山本守之の法人税“一刀両断” 【第51回】「協同組合等の性質と税制の対応」
筆者:山本 守之
文字サイズ
- 中
- 大
- 特
山本守之の
法人税 “一刀両断”
【第51回】
「協同組合等の性質と税制の対応」
税理士 山本 守之
1 普通法人、一般社団法人又は人格のない社団等の法人税率
(1) 法人税率(原則)
① 資本金の額(出資金の額を含む)が1億円以下のもの(大法人(注1)との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人及び完全支配関係がある全ての大法人が有する株式及び出資の全部をその全ての大法人のうちいずれか一の法人が有するものとみなした場合にそのいずれか一の法人による完全支配関係があることとなる普通法人を除く)若しくは資本金を有しないもの(相互会社を除く)、一般社団法人等(注2)又は人格のない社団等
①の法人については、法人税率は次のようになっています。
・年800万円以下の各事業年度の所得金額(注3)・・・19%
・年800万円を超える各事業年度の所得金額・・・23.2%
② ①以外の他の法人
②の法人については、法人税率は次のようになっています。
・各事業年度の所得金額・・・23.2%
①及び②において、平成28年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する事業年度にあっては、「23.2%」とあるのは「23.4%」となります。
なお、各事業年度の所得に対する法人税額を計算する場合に、課税標準に1,000円未満の端数があるときはその端数を、課税標準の金額が1,000円未満であるときは、その全額を切り捨てます(通則法118①)。
(注1) 「大法人」とは、次の法人をいいます。
① 資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人
② 相互会社又は外国相互会社
③ 法人課税信託の受託法人
(注2) 「一般社団法人等」とは、法人税法別表第二に掲げる一般社団法人及び一般財団法人並びに公益社団法人及び公益財団法人をいいます。
(注3) 年800万円以下の金額=800万円×当該事業年度の月数÷12
(2) 中小法人等の軽減税率の時限的引下げ
上記(1)①の法人の平成24年4月1日から平成31年3月31日までの間に開始する各事業年度の所得金額のうち年800万円以下の金額に対する軽減税率は15%とします。
2 公益法人等、協同組合等の法人税率
(1) 法人税率(原則)
公益法人等、協同組合等の法人税率は次のようになっています。
・各事業年度の所得金額・・・19%
なお、公益法人等には、一般社団法人等は含まれません。また、協同組合等のうち、特定の地区又は地域に係るもので、物品供給事業に係る収入金額の総収入金額に占める割合が50%超、組合員数が50万人以上、かつ、店舗において行われる物品供給事業に係る収入金額が1,000億円以上である事業年度にあっては、所得金額のうち10億円を超える部分に対する税率は22%となります。
(2) 軽減税率の時限的引下げ
公益法人等、協同組合等の平成24年4月1日から平成31年3月31日までの間に開始する各事業年度の所得金額のうち年800万円以下の金額に対する軽減税率は15%となります。
上記のように法人の所得金額によって軽減される税率は異なりますが、これらは担税力の有無によって定められています。
しかし、各法人は担税力を配慮して税額で区分すればよいのでしょうか。法人の種類によって課税標準の計算手法を変えなければならないのではないでしょうか。
3 協同組合等が支出する災害見舞金等
現在の取扱通達では、協同組合等が支出する災害見舞金については、交際費等ではなく損金の額に算入することにしているため、課税しないことになっています。
農業協同組合にとっての組合員である農家、中小企業等協同組合にとっての組合員である中小企業は、いずれも一般消費者に該当しません。むしろ取引態様からみて、これらの組合員は協同組合等の得意先又は仕入先であるともいえます。
○記事全文をご覧いただくには、プレミアム会員としてのログインが必要です。
○プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

○プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。
○一般会員の方は、下記ボタンよりプレミアム会員への移行手続きができます。
○非会員の皆さまにも、期間限定で閲覧していただける記事がございます(ログイン不要です)。
こちらからご覧ください。
連載目次
山本守之の法人税“一刀両断”
▷2018年(第43回~54回)
▷2017年(第31回~42回)
▷2016年(第18回~30回)
- 【第18回】 実効税率はどのような経過で引き下げられたか
- 【第19回】 消費税の軽減税率を検証する
- 【第20回】 寄附金の課税要件を考える
- 【第21回】 土地と共に取得してから1年以内に取り壊した建物
- 【第22回】 訴訟のわかれ道~認知症と損益通算
- 【第23回】 税執行における洒落
- 【第24回】 租税法の解釈①-租税法律主義とその問題点-
- 【第25回】 租税法の解釈②-通達の読み方とその問題点(貸倒損失を事例として)-
- 【第26回】 租税法の解釈③-税務形式基準と事実認定-
- 【第27回】 課税要件法定主義を考える
- 【第28回】 売り上げの計上時期はどうなっているか
- 【第29回】 取引別にみた収益の認識基準①
- 【第30回】 取引別にみた収益の認識基準②
▷2015年(第7回~17回)
筆者紹介
山本 守之
(やまもと・もりゆき)
税理士。現在、日本税務会計学会顧問、租税訴訟学会副会長(研究・提言担当)、税務会計研究学会理事、日本租税理論学会理事を務め、全国各地において講演活動を行うとともに、千葉商科大学大学院(政策研究科、博士課程)でプロジェクト・アドバイザー(専門分野の高度な学術研究、高度な実務経験を持つ有識者)として租税政策論の教鞭をとっている。研究のためOECD、EU、海外諸国の財務省、国税庁等を約30年にわたり歴訪。2020年11月29日、逝去。
【著書】
・『時事税談-人間の感性から税をみつめる』(清文社)
・『役員給与税制の問題点-規定・判例・執行面からの検討』(中央経済社)
・『検証 税法上の不確定概念 (新版)』(中央経済社)
・『裁決事例(全部取消)による役員給与・寄附金・交際費・貸倒れ・資本的支出と修繕費』(財経詳報社)
・『法人税申告の実務全書』監修(日本実業出版社)
・『法人税の理論と実務』(中央経済社)
・『体系法人税法』(税務経理協会)
・『税金力-時代とともに「税」を読む』(中央経済社)
・『租税法の基礎理論』(税務経理協会)
他、多数
Profession Journal関連記事
関連書籍
-
with&afterコロナ禍を生き抜く
新しい企業の人事・労務管理
特定社会保険労務士 川崎秀明、弁護士 樋口治朗、社会保険労務士 平澤貞三、社会保険労務士 滝口修一、特定社会保険労務士 亀谷康弘 著
定価:2,420円(税込)
会員価格:2,178円(税込)
-
図解でわかる
はじめての学校法人会計
公認会計士・税理士 岡部雅人 著
定価:2,420円(税込)
会員価格:2,178円(税込)
-
令和2年度版 税務コンパクトブック
株式会社プロフェッションネットワーク 編著
定価:2,750円(税込)
会員価格:2,475円(税込)
-
改訂増補/法人税と所得税をうまく使いこなす
法人成り・個人成りの実務
税理士 小谷羊太、税理士 仲宗根宗聡 著
定価:2,640円(税込)
会員価格:2,376円(税込)
-
第4版
基礎の基礎 1日でマスター 法人税申告書の作成
税理士 柴田知央 著
定価:2,200円(税込)
会員価格:1,980円(税込)
-
平成31年度版 税務コンパクトブック
株式会社プロフェッションネットワーク 編著
定価:2,750円(税込)
会員価格:2,475円(税込)
-
Q&A
一般社団法人・一般財団法人の設立・会計・税務ハンドブック
税理士・中小企業診断士・行政書士 脇坂誠也 著
定価:3,080円(税込)
会員価格:2,772円(税込)
-
詳解 社会福祉法人会計
有限責任監査法人 トーマツ 編
定価:5,500円(税込)
会員価格:4,950円(税込)
-
会計プロフェッショナルの税務事案奮闘記2
木田稔 監修 日本公認会計士協会京滋会 編著
定価:3,300円(税込)
会員価格:2,970円(税込)
-
経営力を高める
社会福祉法人会計の実践
税理士 田中育雄、税理士 吉野縫子、税理士 吉野仁 著
定価:3,300円(税込)
会員価格:2,970円(税込)