《速報解説》 日本監査役協会関西支部 監査役スタッフ研究会が報告書 「監査活動の現状と監査役の役割・責任について」を公表 ~昨今のコーポレートガバナンス改革に伴い監査役監査全般について課題・問題点をとりまとめ~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成30年9月27日(ホームページ掲載日)、日本監査役協会関西支部監査役スタッフ研究会は「監査活動の現状と監査役の役割・責任について-コーポレートガバナンス改革を受けた実効的な監査役監査を目指して-」(以下「報告書」という)を公表した。 これは、平成27年5月に改正会社法、改正会社法施行規則の施行、同年6月にはコーポレートガバナンス・コードの適用が開始され、約3年が経過したこともあり、改めて監査役監査全般について、各社の監査活動の現状を調査し、それぞれの活動における課題や問題点等について研究を行ったものである。報告書にはアンケート結果も記載されているので、実務の動向などを知ることができる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 報告書は、第1章に機関設計毎の監査役の責任と権限に関する解説、第2章に監査活動に関する今回のアンケート結果、第3章にスタッフ研究会としての意見という構成となっている。 以下では主な内容について解説する。 1 重要会議(経営会議、常務会等)への出席 重要会議(経営会議、常務会等)にどの程度出席しているかについては、大会社以外を含め、90%以上の会社が大半又はすべての会議に出席しており、監査役が重要視していることが伺えるとのことである(15ページ)。 その他の会議への出席については、代表取締役及び取締役が出席する会議(予算策定・決算報告の事前会議、投融資会議、保安防災・安全会議等)、内部統制システムに係る重要な会議・委員会(内部統制委員会、リスク・マネジメント委員会等)、その他情報収集のための必要な会議等が挙げられる(18ページ)。 2 役職員からの非定例報告(リスク情報の聴取) 役職員からのリスク情報(事件・事故・不祥事情報、法令違反、セクハラ・パワハラ・メンタル疾患の発生など)の聴取での工夫に関して、事実を正確に聴取し、情報の信頼性を確認することを重視し、複数の関係者から事情聴取を行ったり、聴取前に事前調査を実施したりすることや、気になることや疑問点があれば積極的に事情聴取を実施していることなどが記載されている(23ページ)。 3 子会社の役職員からの報告聴取など 子会社往査を報告聴取の場として活用する会社が多いが、子会社の重要性等により頻度や報告方法を変えるなど、メリハリをつけて実施しているという回答も多数見られるとのことである(26ページ)。 子会社との定期的なミーティングや、質問票の事前送付、報告書の事前提出などにより、効率化の工夫をしている事例も見られるが、それでもなお、子会社を多く有する会社では、報告聴取の機会づくりは、限りある要員と時間の中で課題となっているようであるとのことである(26ページ)。 また、子会社への往査の手法としては、面談・ヒアリングと現地視察が会社区分にかかわらず80%以上と最も多いとのことである。常勤監査役が直接子会社へ赴き、面談・ヒアリングを行うケースが多いと思われるが、内部監査部門や会計監査人に同行するケースは半数以下であった(30ページ)。 4 会計監査人との連携 監査役(会)と会計監査人との連携は、四半期毎に実施している会社が多いとのことである。会計監査の実施状況だけでなく、双方が様々な事象やリスクについて忌憚のない意見交換ができるよう、代表社員以外の実務担当者ともコミュニケーションの機会を設けており、会計監査人の監査によって得られた情報を、監査役監査にも生かせるよう工夫を行っているものと考えられるとのことである(40ページ)。 5 計算関係書類の監査 会計監査人設置会社の監査役は、計算関係書類を作成した取締役から計算関係書類を受領し、監査役の視点から監査を実施するが、その後、会計監査人から会計監査報告を受領し、会計監査人の監査の方法及び監査の結果について意見表明、監査報告の作成を行う(41ページ)。 したがって、計算関係書類の監査については、第一義的には職業的専門家である会計監査人が行うことになるが、監査役としても、計算関係書類の記載項目の適法性、計算関係書類の数値の適正性について監査することが必要である(41ページ)。 大会社では、会計監査人の監査結果の確認と経理部門からの説明により計算書類関係の適法性、適正性の確認を行っているケースが多いが、重要な項目については、根拠資料を自ら確認し、会計監査人の監査結果への意見形成の材料とする必要があるとのことである(42ページ)。 6 会計監査人の相当性の判断 会計監査人の相当性判断において、70%を超える会社に基準があり、そのうち85%の会社がチェックリストを作成しているとのことである(45ページ)。 監査計画や監査の実施状況を、会計監査人からの報告聴取や監査立会いで確認している会社が多いと思われるが、相当性の判断では、監査役との適切なコミュニケーションや監査計画の妥当性、監査チームの体制等が重視されているとのことである(45ページ)。 7 有価証券報告書等の監査 監査役による有価証券報告書の記載内容の監査については、法令上義務付けられていないが、取締役の職務執行の監査の一環として、虚偽記載がなく適正に作成・報告されていることを確認する(45ページ)。 しかしながら、監査の方法については、取締役会での報告・聴取だけでよいのか、さらに根拠資料の確認まで実施するべきではないのかなど、一律的なルールではなく、開示資料の重要性や作成プロセスの適切性に対する監査役としての判断が重要になってくると考えられるとのことである(47ページ)。 (了)
《速報解説》 改正相続法で新設される預貯金債権の仮払い制度、 単独行使による金融機関ごとの払戻し限度額は150万円に ~改正法務省令案がパブコメに付される~ Profession Journal編集部 本年7月6日に成立し同月13日に公布された民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律、いわゆる民法(相続法制)の見直しについては、遺言書制度の見直しや配偶者居住権の創設等の一部を除き、施行は公布日から1年以内とされている。 法務省はこのほど9月28日付で、改正民法に関する法務省令案を公表し意見募集を行っている(意見・情報受付締切日は10月27日)。 今回パブコメに付された法務省令案は、次の事項について定められたもの。 平成28年12月19日の最高裁決定によって、相続された預貯金債権は遺産分割の対象財産に含まれることとなり、共同相続人による単独での払戻しができないこととされたため、生活費や葬儀費用の支払、相続債務の弁済などの資金が必要な場合にも、遺産分割が終了するまでの間は被相続人の預金の払戻しができないという問題が指摘されていた。 このため改正民法では、一定の条件下で、次の2つの方法によって、遺産分割前でも被相続人の預金の払戻しが受けられる仮払い制度が創設されることとなった。 上記のうち①の方法については、家庭裁判所への申立てが必要とされ、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を行使する必要があると認めるときは、他の共同相続人の利益を害しない限り、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部を仮に取得させることができるとされ(改正家事事件手続法200条3項)、仮払いの額については家庭裁判所の判断によるものとされている(詳しくはこちらを参照)。 一方で②の方法による場合、家庭裁判所への申立ては必要とされず、共同相続人が単独で(他の共同相続人の同意がなくても)以下の【計算式】で求められる金額まで払戻しを受けることができる(改正民法909条の2)。 ただし、この場合の払戻し金額には上限が設けられており、改正民法では下記のとおり、その具体的な限度額については、法務省令に委ねられていた。 今回パブコメに付された法務省令案では次のとおり、その限度額を150万円と定めている。 これまで法制審議会では金融機関1つあたりの上限を100万円で検討していたが、法務省はパブコメの補足説明において、150万円という限度額を定める際の考慮要素として、上記改正民法にて「標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案」するとされていることから、「標準的な生計費の額」として世帯人員が1名の標準生計費は1ヶ月当たり12万円弱、「平均的な葬式費用の額」として150万円前後という数値を各種統計情報から導き出し、さらに金融機関における平均口座保有数が約3.5個であることから、複数の金融機関から合計で150万円を超える金額を払い戻すことも可能であるとしている(根拠となる統計情報については補足説明を参照)。 また法務省は、仮に単独による預貯金の払戻しによって必要となる生計費等の額をまかなうことができない場合には上記①の方法によることもでき、さらに、払戻しをすることのできる金額が多額になると、具体的相続分を超過した払戻しがされた場合に他の共同相続人の利益を害する程度が大きくなることをその理由として説明している。 なお、今回の法務省令案については、冒頭述べたとおり意見・情報受付締切日は10月27日とされ、改正民法の施行の日から施行される。 (了) ↓お勧め連載記事↓
《速報解説》 金融庁、「監査上の主要な検討事項」(KAM)記載に対応した 「財務諸表等の監査証明に関する改正内閣府令(案)」等を公表 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成30年9月26日、金融庁は次のものを公表し、意見募集を行っている。 これは、「監査基準の改訂に関する意見書」(企業会計審議会、平成30年7月5日)により、監査報告書において「監査上の主要な検討事項」を記載することなどを受けたものである。 意見募集期間は平成30年10月25日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 1 「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令」(案) 監査報告書等の記載事項について、次のように規定する。 2 「企業内容等の開示に関する内閣府令」(案) 「企業内容等の開示に関する内閣府令」19条の臨時報告書の記載内容等に関する改正である。 Ⅲ 適用時期等 改正後の府令は公布の日から施行する。 なお、以下の経過措置が規定される予定である。 また、「企業内容等の開示に関する内閣府令」の一部改正に伴う経過措置も規定される予定である。 (了)
《速報解説》 BEPS防止措置実施条約、2019年1月1日の発効が明らかに ~条件を満たした租税条約相手国は現在5ヶ国~ 弁護士 木村 浩之 1 BEPS防止措置実施条約の発効 平成30年9月27日付けで、財務省は、BEPS防止措置実施条約(税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約)が、日本について、2019年1月1日に発効することを公表した。 これにより、同日以降、関係する各国との租税条約(所得に対する租税に関する二重課税防止のための条約)が、BEPS防止措置実施条約に従って修正され、適用されることになる。 2 BEPS防止措置実施条約とは 平成27年10月にOECDがBEPSプロジェクトの最終報告書を公表したが、それには租税条約の改正に向けた内容が含まれる。これを受けて、平成29年11月にはOECDモデル租税条約の改正がなされた。 ところが、租税条約は通常二国間で締結されるものであるところ、モデル条約の改正はあくまでも将来の二国間の交渉によって租税条約を新規に締結する場合や改正する場合に参照されるべきものであり、過去に締結された租税条約を書き換える効力を有するものではない。すでに締結されている租税条約は3,000を超えて存在しており、実際にこれらが改正されるには非常に長い年月を要する。 このようなことから、既存の租税条約の改正をより迅速かつ効率的に実現するため、多数国間でBEPS防止措置実施条約が締結された。これに日本も含まれており、今般、その発効に必要な手続が完了したものである。 3 BEPS防止措置実施条約の適用関係 BEPS防止措置実施条約は、適用関係がやや特殊であり、各国が相互に相手国との間の租税条約について適用することを選択し、かつ、必要な手続を経て各国について本条約が発効した場合に適用される。 日本に関しては、かかる条件を満たした租税条約の相手国は次のとおりとされる(平成30年9月26日現在)。 また、本条約は様々な規定を含むものであり、各国が必ず適用しなければならない規定と各国が任意に適用を選択できる規定があるが、いずれにしても双方の国で適用することが選択された規定のみが適用される。 日本では、次のとおり規定の適用について選択がなされている。 4 実務上の留意点 二国間の租税条約を適用するに当たっては、否応なく、BEPS防止措置実施条約の適用関係を踏まえて、既存の租税条約にどのような修正がなされているかを確認する必要がある。本稿は、日本の租税条約についての適用関係の概要を述べたものであるが、海外に子会社を有する企業にとっては、日本の租税条約のみならず、日本が当事者とはなっていない租税条約についての適用関係も検討する必要がある。 これはかなり複雑な作業となりうるが、OECDにおいて、各国の選択や本条約の発効状況についての取りまとめがなされている。その上で、簡易に適用関係が確認できるデータベース(ベータ版)が提供されているので、これを活用することが有用である。 (了) ↓お勧め連載記事↓
2018年9月27日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.287を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第51回】 「協同組合等の性質と税制の対応」 税理士 山本 守之 1 普通法人、一般社団法人又は人格のない社団等の法人税率 (1) 法人税率(原則) ①の法人については、法人税率は次のようになっています。 ②の法人については、法人税率は次のようになっています。 ①及び②において、平成28年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する事業年度にあっては、「23.2%」とあるのは「23.4%」となります。 なお、各事業年度の所得に対する法人税額を計算する場合に、課税標準に1,000円未満の端数があるときはその端数を、課税標準の金額が1,000円未満であるときは、その全額を切り捨てます(通則法118①)。 (注1) 「大法人」とは、次の法人をいいます。 ① 資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人 ② 相互会社又は外国相互会社 ③ 法人課税信託の受託法人 (注2) 「一般社団法人等」とは、法人税法別表第二に掲げる一般社団法人及び一般財団法人並びに公益社団法人及び公益財団法人をいいます。 (注3) 年800万円以下の金額=800万円×当該事業年度の月数÷12 (2) 中小法人等の軽減税率の時限的引下げ 上記(1)①の法人の平成24年4月1日から平成31年3月31日までの間に開始する各事業年度の所得金額のうち年800万円以下の金額に対する軽減税率は15%とします。 2 公益法人等、協同組合等の法人税率 (1) 法人税率(原則) 公益法人等、協同組合等の法人税率は次のようになっています。 なお、公益法人等には、一般社団法人等は含まれません。また、協同組合等のうち、特定の地区又は地域に係るもので、物品供給事業に係る収入金額の総収入金額に占める割合が50%超、組合員数が50万人以上、かつ、店舗において行われる物品供給事業に係る収入金額が1,000億円以上である事業年度にあっては、所得金額のうち10億円を超える部分に対する税率は22%となります。 (2) 軽減税率の時限的引下げ 公益法人等、協同組合等の平成24年4月1日から平成31年3月31日までの間に開始する各事業年度の所得金額のうち年800万円以下の金額に対する軽減税率は15%となります。 上記のように法人の所得金額によって軽減される税率は異なりますが、これらは担税力の有無によって定められています。 しかし、各法人は担税力を配慮して税額で区分すればよいのでしょうか。法人の種類によって課税標準の計算手法を変えなければならないのではないでしょうか。 3 協同組合等が支出する災害見舞金等 現在の取扱通達では、協同組合等が支出する災害見舞金については、交際費等ではなく損金の額に算入することにしているため、課税しないことになっています。 農業協同組合にとっての組合員である農家、中小企業等協同組合にとっての組合員である中小企業は、いずれも一般消費者に該当しません。むしろ取引態様からみて、これらの組合員は協同組合等の得意先又は仕入先であるともいえます。 このような視点から観察すれば、協同組合等がその組合員の災害等に際して災害見舞金を支出したときは、得意先、仕入先等に対する慶弔、禍福に際して支出する金品であるから、交際費等に該当するという考え方ができなくもありません。 課税庁ではこのような考え方から、かつて新潟地震による災害見舞金(物品を含む)について交際費として取り扱った時期もありました(昭39直審(法)144通達「11」)。 (注4) 現行の取扱いでは、「法人が、被災前の取引関係の維持、回復を目的として災害発生後相当の期間内にその取引先に対して行った災害見舞金の支出又は事業用資産の供与若しくは役務の提供のために要した費用は、交際費等に該当しないものとする。」(措通61の4(1)-10の3)としています。 しかし、協同組合等は、もともと事業を行う法人又は個人が相互扶助の理念に基づいて協同して事業を行うために存在するもので、組合員の福利厚生は本来の目的事業の1つといえます。 このような意味からすれば、本来事業の1つとして組合員に災害見舞金を支出した事実をとらえて、「得意先、仕入先等の慶弔、禍福に際して支出する金品」に該当するとして交際費課税の対象とするのは、実情に即した取扱いとはいえません。 つまり、災害見舞金が交際費等となるためには、「付き合いとしての贈答」であることが必要ですが、協同組合等が組合員に支出する災害見舞金は、助け合い(相互扶助)を目的とする協同組合の存立目的からみて、本来事業としての福利厚生であり、これを「見舞金」という単純な発想から交際費等とするのは誤りなのです。 幸いなことに、課税庁でもこの誤りに気付き、昭和54年10月18日の通達改正に際し、次のような措置法関係通達(措通61の4(1)-11)を新設して交際費等としないこととしました。 この通達に関する解説(「措置法通達逐条解説 法人税関係」(桜井巳津男・松橋行雄他著、財経詳報社)では次のように述べています。 条理からみて、当然のことを解説しているに過ぎません。むしろ、税に携わる者として、この通達は他にも大きな意味を持っています。 わが国の法人税法は、営利法人である株式会社等だけを対象としたものではなく、協同組合など非営利法人の税務についても共通して適用されています。しかし、対象となる法人はそれぞれ存立目的を異にしており、法人税法はその存立目的を十分配慮した上で解釈適用されなければなりません。つまり、法人の存立目的に配慮しながら課税所得計算に関する解釈原理が樹立されなければならないのです。 例えば、営利法人である株式会社にとってみれば交際費等に該当するものであっても、協同組合等にとっては通常の事業経費であるという場合は数多く存在します。しかし、法解釈に携わる者がともすれば画一的な解釈基準のなかに埋没して、個別的な実情を配慮しないということを長い間行ってきたのです。 この通達は、このような考え方を反省し、法人の存立目的にまで目を向けて、実情に即した取扱いをすることを明らかにしたものです。今後は、この通達だけではなく、他の取扱いについても、このような考え方に基づいて見直しを行うべきでしょう。 なお、通達における「災害見舞金」は単なる例示で、組合員等に対する福利厚生事業の一環として一定の基準に従って行われるものである限りは、慶弔、禍福のすべての支出金を交際費等としないという意味です。 残念なことに、法人の存立目的による解釈を明示したのはこの通達だけですが、寄附金課税等についても、株式会社と協同組合等ではその解釈基準が異なることを念頭に置いた通達等が整備されることを望みます。 4 保険会社の契約者配当の損金算入と協同組合等の事業分量配当等の損金算入 (1) 契約者配当金の場合 法人が行う利益又は剰余金の分配は資本等取引に含まれ、各事業年度の所得の金額の計算には関係がないものとされているので、保険会社の行う契約者配当も形式的には資本等取引に該当し、その事業年度の損金の額には算入されないこととなります。 ところで、相互保険会社における契約者配当金は、「配当金」という名称を用いていますが、実質はその保険料の割戻し若しくは将来の保険料の引下げを意味します。また、相互保険会社は、保険契約者が保険契約者たる地位と相互会社の社員たる地位とを合わせ持つ法人ですから、この契約者に支払われる配当は、単に「保険料の割戻し」という意味のほかに、社員総会によって決定され支払われる利益配当の形式をとることになります。 しかし、この場合においても、その性格は保険料の割戻し若しくは保険料の引下げを意味するものなので、これを利益の処分とすることは適当ではありません。そこで、これを利益処分として行う場合にも、本来の性格に応じて損金の額に算入することを明らかにするとともに、その損金算入限度額を定めています。 なお、法人税法第60条は、株式会社の場合にも適用されるのであり、株式会社については、本条の規定を待つまでもなく契約者配当は損金経理により損金の額に算入されることから、ただし書が適用され株式会社についての損金算入の限度額が定められていることになります。 (2) 協同組合等の事業分量配当金の場合 協同組合等は、組合員の公正かつ自主的な経済活動を促進し、その経済的地位の向上を図るために、組合員の事業についての共同行為を行うことを目的とする特別の法人です。つまり、助け合いによる割戻しの性格となっています。 この協同組合等の剰余金のうちには、組合員との間における取引から生ずるものが大部分を占めています。したがって、協同組合等に生ずる利益については、法令又は定款の定めるところにより、出資に応ずる配当のほか組合員の組合事業の利用分量に応ずる配当をすることができることになっています。 このような事業分量配当は、協同組合等の利益をその本来の享受者たるべき組合員に帰属させようとするものであって、その性格は、組合員に対する一種の割戻しの性格を持つものであると考えられます。 しかし、組合員は「組合組織の利用者としての地位」と、あくまでも「法人たる組合に対する資本主としての地位」という両面を持っているので、共同事業によって得た利益をすべて事業の利用分量に応じて分配してしまったときは、出資者としての利益が害されるおそれがあります。 したがって、この組合員の性格からして、協同組合等の利益の分配については、剰余金の処分によるべきことになっているのですが、原則として、利益又は剰余金の分配は資本等取引として各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されないこととされていることから(法22条)、その利益の分配については、その性格が割戻しの性格を有することに着目し、特に別段の定めにより損金の額に算入することを認めることとしているのです。 5 税制調査会の誤り 平成28年度与党税制改正大綱(p5)では、協同組合税制について次のように書かれています。 ここでは、事業分量配当金の損金算入を「過剰な支援」としていますが、事業分量配当金は一種の売上割戻しとみて損金算入をしているので、決して支援ではありません。この点は財務省の説明も同様です。 協同組合等に対する事業分量配当金は税理論からみても一種の売上割戻しとして損金算入を認めているので、決して税の優遇ではないのです。財務省も政治家も、もっと税理論を勉強してほしいものです。 (了)
これからの国際税務 【第9回】 「税の透明性プロジェクトと金融口座情報の自動的交換」 早稲田大學大学院会計研究科 教授 青山 慶二 1 国際的課税逃れ対策は 多国籍企業向けBEPSプロジェクトにとどまらない 本年7月にブエノスアイレスで開催されたG20財務大臣等会合共同声明では、税源浸食・利益移転(BEPS)プロジェクトの勧告内容の実施と並んで、「2018年中に税に関する金融口座情報の自動的情報交換」を予定通り実行すべきと勧告した。 非居住者に係る金融口座情報(氏名・住所、納税者番号、口座残高、利子・配当等の年間受取総額等)は、「共通報告基準(CRS)」と呼ばれるフォーマットに従い、本年末までに多くのタックスヘイブンを含む102の国・地域によって、相互に居住地国当局に対し第1回目の交換が実施されることが合意されていたが、その実現に向けた政治の強いコミットメントが公表されたのである。 本件データの年1回の定期的情報交換は、パナマ文書やパラダイス文書の開示を契機として海外の金融機関を利用した国際的な脱税・租税回避と戦っている課税当局にとっては、非居住者の海外活動や資産保有を明らかにするための新たな情報源となり、牽制効果も期待されている。 なお、G20では、この自動的情報交換を中心とした税の透明性に向けた各国の取組ぶりにつき参加国間でピアレビューを行い、その結果非協力な国・地域と特定された場合は、その名を公表するとともに防御的措置と呼ばれる対抗策を行うと警告している。 以下では、本件国際協調の内容と我が国における取組状況を解説する。 2 金融口座に関する税の情報交換 本件プロジェクトを実行するのは、OECD加盟国に非加盟国を含めた153ヶ国・地域が参加する「税の透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラム」であり、米国が国内法(外国口座税務コンプライアンス法)の下で開始した米国市民の外国金融口座情報入手制度を手本として、OECDの起草の下で情報交換のマルチ合意にまで高められたものである。 日本の金融機関は非居住者の口座情報を、外国の金融機関は日本の居住者の口座情報を、それぞれ自国の税務当局に提供し、それを受領した当局間では、租税条約に基づく情報交換の仕組みにより電子データを交換する。なお、受け皿となる租税条約は、従来はもっぱら二国間条約であったが、2011年からはG20により署名勧告が行われた「税務行政執行共助条約」という多国間条約への参加国の拡大により、交換可能国数が飛躍的に拡大している(我が国にとっては、二国間条約を根拠とするもの81ヶ国・地域、多国間条約を根拠とするもの45ヶ国・地域)。 ところで、上記制度の運用に際しては、租税回避目的で報告対象要件への該当性を人為的に外す取極め等が活用される懸念もぬぐいされない。この対応策もOECDで議論され、2018年3月にOECDの「共通報告基準回避取極め等の強制的開示規則」モデルが公表された。 これは、「非居住者の金融口座情報」という報告対象となる要件への該当性を、人為的な取決めによって回避する試みに対抗するものであり、国内実体法における一般的否認規定(GAAR)の、情報交換手続法に関するバージョンともいえるものである。具体的には、共通報告基準を回避する取極めとオフショアの仕組み(適用要件該当をすり抜ける取極め又は資産や所得の受益者を隠匿する取極め)であり、プロモーターや仲介業者(補充的に納税者自身も)にスキームの開示義務を課すべきとしている。 3 我が国における実施状況と納税者の備え 我が国は、条約で約束した金融口座情報交換を担保するための国内法改正を平成27年度改正で行い、国内に所在する金融機関から非居住者が保有する口座の情報について報告を受ける制度を導入した(租税条約実施特例法10条の5、以下「実特法」と呼ぶ)。 報告義務を課せられる金融機関は、銀行等の預金機関、証券会社等の保管機関、投資信託等の投資事業体、生保・損保等の特定保険会社とされている。報告金融機関により報告対象となる口座等はそれぞれ異なるが、報告対象者(租税条約の適用がある自動的情報交換の相手国の居住者)が直接保有する口座のみならず、自ら支配する受動的非金融機関事業体を通じて間接保有する金融口座も対象とされている。 報告金融機関は、まず口座保有者の居住地国を特定して、報告すべき口座を選別しなければならない。これらは共通報告基準に定められた手続に従うことが予定されている(実特法10条の5第2項)が、基本的な判断資料は、報告対象となる「特定取引」を行う者が報告金融機関の長に新規取引開始の際提出すべきとされる情報等(氏名・名称、住所、居住地国、外国の納税者番号等)である。 ただし、新規の口座開設か既存口座の取引か、更には金額の多寡によって、以下の通り居住地特定手続きが区分されている。 (注) 財務省ウェブサイト掲載「平成27年度税制改正の解説」P.627より抜粋 なお、届出書の提出義務及び報告事項の提供義務違反に対しては、罰則が規定されている(実特法13条1項)。 なお、これからの執行本格化にあたって懸念されるのは、名宛人でなく受益者に着目した情報交換という情報の真実性の維持をどのように担保するのかという課題であると思われる(実特法10条の5第1項では特定取引を行う者については事業体の場合「実質所得者」ベースでの居住認定が必要としている)。この点では、マネーロンダリング対応での経験も生かした各国の取組みが今後参照されるとも思われるので、口座保有者及び報告金融機関においても、十分慎重な対応が求められることとなろう。 実特法に基づく金融口座情報報告制度は、平成29年1月から施行され第1回目の税務署長への報告は、平成30年4月30日までに前年の非居住者情報分につき終了し、現在はOECDが開発した共通送受信システム(暗号化や電子証明書による認証などセキュリティ対策を装備)を利用して当該非居住者の居住情報に加え口座残高、利子・配当等の年間受取総額等が、すでに送受信が可能な状態にあると思われる。 (了)
組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第56回】 公認会計士 佐藤 信祐 (《第8章》 平成18年から平成21年までの議論) 5 税務専門家の見解 (1) 欠損等法人における「事業」の定義 ① 長谷川芳孝氏の見解 長谷川芳孝『三角合併解禁後のM&Aの税務』(中央経済社、平成19年)248-250頁では、LBOによる企業買収に先立ってSPC(買収目的会社)を外から購入した場合において、当該SPCが繰越欠損金を保有していたときに、当該SPCに対して適用される欠損等法人の規制についての検討がなされている。 すなわち、SPCを購入した時点では、SPCはペーパー会社であることから、事業を開始した時点で、それよりも前の事業年度の繰越欠損金が利用できなくなる。その事業が開始された時点として、(ⅰ)買収資金借入れを行った時、(ⅱ)SPCが被買収会社の株式を取得した時、(ⅲ)SPCと被買収会社が合併した時がそれぞれ挙げられる。 長谷川氏は、(イ)連結納税に関する欠損金利用制限の規定において、株式保有が原則として事業に該当するととれる文言があること(法令155の21の2⑤一括弧書(現行法令155の22⑤一括弧書)の反対解釈)、(ロ)欠損等法人を連結親法人とする連結納税を開始するケースなどについて株式保有が事業に該当しないと解釈すると不合理な結論となることがあり得ること(法法81の9の2③(現行法法81の10④))を理由として、上記(ⅱ)SPCが被買収会社の株式を取得した時(又はその着手としての資金借入時)に事業が開始されたと考えるべきであると主張されている。 この場合には、それ以降に発生した繰越欠損金に対しては、欠損等法人の規制は課されないため、主に借入金利子の損金算入を容認するために主張された見解であると思われる。 しかしながら、このような見解には同意できない。そもそも欠損等連結法人の規制は、欠損等連結法人との間に連結完全支配関係がある法人を含めたうえで、事業を行っていないかどうかが判定される。これに対し、子会社株式を保有していることが事業であると主張されると、連結納税を導入している企業はすべからく欠損等法人の規制を適用することができなくなってしまうため、事業の範囲から「連結親法人が当該連結親法人との間に連結完全支配関係がある連結子法人の発行済株式又は出資の全部又は一部を有することを除く」ことを確認的に規定したものであると考えられる。 そのように考えると、事業の定義とは、組織再編税制における事業関連性要件の判定のために、確認的に規定された法人税法施行規則3条1項1号の規定を参考とすべきであると考えられる。確認規定であることから、本規定がなかったとしても、同様に解すべきだからである。 さらに、平成19年4月に公表された国税庁の「共同事業を営むための組織再編成(三角合併等を含む)に関するQ&A」では、法人税法施行規則で定めた事業性の明確化は、「納税者の予見可能性を高める観点から、従来の運用の実態を踏まえて規定することとされた」としたうえで、「従来から認められていないもの、例えば事業を行っていないペーパーカンパニーを買収のための合併法人とするような場合には、事業関連性要件を満たさず、課税の繰延べは行われないこととなります。」としている。 さらに、平成17年改正前商法時代の実務として、会社分割を行うためには事業単位の移転であることが必要であったのに対し、単なる資産の保有については、商法上、事業とは認められないという解釈が中心的であったことから、株式保有業を事業であると考えることはできない。 そのため、SPCと被買収会社が合併した時点で事業が開始されたと考えるべきである。 なお、このような議論がありながらも、現行法上ではほとんど問題にはなっていない。平成18年から施行された会社法では、事後設立を行った場合における検査役調査の規制が廃止されたため、長谷川氏が示したようなSPCを外部から買収してくる事案はかなり少なくなったからであると思われる。 これに対し、西村美智子・纐纈明美「欠損金のあるオーナーの資産管理会社を買収し合併した場合の欠損金の制限(欠損等法人)」国税速報6042号26-27頁(平成21年)では、製造業を営むA社を買収するために、A社の100%親会社であるB社の発行済株式のすべてを取得した事案に対し、B社に対して欠損等法人に対する規制が課されるものとしており、結果として、筆者に近い見解を採用されていることが分かる。今後の実務では、西村氏らが書かれた事例の方が多くなってくると思われる。 ② その他の議論 欠損等法人の議論は、上記のほかにも、2号事由(事業を廃止する場合)、5号事由(役員、従業員をリストラする場合)がそれぞれ問題となる。まず、2号事由は「廃止」と規定されていることから、「休止」は該当しないと思われる。ただし、「廃止」してから「再開」する場合には、2号事由に該当させるべきであると考えられる。 次に、5号事由は、「当該欠損等法人が当該特定支配関係を有することとなったことに基因して」と規定されている。そのため、特定支配関係を有することとなった時点では想定されていない後発事象により、役員が退任したり、従業員が退職したりする場合には、5号事由には該当しないと考えられる。 (2) 不動産取得税における従業者引継要件 豊田孝二「会社分割における不動産取得税の非課税要件をめぐる課題」税63巻7号88-95頁(平成20年)では、従業者が分割承継法人に移転せずに、分割承継法人から分割法人に対して、分割事業にかかる業務を委託する事案について、不動産取得税の非課税要件の1つである従業者引継要件を満たす余地があるものとしている。 すなわち、形式的には業務委託となっているものの、実質的には、分割承継法人の業務について分割承継法人の指揮命令のもとで従事していると認められる場合には、従業者引継要件を満たすものと解しても良いのではないかという見解である。 このような見解は、「地方税法の施行に関する取扱いについて」で、従業者の範囲として、分割法人の役員や使用人だけでなく、出向者を含むことを明記しているだけに留まり、法人税基本通達のように詳細に記載されなかったことが原因であると思われる。 法人税基本通達1-4-4(注2)では、「下請先の従業員は、例えば自己の工場内でその業務の特定部分を継続的に請け負っている企業の従業員であっても、従業者には該当しない。」と規定されており、その理由として、「平成14年2月15日付課法2-1「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)の趣旨説明について」では、下請先自身の業務に従事しているにすぎないことが挙げられている。 これを本件に当てはめてみると、分割法人が分割承継法人から業務の委託を受けたとしても、分割法人自身の業務に従事しているに過ぎないことから、分割承継法人に移転した分割事業の業務に従事しているとみなすことはできない。すなわち、これらの従業者は分割承継法人に移転していたと考えられないため、従業者引継要件に抵触すると考えられる。 * * * 次回以降も、引き続き平成18年から平成21年までの間に公表されている実務家の見解について解説する予定である。 (了)
企業の[電子申告]実務Q&A 【第4回】 「義務化の対象法人が提出すべき届出書」 -書き方とポイント- SKJ総合税理士事務所 税理士 坂本 真一郎 ●○●○解説○●○● 電子申告義務化の適用日(2020年4月1日)以後、義務化の対象となる法人は、以下の期限までに納税地の所轄税務署長に対し、「e‐Taxによる申告の特例に係る届出書」を提出する必要があります。 上記(1)のように、制度適用当初において電子申告の義務化の対象となる法人については、「e‐Taxによる申告の特例に係る届出書」を2020年4月1日以後最初に開始する事業年度(課税期間)開始の日から1ヶ月以内に提出する必要があります。 下記【記載例】にあるとおり、例えば3月決算法人の場合には、2020年4月30日までに納税地の所轄税務署長へ当該届出書を提出する必要があります。 また、「e‐Taxによる申告の特例に係る届出書」は、電子申告の義務化が始まる前から既に申告書をe‐Taxで提出している法人であっても提出する必要がありますが、届出書の提出義務がある法人に対して、事前に所轄税務署から通知等を行うことは予定されていませんので、届出書の提出もれにご注意ください。 なお、減資により、資本金の額等が1億円以下となった場合等により義務化対象法人でなくなった場合にも、届出書の提出が必要となる予定です。 【記載例・・・2020年3月31日以前に設立された3月決算の義務化対象法人】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (了)
〈平成30年度改正対応〉 賃上げ・投資促進税制(旧・所得拡大促進税制)の 適用上の留意点Q&A 【Q10】 「比較雇用者給与等支給額に関する調整計算」 -(3)分割等が行われた場合の調整計算(分割法人等)- 公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎 [Q10] (再掲) 平成30年度の税制改正によって、組織再編を行った場合の比較雇用者給与等支給額に関する調整計算はどのように変更されたのでしょうか。 [A10] (再掲) ◆新たに「基準日」という概念が設けられ、基準日から適用年度開始の日の前日までの期間が「調整対象年度」と定義されました。 ◆具体的な調整計算については大きな変更はありませんが、計算期間が「前年度」から「各調整対象年度」に変更されています。 【解説】 (3) 分割等が行われた場合の調整計算(分割法人等) ① 適用年度において分割等が行われた場合 適用年度に分割等(分割、現物出資、現物分配)が行われた場合、分割等の日の属する月以後、分割承継法人等に引き継いだ国内雇用者に対する給与等支給額が発生しなくなることから、雇用者給与等支給額が大きく減少することとなる。 このとき、分割法人等の比較雇用者給与等支給額については、調整対象年度ごとに、分割承継法人等に移転したと考えられる金額として、各調整対象年度に係る分割法人の移転給与等支給額のうち、分割等の日から適用年度終了日までの期間の月数に対応する金額を減算調整した金額に基づき計算することとされた。これにより適切な大小比較を可能とする(下図参照)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 比較雇用者給与等支給額の調整 分割法人等の各調整対象年度に係る給与等支給額から、以下の算式によって計算した金額を控除する(措令27の12の5⑨一イ)。 ここで「移転給与等支給額」とは、その分割等に係る分割法人等の当該分割等の日前に開始した各事業年度等に係る給与等支給額(分割事業年度等にあっては、当該分割等の日の前日を当該分割事業年度等の終了の日とした場合に損金の額に算入される給与等支給額)に当該分割等の直後の当該分割等に係る分割承継法人等の国内雇用者(当該分割等の直前において当該分割法人等の国内雇用者であった者に限る)の数を乗じて、これを当該分割等の直前の当該分割法人等の国内雇用者の数で除して計算した金額をいう(措令27の12の5⑪)。 計算式で表現すると以下のようになる。 このように、分割等によって分割承継法人等に移転した分割法人等の国内雇用者の数に対応する給与等支給額を「移転給与等支給額」として計算し、これに月数補正を加味したものを、調整対象年度における分割法人等の給与等支給額から控除するという調整を行っているということである。 ② 基準日から適用年度開始の日の前日までの期間に分割等が行われた場合 適用年度は年度を通じてすべて分割等実施後の規模で給与等支給額が発生することとなるが、引き続き、前年度の給与等支給額について調整が必要となる(下図参照)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 比較雇用者給与等支給額の調整 基準日から適用年度開始の日の前日までの期間内において分割等が行われている場合、分割法人等の調整対象年度に係る給与等支給額から、当該分割法人等の当該調整対象年度に係る移転給与等支給額を控除する(措令27の12の5⑨一ロ)。 この点に関し、移転給与等支給額の計算基礎となる分割法人等の各事業年度の給与等支給額の算定に当たり、その事業年度が分割等の日を含む事業年度(分割事業年度等)である場合には、「当該分割等の日の前日を当該分割事業年度等の終了の日とした場合に損金の額に算入される給与等支給額」とされている点に留意が必要である。 これは、移転給与等支給額の按分計算が必要なのは、あくまでも、分割前の企業規模を前提に支給された給与等の額のみであって、分割後の給与等支給額を按分計算に含めるのは適切でないという考え方によるものである。 したがって、調整対象年度に分割等の日が含まれている場合における移転給与等支給額の計算は、基準日から分割等の日の前日を1事業年度とみなして、その事業年度中に損金の額に算入される給与等支給額を基礎として計算することとなる。 (了)