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日本の企業税制 【第43回】「国際課税に関する今後の改正動向を探る」

筆者:小畑 良晴

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日本企業税制

【第43回】

「国際課税に関する今後の改正動向を探る」

 

一般社団法人日本経済団体連合会
経済基盤本部長 小畑 良晴

 

国際課税に関しては、平成28年度税制改正においては移転価格税制に係る文書化制度の整備(国別報告事項等)、平成29年度税制改正においては外国子会社合算税制の抜本見直しなど、連続して大きな改正が行われている。

今後、国際課税に関しどのような改正が行われる可能性があるのか、各動向から探ってみたい。

 

1 「BEPS包摂的枠組み」による各国の法整備の動き

これらは、国際的なBEPS(税源浸食と利益移転)への取組みを背景にしたものである。本年3月17日から18日にかけて開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議声明においても、次のように述べられている。

我々は、世界規模で公正かつ現代的な国際課税システムのための取組を続ける。我々は、「税源浸食と利益移転(BEPS)」パッケージの適時の、一貫した、広範な実施に引き続きコミットし、「BEPS包摂的枠組み」への参加の拡大を歓迎し、関係・関心のある全ての国・法域に参加を奨励する。我々は、OECDが2017年7月のG20サミットまでに、4つのミニマム・スタンダード全てを含むBEPS実施の進捗について報告することを求める。・・・(中略)・・・さらに、OECDが、2017年7月のG20サミットまでに、税の透明性に関して合意された国際的基準の、満足のいく水準での実施に向けて十分な進捗が見られない法域のリストを準備することを期待する。

ここで触れられている「BEPS包摂的枠組み」とは、BEPSプロジェクトを推進してきたOECD加盟国34ヶ国に加盟申請中の4ヶ国(うち2ヶ国はとりまとめ段階で参加)及びOECD非加盟のG20諸国8ヶ国を合わせた46ヶ国に加え、新たに、低所得国を含む国・地域が、既存メンバーと対等な立場でBEPS最終報告書に盛り込まれた勧告にコミットするものである。

これは、昨年6月末に京都で開催されたOECD租税委員会の際に開かれた第1回「BEPS 包摂的枠組み会合(Inclusive Framework on BEPS)」で立ち上げられ、プロジェクト参加国・地域数は合計96ヶ国・地域に及んでいる(本年4月現在)。

したがって、わが国の国内法の整備のみならず、各国の法整備の状況から目が離せない。

また、「税の透明性に関して合意された国際的基準の、満足のいく水準での実施に向けて十分な進捗が見られない法域のリスト」については、平成29年度税制改正において抜本見直しが行われた外国子会社合算税制において、上記リストに記載された国・地域にある外国関係会社は「特定外国関係会社」(措法66の6②二ハ・⑭)として、いわゆるペーパーカンパニーと同様に、そのことをもって、その所得が合算対象となることとされている。

 

2 与党大綱に示された「中期的に取り組むべき事項」から見えること

昨年12月8日に決定した与党の平成29年度税制改正大綱では、「補論」として、一連の国際課税の見直しの背景と今後の課題について整理している。特に、「中期的に取り組むべき課題」として、次のように記されている。

今後、「移転価格税制」についても、知的財産等の無形資産を、税負担を軽減する目的で海外へと移転する行為等に対応すべく、「BEPSプロジェクト」で勧告された「所得相応性基準」の導入を含め、必要な見直しを検討する。また、「過大支払利子税制」についても、「BEPSプロジェクト」の勧告を踏まえた見直しを検討する。更に、国税当局が租税回避スキームによる税務リスクを迅速に特定し、法制面・執行面で適切に対応できるよう、その開発・販売者あるいは利用者に税務当局へのスキーム情報の報告を義務付ける「義務的開示制度」について、「BEPSプロジェクト」の最終報告書、諸外国の制度や運用実態及び租税法律主義に基づくわが国の税法体系との関係等も踏まえ、わが国での制度導入の可否を検討する。その際、国税当局が効果的かつ適時に必要な情報を入手するための最適な既存・新規制度の組み合わせも検討する。

ここで挙げられている課題は、移転価格税制、過大支払利子税制、義務的開示制度の3つであるが、これらのうち、移転価格税制に関しては、特に利益分割法のガイダンスをOECDで検討途上であり、また、義務的開示制度については「制度導入の可否」とあるように、他の課題より一歩引いた取り扱いとなっていることからすれば、過大支払利子税制が、当面の課題として浮上する可能性があると見られる。

過大支払利子税制とは、所得金額に比して過大な利子を関連者間で支払うことを通じた租税回避を防止するため、関連者への純支払利子等の額のうち調整所得金額の一定割合(50%)を超える部分の金額につき当期の損金の額に算入しないこととする制度で、平成24年度税制改正で創設されたものである(措法66の5の2)。

これを見直す場合、OECDのBEPS最終報告書を踏まえれば、上記の「調整所得金額」の算定における受取配当の取扱いと、調整所得金額に乗じる「一定割合」の水準、第三者への支払利子の取扱いなどが大きな課題となろう。

(了)

「日本の企業税制」は、毎月第3週に掲載されます。

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筆者紹介

  • 小畑 良晴

    (おばた・よしはる)

    一般社団法人 日本経済団体連合会 経済基盤本部長

    1965年生まれ。1990年東京大学法学部卒業。同年(社)経済団体連合会(現 日本経済団体連合会)事務局入局。
    2006年経済法制グループ長 兼 税制・会計グループ副長、2009年経済基盤本部主幹、2015年より現職。
    税制、経済法規、金融・資本市場などの各委員会を担当。

    【著書】
    ・『改正会社法対応版 会社法関係法務省令 逐条実務詳解』共著(清文社)
    ・『税制改正の要点解説』共著(清文社)
    他多数

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