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特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用(法人税法57条の2)の取扱い~「繰越欠損金の使用制限」が形式的に適用される事例の検討~ 【第6回】「〈事例4〉欠損等法人を適格合併又は清算で整理するケース(第4号事由)」

特定株主等によって支配された欠損等法人の 欠損金の繰越しの不適用(法人税法57条の2)の取扱い ~「繰越欠損金の使用制限」が形式的に適用される事例の検討~ 【第6回】 「〈事例4〉欠損等法人を適格合併又は清算で 整理するケース(第4号事由)」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト パートナー 足立 好幸   〈事例4〉 欠損等法人を適格合併又は清算で整理するケース(第4号事由) 《検討》 〈事例1〉のように、買収したい会社に、休眠会社がおまけのようについてくる場合、何らかの方法により、休眠会社を整理する必要が生じる。この場合、欠損等法人となる休眠会社を合併法人、事業子会社を被合併法人とした合併をすると、休眠会社及び事業子会社の繰越欠損金と含み損に使用制限が生じてしまう。 そこで、本ケースのように①休眠会社を被合併法人、事業子会社を合併法人とする逆さ合併を行うか、②休眠会社を清算するか、のいずれかについて、欠損等法人の繰越欠損金の使用制限の規定(法法57の2、60の3)が適用されるかを検討する必要が生じる。   [検討1] A社及びB社は欠損等法人に該当するか? 〈事例1〉の[検討1]のとおり、A社及びB社は、欠損等法人に該当する。   [検討2] 特定事由に該当するか? 次に、欠損等法人A社又は欠損等法人B社において、一定の期間までに特定事由が生じたかを検討する。 まず、A社について、欠損等法人A社は買収前から事業を行っていないが、〈事例1〉と異なり、欠損等法人A社は被合併法人又は残余財産確定法人となるため、第1号事由に該当しない。また、第2号事由、第3号事由、第5号事由にも該当しない。 しかし、欠損等法人A社は第4号事由に該当することとなる。 ここで、第4号事由は、次の2つの要件に該当する場合をいう。 本ケースでは、要件1について、①に該当し、要件2について、【1】又は【2】のいずれかに該当するため、欠損等法人A社は、特定支配日以後5年を経過した日の前日(平成30年9月30日)までに第4号事由に該当することとなる。 この場合、特定事由に該当することとなった日(該当日)は、適格合併の日の前日(平成27年12月31日)又は残余財産の確定日(平成28年1月1日)となる。 B社については、買収前の事業を継続しており、今後も継続する見込みであること(第1号、第2号、第4号事由)、B社に対する債権の売買も行われていこと(第3号事由、第4号事由)、買収を起因とした役員の退任もないこと(第5号事由)から特定事由には該当しない。   [検討3] 使えなくなる繰越欠損金と繰越欠損金が使えなくなる事業年度は? 欠損等法人A社において、適格合併の場合、平成27年4月1日~平成27年12月31日事業年度(適用事業年度)、残余財産の確定の場合、平成27年4月1日~平成28年1月1日事業年度(適用事業年度)から、平成26年4月1日~平成27年3月31日事業年度以前の事業年度に生じた繰越欠損金が使用できなくなる。 また、平成27年4月1日から平成30年3月31日までの適用期間(実際には、A社は平成27年12月31日又は平成28年1月1日で最終事業年度が終了する。なお、特定支配日以後5年を経過する日は、平成30年9月30日となる)において生ずる特定資産の譲渡等損失額は損金不算入となる。   [検討4] 合併又は残余財産の確定に係る税務上の取扱いは? 合併又は残余財産の確定に係る税務上の取扱い、具体的には合併法人B社又は残余財産確定法人の株主P社における税務上の取扱いはどうなるであろうか。 内国法人B社と欠損等法人A社の間でB社を合併法人、A社を被合併法人とする適格合併が行われる場合、又は内国法人P社との間にP社による完全支配関係がある欠損等法人A社に残余財産が確定する場合、欠損等法人A社の適用事業年度前の事業年度に生じた繰越欠損金は、合併法人B社又は残余財産確定法人の株主P社には引き継げない。 ただし、欠損等法人A社の適用事業年度(最終事業年度)の繰越欠損金は組織再編税制に係る引継要件、清算課税に係る引継要件を満たす場合に、合併法人B社又は残余財産確定法人の株主P社に引き継ぐことができる。 一方、合併法人B社の繰越欠損金については、組織再編税制に係る利用要件を満たす場合に利用制限が生じない(本ケースでは、設立日又は5年前からの支配関係継続要件を満たしているため、利用制限は生じない)。 また、欠損等法人A社がその適用期間(平成27年4月1日から平成30年3月31日までの期間)内に自己を被合併法人とする適格合併によって、その有する特定資産を合併法人B社に移転した場合は、合併法人B社を特定資産の譲渡等損失額の損金算入制限の規定の適用を受ける欠損等法人とみなして、継続して損金算入制限の規定が適用される。 以上より、本ケースでは、法人税法第57条の2及び60条の3の適用により、第4号事由に該当する場合、欠損等法人A社の適用事業年度前の事業年度に生じた繰越欠損金は切り捨てられ、特定資産の譲渡等損失額が損金不算入となる。 〈事例4〉 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます (了)

#No. 164(掲載号)
#足立 好幸
2016/04/07

〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第25回】「贈与契約書」

〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第25回】 「贈与契約書」   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   土地を贈与するにあたり、贈与契約書を作成しましたが、課税文書に該当しますか。また、課税文書に該当した場合、印紙税額はいくらになりますか。   記載金額のない第1号の1文書(不動産の譲渡に関する契約書)に該当し、印紙税額は200円となる。   [検討1] 贈与契約とは 贈与契約とは、贈与者が自己の財産を無償で受贈者に与える(譲渡する)契約である。 したがって、課税文書に該当するかどうかは贈与する目的物によって異なる。 [検討2] 贈与契約の記載金額は 贈与契約はもともと無償契約であり、贈与契約書に評価額等が記載されていたとしても、この金額は譲渡の対価ではなく、記載金額には当たらない。 つまり、土地評価額1,530万円と記載しても、無償で給付するものであるため、参考値にしかすぎず、契約金額として証明するものとは認められない。したがって、記載金額のない契約書に該当する。 ただし、受贈者が贈与者の債務の引き受けを条件とする負担付贈与契約で負担の価格が目的物と同等あるいはそれ以上の場合等で、実質売買契約あるいは交換契約と認められる場合は、負担の価格が記載金額と取り扱われることとなる。 なお、譲渡契約とは、売買、交換、贈与、代物弁済、法人等に対する現物出資、寄附行為等がある。   ▷ まとめ   (了)

#No. 164(掲載号)
#山端 美德
2016/04/07

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第11回】「パチンコ平和事件」~最判平成16年7月20日(集民214号1071頁)~

さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第11回】 「パチンコ平和事件」 ~最判平成16年7月20日(集民214号1071頁)~   弁護士 菊田 雅裕   (了)

#No. 164(掲載号)
#菊田 雅裕
2016/04/07

〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領《有価証券》編 【第4回】「有価証券の減損」

〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領 《有価証券》編 【第4回】 「有価証券の減損」   公認会計士・税理士 前原 啓二   はじめに 満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式並びにその他有価証券について、時価等が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、強制的に評価差額を損益計算書上の当期の損失として減損処理しなければなりません。 《有価証券》編の最終回となる今回は、【第2回】、【第3回】にご紹介した取扱いと異なるこの減損処理について取り上げます。   1 ×1年12月期の期末、×2年12月期における仕訳 (ⅰ) 〈×1年12月期の期末〉 (ⅱ) 〈×2年12月期の期首〉 (ⅲ) 〈×2年12月期の期末〉 満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式並びにその他有価証券のうち市場価格のあるものについて、時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損失として処理しなければなりません。 市場価格のある有価証券の時価が「著しく下落した」ときとは、少なくとも個々の銘柄の有価証券の時価が、取得価額に比べて50%程度以上下落した場合をいいます。 この場合には、合理的な反証がない限り、時価が取得原価まで回復する見込みがあるとは認められず、減損処理を行わなければなりません(中小企業会計指針22)。   2 決算書の金額 ×1年12月期 〈貸借対照表〉 〈損益計算書〉 ×2年12月期 〈貸借対照表〉 〈損益計算書〉   3 上場有価証券の評価損に関する法人税法上の取扱い 上場有価証券等(企業支配株式に該当するものを除く)について、その価額が著しく低下し、帳簿価額を下回ることになった場合に、評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額したときは、帳簿価額とその価額との差額までの金額を限度として評価損の損金算入が認められます(法法33②、法令68①)。 「価額が著しく低下した」とは、事業年度末の価額がその時の帳簿価額のおおむね50%相当額を下回ることになり、かつ、近い将来その価額の回復が見込まれないことをいいます(法基通9-1-7)。 法人側から、過去の市場価格の推移や市場環境の動向、発行法人の業況等を総合的に勘案した合理的な判断基準が示される限りにおいては、その基準が尊重されます。専門性を有する客観的な第三者の見解、例えば証券アナリストによる個別銘柄別・業種別分析や業界動向に係る見通し、発行法人に関する企業情報を用いて、その株価が近い将来回復しないことについての根拠が提示されるのであれば、合理的な判断であると認められます(上場有価証券の評価損に関するQ&A[Q1])。 また、株価の回復可能性の判断は、各事業年度末時点において行います。このため、翌事業年度以降に株価の上昇などの状況の変化があったとしても、そのような事後的な事情は、当事業年度末の株価の回復可能性の判断に影響を及ぼすものではなく、当事業年度に評価損として損金算入した処理を遡って是正する必要はありません(上場有価証券の評価損に関するQ&A[Q3])。 (《有価証券》編 終了)

#No. 164(掲載号)
#前原 啓二
2016/04/07

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第112回】減損会計⑦「のれんの取扱い」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第112回】 減損会計⑦ 「のれんの取扱い」   仰星監査法人 公認会計士 横塚 大介     〈事例による解説〉   〈会計処理〉(単位:百万円) ① C店舗の減損 (※1) 固定資産簿価120百万円>割引前将来キャッシュ・フロー100百万円 ∴減損必要 減損損失50百万円=固定資産簿価120百万円-回収可能価額70百万円 ② のれんの減損 (※2) レストラン事業固定資産簿価合計500百万円>レストラン事業割引前将来キャッシュ・フロー440百万円 ∴減損必要 減損損失120百万円=固定資産簿価合計500百万円-回収可能価額380百万円 のれんの減損損失70百万円=減損損失120百万円-C店舗の減損損失50百万円   〈会計処理の解説〉 1 のれんの減損の兆候の判断方法 のれんの減損処理を検討するに当たり、その帳簿価額は、まず、のれんが認識された取引において取得された事業の単位に応じて、合理的な基準に基づき分割します。 本事例では、レストラン事業とファストフード事業にのれんを分割し、事業ごとに減損の兆候を判断しています。   2 のれんの減損処理 グルーピングを、のれんが帰属する事業に関連する複数の資産グループにのれんを加えた、より大きな単位で行う場合、減損の兆候の把握、減損損失を認識するかどうかの判定及び減損損失の測定は、まず、のれんを含まない資産グループごとに行い、その後、のれんを含む、より大きな単位で行う必要があります。 【のれんを含まない資産又は資産グループごとの減損会計処理】 【のれんを含む、より大きな単位の減損会計処理】 本事例では、まずレストラン事業の店舗ごとに減損の兆候の把握を行い、減損の兆候があるC店舗について減損損失の認識及び測定を行っています。 C店舗の割引前将来キャッシュ・フローは固定資産簿価を下回っているため、減損損失を認識すべきと判定されます。このため、C店舗の固定資産簿価120百万円を回収可能価額70百万円まで減額し、減損損失50百万円を当期の損失とします。   3 のれんを含む、より大きな単位での減損処理 レストラン事業は、継続的に赤字であるため、レストラン事業ののれんには減損の兆候があると判断されます。そこで、のれんを含むより大きな単位で減損損失を認識するかどうかを判定するため、より大きな単位の割引前将来キャッシュ・フロー440百万円とA店舗、B店舗、C店舗の固定資産簿価及び配分されたのれん80百万円の合計額500百万円とを比較します。この場合、割引前将来キャッシュ・フローが固定資産簿価を下回っているため、減損損失を認識します。 回収可能価額の合計額380百万円が固定資産簿価の合計額500百万円を下回るため、より大きな単位の減損損失は120百万円と測定されます。このうち、C店舗にかかる減損損失が50百万円と測定されているので、増加額70百万円がのれんの減損損失となります。 これは、のれんを加えることによって算定される減損損失が増加した場合には、当該判定単位(本事例におけるレストラン事業)の超過収益力がもはや失われていると考えられるため、当該減損損失の増加額は、のれんに配分すべきとの考えによります。 *   *   * 次回は、減損処理後の会計処理について解説します。 (了)

#No. 164(掲載号)
#横塚 大介
2016/04/07

税理士ができる『中小企業の資金調達』支援実務 【第17回】「金融機関提出書類の作成ポイント(その9 経営指標について)」

税理士ができる 『中小企業の資金調達』支援実務 【第17回】 「金融機関提出書類の作成ポイント(その9 経営指標について)」   公認会計士・中小企業診断士・税理士 西田 恭隆   前回は、金融機関に提出する各資料の作成ポイントの補足として、粉飾決算について述べた。今回は、経営指標について解説する。融資のポイントとなる経営指標はあるのか、その水準の高低によって融資判断に影響があるのかについて述べる。   経営指標は融資判断に関係ない まず、経営指標とは次のような比率をいう。損益計算書に関するものと、貸借対照表に関するものに大別される。 詳しい計算方法は、インターネット上や書籍等で確認できる。 結論からいうと、「これらの指標は融資判断に関係ない」というのが筆者の実感である。融資を申し込んだ際、「利益率が業界平均に届いていないので、融資はできません」、「当座比率をもう少し上げて頂ければ融資は可能です」などと言われたことはない。 以下、損益計算書と貸借対照表の指標それぞれについて、関係ないと考える理由を述べる。   損益計算書の指標について 損益計算書の指標が融資判断に関係ないと考える理由は、業種、業態、会社の経営方針によってその水準は様々であり、業界平均と比較して、一律にその会社が良い悪いと判断するのは不可能だからである。 同じ製造業であっても、自社加工する会社と、外注対応する会社では、利益率は異なる。飲食業の原価率は30%以下にする必要があると言われるけれども、高品質高価格の経営方針をとる店舗と、低価格で回転数を稼ぐ店舗では、利益率は異なるだろう。前提条件が異なる会社同士を比較しても有益な情報は得られない。 また、金融機関は、利益率の高低よりも、借金返済額を上回る利益額を確保できるかどうかに関心を持つ。業界平均を大きく上回る利益率であっても、毎月の利益額が返済額に届かないのであれば、金融機関は融資を行うことができない。 以上の理由から、利益率及びその水準の高低によって融資判断が左右されることはないと考える。決算書や事業計画書の利益率を業界平均以上に引き上げる必要はない。   貸借対照表の指標について 貸借対照表の経営指標も融資判断に関係ないというのが実感である。貸借対照表は、期末時点で会社を清算するという前提での財産価値を表す。一方、融資の申し込みは、継続企業を前提として行われ、会社の借金返済能力、すなわち「当期純利益+減価償却費」が重視される。貸借対照表項目から借金返済能力を読み取ることはできないし、それを使って計算した経営指標も同様である。 金融機関が貸借対照表に関心を持つのは、前回までに述べた通り、債務超過の有無や、粉飾をチェックする場合、担保となる固定資産の有無、現在の借入金残高等を確認する場合である。 したがって、貸借対照表の経営指標も融資判断を左右するものではない。水準の高低に神経質になる必要はない。   経営指標の業界平均について 余談であるけれども、業界平均の経営指標に関心を持つ社長は多い。「当社の利益率は他社と比べて良いのか悪いのか、当社にとって最適な利益率を教えて欲しい」という相談を受けることがある。先述の通り、利益率は会社によって様々であるから、他社と単純比較するのは難しい。筆者の場合、あくまで参考情報にすぎないと念を押した上で、業界平均指標を社長に提供している。そして会社が目標とすべき、最適な利益率は、事業計画書上で社長自ら設定した利益率であると回答している。 なお、業界平均指標については、インターネット上や「株式会社きんざい」が出版する「業種別審査事典」等から入手できる。この種の書籍は高額であるから、図書館で閲覧コピーすると良い。 以上、金融機関に提出する書類の補足として、経営指標について解説した。指標は会社によって様々であるから、それがある一定水準を上回れば融資が必ず得られる、などということはない。経営指標は融資判断の決め手になるものではない。 *   *   * 次回は、融資実行後における税理士の役割を解説する。無事に融資を得られた後も、金融機関への実績報告や、追加の資金調達支援をすることで、引き続き、税理士は存在感を示すことができる。 (了)

#No. 164(掲載号)
#西田 恭隆
2016/04/07

〈小説〉『資産課税第三部門にて。』 【第7話】「未分割遺産とその法定果実」

〈小説〉 『資産課税第三部門にて。』 【第7話】 「未分割遺産とその法定果実」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「田中統括官!」 田中統括官が顔を上げると、谷垣調査官が相続税の申告書を持ち、机の前に立っている。 「???」 田中統括官は、重そうな瞼で谷垣調査官を見た。 午後3時過ぎの睡魔が忍び寄る時刻である。 「何だい?」 田中統括官は谷垣調査官の真剣な眼差しに一瞬戸惑う。 「実は個人課税部門から質問があったのですが・・・」 谷垣調査官はそう言うと、右手に持った相続税の申告書を田中統括官に見せた。 「この相続税の申告書は未分割で提出されているのですが・・・」 相続税の申告書を見ながら田中統括官はうなずく。 「そんなことは申告書を見れば分かる・・・それで一体、どうしたっていうんだ。」 谷垣調査官の質問の意味が理解できず、田中統括官の声が苛立っている。 「この未分割の相続財産の中に、賃貸マンションがあるのです。」 谷垣調査官が説明を始める。 「それで、相続人は3人いるのですが、この賃貸マンションの家賃収入について、相続人の1人がすべてを申告しているのです。」 谷垣調査官は困ったような表情を浮かべている。 「家賃収入に漏れがなければ、相続人の誰が申告してもかまわないのでは・・・」 田中統括官は谷垣調査官の顔を見た。 「しかし、統括官も知っている・・・と思いますが・・・」 谷垣調査官は少し嫌みっぽく言う。 「国税庁のタックスアンサーでは、共同相続人がその法定相続分に応じて申告することになる・・・と回答しています。」 谷垣調査官は、「No.1376 不動産所得の収入計上時期」とプリントされた用紙を田中統括官に見せた。 「しかし・・・別に、相続人の1人が申告しても、税務上問題はないのでは・・・」 田中統括官は文書を見ながら抵抗を続けた後、思案顔になって言った。 「昔はこんな取扱いをしていなかったと思うけどなぁ・・・」 「そうなんです。平成17年9月8日の最高裁の判決によって、このような処理になったと思われます。」 谷垣調査官は自分の机に戻り引き出しからファイルを取り出すと、すぐに田中統括官の元へ戻ってきた。分厚いファイルから「預託金返還請求事件」と事件名の書かれている判決文のコピーを抜き取る。 「へぇ・・・谷垣君はなかなか几帳面なんだな。」 田中統括官は感心しながら谷垣調査官を見た。 「この事件は、税の事件ではないのですが・・・未分割の遺産から生じた法定果実については、「分割単独債権」として、相続分に応じて、それぞれの相続人が確定的に取得すると判断されています。」 谷垣調査官は説明しながら、判決文の一部を読み上げる。 「なるほど、この判決からすると、未分割の遺産から生じる法定果実は、法定相続分に応じて各相続人が申告することになるのか・・・しかし・・・」 田中統括官は傍らにある小六法を手に取った。 「民法909条では、遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるとなっているから、常識的に考えると、未分割の状況下での賃料は、その不動産を相続した者に帰属することになると考えるのが妥当だと思うのだが・・・」 田中統括官は小六法をめくりながらつぶやいた。 すかさず谷垣調査官が発言する。 「ところが民法898条は、相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属すると規定しています。」 「この共有に属する遺産から生じる法定果実は、遺産とは別個のもので、その相続分に応じて、分割単独債権として確定的に各相続人が取得するもの、すなわち分割単独債権であると、最高裁は判断しているのです。」 谷垣調査官は話し終わると、髪の毛の薄くなった田中統括官の頭を見た。 「・・・しかし、もともと民法が共有に属すると規定する理由は、共同相続人の共有財産として扱わないと後に複雑な法律関係が生じることになるから、便宜的にしたもので、その問題がなければ、むしろその不動産を相続した者を未分割の状況下での法定果実の帰属者とした方が良いと思うのだが・・・」 谷垣調査官は黙って聞いている。 「ところでさっきの、個人課税部門からの質問は?」 田中統括官が尋ねる。 「個人課税部門では、相続人全員に対して、相続分に応じて、不動産所得の更正処分をしようかと・・・もちろん、家賃収入のすべてを申告した相続人に対しては減額の更正処分をするということなのですが・・・」 谷垣調査官の言葉に、田中統括官は頭を大きく左右に振った。 「そんなこと、しなくても良いだろう。家賃収入の計上漏れがなければ、わざわざ税務署が相続人間の配分を調整する必要はないだろう。税務署はそんな暇なところじゃない・・・」 田中統括官の表情から、眠気はすっかり消えていた。 (つづく)

#No. 164(掲載号)
#八ッ尾 順一
2016/04/07

笹岡宏保税理士による〈資産税研修会〉『[財産評価の論点を確認する]相続税財産評価の税務判断~金融資産、雑種地、使用貸借に係る評価実務~』 5月11日(水)開催 お申込み受付を開始しました!

プロフェッションネットワーク主催の税理士 笹岡 宏保氏による『資産税研修会』。 5月11日(水)開催のお申込み受付を開始しました! 今回も、1月に発刊された笹岡氏の新刊書『ケーススタディ 相続税財産評価の税務判断』が特別割引でご購入いただけるお得なセットお申込みプランがございます! また平成28年度の資産税研修会(全7回)の日程を公開しておりますので、こちらからご覧下さい。 ★セミナー内容の詳細やお申込方法など、くわしくは下記からご覧ください。

#Profession Journal 編集部
2016/04/04

《速報解説》 金融庁、「国際会計基準(IFRS)に基づく連結財務諸表の開示例」を公表~IFRS適用企業の実際の開示例や最近のIFRS改訂を反映~

《速報解説》 金融庁、「国際会計基準(IFRS)に基づく連結財務諸表の開示例」を公表 ~IFRS適用企業の実際の開示例や最近のIFRS改訂を反映~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成28年3月31日、金融庁は、「国際会計基準(IFRS)に基づく連結財務諸表の開示例」を公表した。 「国際会計基準に基づく連結財務諸表の開示例」は、平成21年12月に公表されているが、今般、それを改訂し、「IFRSに基づく連結財務諸表の開示例」として公表するものである。 開示例に意見がある場合には、平成28年9月30日までにお寄せいただきたいとのことである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主なポイント 1 改訂のポイント 改訂のポイントは次のとおりである。 2 開示例のポイント 開示例は表紙を含めて140ページに及ぶものである。 開示例の利用にあたっての主な留意事項として、次のことが述べられている。 参考資料として次のものに関する開示規定が記載されている。 3 IFRSの各基準と開示例での取り扱い箇所の関係 例えば、次のような一覧表が記載されており、IFRSの理解に資する工夫がなされている。 次のような記載が行われており、実務に役立つ工夫がなされている。 (了)

#No. 163(掲載号)
#阿部 光成
2016/04/01

《速報解説》 会計士協会、監査事務所への特別レビューについて概要を公表~改善勧告事項はみられず~

《速報解説》 会計士協会、監査事務所への特別レビューについて概要を公表 ~改善勧告事項はみられず~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成28年3月31日、日本公認会計士協会は「特別レビューの実施概要について」を公表した。 これは、昨今の会計不祥事の事案を受けて、平成28年2月から3月まで、日本公認会計士協会が緊急に実施した「特別レビュー」に関するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 特別レビューの実施概要 1 対象 次の監査事務所(公認会計士及び監査法人)である。 2 会長通牒に記載された留意事項 「特別レビュー」は、会長通牒「公認会計士監査の信頼回復に向けた監査業務への取組」(平成28年1月27日)において、特に留意すべき事項とされたものに対応して行われている。 会長通牒では特に留意する事項として次の7項目を挙げている。 3 実施結果 平成28年3月期の監査実施体制には、改善が必要と認められる改善勧告事項はなかった。 ただし、平成28年3月期の監査終了までに監査事務所が適切に対応するよう指導した事項が記載されている。   Ⅲ 今後の対応 指導した事項については、今後の通常の品質管理レビューにおいて、対応状況を確認していくとのことである。 (了)

#No. 163(掲載号)
#阿部 光成
2016/04/01
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