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〈徹底分析〉租税回避事案の最新傾向 【第17回】「まとめ」

〈徹底分析〉 租税回避事案の最新傾向 【第17回】 (最終回) 「まとめ」   公認会計士 佐藤 信祐     19 租税回避として否認されやすい事案 本連載で解説したように、すでに租税回避として否認されている事案がいくつか公表されている。過去の否認事例から分析すると、以下のものについては、租税回避として否認されやすいと考えられる。 (1) 迂回取引、多段階取引 迂回取引、多段階取引は、典型的な租税回避であるといわれている。例えば、グループ法人税制における譲渡損益の繰延べが、制度の簡便化のために、グループ外の者への転売だけでなく、グループ内の他の内国法人への転売であっても、譲渡損失が実現するという制度になっていることを悪用するという事案が考えられる(法法61の11②)。具体的には、100%子会社(A社)に資産を譲渡した後に、当該100%子会社(A社)から他の100%子会社(B社)に当該資産を転売することにより譲渡損失を認識した場合には、A社に譲渡した後にB社に譲渡をしたのではなく、A社を経由せずにB社に譲渡をしたものとして、譲渡損失の実現を認めないという否認が行われる可能性が考えられる。 (2) 時価と異なる取引価額 組織再編税制は時価で取引が行われることを前提としており、時価と異なる取引価額を採用した場合には、それ自体が租税回避であると認定される可能性がある。時価と異なる価額により第三者割当増資を行ったことにより否認を受けた事例として、最三小判平成18年1月24日判タ1203号108頁(オーブンシャ・ホールディングス事件)、名古屋高判平成14年5月15日税資252号(相互タクシー事件)、東京高判平成13年7月5日税資251号(日本スリーエス事件)がある。 (3) 過去の否認事例があるもの 裁判例として、繰越欠損金の引継ぎを利用したもの(ヤフー事件、TPR事件。なお、現在、地方裁判所で争われている事件が3件ある。)、税制適格要件を外したもの(IDCF事件)、裁決例として完全支配関係を外したもの(国税不服審判所裁決平成28年1月6日TAINSコード:F0-2-629参照。)が公表されている。また、裁判及び裁決に至っていないものの新聞報道されているものとして、パチンコ店約40グループが適格現物出資を繰り返すことにより含み損を三重、四重に発生させたもの(Sスキーム事件)が公表されている(読売新聞朝刊平成24年2月12日など)。こういった前例のあるものに対しては、課税当局としても、包括的租税回避防止規定を適用しやすいと考えられる。 それ以外にも、いくつか否認事例が公表されているものの、裁判又は裁決に至ったものを除き、具体的なスキームが新聞報道からは明らかではない。新聞報道から明らかでないということは、必ずしも前例として有効ではなく、反論の余地があるということになる。さらにいえば、税務調査においては、税務調査に立ち会った税理士のアドバイスが不十分であるという理由により、税務訴訟で勝訴の余地があっても、修正申告を受け入れてしまう事案も想定される。Sスキーム事件については、組織再編税制を専門とする税理士のほとんどが否認リスクを感じているため例外的ではあるが、それ以外の組織再編成については、仮に税務調査で否認された事例として新聞報道で公表されていたとしても、裁判又は裁決に至っていない以上、前例と捉える必要はないと思われる。 すなわち、①濫用的な手法により繰越欠損金を引き継ぐ行為、②濫用的な手法により税制適格要件を満たす行為又は外す行為、③濫用的な手法により完全支配関係又は支配関係を満たす行為又は外す行為、④濫用的な手法により譲渡損失を二重に発生させる行為(※58)にそれぞれ包括的租税回避防止規定が適用される可能性があるといえる。 (※58) 厳密には、譲渡損失を二重に発生させる行為については、制度趣旨に反するとまではいえない事案や事業目的が十分に認められる事案が多いことから、包括的租税回避防止規定の適用が困難なものが多い。しかしながら、譲渡損失を三重、四重に発生させようとする納税者は稀であることから、ここでは、二重に発生させる行為とした。   20 租税回避に対する意見の表明 令和に入ってから、税務調査において包括的租税回避防止規定が議論になることが増えており、実際に否認された事例もあると聞いている。平成の時代には、当事務所でも包括的租税回避防止規定の検討を積極的に行っていたが、最近では慎重に対応せざるを得ない事案が増えている。 もちろん、クライアントが虚偽の説明をしてしまうと、税理士からの回答が無意味になってしまうため、そのようなことをするとは思えないが、税理士から都合の良い意見をもらうために、無意識に説明の強弱をつけてしまう可能性は否めない。すなわち、税理士又は弁護士に税務意見書の作成を依頼してしまうと、税務調査において、税務意見書に書かれていない事実を発見することにより、税務意見書を無効にしようとする動機が働きやすい。それだけでなく、税理士又は弁護士に税務意見書の作成を依頼したということは、納税者が税務リスクを認識していたという証拠になりやすく、税務意見書の作成を依頼することにより税務調査で否認を受けるリスクを高めてしまうということになりかねない。 すなわち、ストラクチャーを実行する前に税務意見書の作成を依頼するのは、金融機関からの資金調達のために必要であるとか、ストラクチャーにおける税務上の論点をまとめた資料が取締役会で必要であるといった、税務調査対応とは別の理由がある場合に限られるべきである。税務調査で対応するために、事前に税務意見書を入手しておくというのは、税制適格要件や繰越欠損金の引継ぎといった個別規定に関しては問題にならないが、包括的租税回避防止規定や同族会社等の行為又は計算の否認に関しては、そもそも依頼する納税者にとってもリスクであるし、税務リスクを高めかねないということになると、税務意見書を書きにくいと感じる税理士又は弁護士も少なくないように思われる。 そうなると、ストラクチャーの実行段階においては、包括的租税回避防止規定や同族会社等の行為又は計算の否認に関する税務意見書をもらわなければならないようなストラクチャーの実行そのものを控えるべきであると考えられる。そうはいっても、最近の税務調査の傾向を見ると、かつては包括的租税回避防止規定が適用される可能性が低いと思われていた事案に対しても、包括的租税回避防止規定の適用が検討されたという話も聞いており、そのような検討が行われたタイミングであれば、税務意見書の作成は有効であろう(※59)。ただし、税務調査期間中における税務意見書の作成ということになると、時間的な制約はかなり大きいことから、納税者としても早いタイミングで税理士又は弁護士に依頼しておく必要があるし、税理士又は弁護士としてもスピード感のある対応が求められる。 (※59) 税務調査期間中における税務意見書の作成については、西中間浩『税務意見書の書き方』15-17頁(中央経済社、令和5年)参照。なお、西中間氏は弁護士が税務意見書を作成する場合と税理士が税務意見書を作成する場合とに分けて説明されているが、ストラクチャーを担当した税理士や税務申告書を作成した税理士とは別の税理士による税務意見書の作成についてはあまり想定されていないようである。税務調査で多額の追徴を受けそうな場合には、複数の税理士に相談することで、反論の余地があるかどうかを探ることは珍しいことではなく、結果的に、税務調査における否認を免れた事案もある。そのため、税務調査期間中に税理士に税務意見書の作成を依頼することに意味はあると思われるが、税理士の立場としても、税務調査で否認されないための税務意見書の依頼となると、税務調査で否認された場合に、報酬が回収できなくなるという懸念が生じることになる。この点については、トラブルが生じないように、契約書をきちんと交わすだけでなく、税務意見書を提出したら報酬を速やかに回収する必要があるといえる。   21 まとめ ヤフー事件が公表される前に、佐藤信祐『組織再編における包括的租税回避防止規定の実務』(中央経済社、平成21年)を出版したが、当時に比べると、税務調査において包括的租税回避防止規定が議論になることが増えてきた。そして、令和4年4月19日、同月21日と最高裁判決が立て続けに下されたことで、実務上、租税回避に該当するかどうかについて、検討せざるを得ない場面が増えてくると思われる。 現時点では、東京国税不服審判所裁決令和2年11月2日(PGM事件)、大阪国税不服審判所裁決令和4年8月19日、名古屋国税不服審判所裁決令和4年3月25日などがそれぞれ地方裁判所で争われているが、これらの地裁判決及び高裁判決の公表に伴って、租税回避の定義はより明確になっていくと思われる。 しかしながら、租税回避と節税の境界線については、論者によって見解が異なることから、必ずしも正しい答えが導きだせるものではない。さらにいえば、時代の変遷によって変わっていく可能性もあることから、常に情報をアップデートする必要がある。 本連載では、上記の地裁判決及び高裁判決が公表されていないことから、やや不十分なところもあったかもしれないが、それなりに有益な情報を提供できたと考えている。もちろん、これらの地裁判決及び高裁判決が公表されれば、より有益な情報が提供できることから、本連載とは別に解説したいと考えている。 本連載が、読者のお役に立つことができれば幸いである。 (連載了)

#No. 555(掲載号)
#佐藤 信祐
2024/02/08

Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第39回】「貸付金及び非上場株式を同族会社である発行法人に遺贈した場合の非上場株式の価額計算における留意点」

Q&Aでわかる 〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第39回】 「貸付金及び非上場株式を同族会社である発行法人に遺贈した場合の 非上場株式の価額計算における留意点」   税理士 柴田 健次   Q 甲は昭和40年にA社を設立し、パンの製造業を営んでいましたが、令和2年に代表取締役を辞任し、甲の甥である乙が新たに代表取締役に就任しました。A社の株主は甲のみで甲は発行済株式数200株を所有していましたが、同年に乙にA社株式20株を相続税評価額で売却するとともに下記の遺言書を作成しています。甲は、代表取締役辞任後、相続開始まで引き続きA社の会長として役員になっています。 ■遺言書の内容 令和5年10月5日に相続が発生し、相続開始直前における財産は、下記の通りとなります。甲の相続人は長男のみとなります。 ■相続開始直前における甲の財産 ■A社株式の所有状況の推移 甲の相続に伴い、甲、A社及び乙のそれぞれの課税関係はどのようになりますか。 また、甲の相続財産の課税価格の合計額はいくらになりますか。 A社株式の法人への遺贈は、甲が法人にA社株式を譲渡したものとみなされることになりますが、この場合のA社株式の価額算定にあたっては、所得税基本通達59-6の定めにより財産評価基本通達を準用するものとします。 A社の会社の規模区分は中会社の大に該当し、A社は特定の評価会社には該当しません。また、A社は9月決算であり、直前期末時点(令和5年9月30日)と相続開始時点(令和5年10月5日)において甲のA社に対する貸付金に変動はないものとします。純資産価額の計算においては、直前期末方式(直前期末の資産及び負債の帳簿価額に基づき評価する方式)により計算するものとします。 A社は9月決算であり、遺贈前の令和5年10月5日時点における取引相場のない株式(出資)の評価明細書の第4表「類似業種比準価額等の計算明細書」及び第5表「1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書」は、それぞれ下記の通りとなります。なお、A社は土地及び上場有価証券は有していません。 ※画像をクリックすると別ページでPDFが開きます。 ※画像をクリックすると別ページでPDFが開きます。 遺贈前におけるA社株式の1株当たりの価額並びに甲及び乙が所有している株式の相続税評価額は、下記の通りとなります。 A ■甲の課税関係 1株当たりの価額588,850円(427,700円 × 50% + 750,000円 × 50%)で100株を法人に譲渡したものとみなされ、株式の譲渡所得53,885,000円(588,850円 × 100株 - 50,000円 × 100株)として所得税が課税され、甲の相続人である長男が納税義務を負うこととなります。なお、交付金銭等の額はないため、みなし配当金額はありません。 ■A社の課税関係 債務免除益50,000,000円が益金に算入され法人税等が課税されます。A社株式の取得は資本等取引に該当し、A社の課税関係は発生しません。 ■乙の課税関係 甲から遺贈により取得したA社株式80株に対して相続税が課税され、かつ、乙が相続開始前から所有していた20株については、遺贈によりA社株式の価値が増加していますので、その価値増加部分に対して、甲から乙に遺贈があったものとして相続税が課税されます。 A社株式の相続税評価額は、遺贈後で計算を行うことになり、遺贈後における1株当たりの相続税評価額は1,020,840円(932,600円 × 90% + 1,815,000円 × 10%)となります。 乙が甲から遺贈により取得したA社株式80株の相続税評価額は81,667,200円(1,020,840円 × 80株)となり、乙が所有していた20株についての価値増加部分は、下記の通り11,218,200円となります。 〈20株の価値増加部分の計算〉 したがって、乙に対して課税される相続財産は92,885,400円(81,667,200円 + 11,218,200円)となります。 ■甲の相続財産の課税価格の合計額  ◆  ◆  ◆ ① 法人に遺贈を行った場合の課税関係 (1) 被相続人の課税関係 譲渡所得の起因となる資産を法人へ遺贈した場合には、被相続人が相続開始時の価額でその資産を法人に譲渡したものとみなされ、被相続人の譲渡所得の課税対象とされます(所法59①)。譲渡所得の起因となる資産には、土地、借地権、建物、株式等、金地金などは含まれますが、貸付金や売掛金などの金銭債権は除かれます。 本問の場合には、A社株式の遺贈が譲渡所得の対象となり、この場合における1株当たりの価額は、所得税基本通達59-6の定めに基づき算定することになります。財産評価基本通達を準用する場合には、下記の点に留意する必要があります。 ❶ 株主判定と評価方式 株主判定は譲渡(遺贈)前の議決権数に基づきその判定を行うことになります。甲は譲渡直前において中心的な同族株主に該当することになりますので、所得税基本通達59-6(2)の適用により小会社に該当するものとして計算することになります。 したがって、類似業種比準価額の使用割合であるLの割合は50%となり、「類似業種比準価額 × 50% + 純資産価額 × 50%」で計算することになります。 ❷ 類似業種比準価額の算定 類似業種比準価額を求める際の斟酌割合は小会社としての斟酌割合(0.5)ではなく、A社の会社規模区分(中会社)としての斟酌割合(0.6)となりますので、類似業種比準価額は427,700円となります(令和2年9月30日国税庁資産課税課情報第22号)。 ❸ 純資産価額の算定 所得税基本通達59-6(3)及び(4)の定めにより、土地及び上場有価証券は相続税評価ではなく時価により算定し、法人税額等相当額の控除もしない価額となります。本問の場合には、土地及び上場有価証券はありませんので、評価替えを行う資産項目はありません。 なお、甲に対する借入金50,000,000円については、遺贈により消滅することになりますので、その借入金50,000,000円は負債として計上して問題ないかを検討する必要があります。 令和3年5月21日の東京地裁(TAINSコード:Z271-13567)は、遺言により株式と貸付金が同時に法人に遺贈された場合、当該株式について所得税法59条1項の「その時における価額」を純資産価額方式で算定するに当たり、法人に対する貸付金を負債に計上するべきか否かが争われた事件となりますが、東京地裁は、下記のとおり負債に計上すべきと判示しました。 (下線部は筆者による) 上記の東京地裁により、株式の価額は、譲渡(遺贈)が行われる直前の資産及び負債の価額に基づき計算がなされますので、役員借入金は純資産価額の計算上、負債に計上することになります。 したがって、本問の場合には、1株当たりの価額588,850円(427,700円 × 50% + 750,000円 × 50%)で法人に株式を売却したものとみなされ、株式の譲渡所得53,885,000円(588,850円 × 100株 - 50,000円 × 100株)として所得税が課税され、甲の相続人である長男が納税義務を負うこととなります。なお、甲は令和6年1月1日時点に存命ではありませんので、譲渡所得に対する住民税は発生しないことになります。 (2) 法人の課税関係 A社は、貸付金及び株式を遺贈により取得していますが、貸付金については混同により消滅し、債務免除益50,000,000円として益金に算入されることになります。一方でA社株式の取得は、自己株式の取得となり、資本等取引に該当し課税関係は発生しません(法法22②③④⑤)。 (3) 乙の課税関係 ❶ 80株に対する相続税の課税 乙は、被相続人から遺贈を受けた80株について相続税が課税されます。この場合のA社株式の相続税評価額は、遺贈後で計算を行うことになり、遺贈後における1株当たりの相続税評価額は1,020,840円(932,600円 × 90% + 1,815,000円 × 10%)となります。 したがって、80株の相続税評価額は81,667,200円(1,020,840円 × 80株)となります。 ❷ 遺贈後におけるA社株式の相続税評価額の算定上の留意点 実際の遺贈後における取引相場のない株式(出資)の評価明細書第4表「類似業種比準価額等の計算明細書」及び第5表「1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書」は、それぞれ下記の通りとなります。 ※画像をクリックすると別ページでPDFが開きます。 ※画像をクリックすると別ページでPDFが開きます。 ❸ 20株の価値増加部分に対する相続税の課税 乙は相続前から所有していた20株については遺贈後に株式の価値が増加しているため、その価値増加部分について被相続人から乙に対し遺贈があったものとみなされ、相続税が課税されることになります(相法9)。 1株当たりの価値増加部分の計算は、遺贈後における1株当たりの価額から遺贈前における1株当たりの価額を控除した金額となり、20株の価値増加部分は、下記の通り11,218,200円となります。 〈20株の価値増加部分の計算〉 ❹ 乙に対して課税される相続財産 乙に対して課税される相続財産は92,885,400円(81,667,200円 + 11,218,200円)となります。   ② 甲の相続財産の課税価格の合計額 相続税の納税義務者は、遺贈を受けた個人である乙及び相続人である長男の2人となりますので、それぞれが取得した相続財産等の合計額が課税価格の合計額となります。遺贈により財産を取得した普通法人(法法2九)であるA社は、相続税の納税義務者にはなりませんので、相続税が課税されることはありません(相法1の3、66)。 したがって、課税価格の合計額は、下記の通り計算されます。 〈甲の相続財産の課税価格の合計額〉   ☆実務上のポイント☆ 所得税におけるみなし譲渡の適用については、売主に課税されるため譲渡直前の状況に基づき株式価額を計算するのに対して、相続税の株式価額の計算においては、相続税の納税義務がある株式取得者に課税されるため、遺贈を受けた直後の状況に基づき株式の価額を計算することになります。 (了)

#No. 555(掲載号)
#柴田 健次
2024/02/08

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第94回】「農地売主相続事件」~最判昭和61年12月5日(訟務月報33巻8号2149頁)~

さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第94回】 「農地売主相続事件」 ~最判昭和61年12月5日(訟務月報33巻8号2149頁)~   弁護士 菊田 雅裕   (了)

#No. 555(掲載号)
#菊田 雅裕
2024/02/08

事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第61回】「一般財団法人の清算」

事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第61回】 「一般財団法人の清算」   太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) パートナー 税理士 西田 尚子   相談内容 私は、音楽機器の製造販売業を営むX社の創業者です。X社の業績は堅調で、経営体制も安定しています。また、私はX社を営む傍ら、音楽活動に対する助成事業を行う一般財団法人Yを設立し、代表理事として運営に携わっています。Y財団は非営利型法人の要件を満たす設計がされており、X社からの毎年の寄附金を原資として公益活動を行っています(非営利型法人の条件については【第21回】「財団法人の設立」参照)。 Y財団の設立当初は、私の所有するX社の株式の一部をY財団に寄附して、Y財団をX社の安定株主とし、X社からの配当金を原資に公益活動を続けることを考えていました。しかし、既にX社に入社していた息子が成長し、もう経営を任せられるようになり、息子本人もⅩ社の株主として経営していくことを希望しているため、社長を息子に譲り、事業承継税制の特例制度を適用して、私が所有していたX社の株式を全て息子に贈与することにしました。Y財団の将来の運営を考えると、私が元気なうちに活動を止めて清算しておいた方がよいのではないかと思うのですが、非営利型一般財団法人を清算する場合の具体的な手続きや気を付けるべきことを教えてください。 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ [1] 解散・清算の流れ 一般財団法人の清算手続きは株式会社の清算と同様に、解散して残余財産を分配した後に清算結了という流れになります。解散後は清算人が業務を執行し、現務の結了、債権債務の精算、残余財産の引渡し、評議員会の開催手続きなどを行います。債権者保護手続きが必要になるため、解散から清算結了までは2ヶ月以上の期間が必要です。 〈スケジュール例〉 解散事業年度 清算事業年度以後   [2] 解散事由 一般財団法人は次の事由によって解散するものとされています(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「法人法」)202①)。 また、一般財団法人は、上記の事由のほか、ある事業年度及びその翌事業年度に係る貸借対照表上の純資産額がいずれも300万円未満となった場合においても、その翌事業年度に関する定時評議員会の終結の時に解散します(法人法202②)。 通常、一般財団法人の場合には①定款で定めた存続期間の満了により解散することが多いと考えられます。具体的には、評議員会で定款変更を行い、解散日を定めます。 〈解散時の定款記載例〉   [3] 清算法人の執行機関 清算法人になった場合、理事・理事会は消滅し、評議員会の招集などの役割は清算人が担うことになります。清算人が複数名いる場合には、代表清算人を定めることができます。また、定款に定めることにより清算人会を設置することも可能です。解散時に清算人を選任しない場合は、解散時の理事全員が清算人になりますので、1名程度を清算人として選任することが一般的です。 評議員会は清算結了まで存続します。監事も、清算法人が監事を置く旨の定めを廃止する定款変更をしない限り存続します。   [4] 清算人の業務 清算人の主な業務は次のものになります。   [5] 残余財産の引渡し 非営利型一般財団法人の場合、解散したときは、残余財産を国もしくは地方公共団体、公益法人などに贈与する旨を定款に定めていますので、これらの中から残余財産の具体的な寄附先を決める必要があります。X社や他の一般財団法人などに残余財産を寄附することはできません。 多額の残余財産が残らないように、公益活動に財産を使用してから解散といったスケジュールができるとよいでしょう。   [6] 解散・清算時の課税 非営利型一般財団法人の場合、法人税は収益事業にのみ課税されるため、収益事業に該当しない解散や清算による課税は発生しません。ただし、解散前や清算中に残余財産を特定の営利団体や個人に寄附するなどして、非営利要件を満たさなくなったときは、満たさなくなったときの累積所得金額(※)に対して法人税が課税されることになります(法法64の4①、法令131の4①)。 (※) 累積所得金額は以下の算式で計算します。 また、租税特別措置法第40条の譲渡所得の非課税の適用を受けている残余財産を所有する場合には、その財産を他の公益法人等に寄附して公益目的事業に使用してもらうことによって、非課税の適用を受け続けることができます。解散の日の前日までに、解散予定日や寄附予定先など一定の事項を記載した届出書を、納税地の所轄税務署長を経由して国税庁長官に提出する必要があります(措置法40⑦)。   [7] 結論 Y財団の場合、X社からの寄附金を原資として活動しているため、清算に向けたスケジュールと資金計画を立てて、所有する財産を公益活動に使い切ってから清算することが可能と考えられます。その際に、解散・清算に係る登記費用などのコストは残しておくように計画します。 資金を使い切らずに清算する場合には、残余財産の寄附先を定める必要があります。残余財産の性質や金額によっては、寄附先で受け入れのための手続きが必要になる場合がありますので、早めに寄附の意思表示をする必要があると考えられます。 実際の具体的な対策については、税理士・司法書士等の専門家と相談の上、実行されることをお勧めします。   (了)

#No. 555(掲載号)
#太陽グラントソントン税理士法人 事業承継対策研究会
2024/02/08

〔まとめて確認〕会計情報の月次速報解説 【2024年1月】

〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2024年1月】   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2024年1月1日から1月31日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。   Ⅱ 新会計基準関係 企業会計基準委員会は次のものを公表し、意見募集を行っている。 これは、グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の取扱いを定めるものである。 意見募集期間は2024年2月26日までである。 〇 実務対応報告公開草案第68号(実務対応報告第44号の改正案)「グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)」の公表   Ⅲ 企業内容等開示関係 次のものが公表されている。 ① 「記述情報の開示の好事例集2023」の公表(サステナビリティに関する考え方及び取組の開示)(内容:有価証券報告書のサステナビリティに関する考え方及び取組の開示に関する好事例を紹介するもの) ② 令和6年能登半島地震に関連する有価証券報告書等の提出期限について(内容:令和6年能登半島地震の発生に伴う対応)   Ⅳ 東京証券取引所関係 東京証券取引所から次のものが公表されている。 これは、親子関係にある上場会社やその他の関係会社/関連会社の関係にある上場会社を対象に、開示のポイントなどを整理したものである。 〇 「少数株主保護及びグループ経営に関する情報開示の充実」及び「支配株主・支配的な株主を有する上場会社において独立社外取締役に期待される役割」に関する取りまとめ及び公表について   Ⅴ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 ① 品質管理基準報告書第1号実務ガイダンス第4号「監査事務所における品質管理に関するツール (実務ガイダンス)」の改正の公表について(内容:品質管理システムの評価に当たっての具体的な手順や文書等について検討したもの) ② 「倫理規則」及び「倫理規則実務ガイダンス第1号「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」」の改正に関する公開草案の公表について(内容:上場事業体及び社会的影響度の高い事業体の定義に関する規定等を改正するもの。意見募集期間は2024年3月8日まで) (了)

#No. 555(掲載号)
#阿部 光成
2024/02/08

ハラスメント発覚から紛争解決までの企業対応 【第46回】「ハラスメントについて裁判例の「相場」を超える懲戒処分の方針を示すことの意義」

ハラスメント発覚から紛争解決までの 企 業 対 応 【第46回】 「ハラスメントについて裁判例の「相場」を超える懲戒処分の方針を示すことの意義」   弁護士 柳田 忍   【Question】 当社においては、顧問弁護士の助言のもと、いわゆる裁判例の「相場」に従ってハラスメントの懲戒処分を実施していますが、一向にハラスメントが減る気配がありません。そこで、ハラスメントの懲戒処分を「相場」よりも厳罰化することを検討していますが、その場合のリスクと意義を教えてください。 【Answer】 当該方針に従った懲戒処分の有効性が裁判で争われた場合、無効になるリスクがあります。一方、ハラスメントの抑止効果を期待できる、会社が従業員をハラスメントから守る強い姿勢を示すことができる、などの意義があると思います。 ● ● ● 解 説 ● ● ●   1 はじめに 少し前のことだが、ある会社が、従業員にセクハラに該当する言動があった場合、情状酌量の余地がある場合や、性的に不快な写真や絵などを人の目に触れる場所に置くといったいわゆる「環境型セクハラ」などで軽度と判断された場合を除き、セクハラに該当する行為が1回だけであっても降格とする旨の罰則(以下「本件罰則」という)を導入した旨の報道があった。 懲戒処分の種類として降格が定められる場合、懲戒解雇や諭旨退職の次か、その次に重い処分として(すなわち、割と重めの処分として)定められることが多く、本件罰則については、専門家による「長期間や複数回のセクハラで降格することはあっても、1回で即降格は珍しい」という評価も報道されている(※1)。 (※1)  「1回でもセクハラ「即降格」に パナソニック傘下コネクトが導入」共同通信、2023年2月20日 最近、依頼者から、裁判所のいわゆる「相場」よりも重い処分を科したいという相談を受けることが増えていることから、本件罰則のような方針を打ち出したいと考えている会社も少なくないであろうと感じるところである。よって、本稿においては、本件罰則を通じて、「相場」を超える懲戒処分の方針を示すことの意義について論じるものとする。   2 セクハラと懲戒処分 セクハラと一言でいっても、いろいろなタイプのものがある。例えば、セクハラ指針は、職場におけるセクハラの内容を、職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受ける「対価型」と、当該性的な言動により労働者の就業環境が害される「環境型」とに分類している。また、身体的接触を伴うセクハラもあれば、言葉によるセクハラもあるし、強制わいせつなど犯罪に該当するものもある。 人事院は、各タイプのセクハラに対する懲戒処分(免職、停職、減給、戒告)の目安について、以下のとおり定めている。 (出所) 人事院「懲戒処分の指針について」(平12.3.31職職68、最終改正:令2.4.1職審131)(以下「人事院通知」という)(※2) (※2) 公務員に対する懲戒処分の基準を定めたものであるが、民間企業における懲戒処分の目安としても参考になる。 また、裁判例については、以下のケースが参考になる。 上記に照らすと、強制わいせつ罪や住居侵入罪のような犯罪に該当し得るようなセクハラについては1回だけであっても降格処分は有効となる可能性が高いと思われるが、例えば、言葉によるセクハラについては1回だけで降格処分にした場合にこれが有効となるかはケースバイケースであるように思われる。   3 「相場」を超える懲戒処分の方針を示すことの意義 人事院通知や上記裁判例に照らすと、セクハラに該当する行為が1回だけであっても降格処分できるかどうかはセクハラ行為の態様等にもよることになると思われる。本件罰則においても、情状酌量の余地がある場合や、環境型セクハラなどで軽度と判断された場合は1回で即降格処分とはならないとのことであるので、運用としては、人事院通知や裁判例の傾向に従ったものになる可能性もある。 もっとも、企業が裁判例の相場を超える(ようにも思われる)方針を打ち出すことには、抑止効果や従業員に安心感を与えるといった効果が期待できるなど、一定の意義があると思われる(本件罰則についても、当該会社の社長が「(セクハラが)減ったという感触はある。声を上げやすくなったおかげで件数は一時的に増えた。セクハラを訴えてもいいんだという認識が社員に浸透しつつある」とコメントしている(※3))。 (※3) 「「セクハラは原則降格」パナソニック子会社の厳格なコンプラに広がった不安「ぬれぎぬはないの?」 専門家「認定には適切な段階を踏む」と心配払拭」」47NEWS、2023年6月14日 多くの企業においては、懲戒処分が無効となるリスクをとらないよう、裁判例の相場に沿った、ないしそれを下回る基準に従った処分を行っていると思われる。しかし、冒頭で述べたとおり、実際には、いわゆる相場を超えた懲戒処分を実施したいと考えている会社も少なくないように思う。それにもかかわらず、多くの企業が相場以下の懲戒処分を行っている理由は、処分が無効となった場合に金銭的な責任を負担するおそれがあることもさることながら、会社の評判が悪化することを恐れているものと思われる。 しかし、セクハラについて、事実認定の誤り(いわゆる「えん罪」)を理由として懲戒処分が無効となった場合はともかくとして、厳しい基準に従って懲戒処分を行い、これが無効となったとしても、企業の評判を大きく損ねるものではないようにも思われる。むしろ、セクハラに対する厳しい姿勢を打ち出し従業員を守る会社として従業員の信頼と安心感を得られる可能性もある。よって、(明らかに重すぎる処分を科すなどする場合はともかくとして、)懲戒処分が無効となるリスクや上記効果などを踏まえて慎重に判断したうえで裁判例の相場を超える(ようにも思われる)方針を打ち出すことは、企業のビジネス判断として尊重されるべきではないかと思われる。 (了)

#No. 555(掲載号)
#柳田 忍
2024/02/08

〈Q&A〉税理士のための成年後見実務 【第3回】「成年後見人になったら最初にすべきこと」

〈Q&A〉 税理士のための成年後見実務 【第3回】 「成年後見人になったら最初にすべきこと」   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   【Q】 成年後見人に選任されました。まず何からすればよいでしょうか。 【A】 成年後見人に選任されたら、さっそく仕事を開始することになります。成年後見人の仕事は大きく分けて「財産管理」業務と「身上保護」業務があります。 これらの業務を行うために最初にすべきこととしては、「本人との面談」、「財産や収支の把握」、「通帳等の引継ぎ」、「金融機関や役所での手続」があります。また、成年後見人を監督する家庭裁判所にも「初回報告」を行う必要があります。 ● ● ● ● 解 説 ● ● ● ● 成年後見人に選任する旨の審判書を受け取ってから2週間経過したら審判が確定し、さっそく仕事を開始することになります。「さて、何から手をつければいいか」と思うかもしれませんが、「そもそも成年後見人の仕事とは何か」ということを考えるとみえてきます。 成年後見人の仕事には大きく分けて、「財産管理」業務と「身上保護」業務があります。財産管理業務は、本人の財産を把握したうえで、収入と支出のバランスをチェックし、無理のない生活が送れるように本人の財産を管理していく業務です。身上保護業務とは本人のために必要となる医療や介護サービスの契約を行って、本人が安心して日常生活を送れるようにしていく業務です。これらの仕事をしていくためには、まず本人の生活状況を知る必要があります。そのためまず行うのは本人との面談になります。   1 本人との面談 顧問先からの依頼などにより税理士が成年後見人に就任するケースでは、本人と面識があるケースが多いかもしれません。その場合でもより踏み込んだ生活状況をヒアリングするため、まずは本人と面談をするとよいでしょう。本人の意思能力の状況によってはコミュニケーションをとることが難しいこともあるかもしれませんが、親族やケアマネジャー等に同席をしてもらい、生活状況や財産や収支の状況、親族関係や交友関係などをヒアリングするようにします。   2 財産や収支の把握、通帳等の引継ぎ 本人との面談時には、財産や収支の状況をヒアリングするとともに、通帳等の本人の財産の管理に必要な資料等を預かるようにします。通帳の入出金の履歴をみることで、収支のバランスをみることができます。このあたりは税理士の得意分野といえるでしょう。なお、資料を預かるにあたっては預り証を発行するようにします。後からトラブルを避けることにもつながります。 【預かるべき主な資料等】   3 金融機関や役所での手続 本人の財産を成年後見人が管理していくために、本人の口座がある金融機関や役所に対して成年後見人就任届出を行います。銀行口座であれば、本人名義から「山田太郎 成年後見人 佐藤太郎」というように、成年後見人が管理していることがわかる名義に変更するか、あるいは同様の名義で新規に口座を作ることになります。また不要な金融機関の口座がある場合には、解約をすることもあります。 役所での手続としては、市役所の介護保険、国民健康保険、固定資産税の担当部署等に必要な届出を行います。これにより各種の通知が成年後見人に送られることになります。また年金関係については年金事務所に対して届出を行うことになります。税理士が成年後見人に就任するケースでは、本人が確定申告の必要な方である場合も多いと思いますが、税務署に対して「納税管理人の届出」をしておくと、必要な書類を成年後見人に送ってもらうことができます。 届出に必要な書類については、届出先ごとに個別に調べる必要がありますが、共通して必要になるのが「成年後見人の登記事項証明書」です。成年後見人の登記事項証明書は、成年被後見人と成年後見人の住所・氏名等が記載されており、成年後見人の身分を証明する書類になります。各地の法務局の本局で取得することができます。   4 家庭裁判所への初回報告 成年後見人として仕事を開始してから、おおむね1か月以内に家庭裁判所に対して初回報告として、所定の報告書や、財産目録、収支予定表を提出することになります。もし、就任時点で収支が赤字になるようであれば、不必要な支出を削るなどの方針を明らかにする必要があります。報告にあたっては、財産の状況が分かるように通帳や有価証券に関する資料をコピーして提出する必要があります。財産が多い方の場合は、なかなか骨の折れる作業です。 (了)

#No. 555(掲載号)
#北詰 健太郎
2024/02/08

《速報解説》 国税庁特設サイトで「令和6年分所得税の定額減税Q&A」が公表される~全59問。今後の更新にも留意~

 《速報解説》 国税庁特設サイトで「令和6年分所得税の定額減税Q&A」が公表される ~全59問。今後の更新にも留意~   Profession Journal 編集部   既報のとおり、令和6年度大綱で示された所得税の定額減税制度については、令和6年1月22日に財務省・国税庁から源泉徴収義務者に向けた実施要領案が公表された後、同月30日には定額減税特設サイトが開設され、サイト内においてパンフレット(給与等の源泉徴収義務者に係る令和6年分所得税の定額減税のしかた)も掲載されたところだ。 さらにこのたび2月5日付けで、より細かい解説が収録された「令和6年分所得税の定額減税Q&A」(以下「定額減税Q&A」という)が特設サイト内に公表された。 定額減税Q&Aは、本制度の概要や「同一生計配偶者」等の用語の定義に加え、令和6年1月1日時点で扶養親族であった親族が同年5月に死亡した場合に月次減税額の計算に含めるか(問6-11)など、今後実務において想定しうる具体的なケースについて、全59の問答で明らかにしている。 他に、問2-2では、定額減税の適用には所得制限があるが、合計所得金額が1,805万円を超える人についても主たる給与の支払者のもとで定額減税の適用を受けるのか、という問いに対し、合計所得金額が1,805万円を超える人であっても、主たる給与の支払者のもとでは、令和6年6月以後の各月(日々)において、給与等に係る控除前税額から行う控除(月次減税)の適用を受けることになるとしている。 一方で、合計所得金額が1,805万円を超える人については、年末調整の際に年調所得税額から行う控除(年調減税)の適用が受けられないので、年末調整の際にそれまで控除した額の精算を行うことになる。ただし、主たる給与の支払者からの給与収入が2,000万円を超える人については年末調整の対象とならないため、その人は確定申告で最終的な年間の所得税額と定額減税額との精算を行うことを示している。 また、問2-1では、定額減税の適用対象者について次のようにまとめられているので、まずは対象者の洗い出しに向け、あらためて確認しておきたい。 なお、所得税の定額減税(月次減税)については本年6月1日以後最初に支払を受ける給与等(賞与含む)に係る源泉徴収時から実施されるため、実施までに事業者等からの問い合わせを受け情報が更新(問答の追加等)される可能性もあるため、最新情報を確認するよう留意されたい。 最後に、本減税措置の根拠については、令和6年度税制改正関連法案が2月2日に通常国会へ提出されており、租税特別措置法の第2章第5節の2(第41条の3の3~3の10)として規定されている。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#Profession Journal 編集部
2024/02/06

プロフェッションジャーナル No.554が公開されました!~今週のお薦め記事~

2024年2月1日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.554を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2024/02/01

monthly TAX views -No.132-「暗雲垂れ込めるデジタル税制」

monthly TAX views -No.132- 「暗雲垂れ込めるデジタル税制」   東京財団政策研究所研究主幹 森信 茂樹   OECD/G20で進めてきたデジタル税制の議論が、ここにきて大きな転機を迎えている。このままいくと、せっかくの合意が実行に移されず、デジタル経済が混乱したり、米国と欧州とを主戦場とした貿易戦争に発展する可能性がある。筆者が得ている情報の範囲で現状を述べてみたい。 *  *  * 問題が生じているのは、OECD/G20の主導するBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの第1の柱(ピラーワン)と呼ばれる合意である。周知のように、物理的拠点(PE)がなくても市場国側で課税できる新たな国際課税ルールが創設され、売上が200億ユーロ(約3兆円)超かつ利益率が10%超の多国籍企業を対象に、利益率10%を上回る超過利益の25%を売上に応じて市場国に配分することとされた。当初、2023年中の多国間条約(MLC)の署名と2025年中の条約発効が目標とされた。 しかし、その後昨年12月に、OECDから「2024年3月末までにMLCの条文を確定し、2024年6月末までに署名式を開催することを目指す」という声明が発表され、目標が半年延長された。 この背景には、米国とグローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国の動向がある。米国は伝統的に国内法を縛る国際条約の締結に消極的という議会の事情がある。米国が参加しなければ条約は発効しない。またグローバルサウスにとっては、この合意では実入り(実際に入ってくる税収)が少ないという不満がある。 筆者が懸念するのは、この合意が遅れることによって、欧州諸国やインドなどで導入されているデジタル・サービス・タックス(以下、DST)が復活、恒久化される可能性があることである。 DSTについては、すでに導入している国は条約が締結されれば廃止すること、導入していない国は2024年末まで導入しないことが合意されている。 現在フランス、英国、イタリア、オーストリア、スペイン、インド、トルコの7ヶ国がDSTを導入している。フランスでは、対象ビジネスの域内売上に3%課税するデジタル広告税が2020年から導入され、英国では対象ビジネスの域内売上への2%課税が2020年末から再開している。 これらの7ヶ国は米国との間で、米国が制裁関税の発動をしないかわりに、条約が発効するまでDSTを第1の柱による税額と同水準にとどめること、第1の柱で配分されるべき税収を超えた部分の税額は条約発効後に税額控除できるという合意を行っている。 デジタルサービスに売上税をかけるDSTは、法人税との二重課税を生じさせる。各国がばらばらと導入すればデジタルビジネスは混乱するなど多くの問題を抱えている。GAFAは価格支配力が強いので、容易にDSTを顧客に転嫁できることから、結局消費者が負担する消費増税になるという見方もある。 加えて、米国との間で相殺関税の発動などの貿易戦争を招きかねない。すでにトランプ政権時代に、米国がフランスのチーズなどの関税を引き上げるとしてけん制した過去がある。 このように、長年の議論を経てせっかく合意にこぎつけた第1の柱であるが、今後については極めて不透明な状況にある。トランプ政権が誕生すればさらに困難性は増す。 OECDで、二重課税の調整のできる形でのDST(その場合、もはや売上税とは言えないが)の検討を始めるべきだという意見も出始めている。今年前半の各国の動向に注目したい。 (了)

#No. 554(掲載号)
#森信 茂樹
2024/02/01
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