《速報解説》 「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」、CGコードにおける取締役会対応状況について意見書を公表 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年2月18日、金融庁から「会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に向けた取締役会のあり方」(「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」意見書(2))が公表された。東京証券取引所のホームページでも公開されている。 意見書では、日本企業のコーポレートガバナンス・コードにおける取締役会に関する取組み状況について論点や要請事項が示されていること、また、コーポレートガバナンス・コードに対する取組みの例が記載されていることから、企業の方にも参考になるものと考えられる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 取締役会のあり方 「企業を取り巻く経営環境の変化と取締役会のあり方」として、主な事項として、次の論点が述べられている。 意見書では、下記以外についても述べられており、また、取組み例も紹介されているので、ぜひ全文をお読みいただきたい。 (了)
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《速報解説》 不服申立制度の改正に伴い 「不服審査基本通達」が改正 ~改正行政不服審査法等の施行にあわせ平成28年4月1日以後の取扱いを整備~ 弁護士 坂田 真吾 1 はじめに 平成28年2月5日付けで、国税庁長官より「不服審査基本通達(異議申立関係)の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)、及び「不服審査基本通達(審査請求関係)の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)、が発遣された(国税庁ホームページ公開は2月12日)。 国税通則法については、行政処分一般についての訴訟前の不服申立制度を規律する行政不服審査法の改正(平成26年)を踏まえ、異議申立、審査請求制度の改正がなされており、今回、これにあわせて上記通達の該当箇所の改正が行われたものである(※)。 (※) 今回の通達改正により、通達の標題についても以下のように変更されている。 ・「不服審査基本通達(異議申立関係)」⇒「不服審査基本通達(国税庁関係)」 ・「不服審査基本通達(審査請求関係)」⇒「不服審査基本通達(国税不服審判所関係)」 なお、国税通則法施行令も、平成27年11月26日付で改正されている(下記拙稿を参照)。また、当該改正法等は、平成28年4月1日以降になされた課税処分等に係る不服申立てに適用される。 2 主な改正項目 国税通則法改正の主な項目及び今回の通達の改正点等について紹介する(以下では、改正後の国税通則法を「改正法」、改正後の通達を「改正通達」という)。 【参考図】 (※) 国税不服審判所ホームページより 3 終わりに 税務上の不服申立制度は、特に近時の審判所の任期付職員制度(国税の外部の税理士、公認会計士、弁護士等を審判官に登用する制度)の採用・拡大によって転換期を迎えているが、今回の改正によって、従前の二段階不服申立制度が選択的なものとされ、また、納税者の証拠へのアクセス権限が拡充されたこと等から、さらに大きな変化が生じるものと考えられる。 (了) ↓お薦め連載記事↓
2016年2月18日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.157を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
日本の企業税制 【第28回】 「企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)について」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴 (※) 今回より筆者変更となります。 1 はじめに 平成28年度税制改正で創設されることとなった『地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)』とは、地方自治体が行う地方創生を推進する上で効果の高い一定の事業として国が認定した事業=「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」に対して法人が行った寄附について、現行の損金算入措置に加えて、法人事業税・法人住民税及び法人税の税額控除を導入し、寄附金額の約6割の負担を軽減する制度である。 地方創生=ローカル・アベノミクスへの支援税制措置としては、平成27年度税制改正において本社機能の地方移転等を促進するための企業地方拠点強化促進税制が措置されたのに続く第2弾の措置である。 2 地方創生応援税制の概要 (1) 対象となる地方公共団体 地方版総合戦略を策定する地方公共団体が対象となる。ただし、次のいずれにも該当する地方公共団体は、対象団体から除外される。 たとえば、東京都は不交付団体であり対象とならず、また、23特別区、東京圏に所在する不交付団体(現在18市町)が対象外となる。 (2) 優遇措置を受けるための手続 (3) 優遇措置の内容 現行の損金算入措置に加え、法人住民税、法人事業税、法人税の税額控除の措置を創設する。 寄附額に対する控除額の割合は、法人住民税、法人事業税、法人税の合計で寄附額の3割とする。 〈参考図〉 (※) 財務省ホームページより (4) 寄附企業に対する地方公共団体の行為の制限 地方公共団体は、寄附を行う企業に対し、寄附の代償として経済的利益を与える次のような行為を行ってはならない。 3 まち・ひと・しごと創生寄附活用事業とは 地方創生応援税制の対象となる「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」は、今通常国会で審議中の地域再生法改正案の中で、就業の機会の創出、ならびにそのための基盤となる施設の整備とされているが、内容的な制約はなく、自治体の創意工夫に委ねられている。 ちなみに政府の資料では、具体例として以下のようなものが示されている。 4 おわりに あらかじめ企業からの寄附を前提とする取組みとして、実際にどのような「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」が生まれてくるのかは、まさに自治体の取組み次第である。 政府は、この仕組みが機能するならば、以下のような効果があるとする。 一方、寄附の代償として経済的利益を与えてはならないとされており、寄附を行う企業にとって、宣伝広告あるいはイメージ・アップ以上のものではないのかもしれない。 (了)
裁判例・裁決例からみた 非上場株式の評価 【第1回】 「論点分析」 公認会計士 佐藤 信祐 本連載の目的は、非上場株式の評価について、会社法、租税法の両面からの分析を行うことにある。 税務専門家の立場からすると、「非上場株式の評価」と言われると財産評価基本通達を思い浮かべてしまうが、実務においては、会社法からの分析も必要である。 【第1回】にあたる本稿では、会社法、租税法の両面からの論点について解説したい。 1 論点分析 (1) 会社法の観点からの分析 会社法上、非上場株式の評価が問題となる場面として、以下のものが挙げられる。 上記の論点は、訴訟事件と非訟事件とに大きく分けることができ、その場合の価格の算定が異なる場合があるという点に留意が必要である。 なぜならば、価格決定の申立ては非訟事件に該当することから、裁判所の裁量により決定される。そのため、上場株式については顕著であるが、統計学的手法を用いた分析もなされていたり、プレミアムを20%とするといった大雑把な算定がされていたりするものも少なくない。 これに対し、例えば、取締役の損害賠償責任を追及する訴訟事件では、損害の額を認定しなければならないため、裁判所の裁量により大雑把な算定をすることは許されない。そのため、非訟事件に比べて、取締役に有利な判決が下されることも少なくない。 さらに、会社法の観点からの分析は、それぞれの事件の目的により異なる価格になることがあり得るという点に留意が必要である。例えば、組織再編やスクイズアウトでは、マイノリティ・ディスカウントや非流動性ディスカウントが認められない可能性が高いのに対し、譲渡制限株式の譲渡では、マイノリティ・ディスカウントや非流動性ディスカウントが認められる余地があるからである。 (2) 租税法の観点からの分析 租税法の観点では、非時価取引に該当するか否かという点が問題となる。この場合、贈与をした者、贈与を受けた者が自然人なのか、法人なのかにより、所得税、法人税、贈与税のいずれに該当するのかが異なるが、それぞれの税目の目的に応じた分析が必要となる。 さらに、財産評価基本通達により評価を行うにしても、原則的評価方式により評価を行うのか、特例的評価方式により評価を行うのかをまずは検討する必要があるという点に留意が必要である。 例えば、贈与税では、贈与を受けた者の贈与後のポジションにより、これらの評価が決定される(相続税法22条)。これに対し、譲渡所得税では、贈与をした者の譲渡をする直前のポジションにより、これらの評価が決定される(所得税法基本通達59-6)。 これらの評価方法は、会社法と目的が異なるため、当然に評価方法が異なる場合も考えられる。 (3) 本稿の目的 これらを踏まえ、本稿では、非上場株式の評価につき、会社法の裁判例、租税法の裁判例、裁決例をそれぞれ分析することを目的にしている。 非上場株式の評価についての筆者の平成26年度の研究実績は、「特例的評価方式による少数株主の締出し」税務弘報62巻12号73-79頁、「配当還元方式により現金交付型合併を行った場合」税務QA2014年9月号 36-39頁であり、平成27年度の研究実績は「非上場会社の少数株主の締出しにおける公正な価格」法学政治学論究106号133-165頁である。 これらは、少数株主の締出しについての研究であるため、租税法の観点からの分析は、原則的評価方式によるものが多く、わずかに売り手側の少数株主の譲渡所得税の計算において特例的評価方式を採用する余地が認められた。これに対し、会社法の観点からの分析は、支配株主にとっての株式価値により評価を行う必要があり、さらに、非流動性ディスカウントが認められないものと結論づけた。そして、少数株主の締出しにより将来フリー・キャッシュ・フローが増加する場合には、増加するフリー・キャッシュ・フローに基づいて株式価値の算定をすべきであると結論づけた。本稿では、さらに踏み込んで、募集株式の発行等や譲渡制限株式の譲渡などの裁判例について触れるとともに、租税法の観点から、より細かな分析をしていきたい。 本稿の目的は、学術的な研究を行うことではなく、裁判例、裁決例から、実務上の問題点を抽出していくことにある。そのため、裁判所、国税不服審判所の見解と筆者の見解が異なる場合であっても、あえてその点については触れず、裁判所、国税不服審判所の見解を中心に解説していきたい。 本稿の構成は、まずは会社法の分析をひと通り行った上で、租税法の分析を行い、そこから導き出される実務上の留意事項をまとめていく予定である。 次回以降は、募集株式の発行等の裁判例について触れていく予定である。なお、平成17年改正前商法では、新株の発行と自己株式の処分はそれぞれ分けて規定されていたが、会社法の施行により、両者は募集株式等の発行として1つの条文にまとめて規定されることになった。裁判例の多くは平成17年改正前商法に基づくものであるが、現行会社法でも同様に解されるかどうかについて、検討が必要になるものもあり得るという点にご留意されたい。 (了)
〔平成28年3月期〕 決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第4回】 (最終回) 「その他の留意すべき改正事項」 公認会計士・税理士 新名 貴則 平成27年度税制改正における改正事項を中心として、平成28年3月期の決算・申告においては、いくつか留意すべき点がある。【第3回】は、「受取配当金の益金不算入の見直し」、「貸倒引当金の見直し」及び「地方拠点強化税制」について解説した。 【第4回】は、その他の留意すべき点をまとめて解説する。 1 研究開発税制の見直し 研究開発税制とは、青色申告書を提出している法人において試験研究費が発生する場合に、その金額の一定割合について税額控除が認められる制度である。平成27年3月期までは、基本の税額控除である「総額型」と、上乗せの税額控除(次のいずれかを選択適用)である「増加型」と「高水準型」があった。 これが平成27年度税制改正によって見直されており、その主なポイントは次の通りである。 また、平成27年3月期と平成28年3月期における研究開発税制のイメージはそれぞれ次の通りである。 ※クリックすると大きい画像が開きます。 ※クリックすると大きい画像が開きます。 2 所得拡大促進税制 所得拡大促進税制とは、青色申告書を提出している法人が、給与等支給額を一定以上増加させた場合に、その増加額の10%の税額控除が認められる制度である。この制度を適用するには3つの要件をすべて満たす必要があるが、そのうちの1つの要件が平成27年3月期とは異なる。 具体的には、適用を受けようとする事業年度の給与等支給額が、基準事業年度と比較して増加していなければならない率が、平成28年3月期決算申告においては2%ではなく3%になっている。 (※) 平成25年4月1日以後に開始する事業年度のうち最も古い事業年度の、直前の事業年度のこと(3月決算であれば平成25年3月期) また、平成27年度税制改正により、当該要件の緩和が行われている。実際に影響があるのは平成29年3月期以後であるが、具体的には次の表の通りである。 【基準年度と比較して増加していなければならない割合】 3 9号買換え特例の見直し 特定の事業用資産の買換え特例の中でも9号買換え特例とは、長期保有土地等(譲渡資産)を譲渡し、一定期間内に一定の資産(買換資産)を取得して事業の用に供する場合に、譲渡益の一定割合の圧縮を認める制度である。この制度が平成27年度税制改正により、次の表の通り2年3ヶ月延長されるとともに、内容が見直されている。 4 生産等設備投資促進税制の廃止 青色申告書を提出している法人が、一定以上の生産等資産への投資を行った場合に、そのうちの機械装置について、取得価額の30%の特別償却又は3%の税額控除(当期の法人税額の20%が上限)が認められる制度である(旧措法42の12の2)。 なお、この制度の適用期間は「平成25年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する各事業年度」とされており、その後の税制改正によって延長はなされていない。したがって、当初の期限通りに廃止となり、平成28年3月期決算申告においては適用されない。 5 国境を越えた役務の提供に対する消費税制度の見直し 平成27年度税制改正により、国外事業者がインターネット等を通じて国内の者に一定の役務提供を行う場合、これを「国内取引」として消費税の課税対象とすることとされた。平成27年10月1日以後の取引に適用される。 6 簡易課税制度のみなし仕入率の見直し 平成26年度税制改正により、消費税の簡易課税制度におけるみなし仕入率が変更されており、平成27年4月1日以後に開始する課税期間より適用される。したがって、3月決算法人においては平成28年3月期決算申告より適用されることになる。 7 金融所得課税の一体化 平成28年1月より、これまでバラバラであった金融所得の課税が一体化される。この中で、法人に係る住民税利子割の課税が廃止されているので、平成28年3月期決算申告においては注意が必要である。 8 留意事項の再確認 最後に、本連載で取り上げた平成28年3月期における留意事項を列挙する。自社に該当するものがどれであるか再確認していただきたい。 (連載了)
マイナンバーの会社実務 Q&A 【第4回】 「マイナンバーの取得」 税理士・社会保険労務士 上前 剛 〈Q〉 会社が従業員から個人番号を取得する際の対応について教えてください。 〈A〉 1 取得方法 会社が従業員から個人番号を取得する方法は、対面、郵送、オンラインが挙げられる。対面、郵送、オンラインのいずれによる場合でも、成りすましを防止するため、番号確認と身元確認を行わなければならない。なお、従業員の扶養親族については、番号確認は必要、身元確認は従業員が行うこととされているため不要である。 (1) 対面 ① 番号確認 番号確認は、次のいずれかにより行う。 ② 身元確認 対面で確認して従業員本人に相違ないことが明らかであれば、不要である。 (2) 郵送 ① 番号確認 番号確認は、次のいずれかにより行う。 ② 身元確認 身元確認は、次のいずれかにより行う。 (3) オンライン ① 番号確認 番号確認は、次のいずれかにより行う。 ② 身元確認 身元確認は、次のいずれかにより行う。 2 取得時期 会社が従業員から個人番号を取得する時期は、入社時、個人番号未取得の従業員の退社時、その他の時期が挙げられる。なお、従業員の入社時・退社時に作成する行政手続書類のマイナンバー対応については、それぞれ【第2回】【第3回】を参照されたい。 (1) 入社時 ① 給与所得者の扶養控除等申告書を提出する従業員 給与所得者の扶養控除等申告書への記載により、個人番号を取得する。 ② 給与所得者の扶養控除等申告書を提出しない従業員 個人番号を取得しなくてもかまわない。 (2) 個人番号未取得の従業員の退社時 ① 雇用保険に加入している従業員 雇用保険の資格喪失手続書類に記載するため、個人番号を取得する。 ② 雇用保険に加入していない従業員 給与所得の源泉徴収票(税務署提出用)、退職所得の源泉徴収票(税務署提出用)、退職所得の受給に関する申告書に記載するため、個人番号を取得する。退職金を支給せず、かつ、次の(a) 給与所得の源泉徴収票(税務署提出用)の要件に当てはまらない従業員からは、個人番号を取得しなくてもかまわない。なお、本項では従業員と役員の取扱いの違いについても述べる。 (a) 給与所得の源泉徴収票(税務署提出用) 税務署に提出するのは、次のいずれかの場合である。 (b) 退職所得の源泉徴収票(税務署提出用) 税務署に提出するのは、役員に対して退職金を支給した場合である。 (c) 退職所得の受給に関する申告書 会社に提出するのは、従業員、役員問わない。 (3) その他の時期 (1)、(2)に該当しない従業員の個人番号は、平成28年中に取得しておけばよい。 (了)
理由付記の不備をめぐる事例研究 【第6回】 「仕入」 ~架空仕入れと判断した理由は?~ 中央大学大学院商学研究科 博士後期課程 (酒井克彦研究室所属) 泉 絢也 今回は、青色申告法人X社に対して行われた仕入れの架空計上に係る法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた国税不服審判所平成5年12月21日裁決(裁決事例集46号148頁。以下「本裁決」という)を取り上げる。 1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注) ただし、本裁決の事案における実際の理由付記の一部を筆者が加工している。 2 本件理由付記から読み取ることができる関係図 【X社の処理】 【本件更正処分】 3 本裁決の判断 (1) 理由付記について 本裁決は、次のとおり、理由付記に不備はないと判断した。 ア 求められる理由付記の程度 イ 理由付記の十分性 (2) 更正処分について ただし、本裁決は、次のとおり、架空取引と認定した判断は証拠に欠けるという理由で更正処分の全部を取り消した。 4 私見 (1) 求められる理由付記の程度 本件更正処分の理由は、仕入れの架空(過大)計上である。したがって、課税庁は、X社が帳簿書類にA社からの仕入として計上していた×××円のうち〇〇〇円については、実際には、仕入取引は存在せず、架空のものであると認定して更正処分を行ったことになる。そうであれば、X社の帳簿書類の記載自体を否認して更正する場合に該当するものと考える。 そうすると、理由付記の程度としては、 ことになる(最高裁昭和60年4月23日第二小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (2) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものではないと考える。 ア 根拠資料の摘示 イ 理由付記の趣旨目的との適合性 審査請求における課税庁の主張の確認 上記主張との比較によって、浮かび上がる本件理由付記の不十分性 * * * 次回は、棚卸資産の明細書と商品出納帳との照合により、預け在庫の期末棚卸資産計上漏れを認定した法人税更正処分の理由付記の事例を取り上げる。 (了)
税務判例を読むための税法の学び方【76】 〔第9章〕代表的な税務判例を読む (その4:「生計を一にする親族」の範囲~最判昭51.3.18②) 立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘 前回に続き「生計を一にする親族」の範囲が争点となった最高裁昭和51年3月18日判決について見ていく。 (2) 旧法規定 この事案は昭和40年のものであるから、昭和40年全面改正前における旧所得税法の考え方の影響は無視できない。そこで次に、旧所得税法の規定を確認しておきたい。 旧所得税法第11条の2においては、以下のように規定していた。 また、この旧所得税法関係通達「第8条(控除対象配偶者等の定義)関係」に第50項「生計を一にするの意義」として以下のように示されていた。 高裁では、この通達において、別居している場合であっても「常に生活費・・・等を送金して扶養しているときは、生計を一にするものとする」とあることから、本事案におけるXの長男次男への支払いを生活費と認定したうえで「生計を一にする」と判断している。 もっともこの支払いが生活費でなければこれに該当しないのであるから、この支払いを事業に従事した対価と見るか生活費と見るかが、結論を左右するポイントということになる。 そして、上記したように、それは、最高裁のように長男次男が各々毎月支給を受ける金員のうちから自らの責任と計算でそれぞれの家賃や食費その他の日常の生活費を支出している点を重視するか、高裁のようにXの給与支払いにおける不備な点を重視するかによって結論が異なったのである。 (3) 立法趣旨 所得税法56条の立法趣旨として、本事案の第一審の国側の主張には、以下の事項が挙げられている。 核家族化が進んだ現在において、この立法趣旨が正当性を有するかは疑問なところが少なくない。本件事案の昭和40年代当時と現在では、全く環境が異なっており、再考すべき条項といえるであろう。 (4) 他の裁判例 この事案そのものが、所得税法改正直後適用年度である昭和40年の申告所得について争われたものであるから、所得税法第56条の「生計を一にする」の意義についての先行判例は存在しない。しかし、旧法による先行裁判例が同時期にあるため、次にそれらを検討する。 ① 大阪地裁昭和49年12月10日 まず原審である地裁判決を入手し、読んでいただきたい。 本事案と同様、長男・次男・三男が原告の経営する事業(木型の製作販売を業としている)に従事し、労働力を提供して賃金を支給され、その賃金によって生計を営んでいることから、この支払いを給与と主張する原告に対して、税務署長が、本事案同様、その支払いが給与ではなく生活費であるとして損金不算入としたことから訴訟となったものである。 ここではまず、一般的法命題として次のように判示する。 そして続けて、各人が独立の生計を営んでいるか否かの事実認定を行っている。 ② 名古屋地裁昭和46年8月30日(税務訴訟資料63号374頁) 裁判所ホームページのような公的なウェブサイトには公開されていないが、上記①事案と異なり、生計を一にするとされた事例であるため、取り上げることとする。これについては、当事者の主張も見てみよう。 本事案同様、印刷業を営む原告が、長男夫婦に原告の経営する事業に従事し労働力提供の対価として賃金を支払っており、その賃金によって生計を営んでいることから、この支払いを給与と主張するところ、Y税務署長が、本事案同様、その支払いが給与ではなく生活費であるとして損金不算入とする等の更正処分をしたことから訴訟となったものである。 本事案の高裁判決がXの給与支払いにおける不備なところから給与と認定しなかったのに対して、この事案においては、形式的には給与とすべき要件を具備しながらも、実体的判断により、生計を一にすると認定されたのであった。 (5) 現通達 参考までに、現在の課税実務ではどのように判断しているのか確認する。現行の所得税基本通達2-47では以下を例示している。 ここでは、同居している場合には、「明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合」以外は「生計を一にする」ものとなるが、同居は必要条件ではなく、別居していても恒常的に経済的な援助がある場合や余暇には共に過ごしているような場合には「生計を一にする」に該当するとされている。 (6) 本最高裁判決の意義と射程通達 上記したように事例判決であるから、射程は限られており、基本的に同種の事案だけということになる。 ここでは「毎月支給を受ける右金員のうちから自らの責任と計算でそれぞれの家賃や食費その他の日常の生活費を支出し」ている点を重視して、「上告人から若干の援助を受けることがあったものの、基本的には独立の世帯としての生計を営んでいたことがうかがわれる」と判断したものであり、「生計の源泉が専ら上告人の事業にあった」点は、「生計を一にする」と認定する根拠にならないことが示されたものといえよう。 * * * 次回は、前回の冒頭に記した、同じく生計を一にする親族に関する規定の判例ではあるが、所得税法第56条にある「事業に従事したことその他の事由」の解釈が争われた夫弁護士事件・妻税理士事件について取り上げる。 (続く)