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〔会計不正調査報告書を読む〕 【第90回】すてきナイスグループ株式会社「第三者調査委員会調査報告書(2019年7月24日付)」 

筆者:米澤 勝

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〔会計不正調査報告書を読む〕

【第90回】

すてきナイスグループ株式会社

「第三者調査委員会調査報告書(2019年7月24日付)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【第三者委員会の概要】

〔適時開示〕

〔第三者委員会〕

【委員長】

日野 正晴(弁護士)

【委 員】

松井 秀樹(弁護士)

紙野 愛健(公認会計士)

他に、丸の内総合法律事務所所属の弁護士6名、各々独立した会計事務所に所属する公認会計士6名、株式会社FRONTEOが第三者委員会の調査実務を補助している。

〔調査期間〕

2019(令和元)年5月30日から同年7月24日まで

〔調査の目的〕

(1) すてきナイスの平成27年3月期に係る不動産物件の取引に関する架空売上計上の疑い(本件嫌疑)に係る事実関係の調査及び本件嫌疑に係る会計処理の適切性の検証

(2) 本件嫌疑の類似事案の有無の確認

(3) 上記(1)及び(2)において問題が発見された場合には、その原因究明及び再発防止策の提言

〔調査結果〕

 

【すてきナイスグループ株式会社の概要】

すてきナイスグループ株式会社(以下「すてきナイス」と略称する)は、1950年6月設立。設立時の社名は市売木材。数次の商号変更を経て、2000年10月よりナイス株式会社。2007年10月、持株会社体制に移行し、商号をすてきナイスグループ株式会社に変更して、現在に至る。建築資材の販売、住宅・マンションの販売、仲介、賃貸、建築工事業などを事業領域とする。連結子会社47社を含むグループ会社は92社。売上高242,926百万円、経常利益762百万円、資本金22,069百万円。従業員数2,654名(いずれも2019年3月期、連結ベース)。本店所在地は神奈川県横浜市。東京証券取引所第1部上場。会計監査人は監査法人原会計事務所(以下「原会計事務所」と略称する)。

中核となる事業会社であるナイス株式会社(以下「ナイス」と略称する)は、売上高203,239百万円、経常利益490百万円。

 

【調査報告書の概要】

1 第三者委員会による調査結果

(1) 業績予想の下方修正

平成27年3月期第2四半期決算で、すてきナイスは、公表していた連結業績予想を大幅に下回る実績となり、経常損失約17億円を計上するに至った。そこで、平成26年10月31日、平成27年3月期決算の業績予想を下方修正する。下方修正された業績予想と、実績については、次表のとおりである。

〇平成27年3月期の業績予想の推移と実績(単位:百万円)

ところが、実態はさらに業績悪化が進んでいた。決算期末直前におけるすてきナイスの業績見込みの推移を、調査報告書から引用する。

まず、経営陣が認識していたとされる業績見込みは以下のとおりである。

〇平成27年3月5日時点での見込み(単位:百万円)

次いで、経理部員の作成した決算見込みは以下のように推移する。

〇平成27年3月13日時点での見込み(単位:百万円)

〇平成27年3月24日時点での見込み(単位:百万円)

ここで、調整として予定されていた決算対策は次のとおりである。

 グループ外支配会社(※)に対する土地やマンションなどの不動産販売

 投資有価証券の売却

 非連結としていた子会社のうち業績の良い子会社等を連結に組入れ

 非連結子会社及びグループ外支配会社への出向者の人件費の遡及請求

(※) 第三者委員会の定義によれば、「すてきナイスと直接又は間接の資本関係がないものの実質的にナイスグループが支配している会社」であり、本件では、平田元会長個人が大株主であり、ナイスグループ社員が取締役に就任していることなどが問題視された。

(2) グループ外支配会社に対する売上計上の詳細

第三者委員会設置の経緯となったのは、上記の決算対策のうち、グループ外支配会社2社に対する土地やマンションなどの販売が、売上として計上することが会計基準に違反していないかどうかということであった。2社との取引のうち、第三者委員会が売上計上を認めなかった不動産取引を図示すると以下のとおりとなる。

第三者委員会は、すてきナイスの元代表取締役会長兼CEOの平田恒一郎氏(5月20日付で取締役を辞任。以下「平田元会長」と略称する)が実質的に支配するザナック設計コンサルタント株式会社(以下「ザナック」と略称する)に対する、ナイス及びナイスエスト株式会社が販売した宅地やマンションなどの不動産販売取引については、「すてきナイスの平成27年3月期の決算対策として、経済的実体のない売上・利益の計上目的」で行われたものであったこと、ナイスが実質的に支配していることから子会社と認定されること、また、譲渡不動産の対価がナイス及びナイスコミュニティーサービス株式会社ほかの関係会社からの融資によって決済されていることから、「財貨の移転」がなされているとは言いがたいことなどを理由に、本件不動産の販売とそれに伴う仲介手数料の売上計上は認められないと判断した。

(3) 監査役による会計監査人への相談

第三者委員会によって売上計上が不適切であったと判断されたザナックとの取引については、当時、すてきナイス及びナイスの常勤監査役であった神長博志氏が、会計上の疑義があると感じて、平成27年4月に、すてきナイスの会計監査人である原会計事務所の公認会計士に報告・相談しているが、同公認会計士は、同年5月ころ、「ザナックが関係会社に当たると仮定しても、取引に会計上の問題はない」旨の説明を行ったということである。

これに対し、第三者委員会は、連結の範囲の検討や嫌疑の対象となった不動産販売取引に関する監査手続き及び判断について、すてきナイスの主張を批判的に検討すべきものと考えられる場面が存在し、より慎重な対応が求められたものと思料するとコメントしている(報告書p.169)。

(4) 原因分析

第三者委員会は、「直接的な原因」として、「動機」「機会」「正当化事由」という、「不正のトライアングル仮説」に基づく分析を行っている。その中で、経営者側の動機については平成27年3月期決算が最終的に赤字になることはもちろん、すでに下方修正された業績予想値について再度の下方修正を行わざるを得ない事態となることは、なんとしても回避したいとの強い意向があったと認定している。とくに、平田元会長については、自らが主導してきた住宅事業の業績悪化を懸念していたとも指摘している。

また、「背景事情(間接的な原因)」として、次の7項目を挙げている。

 創業家の強い影響力

 ガバナンス、内部統制の不全

 企業風土

 会計監査人の監査について

 会計に関する知識の欠如

 内部通報制度が殆ど利用されていなかったこと

 多くの非連結会社及びグループ外支配会社の存在

今回逮捕が報じられた創業家出身で大株主でもある平田元会長の強い影響力を原因のトップに挙げ、その結果として、再発防止策のトップには「経営陣の刷新」が提言されている。こうした原因分析は、嫌疑の対象となった不動産取引について、平田元会長が了解していたという事実に基因している。

また、「ガバナンス、内部統制の不全」の中では、すてきナイス及びナイスに共通する内部監査部門について、「一人又は二人が担当しているに過ぎなかった」うえ、ナイスの監査室は「社長直轄の組織ではなく、経営推進本部の管轄下にあり、経理部を含む経営推進本部に対して適正に牽制機能を果たすことが難しい組織となっていた」と指摘して、不適切な不動産販売取引が行われたことの間接的な原因としている。

なお、すてきナイスグループ全体の従業員数2,654名に対し、持株会社の従業員数は20名であり、有価証券報告書によれば、「総務及び財務等の管理部門」の人員であるということである(2019年3月期有価証券報告書p.8)。

2 再発防止に向けた提言

上記の原因分析を受けた第三者委員会による再発防止策の提言は次のとおりである。

(1) 経営陣の刷新等

(2) ガバナンス体制の根本的な改善・再構築

(3) 企業風土の改革~全社的な企業倫理と法令順守(コンプライアンス)意識の確立

(4) 会計監査人とのコミュニケーション

(5) 内部通報制度の再構築

(6) 連結範囲の見直し及び子会社化、関係会社等の整理

 

【調査報告書の特徴】

2019(令和元)年7月25日、すてきナイスは、同社の平田元会長、元代表取締役社長日暮清氏(5月20日付で取締役を辞任、以下「日暮元社長」と略称する)、元取締役大野弘氏(5月30日付で取締役を辞任、以下「大野元取締役」と略称する)の3名が、金融商品取引法違反(有価証券報告書虚偽記載)で、横浜地方検察庁に逮捕されたというリリースを公表した。逮捕との因果関係は不明であるが、すてきナイスは、その前日、第三者委員会による調査報告書を受領して、公表していた。

調査報告書によって判明したのは、再度の業績下方修正公表を回避するための決算対策の数々であった。

1 すてきナイスにおける連結会社の範囲

調査報告書では、すてきナイスが、本来連結すべき子会社について、「住宅事業における地方進出のためのテストマーケティング目的」で設立したとして、質的に重要性が低いとの解釈から、連結の範囲に含めていなかったことが明らかにされている。

平成27年3月期以降、すてきナイスと原会計事務所は、決算期ごとに量的重要性の判定を行う中で、すてきナイスは、原会計事務所の提言に従って、子会社の解散、連結会社への吸収合併を進めるとともに、多くの非連結子会社を連結の範囲に取り入れている。

第三者委員会の試算によると、非連結子会社の合算値ベースの剰余金(持分相当)は、平成26年3月期以降一貫してマイナスとなっており、第三者委員会は、「量的重要性がないとまでは言えない水準である」ことから、すてきナイスが、連結の範囲に関する会計基準及び実務上の判断基準を遵守していたとは言えないと結論づけている。

なお、原会計事務所は、昭和37年の東証2部上場時からすてきナイスの会計監査を担当しているということであり、こうした長い受任期間が原因で、「馴れ合いや緊張感の欠如によって監査上の判断が甘くなる」ことが原因の1つとして指摘されるようであれば、現在、議論が進められている「会計監査人のローテーション制度」の導入に一石を投じるものとなるかもしれない。

2 すてきナイスとナイスにおける内部監査部門

すてきナイスの2019年3月期有価証券報告書には、内部監査について次のような記述が見られる(p.33)。

内部監査としては、代表取締役直轄の内部統制室(1名)を設置しており、法令遵守に向けた監査および啓蒙活動を実施し、業務の適正の確保に努めております。

この記述は、本件嫌疑の発生した平成27年3月期まで遡ってもまったく同一であることが確認できる。その実態について、第三者委員会は、次のように説明している(調査報告書p.24)。

内部統制室は、すてきナイスの内部監査部門として位置づけられていた。しかしながら、その人員は、ナイス監査室長との兼務者1名から構成されており、その実務はナイス監査室の人員を通じて行っていた。

そして、中核事業会社であるナイスの内部監査体制について、以下のとおり説明している(調査報告書p.25)。

監査室は、ナイスの内部監査部門ではあるが、社長直轄の組織ではなく、ナイスの経営推進本部の一組織として位置づけられていた。平成27年3月期には、3名の室員によって構成されており、実施の運営は、監査室長がすてきナイスの内部監査室長を兼務することにより、すてきナイスの内部統制室と一体的に運営されていた。

3 持株会社による事業会社の統制

上述のように、すてきナイスグループは、持株会社の内部監査部門が事業会社と兼務であり、先任者は不在という状況であった。事業会社に内部監査部門を置き、スリー・ライン・ディフェンスの機能を事業会社で完結させ、持株会社には内部監査機能を持たせないというのも1つの考えではあろうが、本来であれば、持株会社に内部監査機能を集約して、グループ全体の内部監査を横断的に行うことによって内部統制の強化を図るべきではないかと考える。

こうした組織論について、すてきナイスグループの第三者委員会は、調査報告書(p.166)において、持株会社化の目的を次のように述べている。

本来、持株会社形態をとる主要な目的の一つは、事業会社の事業遂行の監督等を行う持株会社と、実際の事業遂行を行う事業会社とを分離することにより、法令順守を含めた事業会社における事業遂行を適切に管理、監督することにある。

そのうえで、第三者委員会は、再発防止策の1つとして、「ガバナンス体制の根本的な改善・再構築」という項目の中で、「すてきナイス及びナイスの位置づけの再検討」を促している。

すてきナイスが持株会社として、ナイスその他の事業会社の事業遂行の監督等を適切に行い得るように、すてきナイスとナイスが一体として機能、運営されるような位置づけを再検討すべきである。

例えば、すてきナイス及びナイスの役職員の兼任体制を見直し、各役職員に適切に権限を分配するとともに、各取締役会等は、分離独立した形でそれぞれを実施することが望ましい。

持株会社と事業会社が一体として機能、運営していたのでは、持株会社が事業会社の事業遂行について適切に監視監督を行うことはできないという、第三者委員会の提言であろうと思料する。

4 すてきナイスグループによる再発防止策

8月23日、すてきナイスは、「第三者委員会調査報告書の受領に伴う再発防止策のお知らせ」というリリースを出し、下記のとおり、広範な再発防止策の骨子を公表した。

1.当社グループにおける取締役等に対する人事上の措置等について

2.取締役会改革によるガバナンス強化について

3.組織改革によるガバナンス強化について

4.創業家(平田家)との決別について

5.内部通報制度の再構築について

6.法令遵守風土の構築について

7.適正な会計監査の実施について

添附された組織図によると、従前、すてきナイスに所属していた社員20名のうち12名が兼務であったところ、再発防止策の1つである「組織改革によるガバナンス強化」の中で掲げられた「内部監査機能の強化」「経理部門・法務部門・人事部門の機能強化」などを実施するため、監査役室の設置や、内部統制室の人員増強(1名⇒5名)、グループ経営推進本部の中に財務部、経理部(各1名から各10名に人員も増強)などを独立の組織として配置することなどとともに、すてきナイスの社員を60名まで増やすことが明示されている。

こうした組織の強化、人員の増強は、「すてきナイスが持株会社として、ナイスその他の事業会社の事業遂行の監督等を適切に行い得るように」すべきであるという第三者委員会の提言に沿ったものとして評価できる。

5 証券取引等監視委員会よる告発と起訴

8月13日、証券取引等監視委員会は、「すてきナイスグループ株式会社に係る虚偽有価証券報告書提出事件の告発について」というリリースを出した。「告発の対象となった犯則事実」の一部を引用する(下線は筆者による)。

犯則嫌疑者Aは、平成27年6月26日までは犯則嫌疑法人の実質的経営者であり、同日以降は犯則嫌疑法人の代表取締役会長であったもの、犯則嫌疑者Bは、平成22年6月から犯則嫌疑法人の代表取締役社長であったものであるが、犯則嫌疑者両名は、犯則嫌疑法人の取締役であったCと共謀の上、犯則嫌疑法人の業務に関し、平成27年6月26日、関東財務局長に対し、犯則嫌疑法人の平成26年4月1日から平成27年3月31日までの連結会計年度につき、営業利益が約4億9,800万円、経常損失が約1,800万円、当期純利益が約1億3,500万円であったにもかかわらず、架空売上を計上する方法により、営業利益を10億1,200万円、経常利益を4億9,600万円、当期純利益を4億8,800万円と記載した虚偽の連結損益計算書を掲載した有価証券報告書を提出し、もって重要な事項につき虚偽の記載のある有価証券報告書を提出したものである。

文中、犯則嫌疑法人とは「すてきナイス」、犯則嫌疑者Aが平田元会長、Bが日暮元社長、Cが大野元取締役をそれぞれ意味している。

翌14日には、すてきナイスは、法人としてのすてきナイス、平田元会長及び日暮元社長の2名が、金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)の嫌疑で横浜地方検察庁に起訴されたことを公表した。その後の9月13日付日本経済新聞電子版によれば、大野元取締役は不起訴処分になったが、その理由を検察は明らかにしていないということである。

(了)

「会計不正調査報告書を読む」は、不定期の掲載となります。

連載目次

会計不正調査報告書を読む

第1回~第70回 ※クリックするとご覧いただけます。

第71回~

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筆者紹介

  • 米澤 勝

    (よねざわ・まさる)

    税理士・公認不正検査士(CFE)

    1997年12月 税理士試験合格
    1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
    1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
    2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
    2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

    【著書】

    ・『新版 架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2019)

    ・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

    ・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

    【寄稿】

    ・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

    ・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

    【セミナー・講演等】

    一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
    「会計不正の早期発見
    ――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

    公益財団法人日本監査役協会主催
    情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

    株式会社プロフェッションネットワーク主催
    「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

     

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