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〔過年度遡及会計基準〕 減価償却方法の変更について

〔過年度遡及会計基準〕 減価償却方法の変更について   公認会計士 阿部 光成   「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号。以下「過年度遡及会計基準」という)及び「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第24号。以下「過年度遡及適用指針」という)において、減価償却方法の変更については、会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合に該当するものと規定している(過年度遡及会計基準19項、20項)。また、従来の臨時償却については廃止されている(過年度遡及会計基準57項)。 日本公認会計士協会は、「減価償却に関する当面の監査上の取扱い」(監査・保証実務委員会実務指針第81号。以下「実務指針81号」という)を公表し、過年度遡及会計基準等に対応している。 本稿では、減価償却方法の変更について、これらの会計基準等において示された考え方について述べる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 減価償却 1 減価償却方法 「企業会計原則」では、減価償却方法には、定額法、定率法、級数法、生産高比例法がある(「企業会計原則」注解20)と規定しており、実務指針81号9項もこれを受けて規定している。 過年度遡及会計基準は、減価償却方法は会計方針に該当し、その変更については「会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合」として取り扱い、遡及適用は行わないと規定している(過年度遡及会計基準19項、20項)。 2 会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合 過年度遡及会計基準19項及び20項において、有形固定資産等の減価償却方法及び無形固定資産の償却方法は会計方針に該当するが、その変更については会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合として取り扱うと規定している。 過年度遡及会計基準62項は、減価償却方法の変更は、計画的・規則的な償却方法の中での変更であることから、その変更は会計方針の変更ではあるものの、その変更の場面においては固定資産に関する経済的便益の消費パターンに関する見積りの変更を伴うものと考えられると述べている。 このため、減価償却方法については、これまでどおり会計方針として位置付けることとする一方、減価償却方法の変更は、会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合に該当するものとし、会計上の見積りの変更と同様に会計処理を行い、その遡及適用は行わないこととなる。   Ⅱ 実務上の留意点 1 正当な理由の存在(適時性を含む) 「正当な理由による会計方針の変更等に関する監査上の取扱い」(監査・保証実務委員会実務指針第78号。以下「実務指針78号」という)が公表されている。 実務指針78号8項では、監査人は、経営者による会計方針の選択及び適用方法が会計事象や取引を適切に反映するものであるかどうかを評価しなければならないとし、会計方針の変更のための正当な理由があるかどうかの判断に当たっては、以下の事項を総合的に勘案する必要があると規定している。 減価償却方法の変更に際しても、上記の事項について総合的に勘案し、判断する必要がある。 前述のとおり、過年度遡及会計基準62項は、減価償却方法の変更は会計方針の変更ではあるものの、その変更の場面においては固定資産に関する経済的便益の消費パターンに関する見積りの変更を伴うものと考えられると述べている。 経済的便益の消費パターンの具体的な内容については、過年度遡及会計基準及び過年度遡及適用指針において規定されていないが、「経済的便益の消費パターンに関する見積り」の変更と述べられていること、また、企業会計は計数を取り扱うものであることなどを考えると、経済的便益の消費パターンに関する見積りについては定量的な分析を行い、当該分析に基づく数値によって、経済的便益の消費パターンに関する見積りの変更があることを証明する方法が考えられる。 2 減価償却方法の変更のタイミング 実務指針78号9項では、会計方針は、原則として、事業年度を通じて首尾一貫していなければならないと規定している。このため、会計方針の変更を行う場合には、原則として、四半期決算を行う企業の第1四半期から行うことになると考えられる。 実務指針78号8項(5)では、会計方針の変更に際しての検討ポイントとして、会計方針を当該事業年度に変更することが妥当であること(変更の適時性)を規定している。 減価償却方法の変更に際しても、変更の適時性はポイントとなり、なぜ当該事業年度において会計方針を変更しなければならないのか(実務指針78号8項(5))について証明する必要がある。 前述のように、経済的便益の消費パターンに関する見積りの変更があることにより、減価償却方法の変更の正当性を主張する場合にも、経済的便益の消費パターンに関する見積りの変化が、会計方針を変更しようとする事業年度において発生していることを証明することになると考えられる。 3 耐用年数の変更と残存価額の変更 減価償却方法の変更の検討に際して、経済的便益の消費パターンに関する見積りの変更があると、固定資産の状況によっては、耐用年数と残存価額の見積りが適切かどうかの問題が発生することがあるので、注意が必要である(実務指針81号15項、19項、20項)。 4 税務の届出 法人税法上、減価償却方法の変更を行う場合には、新たな償却の方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに、その旨、変更しようとする理由その他財務省令で定める事項を記載した申請書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない(法人税法施行令52条2項)。 会計上、減価償却方法の変更を行う場合は、税務上の減価償却方法も合わせて変更することが多いと思われる。 前述のように、減価償却方法の変更を行う場合には、会計上、正当な理由の存在(適時性を含む)の有無がポイントになり、その検討に相当の時間を要する場合も考えられる。そのため、減価償却方法の変更について、会計上の変更と税務上の変更を同時に行うのであれば、税務の届出のタイミングを考慮し、時間的余裕をもって監査人と相談することが必要と思われる。 (了) 【参考】ASBJ/FASFホームページ ・「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号) ・「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第24号)

#No. 5(掲載号)
#阿部 光成
2013/02/07

〔形態別〕雇用契約書の作り方 【第1回】「雇用契約書作成のメリットと明示事項」

〔形態別〕雇用契約書の作り方 【第1回】 「雇用契約書作成のメリットと明示事項」   社会保険労務士 真下 俊明   雇用契約書を作成する義務 本連載において、形態別の雇用契約書の作り方に入る前に、雇用契約書について確認しておきたい。 雇用契約とは、労働者が役務を提供し、使用者がそれに対して賃金を支払うことを意味する。雇用契約自体は、労働者と使用者の合意があれば口頭でも成立し、書面による契約締結が義務付けられているわけではない。 実際に多くの企業では、書面を作成せず雇用しているケースが見受けられるのも事実である。 しかし、労働基準法では、雇用契約の締結に際して、労働条件を書面で明示することを義務付けている。   雇用契約書を作成するメリット 法的に作らなければいけない雇用契約書ではあるが、主に以下のようなメリットもあるため、義務だから仕方なく作るのではなく、前向きに捉え、必ず取り交わしていただきたい。 特に、上記⑥については、次に記す「法的に明示しなければいけない事項」以外の、会社から本人に求めること(期待)になるので、雇用契約書を両者のベクトルを合わせるツールとして、積極的に活用することをお勧めする。   雇用契約書に明示しなければいけない事項 絶対的明示事項(必ず明示しなければならない事項)   *「昇給に関する事項」以外は書面の交付が義務 雇用契約期間の有無(期間を定める場合は原則3年まで) 就業場所、及び従事する業務の内容 始業・終業時刻と休憩時間、所定休日、休暇、所定労働時間を超える労働の有無(交替勤務の場合は就業時転換に関する事項) 賃金の決定・計算・支払いの方法、及び締切日と支払日 退職に関する事項(解雇事由含む) 昇給に関する事項 相対的明示事項(定めをした場合に明示しなければならない事項) 退職手当(労働者の範囲、決定方法など) 臨時に支払われる賃金・賞与など 労働者に負担させる食費・作業用品などに関する事項 安全衛生・職業訓練・災害補償・業務外の傷病扶助に関する事項 表彰・制裁・休職・に関する事項 さらに、有期雇用契約の場合は「契約更新の有無」等の明示も必要であり、パートタイム社員については「昇給の有無」等も書面で明示しなければならない。 上記の「明示すべき事項」に漏れがないかをチェックして契約書を2通作成し、雇入れ日前までに、労働者にも署名押印してもらい、労使双方で1通ずつ保管することになる。 次回は「正社員の雇用契約書」の作り方について解説する。 (了)

#No. 5(掲載号)
#真下 俊明
2013/02/07

誤りやすい[給与計算]事例解説〈第5回〉 【事例⑥】定期券に対する保険料 ・ 【事例⑦】休業中の社会保険料

誤りやすい [給与計算] 事例解説 〈第5回〉   税理士・社会保険労務士  安田 大   (2 控除額の計算―社会保険料) 【事例⑥】―定期券に対する保険料― 〔正しい処理〕 〔解   説〕 1 社会保険料 社会保険料の算定基礎となる標準報酬月額を算定する際に、報酬の中に含まれるものと含まれないものがあり、給与として会社から支給されるものは、所得税が非課税とされる通勤手当を含めて、ほとんどのものが報酬の中に含まれることになる。 通勤手当について、通勤定期券の現物を支給している場合についても、現物給与として報酬の中に含めることになる。この場合に、6ヶ月定期券を6ヶ月ごとに支給している場合には、6分の1の額を毎月の通勤手当(現物)として報酬に含める必要がある。 2 雇用保険料 雇用保険は、毎月の給与計算や賞与計算の際に、その都度対象となる賃金額に基づいて雇用保険料の被保険者負担分を計算する。その際、雇用保険料の算定の基礎となる賃金額に含まれるものと含まれないものがある。 社会保険とほぼ同様に、所得税が非課税とされる通勤手当を含めて、給与、賞与として会社から支給されるものは、ほとんどのものが賃金額の中に含まれることになる。 通勤手当について、通勤定期券の現物を支給している場合についても、賃金額に含める必要がある。   【事例⑦】―休業中の社会保険料― 〔正しい処理〕 〔解   説〕 1 育児休業中の社会保険料の免除 育児休業中の社会保険料については、被保険者負担分、会社負担分とも免除されることになっている。育児休業開始月分から、育児休業終了日の翌日の属する月の前月分までが免除の対象となる。女性が出産をして、そのまま育児休業に入る場合には、労働基準法による産後休暇期間(出産日の翌日から56日間)の翌日が育児休業の開始日となる。 2 他の休業中の社会保険料 育児休業中は社会保険料が免除されるのに対して、その他の産前産後休業や介護休業、病気休業のような場合には、給与の支払いがないときであっても、雇用関係が継続していれば、健康保険料・厚生年金保険料の負担義務がある。 3 支払方法とその処理 社会保険料の負担義務があっても、給与の支払いがないため、給与からの控除ができないため、会社は本人から現金で徴収するなり振込みを求めたりすることになる。 その徴収、振込みされた社会保険料被保険者負担分は、給与から控除された社会保険料の額に含めることになる。 4 会社負担の場合の処理 社会保険料の被保険者負担分を会社が負担することにしている場合には、その社会保険料被保険者負担分相当額が課税対象の給与として支給されたものとなるので、総支給金額に含めるとともに、社会保険料の控除額にも含めることになる。 また、その社会保険料被保険者負担分相当額は、雇用保険料の対象にもなる。 (了)

#No. 5(掲載号)
#安田 大
2013/02/07

親族図で学ぶ相続講義【第2回】「数次相続と遺産分割(その1)」

親族図で学ぶ相続講義 【第2回】 「数次相続と遺産分割(その1)」   司法書士 Wセミナー専任講師 山本 浩司 上の相続関係説明図は、前回のものをちょっとだけ変形したものです。 どこが変わったかというと、甲野一男の死亡の日付です。今度は、甲野一男は、被相続人である甲野太郎の死亡より後に死亡しています。 前回の講義で、被相続人が死亡したときに生存していない者には相続権はないという「同時存在の原則」についてお話しましたが、今度は、被相続人である甲野太郎の死亡したときに、その養子である甲野一男は生存していました。 したがって、被相続人である甲野太郎の相続財産は、その配偶者(甲野花子)と子(甲野一男)が各2分の1の相続分で相続します。 なぜって、子がいれば孫が代襲相続することはありえないし、被相続人である甲野太郎の姻族一親等の甲野桜子には相続権がないことも前回お話しましたね。 そして、その後に相続人の甲野一男が死亡して、第二の相続が発生することになります。 こういうパターンを「数次相続」といいます。 第一の相続(甲野太郎死亡による相続:平成24年3月20日)によりその子である甲野一男が相続した相続分(甲野太郎の相続財産の2分の1)は、第二の相続(甲野一男死亡による相続:平成24年4月10日)により、甲野一男の相続人に承継されます。 では、甲野一男の相続人は誰でしょうか。 こういうときの考え方の基本は「相続は一件ずつ」ということです。 第一の相続と第二の相続は「別の事件」ですから、別々に考えればいい(基本的に両者は無関係の関係)のです。 つまり、第二の相続では、前回の講義ではテーマとなった甲野一男が甲野太郎の養子であることや、甲野一郎が養子縁組前の養子の子であるということはまったく考慮の必要がありません。 甲野一男の相続人は、その配偶者の甲野桜子(相続分は4分の2)と子(嫡出子)の甲野一郎および甲野次郎(相続分は各4分の1)です。 つまり、第二の相続は、配偶者とその配偶者の間の嫡出子2人が相続するという、世間でごくありふれた相続事件にすぎません。 さて、以上で結論がでました。甲野太郎の相続財産は数次相続の結果、次の割合で各人に承継されます。 甲野花子  8分の4 甲野桜子  8分の2 甲野一郎  8分の1 甲野次郎  8分の1 第1回の講義のとき(甲野一郎が被相続人甲野太郎の死亡以前に死亡したパターン)とは、大きく結論が異なりますね。 このように相続事件は、関係者の死亡の前後で結論に大きな相違が生じることが多々あります。 では、ここからが問題です。 もし、みなさんの税理士事務所に、甲野太郎の相続財産の全部を甲野一郎に相続させたいという依頼があったらどうするか? しばし、考えてみてください。 たとえば、甲野太郎が所有する「X不動産の名義を甲野一郎にしたい」という依頼があったらどうするか? この問題は、けっこう面白い論点があり、また、相続というものの法的性質を考える上でも示唆にとむ問題でありますので、その結論は次回のお楽しみということにしましょう。 (了)

#No. 5(掲載号)
#山本 浩司
2013/02/07

〔知っておきたいプロの視点〕病院・医院の経営改善─ポイントはここだ!─ 【第1回】「病床規模別の利益率と業績格差を生む要因」

〔知っておきたいプロの視点〕 病院・医院の経営改善 ─ポイントはここだ!─ 【第1回】 「病床規模別の利益率と業績格差を生む要因」   東京医科歯科大学医学部附属病院 特任講師 井上 貴裕   1 本連載の目的 病院は医師・看護師・その他専門職が集うプロフェッショナル集団であり、個の力が果たす役割は極めて大きい。個の力が強すぎるがゆえに、組織力に欠ける傾向もあり、俗人的な要素が強いことも否定できない。 その点では、会計プロフェッションと共通しており、会計人と同じ悩みを共有しているともいえる。だからといって、組織マネジメントに関する経営理論を適用しても、病院の成長は期待できない。 医療人は、同じプロフェッショナルとして、会計人に対して強い信頼と期待を寄せている。 しかし、病院経営は会計に関する知見だけでは解けない難題の連続である。「人件費が増えている。医薬品費が増えている」など問題点を指摘したところで、「今なにをすべきか」を導き出すことは困難である。しかし、病院経営層が求めているのは処方箋あるいは手術であり、ピンポイントで課題を指摘され、その解決策を提示してほしいと強く願っている。 つまり、会計の知見を提供するだけでは、病院経営層の真の信頼は得られず、期待ギャップが生じることは避けられない。 会計プロフェッションにとって、病院は潜在的・顕在的クライアントとして重要な価値がある。病院経営層からさらなる信頼を醸成するためには、会計プラスαの付加価値を有することが鍵を握る。そのための実践的なスキルを提供するのが本連載の目的である。 我が国の病院をより良い方向に導き、成長軌道に乗せるための定石について余すところなく言及する。   2 病床規模別の利益率 経済が停滞している中で社会保障費の占める割合は増加しており、医療費は抑制せざるを得ない状況にある。つまり、病院は一定範囲の収益の中で経営を行っていくことが求められる。 本連載の第1回では、医療機関の現状の業績を可視化し、業績格差を生む要因について検証する。 図表1は、公表資料をもとに病床規模ごとの黒字病院と赤字病院の割合をみたものである。 図表1 一般病院では全体として6割が赤字であり、厳しい経営環境に置かれていることがわかる。特に400床未満は赤字病院の割合が多い傾向があり、中小病院冬の時代といっても過言ではないであろう。一方、400床以上では、600床台のみが赤字病院が多いがこれは大規模病院の建て替え需要を反映したものであり、経済的に余裕があったからこそ大規模投資を行い、結果として減価償却費が業績を圧迫したのかもしれない。 次に業績格差を生む要因について考えていく。 図表2に示すように、黒字病院は医業収益に占める給与費の割合(以下、給与費率とする)が低く、ヒトの生産性が高いことがわかる。 図表2 一般病院全体 黒字病院と赤字病院の比較 給与費率は、給与費/医業収益であるため、分子の給与費が多いのではないか、つまり赤字病院は人が多いという仮説を持つ方も多い。 しかし、その仮説はほとんどのケースでは間違っている。人が多い病院ほど利益が出ている傾向があるからだ(図表3)。 赤字に陥る病院は、分母にある医業収益が少ないのである。この要因は地域の中での立ち位置や診療報酬の適切な算定など様々な理由が考えられるが、医業収益を増加させなければ、経営成績の向上は期待できない。 図表3 医業利益率と職員数の状況   実際、図表4に示すように、給与費率が低い病院は、手術料が多く収入が多い傾向がある。給与費率については、外部委託の多寡が影響するので、給与費と委託費をあわせて検証することも有効である。 図表4 人件費率+委託比率と手術件数の相関   また、図表5は最も赤字病院の割合が多かった20~99床と600床~699床病院の財務状況をみたものである。 図表5 一般病院 黒字病院と赤字病院の傾向 ここから、材料費率については給与費率ほど、黒字病院と赤字病院で大きな差はみられない。手術を積極的に行う高機能な病院ほど材料費率が高い傾向があり、重症患者をどれだけ診ているかの指標ともいえる。もちろん材料の管理が適切でなかったり、購買のあり方に問題をはらんでいるケースもゼロとは言えないが、それなりの介入を行えば比較的短期間に改善できることである。 また、材料を多少安く買ったところで、それだけで黒字になるほど病院経営は甘くない。材料費率に含まれる医薬品については院内処方であれば多くなり、結果として給与費率が低くなる傾向があることには留意したい。 3つ目は減価償却費比率である。 新築などの大規模投資後には、減価償却費が利益を圧迫することは避けられない。しかし、この点でも黒字病院と赤字病院に大きな差はみられない。差が大きくないのは、積極的に投資を行い成長し続ける病院がある一方で、業績悪化のため新規投資を控えざるを得ず低収益という負のスパイラスに陥る病院があることを意味するのであろう。もちろん過剰な投資は不採算につながるため慎重にすべきであるが、適切な医療を行うためには継続して一定程度の投資はやむを得ない。 最後に、図表6に示すように、規模が大きい病院ほど固定比率が低く、財務的な弾力性が高いことが予想される。この点が大規模病院の方が利益が出やすい傾向にあることと関係しているものと考えられる。 図表6 対医業収益比の医業費用の構成比率 (了)

#No. 5(掲載号)
#井上 貴裕
2013/02/07

事例で学ぶ内部統制【第9回】「個別決算業務プロセスの内部統制の評価」

事例で学ぶ内部統制 【第9回】 「個別決算業務プロセスの 内部統制の評価」   株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦   はじめに 今回から2回にわたり、決算財務報告プロセス(FSCP)の内部統制をめぐる事例を取り上げる。 FSCPは、いわゆる単体決算と連結決算に分かれるが、今回取り上げるのは、単体決算である個別決算業務プロセスの内部統制の評価である。 筆者(株式会社スタンダード機構)主催の実務家交流会では、個別決算業務プロセスにおけるリスクとコントロールの概要、その運用評価に利用する評価ツールについて意見交換を行った。 交流会で明らかとなった各社の創意工夫を見てみよう。   個別決算業務プロセスのリスクとコントロール そもそも、実務ではどのように個別決算業務プロセスを定義しているのだろうか。 筆者が参加企業に対して、「個別決算業務プロセスをさらに細かく分けると、どのようなサブプロセスに分かれているか。個別決算業務プロセスの中身を確認したい」と切り出した。 参加企業Aは、「①資産評価、②引当金計上、③税金計算・税効果の3つに分けた」(部品メーカー)と話した。 参加企業Bも、「個別決算業務の内容はA社さんと同じだ。ただ、食品の加工に使う材料の輸入が多いので、為替予約ヘッジ会計処理、仕入在庫確定レート算出という業務を加えた」(食品メーカー)と話した。 参加企業Cも、「A社さんの分類に加えて、建設業を営むわが社は、工事進行基準決算売上、完成工事保証損失引当金、工事損失引当金という業務を加えた。また、決算の早期化に取り組んでいるため、月次決算や未経過勘定関連仕訳を個別決算業務プロセスに加えて適時性や正確性を評価している」(プラント会社)と話した。 このように、各社が設定していたサブプロセスは多数あり、呼称も統一されていなかったものの、個別決算業務プロセスを構成する重要な要素としては、次の3分類を基礎に、企業の固有事情に応じてサブプロセスを加減していると総括できた。 なお、企業の固有事情に応じて評価対象に追加したと報告されたサブプロセスの事例は、次のとおりとなった。 月次決算 未経過勘定関連仕訳 仕掛品評価(各カンパニーからの仕掛品データ入手、ITからの仕掛品データ入手、未実現利益数値の転記、製造専属費の按分、原価差額の按分、仕掛品集計表の作成、仕訳入力) 原価差額調整 販売管理費表示組替え 工事進行基準決算確定(適用案件調査の実施、工事進行基準総括表の作成) 材料勘定(総勘定元帳とITのリスト照合、各カンパニー作成受払表照合、全社残高集計表作成) 経費確定 製品保証引当金(個別事情の受容、繰入率の計算、引当金取崩し、引当金戻入れ、引当金繰入れ) 工事損失引当金(引当対象案件の抽出、引当金繰入れ・取崩し) 完成工事保証損失引当金(個別事情の受容、繰入率の計算、引当金取崩し、引当金戻入れ、引当金繰入れ)   個別決算業務プロセスにおける内部統制の運用評価に利用する評価ツール 次に、個別決算業務プロセスの内部統制の運用評価を行う場合に利用する評価ツールについて議論を行った。 その結果、参加企業の対応は、次の3つに分かれた。 【パターン1】 リスクコントロールマトリクス(RCM)型 参加企業Dは、「個別決算業務プロセスでも、業務記述書、フローチャート、RCMと呼ばれる3文書を作成し、運用評価ではRCMを使っている」(医療機器メーカー)と、個別決算業務プロセスを通常のプロセスレベルの内部統制(PLC)として捉えていた。 パターン1の参加企業は過半数に上った。 【パターン2】 チェックリスト型 参加企業Eは、「個別決算業務プロセスの内部統制の評価にRCMを作っていると聞いて、正直なところ驚いている。個別決算業務は、いずれの業務を見ても、担当者に経理財務の専門知識が求められるだけでなく、帳簿外で複雑な計算や評価を行うことが多いので、フローチャートにまとめるには馴染まないと思った。 そこで、わが社は、RCMも含めて3文書は作成せず、むしろ、重要な確認事項を質問形式で確認するチェックリストを作って評価している」(情報通信会社)と、個別決算業務プロセスを全社レベルの内部統制(ELC)の一環として捉えていた。 参加企業Fも、「わが社も個別決算業務プロセスの評価はチェックリストで行っている。個別決算業務は、それを構成するサブプロセスが複雑で、かつ証憑に残りにくいため、RCMを作成しにくかった。 そこで、コントロールだけを質問形式にしたチェックリストを作成した。なお、運用評価では、サンプルチェックではなく、全件チェックしている」(建設会社)と話した。 この報告に対して、複数の参加企業から、「その場合、評価実務は誰が行うのか」という質問が投げかけられた。 前出の参加企業Eは、「評価者は、経理部門に所属している。すなわちセルフチェックとなっているが、評価者自身が業務やコントロールの内容を熟知しているため、チェックリストによる評価でも実質的な評価が可能だ」と話した。 前出の参加企業Fは、「わが社も評価者は、経理部門に所属しているが、セルフチェックとならないように、運用評価を行う経理部員は日常の伝票起票や承認といった経理実務には関与しないことにより独立性を確保している」と話した。 【パターン3】 混合型 参加企業Gは、「チェックリストとRCMの両方を使っている。チェックリストは、経理規程、経理マニュアル、経理作業項目確認表の整備と周知のように、個別決算業務に着手する前に全社レベルで対応するコントロールの評価に使う。RCMは、資産評価、引当金計算、税金計算・税効果や決算数値の増減分析や異常値の承認というコントロールの評価に使う。 確かに、個別決算業務は複雑だが、一定の流れはあるし、職務分掌で担当者は分かれているので、できるだけPLCに倣ってリスクとコントロールを記述した。 また、わが社では、経営者評価で監査部の担当者が個別決算業務プロセスで算出された数値の正確性を評価する場合、帳簿から計算過程を発生源にどこまで遡って数値を再現すべきかが課題となったが、その課題に一定の目安を提示するため、RCMに明記する方が便利だった」(総合電気メーカー)と話した。 また、前出の参加企業Bは、「わが社も、当初はチェックリストを使っていたが、個別決算業務に精通していない監査部の担当者が、リスクの内容やそのコントロールが設定されている実質的な理由を忘れてしまい、効果的な評価ができなくなってきたため、チェックリストを廃止してRCMを作ることに変えた。今はその過渡期で、両者を使っている。 E社さんもF社さんも、個別決算業務の複雑性や証憑の少なさを理由にチェックリストで対応されたと報告されたが、わが社はむしろ逆の発想だ。 つまり、業務が複雑で証憑に残りにくいからこそ、その性質として財務報告の信頼性に対するリスクが高いと考えられるから、経理知識が少ない監査部の担当者であっても、リスクとコントロールの内容を理解して評価にあたることができるようにするため、RCMで明記する方が有効と判断した」と、RCMの優位性を主張した。 次回は、連結決算業務プロセスの内部統制の評価を紹介する。 (了)

#No. 5(掲載号)
#島 紀彦
2013/02/07

資産の海外移転をめぐる シンガポール最新事情【第1回】─世界の富裕層が集まる国、その理由とは─

資産の海外移転をめぐる シンガポール最新事情 【第1回】 ─世界の富裕層が集まる国、その理由とは─   Advance Business Support Pte. Ltd. 代表 大曽根 貴子    ■世界の富裕層が集まる国、シンガポール 「シンガポールに資産を移転したい」という依頼が、金融機関やコンサルタントの元に相次いでいる。 東日本大震災以降、資産だけでなく、生活の拠点を移したい、本社機能を移転したいという相談も増えつつある。 シンガポールには、世界から資金が流入し、富裕層が生活拠点を移している。 ボストン・コンサルティングが行った世界財産調査によれば、2011年時点において全世帯における富裕世帯(富裕世帯とは、金融資産100万米ドル超を保有する世帯のことをいう)の割合が最も高いのは、シンガポールの17.1%であった。 シンガポールでは、6世帯に1世帯が富裕世帯なのである。 ジョージ・ソロス氏と共にクォンタム・ファンドを設立した投資家のジム・ロジャース氏や、フェイスブックの共同創設者であるエドアルド・サヴェリン氏などもシンガポールに移住している。   ■シンガポール税制の魅力 世界中から富裕層がシンガポールに住まいを移すのはなぜか。 その理由には、魅力的な税制が挙げられる。 シンガポール税制の概要をまとめると、以下のとおりである。   ■富裕層課税が強化される日本 一方、日本の税制は今、どうなっているのか。 2013年1月24日に公表された平成25年度税制改正大綱では、所得税の最高税率を2015年から課税所得4,000万円超について45%に引き上げること、相続税の基礎控除額を削減し、最高税率を55%に引き上げることなどが盛り込まれている。 富裕層にとって、日本はさらに住みづらい国となってしまう。 税負担の増加を懸念し、資産を海外に移転する個人及び法人が年々増加している。 また、海外移住を検討する起業家や投資家は、限定的であるものの増加している。 このような流れから、課税当局は2013年より国外財産調書の提出制度を導入し、課税逃れ行為の監視体制を強化している。 また、外国に移住した後、キャピタル・ゲインや国内源泉所得について申告漏れを指摘され、課税当局と訴訟となったケースもある。 このため、移住や相当額の資産を海外移転する場合には、事前に税務リスクを洗い出し、対策を検討した上で実行することをお勧めする。 (了)

#No. 5(掲載号)
#大曽根 貴子
2013/02/07

《速報解説》 贈与税関連の改正事項(教育資金贈与以外)─平成25年度税制改正大綱─

《速報解説》 贈与税関連の改正事項 (教育資金贈与以外) ─平成25年度税制改正大綱─   税理士法人ネクスト 公認会計士・税理士 根岸 二良   平成25年1月24日に、与党から平成25年度税制改正大綱が公表された。 本稿では、平成25年度税制改正大綱に含まれる贈与税関連(教育資金贈与以外)の改正について、その内容を概観し、改正の影響を検討していく。   1 平成25年度税制改正の内容   ―贈与税関連(教育資金贈与以外) (1) 贈与税(暦年課税)の税率構造の見直し 【改正前】 【改正後】20歳以上の者が直系尊属から贈与を受ける場合 【改正後】上記以外 相続税の最高税率が50%から55%に改正されることに併せて、贈与税の最高税率も50%から55%に改正される。 また、20歳以上の者が直系尊属から贈与を受ける場合には、改正により贈与税の税率が緩和される。 この改正は、平成27年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る贈与税について適用される。 (2) 相続時精算課税制度 改正により、相続時精算課税制度が適用される受贈者の範囲に、20歳以上である孫が追加される。また、贈与者の年齢要件が60歳以上に緩和される。 この改正は、平成27年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る贈与税について適用される。 (3) その他 この改正は、平成25年4月1日以後に贈与により取得する国外財産に係る贈与税について適用される。   2 平成25年度税制改正の影響   ―贈与税関連(教育資金贈与以外) 平成25年度税制改正で相続税が増税となる一方、贈与税は減税の方向で改正が行われる。 具体的には、20歳以上の子供・孫が贈与を受ける場合、改正前と比較して、改正後は適用される贈与税率が緩和される。また、改正後は、相続時精算課税制度の適用範囲が拡大し、受贈者に20歳以上の孫が追加され、贈与者の年齢要件が60歳以上に引き下げられる。 相続税増税が実施されることに伴い相続税対策の必要性が増加すると考えられるが、その対策の1つである生前贈与は、この贈与税改正もあり、より実行されるケースが増加すると考えられる。 なお、平成25年度税制改正により、贈与税の課税財産の範囲が拡大している(相続税も同様)。 改正前では、受贈者を海外に居住させ、かつ日本国籍を持たない場合、国内財産のみが贈与税の対象となるが、改正後は、贈与者が日本に住所をもつ場合、国外財産も贈与税の対象となる。 富裕層の相続税対策を行う場合には、この改正点についても留意する必要がある。  (了)  

#No. 5(掲載号)
#根岸 二良
2013/02/07

《速報解説》 雇用促進税制の拡充について─平成25年度税制改正大綱─

 《速報解説》 雇用促進税制の拡充について ─平成25年度税制改正大綱─   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   1 はじめに 平成25年1月24日、与党の平成25年度税制改正大綱が決定され、同29日には閣議決定された。 平成25年度税制改正では、民間投資や雇用を喚起し持続的成長を可能とする成長戦略に基づく政策税制措置を講じることとされており、特に雇用の拡大・所得の増大を念頭に置いた税制措置として「所得拡大促進税制」が創設されたほか、従来の雇用促進税制の拡充が盛り込まれた。 本稿では「雇用促進税制」について解説を行う。なお、所得拡大促進税制の創設についてはこちらをご参照いただきたい。   2 改正前の雇用促進税制の概要 青色申告法人が平成23年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する各事業年度(以下「適用年度」という)において、雇用者を5人以上(中小企業においては2人以上)増加させ、かつ、雇用者増加割合が10%以上である等の一定の要件を満たす場合には、増加雇用者1名当たり20万円を法人税額から控除することができる(措法42の12)。ただし、控除税額は法人税額の10%(中小企業は20%)を限度とする。 この制度における「雇用者」とは、法人の使用人のうち雇用保険の一般被保険者であるものをいう(役員の特殊関係者及び使用人兼務役員を除く)。 (1) 適用要件 雇用促進税制の適用を受けるためには、各適用年度において、以下に示す要件を満たす必要がある。 そしてこの制度の適用を受ける場合には、適用事業年度開始後2ヶ月以内に、主たる事業所を所轄する公共職業安定所(ハローワーク)に「雇用促進計画」の提出を行い、都道府県労働局又は公共職業安定所で上記の①~③のまでの要件について確認を受け、その際交付される雇用促進計画の達成状況を確認した旨を記載した書類の写しを確定申告書に添付する必要がある(措法42の12①、措令27の12①②、措規20の7①)。 (2) 税額控除限度額 20万円×基準雇用者数(法人税額の10%【中小企業者等は20%】を限度とする)   3 改正の概要 税額控除限度額を増加雇用者数1人当たり40万円(現行20万円)に引き上げるほか、適用要件の判定の基礎となる雇用者の範囲について所要の措置を講ずる。 今回の改正では適用要件そのものは変更されていないものの、雇用者の範囲の見直しについては、「雇用保険の一般被保険者」という定義が見直されるのかどうか、引き続き留意したい。 (了)

#No. 4(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2013/02/06

《速報解説》 所得拡大促進税制の創設について─平成25年度税制改正大綱─

 《速報解説》 所得拡大促進税制の創設について ─平成25年度税制改正大綱─   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   1 はじめに 平成25年1月24日、与党の平成25年度税制改正大綱が決定され、同29日には閣議決定された。 平成25年度税制改正では、民間投資や雇用を喚起し持続的成長を可能とする成長戦略に基づく政策税制措置を講じることとされている。 本稿では、その一環として創設された「所得拡大促進税制」について解説を行う。   2 所得拡大促進税制の概要 青色申告書を提出する法人が国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、以下の①~③の要件を満たすときには、その給与等支給増加額の10%の税額控除(法人税額の10%(中小企業者等については20%)を限度)ができる。 なおこの制度は、雇用促進税制、復興特区等に係る雇用促進税制との選択適用となる。   3 各用語の意義 (1) 国内雇用者 法人の使用人(法人の役員及びその役員の特殊関係者を除く)のうち、法人の有する国内の事業所に勤務する雇用者をいう。 ここで「雇用者」の定義については現段階では明らかとなっていないが、雇用促進税制との選択適用となることを考慮すると、雇用促進税制における「雇用者」の定義(措法42の12②二)と同様、「雇用保険の一般被保険者」に該当するものに限られると考えられる。パートタイマーやアルバイトの取扱いについては留意が必要である。 (2) 給与等支給額 各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいう。 (3) 基準事業年度 平成25年4月1日以後に開始する各事業年度のうち最も古い事業年度の直前の事業年度をいう。   4 適用関係 平成25年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度について適用される。   5 数値による設例 (了)

#No. 4(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2013/02/06
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