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〔平成27年分〕相続税の申告実務の留意点 【第4回】「結婚・子育て資金の贈与税非課税特例・国外転出時課税」~平成27年度税制改正事項~

〔平成27年分〕 相続税の申告実務の留意点 【第4回】 (最終回) 「結婚・子育て資金の贈与税非課税特例・国外転出時課税」 ~平成27年度税制改正事項~   税理士事務所ネクスト 公認会計士・税理士 根岸 二良   (1) 結婚・子育て資金の贈与税非課税特例と相続税申告の関係 平成27年度税制改正により、結婚・子育て資金の贈与に係る贈与税の非課税特例制度(措法70の2の3)が創設され、平成27年4月1日から適用開始となっている。 住宅取得等資金の贈与税非課税特例(措法70の2)、教育資金の贈与税非課税特例(措法70の2の2)を適用した贈与については、相続税の課税対象とはならないが、結婚・子育て資金の贈与税非課税特例を適用した贈与については、相続税の課税対象となる可能性がある。 相続税申告業務を担当した場合には、結婚・子育て資金の贈与税非課税特例の適用を受けていたか否か、必ず確認を行い、適用を受けている場合には、相続税の課税対象となる可能性がある点に十分留意する必要がある。   (2) 国外転出時課税制度と相続税申告の関係 平成27年度税制改正により、平成27年7月1日以後に国外転出する場合、国外転出時課税が行われることとなった。国外転出時課税とは、国外転出をする時点で1億円以上の有価証券など対象資産を所有している場合等の居住者に対して、国外転出時に、国外転出の時の価額等で対象資産の譲渡等があったものとみなし、対象資産の含み益に対して所得税が課税される制度である(所法60の2)。 国外転出時課税は、相続の開始時で1億円以上の有価証券など対象資産を所有している一定の居住者が死亡し、国外に居住する相続人・受遺者が相続・遺贈により、対象資産の全部又は一部を取得した場合にも、相続・遺贈の時に取得した相続対象資産について譲渡等があったものとみなして、含み益に対して被相続人に所得税が課税される(贈与の場合も同様)。 したがって、被相続人が企業オーナー(上場企業・非上場企業問わない)、又は多額の証券投資を行っており、かつ、相続人・受遺者に外国居住者がいる場合、国外転出時課税が適用される可能性があるため、留意が必要である。 また、ケースとして多くはないと推測されるが、国外転出時課税の適用を受け、納税猶予を行っている者が死亡した場合等では、相続税の納税義務の判定において、国内に住所を有していたのと同様の取扱いとするなど(相法1の3)、通常とは異なる取扱いとなるため、該当するケースではこの点も留意が必要である。 (連載了)

#No. 142(掲載号)
#根岸 二良
2015/10/29

これだけ知っておこう!『インド税制』 【第4回】「インドの物品税」

これだけ知っておこう! 『インド税制』 【第4回】 「インドの物品税」   公認会計士・税理士 野瀬 大樹   今回は物品税についてその概要を解説することにする。物品税は基本的に「製造業にかかる消費税」というイメージであり、インドの代表的な間接税の1つである。   1 そもそも物品税とは? インドの物品税とは、インド国内での「製造」に対して課せられる間接税の1つである。 基本税率は本年2015年の予算案改正により教育目的税も含めて12.5%と改正された。 筆者がインドで仕事を始めた当時は10%であり、その後12%、そして今回12.5%となったことを考えると、ずいぶんと企業の負担は重くなったというのが正直な実感である。 この物品税の対象となるのは基本的に「インド国内で製造されたもの」となる。逆に言うと、インド「国外」で製造されたものには原則課税されないし、建物などの動かせないいわゆる「不動産」には課税されない。   2 物品税の計算及び納付の仕組み まず物品税の計算だが、基本的には日本の消費税と同じである。たとえば1,000の製品を売った場合に物品税を合わせて1,125を受け取ったとしても、税務当局に税額の125を納付するわけではない。日本の消費税と同様、支払物品税と相殺をしたあとで、「受取物品税」と「支払物品税」を相殺してその差額分だけを納付する仕組みになっており、この仕組みのことを「CENVAT」という。もちろんこの大前提として、受取物品税と支払物品税を正しく記帳しておく必要があるため、多額の仕入れと製造を取り扱う製造業の経理はその責任が非常に重いと言える。 この税額は毎月正確に計算し、翌月5日までに納付をする必要があるので実際の経理の業務は毎月タイトである。特に日本企業の場合、本社の経理部がギリギリまで月次数値を確認したがる傾向にあるため、本末転倒であるが5日の納付に間に合わないケースも少なくない。他の間接税と比べ物品税を取り扱う製造業の会計記録は複雑かつ大量なので、納付の遅延はもとよりペナルティを払っている会社もあるのが現実である。 さらにそれに加えて、その相殺計算をどうやって行ったかについてはレポートを税務当局に提出する必要があるので、その作業工数はさらに跳ね上がることになる。 そのため製造業の場合は、外注先となる顧問会計事務所だけではなく、物品税の仕組みをある程度理解しており、他の製造業で経理経験のあるスタッフを会社に常駐させておいたほうが賢明である。このあたり、管理をより厳しくしたい日本本社が、その結果として間接税納付の遅延という管理の問題を引き起こしてしまうケースは現地でよく散見される。   3 特殊な税率 上述のとおり物品税の税率は12.5%が原則だが、中には異なる税率が適用される例も少なくない。インドの間接税業務ではこの例外的な税率を追うのがなかなか大変で、いちいち最新の条文を確認する必要がある。 近年、年改正があったばかりの主要な項目を以下に挙げる。 最近はインド企業の財務調査業務を行うことが多いが、実際に調査を行うとこういった細かな税率を間違えている企業は少なくなく、そのような会社を買収した場合、将来的に税務調査で多額の追加納税を要求されるリスクが常に付きまとっているとも言える。 その他、2015年の改正により、前述CENVATの計上期間が半年から1年に延長されたため、納税側としては少し有利になったと考えらえる。   4 気になる最近の物品税動向 物品税に関して、よくトラブルになるのが、その登録にかかる時間である。 製造業が物品税登録をする際には、工場がキチンと完成し各種許認可も揃えたうえで、そのラインまで税務当局の調査官に見せる必要があるため、当初の予定よりもその登録作業が遅れることが多い。 必要とされるすべての書類も、ラインも完成しているのに、なぜか登録を遅らせられるような途上国にありがちなトラブルも散見されるので、当初から余裕をもったプランを練っておくことが重要である。 あと1点、物品税については近年、今後の製造業の方針を左右しかねない判例がインドで出された点にも注意が必要である。 イタリアの自動車メーカー・フィアット社が新しい車種「Uno」を原価以下で売り出し、低迷するシェアを一気に拡大しようとしたのだが、インド税務当局は実際の売り出し価格ではなく「原価+合理的利益」という「あるべき販売価格」に物品税をかけるべきだと主張したのである。 結果、フィアット社が敗訴、税務当局の主張通り「あるべき販売価格」に対して物品税が課せられることになった。 確かに従来より、関係会社などへ特別安く製品を提供する場合は第三者との取引と同様の「あるべき販売価格」に対して物品税がかかるという制度になっていたのだが、フィアット社のように企業外部のエンドユーザーへの値引きについても「あるべき販売価格」への課税が認められた判例は、今後のビジネスに(悪い)影響を及ぼしそうだ。特に製造業による進出がメインの日本企業にとっては注意が必要である。 (了)

#No. 142(掲載号)
#野瀬 大樹
2015/10/29

[子会社不祥事を未然に防ぐ]グループ企業における内部統制システムの再構築とリスクアプローチ 【第2回】「周辺エリアで生じやすい不祥事」~子会社で不祥事が生じやすいのには、様々な要因がある~

[子会社不祥事を未然に防ぐ] グループ企業における内部統制システムの再構築とリスクアプローチ 【第2回】 「周辺エリアで生じやすい不祥事」 ~子会社で不祥事が生じやすいのには、様々な要因がある~   公認会計士・公認不正検査士 松澤 公貴   1 最近の子会社不祥事例 企業不祥事は、会社資産の横領・背任といった財産犯罪、財務報告の虚偽記載(粉飾決算、脱税や違法な租税回避行為)、贈賄やカルテル・談合等の違法行為、ハラスメント行為や残業代不払い等の労働問題、知的財産や会社情報の漏えい問題、安全・環境に関する問題等様々存在する。本稿では、筆者の経験上子会社の不祥事の発生につき、特に親会社の不祥事とは異なる発生要因をご紹介したい。 【最近の主な子会社不祥事】 出典:報道等より2014年以降を集計   2 親会社による監視不足 多くの日本企業において、子会社政策は重要な経営戦略の一環であり、企業買収、事業再編、海外進出等による子会社数の増加と相俟って相対的に子会社による不祥事も増加する可能性があるであろう。例えば、日本電信電話(NTT)は、過去5年間で380社以上の子会社が増加しており、多くの日本企業が市場シェアの拡大、業容拡大等を狙い子会社数を増加させている。 子会社数が急激に増加する中、子会社自体に不祥事を予防し発見する統制が欠如している場合、親会社の監視の目が行き届いていなければ子会社不祥事の発生を抑止できない。親会社から地理的に離れている海外子会社の場合や、親会社の本業事業とは異なる事業を展開している子会社の場合には特に顕著であり、親会社のコンプライアンスルールは十分に浸透せず、子会社独自の違法な商慣習やルールを許容してしまう場合が多い。親会社が子会社監査を実施しても、言語や法令の相違、企業文化や商慣習の相違が障壁となり不祥事の発生を看過してしまっている場合も多いようである。   3 人材不足 例えば、海外子会社を展開する場合に、本来ならば、現地の言語ができ、子会社の事業慣習、法規制及び財務内容を理解できる人材を親会社から送り込めれば、親会社の監視の目が行き届く可能性がある。また、欲を言えば当該人材を定期的にローテーションできれば、不祥事の抑止にもなる。そのような人材は希少であり、人事交流が滞りがちとなる。このような人事交流の停滞が不祥事に至るケースもある。   4 期待ギャップ 例えば、親会社マネジメントの期待を受けて子会社を買収・設立した場合、当該子会社の失敗は、親会社の経営戦略が否定される可能性がある。親会社からは誠実で信頼のおける人材がマネジメントとして送り込まれ、送り込まれた人材は、一国一城の主となる。このような状況において、仮に子会社の業績が期待とは異なる場合、子会社のマネジメントは果たして真実な報告ができるのか。また、親会社マネジメントは、ワーストシナリオを想定しているのか。このようなギャップが不祥事の発生・発覚を遅らせるという事例もある。なお、親会社マネジメントの直轄である内部監査人が子会社監査に赴いても、子会社マネジメントの不祥事を指摘できる可能性は低いであろう。 このように、子会社不祥事の要因は、親会社で発生する企業不祥事の要因とは異なった側面があり、その防止のために、適切な対策が必要である。 (了)

#No. 142(掲載号)
#松澤 公貴
2015/10/29

海外先進事例で学ぶ「統合報告」~「情報の結合性」と「簡潔性」を達成するために~ 【紹介事例③】「ARM Holdings plc社」(ARM「Strategic Report 2014」)

海外先進事例で学ぶ「統合報告」 ~「情報の結合性」と「簡潔性」を達成するために~ 【紹介事例③】 (最終回)  「ARM Holdings plc社」 (ARM「Strategic Report 2014」)    公認会計士 若松 弘之   (注) 戦略報告書 イギリスでは、英国会社法に基づき上場企業に対して、株主に企業のビジネスモデル、戦略、実績、及び将来の見通しについての全体像を提供することを目的とする戦略報告書の作成が義務づけられている。この報告書のガイダンスを適用するFRC(英国金融再生委員会)が、企業報告についてIIRCと同じゴールを目指していることから、ここでは統合報告事例として取り上げている。  「企業が長期にわたり価値をどのように創造してゆくのか」。企業の長期的な価値創造を株主や債権者をはじめとする多様なステークホルダーに分かりやすく示すことが統合報告書の主たる目的である。今回紹介するARM社の2014年戦略報告書は、この将来の価値創造の道筋である企業戦略を、同社が直面している主要なリスク及びその対処と関連付けながら記載している点が特徴的といえる。 ARM社はなぜこのような記載スタイルをとっているのか。その背景には、同社が事業を行う半導体業界が常に激しい競争と絶え間ない技術革新という変化の波にさらされており、自社技術やノウハウの陳腐化、新規参入による市場シェアの喪失などが常に起こりうることが考えられる。 このような変化の著しい事業環境下では、企業の長期的な成長戦略は、環境変化によってもたらされる成長を阻害する可能性のあるリスクを迅速に識別し対処すること、すなわちリスク管理との密接な関連付けが重要となると筆者は考えている。 IIRCの統合報告データベースは、ARM社の2014年戦略報告書の32ページから37ページを、内容要素【リスクと機会】について、【戦略的焦点と将来志向】、【情報の結合性】、【簡潔性】3つの指導原則に沿った先進事例として掲載している。以下その詳細をご紹介する。   (1) 企業戦略とリスク管理の結び付け ARM社は、2014年戦略報告書の企業戦略の記載(P22以降)において、まず長期成長戦略を「エネルギー効率の良い技術を開発及び展開すること」とし、そのための成長ドライバーとして長期成長市場におけるシェアの獲得、スマート電子機器の付加価値の増進、新技術による更なる収益源の獲得、長期成長に対する投資を挙げている(P22-23:~)。 【P22-23(抜粋)】 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 そして、これらの成長ドライバーごとに今期の戦略進捗状況を記載し、関連する主要業績指標(KPI)の紐づけを行っている(P22-23:)。このような記載スタイルは、他社の統合報告でもよく見られる記載事例だが、ARM社の事例で特筆すべき点は、先にも述べた通り、さらに各成長ドライバーが直面する主要なリスクとの関連付けも同時に行っていることである(P22-23:)。 この記載により、たとえば長期成長市場におけるシェアの獲得という成長ドライバーについて、現状は携帯電話について95%以上のマーケット・シェアを有している一方で、後述の「リスク管理」に記載された9つの主要なリスクのうち5つのリスクにさらされている状況が分かる。   (2) 主要なリスクが企業の成長戦略に及ぼす影響 以上のように、ARM社は企業戦略の記述においてリスクとの関連を明確にしているが、単なる関連付けにとどまらず、リスクを企業の成長戦略への影響度と結び付けた記載も行っている。 2014年戦略報告書における「リスク管理」(P32)では、(1)で述べた4つの成長ドライバーに対して影響を及ぼす9つの主要なリスクを、その相互の関連性を示す全体像として記載している。 【P32(抜粋)】 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 ARM社は、主要なリスクとして、業界の事業モデル等の変遷によるマーケット・シェアの喪失や知的所有権の価値が下落するリスク、競合企業の製品や技術によりマーケット・シェアを喪失するリスク、顧客基盤の過度の集中により成長目標が阻害されるリスクなど9つを挙げている。 これらの主要なリスクが企業戦略上の4つの成長ドライバーのいずれに影響を及ぼすか(P32:)、2014年度における状況変化(P32:)、を一覧として表すことで、主要なリスクと成長戦略の関連性の全体像を明らかに示している。 そして、これ以降のページにて、9つの主要なリスクの具体的な内容(P33:)、リスク軽減策(P33:)、2014年度における状況変化(P33:)の詳細が記載されている。 【P33(抜粋)】 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。   (3) リスク・ヒートマップ、色分けされた記号の活用 企業戦略上の成長ドライバーに影響を及ぼす9つの主要なリスクについて、その内容を理解するには、ARM社の事業内容、企業戦略、中核技術、半導体業界の現状など、その背景となる様々な事柄に対する知識が必要である。このため同社は、報告書の利用者がこれらの主要なリスクを速やかに理解できるよう「リスク・ヒートマップ」を示している。 すなわち、縦軸を発生可能性(Likelihood)、横を影響度(Impact)とするヒートマップ上に9つの主要なリスクをプロットすることによって、それぞれのリスクが企業の成長戦略に与える深刻度を視覚的に理解できるようにしているのである(前掲P32:)。 また、9つのリスクと4つの成長ドライバーとの関連性は、色分けした記号により明示されており、特定の成長ドライバーに影響を及ぼすリスクを一目で把握することができる。 さらに、これらのリスクの2014年度における状況変化についても、緑の上下の矢印、またはイコールの記号によって、たとえば上向きの緑の矢印のものはリスクが増加したものであるなど、瞬時に当年度の変化を把握できるよう工夫されている(前掲P32:)。 このような「リスク・ヒートマップ」と色分けされた記号を活用すれば、利用者がその目的やニーズに応じて情報収集の優先順位付けをすることができる。たとえば、発生の可能性が最も高いと考えられるものが、の「各種権利等の侵害により訴えられるリスク」である点、「長期成長市場におけるシェア獲得」という成長ドライバーに影響を及ぼすリスクが、、、、である点、2014年度においてリスクが増大したものは、の「顧客基盤の著しい集中により当社の成長目標が阻害されるリスク」である点などを把握したうえで、それらのリスクの詳細内容について、33ページ以降で確認することができる。   (4) まとめ 今回紹介したARM社の先進事例を、当連載が着目する3つの指導原則に照らしてもう一度整理してみよう。 ① 戦略的焦点と将来志向 ARM社が、競争と技術革新の著しい半導体業界において長期の持続的な成長を実現するには、外部環境の変化がもたらすリスクへの迅速かつ適切な対応が不可欠である。このような視点から、同社の主要なリスクと関連付けた企業戦略の記載は、指導原則【戦略的焦点と将来志向】において求められる「企業戦略が企業の価値創造能力にどのように影響するか」を的確に表した記載であるといえる。 ② 情報の結合性 ARM社の場合、長期にわたる価値創造能力に影響を及ぼす要因としては、企業戦略で掲げた4つの成長ドライバーのみでなく、これに影響を及ぼす9つの主要なリスクも含まれていることは明らかである。このため、同社は「リスク管理」の記載において、その成長ドライバーと主要なリスクの関連性の全体像を一覧として示しており、指導原則【情報の結合性】に沿った好事例といえる。 ③ 簡潔性 ARM社は、自社の主要なリスクをヒートマップとして示すことで、その発生可能性と影響度から成長戦略へ及ぼす影響の深刻度を明解に示している。さらに、個々のリスクが影響を及ぼす成長ドライバーと当期におけるリスク状況の変化を、色分けされた記号により1ページで瞬時に把握できるよう工夫を凝らしており、指導原則【簡潔性】を十分に満たしているといえる。 *   *   * (連載了)

#No. 142(掲載号)
#若松 弘之
2015/10/29

会計上の『重要性』判断基準を身につける~目指そう!決算効率化~ 【第14回】「重要性の有無の判定方法②」~体重の増加率は服を脱いで計算すべし

会計上の『重要性』 判断基準を身につける ~目指そう!決算効率化~ 【第14回】 「重要性の有無の判定方法②」 ~体重の増加率は服を脱いで計算すべし   公認会計士 石王丸 周夫   今回は、会計処理の誤りが税引後利益にどう影響するのかについて考えていきます。 まず手始めに、虚偽記載の評価に関する以下の問題にチャレンジしてみてください(解答は問題のすぐ下にあります)。 いかがでしたか。正解できたでしょうか。 利益には税引前と税引後の2種類がありますが、重要性の判断も税引前と税引後の区別が大事です。 以下、この解答について触れながら、解説していきます。   《法人税等の誤りは利益にどう影響するか》 前回取り上げた税効果会計の重要性判断でも述べましたが、損益計算書の税引前利益より上に出てくる項目と下に出てくる項目では、誤りが発生した場合の影響に違いがあります。 今回は「法人税、住民税及び事業税」(以下、法人税等と呼びます)に着目して、話を進めていきます。 ある会社の損益計算書で、法人税等の金額に誤りがあることが判明したとします。本来350とすべきところを、390として計上していたのです。法人税等の過大計上です。 以下は、損益計算書の末尾部分について、現状の「決算書」と修正後の「あるべき決算書」を並べたものです。 上図のとおり、法人税等に間違いがあった場合、その影響は税引後利益に出てきますが、税引前利益には影響ありません(⇒したがって、問題14のアの記述は誤りです)。「法人税等」が「税引前利益」の下に来る項目だからです。 当たり前のような話ですが、まずこの点を押さえておきましょう。   《税引後利益の5%という考え方》 では、上の事例で「40の過大計上」について重要性判断を行う場合、どのようにすればよいでしょうか。このミスは決算作業の最終段階で判明し、他には今のところ数字の間違いは起きていないものとします。 その場合、40という金額が「重要性の基準値」以内に納まっていれば、決算書の利用者に誤解を与えることはないと判断でき、間違いを修正せずに決算を確定させることも容認できます。 この会社では、重要性の基準値を、定石通りに「税引前利益の5%」で算定していたとします。 すると判定は以下のようになります。 虚偽記載の額40は、重要性の基準値50よりも小さいです。 つまり、「重要な影響がある」とまでは言えないようです。 しかし、本当にこれでよいのでしょうか? 重要性の基準値は税引前利益をベースに算出した値です。法人税等の虚偽記載額は、税引前利益には影響しませんが、税引後の利益にストレートに影響を与える項目です。 ためしに、虚偽記載額によって税引後利益がどの程度ブレているのか、計算してみます。 6.2%です。 「あれっ?」と思いませんか。 重要性の基準値は、「税引前利益が5%以上ブレたら困る」という考え方に沿って算定したものでした。その値を使って重要性の判断をして、虚偽記載の額に重要性は認められないと結論できそうでした。つまり、税引前利益のブレは5%以内に収まっているということです。(実際のブレは0です。) しかし、上の算式によると、税引後利益に対しては5%超ブレているというのです。 これは身近な例でもよくあります。 たとえば、服を着たまま体重を測る場合の増加率です。 1ヶ月前に量った時に50kgだった人が、今52.5kgになったとします。 増加率は5%(2.5÷50×100%)です。 ところが、服の重さを1kgと考えてこれを差し引いて計算すると、増加率は5.1%(2.5÷49×100%)になります。本当は5%超の増加なのです。 税引後の利益にストレートに影響を与えるというのは、こういうことです。 法人税等の誤りについては、税引後利益への影響を考慮することが必要になります(⇒したがって、問題14のイの記述は正しいです)。   《複数の虚偽表示の重要性判断》 実務では、会計処理の誤りが複数見つかってしまうということもよくあります。 以下ではそのようなケースを考えてみます。 たとえば、法人税等の過大計上の他に、減価償却費の計上漏れがあったとします。 複数の虚偽記載がある場合、まずは、それらの合計が利益に対してどれだけ影響を与えるかを集計します。この例では2つの誤りのうち1つが法人税等に係るものですので、上で述べたように、税引後利益への影響を考える必要があります。 その影響を以下のように集計してみました。 修正仕訳は3本です。 No.1の仕訳は減価償却費の計上漏れを修正する仕訳です。No.2はその税効果相当額の仕訳です。税引後利益への影響金額を算定するので、No.1の仕訳について、その税効果を認識したわけです。減価償却費の誤りが税引後利益に与える影響は、その税効果も含めて考えます(⇒したがって、問題14のウの記述は誤りです)。 No.3は、No.1とは関係なく見つかった法人税等の過大計上を修正する仕訳になります。こちらは課税対象の取引ではありませんので、税効果の仕訳は不要です。 以上3本の仕訳の結果、税引後利益への影響金額は、合計で「33のプラス」と出ています。 つまり、本来であれば税引後利益が33増えるはずだということです。 では、この33について、重要性判断をしてみましょう。 判断基準は以下のとおりです。 税引後利益に与える影響を判断するので、重要性の基準値についても税引後利益をベースにして算定したものを使用するという考え方です。その値は31ということですから、虚偽記載の額33は、重要性の基準値を超えています。 もし、この判定を税引前利益の5%で行うと、どうなるでしょうか。 その場合、重要性の基準値は1,000の5%で50になります。虚偽記載の額は33なので、今度は重要性の基準値の範囲内に収まります。結果が逆転してしまうのです。 このように、虚偽記載の評価は、税引後利益への影響もしっかり考えてあげなければいけないということです。   (了)

#No. 142(掲載号)
#石王丸 周夫
2015/10/29

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第22回】「単独の新設分割による子会社設立~連結財務諸表作成会社の場合~」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第22回】 「単独の新設分割による子会社設立 ~連結財務諸表作成会社の場合~」   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   【はじめに】 今回は、単独で新設分割により子会社を設立する場合を解説する。 新設分割とは、一又は二以上の株式会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割により設立する会社に承継させることをいう(会社法2(30))。 何の資産も事業もない子会社を設立するのではなく、新設分割により既存の資産や事業などを新しく設立する子会社に移すことで、新設子会社はすぐに事業をスタートすることができるというメリットがある。 単独の新設分割による子会社の設立は、「共通支配下の取引(【第18回】参照)」に該当する。 なお、本解説では、親会社(連結財務諸表作成会社)が単独で新設分割し、子会社を設立するにあたって、「事業」を移転させることを前提に解説する。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (次ページ【STEP1】へ進む) (前ページ【はじめに】へ戻る) 親会社が単独で新設分割により子会社を設立する場合、共通支配下の取引に該当するため、子会社は、親会社から移転する資産、負債、評価・換算差額等(新株予約権を含む。以下、同様)の適正な帳簿価額を引き継ぐ(企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針(以下、「適用指針」という)」261、227、409、会社計算規則49)。 そのため、親会社は分割期日の前日に決算を行い、個別財務諸表上の適正な帳簿価額を算定する。 (次ページ【STEP2】へ進む) (前ページ【STEP1】へ戻る) 親会社は、【STEP1】で算定した資産、負債及び評価・換算差額等を子会社に移転させる。その移転に対して子会社株式を取得する。 この子会社株式の取得原価は、移転事業に係る資産及び負債の金額から移転事業に係る評価・換算差額等を控除した金額(以下、「移転事業に係る株主資本相当額」という)となる。また、移転した事業に対する投資は、新設分割後も実質的に継続しているため、移転損益は認識しない(適用指針260、226)。 また、移転事業に係る繰延税金資産及び繰延税金負債は、子会社株式の取得原価に含めずに、子会社株式に係る一時差異に対する繰延税金資産及び繰延税金負債として計上する(適用指針108(2))。したがって、親会社で計上されていた移転事業に係る繰延税金資産及び繰延税金負債は、子会社に移転されるが、親会社の個別財務諸表には、子会社株式に係る一時差異に対する繰延税金資産及び繰延税金負債として計上されることになる(下記、【ポイント解説】参照)。 なお、移転事業に係る株主資本相当額がマイナスの場合(移転対象となる財産がマイナスの場合)には、「組織再編により生じた株式の特別勘定」等、適切な科目をもって負債に計上する。また、新設分割に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として会計処理する(適用指針260、226なお書)。 (次ページ【STEP3】へ進む) (前ページ【STEP2】へ戻る) 子会社は【STEP1】で算定した資産、負債及び評価・換算差額等を引き継ぐ。移転事業に係る株主資本相当額は、新設分割計画で決定した資本金及び資本剰余金の額とし、利益剰余金はゼロとする(適用指針261、227、409、会社計算規則49)。 なお、移転事業に係る株主資本相当額がマイナスの場合(移転対象となる財産がマイナスの場合)には、資本金、資本剰余金及び利益準備金をゼロとし、その他利益剰余金のマイナスとして処理する(適用指針261、227(2)、445)。新設分割に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として会計処理する(適用指針227(3))。 (次ページ【STEP4】へ進む) (前ページ【STEP3】へ戻る) 単独新設分割は、企業グループ内で行った取引であるため、親会社が取得した子会社株式と子会社で増加した資本金及び資本剰余金は内部取引として消去(投資と資本を相殺)する(適用指針262、企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準(以下「基準」という)」44)。 また、子会社株式に係る一時差異に対する繰延税金資産及び繰延税金負債も上記の投資と資本の相殺において投資の金額に含めて消去する(適用指針の設例37、402)。 《設例》 〈会計処理〉 1 親会社A社の会計処理 (※1) 親会社A社のα事業の帳簿価額 (※2) 移転事業に係る繰延税金資産 (※3) B社株式に係る繰延税金資産 (※4) 差額 2 子会社B社の会計処理 (※1) 親会社A社のα事業の帳簿価額 (※2) 親会社A社のα事業の株主資本相当額×(1/2) 3 連結財務諸表における会計処理 (※1) 親会社A社の個別財務諸表に計上されているB社株式に係る繰延税金資産 4 連結貸借対照表 (次ページ【STEP5】へ進む) (前ページ【STEP4】へ戻る) 企業結合年度において、共通支配下の取引等に係る重要な取引がある場合には、以下の(1)から(3)を注記する。なお、個々の共通支配下の取引等についての重要性は乏しいが、企業結合年度における複数の共通支配下の取引等全体では重要性がある場合には、当該企業結合全体で注記する(基準52)。 なお、計算書類では、上記のような注記は必ずしも求められていない。 *   *   * 以上、5つのステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (了)

#No. 142(掲載号)
#西田 友洋
2015/10/29

社外取締役の教科書 【第10回】「社外取締役としての法的責任(その2)」

社外取締役の教科書 【第10回】 「社外取締役としての法的責任(その2)」   クレド法律事務所 駒澤大学法科大学院非常勤講師 弁護士 栗田 祐太郎   1 取締役が法的責任を問われた具体例 前回の総論的まとめを踏まえ、今回は、これまでに(社外)取締役の法的責任が実際に問題となった具体例や問題となり得るケースにつき説明したい。   2 経営責任の有無が争いとなった具体的ケース 前回説明した通り、取締役が「何かをしたこと」についての法的責任が問われるケースにおいては、善管注意義務が認定されるか否かは、いわゆる「経営判断の原則」を満たしているかにより判定される。 会社運営をめぐる経営判断は、企業活動に伴い大なり小なり無数に存在する。 その中で、以下で取り上げるのは、上場企業等比較的規模が大きい会社における、法的・経済的に見ても重要な意思決定の正当性が争われたケースである。 (1) 子会社株式の買取価格の相当性が争われたケース 《アパマンショップ株主代表訴訟事件》 (2) 地方銀行において財務内容が良好でない貸付先に対する融資の相当性が争われたケース 《拓銀カブトデコム事件》 (3) 特に同族会社において想定されるケース 特に小規模な同族会社における経営責任について判示した判決を探すことは困難であるが、起こりうる紛争としては以下のようなケースが考えられる。 同族会社においては、大株主である代表者が死亡し、その相続人間に対立が生じている場合に、これを契機として少数派株主が経営陣に対して対抗するための一手段として、役員の経営責任を問うてくるケースが多い。つまり、相続人間の対立が会社法上の争いに反映されるのである。 このように、小規模閉鎖会社であるからといって、決して会社法上の争いとは無縁というわけではなく、むしろ、実情は逆である。相続紛争の相手方が経営権を握っている場合に、その牽制の意味を含めて、相手方の経営責任を(裁判上認容される見込みが厳しいものであったとしても)追及していくケースは多い。 その意味では、どのような会社においても、紛争が生じる契機は存在するということである。   3 社外取締役として留意すべきポイント 社外取締役としては、経営判断に携わる取締役として、経営上の重要な意思決定にまつわる事項は当然のことながら、それ以外についても、上記のような同族会社内での紛争に巻き込まれる恐れがあることは念頭に置いておくべきである。 そのうえで、たとえば、企業運営に大きな影響を与えるような重要な意思決定に加わる場合には、後日の紛争防止のため、決定にあたって考慮した諸事情や、どの点にどれだけ重きをおいて評価し結論を出したのかという判断過程・理由、判断の際に裏付けとした各種資料等について、あわせて整理しておくべきである。 「意思決定の正当性を第三者にも説明できるか」という観点を常に置き、他の取締役との慎重な討議を経た上で意思決定することが何よりも重要である。 (了)

#No. 142(掲載号)
#栗田 祐太郎
2015/10/29

パフォーマンス・シェア(Performance Share)とリストリクテッド・ストック(Restricted Stock)~経済産業省報告書で示された「2つの新しい株式報酬」~ 【第1回】「役員に対する業績連動型報酬のニーズの高まり」

パフォーマンス・シェア(Performance Share)と リストリクテッド・ストック(Restricted Stock) ~経済産業省報告書で示された「2つの新しい株式報酬」~ 【第1回】 「役員に対する業績連動型報酬のニーズの高まり」   弁護士・公認会計士 中野 竹司   1 役員に対する業績連動型報酬のニーズの高まり (1) 業績連動型報酬への関心の高まり 近時、業績連動型役員報酬が注目されつつある。 コーポレートガバナンス・コードでは、原則4-2で、「経営陣の報酬については、・・・インセンティブ付けを行うべきである」とされ、また補充原則4-2①で、「経営陣の報酬は、・・・中長期的な業績と連動する報酬の割合や現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべきである。」と定められた。このため、多くの上場会社では業績連動型報酬に関する自社の考え方を整理することが求められている。 また、平成27年6月30日に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2015」では、業績連動型報酬普及のための制度面での手当てが整備される方向性が示されている。 (2) 経済産業省報告書の公表 このような状況の下、経済産業省は平成27年7月24日、「コーポレート・ガバナンスの実践~企業価値向上に向けたインセンティブと改革~」(以下「経産省報告書」という)を公表した。 経産省報告書では、わが国の企業が今後、中長期的な収益性・生産性を高めていくことが重要であるところ、個々の人材が能力を最大限発揮できる環境整備を図ることが求められるとしている。そして、そのためには、人材のインセンティブ付けが大きな課題とされ、経営者を含む業務執行者等の報酬設計におけるインセンティブ報酬の活用が検討されている。 また、このインセンティブ付けの手法として、新しい株式報酬プランである「パフォーマンス・シェア」と「リストリクテッド・ストック」と同様のプラン導入についても検討されている。 この2つのプランの概要を述べると、パフォーマンス・シェア(Performance Share)とは、中長期業績目標の達成度に応じて交付される現物株式のことであり、リストリクテッド・ストック(Restricted Stock)とは、譲渡制限が付された現物株式のことである。 わが国ではあまり馴染みのないこの「2つの株式報酬」は、経産省報告書において重要な位置づけとなっている。 そこで本連載では全3回にわたり、各種役員報酬についても触れたうえで、この2つの株式による役員報酬の特徴、メリットやデメリット、導入時の問題点等を検討していきたい。 なお、本稿における意見はすべて筆者の個人的な見解である。   2 役員に対する報酬プランの概要 (1) 役員に対する各種報酬プランの概要 経産省報告書では、諸外国でみられる各種報酬プラン等を基に、各種報酬プランをまとめている。それが下表である。 〈各種報酬プランの概要〉 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (出典:経済産業省報告書「別紙1 我が国企業のプラクティス集」p7) この表に示されているように、役員報酬は に大別され、そこに各種インセンティブ付けのための工夫がなされる。 (2) わが国の役員報酬プランの現状 わが国の上場企業の役員報酬プランについて、経済産業省が平成27年3月に発表した「日本と海外の役員報酬の実態及び制度に関する調査報告書」で、その実態調査が報告されている。 それによると、標準業績時の報酬構成比率(業績目標を100%達成した場合の、固定報酬・各業績連動型報酬の報酬額の割合のこと)は、固定報酬が80%程度を占めている(なお、この比率は、経済産業省の調査以外でも調査結果が報告されているが、調査主体によって若干異なっている)。 そして、業績連動型報酬については、短期インセンティブは10%~16%、中長期インセンティブは2%~4%、退職慰労金は1%~2%となっている。 このことから、わが国においては、固定報酬が大きな割合を占めており、また次回取り上げる米国の事例と比較すると、中長期インセンティブの割合は相対的にかなり低いことがわかる。 また、導入済み又は導入予定の業績連動型報酬の種類としては、損金不算入型の賞与が55%、利益連動型給与21%、固定報酬の変動化が20%、事前届出確定給与9%となっている。 一方、米国では、2014年の調査で、時価総額トップ250社では、パフォーマンス・シェア導入企業が89%、ストック・オプション導入企業が71%、リストリクテッド・ストック導入企業が63%という結果が出ており(Frederic W.Cook社調べ)、多くの企業が株式報酬を業績連動型報酬として支給している。 (3) 業績連動型報酬としてのストック・オプションの課題 わが国では、業績連動型報酬としてストック・オプションが相対的に普及している。 ストック・オプションは、例えば株式公開前に役員等へこれを与え、株式公開時にこれを行使した後、株式売却益を得ることや、公開後は株価が上昇することにより、やはり株式売却益を得ることが可能となる方法であり、手元現金が不足している企業が役員等に対するインセンティブを付与することができる等のメリットがある。 しかし、ストック・オプションは、株価がストック・オプションの行使価額を上回っている場合に行使することで初めて経済的利得が現金化する手法である。このため、役員等が手に入れる現金金額は株価の上昇と直結し、ストック・オプションの行使価額が株価を上回っている状況では行使するインセンティブが働かないという点で難点があり、役員が中長期的な業績向上よりも、株価上昇を狙った短期的な利益計上に走りがちであるという問題点が指摘されている。また、株価が低迷している状況下では、ストック・オプションは業績連動の機能を果たせないという限界がある。 これに対して、パフォーマンス・シェアとリストリクテッド・ストックのような株式による報酬は、株価が上昇しても下落しても株式売却額相当の現金を手に入れることができ、また業績連動期間や譲渡制限期間を中長期にすることで、役員の中長期的な企業業績の向上のインセンティブ付けが可能になるという点で、ストック・オプションより良い面があるとされる。なお、株式報酬型ストック・オプションのメリットと課題は【第3回】で解説する。 次回はパフォーマンス・シェアとリストリクテッド・ストックとはどのようなものなのか、米国で実際に導入されている事例をもとに、その仕組みと目的、効果について解説していきたい。 (了)

#No. 142(掲載号)
#中野 竹司
2015/10/29

税理士ができる『中小企業の資金調達』支援実務 【第6回】「具体的な資金調達支援の流れ(その3)」~申し込みに必要な資料の作成支援~

税理士ができる 『中小企業の資金調達』支援実務 【第6回】 「具体的な資金調達支援の流れ(その3)」 ~申し込みに必要な資料の作成支援~   公認会計士・中小企業診断士・税理士 西田 恭隆   社長が金融機関に相談に行き、融資担当者から難しいと言われない限りは、融資の可能性がある。そこで次は、申し込みに必要な資料の作成に進む。事業計画書、資金繰り表、決算書、合計残高試算表を作成して提出する。 今回は、これら資料作成に関する支援内容を解説する。決算書および合計残高試算表については説明不要と思われるので、事業計画書、資金繰り表の作成支援について述べる。 【第3回】で説明したとおり、事業計画書は、会社がどのような事業を行って売上と利益をあげる予定なのか、説明するための書類である。事業内容を「文章で説明する部分」と、それを「計数で説明する部分」の2つから構成され、資金の必要性、資金を使う目的、返済原資となる利益がどの程度発生するのかを金融機関側に伝えるものであった。一方、資金繰り表は、会社の入出金情報を表す書類であり、返済原資となる現預金が確保できることを説明するものであった。 会計税務の専門家である税理士は、これら資料のうち、主に計数面の作成支援を行う。ただし、あくまで支援であって、計数自体は社長に考えてもらう必要がある。融資交渉の場では、社長自身が金融機関に対して説明を行い、責任を負うからである。社長が主体的に計数を考え、税理士はそれを整理、文書化するという支援の形が良い。   1 事業計画書の作成支援 まず、事業計画書の計数作成支援について述べる。売上と利益の見込み数値を作るだけなので、会計に詳しくない社長でも比較的簡単に作成可能である。しかし、返済原資を確保するために必要な利益はいくらか、という点は会計の知識が必要になる。税理士が助言できる点である。 必要利益は、簡易キャッシュフロー(=当期純利益+減価償却費)の考えを使って算定する。例えば、年間返済額が100万円で、減価償却費が60万円の場合、返済に必要な当期純利益は40万円となる。これに法人税等や販売管理費、売上原価を加えると、返済に必要な年間売上高が決まる。 この必要売上高を上回る売上高を達成できるか、社長に年間売上計画を設定してもらう。実現可能な売上になるよう、積み上げによる計算を助言する。すなわち販売単価×月平均販売数量または1日あたり平均販売数量を計算して、それを1年分集計する。必要売上高を上回るのが難しそうであれば、融資希望額や返済期間を見直し、必要利益及び必要売上高を計算し直してもらう。融資希望額が多すぎる場合、融資額の相場を参考情報として伝え、再考を促す。相場は、月商や運転資金の3ヶ月分といわれる。 年間売上計画が設定できたら、年間経費と合わせ、年間事業計画書は完成となる。次に、これを月次の計画に落とし込む。季節性の売上変動がある場合、それを考慮しつつ月次事業計画を考えてもらう。 月次事業計画書が出来上がったら、税理士は数字の整合性をチェックする。必要利益を上回る利益になっているか、実現可能性があるのか、季節性に違和感がないかなどを確認する。販売管理費の中にも売上に変動する項目が含まれている場合があるので注意する。疑問に思った点は社長に質問する。そういう点は金融機関側からも指摘を受けることが多い。融資交渉の事前演習にもなるので、社長にとって有益である。   2 資金繰り表の作成支援 次に資金繰り表の作成支援について述べる。資金繰り表を作成した経験のない社長にとっては、時間を要する可能性がある。事業計画書とは逆に、税理士が主体的に作成して、社長に内容を説明、チェックしてもらう方が効率的である。資金繰り表は、税理士が新しく数字を作るわけではない。月次事業計画書と、売掛金や買掛金の決済条件、融資返済条件を元に、たんたんと作成していくだけである。 資金繰り表では、各月末の現預金残高がマイナスになっていないか注意する。マイナスは資金ショート、すなわち返済不能状態を意味する。つまり「返せなくなりますけど、お金を貸して下さい」という意味になる。そのような会社にお金を貸す金融機関は存在しない。マイナスになった場合は、融資条件や事業計画書の計数を見直す必要がある。 上記、簡易キャッシュフローの計算から事業計画書、資金繰り表作成の流れについては、筆者ホームページ上でも解説している。会計知識の無い読者に向けた内容のため、簡略化しているけれども、基本は理解していただけると思う。 ここで、「事業計画書と資金繰り表は、無理に提出する必要はない」という意見について述べておく。確かに、金融機関に融資を申し込む際、決算書の提出を求められるけれども、事業計画書と資金繰り表は必ずしも求められない。提出しなくても融資を得られる場合がある。しかし、結論は、やはり出した方が良い。 提出することで社長と金融機関の情報共有が促され、融資交渉が円滑に進むという点は【第3回】で述べた通りであるし、実際、日本政策金融公庫や金融機関の担当者の方も「出した方が良い」と明言している。融資を得たいのであれば、後悔のないよう、準備できることは全て行った上、交渉面談に臨むべきである。 *   *   * 金融機関に提出する資料のうち、事業計画書と資金繰り表の作成支援方法について解説した。税理士は主に計数面の作成に関与できる。しかし、作成する主体はあくまで社長、会社であることを念頭において支援する。 個々の資料が出来上がった後は、提出書類全体の整合性チェックが必要となる。各書類間に矛盾点はないか、税理士がチェックを行う。これは事業計画書や資金繰り表に対する社長の理解を助けることにもつながる。次回はこの点を詳しく説明する。 (了)

#No. 142(掲載号)
#西田 恭隆
2015/10/29

プロフェッションジャーナル No.141が公開されました!~今週のお薦め記事~

2015年10月22日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.141を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2015/10/22
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