収益認識会計基準(案)を学ぶ 【第7回】 「収益の認識基準⑤」 -履行義務の充足による収益の認識- 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 【第2回】において、「収益認識に関する会計基準(案)」(以下「収益認識会計基準(案)」という)における収益認識のためのステップとして、次の5つがあることを解説した。 今回は、ステップ5の「履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する」のうち「履行義務の充足による収益の認識」を解説する。 収益認識は、履行義務を充足した時に又は充足するにつれて行うので、履行義務の充足は重要なステップである(収益認識会計基準(案)14項(5))。 「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」(以下「収益認識適用指針(案)」という)では、履行義務の識別に関連する設例が多く作成されているので、実務の適用の際に参考になる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 履行義務の充足 履行義務の充足による収益認識では、次の用語がポイントとなる。 収益認識会計基準(案)及び収益認識適用指針(案)は、履行義務の充足による収益の認識について、次のように規定している(収益認識会計基準(案)32項~34項、118項、収益認識適用指針(案)8項)。 Ⅲ 一定の期間にわたり充足される履行義務 次の(1)から(3)の要件のいずれかを満たす場合、資産に対するが顧客に一定の期間にわたりすることにより、一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識する(収益認識会計基準(案)35項、119項、120項)。 関連する収益認識適用指針(案)の設例は次のとおりである。 Ⅳ 一時点で充足される履行義務 収益認識会計基準(案)35項(1)から(3)の要件(上記Ⅲ)のいずれも満たさず、履行義務が一定の期間にわたり充足されるものではない場合には、一時点で充足される履行義務として、資産に対するを顧客にすることにより当該履行義務が充足される時に、収益を認識する(収益認識会計基準(案)36項)。 資産に対するを顧客にした時点を決定するにあたっては、収益認識会計基準(案)34項の定め(資産に対する)を考慮する(収益認識会計基準(案)37項)。 のを検討する際には、例えば、次の①から⑤の指標を考慮する。 また、のを検討する際の指標については、次を考慮する(収益認識適用指針(案)14項)。 Ⅴ 履行義務の充足に係る進捗度 1 進捗度に関する留意点 履行義務の充足に係る進捗度については、次のように規定されている(収益認識会計基準(案)38項~42項)。 2 アウトプット法とインプット法 履行義務の充足に係る進捗度(収益認識会計基準(案)38項)の適切な見積りの方法には、アウトプット法とインプット法がある(収益認識適用指針(案)15項)。 アウトプット法とインプット法のいずれを採用するのかについては、財又はサービスの性質を考慮して決定する(収益認識適用指針(案)15項)。 履行義務の充足に係る進捗度の見積りにあたっては、履行義務を充足して顧客に支配を移転する財又はサービスの影響を当該進捗度の見積りに反映するが、顧客に支配を移転しない財又はサービスの影響は当該進捗度の見積りに反映しない(収益認識適用指針(案)16項)。 3 履行義務の充足に関する意見 履行義務の充足については、以下の論点が検討されている(第342回企業会計基準委員会(2016年8月10日)の審議事項(4)-2、8項、13項、20項)。 Ⅵ 重要性等に関する代替的な取扱い 重要性等に関する代替的な取扱いとして、以下に述べる規定が設けられている。 なお、次のものに関する代替的な取扱いは規定されておらず(収益認識適用指針(案)157項)、現行の日本基準又は日本基準における実務の取扱いが認められないこととなる。 1 期間がごく短い工事契約及び受注制作のソフトウェア 収益認識会計基準(案)35項の定めにかかわらず、工事契約について、契約における取引開始日から完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い場合には、一定の期間にわたり収益を認識せず、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識することができる(収益認識適用指針(案)94項、148項)。 受注制作のソフトウェアについても、工事契約に準じて当該規定を適用することができる(収益認識適用指針(案)95項、149項)。 2 船舶による運送サービス 収益認識会計基準(案)32 項の定めにかかわらず、一定の期間にわたり収益を認識する船舶による運送サービスについて、一航海の船舶が発港地を出発してから帰港地に到着するまでの期間が通常の期間(運送サービスの履行に伴う空船廻航期間を含み、運送サービスの履行を目的としない船舶の移動又は待機期間を除く)である場合には、複数の顧客の貨物を積載する船舶の一航海を単一の履行義務としたうえで、当該期間にわたり収益を認識することができる(収益認識適用指針(案)96項、150項)。 3 出荷基準等の取扱い 収益認識会計基準(案)36項及び37項の定めにかかわらず、商品又は製品の国内の販売において、出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転される時(収益認識会計基準(案)32項~34項、36項、37項の定めに従って決定される時点、例えば顧客による検収時)までの期間が通常の期間である場合には、出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転される時までの間の一時点(例えば、出荷時や着荷時)に収益を認識することができる(収益認識適用指針(案)97項)。 商品又は製品の出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転される時までの期間が通常の期間である場合とは、当該期間が国内における出荷及び配送に要する日数に照らして取引慣行ごとに合理的と考えられる日数である場合である(国内における配送においては、数日間程度の取引が多いものと考えられる。収益認識適用指針(案)151項)。 4 契約の初期段階における原価回収基準 収益認識会計基準(案)42項の定めにかかわらず、一定の期間にわたり充足される履行義務について、契約の初期段階において、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができない場合には、当該契約の初期段階に収益を認識せず、当該進捗度を合理的に見積ることができる時から収益を認識することができる(収益認識適用指針(案)98項、152項)。 Ⅶ 会計システム等への影響 次の影響が考えられる(「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集」(企業会計基準委員会、平成28年2月4日)104項~106項)。 (了)
経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第136回】 企業結合会計⑧ 「共通支配下の取引」 -無対価の会社分割(分割会社、承継会社ともに子会社のケース) 仰星監査法人 公認会計士 渡邉 徹 公認会計士 素村 康一 〈事例による解説〉 〈会計処理〉 1 B1社(分割会社)の会計処理 2 B2社(承継会社)の会計処理 3 A社(親会社)の会計処理 B1社の純資産に対する、移転したb事業の純資産の比率 = b事業の純資産6,000千円 ÷ B1社の純資産15,000千円 = 40% B2社株式に引き換えられたとみなされる金額 = B1社株式10,000千円 × 40% = 4,000千円 〈会計処理の解説〉 この設例のように、完全親子会社関係にある一方の100%子会社(分割会社)から他の100%子会社(承継会社)に対して会社分割により事業を移転する際に、承継会社は対価(例えば承継会社の株式)を支払わないケースがあります。 ここで、分割に際し承継会社が対価を支払わない場合には、原則として、承継会社は、受け入れた資産及び負債の差額のうち株主資本の額を負ののれん(又はのれん)として処理することになります(「企業結合・事業分離等適用指針」224項(1))。一方、承継会社の株式を対価として支払う場合には、承継会社は、受け入れた資産及び負債の差額のうち株主資本相当額を払込資本(資本金又は資本剰余金)として処理することになります(「企業結合・事業分離等適用指針」227項(2))。 完全親子会社関係にある場合には、対価の有無は連結グループの経済実態に影響を与えません。にもかかわらず、上記のように会計処理が大きく異なってしまうことは好ましくないため、完全親子会社関係において対価が支払われない会社分割が行われた場合に、対価を支払った場合と結果が大きく異ならないように会計処理が定められています(「企業結合・事業分離等適用指針」437-2項、437-3項)。具体的には、承継会社は分割会社の株主資本の額を引き継ぐことになります。 ▷B1社 分割会社であるB1社においては、移転した事業に係る資産及び負債の差額について株主資本の額を減少させる処理を行います。なお、減少させる株主資本の内訳は、取締役会等の会社の意思決定機関において定められた額とします(「企業結合・事業分離適用指針」203-2項、255項、233項)。 ▷B2社 承継会社であるB2社においては、この取引が共通支配下の取引に該当するため、B1社から受け入れる資産及び負債を、分割直前にB1社で付されていた適正な帳簿価額により引き継ぎます(「企業結合会計基準」41項、「企業結合・事業分離適用指針」203-2項、256項、234項)。受け入れた資産及び負債の差額についてはB1社で減少させた株主資本を引き継ぎます(「企業結合・事業分離適用指針」234項、227項、437-3項)。なお、その際にB1社で減少させた資本金及び資本準備金はその他資本剰余金とし、利益準備金はその他利益剰余金として引き継ぎます(「企業結合・事業分離適用指針」437-2項)。 これは、会社法上、株式を発行していない場合に資本金及び準備金を増加させることは適当ではないと解されているためです(企業結合・事業分離適用指針」437-2項)。 ▷A社 親会社であるA社においては、分割会社であるB1社の株式の一部が、b事業の移転によりB2社の株式の一部に実質的に引き換えられたと考えられます。そのため、分割直前のB1社株式の適正な帳簿価額を合理的に按分する方法によって、B2社株式に引き換えられたものとみなされる部分の価額を算定し、B2社株式の帳簿価額に加算します(「企業結合・事業分離適用指針」294項)。 合理的な按分方法には、次のような方法が考えられ、実態に応じて適切に用います(「企業結合・事業分離適用指針」295項)。 なお、上記設例では③の方法を用いて算定しています。 (了)
〔事例で使える〕 中小企業会計指針・会計要領 《自己株式》編 【第2回】 「自己株式の処分」 公認会計士・税理士 前原 啓二 はじめに 「中小企業会計指針」は、(1)自己株式の取得及び保有、(2)自己株式の処分、(3)自己株式の消却について、言及しています。 会社法により、A社自身が取得して保有しているA社株式(自己株式)を、原則として株主総会の特別決議により、例えばd氏のような他者へ譲渡(処分)することができます。 今回は、「(2)自己株式の処分」についてご紹介します。 【設例2】 (1) A社は、×2年5月30日の株主総会の特別決議に基づき、×2年7月15日にA社自身が保有するA社株式をd氏へ1株100,000円で4株譲渡(処分)し、同日(払込期日)に払込されました。 非上場会社であるA社(3月31日決算)の×2年3月31日決算の貸借対照表上の純資産は次のとおりです。 資本金40,000千円、資本準備金10,000千円、利益準備金5,000千円、繰越利益剰余金50,000千円、自己株式△800千円、純資産合計104,200千円 A社の譲渡(処分)直前の保有自己株式は10株で、×1年7月20日に、@80,000円/株にて取得したもののみです。 (2) A社は、×3年5月30日の株主総会の特別決議に基づき、×3年7月10日にA社自身が保有するA社株式をe氏へ1株60,000円で6株譲渡(処分)し、同日(払込期日)に払込されました。 非上場会社であるA社(3月31日決算)の×3年3月31日決算の貸借対照表上の純資産は次のとおりです。 資本金40,000千円、資本準備金10,000千円、その他資本剰余金80千円、利益準備金5,000千円、繰越利益剰余金40,000千円、自己株式△480千円、純資産合計94,600千円 A社の譲渡(処分)直前の保有自己株式は6株で、×1年7月20日に、@80,000円/株にて取得したものです。 (1)(2)いずれも A社の発行済株式数は1,000株(普通株式の1種類のみ発行)です。 前回の【設例1】におけるA社の×2年3月31日現在の資本金等の額を、この設例でも引き継ぐものとします。 自己株式の処分に関する付随費用はないものとします。 1 仕訳 A社の仕訳は、次のとおりです。 自己株式の譲渡(処分)は、会社と株主との間の資本取引としての性格を有しているため、新株発行の会計処理と同様に貸借対照表の払込資本を直接増加させます。 具体的には、マイナスの自己株式の帳簿価額を減少させ、さらに、自己株式の譲渡(処分)の際の処分差額を、純資産の部の「その他資本剰余金」に計上します。 (1)では、自己株式の帳簿価額320,000円(=取得単価@80,000円/株×4株)を400,000円(=譲渡単価@100,000円/株×4株)で譲渡しているので、譲渡の際の処分差額はプラスの80,000円(=400,000円-320,000円)となり、これを純資産の部の「その他資本剰余金」に計上します。 (2)では、自己株式の帳簿価額480,000円(=取得単価@80,000円/株×6株)を360,000円(=譲渡単価@60,000円/株×6株)で譲渡しているので、譲渡の際の処分差額はマイナスの120,000円(=480,000円-360,000円)となります。 このような自己株式処分差損は、純資産の部の「その他資本剰余金」から減額し、控除しきれない場合には、さらに、その他利益剰余金の「繰越利益剰余金」から控除します(中小企業会計指針70(2))。(2)の自己株式処分差損120,000円は、その他資本剰余金残高80,000円を超えるので、その超過額40,000円を繰越利益剰余金から控除しました。 2 決算書 決算書の金額は、次のとおりです。 〈株主資本等変動計算書-「自己株式の処分」に係る部分を抜粋〉 〈株主資本等変動計算書-「自己株式の処分」に係る部分を抜粋〉 3 法人税法の規定における取扱い 自己株式の譲渡(処分)対価を、税務上は、資本金等の額の増加とします。 (1)の場合、自己株式の譲渡(処分)対価が400,000円であるので、資本金等の額が同額だけ増加します。 (2)の場合、自己株式の譲渡(処分)対価が360,000円であるので、資本金等の額が同額だけ増加します。 4 損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得を算出する際の加算・減算調整 上記3(法人税法の規定における取扱い)によると、自己株式の譲渡(処分)についての税務上の仕訳は、次のとおりです。 この税務上の仕訳と上記1(1)の会計上の仕訳を比べると、損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得への調整には影響がありませんが、資本金等の額は400,000円(自己株式譲渡(処分)対価の額)の増額調整が必要なので、別表五(一)において次のように記載します。 〈当期法人税申告書別表五(一)〉 この税務上の仕訳と上記1(2)の会計上の仕訳を比べると、損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得への調整には影響がありませんが、資本金等の額は、360,000円(自己株式譲渡(処分)対価の額)の増額調整が必要なので、別表五(一)において次のように記載します。 また、自己株式処分差損のうち繰越利益剰余金から控除した40,000円は、税務上資本金等の額から控除するので、利益積立金額を40,000円増額調整します。 〈当期法人税申告書別表五(一)〉 (了)
外国人労働者に関する 労務管理の疑問点 【第7回】 「後々トラブルにならないよう入社時に説明すべきこと(その1)」 社会保険労務士・行政書士 永井 弘行 1 新社会人なら日本人でも知らない人が多い 新卒で入社した新社会人であれば、外国人だけでなく日本人でも、給料・賞与から法定控除(いわゆる「天引き」)により社会保険料や税金が引き去りされることを正確に知っている人は多くありません。 外国人はなおさら、日本の制度や仕組みを知らないケースがほとんどと言っていいでしょう。例えば採用面接の際に、「初任給は20万円です」と聞けば、「毎月、20万円が給料日に支払われる」と思ってしまいます。しかし、給料からの法定控除がありますので、20万円全てを受け取ることはできません。 こうした『日本人ならあまり疑問に思わないこと』や、『そうした制度なら仕方がない』で終わるようなことでも、外国人の従業員にはなかなか納得できないケースもあります。このため、最初に丁寧に説明して、あらかじめ理解を得ておくのが賢明です。 そうしないと、後で苦情を言われたり、会社との信頼関係が崩れたり、トラブルに発展することがあります。 2 給料から税金や社会保険料が引き去りされます 一般に社会人であれば常識ですが、給料の「額面」と本人が受け取る「手取額」は異なります。実際に従業員が受け取るのは、税金や社会保険料が引かれた後の金額(手取額)です。そのため「労働条件通知書に書かれた給料の額」に比べ、「本人が受け取る手取額」は少なくなります。 勤務先の会社・団体を問わず、給料からは次の税金・社会保険料が引かれます。 扶養家族の人数によって税金の額は変わりますが、①~⑥の合計で給料の約20%程度が引かれます。つまり、給料の額面が20万円の人は、4万円程度が引かれて、手取額は約16万円になります。賞与についても、上記の②住民税は控除されませんが、それ以外の①、③~⑥の合計が支給の都度、控除されます。 〈給与・賞与から引かれる保険料の料率(平成29年9月以降)〉 ⇒「従業員負担分」が従業員の給与・賞与から控除される。 (※) 前提:サービス業(その他の各種事業)、協会けんぽ(東京都)に加入。 3 多くの場合、住民税の引き去りは「入社2年目」から 学生から社会人になった人は、入社1年目は、給料から住民税は引かれません(学生のときは無収入の前提)。住民税は、2年目の6月の給料から引き去りされます。つまり、1年目と2年目で給料の額が同じなら、2年目の6月から手取額が減ることになります。 このため「今月から急に給料が減りました。私の給料の計算や支払いが間違っていませんか?」という苦情(誤解)が出ないように、あらかじめ説明しておく必要があります。 なお、住民税は「前年1月~12月の1年間の所得」に応じて課税されます。毎年5月に市区町村から会社に、従業員一人一人の住民税の「特別徴収税額通知書」が通知されます。その通知書に記された住民税を従業員の毎月の給料から引き去りし、会社が市区町村に納付します。会社としては、市区町村から届いた「特別徴収税額通知書」の内容を、従業員各人に通知することが必要です。 外国人の従業員には、入社時にこの制度について説明した上で、上記の通知を行う際(入社2年目の5月頃)に、あらためて説明しておくのがよいでしょう。 4 社会保険は従業員個人の希望の有無に関わらず強制加入 時々、外国人の従業員から「私は数年後に帰国します。将来、日本の年金をもらうことはありません。私の給料から厚生年金保険料を引かないでください。」という要望を聞くことがあります。 会社で働く人は、外国人も日本人と同様に、給料・賞与から税金や社会保険料が引き去りされます。法令で決められた条件を満たしていれば、本人が希望する・しないに関わらず社会保険に加入し、法定控除として給料・賞与から保険料が引き去りされます。 つまり、外国人従業員が「社会保険に入りたくない」と希望しても、その人だけ厚生年金保険に加入しないとか、給料から引き去りしないことはできません。 厚生年金保険は国が運営する公的な保険であり、加入者には老齢年金以外にもいくつかのメリットがありますので、次の内容を説明して理解を得るのがよいでしょう。 5 外国人が日本出国後に請求できる厚生年金保険の脱退一時金 外国人従業員が日本で会社に6ヶ月以上勤務(厚生年金保険に6ヶ月以上加入)して帰国した場合は、帰国後も、日本年金機構に請求すれば、厚生年金保険の脱退一時金が支払われます。 例えば、日本で3年間、年収300万円で働いた外国人が帰国した場合、日本年金機構に請求すれば、約80万円の脱退一時金が支払われます。これは厚生年金保険料を支払っても老齢年金の受取りにつながらない外国人のために、「掛け捨て防止」を目的とした制度です。これまでに納付した厚生年金保険料(の平均額)が、3年分を上限に一時金として払戻しされます。 このように、厚生年金保険料は掛け捨てにはならないのです。実際に、最初は厚生年金保険の加入に否定的だった外国人従業員が「退職してから、帰国後に請求すれば、脱退一時金がもらえますよ」と説明することで納得してもらい、円満に解決したケースもあります。 なお、本年8月から、老齢年金を受け取るための条件が、国民年金・厚生年金保険の合計で「25年以上加入」から、「10年以上加入」に短縮されました。そのため、日本で会社に10年間勤務した外国人従業員は、国籍を問わず、65歳以降に支給される老齢年金の受給権を得ることになります。 この場合、老齢年金の受給権を得た外国人には、脱退一時金は支給されません。つまり脱退一時金を受け取ることができるのは、「厚生年金保険に6ヶ月以上加入し、老齢年金の受給権を得ていない外国人」に限られますので注意しておきましょう。 この脱退一時金については、別の回にあらためてご説明する予定です。 * * * 次回(第8回)も引き続き「後々トラブルにならないよう入社時に説明すべきこと」について説明していきます。 (了)
税理士が知っておきたい [認知症]と相続問題 〔Q&A編〕 【第19回】 「民事信託の利用(その1)」 -親なき後問題への対応(遺言代用型信託)- クレド法律事務所 駒澤大学法科大学院非常勤講師 弁護士 栗田 祐太郎 [設問16] 私はまだ50歳ですが、数年前から日常生活や仕事の場での物忘れが激しいため検査してもらったところ、若年性認知症であると診断されました。 私には、別れた妻との間に、生まれつき知的障害を持った未成年の息子がおります。息子がこの先自分の生活費を自分で稼げるようになる可能性はほとんどなく、親である私が息子の面倒を一生みる覚悟をしておりました。 そのような中で医師から今回の告知を受け、私自身の今後のみならず、息子の将来の生活に対しても非常に不安を感じております。 ◆ ◆ ◆ 私には親から相続した預金が4,000万円ほどあり、これを今後の私や息子の生活費に充てていきたいと思っていますが、将来的に私が亡くなって相続が発生したときに、相続人である息子自身が数千万円という高額なお金を自分で持つことになるのは、それはそれで不安に感じます。 また、将来、息子が亡くなった際に私が残したお金が残っているようであれば、息子がいつもお世話になっている地元の障害者自立生活支援センターへ寄付されるようにしたいのです。 ◆ ◆ ◆ 先日新聞で読んだ内容で、私のようなケースでは「民事信託」を利用する方法があるという記事を目にしました。 この「信託」というものはどのような制度なのでしょうか。わかりやすく説明してください。 1 「信託」とは何か? 高齢者の財産管理の一手法として、「民事信託」ないし「家族信託」というキーワードを目にする機会も多くなった。特に平成18年12月の信託法の改正以降、その傾向は年々強まっているといえる。 それでは、そもそも「信託」とはなんであろうか。 その意味内容を端的に言えば、その名が表すように、「誰かのことを信じて、財産を託する」という制度である。 信託は、もともと英米法における長年の歴史の中で形成されてきた制度を導入したものであること、当事者も多く法律関係も複雑なものとなることから正確に理解することがなかなか難しい面がある。 そこで、まずは信託の基本構造や基本用語について説明することにしたい。 2 民事信託の基本構造 前述した信託の意味内容に沿って考えれば、信託においては、①信託を利用したいと考えている者(委託者)がおり、②この者が所有する財産(信託財産)を、③一定の目的(信託目的)を実現するために、信頼する他者(受託者)に信託財産を託して移転させ、④受託者の管理のもとで、特定の者(受益者)が経済的給付を受けるという構造を取る。 これを図解すると、次のような三面構造となるのが原則である。 【信託の基本構造】 信託の場合、受託者は、成年後見人等のように本人の「代理人」として財産を管理する立場にとどまらず、信託財産の移転も受け、信託目的実現のために財産の管理処分権限まで有する点が大きな特徴といえる。 一般的なケースであれば、委託者と受託者は他人となるが、このような場合を他者信託という。他方、現行信託法では、委託者と受託者が同一であることも許されている。これが自己信託ないし信託宣言と呼ばれるものである。 また、委託者と受益者が他人となることが通常であろうが、このような場合を他益信託という。他方、委託者と受益者が同一であるケースも許され、このような場合を自益信託という。 そして、受託者が適切な財産管理・処分を行っているかを監視するための信託監督人や、受益者の権利確保を支援するための受益者代理人が置かれる場合もある。 なお、信託と聞くと、信託銀行のことを想起する人も多いであろう。この信託銀行が販売するものに、「遺言信託」という名称にてサービス展開しているものがある。 これは、①信託銀行が遺言書の作成を支援し、②その後、作成された遺言書を保管し、③遺言者が亡くなった後は遺言執行者として遺言執行業務を行うという内容のサービスである。 この内容に照らしても明らかなように、これは前記で説明した意味での信託ではない。混同しないように注意する必要がある。 3 【設問16】(親なき後問題)における利用例 【設問16】のケースは、民事信託の中でも、いわゆる「親なき後問題」と呼ばれ、信託の使用が検討されるケースの典型例の1つと言われている。 【設問16】のケースを仮に遺言書で定めようとすれば、息子に直接財産を相続させた場合、知的障害を持つ息子が多額の財産を直接所有することになる。そうなれば、悪意ある第三者が近づき、財産を詐取される恐れも考えられるし、息子自身が無計画に散財してしまう可能性もある。 そこで、相談者としては、信託のスキームの採用を検討することになる。 すなわち、自分の財産を信頼して託せる親族や知人があればこれを受託者とし、そのような者が身近にいなければ信託銀行に相談して受託者となってもらい、受託者に責任をもって信託財産を管理してもらうことにする。 そして、相談者が亡くなるまでは、相談者が委託者兼受益者となり(自益信託)、相談者が亡くなって以降は、知的障害を持つ相談者の息子を受益者とする(他益信託)よう信託契約にて定める。同時に、息子に毎月支払う定額の金額や通院・通所する病院や施設があれば、その費用も信託財産から支払われるように定めることになる。 このようにすることで、委託者である相談者が亡くなって以降も、相談者の息子は生活していく上での金銭の心配をせず、安心して暮らしていくことができる。 なお、相談者は、将来、息子が死亡したときに信託財産に余りがあるようであれば、地元の障害者自立生活支援センターに寄付したいという希望を有している。そこで、このような内容についても、予め信託契約において定めておく必要がある。 このように、委託者が数次にわたる将来的な財産処分を定めることができるのも、信託制度を利用するメリットの1つである。 民事信託制度は、工夫次第で様々な用途に対応できると言われている。次回は、他の用途に用いられる信託の事例を見てみよう。 (了)
これからの会社に必要な 『登記管理』の基礎実務 【第8回】 「定款・議事録管理の仕組みづくり」 -不完全な定款から万全な定款に- 司法書士法人F&Partners 司法書士 本橋 寛樹 はじめに 本稿では、【第2回】でその必要性を説明した「会社主導で中長期的に管理し続けられる体制づくり」の一環として、定款を中心とした「議事録管理」をテーマに解説する。 定款や議事録等を管理するうえで何か工夫している点はあるだろうか。今後、管理体制を見直していきたい意向の読者であれば、本稿を通じて、定款・議事録管理の仕組みづくりに関する秘訣をぜひ知ってもらいたい。 まずは定款を中心にみていく。 不完全な定款と万全な定款 登記実務の現場で「不完全な定款」を目にすることがある。 例えば、定款の商号や目的等の記載が、登記記録の記載と一致していなかったり、定款の役員の任期や事業年度が現在運用しているものと異なったりすれば不完全な定款といえる。 不完全な定款には次の問題点がある。 【不完全な定款の問題点】 一方、不完全な点が一切ない定款、つまり「万全な定款」であれば、次の①~③のとおり、不完全な定款の問題点がクリアになる。 【万全な定款によりクリアになる点】 自社の定款はいかがだろうか。もし不完全な点があれば、そのような定款が生み出される原因として以下の点が挙げられる。 不完全な定款が生み出される原因 不完全な定款が生み出される原因、それはズバリ、“定款変更に関する株主総会の決議の都度、定款に株主総会の決議内容を反映していないから”ではないだろうか。 株主総会の決議内容を定款に“反映する”とは 定款変更の効力は株主総会の決議が成立した時点で生じる(会社法第466条)。株主総会議事録に定款変更の旨を記載し、その記載を定款に盛り込んではじめて定款の記載が更新される。つまり、“反映”とは、株主総会の決議内容を定款に“盛り込む”ことをいう。 株主総会の決議内容を定款に反映するまでの過程をまとめると下図のようになる。 登記手続の場面で勘違いしやすい点 登記実務の場面で、①株主総会議事録は作成されるが、②定款変更に関する株主総会の決議内容が定款に反映されていない事例がよくみられる。 なぜ定款変更に関する株主総会の決議内容が定款に反映されないのか、事業目的の変更登記手続の場面をもとにみてみよう。 株主総会の決議内容が定款に反映されない原因 事業目的を変更する場合、事業目的が定款の記載事項とされている関係で、定款変更(=事業目的の変更)の株主総会の決議を行う。 登記手続の場面では、定款変更の記載のある株主総会議事録を添付すれば足り、変更後の事業目的を記載した定款の添付は求められていない。 実際、定款変更に関する株主総会の決議成立をもってその効力が生じるのであるから、定款変更の記載のある株主総会議事録を作成すれば十分であると考えても不思議ではない。 しかし、この工程で終わると定款には株主総会の決議内容が反映されないことになる。 これまで株主総会議事録の作成の工程で定款変更が完了であると信じていた読者に訴えたいのは、株主総会議事録の作成の工程からもう一歩ふみこんで株主総会の決議内容を定款に反映する工程を加えてもらいたいという点である。 この工程は、会社主導で中長期的に株主総会議事録と定款を管理していくうえでカギとなるところでもある。 株主総会議事録と定款の管理は“点と線のイメージ” 株主総会議事録と定款を管理するうえで、“点と線の”イメージを持つとよいだろう。 つまり、株主総会議事録は、ある株主総会の決議の内容をまとめたもの(=点)である一方で、定款は、定款変更に関する株主総会の決議の内容をその都度反映したもの(=線)である。 定款と株主総会議事録の関係性を表すと次のイメージとなる。 【定款と株主総会議事録の関係イメージ】 定款変更に関する株主総会の決議の都度漏れなくその決議内容を定款に反映することで、万全な定款となる。一方で、株主総会の決議内容を定款に反映することを一度でも失念すると、不完全な定款となってしまう。 そこで次回は、不完全な定款を生み出さないための実践方法について詳しく解説する。 (了)
〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第1話】 「所得税法56条と租税回避」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一 昼休みの税務署内。昼食を終えた中尾統括官は、憂鬱そうな表情で新聞を読んでいる。 7月の人事異動が終わり、これから1年間、新しいスタッフと共に働くことになるのだが、中尾統括官は毎年この時期になると、新学期を迎える1年生のように、ナーバスな気持ちになる。 中尾統括官は今年で57歳。定年まであと3年あるが、所得課税第三部門には昨年の人事異動で配属されたので、今年は2年目である。 「・・・中尾統括官。」 中尾統括官が顔を上げると、浅田調査官が机の前に立っている。 「あの・・・実はちょっと・・・質問が・・・」 浅田調査官は遠慮がちに中尾統括官の顔を覗く。浅田調査官は2ヶ月前に、税務大学校の「専科研修」から帰ってきたばかりである。 「質問・・・?」 中尾統括官は怪訝そうに浅田調査官を見る。 「ええ・・・税理士からの質問なのですが。・・・かまいませんか?」 そう言うと、浅田調査官はメモ用紙をポケットから取り出して、説明を始める。 「子供の土地の上に母親が賃貸マンションを建設したのですが、その場合の地代の支払いについての質問なのです。」 中尾統括官は、黙って聞いている。 「私は、とりあえず、子供に支払った地代は、母親の不動産所得では必要経費にならない・・・と答えたのですが・・・」 浅田調査官は、自信のなさそうな声で言う。 「母親と子供が・・・生計を一にしている、ということであれば、母親の必要経費にならないことになる。それは、所得税法56条の問題だな・・・」 中尾統括官は、机の上に置かれた税務六法を開く。 中尾統括官は条文を読んで頷いた後、説明する。 「・・・しかし、子供の必要経費・・・例えば、子供の所有している土地の固定資産税は、母親の必要経費になる((※1)の下線)・・・」 「この所得税法56条については、有名な判例が2つありましたね・・・夫・妻弁護士事件(最高裁平16.11.2判決)と妻税理士・夫弁護士事件(最高裁平17.7.5判決)・・・」 浅田調査官は専科研修で学んだときの資料ファイルを開いた。 「妻税理士・夫弁護士事件は、弁護士の夫が、生計を一にしている税理士の妻と顧問税理士契約を締結して、報酬を支払ったのだけど・・・所得税法56条を適用して、夫の必要経費として認めなかった。もっとも、東京地裁(平成15.7.16判決)は、納税者の主張を認めたけれど・・・」 浅田調査官の説明に、中尾統括官は頷く。 「そうだな・・・そういう事件があったことは覚えている・・・」 中尾統括官は、浅田調査官から差し出されたファイルを見る。 「この所得税法56条は、もともと家族間で所得を分割して、租税の負担を軽減するという租税回避を防止する目的で設けられた規定なんだ。ただし・・・この規定そのものが現代の社会に合致するのか・・・そういう批判はあることも知っている。」 中尾統括官は、言葉を選びつつコメントする。 「ところで、先ほどの税理士からの質問なのですが、母親は子供に地代を支払っても母親の必要経費にならない・・・そして、子供は、所得税法56条によれば・・・当該各種所得の金額の計算上ないものとみなす((※2)の下線)・・・とされていることから、子供は申告する必要がないことになります・・・」 浅田調査官の声のトーンが高くなる。 「・・・君は・・・何を言いたいんだい?」 中尾統括官は戸惑いながら尋ねる。 「つまり、子供は母親から地代を貰っても、申告をしなくてもよいということは・・・子供は、その受け取った地代に係る所得について課税されない・・・ということになるのでは・・・そう思うのですが・・・これって、逆に、租税回避になるのでは?」 浅田調査官は税務六法を見ながら言う。 「それは・・・」 中尾統括官は考えをめぐらせている。 「所得税法56条は、母親が子供に支払う地代そのものについて、何ら否定をしていません。ただ、所得税法上、その地代の支払いを母親の必要経費と認めないということを規定しているのです。他人に土地を借りるときには、当然、地代を支払うのだから、子供だからといって(妥当な)地代を支払う行為を禁じることはできない・・・所得税法は、支払を禁じているのではなく、その支払地代を母親の不動産所得を計算する際に、必要経費にしないということだけの規定なのです。」 浅田調査官は早口で一気に説明をする。 中尾統括官は驚いた様子で浅田調査官の説明を聞いている。 「・・・そして、その反射的な処理として、子供は、受け取った地代について何ら申告をする必要がない・・・」 浅田調査官の頬は少し火照っている。 「なるほど・・・逆に、所得税法56条は、納税者に対して、租税回避を助長している・・・ということか・・・」 中尾統括官は、苦笑いする。 「私はそう思うのですが。」 浅田調査官は自信たっぷりに言う。 「完璧な税法を規定することは・・・なかなか難しいな・・・」 中尾統括官は所得税法56条の条文を見ながらつぶやいた。 (つづく)
《編集部レポート》 日税連、京都大学にて寄附講座を開講 ~神津会長が登壇、学生に税理士の魅力を伝える~ Profession Journal 編集部 日本税理士会連合会は租税教育の一環として、大学における租税法に関する教育・研究活動を助成するため、平成7年度より各大学において寄附講座を開講している。 このほど平成29年度から3年度にわたり京都大学において寄附講座が開講され、第1回(2017年10月3日)の講師として神津信一日本税理士会連合会会長が登壇、「税理士の使命と役割-来たれ!税理士業界へ!-」をテーマに講義を行った。 神津会長は自身が初めて企業の決算・申告実務を任されたときに税理士業務のやりがいや魅力を知ったエピソードを披露、続いて税理士制度の沿革について紹介するとともに、税務に関する唯一の専門家であることを説明した。 (神津信一日本税理士会連合会会長) また、中小企業に寄り添うだけでなく最近では企業の組織再編のサポートや資産税の業務など様々な活躍の場があり、あらゆるところにニーズがある税理士の魅力を紹介。講演の最後には学生からの質問にも熱心に耳を傾け、実践的なアドバイスを行っていた。 (了)
《速報解説》 日本監査役協会関西支部 監査実務チェックリスト研究会、 「改訂版 監査役監査チェックリスト①~③」を取りまとめた報告書を公表 ~改正会社法への対応や監査環境の変化を取り入れ、より有用なツールへ~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2017(平成29)年9月28日(ホームページ掲載日)、日本監査役協会中部支部監査実務チェックリスト研究会は「監査実務チェックリスト研究会 報告書2017【改訂版 監査役監査チェックリスト①~③】」(以下「報告書」という)を公表した。 これは、前回公表(2014年9月25日)の「監査役監査チェックリスト①~③」に、改正会社法(2015年5月施行)への対応や監査環境の変化を踏まえた見直し等を行ったものである。 会社法上の機関設計をもとに、非公開会社かつ中小規模会社から中堅規模会社、大規模会社までの3類型を想定し、特に中小規模の会社の監査役を念頭に置きつつ、新任監査役が、何をどんな視点で監査するのか、就任後すぐに使えるチェックリストとすること、期末の監査報告書作成に向けて期中監査のツールとなるチェックリストとすることを基本的な考え方として取りまとめている。 監査役監査において重要な事項が取り扱われており、また、チェック内容や参考法令の条文番号が記載されるなど具体的なチェックリストの形式であり、実務において有用なものと考えられる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 構成 次の3つのものが作成されている。 以下では、「改訂版 監査役監査チェックリスト③」にしたがって解説を行う。 なお、「改訂版 監査役監査チェックリスト③」は非公開大規模会社を前提としているので、公開会社・有価証券報告書作成会社・上場会社等でご利用いただく場合は、金融商品取引法上の規制や証券取引所ルールに関するチェック内容等を加えて利用していただきたいとのことである。 2 チェックリストの主な内容 チェックリストの主な内容は次のとおりである。 (了)
《速報解説》 国税不服審判所 「公表裁決事例(平成29年1月~3月)」 ~注目事例の紹介~ 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 国税不服審判所は、平成29年9月28日、「平成29年1月から3月分までの裁決事例の追加等」を公表した。今回追加された裁決は表のとおり、全7件であった。 今回の公表裁決では、国税不服審判所によって課税処分等が全部又は一部が取り消された裁決が6件、棄却された裁決が1件となっている。税法・税目としては、所得税法、法人税法及び国税徴収法が各2件、相続税法が1件であった。 【表:公表裁決事例平成29年1月~3月分の一覧】 ※本稿で取り上げた裁決 本稿では、公表された7件の裁決事例のうち、普段あまり取り上げることのない国税徴収法に関連した2つの裁決事例⑥及び⑦を紹介したい。いつものお断りであるが、論点を整理するため、複数の争点がある裁決については、その一部を割愛させていただいていることを、あらかじめお断りしておきたい。 1 譲渡された債権に対する差押え(譲渡担保)・・・⑥ (1) 争点 争点は、「請求人が本件譲渡契約に基づき譲り受けた本件債権は、国税徴収法第24条第1項に規定する譲渡担保財産に該当するか否か」である。 (2) 審判所の判断 審判所は、大審院昭和8年4月26日判決・民集12巻767頁を参照するかたちで、譲渡担保設定契約には2つの類型があると説明する。 そのうえで、本件譲渡契約については、金銭消費貸借契約などをはじめとする被担保債権は存在しないから、本件譲渡契約は、上記(イ)の譲渡担保設定契約には該当しないこと、また、買戻特約又は再売買の予約が債権譲渡契約に付されていないことから、上記(ロ)の譲渡担保設定契約にも該当しないとして、原処分庁の主張を退けた。 結論として、審判所は、譲渡担保権者の物的納税責任に関する告知処分については全部取消しを認めたが、債権の差押処分については、原処分庁が、すでに債権の全額を取り立てたことを理由に、差押処分は、その目的を完了して既にその効力が消滅していることから、差押処分の取消しを求める審査請求は、請求の利益を欠く不適法なものであるとして却下した。 また、換価代金等の配当処分に関する審査請求は、換価代金等の交付期日まででなければ、することができないところ、請求人は配当処分について平成28年3月28日に審査請求をしており、配当処分に係る換価代金等の交付期日が経過している同年2月17日付、同月23日付及び同年3月16日付でされた配当処分の取消しを求める審査請求は、法定の審査請求期間経過後になされた不適法なものであるとして却下したうえで、交付期日の経過していない同年3月23日付及び同月24日付でされた換価代金等の配当処分については、全部取消しを認めた。 (注) 引用した国税徴収法の条文については、一部括弧書きを割愛している。以下も同じ。 2 無償又は著しい定額譲受人の第二次納税義務・・・ ⑦ (1) 争点 争点は、以下の3点である。 (2) 審判所の判断 ① 時効による徴収権の消滅について(争点1及び2) 原処分庁は、滞納者の納付すべき国税について、法定納期限から5年を経過しない日に督促状を発し、その納付を督促したこと、平成11年5月18日付で、滞納国税を徴収するため、滞納者が賃借していた店舗に係る差入保証金の返還請求権を差し押さえ、同月19日に本件店舗の貸主である第三債務者に債権差押通知書を送達したことなどから、滞納国税の徴収権は、時効中断を繰り返しており、告知処分時において時効消滅していないと認められる、と判断した。 同時に、第二次納税義務は、主たる納税義務が発生し存続する限り、必要に応じいつでも課せられる可能性を有するものであるから、第二次納税義務者に係る徴収権が主たる納税義務に係る徴収権と別個独立して時効により消滅することはない、と判断して、時効に関する請求人の主張をいずれも採用しなかった。 ② 徴収法第39条に規定する債務免除について(争点3) 審判所は、徴収法第39条に規定する第二次納税義務の制度について、次のように説明する。 そのうえで、請求人と滞納者との間の和解について、滞納者が和解金の支払を受けることを停止条件として、請求人が負う過払金返還債務を免除する旨の合意を含む契約であり、このような契約による免除も徴収法第39条の債務の免除に含まれることからすれば、本件和解による債務免除は、債務免除としての実質を有するものと評価できるものであり、徴収法第39条に規定する「債務の免除」に該当する、と判断した。 そして、原処分庁の処分については、請求人が債務免除により受けた利益の額を一部減額する(一部取消し)という結論に達した。 (了)