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経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第67回】企業結合会計④「株式交換」―株式交換前に株式交換完全子会社の株式の保有はなく、新株を企業結合の対価とする場合

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第67回】 企業結合会計④ 「株式交換」 ―株式交換前に株式交換完全子会社の株式の保有はなく、新株を企業結合の対価とする場合   仰星監査法人 公認会計士 大川 泰広   〈事例による解説〉 〈会計処理〉 ① A社の会計処理 (*1) A社株式の1株当たり時価20×50株(*2)=1,000 (*2) B社発行済株式総数100株×交換比率0.5=50株(=A社がB社株主に発行したA社株式総数) (*3) 増加すべき払込資本の内訳は会社法の規定に従い、株式交換契約書で定めます。 ② B社の会計処理 (*4) 株式交換は「A社」と「B社の株主」との間で行われる取引であるため、B社においては会計処理が発生しません。   〈会計処理の解説〉 株式交換とは、株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることをいいます(会社法2条31号)。株式交換は、完全親会社となる会社の株式や金銭等の対価と引換えに、完全子会社となる会社の株主が有する完全子会社株式を完全親会社に移転することにより、完全親子関係を作り出すことを目的とするものです。 株式交換をイメージで表すと以下のようになります。 【株式交換のイメージ】 上記(株式交換のイメージ)のとおり、株式交換は株式交換完全親会社A社と、株式交換完全子会社B社の株主との間で行われる取引です。株式交換完全子会社B社においては、何ら取引は発生しておらず、株主構成が変わるだけですので、株式交換完全子会社B社では会計処理は発生しません。 企業結合に関する会計基準(以下、基準)では、被取得企業の取得原価は、原則として取得の対価(支払対価)となる財の企業結合日における時価で算定すると定められています(基準23)。したがって、本事例におけるB社株式の取得原価は、株式交換日において、A社がB社の株主に対して発行するA社株式の時価20を基礎として算定することとなります。 A社はB社の株主に対して、B社株式1株につきA社株式0.5株を交付します。A社はB社を完全子会社化するため、B社の株主から発行済株式のすべてを取得することとなります。したがって、A社がB社の株主に交付するA社株式は全部で50株(=B社発行済株式総数100株×0.5)と なり、株式交換日におけるA社株式の1株当たりの時価20×交付した株式数50株=1,000が、B社株式の取得原価となります。 株式交換により、B社の株主はA社株式を保有するため、新たにA社の株主として加わります。したがって、A社が取得したB社株式の取得原価相当額は、払込資本の増加として認識します。増加すべき払込資本(資本金、資本準備金、資本剰余金)の内訳は、会社法の規定に従い、株式交換契約書にて当事者間で決定します。 *   *   * 次回は、共通支配下の取引(100%子会社同士の無対価合併)について解説します。 (了)

#No. 101(掲載号)
#大川 泰広
2015/01/08

最新!《助成金》情報 【第8回】「雇用関連助成金の活用(その8)《中小企業労働環境向上助成金》」

最新!《助成金》情報 【第8回】 「雇用関連助成金の活用(その8) 《中小企業労働環境向上助成金》」   特定社会保険労務士 五十嵐 芳樹   《中小企業労働環境向上助成金》 この助成金の目的は、労働環境向上のための措置を講じた中小企業事業主や事業協同組合などを助成することで、雇用管理の改善を推進し魅力ある職場を作ることにより人材の確保定着を図ることであり、次の2コースがある。 1 目的 この助成金は、評価・処遇や研修体系あるいは健康づくりなどの雇用管理制度を導入する次の対象分野(重点分野関連事業主)の中小事業主(【第1回】参照)や介護関連事業主を助成することで、人材の確保と定着を目的とする。 介護関連事業主(都道府県が指定・監督)は、他の事業と兼業していても差し支えない。ただし、対象となるのは計画初日の前日から起算して6ヶ月前の日から支給申請書提出日までに事業主都合による解雇(勧奨等退職を含む)者又は6%(3人以下除く)を超える特定受給資格者を出していない事業主に限る。   2 対象となる雇用管理制度 【重点分野関連事業主】 =次のいずれかの措置を定めた就業規則等を監督署に届け出てから実際にそれらの制度を導入すること (1) 評価・処遇制度の導入 ①評価・処遇制度、②昇進・昇格基準、③賃金体系制度、④諸手当制度のいずれか。 (2) 研修体系制度の導入 新任・管理職・幹部社員研修など能力付与の一定内容で1人10時間以上の教育訓練。 (3) 健康づくり制度の導入 費用の半額以上を事業主が負担する、①人間ドック、②生活習慣病予防検診、③腰痛健康診断、④メンタルヘルス相談のいずれか。 【介護関連事業主】 =次のいずれかの措置を導入すること (1)~(3)の措置は重点分野関連事業主と同じ (4) 介護福祉機器の導入 介護労働の環境改善のための次のいずれかの介護福祉機器を導入するとともに、導入後は適切な運用措置を行うこと。   3 支給額 (1) 重点分野関連事業主 (2) 介護関連事業主 (※)導入効果=職員の改善率60%以上で支給決定される。   4 手続の流れ   5 活用のポイント 能力や意欲・貢献度が高い社員を適正に評価し処遇しなければ、やる気を失い企業活力が低下するだけでなく、良い人材が離職する可能性がある。適正な評価と処遇には根拠制度が必要であるため、雇用管理制度導入を考えている中小企業では、この助成金は特に有効と思われる。 また、介護事業所では身体的負担を理由とする介護労働者の離職者が多いが、介護福祉機器の導入は身体的負担の軽減に効果的であるため、介護労働者の離職率を低減させるには、この助成金は特に効果的と思われる。   1 目的 この助成金は、構成員である中小企業の労働環境向上事業を推進する事業主団体を助成することで、雇用管理の改善を図り人材の確保定着を実現することを目的とする。   2 対象となる事業主団体 この助成金の対象となる事業主団体は、[Ⅰ]の1で示した対象分野の事業を営む中小企業を構成員として含む次の事業主団体とする。   3 対象となる労働環境向上事業 1年間の事業実施期間に、次の(1)と(4)を実施しかつ(2)又は(3)のいずれか又は両方を実施する。 (1) 計画策定・調査事業 労働環境向上に必要な調査研究を行って事業実施計画を策定するとともに、雇用管理状況や意識調査など雇用管理を改善する課題を把握する事業 (2) 安定的雇用確保事業 募集採用の諸問題を改善するための、募集採用ガイドブック作成や合同会社説明会などの開催などの事業 (3) 職場定着事業 職場定着のための雇用環境の問題改善事業や安全衛生セミナー等の開催や、職業相談員配置などの事業 (4) モデル事業普及活動 労働環境向上事業の効果を把握し、その成果の普及や活用を図るためのモデル事業説明会の開催など   4 支給額 この助成金の支給額は、1年間の労働環境向上事業の実施費用の2/3の額が支給される。ただし、構成中小企業者の数により次の支給限度額がある。   5 手続の流れ   6 活用のポイント 事業主団体ごとの規模や業種、取引関係などにより団体を構成する中小企業に共通した特長や課題などがある場合は、課題の解決や改善を推進する事業を行う団体にとってこの助成金は特に有効と思われる。また、事業主団体に他団体との相互交流がある場合は、それぞれの団体の課題解決事例や改善事例を共有できればさらに高い効果が期待できると思われる。  (了)

#No. 101(掲載号)
#五十嵐 芳樹
2015/01/08

〔2015年からできる!〕企業が行うマイナンバー制度への実務対応 【第1回】「制度の再確認と企業対応の意義、必須情報(資料)の紹介」

〔2015年からできる!〕 企業が行うマイナンバー制度への実務対応 【第1回】 「制度の再確認と企業対応の意義、必須情報(資料)の紹介」   仰星監査法人 公認会計士 岡田 健司   -はじめに- 現在のところ予定されているスケジュールから考えると、本稿公開日時点(2015/1/8)において、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(平成25年5月31日法律第27号、最終改正:平成26年6月25日法律第83号、以下本連載において「番号法」という。)の施行まで1年を切った。 個人番号の通知、法人番号の通知・公表まで残すところ9か月と僅か、である。 読者が関係する各社では、順次対応が進められているであろうか。 ある調査によれば、番号法等によって整備されるマイナンバー制度の認知状況は極めて低く、中堅・中小企業に対するマイナンバー制度の早急な啓蒙活動が必要との提言がみられた。実際、自社で対応すべき事項を把握していない、あるいは対応すべき事項をある程度は把握しているもののまだ実際の実務への落とし込みには至っていないというケースも多いのではないだろうか。 そこで、本連載では「〔2015年からできる!〕企業が行うマイナンバー制度への実務対応」と題し、2015年の1年間で、民間企業(金融機関を除く)が番号法にどう対処していくべきか、残された期間から逆算して、どのような手順で何をすべきか、解説していきたい。 今回も含めて計4回シリーズとし、およそ次のとおりの内容を予定している。 第1回となる本稿では、マイナンバー制度について改めて振り返るとともに、企業対応が必要となる理由について確認する。さらに制度対応を図るうえで必ず知っておくべき情報(資料)について「情報の発信元(情報源)」と「情報(法令・資料・Q&A・その他)」という対比で整理をしていきたい。   1 マイナンバー制度について改めて確認 (1) マイナンバー制度とは何か、なぜ企業対応が必要か 番号法等によるマイナンバー制度については、既にさまざまな箇所で説明がなされているが、制度全体を所管する内閣府の概要資料(下記参照)が最もわかりやすくコンパクトにまとまっていると思われる。まずはこの30ページほどの概要資料を参考に、概要の把握に努められたい。 マイナンバー制度とは、端的に(現状においては)「マイナンバーにより、行政組織間の情報連携を可能にする仕組み」であり、マイナンバー制度対応とは、すべての民間企業にこの仕組みの整備と運用に協力する法令上の義務が課せられていることから、この仕組みに対処可能な社内体制を整備する、ということである。 要するに、すべての民間企業は、行政組織からの求め、あるいは法令上の義務規定によって、マイナンバーとこれに関連した情報(※)を提供しなければならないことから、法令で規定された必要な範囲でマイナンバーを入手し、厳格に情報管理を行わなければならなくなる。また、そのための社内体制の整備を行わなければならない。 (※) これらが一般的には法定調書や各種の届出書・申請書として一体化されている。 なお、この「社内体制」とは、主には「管理面」(マイナンバーの確認・入手・保管記録・情報管理・廃棄など)と「出力面」という2つの側面があるが、この点は次回以降で解説する。 このように、企業は法定調書等を適切に出力し提出するために、社内の事務フロー、情報システムを修正・改修する必要に迫られているのであり、これら一連の作業が「マイナンバー制度対応」と呼ぶべきものである。 これらに内包され、さらに実務をややこしくするのが、新たに必要となる『本人確認』という手続であるが、この点についても次回以降で解説する。 なお、インターネットでは『内閣府 マイナンバー』と入力して検索すれば、内閣府の該当サイトが最も上位にヒットする。後ほど紹介するが、まずは当該サイトから情報を入手することが肝要である。 補足であるが、平成27年1月5日、政府は預金口座にマイナンバーを付番することを決定した。税制調査会における平成26年4月8日の提言を受けてのことだが、筆者の個人的な感想として、異例ともいえるスピードでの決定であった。 これにより、マイナンバーを活用しさらなるICT化が進められていくであろうことは、誰にとっても疑いのない状況になったといえる。 (2) マイナンバー制度の今後のスケジュール マイナンバー制度の今後のスケジュールについては、下記参考図①②(前出の「概要資料」23ページ及び25ページ)を参照されたい。 【参考図①】 【参考図②】 現状の予定では、キーとなる起点としては、個人番号が通知され、法人番号が通知・公表される「平成27年10月」、個人番号カードが交付され、また、順次マイナンバー(個人番号及び法人番号)が利用され始める「平成28年1月」がある。 そこで、このスケジュールを所与のものとし、マイナンバー制度対応のためのスケジュール・手順・方法等をよくよく考えていかねばならない。 なお、よくある質問に対し先行して回答しておくと、マイナンバーを用いた年末調整の時期についてであるが、初回は「平成28年12月(末)」である。 その結果、マイナンバーを記載した源泉徴収票や給与支払報告書の提出は「平成29年1月末(期限)」となる。 これらの点に関連して注意したいのは、平成28年度の源泉徴収や年末調整にあたって必要となる扶養控除等(異動)申告書の提出期限は、「平成28年1月度の給与支払日の前日まで」であるという点である。   2 実務対応に必須の情報(資料) 前出した概要資料も含め、企業がマイナンバー制度対応を行っていくうえで確認し、参照すべき情報は、既に各行政機関等からたくさん公開されている。 そこで、次回以降の実務対応について考えていく前提として、これらの情報・資料をまず整理しておきたい。   3 本稿のまとめ 以上のように、マイナンバー制度対応とは、 以上の一連の作業をいう。 また本稿では、これらの実務上の対応を図っていくうえで必要となる情報の整理を行った。 次回以降、具体的に企業はどのように対応を図っていく必要があるのか、解説を行っていきたい。 (了)

#No. 101(掲載号)
#岡田 健司
2015/01/08

〔小説〕『東上野税務署の多楠と新田』~税務調査官の思考法~ 【第4話】「追及」

〔小説〕 『東上野税務署の多楠と新田』 ~税務調査官の思考法~ 【第4話】 「追及」 税理士 堀内 章典     オーバーラップ 多楠は赤羽のスナック「かわばた」でビールを飲んでいる。 多楠の隣では、さっきまでカラオケを熱唱していた新田が、また黙って水割りを飲んでいる。 前回ここに来たのは異動直後だったから、2ヶ月ほど前。 京子ママの話では、新田はその間にもちょくちょく顔を出していたようだ。 (黙って酒を飲んでカラオケを歌うだけなら、何も僕を連れてくる必要はないだろうに・・・) 今日は9月20日。7月からスタートした調査事務も第一四半期がそろそろ終りというタイミングで、署長、副署長以下東上野署幹部を相手に「事案報告会」が行われた。 その報告が無事終了したことで、田村の発案で部門全体の「ご苦労さん会」が行われ、そのあと前回と同じように新田に誘われ、スナック「かわばた」に来たのだ。 今回事案報告をしたのは三浦上席チームと、新田調査官チームであった。三浦チームの報告事案はこの間から大騒ぎしていた仏具屋の売上除外1,000万円事案、結局不正計算もあったが、もともと帳簿がズサンで経費のもれが出てきて、プラスマイナスの不正所得200万円で終結していた。 一方、新田チームの事件は、例の金杉商店の不正事案。 不正所得で3,000万円は、東上野署でもそう多くはない大型不正事案に発展していた。 ご苦労さん会での田村統括官の喜びようといったらない。 「皆さんのおかげで私の勤務成績も良くなる! ありがとう!」 定年まであと何年もないのに今さら勤務成績でもないだろうと、部下職員一同は新田を除いて苦笑した。2つの事案は共に、今年最初に着手した事案で調査1年目の新人調査官が不正の端緒を見つけたとして、田村統括官が署の幹部に報告。調査部門の先陣を切って鼻高々といった様子である。 隣の特別調査部門である法人課税第4部門では、1つの事案に大量の調査官を投下した合同調査を実施したり、無予告調査を盛んに行い、今日も遅くまで残業をしている。しかしながら、まだ大きな不正計算を見つけたという話は聞いていない。 多楠はちびちびビールを飲みながら、また熱唱をはじめた新田の姿を横目で見ているうちに、すっかり秋めいた今では信じられない暑さのなか行われた、金杉商店での熱い調査場面がオーバーラップしてきた。 ▼   ▲   ▼ 「売上急増、所得低調の・・・理由?」 前回の調査にも立ち会っており、調査とはどういうものか経験済みの森本社長も、手強そうな調査官からの素朴な質問を受け、明らかに動揺していた。 「え~と、あの、その・・・」 口ごもる森本社長をじっと見つめていた新田であったが、それ以上追及しなかった。 調査はいったん昼食のため中断。暑いなか東上野署に戻るのは嫌だったが、新田が署に戻るというので、2人は署内の地下食堂で昼食をとった。 向かい合って黙々と食事をとる多楠と新田。 多楠は準備調査のときに新田に聞かれ厳しい言葉を投げられた「売上急増、所得低調の理由」という答えを、なぜ新田は森本社長に質問したのか尋ねたかったが、どうせ答えは返ってこないと承知していたので、あえて聞くことをやめた。 食事を終えたあと新田は自席に戻ると、自販機で買ったホットコーヒーをすすりながら、机の中からおもむろにノートを出し、じっと見つめていた。 隣の席でそれを見ていた多楠は「何のノートとだろう」と興味がわいたものの、一時の緊張から解き放たれたのか、放心状態のまま・・・。 「・・・おい、時間だぞ。」 新田の声で目が醒めた多楠、いよいよ後半戦の開始、2人は調査会社へ向かった (次ページへ) (前ページへ) 反面調査 社長の森本はすっかり気を取り直したのか、何事もなかったかのように多楠たちを迎え入れ、2人の調査官が求める帳簿書類を提示した。 多楠が調べたのは売上帳、新田が求めたのは給与台帳であった。 会社に来る途中、新田から「売上を見るように」と指示を受けた多楠は売上帳を、何か不審な点はないかと懸命に調べ始めた。 驚いたことに一方の新田は、午前とは一転して多弁。 給与についての詳細な説明を求め、帳簿書類を確認、そしてまた質問を繰り返した。 その質問は調査1年目の多楠でも理解できるほど極めて簡潔明瞭、多楠と話すときとはまるで別人である、まさに的確な仕事をこなす優秀な調査官の姿であった。 その新田の姿に少しのあいだ見とれていた多楠は、気づいた。 “そしてどうやら新田さんは、給与にポイントを絞ったようだ。” 新田は給与台帳を見ながら、森本社長に質問を続けた。 「社長さん、御社はここ4年間毎年決算期末の12月に2回社員にボーナスを支払っていますね。10日は銀行振込で25日は現金支給のようですが。」 森本 「新田さんも先ほど作業場をご覧になったでしょう。あんな汚くてうるさい作業場で、それも夏暑く、冬は極寒。 ウチみたいな小さな会社で一生懸命働いてもらうには、せめて儲かった時くらいボーナスを払うことぐらいしかできないんです。」 すかさず尾崎 「ここ数年アルミやステンレスの相場も活況で売上が右肩上がり、森本社長の頑張りもあってけっこう利益が出ました。でも社長は、利益が出たからといって独り占めにしないで従業員にも還元するという方です。いわば決算賞与、本当に従業員思いの社長ですよ。」 うなずきながら得意げに森本 「ボーナスを現金で払うと従業員たちも喜ぶんですよ。中には奥さんに内緒にしているヤツもいるんじゃないかなぁ。でも暮れなんで飲んだ勢いで落としたり、すられたりしないか心配なんですけどネ。」 しきりに森本をフォローする尾崎 「そうそう現金支給のボーナスの源泉所得税もしっかり徴収しているはずですよ。ウチの事務員が森本社長からなかなか支給額の連絡が来ないので年末調整の入力ができないって毎年のようにぼやいていますから、確認してみてください。」 それを聴いていた多楠は (そうか、この社長ならあり得ない話ではないな。) さっき社長が動揺したこともすっかり忘れ、半ば感心していた。 ▼   ▲   ▼ 調査は4時半ごろまで続いた。多楠は売上帳を黙々と確認したり、これはおかしいと思うところを書き写したりしていた。 新田は、一度トイレに立った以外は、従業員の5年分の給与台帳から、源泉所得税、社会保険の加入状況、通勤費の支給状況、それ以外ではタイムカードなどを丹念に確認しては森本社長に何度も質問をしていた。 時間になり、2人は会社を辞した。 100メートルほど歩き路地を曲がったところで、新田がポツリと言った。 「裏は取れた。」 夕方のまだ真夏の熱風が収まらないなか、2人の調査官は署へ戻った。 ▼   ▲   ▼ 翌朝9時。新田は「銀行に行く」と言って1人で署を出て行った。 「私はどうすれば」と新田に尋ねる多楠には 「昨日の続きをやれ。」 と言っただけであった。 昨日は三浦上席も仏具屋の調査で不正1,000万円を見つけたと鼻息荒く署に戻ってきたあと、淡路調査官に様々な説明や指示を熱心に行っていた。指導役なら「その日何を調べたか」「不審な点はあったか」「今後どう展開するのか」といったことを調査1年目の調査官に投げかけ、「次の日にはこうするように」と指示をするのが通常のはずである。 しどろもどろな概況聴取やひたすら売上帳も見ているだけであった多楠に対し、もっと指導があっていいはずだが、新田からはそれについてもまったくない。 内心“僕は相手にされていないんだな・・・”と多楠が思っても不思議ではない新田の言動であった。 結局何の指示もないまま、多楠は一人、金杉商店に向かった。 新田が調査に現れず不審に思う森本と尾崎を相手に、昨日に続き売上帳を、午後から仕入帳と在庫表を、ほとんど質問することなく、ひたすら確認する多楠であった。 ▼   ▲   ▼ 2日目以降の新田の動きは素早かった。 多楠を置いて例の定期預金の預入先である信用金庫の支店に調査に入った新田は、行員からの聴き取りと過去4年間の12月25日の金庫に保管してある現金出金伝票を丹念に追った結果、過去4年間とも源泉所得税を天引き後の現金で支払われた8名分のボーナスが、すべて各人名義の定期預金に、合計で3,000万円になっている事実を把握した。 しかも預金の届出印は、社長森本の個人印鑑になっていた。 その翌日、新田は従業員個人の収入状況を確認すべく、3つの区役所を回った。 彼らの収入は給与のみで、金杉商店は住民税の特別徴収(国税の源泉所得税と同じ手続)をしていないので、彼らの給与収入の申告を確認したのである。 確認の結果、8名すべてが25日のボーナスを含まない金額で給与の申告をしていた。 従業員たちは定期預金のことを知らされていないようだ。 かくして各4年間、12月に支払われていた2回のボーナスうち、25日に現金支給した分は架空(水増し)給与であり、8名分の定期預金32口3,000万円の証書は、森本の手の届くところに、厳重に保管されているものと想定された。 ▼   ▲   ▼ さすがにその翌日からは別件の調査が入っていたため、2週間ほど経ったある日、新田は森本社長と尾崎税理士に会社で面接、新田がつかんだ不正計算の証拠をもとに、新田の追及が始まった。 新田の傍らで会話に入り込む余地もなく、ただやり取りを聴いている多楠。 森本もさすがに簡単には事実を認めようとはしない。 尾形税理士は不正の事実を知らないのか必死になって「悪いことをするような社長ではない。」と言って森本をかばう。 次第に「そんなことは絶対にない!」と顔を真っ赤にして激怒する森本、それを見てオロオロする尾崎、一片の動揺もなく冷静かつ丁寧な口調ながら厳しい追及をする新田。 どれくらい3人のバトルが続いたろうか。 やがて観念したのか、森本がポツリポツリと真実を語り始めた。 「売上代金のほとんどが手形決済なので、銀行への信用や手形が不渡りになった時のために使えるようにと、従業員名義で定期預金にしたもの。結局は事業を存続するためにやむを得ず行った・・・」 そして問題の定期預金の証書は、会社事務所の2階にある自宅に保管されていているとのことで、確認に行く2人の調査官と・・・。 ▼   ▲   ▼ 「タクちゃん! 起きなさい!」 多楠が目を覚ますと、カウンター越しに京子ママ。 「新田チャン、もう帰ったわよ。」 (何だ、夢? だったのか。) 多楠が見ていたのは夢ではない。 新田の見事な調査は、現実の出来事。 (新田さん・・・いったい何者なんだ。) まだよく醒めていない頭で、多楠は考えをめぐらせていた。 (続く)

#No. 101(掲載号)
#堀内 章典
2015/01/08

《速報解説》 住宅ローン控除等、6つの住宅税制特例が適用期限1年6ヶ月延長~消費税率引上げの影響を考慮し平成31年6月30まで(平成27年度税制改正大綱)~

 《速報解説》 住宅ローン控除等、6つの住宅税制特例が適用期限1年6ヶ月延長 ~消費税率引上げの影響を考慮し平成31年6月30まで(平成27年度税制改正大綱)~   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   (1) はじめに 平成26年12月30日、与党による「平成27年度税制改正大綱」が公表された。 所得税に関する改正項目は、①金融・証券税制、②住宅・土地税制、③租税特別措置等、④その他、に大きく区分されている。 以下では、所得税に関する改正項目のうち、住宅ローン控除等の延長について解説を行う。 なお、住宅借入金等特別控除の現行の制度の概要については、拙稿「《速報解説》 住宅税制(住宅ローン控除等)の拡充・延長について─平成25年度税制改正大綱─」(平成25年2月15日公開)をご参照いただきたい。   (2) 見直しの背景 上記拙稿のとおり、消費税率8%引上げを控えた平成25年度の税制改正において、住宅ローン控除の拡充等、住宅税制について大幅な見直しが行われた。 住宅は、取引価額が高額であることから、消費税率引上げ前の駆け込み需要と引上げ後の反動が大きくなる可能性が高い。住宅税制の見直しは、消費税率引上げによる住宅投資への影響を平準化及び緩和することを目的としている。 今回公表された平成27年度税制改正大綱には、消費税率10%への引上げ時期について、当初の平成27年10月1日から1年6ヶ月先延ばしし、平成29年4月1日とすることが示されている。この税率引上げ時期の変更を踏まえ、住宅取得等に係る措置についても適用期限を1年6ヶ月延長することが示された。   (3) 見直しの概要 次に掲げる住宅取得等に係る措置の適用期限(現行:平成29年12月31日)を1年6ヶ月延長し、「平成31年6月30日」までとすることが示された。 なお、個人住民税における住宅借入金等特別税額控除についても、所得税と同様に、適用期限を1年6ヶ月延長し、平成31年6月30日までとすることが示されている。 (了) 【参考図】(2015/1/8追記) (※) 財務省ホームページより

#No. 101(掲載号)
#篠藤 敦子
2015/01/07

《速報解説》 研究開発税制、控除限度額の構造を見直し~特別試験研究費税額控除を別枠に。繰越控除制度は廃止へ(平成27年度税制改正大綱)~

 《速報解説》 研究開発税制、控除限度額の構造を見直し ~特別試験研究費税額控除を別枠に。繰越控除制度は廃止へ(平成27年度税制改正大綱)~   税理士法人山田&パートナーズ 税理士 吉澤 大輔   はじめに 「平成27年度税制改正大綱」により、経済成長力、国際競争力の維持・強化を図るためには、研究開発を促進するための税制措置が引き続き必要であるとの観点から、平成27年度においても、研究開発税制に関する改正が行われる予定であることが明らかとなった(大綱p64)。 そこで本稿では、改正案の内容とその留意点を述べることとするが、『自前主義からオープンイノベーション志向への変革』を意識した改正内容であることに注目していただきたい。   1 改正案の内容 税額控除限度額の上限を当期法人税額の30%(措法42条の4の2)とする措置が適用期限(平成27年3月31日)をもって廃止されるが、新たに次の措置により、税額控除限度額の上限の総枠を当期法人税額の30%とする改正が予定されている。 【改正案のイメージ図】   2 改正案における留意点 (1) オープンイノベーションへ取り組む企業には朗報 『試験研究費の総額に係る税額控除制度』及び『中小企業技術基盤強化税制』と『特別試験研究費の額に係る税額控除制度』の税額控除限度額が別枠となり、自前主義の企業においては税額控除額が減額する可能性がある。 他方、オープンイノベーションに積極的に取り組んでいる企業については今回の改正でさほど影響を受けないどころか、『特別試験研究費の額に係る税額控除制度』の税額控除率の引上げ、特別試験研究費の対象範囲の見直しにより、研究開発税制の優遇を受けやすくなったと言える。 (2) 繰越控除制度廃止の影響 繰越(中小企業者等)税額控除限度超過額に係る税額控除制度の廃止により、法人税額の負担に比して試験研究費の額が大きい企業については、研究開発税制の優遇を受けづらくなったと言える。今後の経過措置等に注目したい。 (了)

#No. 100(掲載号)
#吉澤 大輔
2015/01/07

《速報解説》 固定資産税に係る主な平成27年度税制改正事項~宅地等の負担調整措置は継続。特定空家等の敷地は特例措置の適用除外へ~

 《速報解説》 固定資産税に係る主な平成27年度税制改正事項 ~宅地等の負担調整措置は継続。特定空家等の敷地は特例措置の適用除外へ~   税理士 島田 晃一   平成26年12月30日に公表された「平成27年度税制改正大綱」における固定資産税関連の主な改正点等は次のとおりである。 1 土地に係る負担調整措置の仕組みの継続 固定資産税は過去3年に一度の固定資産税評価替えに合わせ何らかの改正が行われてきた。 平成27年度は評価替えの年にあたるが、平成27年度の大綱では45ページに と記載されており、大きな変更はなく現行の計算方法が踏襲される。 宅地等の固定資産税は、宅地等を住宅用地とそれ以外(商業地等)に区分し、それぞれ「負担水準」といい、当該年度の固定資産税評価額に対し前年度における課税標準額がどのくらいの割合にあるかを求め、その負担水準に基づき課税標準額を計算し税率(原則1.4%)を乗じて税額を算出する。 住宅用地に関しては、負担水準の計算の際、固定資産税評価額に小規模住宅用地(住宅用地のうち「200㎡×住居の数」までの部分)は6分の1、その他の住宅用地(一般住宅用地)は3分の1を乗じて計算し、その負担水準に応じて前年の課税標準額を次表に応じて調整することになる。 結果として、住宅用地については、この特例があることで商業地等より税負担が低く抑えられるわけである。 一方、商業地等に関しては、負担水準の上限部分について負担水準が70%を超える土地は、課税標準額を固定資産税評価額の70%まで引き下げ、負担水準が60%以上70%以下の場合については税額が据え置かれる。 負担水準が20%以上60%未満の商業地等に関しては、前年度の課税標準額にその年度の固定資産税評価額の5%が追加され(固定資産税評価額×60%が限度)、20%未満のときは固定資産税評価額の20%相当額になる。 また、大綱にある「税負担急増土地に係る条例減額制度」とは、住宅用地、商業地等ともに、当年度の税額が前年度の税額の1.1倍を超える場合、各市町村の条例により超える部分の税額を減額できる特例をいい、「商業地等に係る条例減額制度」とは、条例により商業地等に係る課税標準額の上限を固定資産税評価額の70%から60%を限度として引き下げることができるというものである。 これらの制度ついては改正後も継続されることになる。 なお、都市計画税に関しては、大綱の45ページに「固定資産税の改正に伴う所要の改正」を行うと記載されている。固定資産税の計算方法に大きな改正がないことから、都市計画税についても現行の計算を踏襲することになる。 都市計画税(税率は0.3%の範囲内で各市町村が独自に設定)の課税標準額の計算は固定資産税の計算に準じる。ただし、住宅用地の特例割合は小規模住宅用地3分の1、一般住宅用地3分の2になっている。   2 特定空家に関する住宅特例措置の適用除外 平成27年度の税制改正大綱には、平成26年11月に臨時国会で成立した「空家等対策の推進に関する特別措置法」を受け、同法に定める特定空家等に係る土地について、固定資産税及び都市計画税に係る住宅用地の特例措置の対象から除外する措置を講ずると記載されている(大綱48ページ)。 特定空家等については、「空家等対策の推進に関する特別措置法」の第2条において詳細が定められている。具体的には次のとおりである。 特定空家等に該当するか否かについては、同法第9条において、立ち入り調査権が認められているので、今後随時市町村の調査が実行されることになる。この調査により特定空家等に該当すると判定された場合は、市町村長から取り壊しや修繕等をするよう助言・指導・勧告がなされ、是正されない場合には行政代執行法により所有者に代わり取り壊し等を行うことができるとされている(同法第14条)。 特定空家等に該当することとなった場合、前述したようにその敷地に関して固定資産税については固定資産税評価額に6分の1(3分の1)、都市計画税は3分の1(3分の2)を乗ずる住宅用地の特例措置が受けられなくなった。この場合、当該敷地は住宅用地として取り扱われ特例措置のみがなくなるのではなく、「商業地等」として取り扱われるようである。ただし、現段階ではまだ不透明であり今後の情報を待ちたい。 また、平成27年度の固定資産税の課税においては、当初住宅用地とされていても、その後の立ち入り調査等で「特定空家等」の敷地に該当する場合も考えられる。この場合の当初税額との差額を徴収するのかどうか、また、急激な税負担増に関する緩和措置が設けられるかどうかなども今後明らかにされていくであろう。 (了)

#No. 100(掲載号)
#島田 晃一
2015/01/07

《速報解説》 所得拡大促進税制の適用要件緩和と外形標準課税への適用~中小企業者等の「雇用者給与等支給増加割合」は3%据置き(平成27年度税制改正大綱)~

 《速報解説》 所得拡大促進税制の適用要件緩和と外形標準課税への適用 ~中小企業者等の「雇用者給与等支給増加割合」は3%据置き(平成27年度税制改正大綱)~   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   1 はじめに 平成26年12月30日、与党(自由民主党及び公明党)より「平成27年度税制改正大綱」が公表された。今回の税制改正でも、デフレ脱却・経済再生をより確実なものにしていく必要があるとの認識から、企業の収益力を高め、賃上げを促進するための税制措置が盛り込まれたところである。 具体的には、「所得拡大促進税制」(雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)について、一層の適用要件の緩和を行うとともに、法人事業税の外形標準課税においても所得拡大促進税制が導入することとなった。 本稿では、平成27年度税制改正における、所得拡大促進税制に関連する改正点について解説を行う。   2 所得拡大促進税制の改正 所得拡大促進税制(措法42の12の4)については、適用要件のうち「雇用者給与等支給増加割合の要件」についての見直しが行われることとされた(大綱p65)。 「雇用者給与等支給増加額割合」とは、雇用者給与等支給額から基準雇用者給与等支給額を控除した金額(雇用者給与等支給増加額)の、当該基準雇用者給与等支給額に対する割合をいうが、所得拡大促進税制の適用を受けるために充足すべき割合が下表のように改正される。 すなわち、改正点のない事業年度も含めると、以下のように改正されるということである。   3 外形標準課税(付加価値割)における所得拡大促進税制の導入 資本金1億円超の法人について適用される、法人事業税の外形標準課税においては、付加価値割の課税標準として「報酬給与額」が含まれている(地法72の14)。 所得拡大促進税制の適用を受けることのできる状況では、当然、付加価値割の課税標準たる報酬給与額も増加し、税額も増加してしまうこととなる(雇用安定控除はあるが)。 そこで平成27年度税制改正では、所得拡大促進税制の適用要件を満たしている場合には、付加価値割の課税標準の算定上、所得拡大促進税制における「雇用者給与等支給増加額」を控除できることとするよう改正される(大綱p66)。 ただし税制改正大綱では、「付加価値割の課税標準」から控除されるとの記載となっており、「報酬給与額から控除」という表現にはなっていない。これは前述の「雇用安定控除」との調整が必要なためと考えられるが、税制改正大綱においても「雇用安定控除との調整等所要の措置を講ずる」とされている。引き続き確認していきたい。 (了)

#No. 100(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2015/01/07

《速報解説》 不動産登記に係る主な登録免許税の軽減措置の延長及び廃止~平成27年度税制改正大綱~

 《速報解説》 不動産登記に係る主な登録免許税の軽減措置の延長及び廃止 ~平成27年度税制改正大綱~   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   平成26年12月30日、自由民主党と公明党による「平成27年度税制改正大綱」が公表された。 不動産登記に係る登録免許税に関する改正内容の主なものとして、次のとおり延長及び廃止の措置を講ずることとされた。 延長の目的としては、土地の取得コストの軽減による土地の流動化・有効利用の促進を通じて、資産デフレからの脱却及び経済再生の実現を図ることを目的としている。   1 延長の概要(大綱p47) ① 土地の所有権移転登記等に係る登録免許税の税率について、下記の軽減税率を平成29年3月31日まで2年間延長することとなった。 ② 住宅用家屋の所有権の保存登記及び移転登記並びに住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記についての登録免許税の税率について、下記の軽減税率を平成29年3月31日まで2年間延長することとなった。 注1 なお、特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等、認定低炭素住宅の所有権の保存登記等及び特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権の移転登記については、平成26年度税制改正により平成28年3月31日までとされている。 2 また、住宅用の家屋についての軽減税率の適用を受けるには、下記の要件が必要となる。   2 廃止の概要(大綱p48) 会社分割に伴う不動産の所有権の移転登記等の登録免許税について税率を軽減する措置については、会社分割制度の創設以降その活用等に貢献し、その役割を果たしたということと、平成26年度税制改正において講じられた産業競争力強化法に規定する事業再編等に係る登録免許税の税率の軽減措置によって、組織再編・事業再編を通じた経営資源の効率的活用を図る取組みを促進させられることにより、平成27年3月31日をもって廃止されることとなった。 (了)

#No. 100(掲載号)
#山端 美德
2015/01/07

《速報解説》 消費税率10%施行の延期と複数税率制度への移行について~軽減税率は「平成29年度からの導入を目指す」との記述(平成27年度税制改正大綱)~

 《速報解説》 消費税率10%施行の延期と複数税率制度への移行について ~軽減税率は「平成29年度からの導入を目指す」との記述(平成27年度税制改正大綱)~   税理士 金井 恵美子   〇消費税率10%は平成29年4月1日から~経過措置の「指定日」は平成28年10月1日 平成27年度税制改正大綱は、消費税率10%への引上げの施行日を「平成29年4月1日」とした(大綱p82)。 税率変更の時期は、政府により、衆院選前に1年半先送りすることが決定されたが、そのため財政再建の道筋が不透明になったことを理由として日本国債の格付けが格下げされるなど、日本政府の財政運営に関する信認低下が懸念されている。 大綱は、市場や国際社会からの信認を高めるために財政健全化を着実に進める姿勢を示す観点から、「景気判断条項」を付さずに確実に実施するものとしている。 これに伴い、工事の請負等に関する適用税率の経過措置等の指定日は「平成28年10月1日」となり、平成29年3月31日までの時限立法である消費税転嫁対策特別措置法は平成30年9月30日まで延長される。   〇軽減税率は「平成29年度からの導入を目指す」 税率構造については、「消費税の軽減税率制度については、関係事業者を含む国民の理解を得た上で、税率10%時に導入する。平成29年度からの導入を目指して、対象品目、区分経理、安定財源等について、早急に具体的な検討を進める。」とした(大綱p9)。 公明党は、消費増税に際して「痛税感を和らげる措置」として、消費税率10%への引上げと同時に複数税率制度に移行し、食料品などの税率を8%に据え置くことを求めており、自民党の野田毅税制調査会長は、12月30日の記者会見で、「遅くとも(平成27年)秋までの制度案の決定に向けての検討を開始したい」と述べ、本年秋までに与党合意を目指す考えを示した。1月中に自民、公明両党の税調幹部で構成する協議会を設置し、対象品目などの具体案の検討に入る。   〇複数税率制度への移行に向けた課題 しかし、経済界では、複数税率制度への移行に反対する意見が多い。 平成26年12月30日、日本商工会議所の三村会頭は、「消費税の複数税率については、社会保障財源の毀損や、対象品目の線引きが困難であるという問題を抱えている。加えて転嫁問題に直面する事業者、とりわけ規模の小さい事業者ほど事務負担が大きくなることから、導入すべきでないと考える。」とコメントしており、日本経済団体連合会の榊原会長も「消費税の軽減税率については、社会保障財源の減少や中小企業を中心とした納税者の事務負担の増大等を十分に踏まえたうえで、慎重に検討することが必要である。」としている。 売手と買手の適用税率を一致させる区分経理の方法として、与党税制協議会は、昨年6月5日に公表した「消費税の軽減税率に関する検討について」において、次の4つの方式を提案している。 (A案)及び(B案)は現行の請求書等保存方式、(C案)及び(D案)はインボイス方式のカテゴリに属するものである。両者の制度的な違いは、免税事業者からの仕入れを仕入税額控除の対象とするかどうかであり、いずれの方式を採用するかは今後検討される。適正な税率適用のための担保という観点からは(D案)が最も優れていると思われるが、仕入税額控除の仕組みを激変させるものであり、制度構築のハードルは高い。 また、大綱は、内外判定の基準を見直して国外事業者が国境を越えて行う電子商取引を消費税の課税対象とするものとしており(大綱p84)、新しい制度は、国内の事業者に係る事業者登録制度がないことを前提としている。現時点で(D案)EU型インボイス方式を採用する可能性は低いと考えられる。 (了)

#No. 100(掲載号)
#金井 恵美子
2015/01/06
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