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減損会計を学ぶ 【第23回】「減損処理後の会計処理」

減損会計を学ぶ 【第23回】 「減損処理後の会計処理」   公認会計士 阿部 光成   減損会計の適用については、固定資産の帳簿価額を減額し、減損損失を計上すれば終了というわけではない。 減損処理後も、引き続き、固定資産を使用し続けることがあるからである。 本稿では、減損処理後の会計処理について解説する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 減価償却の実施 1 減損処理後の減価償却 減損処理後も、引き続き、固定資産を使用し続けることがある。 「固定資産の減損に係る会計基準」では、減損処理を行った資産については、減損損失を控除した帳簿価額に基づき減価償却を行うことを規定している(三、1)。 「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第6号。以下「減損適用指針」という)は、減損損失を控除した帳簿価額から残存価額を控除した金額を、企業が採用している減価償却の方法に従って、規則的、合理的に配分すると規定し、減価償却後の未償却残高が貸借対照表価額となると規定している(減損適用指針55項、134項)。 2 残存価額の算定 残存価額の算定に際しては、次のことに注意する(減損適用指針135項)。 3 期中の減損処理 減損会計は、固定資産について、直接的に貸借対照表価額を求めるものではないと考えられており、期末だけでなく、期中において減損処理が行われる場合がある(減損適用指針134項)。   Ⅱ 処分予定の固定資産 1 減損処理後すぐに処分するケース 減損処理の対象となった固定資産について、減損処理後、すぐに処分する予定のものがある。 このような処分予定の固定資産については、通常、回収可能価額は、売却による回収額である正味売却価額となるため、減損処理後の帳簿価額と残存価額は一致していると考えられる(減損適用指針137項)。 2 減損処理後、一定期間経過後に処分するケース 処分予定の固定資産であったとしても、減損処理後、一定期間経過後に処分する予定のものがある。 この場合には、当該一定期間において固定資産として使用されることから、残存価額まで減価償却を行うこととなる(減損適用指針137項)。 3 保有目的を変更して固定資産から流動資産に振り替えるケース 従来、固定資産として保有していたものについて、保有目的を変更し、流動資産に振り替えることがある。 減損適用指針は、従来、自社使用又は賃貸事業用目的のために保有していた固定資産を、減損処理後、合理的な理由に基づき、販売目的で保有することに変更した場合には、当該固定資産の帳簿価額を固定資産から流動資産に振り替えることとなると規定している(減損適用指針136項)。 保有目的の変更が、財務諸表に重要な影響を与える場合は、追加情報として、その旨及び金額を貸借対照表に注記することになると考えられる。当該ケースについては、日本公認会計士協会から「販売用不動産等の評価に関する監査上の取扱い」(監査・保証実務委員会報告第69号)が公表されており、その「7.販売用不動産等及び固定資産の保有目的変更への対応」に規定されている。   Ⅲ 遊休資産 減損の兆候として、資産又は資産グループが遊休状態になり、将来の用途が定まっていないことがあげられている(減損適用指針13項(4)、85項)。 「遊休状態」とは、企業活動にほとんど使用されていない状態であって、過去の利用実態や将来の用途の定めには関係がない現在の状態であり、このような状態にある資産が遊休資産である(減損適用指針72項)。 遊休資産について減損処理を行った場合、減損処理後の減価償却費は、原則として、営業外費用として処理する(減損適用指針56項)。 また、減損処理を行うこととはされなかった遊休資産についても、減価償却を行うこととなり、当該遊休資産の減価償却費についても、原則として、営業外費用として処理する(減損適用指針56項)。 「固定資産の減損に係る会計基準」が設定される前には、日本公認会計士協会から「休止固定資産の会計処理及び表示と監査上の取扱い」(監査第二委員会報告第2号)が公表されていた。 同委員会報告は、平成16年3月17日付の「監査第二委員会報告第2号『休止固定資産の会計処理及び表示と監査上の取扱い』の廃止について」により、廃止されている。 廃止する理由において、監査第二委員会報告第2号における以下の取扱いについては、すでに実務慣行として定着していると考えられたことが述べられているので、実務における取扱いについては、注意が必要である。   Ⅳ 減損損失の戻入れは行わないこと 減損損失の戻入れは、行わないと規定されている(「固定資産の減損に係る会計基準」三、2)。 「固定資産の減損に係る会計基準」においては、減損の存在が相当程度確実な場合に限って減損損失を認識及び測定することとしていること、また、戻入れは事務的負担を増大させるおそれがあることなどが、その理由である(「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」四3(2))。 (了)

#No. 99(掲載号)
#阿部 光成
2014/12/18

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第66回】外貨建取引③「為替予約」―振当処理

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第66回】 外貨建取引③ 「為替予約」 ―振当処理   仰星監査法人 公認会計士 石川 理一 日本公認会計士協会準会員 永井 智恵   〈事例による解説〉 〈会計処理〉 ① 販売契約の締結時(X1年1月1日) ② 輸出時(X1年2月1日) (*1) 1,000ドル×取引発生時レート 100円/ドル=100,000 ③ 為替予約の締結時(X1年3月1日) (1) 直々差額 (*2) 1,000ドル×(予約時レート 99円/ドル-取引発生時レート 100円/ドル)=-1,000 (2) 直先差額 (*3) 1,000ドル×(予約レート 104円/ドル-予約時レート 99円/ドル)=5,000 ④ 決算時(X1年3月31日) 直先差額の期間配分(X1年3月1日~X1年3月31日分) (*4) 5,000((*3)より)×1ヶ月(X1年3月1日~X1年3月31日)/2ヶ月(X1年3月1日~X1年4月30日)=2,500 ⑤ 決済時(X1年4月30日) (1) 売掛金の決済 (2) 直先差額の期間配分(X1年4月1日~X1年4月30日分) (*5) 5,000((*3)より)×1ヶ月(X1年4月1日~X1年4月30日)/2ヶ月(X1年3月1日~X1年4月30日)=2,500   〈会計処理の解説〉 為替予約とは、将来の一定の期日において、一定量の通貨を他の通貨による一定の価額で売買する先物為替取引です。 為替予約の会計処理は、前回の記事で説明した「独立処理」が原則的な処理方法となります(金融商品会計基準25項)。一方で、特例処理として「独立処理」よりも実務上の煩雑さが排除された「振当処理」の採用も認められています(外貨基準注解 注7)。 振当処理を採用するためには、ヘッジ会計の要件を満たす必要があります。同一通貨建てによる同一金額で同一期日の為替予約を振り当てる場合には、為替予約契約が企業のリスク管理方針に従っていることが客観的に確認できる必要があります(外貨建取引等の会計処理に関する実務指針(以下、実務指針)4項前段)。 本事例のように、輸出取引の後に為替予約が締結された場合、まず輸出時に取引発生時レートに基づき売掛金が計上されます(②の仕訳)。 その後、為替予約の締結時において、売掛金を予約レートで換算替えします(③の仕訳)。このとき、取引発生時レート(100円/ドル)と予約時レート(99円/ドル)の差額により生じた換算差額、すなわち直々差額については、予約日の属する期の損益(為替差損益)として処理します(③(1)の仕訳)。 また、予約時レート(99円/ドル)と予約レート(104円/ドル)との差額により生じた換算差額、すなわち直先差額については、為替予約の決済時までの期間において合理的な方法(日割り又は月割り)により期間配分します(③(2)および④の仕訳)。 ここでポイントとなるのは、(Ⅱ)の期間に配分される為替差益2,500円は、X1期の損益とはせずに、前受収益として翌期に繰り延べるということです(為替差損を繰り延べる場合は、前払費用を計上することとなります)。また、決算時において計上された前受収益についてX3期に属するものが存在する場合は、その分を長期前受収益に振り替える必要があります。 なお、本事例では商品の輸出後に為替予約を締結していますが、商品の輸出に先立ち為替予約を締結した場合、例えばX1年1月1日の販売契約の締結時において為替予約の締結を行った場合については、実務上の煩雑さを避けるために、取引発生時レートと予約レートの差額を期間按分せずに、取引発生時(輸出時)に計上される売上および売掛金を予約レートによる円換算額で計上する簡便的な方法も認められています(実務指針8項)。 ただし、振当処理を採用した場合でも、為替予約の締結後に、輸出取引を行わずして決算日を迎えた場合は、決算日において為替予約を時価評価することになります。時価評価により認識した評価差額については、税効果会計を適用した上で、純資産の部に繰延ヘッジ損益として計上し、翌期以降に繰り延べます(実務指針4項後段)。 ※2015年1月は2014年1月に続き、企業結合会計を取り上げます。 (了)

#No. 99(掲載号)
#石川 理一、永井 智恵
2014/12/18

〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領《賞与引当金》編 【第3回】「未払賞与」

〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領 《賞与引当金》編 【第3回】 「未払賞与」   公認会計士・税理士 前原 啓二   はじめに 前回までにご紹介した賞与引当金は、引当金計上した事業年度には有税引当となりますが、所定の要件を満たす賞与については、当期末現在従業員への支給が未払であっても税務上当期の損金として算入できるケースがあります。 今回は、この未払賞与についてご紹介します。   1 当期末及び翌期X2年12月10日における仕訳 〈当期〉 〈翌期X2年12月10日〉 税法上、次に掲げる要件のすべてを満たす賞与については、使用人にその支給額を通知した日の属する事業年度において、損金に算入します。 上記の処理は、会計上も当期末X2年11月30日までの支給対象期間に係る賞与について、当期の費用として計上されているので、会計上も妥当な処理となります。   2 決算書の金額 〈当期損益計算書〉 〈当期末貸借対照表〉   3 損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得を算出する際の加算・減算調整 上記1で記載したとおり、この設例では会計上の処理と税務上の取扱いが一致しているので、当期における損益計算書の当期純損益から法人税申告書の課税所得を算出する際の加算・減算調整はありません。 (了)

#No. 99(掲載号)
#前原 啓二
2014/12/18

過労死等防止対策推進法と企業への影響 【第3回】「企業への影響」

過労死等防止対策推進法と企業への影響 【第3回】 (最終回)  「企業への影響」   特定社会保険労務士 池上 裕美   前回までに、法律制定の背景、過労死等防止対策推進法の概要をお伝えした。 今回は、企業への影響についてお伝えする。   《各関係団体の談話等》 各関係団体は、過労死等防止対策推進法について、次のとおり談話等を公表している。 各関係団体は、過労死等防止対策推進法について、プラスに評価しているとともに、3年後の法改正に大きな期待を寄せている。 つまりこの法律は、将来的にどうするのか、どのようにして過労死被害の根絶を実現していくのか、ということが重要とされているのである。   《企業への影響》 この法律では、企業の責務として、「国及び地方公共団体が実施する過労死等の防止のための対策に協力するよう努めるものとする」としている。直接的な労働時間の上限規制などはなく、企業は、直ちに何らかの法的義務を負うわけではない。 では、企業は法律制定後も、今までと何ら変わりなくいることができるのであろうか。 企業の責務については、「自らの職場内での過労死等を発生させない責務」も入れるべきではないかとの議論もなされていた。しかし、既に労働基準法や労働安全衛生法等では、企業の義務づけを定めており、あえて規定されなかった。だが実際は、現行法に従って、労働基準監督署が企業を監査できておらず、徹底されていないことも事実である。 過労死等防止対策推進法は、労働諸法令の適用について、過労死等の防止等という理念から、一層の徹底を図って、各法律の解釈と運用を行うことになるものとして、作成されたのである。 また、前回紹介した通り、国の調査研究が進行し、遺族、労働者代表、使用者代表及び専門的知識を有する者から構成される過労死等防止対策推進協議会の意見のもと、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」が策定される。となれば、今後、企業にはより実践的な長時間労働防止の対策を求められることが予想される。 さらに国の啓発活動も進めば、労働者やその家族は知識を得て、企業を訴えるケースも増加するであろう。いったん紛争が起こると、コストや時間がかかり、労使双方がエネルギーを消耗する。 このような消耗を避けるためにも、過労死をリスクと捉え、企業は過労死等の原因となる長時間労働の防止やメンタルヘルスのケアを行っていく必要があるのではないか。 今回の過労死等防止対策推進法で企業の義務として定められたのは、「国の対策に協力するよう努力すること」であるが、やはり、企業は傍観していられない。 現時点から、長時間労働防止の対策として、仕事の仕方・させ方の仕組みを考え、業務効率を図っていく必要があるであろう。 (連載了)

#No. 99(掲載号)
#池上 裕美
2014/12/18

介護事業所の労務問題 【第3回】「休暇・休職問題と夜勤体制の問題点」

介護事業所の労務問題 【第3回】 「休暇・休職問題と夜勤体制の問題点」   クロスフィールズ人財研究所 代表 社会保険労務士 三浦 修   1 休暇(年次有給休暇・産前産後休暇等)・休職時の問題点 介護事業所のような女性職員が多い職場でよくある問題の1つが、産休や育休を含む休暇や休職をめぐる問題である。 中でも、特に問題となりやすいのが年次有給休暇(以下、年休)の問題だ。これは介護事業所の特徴から大きく2点に分けられる。1つ目の問題は、人員を必要最小限で行う傾向があるため年休が取得しづらいという問題。2つ目の問題は、年休をよく取得する職員と、取得しない職員に二分されてしまう権利意識の問題である。 1つ目の問題は、介護保険法との関連性もあるが、そもそも介護事業所(特に小規模)は、高利益体質の業種ではないため、必要最小限の人員配置で事業を行っているところが多く、その体制による問題が大きい。もちろん中には大規模・中規模、また併設型等で事業を行うことにより、人員配置上、多少の余裕をもっている事業所もあるが、小規模なものが多い介護事業所でそういった対応を行うのはかなり難しいのが現状である。 もちろん、小規模事業所であれば介護事業以外でも同様の問題は発生するが、介護事業所の場合はその問題にプラスして、人員基準の問題がある。この問題の解決方法としては、大規模・中規模経営を行い人員に余裕を持てる体制を作ることも考えられるが、現実的ではないであろう。 2つ目の問題については、介護事業所をはじめ医療・福祉など女性が多い職場、特にシフト編成が必要な職場でよくありがちなのが、年休の取得について積極的な職員と、消極的な職員の差が大きいということである。 このことは、経営者や管理者が注意・指導をしなければ、年休に対して積極的な職員と、消極的な職員の差が開く一方で、最悪の場合、パワハラ問題に発展することも考えられる。 このような権利意識を強くもつ職員が現れることは、介護事業所にかかわらずよく耳にするが、大きな問題とならないような事業所の風土づくりの一環として、労務管理上、また事業運営上、様々な工夫をしていかなければならない。ハラスメントにも関連するが、管理職としての役割を理解し、コミュニケーションを取れる職場環境作りのためにも、定期的な管理職研修を行うことが重要になる。 介護保険法から考えられる問題点 産休や育休を含む年休とその他の休暇・休職問題については、女性が多い職場であれば、あらゆる業界に共通することだと予測されるが、介護事業所の場合はさらに人員基準が影響してくる。職員が年休や産前産後休暇等、また休職を行うと、人員基準を満たさなくなってしまう場合もあり得るからである。 例えば、デイサービスの生活相談員が休暇を取得した際や、デイサービスの看護職員が休暇を取得した際に、それにより配置基準を満たすことができなくなることが想定される。また、訪問介護事業所で休暇を取得した際に、常勤換算2.5人を満たすことができないといった状況が生じる可能性が考えられる。このような場合には、介護報酬が請求できなくなることも想定しておかなければならない。   2 夜勤(有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅等)の管理体制 夜勤に関しての労務問題としては、労働時間と深夜割増、そして採用難の問題が生じることが推測できる。また、夜勤中は管理職等の不在が多いため、怠慢、虐待等あってはならない問題も発生する可能性があり、それによる懲戒、または解雇が問題となることも考えられる。 (1) 労働時間と深夜割増 介護事業所は労働時間と休憩時間が曖昧な場合が多く、また弊所の地元である熊本県のように、宿直の許可が受けられない可能性が高い自治体も存在する。よって、どの介護事業所も夜勤については宿直としてではなく、通常の労働時間として算入し、シフト管理を行っていくことになる。 これは、社会福祉法人として運営を行っている特別養護老人ホームや、医療法人として運営を行っている介護老人保健施設だけでなく、有料老人ホームやサービス高齢者住宅等の住まい住宅としてみなされる施設であっても同じことが言える。 例えば、有料老人ホームやサービス高齢者住宅等居住系で行われる可能性がある、訪問介護の早朝加算の対象となっている早朝時間(6~8時)、夜間時間(18~22時)などの時間帯は、場合によっては他の業務がほとんどなく、夜勤担当職員としての労働時間ではないと判断したいところだが、実際にはそういった時間帯についても労働時間として算入しれなければならないであろう。よって、その際の作業内容も勘案し、賃金の設定をすることになる。 (2) 夜勤専従等職員の採用が難しい 上記にもあるように、介護事業所では夜勤の時間帯の拘束時間が長く、場合によっては過度な肉体労働であること、また入居者とのトラブルや虐待等の可能性があることから、採用が難しいポストの1つである。 このため、一般の介護職員に夜勤の従事をしてもらう場合も多々あると思われる。または、小規模の事業所の場合は経営者自らが夜勤を行っていることもよくあるだろう。しかし疲労が蓄積してしまい、様々な問題を引き起こしかねないといったリスクも理解しなければならない。 (3) 怠慢、虐待等に対する懲戒・解雇問題 上記のような労働環境によるストレス等も考えられるが、夜勤の時間帯における入居者、利用者への虐待等の問題も発生しているのが実情である。これはモラルの問題とも言えるが、どうしても管理が難しい時間帯なので、発見が遅れたり、発見できなかったりといった状況も多くなる。そのため、多くの事業所では問題が顕在化していない可能性も多くあるのではないかと想定される。 対策方法の一つとして、廊下に監視カメラをつけることによる抑止力を活用することや、また定期的に入居者とそのご家族にアンケートを取るなどの工夫をしていく必要があると思われる。 介護保険法から考えられる問題点 夜勤がある介護サービスは、ほとんどが施設系・居住系であり、通所介護(お泊りデイサービスを除く)、訪問介護等においてこれらの問題が発生し、人員基準が直接影響することは多くはないと思われる。しかし、夜勤の担当者がいない、夜勤専従者が退職した場合などは、昼の勤務を行っている職員が夜勤に従事することになるため、勤務シフトの問題、すなわち労働時間の問題上、日中の介護サービス提供事業で人員基準の問題が生じる可能性も考えられる。 その他に想定される問題として、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅など併設型の場合、夜勤担当職員の業務と、訪問介護サービス提供者が早朝(6~8時)・夜間(18~22時)、また深夜(22~6時)の勤務の際に介護サービス、保険外サービス提供が混同されることも考えられる。夜勤担当者が誤って訪問介護サービスを提供した時など、介護報酬、また早朝・夜間・深夜加算の請求ができなくなる可能性もあるので、注意が必要である。 *   *   *  最終回である次回は、職員の懲戒問題と、突然の退職をめぐる問題について解説する。 (了)

#No. 99(掲載号)
#三浦 修
2014/12/18

〈IT会計士が教える〉『情報システム』導入のヒント(!) 【第3回】「仕様に漏れのないプロトタイプ型開発。それでもERP導入が失敗するワケ」

〈IT会計士が教える〉 『情報システム』導入のヒント (!) 【第3回】 「仕様に漏れのないプロトタイプ型開発。 それでもERP導入が失敗するワケ」   公認会計士 小田 恭彦     はじめに 会計システムをはじめ販売、購買など企業の業務を取り扱うシステムを一般的に「基幹システム」と呼ぶ。 この基幹システムの開発は、「オーダーメイドによる開発」から「パッケージシステムをベースにした開発」が主流になりつつある。 今回はパッケージシステムをベースとした導入をより効率的かつ効果的に進めるための手法である「プロトタイプ型」についてまとめてみたい。   ▼基幹システム開発の主流は「オーダーメイド」から「パッケージ」へ▼ “ERP”という言葉の説明はいまさら不要かもしれないが、改めて簡単に解説しておく。 ERPとは“Enterprise Resource Planning”の略であり、企業が保有しているヒト・モノ・カネなど経営資源を統合的に管理し、業務の効率化や全体最適化を目指すという概念であり、一般的にはそれを実現するために導入する統合型パッケージ型の基幹システムを指す。 1990年代から2000年代にかけてのERPの台頭やクライアント・サーバー型システムの普及を境に、企業の基幹システムは大きく変化した。それ以前はいわゆる「オフコン時代」と呼ばれる汎用機によるオーダーメイド型の開発が中心であったが、それ以降はERPを中心としたパッケージシステムによる既製品の導入が主流となった。   ▼期待ギャップが起こりやすい開発手法▼ オフコン時代のオーダーメイド開発は、いわゆる「ウォーターホール型」の開発が主流であった。ウォーターホール型とは、「要件定義」「概要設計」「詳細設計」「プログラミング」「テスト」といった開発手順をその時系列通りに行い、前工程の成果物の品質を確保し前工程への手戻りを最小限にする開発手法である。逆に言えば、手戻りが発生した場合のリスクが大きい開発手法でもある。 ウォーターホール型の開発のポイントは上流工程の精度であり、それは「最も上流工程の要件定義の精度」に依存すると言っても過言ではない。 つまり、このシステム開発においては、「最初が肝心」ということである。 ただしこの「最初」が、以下の理由により、非常に難しい作業となる。 ソフトウエア開発の作業が難しい理由の1つに「無形のもの」を作り上げていくという点がある。要件定義はベンダーからユーザーへの要件の聞き取り作業を中心に行われるが、そのやりとりは互いが「無形のモノ」をイメージしながら行われる。 この「自社業務は理解しているがシステムには詳しくないユーザー」と、「システムには詳しいがユーザーの業務に詳しくないベンダー」が、互いのイメージにズレないよう要件を取りまとめるのは、簡単なようで非常に難しい作業なのである。 失敗するシステム開発の多くは、テストの段階(要件定義、設計及び開発が終わった後で実際にユーザーがシステムの出来上がりを確認する段階)で“事”が発覚するケースが多い。 その時にベンダーとユーザーとの間でよく繰り広げられる会話は、以下のようなものである。 このように、その多くは誤解や期待ギャップによる「仕様の漏れ」に関する事項であり、それは要件定義に関連するもの(つまり「最初」の作業に関するもの)がほとんどである。   ▼プロトタイプ型によるパッケージ開発で“漏れ”をなくす▼ 上述したように、2000年以降、オフコンによるオーダーメイド開発からクライアント・サーバー型のパッケージ導入へ移行することにより、開発手法も「ウォーターホール型」から「プロトタイプ型」へと変化した。 「プロトタイプ型」とは、開発プロセスの比較的早い段階において、機能制限版、簡易版等の試作環境(プロトタイプ)を作成し、ユーザーにそれを評価させる開発手法である。 パッケージシステムの特徴は、いくつかのパラメータを設定し、マスタデータを登録すれば「すぐに動かすことができる」という点である。プロトタイプ型はこの点に着目して考えられた導入手法である。 住宅建築や土木建築のような「有形のもの」作り上げる場合、完成予想図や模型を用いることにより最終製品を視覚的に共有することができる。視覚的に捉えることができると、そこからさらなる疑問や要件が出やすく、実現が難しい要求に対する代替案や妥協案も出やすくなり、お互いの認識のズレは発生しにくくなる。 プロトタイプ型では、要件定義を行った後(ないしは要件定義の途中で)、プロトタイプを構築し、実際の画面の動きやアウトプット(帳票や証票)を確認したり、ユーザーに実際にシステムを操作したりすることより、よりリアリティをもって要件定義を進めることができる。 つまり、プロトタイプ型はあくまで試作品であるため、機能範囲も限定的であったり、要件漏れや誤認がある状態であったりするが、ウォーターホール型とは異なり「有形のもの」を評価することで、ユーザーの想像力は無形のそれを評価するよりも圧倒的に広がり、具体的な議論を進めることができるのである。 そしてプロトタイプの検証により生じる要件の追加や変更をとりまとめ、さらに次のプロトタイプに反映させることによって精度を高めていくことになる。 さらに、プロトタイプ型の利点として、ユーザー側がシステムを実際に操作しながら工程を進めるため、開発作業を通じ操作方法の習得も進められることが挙げられる。 なお、プロトタイプ型の場合、プロジェクトメンバーの中に「パワーユーザー」などと呼ばれるユーザー部門から選出したメンバーが入り、このパワーユーザーが自部門の業務要件定義の取りまとめや他部門との調整を行うとともに、自部門の他のユーザ(「一般ユーザー」と呼ぶことが多い)に対して機能説明や操作説明を展開する。   ▼プロトタイプ型でも起こる開発失敗の要因とは▼ このようにプロトタイプ型はユーザーとベンダー間の誤認や要件漏れも生じにくく効率的な開発手法であるが、この導入手法によるパッケージシステムの導入が主流となった現在でも、プロジェクトの失敗がなくなったわけではない。 その理由のひとつに、プロトタイプ型開発が十分に効果を出せないという点があり、具体的には以下のような状況が考えられる。 このようにパッケージシステムをプロトタイプ型で導入する場合においても、実際にはその利点を生かすことができずに失敗する場合があるという点については、十分留意しなければいけない。 (了)

#No. 99(掲載号)
#小田 恭彦
2014/12/18

女性会計士の奮闘記 【第24話】「社長の決断。そしてM子の決断。」

女性会計士の奮闘記 【第24話】 「社長の決断。そしてM子の決断。」   公認会計士・税理士 小長谷 敦子   《退職金の計算のしくみ》 一般的に退職金の限度額の計算は以下の通りとされています。 (※1) 役位別係数は1倍から3倍とされています。 (※2) 功労金加算は30%までとされています。 (再びホワイトボード) 法善寺社長の退職金の限度額=50万円×30年×3×1.3=5,850万円 ◆ワンポントアドバイス◆ 退職金に対する所得税は、以下のように軽減されています。 そのため、退職金規定が一般的に認められる形で整備されており、それに基づいて支給されなければ、税務上退職金と認められないことがあります。 また、役員退職金を支給する場合には、支給の3年以上前から月額報酬の見直しや資金の準備をしておく必要があります。 (了)

#No. 99(掲載号)
#小長谷 敦子
2014/12/18

Profession Journal No.98が公開されました!~今週のお薦め記事~

2014年12月11日(木)AM10:30、Profession Journal(プロフェッションジャーナル)  No.98 が公開されました。   - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2014/12/11

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第24回】「法人税法22条2項の「取引」の意義(その3)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第24回】 「法人税法22条2項の「取引」の意義(その3)」   中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦     Ⅲ 固有概念としての「取引」概念 1 会計上の「取引」概念 前述したとおり、会計学では、「取引」とは「資産、負債および資本に増減変化を及ぼす一切の事象である」と解されている。このような理解は、当事者間の契約が前提とされるであろう一般概念としての「取引」とは異なるものかもしれない。すなわち、会計上の「取引」とは「資産、負債および資本に増減変化を及ぼす一切の事象」というのであるから、取引要素説(注)の8要素に従えば、次のような16のパターンが考えられる。 〔結合関係表〕 上記の結合関係表に表れる一切の事象が会計上の「取引」であるとすると、そこにいう「取引」には、売買及び金銭貸借はもちろん、火災、紛失等のような一般に取引と称されない単純な事実もがこれに含まれることになる。他方、一般に取引に含まれるものと理解されている物品の賃貸借契約は、資産、負債及び資本に価値変動を引き起こすことがないことから、会計上の「取引」には当たらないことになろう。刑事裁判において、検察官が求刑を軽減する代わりに被告人に罪を認めさせることを司法取引というが、このような取引も一般的には取引と理解されているかもしれないが、会計上の「取引」には含まれない。 このように、会計上の「取引」は、必ずしも当事者の意思の合致を前提とするものと考えることはできないであろう。   2 本件最高裁判決にいう「取引」概念に対する疑問 さて、本件最高裁判決は、「法人税法22条2項にいう取引とは、関係者間の意思の合致に基づいて生じた法的及び経済的な結果を把握する概念と解される。」と論じている。このように、「取引」を当事者間の意思の合致に基づいて生じた結果を把握する概念であると考えると、上記の図にいう一般的な「取引」の理解にやや近接したものとなるようにも思われる。すなわち、例えば、物品の賃貸借は、関係者間の意思の合致に基づいて生じた法的及び経済的な結果を把握する概念であるからである。 ところで、法人税法22条3項は、損金の額に算入すべき金額として、その3号に「損失の額」を規定している。 同条項3号は、損金の額に算入すべき金額として、損失の額で資本等取引以外の「取引に係るもの」と規定しているところであるが、ここにいう「取引」には、火災や紛失が含まれると解されている(渡辺淑夫=山本守之『法人税法の考え方・読み方〔4訂版〕』85頁(税務経理協会1997)、武田昌輔『立法趣旨法人税法の解釈〔新版〕』266頁(財経詳報社1988))。 つまり、法人税法22条3項3号にいう「取引」は、会計学において「取引」とされる火災や紛失といった、意思の合致に基づかないものも含まれて解釈されているのである。 およそ同じ条文内における同じ概念を異なる意味に理解するのは自然ではないことからすると、法人税法22条2項と3項とで「取引」の概念が異なるものとするのは、正しい理解とはいいがたい。そうであるとすると、法人税法22条2項の「取引」についても、意思の合致を前提としないものが含まれると解するのが素直であろう。 このように考えると、法人税法22条2項の「取引」概念には、意思の合致とは到底いえない火災や紛失が含まれると解されることになる。そうであるとすれば、同条項の「取引」を「関係者間の意思の合致に基づいて生じた・・・結果を把握する概念」とする本件最高裁判決の説示には疑問が残るといわざるを得ない。 もっとも、このように取引概念の説示については問題があるとしても、本件最高裁判決の「結論」に問題があるとまでは即断できない。けだし、法人税法22条2項の「取引」に火災や紛失が含まれると解したとしても、X社とC社の合意に基づいて実現された持分の譲渡が排除されるべきということにはならないからである。換言すれば、同条項にいう「取引」概念の理解を拡張的に捉えることが可能となっただけで、限定的に解釈すべきということにはならないのである。 そこで、最終的には、法人税法22条2項にいう「取引」には、会計上の「取引」以外の取引も含まれると解するべきかという論点こそが判決の「結論」に大きな影響を及ぼすことになるといえよう。 関係者間の意思の合致に基づいて生じた法的及び経済的な取引を法人税法上の所得金額の計算に織り込むということは、税務調整に委ねることを意味するが、これは必ずしも記帳制度を否定するものではない。すなわち、記帳を前提としない「取引」概念を持ち込むことは、記帳制度を前提とする法人税法が同法施行規則53条において、青色申告法人に対して、「その資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引につき、複式簿記の原則に従い、整然と、かつ、明りように記録し、その記録に基づいて決算を行なわなければならない。」と規定していることを否定するものでもなければ、制限をするものでもない。なぜならば、記帳制度はあくまでも帳簿体系内の問題であって、同規定が、税務調整を制限する趣旨を有するわけではないからである。   小括 そもそも、法人税法が会計制度を前提とした仕組みを採用し、記録された取引を計算した上で確定申告する制度を設けていることからすれば、会計記録に載らないものまでをも法人税法22条2項の「取引」と解するというのは理解しづらいように思われる。しかしながら、法人税法が、いわゆる企業会計準拠主義を採用しているからといって、企業会計上のルールに全面的に依拠するというものではない。 本件最高裁の判断には、概念の理解において租税法の思想が混入されるべき場合には、そのスクリーンにかけられることがあるとの思考が根底に流れているのかもしれない。 (了)

#No. 98(掲載号)
#酒井 克彦
2014/12/11

5%・8%税率が混在する消費税申告書の作成手順 【第1回】「一般課税の申告書・付表作成の流れ(前編)」

5%・8%税率が混在する消費税申告書の作成手順 【第1回】 「一般課税の申告書・付表作成の流れ(前編)」   アースタックス税理士法人 税理士 島添  浩 (監修) 税理士 小嶋 敏夫(執筆)   平成26年4月1日に消費税率が5%から8%に引き上げられたことで、施行日以後に終了する課税期間については旧税率と新税率が混在することとなり、経過措置用の付表を作成する等、これまでの申告実務とは異なる対応が必要となる。 そこで本連載では、一般課税と簡易課税による申告書及び付表の作成方法について、具体例を交えつつ確認していくこととする。 1 施行日以後に作成する確定申告書及び付表について 施行日以後に作成する消費税の申告において提出しなければならない帳票は、以下のとおりである。 (1) 一般課税用の確定申告 ① 経過措置の適用がない場合 消費税及び地方消費税確定申告書(一般用) ⇒様式はこちら 付表2(課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表) ⇒様式はこちら ② 経過措置の適用がある場合 確定申告書に控除不足還付税額の記載がある場合には、「消費税の還付申告に関する明細書」も併せて提出しなければならない。 消費税及び地方消費税確定申告書(一般用) ⇒様式はこちら(同上) 付表1(旧・新税率別、消費税額計算表兼地方消費税の課税標準となる消費税額計算表〔経過措置対象課税資産の譲渡等を含む課税期間用〕) ⇒様式はこちら 付表2-(2)(課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表〔経過措置対象課税資産の譲渡等を含む課税期間用〕) ⇒様式はこちら (2) 簡易課税用の確定申告 ① 経過措置の適用がない場合 消費税及び地方消費税確定申告書(簡易課税用) ⇒様式はこちら 付表5(控除対象仕入税額の計算表) ⇒様式はこちら ② 経過措置の適用がある場合 消費税及び地方消費税確定申告書(簡易課税用) ⇒様式はこちら(同上) 付表4(旧・新税率別、消費税額計算表兼地方消費税の課税標準となる消費税額計算表〔経過措置対象課税資産の譲渡等を含む課税期間用〕) ⇒様式はこちら 付表5-(2)(控除対象仕入税額の計算表〔経過措置対象課税資産の譲渡等を含む課税期間用〕) ⇒様式はこちら   2 一般課税における申告書及び付表の作成手順 (1) 申告書及び付表の作成手順 施行日以後に終了する課税期間で、消費税の確定申告(一般課税)を行う場合には、旧税率と新税率が混在することが考えられ、従来の付表2ではなく、複数税率の計算をするための付表1及び付表2-(2)を作成し、確定申告書に添付することとなる。 具体的には、以下の手順で作成することとなる。 《確定申告書作成の流れ》 各付表及び確定申告書を作成するためには、まず、その課税期間における課税売上げや課税仕入れを税率ごとに区分して計算することとなるが、具体的には、以下のような数値が必要になる。   (2) 付表2-(2)の作成 ⇒様式はこちら 付表2-(2)は、課税売上割合や仕入税額控除の計算を行うために作成するのであるが、旧税率と新税率が混在している場合には、それぞれの税率を基に計算をしていくこととなるが、具体的には、以下のようになる。 この付表2-(2)を上記に従って作成し、各欄の中に「付表1へ」と記載がある部分は、そのまま付表1に記載することとなる。 次回は付表1と確定申告書の作成の流れを確認する。 (了)

#No. 98(掲載号)
#島添 浩、小嶋 敏夫
2014/12/11
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