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〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第77話】「居住用財産の3,000万円特別控除」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第77話】 「居住用財産の3,000万円特別控除」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   浅田調査官は、昨年、署内で、令和5年分所得税確定申告の注意事項として「誤りやすい事例集」が渡され、それを熱心に読んでいる。 「・・・これは・・・資産税の事例だけれど、間違いやすいなあ・・・」 浅田調査官は、1人で苦笑している。 「何を読んで、ニヤニヤしているの?」 いつの間にか、傍らに中尾統括官が立っている。 「・・・」 浅田調査官は、驚いて顔を上げる。 「これって・・・回答・・・わかりますか?」 浅田調査官は、誤りやすい事例を見せる。 中尾統括官は、事例を読むと、即座に答える。 「これは・・・特例の適用はできないだろう・・・マンションを売却するまでに他人に貸しているのだから・・・」 中尾統括官の答えを聞いて、浅田調査官は微笑む。 「統括官もそう思うでしょ」 中尾統括官は、浅田調査官の表情を見て、「違うの?」と尋ねる。 「ええ、この事例については、資産税部門の人も間違えると聞いていますから、所得税の人は当然でしょう」 中尾統括官は、プライドを傷つけられ、憮然とする。 「・・・居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例の適用条文は、措置法35条だろう」 そう言うと、中尾統括官は、机の上に置かれていた税務六法を掴み、措置法35条1項を開く。 「そして、同条2項2号で、次のように規定している」 「・・・すなわち、居住の用に供していた家屋を、居住の用に供さなくなった日以降3年を経過した日の属する年の12月31日までに譲渡した場合は、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例を適用することができるという規定だろう」 中尾統括官は、条文を読みながら、浅田調査官を見る。 「ええ、そうです・・・そして、この場合において、譲渡した家屋が居住用の家屋に該当するかどうかは、その家屋を居住の用に供さなくなった時点で判定します」 浅田調査官が答える。 「・・・その判定時期は・・・措置法の通達に・・・次のように書いています」 そう言うと、浅田調査官は、措置法通達31の3-9を読み上げる。 そして、浅田調査官は、罫紙に図を描く。 「そうか・・・判定の時期が居住の用に供さなくなった時点だから・・・その後に他人に貸してもかまわないということか・・・」 中尾統括官は、浅田調査官の描いた図を見ながら、呟く。 「・・・しかし、居住用土地等のみの場合は、貸し付けていたら駄目と書いている・・・」 中尾統括官は、措置法通達35-2を開く。 「・・・ということは、居住用土地等のみの場合は、貸し付けしてはいけないということか・・・」 中尾統括官は、真剣な顔で、通達を読み直す。 (つづく)

#No. 554(掲載号)
#八ッ尾 順一
2024/02/01

《速報解説》 令和6年能登半島地震の損失に係る雑損控除等、令和5年分の所得税確定申告で適用可とする特例法案の概要が明らかに~自民・公明両党、今国会での早期成立を目指す~

 《速報解説》 令和6年能登半島地震の損失に係る雑損控除等、 令和5年分の所得税確定申告で適用可とする特例法案の概要が明らかに ~自民・公明両党、今国会での早期成立を目指す~   Profession Journal編集部   令和6年1月31日(水)、自由民主党・公明党は、令和6年能登半島地震における被災者の所得控除を前倒しで適用可能とする特例法案の早期成立を目指すとしたうえで、同法案の概要を公表した。 令和6年能登半島地震については同年1月1日に発生したため、本来であれば雑損控除や災害減免法特例等の措置は令和6年分の確定申告での適用対象となるが、臨時・異例の対応として、今般の災害で生じた損失について、令和5年分の確定申告における雑損控除等の適用対象とされる。 特別措置の概要については以下のとおり。 (了)

#Profession Journal 編集部
2024/01/31

《速報解説》 総務省、「個人住民税の定額減税(案)に係るQ&A集」を公表~控除対象配偶者以外の同一生計配偶者に係る定額減税を令和7年度分からとする詳細示す~

 《速報解説》 総務省、「個人住民税の定額減税(案)に係るQ&A集」を公表 ~控除対象配偶者以外の同一生計配偶者に係る定額減税を令和7年度分からとする詳細示す~   Profession Journal 編集部   既報のとおり令和6年1月22日に所得税の定額減税については、源泉徴収義務者に向けた実施要領案が公表されたところ、同月29日には、総務省ホームページにおいて「個人住民税の定額減税(案)に係るQ&A集(第1版)」が公表された。 これは、個人住民税における定額減税の経緯・概要や控除方法、徴収方法等についてQ&A形式で詳細を明らかにするもの。 令和6年度税制改正大綱においては、原則、令和6年度分の個人住民税につき定額減税を行い、例外として控除対象配偶者以外の同一生計配偶者に係る定額減税については令和7年度分からとすることが示されていたが、その理由等についても下記のとおり説明されている。 (了)

#Profession Journal 編集部
2024/01/30

《速報解説》 国税庁、インボイス制度に関して「多く寄せられるご質問」を更新~令和5年10月から課税事業者となった場合の令和7年における基準期間の取扱いなど4問追加~

《速報解説》 国税庁、インボイス制度に関して「多く寄せられるご質問」を更新 ~令和5年10月から課税事業者となった場合の 令和7年における基準期間の取扱いなど4問追加~   Profession Journal編集部   インボイス制度に関して「多く寄せられるご質問」は、既報のとおり令和5年11月13日に全13問で国税庁ホームページにて公表され、その後12月13日には設問が5問追加されたところ、本日(令和6年1月26日)付で新たに4問が追加された。 今回新たに公表されたのは次の4問。 このうち問㉒では、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者となった個人事業者(令和5年10月1日より前は免税事業者)につき、令和7年分の申告における基準期間(令和5年分)の課税売上高は、免税事業者であった期間(令和5年1月から9月まで)の金額を含むか否かについて取り上げている。 これに対する回答として、基準期間における課税売上高(税抜)は、個人事業者が免税事業者であった期間(令和5年1月から9月)の課税売上高を含む金額で計算することを明らかにしたうえで、免税事業者であった期間に係る課税売上高について税抜処理は行わず、その売上げ(非課税売上げ等を除く)がそのまま課税売上高となることを計算例とともに示している。 なお、インボイス制度開始後、最初の消費税確定申告時期が近いこともあってか、国税庁は同日、「2割特例」に関する情報をまとめた特設ページも公表している。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#Profession Journal 編集部
2024/01/26

《速報解説》 「倫理規則」及び「倫理規則に関するQ&A」の改正案がJICPAより公表される~上場事業体及び社会的影響度の高い事業体の定義に関する規定等を改正~

《速報解説》 「倫理規則」及び「倫理規則に関するQ&A」の改正案がJICPAより公表される ~上場事業体及び社会的影響度の高い事業体の定義に関する規定等を改正~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2024年1月24日、日本公認会計士協会は、「倫理規則」及び「倫理規則実務ガイダンス第1号「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」」の改正に関する公開草案を公表し、意見募集を行っている。 これは、国際会計士倫理基準審議会(The International Ethics Standards Board for Accountants: IESBA)の倫理規程の改訂等を踏まえた対応である。 倫理規則に関しては、「公開草案に対する質問事項」がある。 意見募集期間は、2024年3月8日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正内容 1 上場事業体及び社会的影響度の高い事業体の定義に関する規定 会計事務所等は、本パートを適用する上で、事業体が次の類型のいずれかに該当する場合には、その事業体を社会的影響度の高い事業体として取り扱わなければならない(倫理規則R400.22項)。 社会的影響度の高い事業体に該当する場合、例えば、報酬依存度(特定の社会的影響度の高い事業体に対する報酬依存度が5年連続して15%を超える場合には、原則として監査人を辞任する)に関する規定の遵守が求められる。 2 業務チームの定義及びグループ監査業務に関する規定 用語集の「監査業務チーム(Audit team)」について、例えば、「監査業務の結果に直接的に影響を及ぼすことができる、会計事務所等内の、又は会計事務所等と契約しているその他の全ての者」が対象となるように規定する。 用語集において、グループ監査業務(Group audit)に関連する定義を設ける。また、セクション405「グループ監査業務」を新設する。 3 テクノロジーに関する規定 例えば、「テクノロジーの利用に伴う阻害要因の識別」などが規定されている。 倫理規則における「テクノロジー」の範囲は広範であり、将来的な未知のテクノロジーを含むあらゆるテクノロジーを包含することを意図しているとのことである。 4 「守秘義務の原則」の用語変更 現行の倫理規則では、「守秘義務」の用語を用いて規定しているが、それを「秘密保持」に変更する提案である。「守秘義務の原則」は「秘密保持の原則」に変更される。 今回の変更は、情報の秘密保持がいっそう重要となっていることなどの趣旨について会員の理解を促進するために用語の表現を修正するものであり、従来の考え方を変えるものではない。 現行の倫理上の基本原則では、「守秘義務」は業務上知り得た秘密を守ることとされているが、「秘密保持」は業務上知り得た情報の秘密を守ることとする。 用語集は、秘密情報(Confidential information)について、形式や媒体を問わず(文書、電子、映像、口頭を含む)、公に入手可能となっていない情報、データ又はその他の文書とし、業務上知り得た秘密情報とは、会員が、会計事務所等又は所属する組織から知り得た秘密情報並びに専門業務を行うことにより知り得た依頼人及びその他の事業体の秘密情報をいうとしている。 5 「倫理規則に関するQ&A」(倫理規則実務ガイダンス第1号)の改正 倫理規則の改正案を踏まえ、「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」(倫理規則実務ガイダンス第1号)についても所要の改正を行う。 例えば、「守秘義務」を「秘密保持」に変更することなどである。   Ⅲ 適用時期等 2025年4月1日から適用する。早期適用できる。 (了)

#阿部 光成
2024/01/26

《速報解説》 ASBJが「グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)」を公表~IIRに係る取扱いの見直し予定を踏まえ、2024年3月末までに実務対応報告の改正を想定~

《速報解説》 ASBJが「グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)」を公表 ~IIRに係る取扱いの見直し予定を踏まえ、2024年3月末までに実務対応報告の改正を想定~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2024年1月24日、企業会計基準委員会は、「グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)」(実務対応報告公開草案第68号(実務対応報告第44号の改正案))を公表し、意見募集を行っている。 グローバル・ミニマム課税の所得合算ルール(IIR)については2023年3月28日に成立した「所得税法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第3号)に規定されており、これに対応し、「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い」(実務対応報告第44号)が公表されているところである。 グローバル・ミニマム課税のルールには、所得合算ルール(Income Inclusion Rule(IIR))のほかに、軽課税所得ルール(Undertaxed Profits Rule(UTPR))及び国内ミニマム課税(Qualified Domestic Minimum Top-up Tax(QDMTT))があり、公開草案は、今後法制化された場合のこれらの取扱いも含めたグローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の取扱いを定めるものである。 なお、令和6年度の税制改正において所得合算ルール(IIR)に係る取扱いの見直しが行われる予定であることを踏まえて、2024年3月31日までに実務対応報告の改正を想定しているとのことである。 意見募集期間は2024年2月26日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 公開草案は、当面の間、必要と考えられる特例的な取扱いを継続することを提案している。 会計処理について、現行の「改正法人税法の成立日以後に終了する」と「(四半期連結決算及び四半期決算を含む。)」の文言を削除し、次のように規定する(3項、3-2項)。   Ⅲ 適用時期等 改正後の実務対応報告は、公表日以後適用することを提案している。 (了)

#阿部 光成
2024/01/26

プロフェッションジャーナル No.553が公開されました!~今週のお薦め記事~

2024年1月25日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.553を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2024/01/25

谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第34回】「過少申告加算税の減免に係る「正当な理由」の意義と類型」-過少申告加算税減免の実質的正当根拠理由の検討-

谷口教授と学ぶ 税法基本判例 【第34回】 「過少申告加算税の減免に係る「正当な理由」の意義と類型」 -過少申告加算税減免の実質的正当根拠理由の検討-   大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 前々回、前回と2回にわたって重加算税の賦課要件に関する判例を検討したが、今回は、それらと並ぶ加算税に関する重要論点として、過少申告加算税の減免に係る「正当な理由」要件(税通65条5項1号)の解釈適用の問題を検討する(なお、無申告加算税や不納付加算税についても同様の問題(税通66条1項柱書但書・7項、67条1項但書)があるが、以下では過少申告加算税について検討する)。 この問題については、従来から、「正当な理由」の意義をめぐって「(イ)不可抗力説」、「(ロ)不当・苛酷事情説」、「(ハ)帰責事由不存在説」、「(ニ)故意・過失不存在説」、「(ホ)故意・過失必要立証説」、「(ヘ)比較衡量説」等さまざまな見解が唱えられてきた(石倉文雄「過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税-制度の目的・内容、学説・判例とその検討-」日税研論集13号(1990年)23頁、44頁以下参照)。 また、「正当な理由」の類型については、「① 税法解釈の疑義に関するもの」、「② 事実関係の不知・誤認に関するもの」及び「③ 税務官庁の対応に関するもの」に大別され(品川芳宣「税務官庁の対応に起因する『正当な理由』と最近の最高裁判決の問題点」石島弘ほか編『山田二郎先生喜寿記念 納税者保護と法の支配』(信山社・2007年)221頁、226-227頁参照。以下「類型①」、「類型②」及び「類型③」という)、類型③は更に「イ 税務官庁の言動と信義則」、「ロ 税務職員の誤指導」、「ハ 税務官庁の不作為」、「ニ 税務官庁の見解の変更・通達の記載内容」、「ホ 公刊物における担当職員の見解」及び「へ その他」に区分されることがある(品川芳宣『附帯税の事例研究』(財経詳報社・2012年)111-148頁参照。以下「類型③イ」、「類型③ロ」等のように表記する)。 以上のような議論状況を踏まえた上で、以下では、過少申告加算税の減免に係る「正当な理由」に関する判例を検討することにする。   Ⅱ 「正当な理由」の意義に関する確立した判例 従来、課税実務や裁判例の立場について、次のような分析・整理がみられた(石倉・前掲論文32-33頁。傍点原文)。 このような状況の下、最高裁もまだ「『正当な理由』の意義についての一般論を判示してはいなかった」(川神裕「判解」最判解民事篇(平成18年度(上))579頁、604頁)が、その後、税理士虚偽申告「税理士任せ」事件・最判平成18年4月20日民集60巻4号1611頁(以下「平成18年最判A」という)は、最高裁として初めて、下記の一般論を判示した(下線筆者)。 この一般論は、従来の裁判例の立場(前記の分析・整理にいう「(ロ)不当・苛酷事情説」あるいは判決文の文言に着目して酒井克彦『裁判例からみる加算税』(大蔵財務協会・2022年)65頁以下等にいう「不当・酷説」)を採用したものと解される。その理由は次のとおりである。 平成18年最判Aは、前記の判示では、「正当な理由」を「真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情」として捉えつつ、これに「上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合」という限定を加えているが、そのような限定は、帰責事由不存在説すなわち「加算税制度あるいは『正当な理由』を責任主義....の立場より捉える説」(石倉・前掲論文45頁。傍点原文)によれば、不当・苛酷事情説ないし不当・酷説よりも「『正当な理由』の認められる範囲が広くなる」(同頁)ことを考慮したものと解される。このことは、前記の判示が過少申告加算税について「主観的責任の追及という意味での制裁的な要素は重加算税に比して少ない」として、「その例外としての『正当な理由があると認められる』場合についてはある程度厳格に解するべき」(川神・前掲「判解」604頁。下線筆者)旨を明らかにしていることから、読み取ることができよう。 前記の一般論は、その後、税理士虚偽申告「税務職員共謀加担」事件・最判平成18年4月25日民集60巻4号1728頁(以下「平成18年最判B」という)、外国親会社ストック・オプション[加算税]事件・最判平成18年10月24日民集60巻8号3128頁(以下「平成18年最判C」という)、逆パターン養老保険[医療法人]事件・最判平成24年1月16日判タ1371号125頁(以下「平成24年最判」という)、匿名組合通達改正事件・最判平成27年6月12日民集69巻4号1121頁(以下「平成27年最判」という)、課税仕入れ用途区分[エー・ディー・ワークス]事件・最判令和5年3月6日民集77巻3号440頁(以下「令和5年最判A」という)、課税仕入れ用途区分[ムゲン]事件・最判令和5年3月6日判タ1511号104頁(以下「令和5年最判B」という)等で採用されてきた。ただ、その当てはめの判断は、以下のとおり事案ごとに異なる。 平成18年最判Aは、類型②の事案について、下記の判示(下線筆者)のとおり、納税者側の税理士任せの「落ち度」等を考慮して、「正当な理由」があると認めなかった。 平成18年最判Bは、類型③ヘの事案について、下記の判示(下線筆者)のとおり、脱税に関する税理士・税務職員の共謀加担等を考慮して、「正当な理由」があると認めた。 平成18年最判Cは、類型③ホの事案について、下記の判示(下線筆者)のとおり、公刊物における課税庁の職員の見解等を考慮して、「正当な理由」があると認めた。 平成24年最判は、類型③ホの事案について、下記の判示(下線筆者)のとおり、所得税基本通達34-4の文言や市販の解説書に係る下記の事情のみをもっては、「正当な理由」があると認めなかった。 平成27年最判は、類型③ニの事案について、下記の判示(下線筆者)のとおり、課税庁の公的見解の変更等を考慮して、「正当な理由」があると認めた。 令和5年最判Aは、類型①の事案について、下記の判示(下線筆者)のとおり、課税仕入れの用途区分に関する消費税法の解釈をめぐる客観的事情を考慮して、「正当な理由」があると認めなかった。 令和5年最判Bも、類型①の事案について、令和5年最判Aの上記引用中の破線の下線部に相当する判示において「それ[=平成17年]以前に税務当局が作成した部内資料や税務当局関係者が編者である公刊物」等に言及する以外は、令和5年最判Aと基本的に同じ表現で同じ判断を示したが、いずれにせよ、これによって原審・東京高判令和3年4月21日税資271号順号13551の下記の判断(下線筆者)は否定された。 以上において、「正当な理由」の意義に関する一般論(不当・苛酷事情説ないし不当・酷説)と各事案におけるその当てはめの判断をみてきたが、その判断は、例えば最後に取り上げた令和5年最判Bの判断(令和5年最判Aと基本的に同じ判断)とこれによって否定された原審の判断とを比較してみただけでも、事実関係等に対する微妙な評価を伴うものであることは確かである。そうであるからこそ、税法に基づく法的判断に対して予測可能性・法的安定性を強く要請する租税法律主義の下では、そのような事実評価の基準となる考え方を明らかにしておくことが不可欠である。以下では、その考え方を申告納税制度の趣旨に照らして明らかにしておきたい。   Ⅲ 過少申告加算税制度の仕組み解釈と「正当な理由」の意義 「正当な理由」の意義に関して判例で確立された前記の一般論では、その意義は、過少申告加算税の趣旨に照らして解釈されているが、その解釈に係る論理操作については、過少申告加算税の趣旨と「正当な理由」の意義とを媒介する論理を補って理解する必要があるように思われる。つまり、過少申告加算税の趣旨に関する判示のうち「これによって、当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図る」(太字筆者)という部分から「正当な理由」の意義が明らかにされたものと解されるが、その部分で説示されている趣旨をどのように理解すれば、「正当な理由」があると認められる場合を「真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合」(太字筆者)と解することができるかを更に検討しておく必要があるように思われるのである。 その検討に当たって注目されるのが、山本英幸弁護士の見解である(同「過少申告加算税における『正当な理由』」水野武夫先生古稀記念論文集刊行委員会編『水野武夫先生古稀記念論文集 行政と国民の権利』(法律文化社・2011年)689頁参照)。 その見解は、申告納税制度をその趣旨に照らし「納税者と税務官庁がともに、適正に納税義務が確定するように役割を分担し合う制度」(山本・前掲論文691-692頁)として理解し、その理解に基づき「申告納税制度の下での納税者と税務官庁の責務」(同693頁)の観点から、過少申告加算税の趣旨を下記①のとおり理解し(同694頁)、その趣旨に照らして、「正当な理由」が下記②の場合に認められると解すべきであるとする見解(同696頁。以下「納税者・税務官庁役割分担説」という)である。 納税者・税務官庁役割分担説による過少申告加算税の趣旨理解(上記①)は、判例によるそれ(川神・前掲「判解」604頁も参照)と同じものであると解されるが(山本・前掲論文694-695頁参照)、同説はそのことを前提にして、判例による趣旨理解にいう「当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的不公平」について、「納税者間に不平等があることを意味するのではなく、正義の観点から不相当であるということを意味すると解すべきである」(山本・前掲論文697頁。下線筆者)と説いている(山本・前掲論文697頁の見出し「7」における「客観的不公正」という語は「客観的不公平」を「正義の観点から」表現したものと解される)。同説はこの理解を次のとおり敷衍している(山本697-698頁。下線筆者)。 このようにみてくると、納税者・税務官庁役割分担説は、法解釈方法論の観点からは、過少申告加算税制度の仕組み解釈によって「正当な理由」の意義を明らかにしようとする見解とみることができる。仕組み解釈は、とりわけ行政法規の解釈方法として、「法制度は目的―手段の構造で矛盾なく設計されているという前提にたち、その構造を『法の仕組み』と呼んで着目する解釈方法」(中川丈久「行政法解釈の方法―最高裁判例にみるその動態」山本敬三=中川丈久編『法解釈の方法論-その諸相と展望』(有斐閣・2021年)65頁、99頁)であり、「解釈対象の条文を包みこむ法制度が、この[目的達成手段の]重層構造と並立構造-『法の仕組み』-の中でどのような位置付けをもつかを明らかにする作業を通して、当該法制度の趣旨目的を特定し、それにより条文の意味を解釈することができるのである。」(同100頁)と敷衍されることがある。 つまり、納税者・税務官庁役割分担説は、「正当な理由」を「包みこむ法制度」として過少申告加算税制度と申告納税制度という相互に関連する2つの法制度を前提にして、まず、申告納税制度の趣旨から同制度の納税者・税務官庁役割分担構造を明らかにし、次に、その構造から過少申告加算税制度の趣旨を明らかにした上で、その趣旨に照らして「正当な理由」を解釈する見解とみることができるのである。 なお、納税者・税務官庁役割分担説は、「客観的不公平の実質的な是正」を先にみたように「正義の観念に反するという意味での『不公平』」の是正の意味で理解しながら も、これを「過少申告加算税の果たす機能であって目的ではない」(山本・前掲論文698頁)とした上で、「『客観的不公平の実質的な是正』は解釈要素となり得ないというべきである。」(同699頁)と述べている。ここで「解釈要素」という語がどのような意味で用いられているかは必ずしも明らかでないが、ただ、同説が前記②の解釈を繰り返し述べた後で次のとおり述べていること(山本・前掲論文699-700頁。下線筆者)からすると、「解釈要素となり得ない」ということは、正義の観念による実質的判断を「正当な理由」の解釈において行うことを排除するものではないと解される。 そうすると、納税者・税務官庁役割分担説は、過少申告加算税制度及びその前提となる申告納税制度の「内在的理念」としての正義の観念(井上達夫『法という企て』(東京大学出版会・2003年)3頁[初出・1997年])までをも視野に入れた仕組み解釈によって「正当な理由」の意義を明らかにしようとするものであるといえよう。   Ⅳ おわりに 今回は、過少申告加算税の減免に係る「正当な理由」の意義と類型について、確立された判例における一般論を基軸にして、検討を行った。 「正当な理由」があると認められる場合を過少申告加算税の趣旨に照らして「真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合」と解する一般論それ自体は妥当であるが、問題は、それに具体的事案を当てはめる場合、どのような考え方を基準としてその当てはめの判断を行うかである。この問題については、納税者・税務官庁役割分担説の意味を検討し、その検討を通じて、同説が採用するものと解される仕組み解釈は、過少申告加算税制度及びその前提となる申告納税制度の趣旨や構造だけでなく正義の観念をも視野に入れた仕組み解釈であることを明らかにした。 以上の検討結果を踏まえて、最後に、納税者・税務官庁役割分担説について以下の2つの点を指摘しておきたい。 1つには、納税者・税務官庁役割分担説は、「正当な理由」の意義に関して判例で確立された一般論において、過少加算税の趣旨と「正当な理由」の意義とを媒介する論理として、申告納税制度の趣旨に照らして明らかにした同制度の構造(納税者・税務官庁役割分担構造)を援用する点に、独創性が認められる。ただ、その構造は、筆者が以前から説いてきた「納税者と税務官庁との相互チェック構造」(谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」第5回Ⅱ2、同「国税通則法の構造と手続」第15回1・2参照)と同様の考え方に基づくものであると解される(山本・前掲論文691-692頁、特に注6、注7参照)。 もう1つには、納税者・税務官庁役割分担説は、「正当な理由」の意義に関して、過少申告加算税制度及びその前提となる申告納税制度の趣旨や構造だけでなく正義の観念をも視野に入れた仕組み解釈を行ったものと解されるが、そうすることによって、「正当な理由」の存否の判断を正義の観念に基づいて行う可能性ないし途を拓くものと評価することができよう。その可能性ないし途は、「正当な理由」という不確定法概念の解釈を通じて、過少申告加算税減免の実質的正当根拠理由を法創造根拠理由に準ずるものとして形成するに至るであろう。ここで「法創造根拠理由」というのは、「法創造の拠りどころとなる法の原理・原則、特別の事情等の個別的救済理由の総称」(拙著『税法創造論』(清文社・2022年)132頁脚注(57))である。 (了)

#No. 553(掲載号)
#谷口 勢津夫
2024/01/25

学会(学術団体)の税務Q&A 【第1回】「セミナー受講料のインボイス対応」

  学会(学術団体)の税務Q&A 【第1回】 「セミナー受講料のインボイス対応」   公認会計士・税理士 岡部 正義   ◆連載開始にあたって◆ 学会には、学会特有の取引があるが、学会自体は、営利法人と比較して事例が少ないため、当該特有の取引に関して、税務上の取扱いが明示されているケースはあまりない。そのため、学会の税務実務においては、学会特有の取引に関して、法令・通達をどのように当てはめて考えるべきなのか判断に迷うケースが多い。 よって、当連載においては、学会特有の取引に関する税務上の論点について、具体的な事例を用いたQ&A形式で解説するものとする。なお、当連載においては、一定の事例を想定して解説しているが、同じような論点でも、実際の事例では、学会ごとに状況が異なるため、文中、意見に関する部分は私見であることを申し添える。 *  *  * ▲▼▲[解説]▲▼▲ 1 インボイスの交付義務について 適格請求書発行事業者は、インボイスを交付する義務があるが、インボイスの交付義務とは、他の課税事業者から交付を求められたときに交付する義務であり(消法57の4①)、課税事業者以外の者に対してインボイスを交付する義務はない。そのため、事業者でない個人や免税事業者に対しては、インボイスを交付する義務はない。 学会のセミナーに参加する受講者は、個人として受講しているケースが多く、そもそも事業者ではないため、インボイスを必要としていないケースも多い。他方で、個人としての受講ではなく、所属する組織の一員として受講し、受講料も所属する組織が負担するような場合、インボイスを必要としている可能性もある。 そのため、受講者の大部分がインボイスを求めないと考えられるようなケースにおいては、求められた場合のみインボイスを交付する対応が考えられるが、求められた都度、交付する方が、かえって事務負担がかかる場合は、一律にインボイスを交付することになると考える。   2 セミナーにおける適格簡易請求書の交付の可否 インボイスには、適格請求書と適格簡易請求書があるが、不特定かつ多数の者を対象とした事業の場合は、適格簡易請求書を交付することが可能である(消法57の4②、消令70の11)。そして、不特定かつ多数の者を対象とした事業に該当するのか否かは、個々の事業の性質により判断することになる。 学会が開催するセミナーに関しては、受講人数制限の関係上、事前申込を前提として申込の際に氏名を確認しているような場合が多い。 このような場合、相手方の氏名を確認しているため、不特定かつ多数の者を対象とした事業に該当するのか否かという点が問題となるが、「事業の性質上、事業者がその取引において、氏名等を確認するものであったとしても、相手方を問わず広く一般を対象に資産の譲渡等を行っている事業(取引の相手方について資産の譲渡等を行うごとに特定することを必要とし、取引の相手方ごとに個別に行われる取引であることが常態である事業を除きます。)」であれば、不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業に該当するとされている(インボイスQ&A「適格簡易請求書の交付ができる事業」)。 そのため、仮に相手方の氏名の確認をしていたとしても、相手方の特定を必要としていないような場合は、不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業に該当し、適格簡易請求書を交付することが可能である。 セミナーの受講料に関して、受講人数制限の関係上、事前申込を前提とし、受講者の氏名を確認していたとしても、セミナーの開催にあたって受講者個人の特定を必要としているわけではないと考えられる。そのため、セミナーの受講料に関しては、たとえ氏名を確認していたとしても、適格簡易請求書を交付することが可能である(国税庁:お問合せの多いご質問「適格簡易請求書を交付することができる事業の具体例」)。   3 複数の書類とインボイスの扱い インボイスには、必要な記載事項が定められているが、一の書類で全ての記載事項を満たす必要はなく、相互の関連が明確な複数の書類全体で記載事項を満たしていれば、これら複数の書類を合わせてインボイスとして扱うことが可能となっている(消基通1-8-1)。 たとえば、家賃の支払に関するインボイスに関して、課税資産の譲渡等の年月日以外の事項が記載された契約書とともに通帳(課税資産の譲渡等の年月日の事実を示すもの)を併せて保存すれば、仕入税額控除の要件を満たすことになっている(インボイスQ&A「口座振替・口座振込による家賃の支払」)。 これをセミナーに置き換えて考えた場合、適格簡易請求書の記載事項をセミナーの開催要項(ホームページ等に公開する開催要項)に記載しておき、当該開催要項と金融機関の振込明細(利用明細)を保存しておければ、家賃に関する複数の書類の扱いと同様に、インボイスとして扱うことが可能か否かという点が問題となる。なぜなら、適格簡易請求書の場合、相手方の氏名が不要であるため、開催要項上、適格簡易請求書の記載事項をすべて記載することが可能だからである。 〈適格簡易請求書の記載事項を記載した開催要項(ホームページに公開)〉 一見すると、セミナーの開催要項上で適格簡易請求書の記載事項を満たしていれば、家賃の場合における契約書と同様に考えることができるようにも思えるが、同じではないと考える。 なぜなら、家賃の場合における契約書は、契約当事者間で取り交わすものであり、適格請求書発行事業者が課税資産の譲渡等の相手方に対して交付したものが明らかな書類であるが、単にホームページで公開している開催要項は、課税資産の譲渡等の相手方に対して交付した書類とはいえないからである。 そのため、セミナーに関して、たとえ開催要項上において適格簡易請求書の記載事項をすべて記載していたとしても、当該開催要項はインボイスには該当しないと考えられるため、必要な場合は、改めてインボイスを交付する必要があると考える。   4 実務上の対応 従来は、3万円未満であれば、請求書等がなくても仕入税額控除を行うことができたが、インボイス制度においては、一定規模以下の事業者における少額特例の場合を除き、原則としてインボイスが必要となる。そのため、従来であれば、領収書の交付を求められなかったような場合であっても、インボイス制度開始後は、領収書の交付を求められる可能性がある。 そのため、仮にインボイスの交付を求められた場合は、「金融機関の振込明細(利用明細)をもって領収書に代えさせてもらいます」といった対応はできず、学会としてインボイスを交付する必要があるため留意が必要である。 なお、求められた都度交付するのではなく、一律に交付するような方法としては、たとえば、セミナー会場において領収書を交付する方法や、受講修了証と併せて領収書を交付する方法が考えられる。   (了)

#No. 553(掲載号)
#岡部 正義
2024/01/25

〔徹底解説〕東京国税不服審判所令和5年3月23日裁決~事業の移転を伴わない適格合併に対する包括的租税回避防止規定の適用を適法と判断~

〔徹底解説〕 東京国税不服審判所令和5年3月23日裁決 ~事業の移転を伴わない適格合併に対する包括的租税回避防止規定の適用を適法と判断~    公認会計士・税理士 佐藤 信祐   1 事案の概要 本事案は、適格合併により被合併法人の繰越欠損金を請求人(合併法人)に引き継いだうえで、請求人において損金の額に算入したところ、原処分庁から包括的租税回避防止規定(法法132の2)の適用を受けたため、請求人が合理的な事業目的による合併であることから、包括的租税回避防止規定が適用されないものとして、原処分の全部又は一部の取消しを求めた事案である。 本事案の特徴は、組織再編成そのものの事業目的は否定されていないという点である。当初案では、既存する法人の商号を変更し、東北及び中部エリアの事業を統合するスキームであったところ、税金対策のためにスキームが変更されている。そのため、組織再編成そのものの事業目的ではなく、選択されたスキームの事業目的その他の事由が問題になっているのである。 さらに、本事案では2つの合併が行われているが、そのうち1つについては、当初案から分割+合併案にいきなり変わったわけではなく、分割+清算案に変わった後に、分割+合併案に変わっている。分割+清算案から分割+合併案に変わった理由は、分割に係る税制適格要件を満たすためである。分割法人を清算すると完全支配関係継続要件及び支配関係継続要件を満たすことができないが、分割法人が合併により解散する場合には特例が認められている(旧法令4の3⑥⑦参照)という点を利用したものと推定される。   2 当事者の主張 原処分庁は、事業及び従業員の存在しない法人を被合併法人とする適格合併については、事業の移転及び継続という適格合併の実態を備えていないことから、不自然な組織再編成であるとしたのに対し、請求人は、組織再編成の結果、存続させる必要のなくなった法人を合併により消滅させただけなので、不自然ではないものとしている。さらに、請求人は事業目的がある理由としても同様の主張をしていることから、制度趣旨に反するかどうかを争わずに、事業目的があるという点のみを争っているということがいえる。すなわち、TPR事件の判旨が正しかったのかどうかが争点になっていないことから、大阪国税不服審判所令和4年8月19日裁決判例集未登載(大裁(法・諸)令4第5号)とは大きな違いがある。この点については、東京地裁において、新たな争点になったかどうかを確認する必要がある。 当事者の主張において注目すべきは、繰越欠損金を引き継ぐことを目的に組織再編成の手順や方法を変更したことにつき、税負担減少の意図に基づくもので、事業目的その他の事由が認められないと原処分庁が主張しているという点である。すなわち、組織再編成そのものに事業目的があったとしても、選択されたスキームに事業目的その他の事由が認められない場合には、税負担減少のための組織再編成であるという認定を受けることがわかる。   3 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、「本件各合併は、事業を継続する法人とは異なる法人において当該未処理欠損金額のみを引き継ぐものであり、組織再編税制における欠損金額の引継ぎの場面において通常想定されている合併法人への事業の移転及び継続という実質を備えているとはいえず、適格合併において通常想定されていない手順や方法に基づくもので、かつ、実態とは乖離した形式を作出するものであり、不自然なものというべきである。」と判示した。この判示は、TPR事件(東京高判令和元年12月11日TAINSコードZ269-13354)と整合的であり、TPR事件と異なる理由により原処分庁を勝訴させた大阪国税不服審判所裁決令和4年8月19日と大きな違いがある。この点については、東京地裁判決及び大阪地裁判決が公表されることにより明確になっていくことを期待したい。 また、この判示で注目すべきは、「事業を継続する法人とは異なる法人において当該未処理欠損金額のみを引き継ぐものであり」としている点である。すなわち、事業を廃止し、ペーパー会社になった法人を被合併法人とする適格合併を行った場合に同様に取り扱われるべきなのか問題になる。著者の感覚としては、親会社を合併法人とした場合には、清算をした場合と同じ税務上の効果があることから、そもそも法人税の負担を減少させたとはいえないため、租税回避とすべきではないとする税務専門家の見解が多いと感じている。これに対し、兄弟会社を合併法人とした場合には、清算をした場合とは繰越欠損金を引き継ぐ法人が異なることから租税回避とすべきとする見解と、不自然さの程度が低いことから租税回避とすべきではないとする見解とに分かれているという印象を受ける。 さらに、国税不服審判所は、「確かに、・・・・・・のとおり、請求人が■■■を集約するために組織再編成を行っていたことはうかがわれるものの、本件各再編の経緯をみると、■■■については、・・・・・・のとおり、税制対策の観点から、■■■の商号変更・存続ではなく、■■■の新設及び■■■の清算に変更した上で、・・・・・・のとおり、税務上の問題のため、清算から■■■に変更されており、請求人グループの■■■の再編成の必要性から、■■■をすることを検討した形跡は認められない。」と判示している。実務上も、税理士への相談において、組織再編成の全体像を説明することで、事業目的が十分に認められるという回答を得ようとする納税者も少なくない。また、税務調査においても、まずは組織再編成の全体像について質問されるため、そのような説明の仕方に問題はない。しかしながら、全体的に事業目的が認められることはあっても、細部を見ると不自然、不合理な取引が行われることは十分に考えられ、そのような場合には、税負担の減少目的が事業目的よりも上位にあると認定される可能性は否定できない。そのため、組織再編成の全体像だけでなく、それぞれの手続きについて、事業目的その他の事由をそれぞれ説明できるようにしておく必要があるといえる。   4 今後の展望 現在、東京地裁及び大阪地裁において争われている包括的租税回避防止規定に係る事件として、本稿でご紹介した東京国税不服審判所令和5年3月23日裁決のほか、東京国税不服審判所令和2年11月2日裁決TAINSコードF0-2-1034(PGM事件)、大阪国税不服審判所令和4年8月19日裁決が挙げられる。いずれも玉突き型の組織再編成と呼ばれるものであり、事業の移転先と繰越欠損金の引継先が異なるという特徴がある。そして、東京国税不服審判所はいずれもTPR事件の判旨を採用しており、大阪国税不服審判所はTPR事件の判旨を採用していないという違いがある。そのため、今後の裁判の行方次第では、包括的租税回避防止規定における実務上の解釈に大きな影響を与える可能性があるといえる。 そして、本事件では、分割+清算から分割+合併にスキームが変更されている。もし、清算であれば、包括的租税回避防止規定又は同族会社等の行為計算の否認(法法132)が適用される可能性があったのかどうかについても、多くの税務専門家が疑問に思っているところである。そもそも、本事件では、スキーム変更前に清算を予定していたことから、それが合併に変わったとしても、繰越欠損金の引継ぎという点だけで考えると法人税の負担は減少していない。そうなると、もし、清算であれば租税回避に該当しないということになると、合併であっても租税回避には該当させるべきではないことから、本事案に対しては包括的租税回避防止規定を適用すべきではないとする見解も十分に考えられるため、東京地裁及び東京高裁において、その点についての判断が下されることが期待される。 さらに、TPR事件に類似した事件が3件も同時に地方裁判所に提訴されるということは、TPR事件の判旨に対する疑問を納税者が持っているからであると考えられる。そもそも条文からも、公表されている立案当時の資料からも、完全支配関係内の組織再編成であっても事業の移転及び継続を想定していたということを読み取ることは困難である。言うまでもないことであるが、制度趣旨とは、どのような理由でそれぞれの条文が作られたのかということを示すものであり、過度な租税回避を防止するためだけに持ち出されるものではない。私見ではあるが、TPR事件の判旨を維持するよりは、大阪国税不服審判所令和4年8月19日裁決を採用したほうが、税務専門家の納得度は高いように思われる。 このような不明瞭な状態になっていることから、これら3つの事件に対する控訴審判決が下された後に、税制改正の可能性があると考えている。そもそも、法人税法57条2項において、「前項の内国法人を合併法人とする適格合併(事業の移転及び継続を伴うものとして政令で定めるものに限る。)が行われた場合又は当該内国法人との間に完全支配関係(当該内国法人による完全支配関係又は第二条第十二号の七の六(定義)に規定する相互の関係に限る。)がある他の内国法人で当該内国法人が発行済株式若しくは出資の全部若しくは一部を有するものの残余財産が確定した場合(下線部著者加筆)」とする税制改正を行ったうえで、法人税法施行令で具体的な要件を定めれば、事業の移転及び継続を伴わない適格合併における繰越欠損金の引継ぎを否定することができる。そのため、上記3つの裁決例については、本来であれば、包括的租税回避防止規定の適用ではなく、立法的な解決が図られる事件であったということがいえる。   5 結び このように、東京国税不服審判所と大阪国税不服審判所が異なる判断を下していることから、第一審及び控訴審において、これら3つの事件に対してどのような判断が下されるのかという点は、多くの税務専門家が興味を持たれているところであると考えられる。 ただし、これらの事件の第一審判決及び控訴審判決が公表されるまでの間は、事業の移転及び継続を伴わない適格合併により繰越欠損金を引き継ぐことについては、税負担の減少目的が主目的であるということになると、包括的租税回避防止規定の適用可能性があるものとして対応せざるを得ない。 さらに、別の記事(〔徹底解説〕大阪国税不服審判所令和4年8月19日裁決)でも解説したが、合併ではなく、清算(残余財産の確定)により繰越欠損金を引き継いだ場合にも、包括的租税回避防止規定又は同族会社等の行為計算の否認が適用されるかどうかが議論になり得ると考えられる。この点については、今後、裁判例の公表がされた時点で改めて検討したい。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 553(掲載号)
#佐藤 信祐
2024/01/25
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