副題の下、実質主義について、特に租税法律主義との相克の場面を念頭に置いて、その概要を述べた(特にⅡ参照)。 そこでは、「税(法)は私的経済活動の上に建てられた『家』のようなものである」ことを前提にして、「軟弱地盤の上に建つ家」にみられるが如き「建付けの悪さ」をいわば「建材の柔軟化」によって解消しようとする考え方として、実質主義を比喩的に描写した(【42】=拙著『税法基本講義〔第6版〕』(弘文堂・2018)の欄外番号。以下同じ)。 そのような実質主義に基づく課税すなわち実質課税の必要性について、的確な整理・指摘を行うものとして、次の見解(品川芳宣「実質課税の原則」金子宏ほか編『実践租税法大系(上)基本法編』(税務研究会・1981年)53-55頁。下線筆者)がある。少し長くなるが、そのまま引用しておこう。 上記の見解は、確かに、実質課税の必要性について的確な整理・指摘を行うものではあるが、しかし、「公平の原則」に租税の賦課徴収のための税法の解釈適用上「最高の優位性」を承認することを前提にして実質課税の必要性を説く点において、第2回のⅢで述べたように「含み公平観」を前提にして税法の解釈適用を行うべきであるとする私見とは、明らかに異なる。このような前提の違いが実質主義を論じる場合のスタンスの違いにつながるのであるが、そのことは、これまで「租税法律主義と実質主義との相克」という主題の下で税法の解釈適用の「過形成」に関して検討してきたところからも明らかであろうと思われ、また、これから租税回避に関する検討を通じても明らかにしていきたいと考えているので、今回は、そのことを指摘するにとどめることにする。 Ⅱ 実質主義の沿革 さて、前記の見解が説くように税法にとって必要とされる実質主義は、いつ頃から、どのような形で登場してきたのであろうか。実質主義の沿革については、その「発想の整理の必要」を説く立場から、次のような簡潔な整理がされている(忠佐市「租税法における実質主義の原則」法学新報86巻1・2・3号(1979年)7頁、8-9頁。下線筆者)。 上記の整理のうち、同族会社の行為計算否認規定をどのように性格づけるか、実質主義とどのように関係づけるかという点については(清永敬次『租税回避の研究』(ミネルヴァ書房・1995年/復刻版2015年)324-327頁[初出・1962年]、拙稿「同族会社税制の沿革及び現状と課題」税研192号(2017年)34頁、36頁参照)、租税回避論の沿革との関連で別途検討を要すると考えられるので、後の回に租税回避論の沿革をみる際に検討することにして、ここでは、差し当たり、上記の整理を前提にして、「国税通則法の制定に関する答申」(税制調査会第二次答申)の概要をみておこう。 同答申は、「国税通則法制定の機会において、各税を通ずる基本的な課税の原則として次のようにこれを明らかにするものとする。」(4頁。下線筆者)として、「実質課税の原則」規定の制定について次のように答申した(4頁。下線筆者)。 この点について、同答申の別冊「国税通則法の制定に関する答申の説明」は、第2章(実質課税の原則等)第1節(実質課税の原則の考え方)の冒頭(9頁)で、そして同章第2節(実質課税の原則に関する諸問題)の冒頭の「2・1 実質課税の原則の宣明」の中(11頁)で、それぞれ次のとおり述べている(下線筆者)。 その上で、前記「国税通則法の制定に関する答申の説明」は、「実質課税の原則に関する諸問題」として①「租税回避の問題」、②「特殊関係者等の行為計算の否認」及び③「帰属の問題」、並びに「実質課税の原則に関連する問題」として④「無効な法律行為又は取り消しうべき法律行為と課税」及び⑤「不法原因所得と課税」を取り上げ、それぞれについて詳細な説明を加えている(11-25頁)。 そこでは、前記の①は「広義の実質課税の原則の一環」(13-14頁)として、②は「特殊関係者間の行為計算という特殊な分野に限られた問題」(19頁)としてそれぞれ説明され、また、③については①及び②との「差異」(20頁)を前提にして説明がされ、さらには、④及び⑤は「実質課税の原則に関連する問題」(22頁)ではあるが少なくとも立法的対応としてはこの原則の枠内での検討はされていないことからすると、「国税通則法の制定に関する答申」においても、「それ[=実質課税の原則]についての考え方が必ずしも統一されていない」(先に引用した、同答申の「説明」9頁)ように思われる。 しかも、実質課税の原則については、国税通則法の制定時に「その制度化につき将来の検討に委ねることを適当とするもの」(大蔵省主税局「国税通則法の制定について」税法学132号(1961年)27頁、28頁)の1つとして制度化が見送られた以上、同答申後十数年を経た後においても、「論者の説くところは一人一説の感すらあるように多彩である。」(忠・前掲論文8頁)と評されるのも自然の成り行きであろう。 とはいえ、同答申において税制調査会が前記の①~⑤の問題を実質主義に関する問題あるいは関連する問題として議論の俎上に載せたのは、ドイツにおける経済的観察法(wirtschaftliche Betrachtungsweise)に関する議論の影響を受けたものと考えられる。確かに、わが国における実質主義の嚆矢ないし淵源ともいうべき行政裁判所の判決は所得の人的帰属に関するものであり(「実質主義の沿革」に関する前記引用参照)、「この発想はドイツ法の影響というよりも英米法の影響によるものと考えられそうである。」(忠・前掲論文26頁)という見方もできるかもしれないが、しかし、次のとおり(同26-27頁。下線筆者)、少なくとも戦後は、とりわけ同答申については、ドイツ税法の影響は否定できないと思われる。 もっとも、上記引用の最後にいう「税法独立主義」を含め、次のとおり全面的にドイツ税法の影響を説く論者もいた(田中勝次郎『法人税法の研究』(税務研究会・1965年)684頁)。 ちなみに、ドイツの経済的観察法に関するわが国の論文(清永・前掲書59頁以下[初出・1966年])末尾の「追記[1994年]」(同71頁)では、その議論の射程について次のとおり述べられている(同364-369頁[初出・1967年]も参照)。 Ⅲ 実質主義の「真骨頂」 実質主義の沿革に関する以上の概観からも窺い知ることができるように、実質主義が「その意味するところが常に曖昧で非常にとらえどころのないもの」(清永・前掲書362頁[初出・1967年])であることは確かであろう。ただ、そうであるが故に、いや、そうであるからこそ、実質主義の「真骨頂」は、「あまりにも漠然とした、そして問題に応じて国庫に対して税収を確保するための理論的な武器として用いられがちであった弾力的な実質主義の原則」(同頁)、すなわち、いわゆる経済的実質主義(【42】)に見出されるのである。 そして、その最も先鋭な矛先は租税回避に向けられてきた。その代表的な見解は次のようなものである(田中二郎『租税法〔第3版〕』(有斐閣・1990年)89頁。初版[1968年]では字句が若干異なる箇所があるが85頁。下線筆者)。 この見解は、租税回避の否認による課税について、その否認の根拠となる法律の規定の有無よりも公平負担の原則を決定的な基準とする点において、実質主義の「真骨頂」を体現するものといってよかろう(租税回避の否認に関する否認規定不要説については【72】参照)。換言すれば、この見解は、前回までの主題である「租税法律主義と実質主義との相克」という厳しい状況の下で、実質主義の側に立つことを宣明したものといえよう。そのような見解は裁判例においても採用されたことがある(①大阪高判昭和39年9月24日行集15巻9号1716頁、②東京地判昭和46年3月30日行集22巻3号399頁[東京高判昭和49年5月29日税資75号569頁も是認])。 Ⅳ おわりに 筆者は、以前、実質主義について、既にみた「一人一説」の如き状況の後の状況を総括して、「そうこうするうちに、おそらくは1980年代半ば以降、税法の解釈適用においても租税法律主義を重視する傾向が強まってくるに伴って、実質主義が実質主義それ自体として議論されることは徐々に少なくなってきたように思われる。」(拙稿「租税回避と税法の解釈適用方法論-税法の目的論的解釈の『過形成』を中心に-」岡村忠生編著『租税回避研究の展開と課題』(ミネルヴァ書房・2015年)1頁、5頁)と述べたことがあるが、そのような過程においてみられる、租税法律主義と実質主義との相克は、前記Ⅲでみたような実質主義と租税回避との相克とどのような関係にあると考えるべきであろうか。この問題は、突き詰めれば、租税法律主義と租税回避との関係をどのように捉えるべきかという問題であるといえよう。 租税法律主義と租税回避との関係は、単純な形式論理的思考によれば、実質主義を共通の「敵」とするもの同士の間における「敵の敵は味方」的な関係になりそうであるが、そうではなく、結論を先取りしていえば、相克(敵対性)と調和(同質性)を内包する関係として捉えるべきであると考えるところである。そのような関係の意味するところを、今後、租税回避を検討する中で、明らかにしていくことにしたい。 (了)
〈事例で学ぶ〉 法人税申告書の書き方 【第42回】 「特別償却の付表(15) 特定事業継続力強化設備等の 特別償却の償却限度額の計算に関する付表」 公認会計士・税理士 菊地 康夫 Ⅰ はじめに 本連載では、法人税申告書のうち、税制改正により変更もしくは新たに追加となった様式、実務書籍への掲載頻度が低い様式等を中心に、簡素な事例をもとに記載例と書き方のポイントを解説していく。 今回は、近年の自然災害が頻発している状況下において、サプライチェーンや地域の雇用等を支える中小企業及び小規模事業者の事業継続力を強化し、防災・減災設備への投資を促す観点から、平成31年(令和元年)度の税制改正により導入されたいわゆる「中小企業防災・減災投資促進税制」における「特別償却の付表(15) 特定事業継続力強化設備等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表」の記載の仕方を採り上げる。 Ⅱ 概要 この別表は、いわゆる中小企業防災・減災投資促進税制(特定事業継続力強化設備等の特別償却)を適用する場合に記載する。 本制度は、青色申告を提出する中小企業者(※1)が、改正中小企業等経営強化法(以下、「中小企業強靱化法」という)の施行の日(令和元年(2019年)7月16日)から令和3年(2021年)3月31日までの間に、中小企業強靭化法による経済産業大臣の認定を受けた「事業継続力強化計画」又は「連携事業継続力強化計画」(※2)に基づいて、一定の設備(以下「特定事業力強化設備等」という)を新規取得し事業の用に供したときは、その事業の用に供した日を含む事業年度において、取得価額の20%の特別償却ができる制度である。 (※1) 中小企業等経営強化法の中小企業者であって、租税特別措置法第42条の4第8項第6号の中小企業者その他これに準ずる法人に該当するものをいう。 (※2) 「事業継続力強化計画」は中小企業が単独で取り組む場合、「連携事業継続力強化計画」は複数の中小企業が連携して取り組む場合をいう。 本制度の対象となる特定事業力強化設備等をまとめると次のようになる。 なお制度の詳細については、中小企業庁のホームページを参考にしていただきたい。 Ⅲ 「特別償却の付表(15)」の書き方と留意点 (1) 設例 (2) 今回の付表が適用される事業年度 令和元年(2019年)7月16日以後終了する事業年度。 (3) 付表の記載例 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (4) 付表の各記載欄の説明 「適用要件等」 「中小企業者又は中小連結法人の判定」 (了)
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例78(贈与税)】 税理士 齋藤 和助 《基礎知識》 ◆医療法人の持分の放棄があった場合の贈与税の課税の特例(措法70の7の14) 認定医療法人(平成29年10月1日から令和2年(2020年)9月30日までの間に厚生労働大臣認定を受けた医療法人に限る)の持分を有する個人がその持分の全部又は一部の放棄(当該認定医療法人がその移行期限までに新医療法人への移行をする場合におけるその移行の基因となる放棄に限るものとし、その個人の遺言による放棄を除く)をしたことによりその認定医療法人が受けた経済的利益については、その認定医療法人に対し贈与税は課税されない。 なお、この特例は、認定医療法人が、その認定医療法人の持分を有する個人からその持分の全部又は一部を放棄することにより受けた経済的利益に係る贈与税の申告書を期限内に提出し、その申告書にその経済的利益についてこの特例の適用を受けようとする旨を記載し、一定の書類を添付した場合に限り適用される。 (了)
国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第33回】 「不動産の売主による買主の非居住者の確認義務」 税理士 菅野 真美 - 質 問 - 私は、個人から不動産を購入することになりました。売主は、契約書の住所は日本の住所になっていましたが、契約を交わす際に雑談で、「この不動産を売却して外国に移住する予定だ」と言ってました。ただ、契約の時には日本の住所なので、居住者からの購入と考えて、源泉税のことは考えなくてもいいですか。 ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷非居住者が不動産を売却した場合の課税関係 非居住者の日本での課税範囲は、国内源泉所得に限定されている(所法5➁一)。国内不動産を売却した場合は、その所得は国内源泉所得に該当するから(所法161①五)、非居住者であっても譲渡所得を申告しなければならない(所法164①二)。 ただし、恒久的施設のない非居住者の場合、わざわざ来日して確定申告するのは難しいと考えられることから、売却時に買主が一定の額を源泉徴収して、確定申告で精算することになっている。 源泉徴収税率(所得税及び復興特別所得税)は対価の10.21%が原則であるが(所法213①二、復興財確法28)、例外として、譲渡対価が1億円以下で、買主が個人であり、かつ、その個人又はその親族の居住の用に供するためのものである場合、所得税等の源泉徴収は不要である(所法161①五、所令281の3)。非居住者か否かは、対価の支払時点で判断する(所法212①)。 このように不動産の売主が非居住者の場合、原則的には源泉徴収が必要となるため、買主にとっては、売主が非居住者か否かで大きな違いがある。もし、非居住者であるにもかかわらず、源泉徴収せず、将来、税務調査で、売主が非居住者と判明した場合は、買主は源泉徴収税額に不納付加算税等を加えて納付しなければならない。ただし、国内にいない売主からその税額分を取り戻すのは難しいため、不動産の譲渡においては、売主が非居住者か否かの確認が重要となる。 今回は、不動産売買契約の途中で記載住所が変わった売主への対価の支払いについて、源泉徴収をしなかった買主が、売主が非居住者であることは確認できなかったとして課税当局の対応は不当であると主張した裁決事案を紹介する(平成27年10月分源泉徴収に係る所得税等の納税告知処分並びに不納付加算税の賦課決定処分、TAINSコード:F0-1-981)。 ▷どのような事案だったのか? この事案における取引を時系列で表すと、次のようになる。 上記で登場するいくつかの書類について、売主の住所はそれぞれ次のように記載されていた。 争点は、売買代金の支払いについて、買主が源泉徴収義務を負うか否かである。 ▷請求人の主張 請求人(買主)には源泉徴収義務はなく、理由は以下の通りと主張した。 なぜなら、本人確認は、売買の際に宅地建物取引業者が、売主は国内に住所があることを確認しており、売買契約書や手付金の領収書にも国内住所が記載されていたからであり、非居住者の事実を示す書類の提出は義務付けられていないので、非居住者の判定は難しい。 売買契約の日から覚書の日までの間に出国したことは予想されるが、非居住者かどうかは、課税庁や売主の協力がないとできない。支払いの際に居住者であると判定できなかった場合まで、非居住者への支払いとして源泉徴収義務を負わせるのは適当ではない。 ▷課税庁の主張 課税庁は、請求人には源泉徴収義務があり、理由は以下の通りと主張した。 不動産売買のような高価な取引において、売主が非居住者かどうかは重要な問題であるから、買主は調査確認をするはずだ。 買主は、覚書を見れば国外の住所が記載されていたのだから、売主に住民票の提出を求めれば容易に非居住者であったことは分かったはずである。それを怠ったということは、買主がなすべき非居住者か否かの判定を行っていなかったということだ。 ▷審判所の判断は 審判所は、請求人(買主)には源泉徴収義務があると判断した。理由は以下の通りである。 請求人は、売主が非居住者か否かを判定するのは難しいと主張するが、覚書や登記簿にはオーストラリアの住所が記載されている。覚書作成時や代金支払い時に、売主に住所の確認をすることができたにもかかわらず、行っていない。非居住者か否かの判定を行っていないのは請求人自身の責任であるから、請求人の主張は認められず、10月の残代金等の支払いについて源泉徴収義務があると判断した。 最近、非居住者が購入した日本の不動産の賃貸や、所有する日本の不動産の売却に税理士が絡むケースが増えている。継続的に非居住者の場合は、契約当初から源泉徴収義務の有無が分かるからミスをすることがないが、契約の中途で居住者が非居住者になったような場合は、非居住者判定が難しい場合も多い。 源泉税漏れは負担が非常に大きくなることが多いので、本件のようなミスが生じないように細心の注意を払うよう心掛けなければならない。 (了)
措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の 譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第14回】 「「法人運営が適正であること」とは」 公認会計士・税理士・社会保険労務士 中村 友理香 - 質 問 - 現物寄附を行った際、取得価額と時価との差額についてのみなし譲渡課税が非課税となるための条件として、現物寄附を受領する公益法人等への寄附が「寄附者の所得税の負担を不当に減少させ、又は寄附者の親族その他これらの者と特別の関係がある者の相続税もしくは贈与税の負担を不当に減少させる結果とならないと認められること」が課されています。 この「不当減少」に該当するか否かの判断基準の1つとして、公益法人等の運営が適正であること、という要件を満たす必要があるとされています。ここで言うところの「法人運営の適正」とは、具体的にどのようなことを指すのですか。 - 回 答 - その公益法人等の運営組織が適正であるかどうかは、 ① 運営組織の適正性が定款等の規定内容により担保されていること ② 事業運営や役員選任が適正に行われていること ③ 法人の経理が適正に行われていること 以上の3点をもって判断されます。 ①の定款等の規定内容については、措置法40条通達18において詳細に解説されており、法人の態様に応じ各事項が定められていることが必要とされています。 ○●○◆ 解 説 ◆○●○ みなし譲渡課税が非課税となるための条件として、当該寄附を受けた法人の運営組織が適正であるとともに、その寄附行為、定款又は規則において、その理事、監事、評議員その他これらの者に準ずるもの(以下「役員等」という)のうち親族関係を有する者及びこれらと特殊の関係がある者(以下「親族等」という)の数がそれぞれの役員等の数のうちに占める割合は、いずれも3分の1以下とする旨の定めがあることが必要とされています。 運営組織が適正か否かについては、財産の贈与又は遺贈を受けた公益法人等について、次に掲げる事実が認められるかどうかにより判断されます(措置法40条通達18)。 (1)に掲げる「一定の事項」とは、それぞれ次の事項を言います。 (※) 表形式のものは[こちら]からご覧ください。 (了)
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第90回】 すてきナイスグループ株式会社 「第三者調査委員会調査報告書(2019年7月24日付)」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【第三者委員会の概要】 【すてきナイスグループ株式会社の概要】 すてきナイスグループ株式会社(以下「すてきナイス」と略称する)は、1950年6月設立。設立時の社名は市売木材。数次の商号変更を経て、2000年10月よりナイス株式会社。2007年10月、持株会社体制に移行し、商号をすてきナイスグループ株式会社に変更して、現在に至る。建築資材の販売、住宅・マンションの販売、仲介、賃貸、建築工事業などを事業領域とする。連結子会社47社を含むグループ会社は92社。売上高242,926百万円、経常利益762百万円、資本金22,069百万円。従業員数2,654名(いずれも2019年3月期、連結ベース)。本店所在地は神奈川県横浜市。東京証券取引所第1部上場。会計監査人は監査法人原会計事務所(以下「原会計事務所」と略称する)。 中核となる事業会社であるナイス株式会社(以下「ナイス」と略称する)は、売上高203,239百万円、経常利益490百万円。 【調査報告書の概要】 1 第三者委員会による調査結果 (1) 業績予想の下方修正 平成27年3月期第2四半期決算で、すてきナイスは、公表していた連結業績予想を大幅に下回る実績となり、経常損失約17億円を計上するに至った。そこで、平成26年10月31日、平成27年3月期決算の業績予想を下方修正する。下方修正された業績予想と、実績については、次表のとおりである。 〇平成27年3月期の業績予想の推移と実績(単位:百万円) ところが、実態はさらに業績悪化が進んでいた。決算期末直前におけるすてきナイスの業績見込みの推移を、調査報告書から引用する。 まず、経営陣が認識していたとされる業績見込みは以下のとおりである。 〇平成27年3月5日時点での見込み(単位:百万円) 次いで、経理部員の作成した決算見込みは以下のように推移する。 〇平成27年3月13日時点での見込み(単位:百万円) 〇平成27年3月24日時点での見込み(単位:百万円) ここで、調整として予定されていた決算対策は次のとおりである。 (※) 第三者委員会の定義によれば、「すてきナイスと直接又は間接の資本関係がないものの実質的にナイスグループが支配している会社」であり、本件では、平田元会長個人が大株主であり、ナイスグループ社員が取締役に就任していることなどが問題視された。 (2) グループ外支配会社に対する売上計上の詳細 第三者委員会設置の経緯となったのは、上記の決算対策のうち、グループ外支配会社2社に対する土地やマンションなどの販売が、売上として計上することが会計基準に違反していないかどうかということであった。2社との取引のうち、第三者委員会が売上計上を認めなかった不動産取引を図示すると以下のとおりとなる。 第三者委員会は、すてきナイスの元代表取締役会長兼CEOの平田恒一郎氏(5月20日付で取締役を辞任。以下「平田元会長」と略称する)が実質的に支配するザナック設計コンサルタント株式会社(以下「ザナック」と略称する)に対する、ナイス及びナイスエスト株式会社が販売した宅地やマンションなどの不動産販売取引については、「すてきナイスの平成27年3月期の決算対策として、経済的実体のない売上・利益の計上目的」で行われたものであったこと、ナイスが実質的に支配していることから子会社と認定されること、また、譲渡不動産の対価がナイス及びナイスコミュニティーサービス株式会社ほかの関係会社からの融資によって決済されていることから、「財貨の移転」がなされているとは言いがたいことなどを理由に、本件不動産の販売とそれに伴う仲介手数料の売上計上は認められないと判断した。 (3) 監査役による会計監査人への相談 第三者委員会によって売上計上が不適切であったと判断されたザナックとの取引については、当時、すてきナイス及びナイスの常勤監査役であった神長博志氏が、会計上の疑義があると感じて、平成27年4月に、すてきナイスの会計監査人である原会計事務所の公認会計士に報告・相談しているが、同公認会計士は、同年5月ころ、「ザナックが関係会社に当たると仮定しても、取引に会計上の問題はない」旨の説明を行ったということである。 これに対し、第三者委員会は、連結の範囲の検討や嫌疑の対象となった不動産販売取引に関する監査手続き及び判断について、すてきナイスの主張を批判的に検討すべきものと考えられる場面が存在し、より慎重な対応が求められたものと思料するとコメントしている(報告書p.169)。 (4) 原因分析 第三者委員会は、「直接的な原因」として、「動機」「機会」「正当化事由」という、「不正のトライアングル仮説」に基づく分析を行っている。その中で、経営者側の動機については平成27年3月期決算が最終的に赤字になることはもちろん、すでに下方修正された業績予想値について再度の下方修正を行わざるを得ない事態となることは、なんとしても回避したいとの強い意向があったと認定している。とくに、平田元会長については、自らが主導してきた住宅事業の業績悪化を懸念していたとも指摘している。 また、「背景事情(間接的な原因)」として、次の7項目を挙げている。 今回逮捕が報じられた創業家出身で大株主でもある平田元会長の強い影響力を原因のトップに挙げ、その結果として、再発防止策のトップには「経営陣の刷新」が提言されている。こうした原因分析は、嫌疑の対象となった不動産取引について、平田元会長が了解していたという事実に基因している。 また、「ガバナンス、内部統制の不全」の中では、すてきナイス及びナイスに共通する内部監査部門について、「一人又は二人が担当しているに過ぎなかった」うえ、ナイスの監査室は「社長直轄の組織ではなく、経営推進本部の管轄下にあり、経理部を含む経営推進本部に対して適正に牽制機能を果たすことが難しい組織となっていた」と指摘して、不適切な不動産販売取引が行われたことの間接的な原因としている。 なお、すてきナイスグループ全体の従業員数2,654名に対し、持株会社の従業員数は20名であり、有価証券報告書によれば、「総務及び財務等の管理部門」の人員であるということである(2019年3月期有価証券報告書p.8)。 2 再発防止に向けた提言 上記の原因分析を受けた第三者委員会による再発防止策の提言は次のとおりである。 【調査報告書の特徴】 2019(令和元)年7月25日、すてきナイスは、同社の平田元会長、元代表取締役社長日暮清氏(5月20日付で取締役を辞任、以下「日暮元社長」と略称する)、元取締役大野弘氏(5月30日付で取締役を辞任、以下「大野元取締役」と略称する)の3名が、金融商品取引法違反(有価証券報告書虚偽記載)で、横浜地方検察庁に逮捕されたというリリースを公表した。逮捕との因果関係は不明であるが、すてきナイスは、その前日、第三者委員会による調査報告書を受領して、公表していた。 調査報告書によって判明したのは、再度の業績下方修正公表を回避するための決算対策の数々であった。 1 すてきナイスにおける連結会社の範囲 調査報告書では、すてきナイスが、本来連結すべき子会社について、「住宅事業における地方進出のためのテストマーケティング目的」で設立したとして、質的に重要性が低いとの解釈から、連結の範囲に含めていなかったことが明らかにされている。 平成27年3月期以降、すてきナイスと原会計事務所は、決算期ごとに量的重要性の判定を行う中で、すてきナイスは、原会計事務所の提言に従って、子会社の解散、連結会社への吸収合併を進めるとともに、多くの非連結子会社を連結の範囲に取り入れている。 第三者委員会の試算によると、非連結子会社の合算値ベースの剰余金(持分相当)は、平成26年3月期以降一貫してマイナスとなっており、第三者委員会は、「量的重要性がないとまでは言えない水準である」ことから、すてきナイスが、連結の範囲に関する会計基準及び実務上の判断基準を遵守していたとは言えないと結論づけている。 なお、原会計事務所は、昭和37年の東証2部上場時からすてきナイスの会計監査を担当しているということであり、こうした長い受任期間が原因で、「馴れ合いや緊張感の欠如によって監査上の判断が甘くなる」ことが原因の1つとして指摘されるようであれば、現在、議論が進められている「会計監査人のローテーション制度」の導入に一石を投じるものとなるかもしれない。 2 すてきナイスとナイスにおける内部監査部門 すてきナイスの2019年3月期有価証券報告書には、内部監査について次のような記述が見られる(p.33)。 この記述は、本件嫌疑の発生した平成27年3月期まで遡ってもまったく同一であることが確認できる。その実態について、第三者委員会は、次のように説明している(調査報告書p.24)。 そして、中核事業会社であるナイスの内部監査体制について、以下のとおり説明している(調査報告書p.25)。 3 持株会社による事業会社の統制 上述のように、すてきナイスグループは、持株会社の内部監査部門が事業会社と兼務であり、先任者は不在という状況であった。事業会社に内部監査部門を置き、スリー・ライン・ディフェンスの機能を事業会社で完結させ、持株会社には内部監査機能を持たせないというのも1つの考えではあろうが、本来であれば、持株会社に内部監査機能を集約して、グループ全体の内部監査を横断的に行うことによって内部統制の強化を図るべきではないかと考える。 こうした組織論について、すてきナイスグループの第三者委員会は、調査報告書(p.166)において、持株会社化の目的を次のように述べている。 そのうえで、第三者委員会は、再発防止策の1つとして、「ガバナンス体制の根本的な改善・再構築」という項目の中で、「すてきナイス及びナイスの位置づけの再検討」を促している。 持株会社と事業会社が一体として機能、運営していたのでは、持株会社が事業会社の事業遂行について適切に監視監督を行うことはできないという、第三者委員会の提言であろうと思料する。 4 すてきナイスグループによる再発防止策 8月23日、すてきナイスは、「第三者委員会調査報告書の受領に伴う再発防止策のお知らせ」というリリースを出し、下記のとおり、広範な再発防止策の骨子を公表した。 添附された組織図によると、従前、すてきナイスに所属していた社員20名のうち12名が兼務であったところ、再発防止策の1つである「組織改革によるガバナンス強化」の中で掲げられた「内部監査機能の強化」「経理部門・法務部門・人事部門の機能強化」などを実施するため、監査役室の設置や、内部統制室の人員増強(1名⇒5名)、グループ経営推進本部の中に財務部、経理部(各1名から各10名に人員も増強)などを独立の組織として配置することなどとともに、すてきナイスの社員を60名まで増やすことが明示されている。 こうした組織の強化、人員の増強は、「すてきナイスが持株会社として、ナイスその他の事業会社の事業遂行の監督等を適切に行い得るように」すべきであるという第三者委員会の提言に沿ったものとして評価できる。 5 証券取引等監視委員会よる告発と起訴 8月13日、証券取引等監視委員会は、「すてきナイスグループ株式会社に係る虚偽有価証券報告書提出事件の告発について」というリリースを出した。「告発の対象となった犯則事実」の一部を引用する(下線は筆者による)。 文中、犯則嫌疑法人とは「すてきナイス」、犯則嫌疑者Aが平田元会長、Bが日暮元社長、Cが大野元取締役をそれぞれ意味している。 翌14日には、すてきナイスは、法人としてのすてきナイス、平田元会長及び日暮元社長の2名が、金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)の嫌疑で横浜地方検察庁に起訴されたことを公表した。その後の9月13日付日本経済新聞電子版によれば、大野元取締役は不起訴処分になったが、その理由を検察は明らかにしていないということである。 (了)